活动剧情

最高のクランクアップ!

活动ID:114

第 1 话:神山高校芸術祭

神山高校 2年A組
女子生徒達:——ねえ杏、ちょっと見て! これ、carino/carinaってカフェの パフェの写真らしいんだけど……
杏:うわ、なにこれ大きいね! ……ていうか、いちごの量すごくない? これ食べ切れるの?
女子生徒達:3人くらいで食べればいけるっしょ! 今TrickTrickでめっちゃバズってるんだって! 行ってみたいよね~!
男子生徒達:——おーい彰人! 今日の放課後、暇か?
彰人:暇じゃねえけど……どうした?
男子生徒達:いいショップ見つけたから、行きてえなって思ってさ! 練習あんのはわかるけど、たまにはつきあえよ!
寧々:(……相変わらず、賑やかなクラスだな……)
寧々:(LHRが始まるまで本でも読んでようかなって思ってたけど、 これじゃ全然集中できない……)
寧々:(はあ……しょうがないな。 先生が来るまで、音楽でも聴いて——)
先生:——あー、皆さん。席に着いてね~
杏:わっ、それじゃまたね!
女子生徒達:うん! あとでまた話そ~
男子生徒達:——せんせーい! 今日のLHRって何やるんすか?
先生:ああ、そのことなんだけどね、 今日はみんなに大事な話があるんだ
寧々:(大事な話……?)
先生:実は、今年から『神山高校芸術祭』という行事を 行うことになったんだよ
彰人:芸術祭?
先生:本校は自由と創造性の育成を校訓としているでしょ。 そこで、いろいろと新しい行事を やってみようという話が前から出ていてね
先生:『生徒達の創造性と協調性を育むこと』を目的に、 各クラスが協力して芸術に関する出し物を行う、 芸術祭を開催することにしたんだ
先生:当日は各クラス発表を行って、順位づけをするんだけど…… 特別審査員として著名人も呼ぶ予定だよ
女子生徒達:ええっ、著名人……って有名人ってことだよね!? 誰がくるんだろ!?
杏:……ちなみに、『芸術に関する出し物』って、 どういうのをやるんですか?
先生:そうだね。 特にこれ、と決まっているものはないんだけど……
先生:『クラス全員で一丸となってやる』こと、 それさえ満たしていれば あとはみんなで自由に決めてもらってかまわないよ
先生:たとえば……演劇や音楽、映画、ダンス。 他にも全員でひとつの彫刻を作るなんていうのも いいかもしれないね
寧々:(自由に……)
寧々:(演劇、それに音楽って……歌を歌ったりもできるかな。 それならちょっと興味あるけど……)
寧々:(クラスで一丸となってやる、か……。 そういうの、わたしはちょっと苦手だから——)
女子生徒達:めっちゃ楽しそう!!!
杏:うん! 文化祭が1個増えるって感じだもんね!
寧々:(まあ……このクラスの人達なら、こうなるよね)
女子生徒達:ねえねえみんな、何やる? 私、映画やりたい!
女子生徒達:たしかに~! クラスで映画作るのって、なんか青春っぽくていいかも!
杏:青春……かどうかはよくわからないけど…… 映像も残るし、思い出にもなっていいかもね
男子生徒達:よっし! それじゃ他になければ映画にしようぜ!
寧々:(映画、か……)
寧々:(でも、映画って素人だけでできるものなの……? いろいろ準備すること多そうだし……)
彰人:……いや、ちょっと待てよ。 映画なんて、そう簡単に作れるもんじゃねえだろ
寧々:……!
彰人:よく知らねえけど時間も手間もかかりそうだし、 そのあたり、ちゃんと考えてから決めたほうがいいんじゃねえか
寧々:(やっぱり、そうだよね……!)
杏:んー、たしかに。 せめて誰か経験ある人か、詳しい人にリーダーっていうか、 監督をお願いできるといいかもね
女子生徒達:詳しい人……
女子生徒達:——あ! それなら、いい人がいるじゃん!
寧々:(いい人……誰だろう……?)
