活动剧情
Let's study hard!
活动ID:107
第 1 话:恐ろしい知らせ
放課後
神山高校 1年A組
杏:んー、終わった終わった~!
杏:こはね待たせちゃうし、早く帰りの支度しなきゃ!
クラスメイトA:あはは! 杏って、授業終わると急に元気になるよね
クラスメイトB:うんうん。なんていうか、 授業から解放された喜びが全身からあふれてるって感じ
杏:え~、なにそれ。そんなことないって! 別に普通じゃない?
杏:ていうか、ふたりとも部活は? のんびりしてると先輩に怒られるんじゃない?
クラスメイトA:あ、そうだった! じゃあね、杏! また明日!
杏:ばいばい! 部活、頑張ってね!
杏:(さて、と……)
杏:(私も早く帰らないとね。 今日の練習はなんだっけ)
瑞希:——やっほー! 杏!
杏:わっ! 瑞希……!?
杏:も~、おどかさないでよ。 どうしたの?
瑞希:えへへ。今日さ、一緒に帰らない? おいしいアップルパイのお店があるって、 知り合いに教えてもらったんだよね~
瑞希:甘くてふわふわサクサクで、それに量もあって、 すっごく食べごたえがあるんだってさ!
杏:へえ、ちょっと興味あるけど……
杏:——でも、ごめん! 今日はみんなと歌の練習する予定なんだ
瑞希:あ、そっか。じゃあ仕方ないね
杏:ごめんね、せっかく誘ってくれたのに
瑞希:ううん、別にいいって。それじゃあ、また——
教師:白石、暁山。ちょっといいか?
杏:先生? どうかしたんですか?
教師:話したいことがあってな。 ちょっとついて来てくれ
空き教室
教師:ここならいいか
杏:あの、話ってなんですか?
瑞希:わざわざ空き教室につれて来るなんて…… 何か人には聞かせたくないこととか?
教師:まあ、そうだな。 ……白石。お前、このあいだのテストの点数、覚えてるか?
杏:……へ?
杏:え、えーと、それはその…… あんまり、高くはなかったような……
杏:で、でも低いものばっかりじゃなかったと思いますよ! ほら、家庭科とか……
瑞希:家庭科……?
杏:あ、そうだ! 数学も赤点じゃなかったし!
教師:たしかに、今回数学はよく頑張っていたな。 だが……古典や化学に関してはどうだ?
杏:え、えっと……その……
杏:——と、とにかく! テストがどうかしたんですか?
教師:白石……お前はもう高校生だ
教師:進級するためには、 それに足る学力を身につけたという評価がいるんだ
杏:え、そ、それってまさか——
教師:——お前は週明けから1週間、補習だ
杏:ほ、ほ……ほ……補習~~~!?
杏:そ、そんな先生!? 嘘ですよね!?
杏:ほ、補習なんてまさかそんな……
教師:嘘ではない! むしろ、こうするしかないんだ
教師:テストの点が取れていないなら、単位は与えられん。 それは学校のルールとして決まっていることだ
教師:とはいえ先生達だって、留年者を出したいわけじゃない。 どうにかしてやりたいと思ってるからこそ、 こうして補習を行っているんだぞ
杏:う……
教師:わかったら……月曜からの補習、しっかり来るようにな
杏:は、はい……
瑞希:あはは……。大変だね、杏。 まあでも進級のためにも、しっかりがんばらないと
教師:——暁山。何、他人事のような顔をしてるんだ?
瑞希:へ?
教師:お前も一緒に補習だぞ
瑞希:——え!? な、なんで!?
瑞希:ボク、テストの成績は問題ないはずですよね!?
教師:テストの成績は、たしかにな。 だが出席日数のほうはどうだ
瑞希:い、いやいや! このあいだ、 出席日数の補完のためだって言われて、 山ほどプリントやりましたよ!
教師:そうだな。 ……だが、その後もお前は休むのを繰り返していただろう
瑞希:それはそうですけど…… でも、ちゃんと休んでも問題ない日かは確認して——
瑞希:(ん……? そういえば……先生が急病になったとかで、 数学と次の日の英語が入れ替わった日があったような……)
瑞希:(あれ? そうなると……英語の出席日数って、もしかして——)
教師:どうやら、心当たりがあるようだな?
瑞希:う……え、えーと、その……はい……
教師:——なら、わかったな?
教師:白石、暁山。月曜からの補習、しっかりこなすように
杏・瑞希:『そ、そんな~!』
ストリートのセカイ
crase cafe
杏:——と、いうわけで
杏:みんなごめん! 週明けから補習に行かなきゃいけなくなっちゃった!
こはね:あ、杏ちゃん……
杏:本当にごめんね! 金曜までは残って勉強もしないといけなくて……
杏:でも、学校から帰ったら練習はしっかりやるから!
こはね:しょうがないよ。 留年になっちゃったら大変だし……
冬弥:……謙さんには、もう話したのか?
杏:う、うん……。 ちゃんと勉強して、進級できるように頑張れって言われた……
冬弥:そうか……
冬弥:なら、俺から言えることは何もない。 もし何か手助けできるようなことがあれば言ってくれ
リン:がんばって、杏ちゃん!
リン:学校の勉強はよくわからないけど…… わたしも、できることがあったら協力するよ!
レン:オレもオレも! 疲れがとれるよう、おいしいコーヒーとか準備しておくよ!
MEIKO:そうね。甘いお菓子もたくさん用意しておくわ
杏:みんな……
杏:……ありがとう! 私、頑張るね!
ルカ:じゃあ、杏ちゃんの補習が終わるまでは、 3人で練習することになりそうだね~
冬弥:そうですね。……彰人、小豆沢、 俺達は俺達でできることをやっていこう
こはね:うん!
彰人:…………
ルカ:彰人くん?
KAITO:あれ? そういえば彰人くん、 今日はずいぶん静かだよね。何かあったの?
冬弥:彰人。まさか——
彰人:…………もだ
ミク:え?
彰人:オレも……補習だ
こはね:し、東雲くんも……!?
冬弥:彰人……
杏:ちょっと、なんで黙ってたの!?
彰人:……悪い
レン:……そ、そっか。彰人も杏も、がんばれ!
リン:ふたりが進級できなくなったりしたら、大変だもんね!
