活动剧情

Stick to your faith

活动ID:110

第 1 话:『目指す音楽』

ソリス・レコード事務所
真堂:——皆さん、お待たせしてしまいすみません
咲希:あ、真堂さん!
穂波:いえ、むしろ今日は わたし達のために時間を作っていただいて、 ありがとうございます
志歩:……前に言っていた 私達のデビューに向けての話をするんですよね?
真堂:ええ。そのためにいろいろ考えてきたんですが…… まずはこの資料を見てもらいましょうか
一歌:これって……
真堂:その資料には、うちでデビューしたバンドや、 今売れているアーティスト達の市場戦略がまとめてあります
志歩:ファーストシングルのダウンロード数…… それにその購入者の年齢層まで……。 こんなの、私達に見せて大丈夫なんですか?
真堂:もちろん、ここだけのものですよ。 誰かに見せびらかしたりはしないでくださいね
咲希:わ……わかりました!
真堂:今日はこれを見たうえで、 皆さんの売り出しかたについてお話したいと思っています
志歩:私達の売り出しかた、ですか
真堂:はい。突然ですが、ひとつ質問をさせてください。 皆さんの……『目指す音楽』とは、なんですか?
一歌:目指す、音楽……
真堂:皆さんがこれから先、何を目的に音楽をやっていきたいのか、 その音楽を、誰に届けたいのか——
真堂:皆さんの売り出しかたを決めるためには、 それをはっきりさせることが非常に重要です
真堂:例えば…… 資料の最初のページを見てください
一歌:あ、この人……よく配信でミクの歌を歌ってる人だ
真堂:ええ。その方は 『ファンと共に楽しむ音楽』を軸に活動しています
真堂:そのため、ネットでの配信を積極的に行い、 リクエストに応えながら歌を歌ったり ファンとの交流を第一に考えて活動しているようです
真堂:おかげで、サブスクやグッズからの収入だけではなく、 再生数などでも大きな利益を出しています
志歩:……そうなんですね
咲希:あ、みんなこっちのページ見て!
穂波:このバンド、高校生の頃に『スクールバンドフェス』って 番組で優勝して、そこからずっと活躍してるみたい
真堂:彼女達は『自分達のバンドとしての実力を証明する』ことを 目指して活動しているようです
真堂:なので、デビューしたての頃から オーディション形式の音楽番組に積極的に出演し そこで勝ち抜くことで、人気と知名度を手に入れたんです
真堂:その結果、実力派のバンドとして根強いファンがつき、 ライブでの動員数も拡大しました
一歌:さっきの人とは、全然違うね……
真堂:ええ。今例に挙げたように、アーティストの目標によって、 その活動の仕方、売り出しかたは変わります
真堂:皆さんの場合も、目標を踏まえたうえで ベストな方法を決めていきたいと思っているんです
真堂:というわけで、改めて聞かせてください。 皆さんがこれからプロとして、何を目的に活動していきたいのか
真堂:すなわち——Leo/need4人の、目指す音楽を
一歌:……は、はい
志歩:私達が目指しているのは……
志歩:私達の音楽を、聴いてくれる人達の心に響かせることです
真堂:……なるほど
真堂:そうでしょうね。 実際、俺も皆さんのそんな演奏に魅せられたひとりです
咲希:真堂さん……
真堂:——ですが俺は、皆さんの中にある考えを もっと深く知りたいと思っています
穂波:え?
真堂:今までLeo/needの皆さんが、 活動をする中で感じたこと、願ったこと……
真堂:音楽を心に響かせたい……それだけではない、 皆さんが音楽で目指したいことが他にもあるんじゃないかと
一歌:あ……
真堂:もし、それがあるならば聞かせてほしいんです。 皆さんの目標を定めるためにも、 持っている考えはすべて吐き出してしまったほうがいいですからね
一歌:心に響かせる、だけじゃない……
志歩:(……他にも、何か……)
真堂:……そうですね。4人の、ということでは難しいなら、 それぞれの考えではどうでしょう
穂波:それぞれ?
真堂:はい。Leo/needとしてではなく、 個人個人で考えていることを気軽に話してみてほしいんです
咲希:それなら、アタシ——!
咲希:アタシは……音楽で、 聴いてくれる人を元気にできたらいいなって思います
真堂:元気に、ですか?
咲希:はい……。前に朔さん……anemoneとのライブで 『寂しさに寄り添う曲を作ろう』 って思ったことがあったんですけど……
咲希:あの時、昔の自分のことを思い出しながら曲を作って…… それがお客さんに届いて、本当に嬉しかったんです
真堂:…………
咲希:だから、寂しいとかつらいなって思ってる人に 少しでも寄り添えるような…… 曲を聴いて、少しでも元気になってもらえるような——
咲希:そんな音楽を届けたいって思います
真堂:……たしかにあの時——anemoneと対バンした時の曲には、 そういう想いが感じられましたね
真堂:他の方は、どうでしょうか?
一歌:あの……私は……
一歌:私は——音楽で、歌で みんなをつなげていきたいって思います
志歩:一歌……
一歌:初めはただ、 聴いてくれる人の心に響かせたいと思って演奏してました。 でも今は、それだけじゃなくて……
一歌:ミクの歌が私達をつないでくれたみたいに、 私も誰かと誰かがつながるきっかけになる音楽を やっていきたいって思うんです
真堂:……なるほど
志歩:(……咲希も一歌も、音楽で何をしていきたいのか、 ちゃんと自分の考えを持ってる)
志歩:(私は、どうだろう)
志歩:(心に響く演奏がしたい、それだけじゃなくて 他に何か——)
真堂:望月さんと、日野森さんはどうでしょうか
穂波:わたしは……
穂波:一歌ちゃんや咲希ちゃんの言ってることは、よくわかります
穂波:苦しんでる人に寄り添いたい。誰かと誰かをつなげていきたい……
穂波:どっちも、よくわかるんです。 だけど……ふたりみたいに、 ちゃんと自分の言葉で言えるかって言われたら違う気がして……
志歩:……すみません。私も、まだはっきりとは
真堂:なるほど。……ではやはり、 少し考える時間が必要そうですね
穂波:あ……ごめんなさい
真堂:いえ、大丈夫ですよ。 俺も、今日1日で答えが出るとは思っていませんから
真堂:むしろこれは、じっくりと時間をかけて決めるべきことです。 バンドの一生に関わることですからね
真堂:だから焦らず、時間をかけて考えましょう。 もちろん、俺も皆さんが答えを出せるよう、お手伝いします
穂波:は、はい……! ありがとうございます
真堂:また今度、話し合う時間を設けます。 それまでにもう一度、考えてみてください
真堂:そのうえで、これまでに挙げていただいたような考えに 行きつくのであれば、それはそれで構いません
真堂:皆さんの考えをすり合わせて、Leo/needとして、 4人が目指す音楽を見つけていきましょう
志歩:……わかりました
真堂:それじゃ、この話題はここまでにして……
真堂:次の話ですがデビューまでの 大まかな段取りについてまとめてきたので、確認してください
咲希:あ! 宣材写真の撮影……それにデビューシングル発売だって!
咲希:わ~、楽しみだな~!
真堂:はは。それでは、順番に見ていきましょうか。 まずは——