女子生徒達:——ねえ、草薙さん! 映画の監督、お願いできないかな!?
寧々:…………え……
寧々:わ、わたし……!? なんで……
女子生徒達:草薙さん、映画部でしょ? それに、ショーもやってるからさ!
女子生徒達:演技の経験もめちゃくちゃあって、 映画の知識も豊富な草薙さんならピッタリだと思って!
寧々:そ、そんなこと言われても…… 映画部は部室に置いてある映画を見るくらいだし……
寧々:それに、ショーの演技と映画の演技って違うと思うし、 監督なんて、わたしには……
女子生徒達:え? でも——
杏:まあまあ、ちょっと待とうよ! 急に頼まれても、草薙さん困っちゃうでしょ?
女子生徒達:あ……たしかにそうだね。 ごめんね、草薙さん。 いきなり押しつけちゃって
寧々:……う、ううん。 大丈夫……
女子生徒達:……、でもやっぱり、うちのクラスの中で 一番監督に向いてるのは草薙さんだと思うんだ
寧々:え……?
女子生徒達:私、前にフェニランで草薙さん達のショーを見たことがあるの。 本格的でめちゃくちゃ感動しちゃった!
女子生徒達:あれって、草薙さん達が自分で考えて作ってるんでしょ? あんなすごいショーができるなら、 きっと映画もすごいものにしてくれるって思ったんだ
女子生徒達:だから……無理にとは言わないけど、考えてもらえないかな
寧々:あ……
寧々:(そっか。 わたし達のショー、見てくれてたんだ)
寧々:(……そう言われるとたしかに、 お話を考えたことはあるし、他の人より少しは詳しいかも)
寧々:(でも、映画を作った経験があるわけじゃないし、 それに……)
寧々:(監督って、制作がうまく進むように みんなをまとめて引っ張らないといけないんだよね)
寧々:(こ、この明るすぎる人達を……わたしが……?)
杏:……草薙さん、大丈夫? 嫌だったら、全然断ってもいいんだよ
寧々:……う、うん……
寧々:(でも……)
寧々:(……大勢の人を引っ張っていくことなんて めったにないし、いい機会なのかも)
寧々:(それに、人と関わるのを怖がってちゃダメだよね……)
寧々:(これからは、いろんな劇団に行って稽古していくんだし…… わたしは、世界中で活躍するミュージカル俳優になるんだから)
寧々:——わ、わかった
寧々:いい経験になると思うし…… みんながよければ、やらせてもらおう……かな……
女子生徒達:本当!? よろしくね、草薙さん!
寧々:……う、うん……
寧々:(や、やるって、言っちゃった……)
寧々:(ここまで言っちゃったからにはもう引けないな……。 それに、わたしもやるからにはいい映画にしたいし……)
寧々:(——が、頑張ろう。 芸術祭、うまくいくように……!)

第 2 话:まとめられない会議

数日後
神山高校 2年A組
寧々:そ、それでは——
寧々:芸術祭に向けて、 映画の内容を決める企画会議を行いたいと……思います
杏:はーい!
寧々:えっと……早速だけど、 みんなはどんな映画がやりたいっていうのはある?
杏:どんな映画……って、ジャンルのこと? サスペンスとかファンタジーとか……
寧々:うん……。ジャンルが決まったらテーマもしぼれて 内容も考えやすいかなって
杏:なるほど……。 ——なら私、アクションがいいな!
杏:格闘技でどんどん敵をやっつけてく感じのヤツ! かっこいいよね!
彰人:おもしろいとは思うが…… そんなアクション、オレらにできんのか?
女子生徒達:大丈夫じゃない? うちのクラス、格闘技系の部活に入ってる人結構いるし!
男子生徒達:おう、俺あわせて空手部が3人いるぞ。 あと……柔道部とボクシング部のやつらもいるよな
彰人:まあ、それなら問題ねえか……
寧々:え、えっと……じゃあ、アクションを候補にして……。 他には何かない?
女子生徒達:あ、なら、ホラーはどう!? 映画として定番だし、驚かせるの楽しそうだなって!