杏:そっか……。彰人も補習だったんだ……
杏:まあ、そうだよね。私が補習なのに 彰人が引っかからないなんてありえないし……
彰人:は? どういう意味だよ。 オレだってお前よりは——
杏:え? そんなことないでしょ。 だって私、2科目しか引っかかってないんだからね
彰人:そんなのオレも同じだ。 言っとくが世界史の点数はお前より上だぞ
杏:なにそれ。私だって数学なら——
こはね:ふ、ふたりとも落ち着いて……
冬弥:そうだ。そんなことで争っていたって仕方ないだろう。 赤点を取ったことに変わりはないんだからな
彰人:う……
冬弥:——とにかく、ふたりとも進級できるよう しっかり補習を受けろ
杏:はい……
彰人:……わかった
杏:(冬弥の言うとおりだ……)
杏:(補習は大変だけど……でも)
杏:(ちゃんと勉強して、進級できるように頑張らなくちゃ——!)
第 2 话:補習日和
数日後
神山高校
杏:はあ……
杏:やだなあ、補習……
瑞希:だね……これから5日間も補習なんて、 耐えられる気がしないよ……
瑞希:でも、まさか弟くんまで一緒とはね。 弟くんも赤点取ったんだ~
彰人:うるせーな……。 補習なのはお前も同じだろ
瑞希:ボクはふたりと違って出席日数が足りなかっただけだし~
杏:あはは……。 そういえば、補習って具体的に何やるんだろ。 私、全然聞いてないんだけど
彰人:あー、たしか、基本は自習形式って言ってたな
彰人:けど、落とした科目のテストが最終日にあって それに合格すれば進級できるらしい
杏:そ、そっか……。ちゃんと真面目に勉強しないとね
彰人:ああ……
???:——む? そこにいるのは……
彰人:げっ……
杏:——天馬先輩?
司:彰人に白石、それに暁山も! そろって移動とは、仲がいいな!
彰人:いや、別に……単に行き先が同じってだけです
杏:私達、補習に行くところなので
司:補習? そうか、お前達もか……
杏:え? お前達もって……もしかして……
彰人:司センパイも補習なんすか?
司:う、うむ……。情けないことにな……
瑞希:わ~。まさかこんなに知り合いが 補習にひっかかってるなんて……
瑞希:ちなみに、司先輩はいくつひっかかったんですか?
杏:あ、それ私も気になる!
司:オレは物理だけだな。 もともと苦手科目だったから、重点的に勉強してはいたのだが…… やはり手強かった……
杏:じゃあ、ちゃんと勉強はしてたんですね
司:結果は伴わなかったがな……
司:そういう暁山達はどうだったんだ?
瑞希:ボクは英語! 出席が足りなくなっちゃって
司:そうだったのか。 彰人と白石は?
彰人:いや、そのオレらは……
杏:ま、まあまあ! 私達のことはいいじゃないですか。 それよりお互い補習、頑張りましょうね!
司:そうだな、補習は大変そうだが…… 互いに切磋琢磨し、この苦難をともに乗り越えようではないか!
数十分後
空き教室
教師:よし、みんな、自分の分のプリントはすべて受け取ったな
教師:——それでは、各自始め
杏:(うわあ……。改めて見ても、プリントすごい量……)
杏:(でも、とにかく解かなきゃ——!)
杏:(解説付きの解答ももらってるから、 終わったらそれで自己採点して……)
杏:(できるようになるまで解きなおして、 それも終わったら、また別のプリントの繰り返し……)
杏:(う~、プリントは山ほどあるし、 終わりがない分、授業よりキツイかも……)
彰人:(……めんどくせえが、さすがに留年はごめんだしな……。 それに、冬弥達にこれ以上迷惑はかけられねえ)
彰人:(やるしかねえか……)
杏:(えっと…… 『次の徒然草の一節を読んで、以下の問いに答えなさい』)
杏:(『をりふしの、移りかはるこそ……ものごとに、あ……あ…… あはれなれ……』)
杏:(『ものの……あはれは秋こそまされ、 とひとごとに……言ふ、め……れど……』)
杏:(う、うう……。全然わかんない……)
杏:(……はあ。古文って、本当に苦手……。 書いてある文字は読めるのに、全然意味わかんないし)
杏:(みんな、どうしてるだろう……。 瑞希は——)
杏:(うわ、寝てる……!?)
杏:(でも、そうだよね……。 瑞希は成績悪いわけじゃないし、無理に勉強する必要もないか)
杏:(彰人は——)
杏:(よかった……。私と同じで苦戦してるみたい……)
杏:(——って、違う違う! みんなで一緒に進級するんだから。 私も頑張らないと——!)
杏:えっと……
杏:(『傍線部の単語に関して、 以下の活用表のあいている箇所を埋めなさい』……)
杏:(頑張らないと……頑張らないと……だけど——)
杏:(うう……どうしよう……! やっぱり全然わかんないよ~!)
補習後
杏・彰人:『はあ……』
瑞希:うわあ……。ふたりともひどい顔……。 大丈夫?
彰人:お前は……元気だな。 まあ、だいぶ寝てたしそりゃそうか……
瑞希:まあねえ。 最初にプリントざっと見たけど、わかる範囲だったし。 これなら金曜のテストも大丈夫かなって
杏:うう……。いいな~。私もそんな風に言ってみたい!
冬弥:——みんな、お疲れさま。 補習は終わったみたいだな
彰人:冬弥?
杏:え、もしかして……わざわざ様子見に来てくれたの?
冬弥:ああ。みんなの進級がかかっているからな
冬弥:ふたりとも、どうだった——
瑞希:あはは……。ふたりとも、めちゃくちゃ苦戦してたしね
冬弥:……やはり、そうだったか……
冬弥:——ならば
冬弥:俺がふたりに勉強を教えよう
彰人:冬弥が……?
冬弥:ああ。このままではふたりそろって 留年なんてことになりかねないからな
彰人:それは……助かるのは助かるが……
杏:でも……本当にいいの?
杏:自分で言うのもなんだけど、 ひとりで私達に教えるのって、相当大変じゃない?
瑞希:あ、たしかに。杏と弟くん、ふたり合わせると 4科目面倒見ることになるしねー
冬弥:たしかに、俺ひとりでは難しい。 だから……助っ人を連れてきた
彰人:助っ人?