第 2 话:それぞれの目指すもの

教室のセカイ
リン:あ、みんな~! やっほ~☆
穂波:こんにちは、リンちゃん
咲希:ねえねえ、みんな! 聞いて聞いて! 今日ね、事務所に行って 真堂さんといろいろ話してきたんだ!
ルカ:真堂さんと? どんな話をしたのかしら
MEIKO:よかったら、聞かせてほしいな
一歌:うん。えっと、最初に デビューに向けての売り出しかたの話をしたんだけど——
リン:『目指す音楽』……?
志歩:うん。Leo/needの売り出しかたを 決めるために必要だって言われて
レン:なるほど……。 たしかに、言ってることはわかるな
ミク:でも……改めて聞かれると、ちょっと難しいね
志歩:……そうだね
志歩:私も、真堂さんから聞かれた時 はっきり答えられなかった
穂波:わたしも……。 ちゃんと、こうだって気持ちを見つけられなかったな……
一歌:志歩、穂波……
志歩:ごめん。ふたりには迷惑かけるね
一歌:あ……ううん。私は、最近たまたま そういうことを考える機会があっただけだから
咲希:そうそう! それに、真堂さんもちゃんと考えて 決めたほうがいいって言ってたし、 焦らなくてもきっと大丈夫だよ!
志歩:ありがとう、咲希
志歩:今日帰ったら、ちょっとひとりで考えてみるよ
穂波:……わたしも。 少し時間がかかっちゃうかもしれないけど…… 次に真堂さんに会うまでにはちゃんと答えを出すね
咲希:わかった! ふたりが答えを見つけるまで、待ってるね!
一歌:だけど、困ったらいつでも言ってね。 話を聞いたり、なんでも相談に乗るから
リン:あ、あたしもあたしも! 一緒に考えたり、できることはなんでもするよ!
穂波:ありがとう、みんな
ミク:それで? 事務所では、他にどんな話をしたの?
咲希:あ、えっとね。 デビューまでにやるいろんなことを話したんだけど——
志歩の部屋
雫:しぃちゃん、お風呂わいたそうよ
志歩:先入っていいよ。練習で汗かいてるでしょ
雫:そう? じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわね
志歩:うん
真堂:皆さんの……『目指す音楽』とは、なんですか?
志歩:(私の目指す音楽、か……)
志歩:(一歌や咲希の言うことはわかる。 あの時……)
穂波:なんだか、咲希ちゃんに励まされてるみたい
一歌:うん……聞こえてくるみたいだね
一歌:『ひとりじゃない、私達がいるよ』って
志歩:(音楽で、聴く人の心に寄り添えたり、 吉崎さん達を応援できて嬉しかった)
志歩:(だけど、それが私の目指す 一番のことかって言われたら……やっぱり違う)
志歩:(だって、私がベースをやろうと思ったのは——)
志歩:あの人達の演奏を聴くと――心が、ぐっと揺さぶられるんだ
志歩:叫びたくなったり、泣きたくなったり…… いてもたってもいられないくらい、どうしようもなく
一歌:へえ……
志歩:私も、あの人達みたいに 誰かの心を動かせる演奏をしたい
志歩:だから、もっとうまくなって…… プロになって、いろいろな人に 聴いてもらいたいって思ってる
志歩:私の演奏で誰かの心を揺さぶれたら……って
志歩:(あの想いは、ずっと変わってない……。 あの時聴いた音楽。あの人達の音が、私の中に今も響いてる)
志歩:(だからこれ以上、他に何かって言われても……)
志歩:(考えすぎて、少し疲れてきたな)
志歩:(気分転換しよう。 何か動画でも……)
志歩:あ、これ……。 あの人達の新曲?
志歩:そっか。もうリリースされたんだ
志歩:(……やっぱり、いいな)
志歩:(聴いてると、いつも心を揺さぶられる。 全身が熱くなって、今すぐ演奏したくなる……)
リン:『しほっち~!』
志歩:……リン?
志歩:どうしたの。こんな時間に
リン:『えっとねー、しほっちの様子が気になって見に来たんだ! ひとりで考えたいって言ってたけど、 どうしても気になっちゃって』
リン:『あ、迷惑だったらごめんね!』
志歩:大丈夫。私も少し、考えすぎて疲れてたところだったから
リン:『そっか~、よかったぁ☆』
リン:『って、あれ? 何か動画見てたの?』
志歩:うん。好きなバンドが新曲のMVをアップしてたんだ
リン:ああ~! この人達の曲、前にも聴かせてくれたよね! たしか、しほっちが憧れてるバンドなんだっけ?
志歩:うん。私がベースを始めたのも、 音楽で聴く人の心を震わせたいって思ったのも、 全部、この人達のライブを見たのがきっかけなんだ
リン:『そうなんだ……』
リン:『ねえねえしほっち! その時の話、聞かせて欲しいな☆』
志歩:え?
リン:『だって~、しほっちがベースを始める きっかけになったことなんでしょ?』
リン:『なら、その時のことが、しほっちの目指す音楽にも つながってるんじゃないかなあって思って!』
志歩:……たしかに、リンの言うとおりかもね
リン:『でしょでしょ~! それに、子供の頃のしほっちがどんなだったか、 めちゃ興味あるし!』
志歩:それはどうでもいいでしょ
志歩:じゃあ……どこから話そうかな
志歩:私の父さん、ミュージシャンなんだ。 それで子供の頃はよく、父さんに連れられて いろんなバンドのライブに行ってたんだけど……
志歩:その時——あのバンドに出会ったんだ