杏:ほ、ホラー!?
男子生徒達:いいんじゃないか? 去年文化祭でお化け屋敷できなかったから、 俺、ちょっと後悔あるんだよな~
杏:まっ……
杏:待って待って待って! せっかくみんなで映画作るのに、 怖いのにするのってなんかほら……もったいないでしょ!
杏:だから、もっと明るくて楽しいのにしよ! 絶対そのほうがいいと思う!
彰人:……焦りすぎだろ
寧々:じゃあ、ホラーは置いておいて、他の案は……
女子生徒達:はいはーい! 私、家族とか動物ものやりたいな! 感動して泣けるやつ!
男子生徒達:本格的なSFはどうだ? 滅んだ惑星……エイリアンとの出会い……みたいなやつとか!
女子生徒達:料理映画とかってできない? うち、家が中華料理屋なんだけど、 一緒に宣伝できたら助かるっていうか——
寧々:ちょ、ちょっと待って。 一度に言われるとわからなくなるから、順番に——
寧々:えっと……今出た案をまとめると……
寧々:アクション、ホラー、家族もの、動物もの、SF、料理、 青春、サスペンス、時代劇、西部劇、それから——
男子生徒達:あ、コメディもいいんじゃねえか!? 俺、漫才とか好きだし、ネタなら考えるよ!
寧々:え、えっと……コメディも……
寧々:(みんな積極的にアイディア出してくれるから、 案はいっぱい出たけど……)
寧々:(このままだと収拾がつかなくなりそう……。 そろそろ何かに決めないと)
寧々:——あ、あの、みんな! 十分意見も出たし…… 次は、この中からどれにするか絞っていきたいな
男子生徒達:絞る、か……。 でも、どの案も全部おもしろそうだよな
女子生徒達:だよね~。 ここからひとつだけなんて選べるかな
寧々:あ……もし話し合いで決めきれないなら、投票とか——
男子生徒達:ならいっそ、全部やればいいんじゃないか!?
寧々:へっ!?
杏:全部やるって……どういうこと?
男子生徒達:今出た意見、全部悪くなかったし……ひとつに絞るより、 ホラーもコメディも青春も、全部ひっくるめた映画に しちまえばいいんじゃないかって思って!
寧々:ど……
寧々:(どういうこと……?)
寧々:(そんなジャンルをごちゃまぜにした映画なんて撮れるわけ……)
女子生徒達:たしかに……めっちゃおもしろくなりそう!
寧々:え……えっ!?
女子生徒達:だって、いろんな映画のいいところを 全部詰め込むってことでしょ?
女子生徒達:SFホラーアクション青春コメディ動物映画なんて 見たことないよ! 私達、すごいこと思いついちゃったんじゃない!?
男子生徒達:ああ! 傑作間違いなしだな!
寧々:(ほ、本気で言ってるの……?)
寧々:(……そんな映画見たことないって……当たり前でしょ。 どう考えたって、まとまるはずないし……)
男子生徒達:よし! このままみんなですげえいい映画撮って、 賞とかもらっちゃおうぜ!
寧々:(だ、ダメだ……。 そもそも、ノリが違いすぎて全然ついていけない……)
寧々:(諦めちゃダメだ……。 このままだと本当に収拾つかなくなっちゃう……)
寧々:(わたしが、なんとかしなきゃ……!)
寧々:——あ、あのみんな…… ちょっと、落ち着いて……
彰人:——おい、草薙が困ってるだろ
男子生徒達:え?
彰人:つーか、そんな全部詰め込んでも、 よくわかんねえ話になるのがオチじゃねえか?
寧々:(東雲くん……!)
杏:あはは、たしかにね。 私も彰人に賛成かなー
杏:ジャンルはひとつに絞って、 そこにみんなのやりたいことを足していったらいいんじゃない?
杏:ほら、アクション映画の中にも 泣ける要素とか入ってたりするし!
男子生徒達:……まあ、さすがに全部のアイディア使うのは無理か
女子生徒達:だね~。ちょっとノリで話しすぎたかも
杏:なら、決まりだね! ジャンルは絞って、そこに入れられそうな要素がないか、 考えていこ!