類:——やあ、どうも
彰人:か、神代センパイ……!?
杏:……と、天馬先輩……?
類:青柳くんから、ふたりに勉強を教えてくれと頼まれてね
彰人:は!? 神代センパイに頼んだのか!?
冬弥:ああ。先輩は学年でも随一の秀才だ。 何か問題があるか?
彰人:い、いや……。問題っつーか……
杏:あの、でもどうして天馬先輩も一緒に?
司:うむ、オレも類に勉強を見てもらう予定だったんだ
類:けれど、青柳くんからも話をもらってね
類:できるなら両方に協力してあげたいと思って、 司くんと話したんだ。 それで、考えたんだけれど——
司:これから補習のあと、 皆で一緒に勉強会をするというのはどうだ!?
類:みんなで集まってやれば、 僕も全員の勉強が見れるからね
杏:なるほど……
彰人:…………
彰人:(……まさか、神代センパイから 勉強を教わることになるとは……)
彰人:(あんま気は進まねえが…… 勉強に関して頼りになるのは間違いねえ。なら……)
杏:——よろしくお願いします! 神代先輩!
彰人:…………お願いします
類:ああ。力になれるよう頑張るよ
類:——ところで、瑞希。 よかったら、瑞希も勉強会に参加してくれないかい?
瑞希:え、ボクも?
類:ああ。教える側の人数は多いに越したことはないからね
杏:あ、たしかに……
杏:瑞希には迷惑かもだけど……私からもお願いできないかな
瑞希:え? んー……どうしようかな
杏:お願い……!
瑞希:——ま、いっか
瑞希:いいよ! ボクも杏と弟くんに教えてあげる!
杏:ほんと!? ありがとう瑞希!
杏:ほらほら、彰人もちゃんとお礼言わなきゃ
彰人:……そうだな。 悪い、暁山。助かる
瑞希:お! 弟くんが珍しく素直だ
瑞希:ふっふ~ん。これが見れただけで、引き受けた価値あったかも
彰人:うるせえ……
類:フフ。それじゃあ、みんなで勉強会、頑張ろうか
杏:はい!
第 3 话:いざ、勉強会!
神山高校 空き教室
類:では、早速だけど勉強会を始めていこうか
彰人・杏・司:『よろしくお願いします!』
瑞希:……ていっても、実際どう教えていくの?
類:たしか、補習の最終日にテストがあるという話だったね
類:なら、補習の内容も そのテストに向けたものになっているはずだ。 補習でもらったプリントを見せてもらえるかい?
瑞希:はい、これだよ
類:ありがとう。……ふむ
類:なるほど。基礎的なことが中心のようだね。 数は多いが、難しい応用問題は出題されない……
冬弥:進級を目的としたテストですから、 先生方も配慮してくれているのかもしれませんね
司:たしかに、オレの解いた物理も基礎問題が多かったな
彰人:オレのもそうだったな。 まあ、だからって解けたわけじゃねえが
杏:……だね。私もおんなじ
類:つまりは、渡されたプリントの範囲さえ 解けるようになればいいということだね
類:——それじゃあ、それぞれもらった プリントにのっている範囲を重点的に勉強していこうか
類:プリントを復習しつつ、 怪しいところがあれば教科書にのっている練習問題を解いたりね
類:その中でわからないところがあれば、 いつでも僕達に聞いてほしい
杏:は、はい……!
瑞希:あ、でもちゃんと教えられるかな。 冬弥くんは大丈夫? 苦手な科目とかない?
冬弥:たしか白石が落としたのが、古典と化学。 彰人が英語と数学だったな
冬弥:俺はこの範囲なら、基礎的なことは問題なく教えられると思う。 暁山はどうだ?
瑞希:うん。その4つなら、ボクも問題ないよ!
類:それじゃあ、教える側の手があいている時は、 先の範囲をまとめたり準備をしたりしていこう
冬弥:わかりました
杏:ありがとうみんな……! 私、頑張るね!
瑞希:うん! それじゃあ勉強会スタートだね!
杏:え、えーと…… 『をりふしの移りかはるこそ……ものごとにあはれなれ……』
杏:(うう……。 補習の時も思ったけど、やっぱりよくわかんないなあ)
杏:(文章の意味が全然頭に入ってこないから、 どうしようもないっていうか……)
杏:(とりあえず、続きも読んでみないと……)
杏:『もののあはれは秋こそまされ…… とひとごとにいふ……めれど……』
杏:『それも……さるもの……にて…… いま……ひと……きは……心も、うき、たつものは——』
杏:(浮き立つ……えっと…… なんかワクワクすることがあったのかな……。 でも、その前のひとごとって言うのは——)
杏:(あ~……もー!)
杏:やっぱり全然わかんない! これ本当に同じ日本の人が書いたの!?
司:気持ちはわかるぞ……
彰人:直感的に頭に入ってこねえんだよな
瑞希:あはは……。まあ、古文は 単語を覚えないとどうしようもなかったりするしね
瑞希:杏、どの単語がわかんないの?
杏:えーっと、どれっていうか……ほとんど全部?
瑞希:全部かー。 よし、じゃあひとつずつやってこ!
瑞希:まず最初の文は…… 『をりふしの移りかはるこそ、ものごとにあはれなれ』か。 ここでわかんないとこある?
杏:ある! あはれって、どういう意味だっけ?
瑞希:んー、そうだね。 しみじみとした趣があるって意味だよ
杏:おもむき……。聞いたことあるけど…… よく考えたらちゃんとは知らないかも……
冬弥:味わい深い、風情があるということだな。 だが、たしかにこれだと掴みにくいかもしれない
類:実体験に基づいて考えてみるとわかりやすいかもしれないね。 たとえば——
類:白石くんは、夕焼けの空に見とれたことはないかい?
杏:夕焼けの、空……?
杏:あ! みんなで1日中歌の練習して、 疲れたー!って空を見た時とかに すごく綺麗だなあって思ったりはするかも!
司:おお! それならオレもわかるぞ! 体力を限界まで使ったあとに見る空は、 とても高く澄んで見えるものだな
杏:それ! すっごくわかります!