第 3 话:納得できるまで

数年前
小学校 教室
教師:それでは皆さん、ここにあるお手本の中から 好きな字を書いてくださいね
教師:中にはまだ習ってない難しい漢字もありますが…… 挑戦してみたい人はぜひ選んでみてください
小学生の志歩:(……難しい漢字か。 せっかくだし、やってみようかな)
小学生の志歩:(やるなら、納得いくものを書きたい)
小学生の志歩:(——ここで、止めて…… ここで払う……)
小学生の志歩:(……あ! 最後のとこ、墨がかすれちゃった……)
小学生の志歩:(もう1回……初めから……!)
教師:あら、日野森さんは『響』の字を選んだのね
小学生の志歩:……はい
教師:たしか、習い事で書道をやってるんだったかしら。 本当、上手に書けてるわ
小学生の志歩:別に……そんなことないです。 これも書き直しますし
教師:え! そうなの……? よく書けてると思うけど……
小学生の志歩:払うところの墨がかすれてるし、 それに、バランスも不自然だから
教師:あら、そうなの……。 ふふ、日野森さんは努力家なのね
教師:それじゃあ、頑張ってね
小学生の志歩:……はい
教師:はーい、それじゃあ授業はここまで。 みんな、こっちの机に できあがった作品を置いていってください
小学生の志歩:(もう、授業終わりか)
小学生の志歩:(たくさん書いたけど、こんなのじゃ……)
小学生の志歩:——先生、ちょっといいですか
教師:あら、何かしら?
小学生の志歩:今日の習字の作品、提出するの もう少し待ってもらうことってできますか
小学生の志歩:……納得できるまで、やりたくて
教師:それは、できなくはないけど……
小学生の志歩:じゃあ、お願いします……!
教師:……わかったわ。それじゃあ、 金曜までに先生のところに持ってきてくれれば大丈夫よ
教師:他のみんなにも、提出は金曜までって伝えておくわね
小学生の志歩:……ありがとうございます……!
数日後
休み時間
小学生の志歩:(習字の期限、今日までなのに……)
小学生の志歩:(まだ、全然納得できない……。 放課後も残ってやっていかないと)
小学生の志歩:(あ、でも……今日は——)
クラスメイトA:——ねえねえ、今日の約束、覚えてる!?
クラスメイトB:もーわかってるって。 あんたの誕生日会でしょ?
クラスメイトB:クラスの女子ほとんど呼ぶなんて、すごいよね
クラスメイトA:え~いいでしょ? お母さんがお友達たくさん 呼んでいいよって言ったんだから!
小学生の志歩:——ねえ、ちょっといい?
クラスメイトA:あれ、志歩ちゃん? どうしたの?
小学生の志歩:今話してた、誕生日会のことなんだけど……
小学生の志歩:私、今日はやりたいことがあって。 だから……ごめん。行けない
クラスメイトA:え……そうなの? やりたいことって?
小学生の志歩:前に先生が言ってた習字の課題、今日までなんだ。 だけどまだ、納得できるものが書けてなくて。 どうしてもやりきりたいの
クラスメイトA:そうなんだ……
小学生の志歩:約束してたのに、本当にごめん
クラスメイトA:あ……ううん! 大丈夫、気にしないで!
小学生の志歩:……ありがとう。 誕生日会、楽しんでね
放課後
小学生の志歩:(ここで、止めて……払う……)
小学生の志歩:(うん……。いい感じ)
小学生の志歩:(でも、字がちょっと左に寄ってるな。 次はもう少し余白が同じくらいになるように 文字の大きさを意識して……)
小学生の志歩:(先生、5時までは職員室にいるって言ってたっけ。 それまでに終わらせないと)
クラスメイトAの声:誕生日会、楽しみだな~
小学生の志歩:……!
小学生の志歩:(廊下から……? みんな、まだ残ってたんだ)
クラスメイトCの声:今日って何人くらい集まるんだっけ。 クラスの女子ほとんどに声かけてたよね
クラスメイトAの声:えっと、15人くらいかなあ。 あ、でも志歩ちゃんは習字の課題で来れないって言ってたし、 ひとり減るね
クラスメイトCの声:え、まだやってたんだ? わたし、けっこう適当に書いて出しちゃった
クラスメイトBの声:まあ、日野森さん書道習ってるし、 頑張っていいものにしたいんだよ
クラスメイトCの声:……そっか。 でも、前から約束してたんだから、 こっちを優先してくれたってよかったのにね
クラスメイトAの声:うん……。 でも、どうしてもって言うなら仕方ないよね……
小学生の志歩:(あ……)
小学生の志歩:(……私……)
クラスメイトCの声:——って、もうこんな時間! 早く行こ! 他の子も校門のところで待ってるんでしょ?
クラスメイトAの声:そうだね。行こっか!
小学生の志歩:…………
小学生の志歩:……やらないと