杏:それでいいかな、草薙さん?
寧々:あ……う、うん!
寧々:(よ、よかった……。 ふたりがまとめてくれて……)
寧々:(おかげで、滅茶苦茶な内容には ならなくてすみそうだけど……)
寧々:(このノリが続いたら…… わたし、ちゃんと監督やり切れるのかな……)
寧々:——そ、それじゃあ今回の映画は『アクションもの』で決まりだね
杏:うん! それで、このあとはどうするの?
寧々:あ、えっと……
寧々:とりあえず、みんなにあげてもらったいろんな要素を参考にして、 わたしのほうで脚本を作ってみて……
寧々:……それができあがったら みんなにも見てもらいたいんだけど……いいかな?
杏:うん! 楽しみにしてるね
彰人:チャイムも鳴ったし、今日はこんなとこか
寧々:そうだね……。それじゃあみんな、お疲れさま
寧々:……はあ……
寧々:(つ、疲れた……。 1回盛り上がると、すごい勢いだったな……。 わたしじゃ全然止められなかった……)
杏:——草薙さん、お疲れ!
寧々:……あ……。 う、うん、お疲れさま
杏:大変だったよね~。 みんな好き勝手言うんだから!
寧々:あはは……。 ……でも、ふたりとも、さっきはありがとう
彰人:なんのことだ?
寧々:映画の内容がめちゃくちゃになりそうだった時、 ふたりが止めてくれたから
寧々:本当は、監督としてわたしがもっとみんなを まとめなくちゃいけなかったのに
杏:そんなの気にすることないって! 草薙さんひとりで作るんじゃないんだし
彰人:あのまま進められたら、 オレらも困ることになってただろうしな
杏:うんうん。 ……監督、大変だとは思うけど、 私達も草薙さんの力になれるよう協力するから!
杏:困ったことがあったらなんでも言ってね
寧々:……うん。ありがとう

第 3 话:想いを知ったら

放課後
神山高校
寧々:ふう……
寧々:(『簡単映画シナリオ入門』『3日でわかる映画シナリオ』 『今日からできる脚本術』……)
寧々:(……学校の図書室でも、結構勉強になりそうな本見つかったな)
寧々:(参考書だけじゃなくて、 映画の台本とか脚本集も欲しかったけど…… 贅沢は言えないよね)
冬弥:——草薙?
寧々:あれ……青柳くん
冬弥:それは……映画のシナリオの参考書か……? 珍しいものを借りているな
寧々:あ、実はうちのクラス、 今度の芸術祭で映画を作ることになって
寧々:そのためのシナリオを作るのに、 いろいろ勉強しようと思って借りたんだ
冬弥:そうだったのか
寧々:うん、できればシナリオ集もほしかったんだけどね。 実際の脚本を見て、ネタとか見せかたとか考えたかったから
冬弥:なるほど……
冬弥:わかった。 それじゃあ、少しここで待っていてくれ
寧々:えっ……青柳くん!?
数分後
冬弥:待たせてすまない。 これならば、草薙の要望を満たせると思う
寧々:『映画“百人の岡っ引き”脚本』 『映画“鮃の味覚”脚本集』『むかいのモロロシナリオ集』……
寧々:すごい、こんなにあるなんて……。 わたしは全然見つけられなかったのに
冬弥:シナリオ集は、参考書とは別の棚にあるから わかりにくかったんだろう。 ……次の委員会で、議題にあげてもいいかもしれないな
寧々:……わざわざありがとう。 わたしも一応図書委員になったのに、 自分で見つけられなくて……恥ずかしいな
冬弥:まだ入ったばかりだから、仕方ないだろう。 そのうち覚えられるから気にしなくていい
寧々:……ありがとう。 そういえば、青柳くんのクラスは、何をやるか決まったの?