類:フフ、そのしみじみとした、味わい深い気持ちが、 『あはれ』の気持ちに近いだろうね
杏:なるほど……
瑞希:それと『をりふし』っていうのは、ここでは季節ってことで——
瑞希:『ものごと』は、何につけても…… えっと、ちょっと意訳になるけど、 『そのすべて、みんなそれぞれ』って感じで訳すといいかな
杏:ということは……
杏:季節が移り変わる様子は…… みんなそれぞれにしみじみとした趣がある……?
瑞希:そうそう! そういうこと!
杏:わあ! ありがとうみんな! 私にもやっと意味がわかったよ!
類:さすが白石くん。筋がいいね
彰人:ま、1行読めただけだけどな
冬弥:そういう彰人は、練習問題は解けたのか? さっきから手が止まっているようだが
彰人:う……
瑞希:あはは! まずは一歩リードってことで! この調子でどんどん読んでいこうよ、杏
杏:うん!
司:すまーん! 類! 教えてくれ! サッパリわからん!
類:これは……公式を当てはめれば解けるよ。 覚えているかい?
司:む……見覚えはあるが……。 すまん。解説から頼めるか
彰人:クソッ……何が書いてあるのか全然わからねえ……
彰人:何がサインコサインタンジェントだ……! 言葉だけ覚えても、なんの役にも立たねえ……
冬弥:落ち着け彰人。 まずはふたつの辺の長さを見るんだ。 そこからひとつひとつ答えを割り出していける
冬弥:俺と一緒に、確実に問題を解いていこう
杏:えーとえっと……『めづらし』は、 すばらしい、珍しいって意味で……
杏:『いみじ』は、優れている……
杏:え!? 『はづかし』がなんで立派って意味になるの!?
瑞希:あはは、がんばれー。 とにかくまずは代表的な単語を覚えちゃわないとね
杏:うう~。全然頭に入ってこないよ~
数時間後
類:おっと、もうこんな時間か。 みんなも疲れているようだし、今日はここまでにしようか
司:……ようやく終わったか……
彰人:頭がいてえ……
冬弥:それだけ勉強した証拠だ。 あと、効率的に覚えるためにも、 今日やったところは寝る前に復習しておくといい
彰人:まじか……
杏:うう、もう何も考えたくないよ……
杏:(でも……やらなくちゃ……)
杏:(絶対合格して、みんなと一緒に進級するんだから——!)
第 4 话:あの日の出会い
センター街
杏:はあ~。つっかれたー!
瑞希:だねー、体中痛いし。 学校の椅子ってなんであんなに硬いんだろ
杏:そう? それはあんまり気にしたことなかったな
瑞希:うそ!? あんなところに何時間も座ってたら、体壊しちゃうよ
瑞希:ボクからしたら、なんでみんな当たり前に何時間も 教室にいられるのか不思議だな~
杏:たしかに瑞希、普段はこんなに学校いないもんね。 登校してきても、結構授業抜け出してるし
杏:それなのに、今日は勉強つきあってくれてありがとね。 教えかたもわかりやすかったし、すっごく助かったよ!
瑞希:いいっていいって! 思ったより楽しかったしね♪
瑞希:……お! それよりあれあれ、あのお店だよ。 知り合いに教えてもらったアップルパイがおいしいってお店!
杏:へえ。お店の外だけど、もういい匂いがするね!
瑞希:ネットでも結構評判らしいよ。 わ……でも、お店の中混んでるな
瑞希:ん~
瑞希:あんまり人入れなさそうだし、ボクだけで買ってくるよ。 杏はここで待ってて
杏:あ、いいの? ありがと瑞希!
十数分後
杏:……瑞希、まだかかりそうかなあ
杏:——あ、そうだ。こういう時間で勉強すればいいのかな。 古文の単語くらいなら、今覚えられそうだし
杏:今日はめちゃくちゃ勉強したから正直頭痛いけど…… みんなも一生懸命教えてくれてるんだし、 頑張らないとダメだよね
杏:えっと、単語集……
クラスメイトA:——あれ、杏じゃん!
杏:あ……ふたりともどうしたの? こんなところで
クラスメイトB:部活の帰り! もう、今日もいっぱい走らされて、 本当大変だった~
クラスメイトA:そうだ杏、聞いたよ補習のこと。 留年しちゃうかもしれないんだって~?
杏:えっ!? なんで知ってるの!?
クラスメイトB:噂になってるよ。 勉強苦手なのは知ってたけど、そこまでとはね~
クラスメイトA:まあでも、毎年やってる救済措置らしいし。 真面目に受けとけば、なんとかなるんじゃないかな
杏:う……そうだといいなあ……
杏:一応、勉強できる友達に教えてもらってるから、 大丈夫だと思うんだけど……
クラスメイトA:あれ、そうだったんだ。 じゃあ私達の出番はなさそうだね
杏:え?
クラスメイトA:さっき、杏が困ってるなら みんなで勉強教えようよって他の友達とも話してたの
クラスメイトB:私達だって別に勉強得意じゃないけど、でもほら、 3人寄ればなんとかって言うでしょ!?
クラスメイトB:協力してくれるって言ってくれた子はいっぱいいたし、 たくさん集まったら、もうそれは集まる知恵も万倍だよきっと!
杏:みんな……
クラスメイトA:ま、だからさ。困ってることがあったらなんでも言ってよ。 協力するからさ
クラスメイトB:そうそう! 友達だしね!
杏:——うん! ありがとうふたりとも!
クラスメイトA:じゃあまたね。杏!
クラスメイトB:ばいばーい!
杏:……ふふっ
杏:(なんか、嬉しいなあ。 瑞希達だけじゃなくて、みんな当たり前に 協力するって言ってくれて……)
瑞希:ごめん、杏! 待たせちゃったよね。 お店、すっごく混んでてさ
杏:ううん、全然大丈夫! さっきまで友達と話してたから
瑞希:友達?
杏:うん。今ね、クラスの子と会ったんだ。 もう補習のこと知っててさ
杏:ちょっと恥ずかしかったけど…… ふたりとも応援してくれて、嬉しかったなあ
瑞希:へえ……。よかったじゃん!