第 4 话:正しい選択

宮益坂
小学生の志歩:………
クラスメイトCの声:……そっか。 でも、前から約束してたんだから、 こっちを優先してくれたってよかったのにね
クラスメイトAの声:うん……。 でも、どうしてもって言うなら仕方ないよね……
小学生の志歩:(やっぱり、行ったほうがよかったかな……)
小学生の志歩:(でも、それじゃあ……習字は終わらなかったし……)
父親:——志歩か?
小学生の志歩:あ……父さん。 仕事の帰り?
父親:ああ。今度、俺が面倒を見てるバンドのライブがあって、 その打ち合わせをしていたんだ
父親:志歩は……学校の帰りか? それにしては、少し遅いな
小学生の志歩:今日は習字をやってたから
父親:習字?
小学生の志歩:うん。授業で、習字の作品を出すことになってて。 今日がその提出日だったから、残ってやってたんだ
父親:なるほど……。 それで、満足いく字は書けたのか?
小学生の志歩:それは……
小学生の志歩:……一応、今までで一番いいのはできたと思う
父親:そうか
父親:……だが、それにしては浮かない顔だな
小学生の志歩:え……。それは……
父親:……抱えていることがあるなら、話してみるといい
父親:きっと、それだけで楽になることもある
小学生の志歩:うん……
小学生の志歩:……今日、本当はクラスの子の誕生日会があったんだ。 だけど、どうしても習字をやりたくて……断ったの
小学生の志歩:それで、クラスの子には、いやな思いをさせちゃった
父親:…………
小学生の志歩:中途半端なまま習字を終わらせてたら、 きっとすごく後悔してたと思う
小学生の志歩:だけど、だからってみんなに いやな思いをさせたかったわけじゃなくて……
小学生の志歩:やっぱり、誕生日会に行ったほうがよかったのかなって…… ずっと考えてたんだ
父親:……なるほど。たしかに難しい問題だな
父親:だが、少なくとも今日は 残って習字をやったことで 今までで一番いいものが書けたんだろう
父親:なら、それは胸を張っていいことだと俺は思う
小学生の志歩:そう……なのかな
父親:ああ。 けれど……お前が悩んでいることもわかる
父親:自分のやりたいという想いも大事だが、 周りの気持ちを考えることも大切なことだ
小学生の志歩:……そうだよね
小学生の志歩:(どうすればよかったのかな)
小学生の志歩:(ちゃんと誕生日会に間に合うように習字もできてたら、 一番よかったとは思うけど……)
父親:…………
父親:——志歩。今度またふたりでライブに行かないか
小学生の志歩:え? いいけど……なんで急に?
父親:お前に会わせたい人達がいるんだ
父親:彼女達の音楽を聴けば、これからどうするべきか、 そのヒントが得られるかもしれない
小学生の志歩:ヒントが……
父親:ああ。……どうだ?
小学生の志歩:うん……。 わかった
数日後
ライブハウス
小学生の志歩:(ライブハウス……。 いつ来ても、なんだかドキドキするな)
小学生の志歩:(暗いのもあるけど……でも、それだけじゃなくて……)
小学生の志歩:(ときどき聞こえてくる楽器の音とか、 薄暗い会場の雰囲気とか、そういうの全部……)
小学生の志歩:(体が熱くなる……。なんだろう、これ)
父親:こっちだ、志歩
小学生の志歩:え? こっちって……バックステージでしょ。 私も入っていいの?
父親:ああ。話はとおしてある。 ……だが、スタッフの邪魔にはならないようにな
小学生の志歩:……うん
小学生の志歩:(ここが、ステージの裏……。 ……こんな風になってるんだ……)
???:あー! 日野森さん、来てくれたんですね!
小学生の志歩:……!
父親:本番までまだ時間もあるだろう。 今のうちに、挨拶させてもらおうと思ったんだ
ガールズバンドのメンバーA:わあ、ありがとうございます! すみれも喜びます!
ガールズバンドのメンバーA:……あれ? その子……
小学生の志歩:あ……
ガールズバンドのメンバーA:もしかして……娘さんですか!?
父親:ああ。娘の志歩だ
父親:……志歩。彼女はバンド『Iolite』のリーダーだ。 前に言った、ときどき面倒を見てるっていうバンドだな
小学生の志歩:……よろしくお願いします
IoliteのメンバーA:わあ……! か、かかかか……
小学生の志歩:か……?
IoliteのメンバーA:かかかか可愛い~~~!
IoliteのメンバーA:みんな、みんな~大ニュース! 日野森さんがすっごく可愛い子連れてきた! 娘の志歩ちゃんだって!
IoliteのメンバーB:あ、ほんとだ、ちっちゃい子がいる。 ねえ、今何歳?
小学生の志歩:えっと……10歳です
IoliteのメンバーA:10歳!? うわあ、しっかりしてるねえ
IoliteのメンバーB:よく見ると、目元とか日野森さんにそっくりだね。 キリっとしてるところとか。 将来、お父さんに似てかっこよくなりそう
IoliteのメンバーC:ええ~そうかな? ほっぺとかふわふわもちもちだし、 きっとすごく可愛い子になるよ
IoliteのメンバーA:どっちにしろ美人さんってことだよね! いいね~
小学生の志歩:あ、あの……。 ——ちょっと……!
???:あーもー、みんな何やってるの
小学生の志歩:え?
???:ほら、どいてどいて。 そんな風に寄ってたかって声かけたら、びっくりさせちゃうでしょ
???:ほんとにごめんね。 みんな、悪気はないんだけど……
小学生の志歩:いえ……
すみれ:——あ、私、久野すみれ。 ベースやってるの。よろしくね