冬弥:ああ。ダンスをやる予定だ。 俺は暁山と一緒に衣装班になった
冬弥:裁縫をやった経験はほとんどなかったが…… クラスのみんなに教えてもらいながら、なんとかやっている
冬弥:そうだ。このあいだ、玉結びのコツを教えてもらったんだ。 まだ習得するには至ってないが、きっとものにしてみせる
寧々:ふふっ、そうだったんだ。 青柳くんも芸術祭の準備、頑張って
冬弥:ああ。 お互い、いいものにできるといいな
数日後
寧々の部屋
寧々:(……うん、青柳くんが見つけてくれた本のおかげで お話の世界観は少しまとまってきたかも)
寧々:(問題は登場人物の設定と、肝心の物語かな。 主人公はなんとなく旅人がいいなって思うけど…… アクションなら敵が必要だし、戦う理由とかもいるよね……)
寧々:(アクションがメインのお話なんて、 あんまり考えたことがないから難しいな)
寧々:(それに、みんなの要望も できるだけ取り込まなきゃいけないし)
寧々:たしか……みんなが入れたいって言ってたのは——
寧々:『感動できる話』『本格的なSFの世界観』…… それから、『実家の宣伝』…… って、これはさすがに入れられないか
寧々:(他にもいっぱいあるけど、全部は取り入れられないだろうし ちゃんと考えて選んでいかないと)
寧々:……はあ
寧々:(話を考えるのって難しいな……。 いつも司達が作ってくれてるのに甘えちゃってたかも)
寧々:(やっぱり、ひとりじゃ難しいか……)
寧々:(ここで考えててもいいアイディア思い浮かびそうにないし…… ちょっとセカイで息抜きしようかな)
ワンダーランドのセカイ
寧々:えっと……みんなは……
寧々:あ……
レン:司くんと類くんのクラスの劇、どんな風になるんだろ。 楽しみだな~
寧々:……みんな、なんの話してるの?
ミク:あ、寧々ちゃん! やっほ~☆
レン:今ね、寧々ちゃん達の学校でやる芸術祭の話をしてたんだ!
リン:司くん達は『演劇をやるのだ!』って言ってたけど、 寧々ちゃんのクラスは何やるの?
寧々:……そっか。ふたりからもう聞いてたんだね
寧々:わたしのクラスは、映画を作るんだ。 ……ちょうどそのことで、いろいろ悩んでて
MEIKO:あら、何かあったの?
寧々:実は——
KAITO:へえ……寧々ちゃん、監督になったんだね
レン:すごいなあ~! 監督って、いろんなことを『これ!』って決める人でしょ?
ルカ:みんなの意見をまとめて、引っ張って……。 とってもかっこいいわねえ
ミク:うんうんっ☆ 寧々ちゃんはしっかりしてるから、 いい監督になれると思うな!
寧々:……どうかな……。 わたし、あんまりうまくやれてなくて
寧々:このあいだも、映画の企画会議があったんだけど——
男子生徒達:ならいっそ、全部やればいいんじゃないか!?
寧々:へっ!?
寧々:全然、みんなをまとめられなくて…… 監督としてやっていけるのか不安になっちゃったんだ……
KAITO:……そ、そっか。大変だったんだね
寧々:……まあ、今のクラスの人達は、 わたしとは全然違うタイプだから仕方ないんだけどね
リン:……全然違うタイプ?
寧々:あ、えっと……今のクラスは、すごく明るい人達が多いの。 それに積極的で……わたしとは正反対って感じなんだ
寧々:だから、ちょっと苦手っていうか…… どうしても壁を感じちゃって
リン:そうなんだぁ……
ミク:でもそれって、どうしたらいいのかなぁ
レン:……うーん……
リン:レン? どうかしたの?
レン:あ、えっと…… さっきの寧々ちゃんの言葉が気になって
ルカ:気になる?
レン:うん。クラスのみんなのことを 『正反対』だから壁を感じるって言ったところ!
レン:ボクは、みんなのことを知らないけど…… 全然違うタイプだからって、壁なんてあるのかなあ
寧々:……どういうこと?
レン:だって、司くんもえむちゃんも寧々ちゃんも類くんも、 みーんな同じタイプってわけじゃないでしょ?