瑞希:それにしても、杏って本当友達多いよね。 他のクラスの子とか、上級生とかともよく話してるの見かけるし
杏:そうかな? 別に普通だと思うけど
瑞希:いやいやー、生徒どころか 先生とか用務員さんとも結構話してるじゃん。 普通、そんな簡単にいろんな人と仲良くなれないって
瑞希:ボクも、結構誰とでも話せるほうだけどさ。 杏ほどじゃないし
杏:んー、そうなのかな。あんまり意識したことないけど……
杏:——あ、もしかしたら、 昔からビビッドストリートで歌ってたからかも
瑞希:え?
杏:私が育った街って、みんな音楽が大好きでさ。 私も、小さい頃からずっとあそこで歌ってたんだよね
杏:歌ってると、いろんな人が声をかけてくるから 自然とみんなと仲良くなれるっていうか……
杏:それに、もし喧嘩になっても 必ず最後は仲良くなれるんだよね
瑞希:そうなの? ていうか、喧嘩って……!?
杏:街で歌ってると、たまに喧嘩になったりするんだ
杏:街に来る若い人ってギラギラしてる人が多いから、 歌ってると因縁つけられることもあってさ
瑞希:へえ……。 物騒なところなんだね……
杏:あはは……。でも悪い人達じゃないよ? 音楽のことになると熱くなっちゃうってだけだし、 喧嘩っていっても、歌で勝負するのがほとんどだからね
杏:何度も歌で勝負してると その人の歌にかける情熱とか、プライドとかが見えてきて……
杏:最初はちょっと嫌なやつだなーって思っても、 歌に本気ってところは私と同じだなって 思えるようになってくるんだ
瑞希:そうなんだ……
杏:うん。そういう経験があるからかな。 どんな人でも、正面きって話せば 最後は仲良くなれたり認め合えるって思えるんだ
杏:だから、誰とでもすぐ話せて仲良くなれるのかなって
瑞希:…………そっか
瑞希:なんか、すごいなあ。杏ってそんな風に考えてたんだね
杏:別に、いつもこんなこと考えてるわけじゃないよ。 今考えてみて、そうだったのかもって思っただけだし
杏:それに、単に考えなしってだけな気もするしね
瑞希:あはは。そっか
瑞希:(けど……)
瑞希:(すごいな、杏は。……どんな相手とだって、 仲良くなったり認め合えるって思えるなんて)
瑞希:(きっと、だからあの時も——)
瑞希:(ふう……。やっとお昼か)
瑞希:(あーあ、午後の授業めんどくさ……。 お昼食べたらサボっちゃおっかなー)
???:——ねえ、暁山さん、だっけ
瑞希:え?
杏:私、白石杏。よろしくね! 杏って呼んでくれていいから
瑞希:え、あ……よろしく
杏:あ、もしかして、びっくりさせちゃったかな。ごめん!
杏:でも……せっかく同じクラスになったんだし、 仲良くしたいなって思って!
瑞希:……あははっ。 まあ、ちょっとびっくりしたけど大丈夫
瑞希:……ボクも瑞希でいいよ! よろしくね、杏
瑞希:(入学したばっかりの時、 みんなボクのことを遠巻きにしてたのに 杏は普通に話しかけてくれた)
瑞希:(それができたのは……)
瑞希:(どんな人でも認め合えるって思ってるから。 だから……誰とでも、あんな風に まっすぐに向き合っていけるんだろうな)
杏:——瑞希? どうかした?
瑞希:あ……ううん。なんでもない!
瑞希:——そろそろ行こっか! だんだん寒くなってきたし
杏:うん!
瑞希:っていうかアップルパイ! せっかく買ったのに冷めちゃうよ!
瑞希:ほら、杏も食べて食べて!
杏:あ、そうだった! いただきま~す!
杏:ん~っ! なにこれ、すっごい美味しい!
瑞希:疲れた頭には、やっぱり甘いものが一番だね~
杏:だね! 瑞希、買ってきてくれてありがと!
瑞希:どーいたしまして!
瑞希:そうだ! このアップルパイ、 メープルシロップとかシナモンとか 他にもいろんな味があったんだ!
瑞希:だから、また今度一緒に行こうよ!
杏:行く行く! いつにしよっか、あいてる日ある?
第 5 话:廊下の語らい
翌日 放課後
神山高校 空き教室
杏:『もののあはれは秋こそまされ……とひとごとにいふめれど……』
杏:えっと…… 物事の風情は秋が一番だって、みんなは言うけど……
杏:『それもさるものにて、今ひときは心も浮き立つものは——』
杏:それはそうだけど、より一層心がうきうきするのは——
瑞希:お! 杏、昨日よりだいぶ読めるようになってきてるじゃん
杏:うん。まあ…… 単語も活用も、教科書見ながらなんとかって感じだけどね
杏:昨日もお風呂に入りながら単語集見てたけど、 なかなか覚えられなくて大変だったよ
瑞希:そっかそっか~
瑞希:よ~し! そんながんばる杏のために、 ボクからとっておきのプレゼントを差し上げよ~う!
杏:え?
瑞希:——はい、これ!
杏:これって……ノート?
瑞希:うん! 昨日作ったんだ。 覚えたほうがいい単語とか、活用形のまとめとか、 いろいろ書いてあるから参考にしてよ
杏:え……わざわざ作ってきてくれたの!?
冬弥:これは……すごいな。 丁寧によくまとめられている
瑞希:でしょでしょ! もっと褒めていいからね!
彰人:たしかにすげえが……どういう風の吹き回しだ?
瑞希:む。失礼だなあ。 ボクだって、杏には留年してほしくないって思ってるんだよ
瑞希:杏、これで進級できるように、がんばってね!
杏:ありがと、瑞希! 大切に使わせてもらうね!
彰人:よし……! 解けたぞ——!
冬弥:いい調子だな、彰人
類:——みんな、少し休憩にしないかい? 適度な休憩は、集中力を高めるうえでも大事だからね
司:そうだな! ちょうどのども渇いたし、飲み物でも買いに行こう
瑞希:じゃあ、じゃんけんしようよ! 負けた人が、みんなの分も買い出しに行くってことで
杏:お、いいね! やろうやろう!
冬弥:俺も構わないが……しかし、 さすがにひとりでは大変だろう。 最後に残ったふたりが買い出しに行くというのはどうだ?
瑞希:オッケー!