第 5 话:出会い

バックステージ
小学生の志歩:久野……さん。 よろしくお願いします
すみれ:すみれでいいよ。 よろしくね、志歩ちゃん
すみれ:日野森さんも、ライブ見に来てくれてありがとうございます。 気合い入れて演奏するので、楽しみにしててください
父親:ああ
すみれ:それにしても志歩ちゃん、 みんなの言うようにほんとかわいいね~
小学生の志歩:別に、そんなことないです
小学生の志歩:(……この人達が、父さんの言ってた 『会わせたい人達』なのかな)
小学生の志歩:(あんまりすごい人達には見えないけど……)
スタッフ:——すみませーん。日野森さん、店長が呼んでて。 今、大丈夫ですか?
父親:わかった。 ……志歩、少しのあいだひとりになるが大丈夫か?
小学生の志歩:うん、平気
すみれ:あ、それなら戻ってくるまで 私が話し相手になってますよ
父親:ああ、頼む
すみれ:じゃみんな、機材の確認お願いね。 私、志歩ちゃんと話してるから
IoliteのメンバーA:え~~!! すみれだけずるい~! あとでなんか奢りだからね!
すみれ:——よし、じゃあお話しよっか!
すみれ:私、実は前から志歩ちゃんと 会って話してみたかったんだよね
小学生の志歩:え?
すみれ:日野森さん、 下の子がライブを見るの好きみたいだってよく話してたから
すみれ:ライブハウスに来ると、 いつもソワソワして楽しそうだって言ってて…… どんな子なんだろうって、気になってたんだ
小学生の志歩:父さんが……
すみれ:そうそう。 ——あ、私、志歩ちゃんのお父さんの大ファンなんだよ
すみれ:なんとなく見に行ったライブで、 日野森さんの演奏を見てすごい衝撃を受けて……
すみれ:それで私もバンドやろうと思って、 友達誘って始めたんだ
小学生の志歩:あれ……でも、なんでベース? 父さん、ギタリストだけど
すみれ:あはは……。ま、最初は私もギターやろうと思ってたんだけど、 一緒にバンドやってくれるって友達が前からギターやっててさ。 仕方ないからベースにしたの
すみれ:なんか適当な理由でしょ? でも……今はすごく気に入ってるんだ
小学生の志歩:……どうして?
すみれ:う~ん。いろいろ理由はあるんだけど…… やっぱりリズムをコントロールする楽器だからかな
すみれ:ベースの良し悪しで、お客さんのノリやすさも全然違ってきて…… 自分の演奏で、会場の空気を変えるあの感じ……好きなんだ
すみれ:あとは——やっぱり、音かな
小学生の志歩:音?
すみれ:うん。ベースの音って、 こう、お腹の底に響く感じがして…… その音がどんどん私を熱くさせてくれる感じがするんだよね
すみれ:それが本当に弾いてて気持ちいいっていうか。 演奏してる時は、楽器が私の一部になったみたいに感じるの
小学生の志歩:ベース、本当に好きなんですね
すみれ:うん! 志歩ちゃんは、楽器って何かやってる?
小学生の志歩:父さんに触らせてもらって、ギターとかときどき。 でも、ベースはないです
すみれ:そうなんだ。それじゃ、ちょっと触ってみる?
小学生の志歩:え?
すみれ:私のベース、貸してあげるから。 少し弾いてみようよ
小学生の志歩:いいんですか?
すみれ:うん。……はいこれ、ちょっと大きいけど、 ストラップつければちゃんと持てると思うから
小学生の志歩:あ……はい。 じゃあ——
小学生の志歩:……う…… お、おもたい……
小学生の志歩:(……それに、大きい……。 ギターとは全然違うんだ……)
すみれ:わわわ、大丈夫? やっぱり重かったよね。 ごめんね、急に手を離しちゃって
小学生の志歩:いえ……大丈夫です
すみれ:待ってて、今ストラップの調節するから……
すみれ:もうちょっと短くして……よし!
すみれ:——いいねいいね! 似合ってるよ。 ザ・バンドマンって感じ!
小学生の志歩:……なんですか、それ。 こんなバンドマン、いないと思いますけど
すみれ:そんなことないって! 楽器を持てば、誰でも今日からバンドマン!
すみれ:それじゃ、ちょっと音出してみよっか
小学生の志歩:……うん
小学生の志歩:(弦、ギターより全然太い……。 うまく音出せるかな)
小学生の志歩:——っ!
すみれ:あらら、ちょっと力を込めすぎちゃったかな。 ベースの弦は強くはじくと、ノイズが混じっちゃう時があって いい音にならないんだよね
小学生の志歩:……どうしたらいいんですか?
すみれ:えっとね、あんまり力まないで弾くことを意識してみて。 指は弦の上をとおりすぎるみたいに…… ボディに向かって動かすイメージをするといいかも
小学生の志歩:わかりました
小学生の志歩:あっ……!
小学生の志歩:(すごく、重たい音……。 全身に響くみたいな……)
小学生の志歩:(これが……ベースの音なんだ)
すみれ:いいねいいね。志歩ちゃん才能あるよ~
小学生の志歩:……そういうの、いいですから
すみれ:あはは。ごめんごめん
小学生の志歩:それより……もっと教えてください
すみれ:え?
小学生の志歩:もっとちゃんと、いい音が出せるようになりたいから
すみれ:志歩ちゃん……
すみれ:……ふふっ、わかった。任せて
すみれ:——そう、最初はゆっくりでいいからね。 2本の指で順番に弦を弾いて……慣れてきたと思ったら、 ちょっとずつ早くしていって
小学生の志歩:……こう、ですか?
すみれ:うん! 上手上手!
すみれ:左手の指は、フレットのすぐそばを押さえるといいよ。 そうすると、無理に力を込めなくても綺麗な音が出せるから
小学生の志歩:はい。 ……っ……!
小学生の志歩:(左手……、届かない……)
すみれ:あー……ベース、大きいもんね……。 もう少し傾けてみたら 手、楽に届かないかな?
小学生の志歩:あ……本当だ。 これでやってみます
すみれ:うん、頑張れ~
すみれ:それじゃあ、さっき教えた順番に指で押さえて、 音を出していこうか。 ちゃんとしたフレーズになってるはずだよ
小学生の志歩:はい……
小学生の志歩:(左手は、フレットのそばを押さえる……)
小学生の志歩:(弾く時は、強くはじくんじゃなくて、 弦を揺らすように指を動かす)
小学生の志歩:(あとは、弦を順番に押さえながら、音を出して——)
小学生の志歩:……できた!
すみれ:やったね! バッチリだったよ
小学生の志歩:あ、ありがとうございます
すみれ:ふふ、それにしても志歩ちゃん、 すごい集中力だったね
すみれ:準備で周りも騒がしかったのに、 全然耳に入ってなかったみたいだし
小学生の志歩:あ……
小学生の志歩:(そういえば……そうかも。 いつの間にかベースの音に夢中になって…… 周りの声、全然気にならなかった)
小学生の志歩:(目の前のことだけに集中して、 時間があっという間に過ぎてくこの感じ)
小学生の志歩:(……楽しいな)
小学生の志歩:(でも、これって……)
小学生の志歩:(……あの時と……)
すみれ:そうだ、志歩ちゃん! ベース、本当に始めてみたら?
小学生の志歩:え……?
すみれ:さっきベースを弾いてた時の志歩ちゃん、 すごく楽しそうだったし…… きっと本気でやってみたら、もっと楽しいと思うよ!
小学生の志歩:……!
小学生の志歩:(……たしかに、楽しかったし……。 もっとやってみたいって思うけど……)
小学生の志歩:(でも、いいのかな……)
小学生の志歩:(ベースを触ってた時の感じ、 あの時とそっくりだった)
小学生の志歩:(集中すると、それ以外見えなくなる)
小学生の志歩:(また、あんな風に——)
クラスメイトCの声:……そっか。 でも、前から約束してたんだから、 こっちを優先してくれたってよかったのにね
クラスメイトAの声:うん……。 でも、どうしてもって言うなら仕方ないよね……
小学生の志歩:(みんなに、いやな思いをさせちゃったら……)
すみれ:そうだ! まだ時間あるし、次は——
小学生の志歩:……ごめんなさい
すみれ:え?
小学生の志歩:もう、大丈夫です
小学生の志歩:ベース、貸してくれてありがとうございました
すみれ:え、でも……
すみれ:……本当に、いいの?
小学生の志歩:はい……
小学生の志歩:もう、やりたくないから