レン:でも、みんな仲良しだし、壁なんてないよね?
寧々:たしかに、そうかもしれないし—— 前に日野森さんからも似たようなこと言われたけど……
寧々:司達とは、一緒にショーをやってたから……。 でも、わたしとクラスのみんなには共通点なんてないし……
KAITO:……僕も、レンの言うことは一理あると思うな
寧々:カイトさん……
KAITO:寧々ちゃんの言うとおり、 みんなにはショーっていう共通点はあるけれど……
KAITO:そもそも寧々ちゃんは、 司くんやえむちゃんと、どうして仲良くなれたんだい?
寧々:『どうして』……
寧々:……どうしてなんだろう。 一緒にショーをしてたら、いつの間にか……
MEIKO:——ふふ、そうよね! 信頼とか絆って、いつの間にか結ばれてたりするものよね
MEIKO:でも、寧々ちゃんがふたりと仲良くなった本当の理由は、 『一緒にショーをやったから』じゃなくて——
MEIKO:『一緒の時間を過ごすうちに、ふたりのことを深く知れたから』 なんじゃないかって思うの
寧々:ふたりのことを……
寧々:……たしかに初めて会った頃は 無茶苦茶な人達だなって思ってた
寧々:でも、そのあとふたりが夢に向かって頑張ってることとか、 いつも一生懸命なところとかが知れて……
寧々:そうしていくうちに、 だんだん壁がなくなっていった気がする
KAITO:……きっとそれは クラスメイトのみんなも同じなんじゃないかな
寧々:え……
レン:うん! きっとクラスのみんなも、 司くん達と同じで、いろんな想いを持ってるはずだよ!
レン:夢のこととか、大好きなこととか…… 悩んでることとかもあるかもしれないけど、 そういう、いろんな気持ちがあって……
レン:そんなみんなのことをもっと知れたら、 だんだん壁もなくなってくるんじゃないかな!
寧々:……そうかもね
寧々:ありがとう、みんな。 どうすればいいのか、少しだけわかった気がする
寧々:あっ、それと……。 もうひとつ相談してもいい?
リン:どうしたの?
寧々:実は、映画の脚本もわたしが書くことになってるんだけど ……あんまりいいものが思い浮かばなくて悩んでたんだ
ミク:え~っ、映画の脚本!? すっごく楽しそ~!
寧々:このノートに、今考えてる内容と、 クラスメイトの案で入れたい要素をまとめてるんだ
寧々:それで——もっといいものが作れるように、 ……みんなの力も貸してもらえないかな
レン:もちろん! そのノート、見せて見せて!
KAITO:へえ……すごくたくさん案が出てるんだね。 それに、アクションをやるってことは決まってるんだ
レン:えっ、アクション!? それなら……
レン:やっぱり、強くてかっこいい主人公がいいな!
レン:苦しんでる人を守るために、一生懸命戦って…… どんなに手ごわい相手でも、絶対に諦めない主人公!
レン:そういうのって、やっぱり憧れるよね!
ルカ:あら~……。 レンは、そういうお話が好きなの?
レン:うん! 最近、司くんに借りた漫画でそういうのを見たんだけど、 すっごくかっこよかったんだ!
KAITO:ふふ、そうだったんだね
ミク:じゃあ主人公はそういうカッコイイ感じにして~……。 あとは、クラスみーんなの『やりたいこと』を まぜまぜ~ってしたら、いいんだよねっ?
MEIKO:SF、それに実家の中華料理屋の宣伝? それなら、舞台は遠い未来……。 戦うのは……コックさんとかどうかしら!?
寧々:こ、コックさん……?
リン:わあ~楽しそう! じゃあじゃあ、襲ってくるのも料理人で——
寧々:(な、なんだかすごいことになってるけど……)
寧々:(……みんなの力を借りれれば、 明日までに概要くらいは、まとめられそうかな)

第 4 话:クラスメイト

翌日
神山高校 2年A組
寧々:(……ミク達のおかげで一応、 だいたいのお話はできたけど……)
寧々:(ちょっと、詰め込みすぎちゃったかな……。 まあ、要素がいっぱいあるから、しょうがないんだけど……)
杏:おっはよー! 草薙さん
寧々:あ……お、おはよう。白石さん
杏:何見てるの? って、もしかして……
杏:映画の脚本!? もうできたの?