彰人:——それじゃいくぞ
瑞希:じゃんけん……
杏:ぽん!
十数分後
杏:はあ~あ。負けちゃったか~
杏:しかもみんな、飲み物だけじゃなくて、 お菓子とかパンまでほしいって言うんだもん。 おかげで袋もパンパンだし
類:フフ、それくらいみんな疲れていたんだろうね。 そっちも持とうか?
杏:あっ、大丈夫です! 神代先輩にはもっと重いほう持ってもらってますから
杏:ていうか、先輩こそ大丈夫ですか?
類:問題ないよ。白石くんはこのあとも勉強で体力を使うからね。 無理はさせられないさ
杏:あはは、大袈裟ですね
杏:でも……本当、ありがとうございます
杏:荷物のことだけじゃなくて……勉強のことも。 すごくわかりやすく教えてくれて、とっても助かってます!
類:そんなお礼を言われるようなことじゃないさ。 僕自身、賑やかで楽しいよ
杏:本当ですか? よかった!
類:それに……瑞希も楽しんでるみたいだしね。 まさか白石くんのためにノートを作ってくるとは思わなかったな
杏:あ、私もびっくりしました! そこまでやってくれるなんて思わなかったから!
杏:昨日も勉強つきあってくれてありがとうって お礼言ったら、楽しんでるしいいよって言ってくれて
類:……そうか
類:よかったね
杏:あ、そういえば……神代先輩と瑞希って同じ中学なんでしたっけ
杏:ふたりって、その時から仲よかったんですか?
類:そうだね……。たまに会って、話す仲ではあったかな
類:けれど瑞希は……
類:今のほうが楽しそうに見えるよ
類:勉強会も、本気で楽しんでいるようだしね
杏:そうなんですね。 私から見ると、いつもの瑞希って感じなんですけど
類:フフ。きっと、 いい刺激を与えてくれる人達に出会えたんだと思う
類:僕は、白石くんもそのひとりだと思っているよ
杏:え?
類:白石くんのような友達がいることが、 瑞希にとって助けになってるのかもしれないと思ったんだ
杏:私が……
杏:うーん、でもやっぱり、私はなんにもしてないですよ
杏:だって、私は瑞希と一緒にいるのが楽しくて 友達になっただけですから!
杏:だから助けとか、あんまり意識したことないですし。 あ、でも……
杏:もしも瑞希が、私と友達になれてよかったって 思ってくれてるなら……私もすっごく嬉しいって思います!
類:……そうか
杏:たっだいまー! 飲み物とお菓子とかの食べ物、買って来たよ~!
瑞希:もう遅いよふたりとも~! ボク、お腹ペコペコになっちゃった
杏:ごめんごめん! でも、頼まれてたフライドポテトもちゃんと買ってきたよ!
瑞希:おお~! 待ってました!
彰人:オレのチーズケーキは?
杏:はいはい。これでよかったっけ
彰人:ん、サンキュ
類:司くん達も待たせたね。 食べ物は白石くん、飲み物は僕の袋に入っているよ
司:うむ! 礼を言うぞ類、白石!
司:っと、このコーヒーは冬弥の分だったな。 熱いから気をつけるんだぞ
冬弥:ありがとうございます。司先輩
類:——はい。白石くんの分のオレンジジュースだよ
類:しっかり食べて、このあとの勉強も頑張ろう
杏:はい!
第 6 话:待ち受ける試験
翌日
神山高校 空き教室
杏:神代先輩! 昨日教えてくれた語呂合わせ、 ありがとうございました! おかげで元素、ちゃんと覚えられたと思います!
類:そうか。 それじゃあ、さっそく元素を書き出してみよう
杏:はい! えっと……あれ?
杏:どうしよう。語呂合わせだけ覚えて、中身覚えてなかった!
司:彰人、今やっているのは確率の問題か?
彰人:なんすか……。人のノート勝手にのぞき込んで……
司:フッフッフ。その単元ならオレも得意だぞ! せっかくだし教えてやろう
彰人:いや、なんも言ってねえっつうか、 今は困ってないんで
司:いやいや遠慮するな! 解きかたのコツとしてはだな——
彰人:人の話聞いてねえし。 ……はあ、しょうがねえから教えられてやるか
さらに翌日
類:学校の勉強において、暗記は必要なことではあるけれど…… ただ教科書を睨みつけていても効率は悪い
類:——そこで、この装置の出番だ
彰人:まあ……さっきから目には入ってたんですが…… なんなんすか、それ
類:フフ。これはね、自作の瞬間記憶装置だよ。 五感を激しく刺激し、 覚えたいものを瞬時に記憶することができるんだ
類:まだ実験段階ではあるけれど、安全性は保証するよ。 どうだい。試してみないかい、東雲くん
彰人:誰が使うか、そんな得体の知れねえもん
杏:わ、私……ちょっと興味あるかも……。 それで、このわけわかんない化学式が全部頭に入るなら……
司:お、落ち着け白石。 地道にやるのが一番の近道だぞ……!
杏:つっかれた~。 ちょっと休憩っと
寧々:あ……あの
杏:あれ、草薙さん? まだ残ってたんだ。どうしたの?
寧々:えっと……類と司から聞いたんだけど 勉強会やってるんだよね
寧々:これ、差し入れ。 駅前のお店で買ってきたチョコなんだけど…… よかったらみんなで食べて
杏:え!? いいの?
寧々:うん。司達も頑張ってるみたいだし…… チョコって、疲れた時にいいって聞くし
杏:ありがと~! ほんと助かる!
寧々:うん……。勉強、頑張ってね
補習最終日
冬弥:全員、そろったみたいだな
杏:うん。……とうとう、この日が来たね
類:——泣いても笑っても、今日が本番だ。 すべては、このテストに合格できるかにかかっている
杏:…………
類:覚悟はできているかい?
彰人:……はっ、当たり前だ
彰人:この日のためにどれだけ準備してきたと思ってるんだ。 今更泣き言は言わねえ
杏:……うん。そうだね。私も大丈夫。 それに……
杏:……これで落ちたりしたら、ここまで助けてくれた みんなに顔向けできないもん
杏:——全力を尽くすよ
瑞希:あはは。一応ボクも、このテストは気合い入れてやらないとね。 ちゃんと進級したいし
司:うむ! では……このテスト、皆で合格し……
杏:——絶対、一緒に進級しよう!