第 6 话:譲れない想い

バックステージ
すみれ:…………そっか! ベース、飽きちゃったかな?
小学生の志歩:そういうわけじゃ、ないけど……
小学生の志歩:…………
すみれ:……わかった。ごめんね、これ以上は言わないよ
すみれ:でも……どうしてやめちゃうのかだけ聞いていい?
小学生の志歩:それは……
小学生の志歩:……よくないって思って
すみれ:よくない?
小学生の志歩:……私、いつもこうなんです。 やりたいって思うと、そればっかりに目がいって
小学生の志歩:そのせいで、周りにいやな思いをさせてる。 このあいだだって……クラスの子のこと、悲しませて……
すみれ:…………
小学生の志歩:だから……
小学生の志歩:きっと私は、ベースをやらないほうがいいって思ったんです
すみれ:そっか……
すみれ:……いやな思いをさせちゃう、か。 志歩ちゃんの気持ち、私もわかるなあ
小学生の志歩:え?
すみれ:私の家って、華道の名家っていうの? 代々続く流派の家系なんだ
すみれ:だから私も小さい頃は、 『お母さんみたいに立派な華を活けられるようになるんだ』って 言ってて、お母さんもそれを楽しみにしてくれてたの
すみれ:でも……志歩ちゃんのお父さんのライブを見て、 音楽を始めて……私はすっかりそっちに夢中になっちゃった
小学生の志歩:あ……
すみれ:それでね、毎年やってるいけばな展があって、 私も子供の頃からそこで華を展示してもらってたんだけど……
すみれ:その時から私は、ライブのほうに集中したくて なんの作品も作らなかったんだ
すみれ:……お母さんは私を責めなかったけど、 すごく悲しませちゃったと思う
小学生の志歩:……そうだったんですね
すみれ:あの時……華も音楽も、ってやろうとしたら、 どっちも中途半端になっちゃってたと思う
すみれ:お母さんを悲しませたいわけじゃなかったから 本当にこれでよかったのかなって、何度も悩んだけどね
小学生の志歩:中途半端なまま習字を終わらせてたら、 きっとすごく後悔してたと思う
小学生の志歩:だけど、だからってみんなに いやな思いをさせたかったわけじゃなくて……
小学生の志歩:なら、どうして?
小学生の志歩:どうしてそれでも、音楽を続けてるんですか
すみれ:そうだね。いろいろ悩んで、わかったんだ
すみれ:私にとって、音楽は譲れないものなんだって
小学生の志歩:譲れない……?
すみれ:そう。きっと……誰にでもそういうものってあるんだと思う。 何があっても——誰に何を言われてもやりたいって思うくらい 好きになっちゃうようなこと
すみれ:私にとっては、音楽がそうだったんだ
すみれ:それにね、そうやって譲れないものを貫く姿は、 まぶしく見えるんだって…… 志歩ちゃんのお父さんに教えてもらったの
小学生の志歩:父さんに……?
すみれ:うん。初めて志歩ちゃんの お父さんの演奏を聴いた時、思ったんだ。 ——すごく、かっこいいなって
すみれ:なんでそんな風に感じたんだろうって、 いろいろ考えたんだけど……
すみれ:きっとそれは、志歩ちゃんのお父さんが 自分の想いを貫いてたからじゃないかなって思ったの
小学生の志歩:(想いを……貫く……)
すみれ:自分のやりたいって想いをまっすぐ貫いて、 そのために真剣に、全力で頑張ってる人っていうのは、 まぶしくてキラキラして見えるんだ
小学生の志歩:そう、なんだ……
すみれ:うん。私のお母さんも同じだったから
小学生の志歩:え……?
すみれ:お母さん、普段は結構おっとりしてるんだけど…… 華を活ける時は、すごくかっこよく見えたんだ
すみれ:それはきっと、 お母さんにとっての譲れない大切なものは 華だったからで……
すみれ:私にとっての譲れないものと、お母さんのそれは違ってたけど…… お母さんがそうやって、 自分の大切な想いを貫く姿は尊敬してる
小学生の志歩:…………
すみれ:だから私——
すみれ:そんな、尊敬する人達に負けない人間になりたいって思ったの
すみれ:志歩ちゃんのお父さんや、私のお母さんみたいに、 真剣に自分の一番大事な想いに向き合って…… まぶしくて、キラキラしてる人になりたいって
小学生の志歩:…………
小学生の志歩:(想いを貫く姿が、まぶしく……)
すみれ:……なんて、言葉だけじゃわかんないよね
すみれ:——志歩ちゃん! 私達のライブ、見てくれるでしょ?
小学生の志歩:え……?
すみれ:楽しみにしてて! 私の言いたいこと、きっと演奏で伝えてみせるから
小学生の志歩:…………うん……
数十分後
父親:……そろそろだな
小学生の志歩:……うん
父親:久野とは、どんな話をしたんだ?
小学生の志歩:……いろいろ。ベースを教えてもらったり、 それに、なんでバンドをやってるのかとか
父親:そうか。 なんて言っていたんだ?
小学生の志歩:それは……
小学生の志歩:演奏で伝えるって
父親:……なるほど。 なら、最後まで見届けないとな
小学生の志歩:うん
小学生の志歩:(あ……)
すみれ:——みんな、いくよ
すみれ:♪————!!!