杏:それじゃ……いってきます!
類:ああ。頑張ってきてくれ、みんな
冬弥:……大丈夫でしょうか
類:……心配はいらないと思うよ
類:青柳くんも見ていたとおり、 みんな毎日真剣に勉強していた
類:今の彼らなら、きっとどんな壁でも乗り越えられる。 だから……信じて待とう
冬弥:——はい
先生:全員、テスト用紙は受け取ったな?
先生:科目数は人によって異なるだろうから、 終わり次第こちらにテストを提出してもらう
先生:提出されたテストはその場で採点を行う。 合否についても、そこで知らせる
先生:この1週間の成果を出せるよう、精一杯取り組むように
先生:では……始め!
杏:…………
杏:(……やった! これで化学はおしまい。 引っかかる問題も、ほとんどなかった……)
杏:(でも、次は古典——しっかり集中してやらなきゃ)
杏:(……うん。いい調子。 わかんない問題も今のところない……)
杏:(大問はふたつ……。最初は漢文……)
杏:(漢文は大丈夫。もともとそんなに苦手じゃないから、 なんとか読める……)
杏:(でも、次は……一番の課題だった古文だ……)
杏:(問題文は……)
杏:(——え!? これって……)
杏:(『をりふしの移りかはるこそ、ものごとにあはれなれ』)
杏:(『もののあはれは秋こそまされとひとごとにいふめれど、 それもさるものにて、今ひときは心も浮き立つものは、 春のけしきにこそあめれ』……)
杏:(補習の最初の日に解いて、 みんなと一緒に読み込んだやつだ……!)
杏:(——よし、これなら……!)
杏:あ! みんなで1日中歌の練習して、 疲れたー!って空を見た時とかに すごく綺麗だなあって思ったりはするかも!
司:おお! それならオレもわかるぞ! 体力を限界まで使ったあとに見る空は、 とても高く澄んで見えるものだな
杏:それ! すっごくわかります!
類:フフ、そのしみじみとした、味わい深い気持ちが、 『あはれ』の気持ちに近いだろうね
杏:(……うん)
杏:(——季節が移り変わるのは、 みんなそれぞれにしみじみとした趣がある)
杏:(物事の風情は秋が一番だってみんなは言うけど…… より一層心が浮き立つのは……春の景色)
杏:(鳥の声も春めいて、のどかな日の光…… 垣根の草も芽を出す頃から——)
杏:(……読める)
杏:(ちゃんと文の意味が、頭に浮かんでくる……)
杏:(もう呪文みたいな言葉じゃない。 文に込められた想いが、私にもちゃんと伝わってくる——!)
杏:(感じるよ……。これを書いた人の想い。 景色を思い浮かべて、寂しくて、綺麗で、 胸いっぱいになるような……もののあはれを感じる気持ち……)
杏:(……みんなのおかげだ。瑞希、神代先輩、冬弥…… それに、一緒に勉強を頑張った彰人と天馬先輩)
杏:(ううん、それだけじゃない。 他にもたくさんの友達が、私を応援してくれてた)
杏:(みんなの応援が、優しい想いが…… 私に力をくれる……)
杏:(今なら、解ける……! この問題、全部——!)
彰人:(杏のヤツ、すげえ集中力だ……)
彰人:(オレも負けてられねえな。 そうだろ——)
彰人:(あいつらが信じて、送り出してくれたんだ。 情けねえ姿見せられるかよ……!)
杏:っ……!
杏:(あれ……これで終わり……?)
杏:(集中してたせいかな……。 なんか……あっという間だった……)
杏:(って、そうだ。見直し、ちゃんとやらないと……)
杏:(大丈夫……。ちゃんと解けてる。 解答欄のずれもない)
杏:(うん……きっと、これなら……)
杏:(——ありがとう、みんな。 私、みんなのおかげで……)
第 7 话:試験の結果は……
神山高校
類:そろそろ瑞希と司くんは戻ってくる頃かな……
冬弥:そうですね……彰人と白石は2科目あるので もう少しかかると思いますが……
瑞希:はー、疲れた~
瑞希:って、ふたりとも、待っててくれたんだ
類:お疲れさま、瑞希。どうだった?
瑞希:当然、バッチリ合格だよ!
冬弥:そうか。よかったな
瑞希:ありがと! 司先輩も、そろそろ戻ってくるんじゃない?
冬弥:ああ。そうだと思うが……
司:おお! 待たせたようだな、3人とも!
類:司くん。結果は……いや、聞くまでもないようだね
司:ああ! 当然、合格したとも!
冬弥:おめでとうございます、司先輩!
瑞希:やったね! これで来年も、ちゃ~んと先輩って呼べるね
司:う、うむ……。それを考えると、今さらながら恐ろしくなるな。 危ないところだった……
司:改めて……世話になったな、類。 無事進級できるのはお前のおかげだ
類:フフ、お礼を言われるほどのことじゃないよ。 来年も、司くんとは同級生でいたいからね
瑞希:それじゃあ、あとは弟くんと杏だね
司:ああ。頑張れ! ふたりとも!
数十分後
冬弥:彰人……白石……
瑞希:あはは……。そんな不安そうにしなくても大丈夫だって。 教室出る時チラっと見たけど、ふたりとも集中して解いてたし
冬弥:そうか……。それならいいが……
???:……ようやく終わった……
???:疲れたねー
冬弥:彰人、白石……!
彰人:悪い。待たせたみたいだな
冬弥:それは構わないが…………どうだった?
彰人:オレは…………
彰人:まあ、何個か間違えたが、なんとかなった
冬弥:そうか……!
司:よかったではないか彰人!
彰人:あ……まあ、はい。ありがとうございます
瑞希:——で、で? 杏はどうだったの?
杏:私は……
杏:バッチリ! 合格!
杏:しかもこれ見て……! 古典は満点だったんだ!
瑞希:ホント!? すごいじゃん!
杏:うん! 先生にも褒められて花丸もらっちゃった!
彰人:へえ、やるじゃねえか
冬弥:頑張ったな、白石
類:おめでとう、白石くん
杏:はい……! みんな、本当にありがとう!
瑞希:これでみんな無事合格だね。よかった~!