第 7 话:貫く姿

ライブハウス
すみれ:♪————!!!
小学生の志歩:(……なに、この音)
小学生の志歩:(……お腹の底に、ズンって響いてくるみたいな……)
小学生の志歩:(全身が熱くて、叫びたくなる。 心の中全部揺さぶられてるみたい……)
小学生の志歩:(今までも、いろんなライブに来たことはあるけど…… この人達の演奏……)
小学生の志歩:(何か……違う……)
父親:…………
小学生の志歩:(あれ……すみれさん……。 今、こっち見た……?)
すみれ:♪————!!!
小学生の志歩:(……! ベースのソロ……!)
小学生の志歩:(すごい……)
小学生の志歩:(すごい……すごい……!)
小学生の志歩:(こんなに、ドキドキするなんて……)
小学生の志歩:(あ……)
小学生の志歩:(……私だけじゃ、ないんだ……)
小学生の志歩:(ここにいるみんな、同じことを感じてる)
小学生の志歩:(音が、胸に響いて…… 心が震えて……ドキドキしてる)
小学生の志歩:(全部、あのバンドの人達がやったんだ。 演奏だけで、みんなの心を震わせて……)
小学生の志歩:(なんだろう。すごく……)
小学生の志歩:——かっこいいな……
すみれ:自分のやりたいって想いをまっすぐ貫いて、 そのために真剣に、全力で頑張ってる人っていうのは、 まぶしくてキラキラして見えるんだ
小学生の志歩:(……そっか)
小学生の志歩:(……そういうことだったんだ)
小学生の志歩:(すみれさんは、自分の譲れないものを、 ずっとずっと貫いてきたんだ)
小学生の志歩:(だから、この演奏はこんなにたくさんのお客さんを…… 私を、ドキドキさせてる)
小学生の志歩:(ううん、それだけじゃない。すみれさんの言うように そうやって、自分の想いを貫く姿は……)
すみれ:♪————!!!
小学生の志歩:(——あんなに、まぶしくて、かっこよく見えるんだ……)
小学生の志歩:(なら、私も——)
ライブ後
父親:——志歩、どうだった?
小学生の志歩:……すごかった
小学生の志歩:なんていうか……音が……直接体に響いて……
小学生の志歩:全部……本当に、かっこよかった
父親:……そうか
父親:どうやら、連れてきた甲斐があったみたいだな
小学生の志歩:……うん
小学生の志歩:ありがとう父さん
すみれ:志歩ちゃ~ん!
小学生の志歩:……! すみれさん
父親:片づけ、もう終わったのか?
すみれ:えへへ……。志歩ちゃんと話したくて、 みんなにちょっと押し付けてきちゃいました
すみれ:だから、すぐ戻らないといけないんだけど…… それより志歩ちゃん! 演奏聴いてくれた? どうだった!?
小学生の志歩:えっと……
小学生の志歩:その……す、すごかったです。 ライブの時のすみれさん……本当にかっこよくて
小学生の志歩:演奏を見てたら、ドキドキして、 もっと、もっとライブを見たいって思いました
すみれ:ふふ、そっか! よかった~
小学生の志歩:……それで……私
小学生の志歩:……私も、あんな風になりたいって思いました
小学生の志歩:すみれさんみたいに、 自分の想いを貫いていきたいって
小学生の志歩:それでいいんだって、すみれさんの演奏を聴いて…… そう、思えたんです
小学生の志歩:だから……ありがとうございました
すみれ:……ふふ。こちらこそ、ありがとう!
すみれ:今日は、志歩ちゃんにも届くようにって頑張ったから、 いつもよりいい演奏ができた気がするんだ!
小学生の志歩:……はい
すみれ:——そうだ! ねえ、志歩ちゃん。 ベース、これからもやってみない?
小学生の志歩:え?
すみれ:別に、無理強いするわけじゃないんだけど……。 ベースを触ってた時の志歩ちゃん、 本当に楽しそうに見えたから!
小学生の志歩:あ……
小学生の志歩:……はい。私も、もっと弾けるようになりたいって思います
すみれ:本当? やった! 嬉しいな~
小学生の志歩:ベース、たくさん練習します。 それでいつか……
小学生の志歩:私も……すみれさんみたいに演奏できるようになってみせます
すみれ:……!
すみれ:ふふ、さすがは日野森さんの子だね
すみれ:でも……私も負けないよ
小学生の志歩:え?
すみれ:志歩ちゃんがうまくなったら、 私はもっと先に進んでるから
すみれ:志歩ちゃんは全力で追いかけてきてね
小学生の志歩:……はい
IoliteのメンバーA:——すみれ~。いい加減戻って手伝ってよ~
すみれ:わっ、ヤバ……!
すみれ:それじゃ、行くね。 志歩ちゃん、日野森さんも、 今日は見に来てくれてありがとうございました!
すみれ:ふたりとも、ばいばい!
父親:慌ただしいな
小学生の志歩:そうだね
小学生の志歩:(でも……)
すみれ:♪————!!!
小学生の志歩:(今日のライブは——)
小学生の志歩:(きっと、ずっと忘れないだろうな)