彰人:ああ。……だけどこのテスト……
彰人:合格するまで何度でもやり直せたみたいだぞ
杏:え! なにそれほんと!? 1回勝負じゃなかったの?
彰人:ああ。さっき不合格くらったのがいたんだが…… 席に戻されて、もう1回テスト受けさせられてた
杏:嘘でしょ!? じゃあ、あんなに頑張って勉強する必要なかったってこと?
彰人:いや、ある程度勉強してないと、 何回やってても解けねえもんは解けねえだろ
類:そうだね。それに……きっと先生方も、 あえて黙っていたんだろう
類:何度でも再挑戦できるとなれば、 手を抜く生徒も出てくるだろうからね
杏:あ……そっか
杏:うん……でも、それでよかったかも
瑞希:え?
杏:なんていうか、テストを受けてた時、思ったんだ
杏:今日まで、みんなと一緒に勉強を頑張って、 本当によかったなって
冬弥:白石……
杏:みんなにたくさん教えてもらって、一緒に頑張って、 最初は全然わからなかった問題も解けるようになって……
杏:みんなの想いとか、優しさが、 いっぱい私を助けてくれたんだなって実感できたから
杏:そういうの、すごく嬉しいなって思って!
杏:それに……私、問題が解けて嬉しかったんだ。 ずっと読めなかった古文の問題も、ちゃんと読めて……
杏:そうしたら、それを書いた人の想いみたいなのも 感じられて……楽しかった
杏:勉強って、難しくていやだなあって 思うことのほうが多かったけど、 でもそれだけじゃないのかもって思えたんだ
彰人:たしかにな。 オレもずっとわからなかった数学の問題が解けた時…… やりきった手応えみたいなのを感じた
司:うむ! オレも苦手だった物理が 以前より好きになれたと感じたぞ!
杏:私も、まだすっごく楽しいって思えてるわけじゃないけど……
杏:でも、ほんとに頑張ってよかったな!
類:白石くん……
杏:教えてくれたみんなだけじゃなくて、 一緒に頑張ってくれたみんなも……
杏:本当に……ありがとう!
第 8 话:変わらない仲間と
数日後 終業式
神山高校 体育館
校長先生:えー、皆さんこんにちは。 本日は、お日柄もよく——
校長先生:——こうして終業式を無事に迎えることができたのは、 皆さんの日々の節度ある行動がゆえではありますが、 しかし新学期へ向けて一層安全には気を引き締めていただき——
瑞希:ふわあ……
杏:もう、瑞希。もうちょっと抑えなって
瑞希:だってさー、校長先生の話って長くて眠くなんない?
杏:あー、まあ、気持ちはわかるけど
杏:でも……ちょっとしみじみしちゃわない? これで1年生も終わりって思うとさ
瑞希:んー……まあ、そうかも?
杏:もー、全然思ってないでしょ
校長先生:——ということで……皆さんには、この機会に、 より心身の成長につなげていただけるよう 1年を振り返っていただきたいと思っています
杏:あ……
杏:(1年を振り返って、か……)
杏:(たしかに、本当にいろんなことがあったな……)
杏:(ずっと、相棒を探してた。 RAD WEEKENDを一緒に超えようって思える相手を——)
杏:(なかなか見つからなかったけど……)
杏:(すっごくドキドキできる最高の相棒に出会えて……)
杏:(ミク達にも出会って……冬弥と彰人とも、 ぶつかることはあったけど……最高の仲間になれた)
杏:(それに——)
杏:(今は、凪さんの想いもちゃんと知ってる)
杏:(……RAD WEEKENDを超える。 この想いは、前よりずっと強くなってる)
杏:(だから……これから先も、みんなと一緒に進んでいこう……!)
数時間後
1年A組
瑞希:ふー、終わった終わった。 午前中で終わりだと、なんかお得感あるよね
杏:あはは。たしかにね
杏:けど……これでこの教室に来るのも最後かあ
瑞希:あ、そっか。 そう考えると、ちょっと寂しい気もするね~
瑞希:けど、よかったじゃん! そう思えるのって、ちゃんと進級できるからだし!
杏:も、もう! それは言わなくていいでしょ
瑞希:あはは! けど……
瑞希:ありがとね、杏
杏:え?
瑞希:杏と同じクラスになれて楽しかったからさ!
瑞希:次は同じクラスになれるかわかんないし、 一応言っておこうと思って
杏:あ……
杏:私も、楽しかったよ! でも……
杏:別にクラスが違ったって、何も変わらないでしょ? だって、私達これからも友達だし
杏:2年生になってもよろしくね、瑞希!
瑞希:……そうだね
瑞希:よろしく、杏!
瑞希:そうだ。このあと、一緒にご飯食べに行かない?
瑞希:ちょっと遅くなっちゃったけど、 補習お疲れさま会ってことで、類達にも声かけてるんだよね
瑞希:いろいろ忙しいとは思うけど、お昼食べるついでにさ
杏:あ……どうしよ。 行きたいけど、練習もあるし——
杏:——うん。やっぱり、行こうかな
瑞希:え、大丈夫なの?
杏:うん。練習があるから 途中抜けするかもだけど……それでもいいなら
瑞希:やった~! 全然OKだよ♪
瑞希:それじゃあ、校門のところで待ち合わせしてるから 帰りの支度終わったら、一緒に行こ!
杏:うん!
校門
クラスメイトA:それじゃあまたね、杏、暁山さん!
クラスメイトB:2年生になってもよろしくね~!
杏:うん! バイバイ! ふたりとも!
瑞希:類達は……お、いたいた。 校門の前のところ、集まってるね
瑞希:ボク達が最後かな。ちょっと急ごっか
杏:あ……うん!
杏:あ……
杏:(風……。それに葉っぱの匂い……)
杏:(こうやって、どんどん季節も変わってくんだ……)
杏:(学年もあがって、 これからもいろんなことがあると思うけど……)
杏:(——大丈夫。私には、たくさん仲間がついてる)
杏:(一緒に夢を追う仲間と、それに——)
瑞希:おーい、杏! 早く早く!
杏:(——学校にいるたくさんの仲間も)
杏:(みんなを大切にして……)
杏:(これからも、目標に向かって進んでいこう)
杏:——今行く!