第 8 话:届くように

志歩の部屋
リン:『そんなことがあったんだ……』
リン:『じゃあ、しほっちはそのライブのすぐあとに、 ベースを始めたの?』
志歩:うん。あの時のすみれさんの演奏を見て、思ったんだ
志歩:私も、あんな風になりたい。 自分の気持ちをまっすぐ貫いていきたい
志歩:——すみれさん達みたいに、誰かの心に響く演奏をしたいって
リン:『そっか……』
リン:『——じゃあ、やっぱりそれが しほっちの一番大事な想いなんだね!』
志歩:え?
リン:『そんな風に、かっこいい演奏ができる人に憧れて 自分もそうなりたい!って思ったことが——』
リン:『しほっちの音楽の始まりなんだなあって思ったんだ!』
志歩:……!
志歩:(そっか……。 それが、私が音楽を、ベースをやりたいって思った理由……)
志歩:(なら、私の『目指す音楽』は——)
志歩:ありがとう、リン
リン:え?
志歩:おかげで、わかったよ。 私の目指す音楽が、なんなのか
数日後
教室のセカイ
ミク:一歌達、来たみたいだね
一歌:志歩、ごめん。待たせちゃったかな?
志歩:大丈夫。私が急に集合時間を早めたせいだから
レン:志歩、話したいことがあるって言ってたけど、 なんの話なんだ?
志歩:このあいだの、真堂さんの質問。 私なりに考えて答えを出したから、みんなに聞いてほしくて
一歌:……わかった。 聞かせて欲しいな、志歩の考え
穂波:うん、わたしも
志歩:——ありがとう。実はあの日、 リンに昔の話を聞いてもらってたんだ
MEIKO:昔の話?
リン:しほっちが、ベースを始めるきっかけになった時のことだよ! 『Iolite』っていうバンドのライブを見たんだって
咲希:あ! しほちゃんがよく話してる 憧れのガールズバンドだよね!
穂波:前にも言ってたよね。 その人達みたいに、『誰かの心を動かせる演奏をしたい』 って思ってベースを始めたって
志歩:うん。 その時のことを振り返って思ったんだ
志歩:やっぱり私は、お客さんの心を震わせる演奏がしたい
志歩:それが私にとってすごく大事な想いなんだって
一歌:志歩……
志歩:それに……心を震わせるっていうのは 誰かに力を与えることでもあるんだ
穂波:力を、与える?
志歩:私、昔ちょっと悩んでたんだ。 周りのみんなを悲しませてまで、 自分のやりたいって気持ちを優先していいのかって
志歩:でも、そんな時にあのバンドの演奏を見て…… 自分の譲れないものを貫く姿は、 すごくかっこいいんだって、心からそう思えた
志歩:それで私も……ああいう演奏をしたいって思ったの
志歩:自分の譲れない気持ちをまっすぐ貫いて、 お客さんの心を震わせて……
志歩:そして、もし昔の自分みたいな人が 私の音楽を聴いたら——
志歩:自分らしく——まっすぐ生きていいんだって 思ってもらえるような……そんな演奏がしたい
志歩:それが、私の『目指す音楽』なんだ
一歌:……そっか。 すごく、志歩らしいと思う
咲希:うん……。 アタシ達も、しほちゃんの演奏に 背中を押してもらったりしたもんね!
リン:そうだよね! ——あ、ならきっと……
リン:しほっちは昔からずっと、 その人達にもらった想いを大事に 演奏し続けてたんだね!
志歩:あ……
志歩:うん。そうかもしれない
穂波:……志歩ちゃん、すごいね。 昔からずっと変わらない想いがあるんだ
穂波:……わたしは……
穂波:——これからも、みんなと一緒に演奏していきたい。 4人だからできる音楽をお客さんに届けたいって思ってる。 でも……
穂波:それがどんな音楽なのか、 そのために何ができるのか…… まだ、ちゃんと答えを出せてないの
志歩:穂波……
穂波:真堂さんの言うように、これは大事なことだと思うから。 中途半端にはしたくない
穂波:だから、ごめんねみんな。 必ず見つけるから……もうちょっとだけ待っててほしいな
咲希:うん。もちろん!
一歌:……焦らなくて大丈夫だよ。 穂波なら、きっと答えを見つけられると思うから
穂波:ありがとう、みんな
咲希:と・こ・ろ・で~……しほちゃん!
志歩:え……なに
咲希:小さい頃に見たライブの話、アタシ達にも聞かせて! リンちゃんばっかりずるいよ~
リン:えへへ☆ いいでしょ~!
一歌:たしかに……私達もちゃんと聞いたことなかったよね。 ちょっと気になるかも
ルカ:ええ。 志歩の大事な思い出の話……私も知りたいわ
咲希:ほら~! みんなも気になるって!
志歩:まあ、いいけど……。 時間かかると思うし、練習が先ね
咲希:やった~! じゃあ、しほちゃんの話を楽しみに、練習がんばろー!
穂波:うん!
志歩:(——いろいろ悩んだけど、 ちゃんと答えが見つかってよかった)
志歩:(それに、なんだかすっきりしたな。 自分の大事な想いがなんなのか、はっきりして)
志歩:(プロとしての活動が始まる前に、気づけてよかった。 おかげでこれからも、迷わないで進んでいけそう)
志歩:(少しは私も、あの姿に近づけてるかな)
志歩:(……わからないけど、でも……)
志歩:(少しずつ、進んでいこう。 そのためにも——)
志歩:(これからも……演奏で、 聴いてくれるみんなの心を震わせていく)
志歩:(それでいつか、あの日の姿に届くように)
ソリス・レコード事務所
真堂:……ふう
真堂:(デビューシングルのリリース、宣伝イベント、 ライブの計画……考えることは山積みだな)
真堂:あとは……
真堂:そろそろ、リーダーを決めてもらわないとな
真堂:これから何があっても、倒れずに進んでいけるように…… バンドの柱になるようなやつを
真堂:——なら、やはり……彼女しかいないだろうな