寧々:一応……。て言っても、まだざっくりしてて、 ちゃんとした脚本にはなってないんだけど
杏:いやいや、それでも全然早いって! ……ねえ、読んでみてもいい!?
寧々:あ……うん。 あとでみんなに見てもらう予定だし、いいよ
杏:やった! それじゃあ最初から——
彰人:……何やってんだお前ら?
杏:あ、彰人! 映画の脚本、ざっくりできたんだって! 一緒に見ない?
彰人:ああ、芸術祭のヤツか。 別にオレはあとでいいが……
杏:いいじゃんいいじゃん! せっかく草薙さんが書いてくれてるんだから一緒に見ようよ! ほらここ、座って座って!
彰人:……しょうがねえな……
杏:えーと、今から遠く先の未来のこと……。 人類は幾たびもの災害によって、滅亡の危機に瀕していた……
杏:大地はやせ衰え、作物は育たず、 人々は食糧難にあえぎ、苦しみの中にあった
彰人:いきなりハードな設定だな
彰人:——そんな中、一部の権力者達は、 『暗黒料理人会』に所属する料理人達を使い食料を独占し、 贅沢の限りを尽くしていた
彰人:その状況を見て、ひとりの男が立ち上がる……。 彼は人呼んで『さすらいの料理人』。 貧しい人々のため、料理を作り続けることを誓った戦士である
杏:暗黒料理人VSさすらいの料理人。 空腹に苦しむ人々を助けるための戦いが、今始まる……
彰人:…………
彰人:なんつうか……すげえ内容だな
寧々:う、うん……。 みんなの要望をできるだけ取り入れようって思ったら、 こうなったっていうか……
彰人:……言われてみりゃ、見覚えのある要素も入ってんな
杏:あの散らかってたアイディアを こんなにまとめちゃうなんて、すごいね草薙さん
寧々:ちゃ、ちゃんとまとまってたかな……? 友達の力も借りたんだけど、ちょっと不安で……
杏:大丈夫だよ! 私、楽しそうでいいなーって思ったし!
杏:困ってる人のために一生懸命戦って ご飯を届けるって、すごくかっこいいじゃん
寧々:あ……ありがとう。 そう言ってもらえてよかった
杏:草薙さんのおかげで、脚本のほうは順調に進みそうだね。 ……あと考えなくちゃいけないのって、なんだろ?
寧々:わたしも、どうしようかなって思ってたんだけど…… まずは班を決めるのがいいかなって思ってるよ
杏:班?
寧々:うん。役者、衣装、撮影、小道具、編集……。 映画って、必要なものが多いみたいだから
寧々:でも、どうやって組分けしようかな…… 詳しい人がいてくれたらいいんだけど……
彰人:——なら、そういうヤツに聞けばいいんじゃねえか?
寧々:え?
杏:そうだね! たとえば……衣装だったら、立花さんが詳しいと思うよ!
寧々:(立花さんってたしか…… アクセサリーとかいっぱいつけてて、結構派手な人だよね)
寧々:(見た目からして住む世界が違う感じがするし、 ちょっと話しかけづらいんだけど……)
杏:あ、あそこにいるじゃん! ねえねえ、立花さーん
寧々:(あ……ちょ、ちょっとそんな急に……! まだ心の準備が……!)
立花:なになに~? なんかアタシに用?
寧々:(う……近くで見るとメイクとかも派手だ……! や、やっぱり、ちょっと話しにくいな……)
立花:あれ~監督じゃん。 もしかして、芸術祭のこと?
寧々:え、えっと……。 実は、映画作るのに衣装とかに詳しい人探してて……。 立花さんが詳しいって聞いたんだけど……
立花:お! それなら任せといてよ。 アタシ、そういうの得意だから
寧々:そ、そう、なの……?
立花:うん! ちょっと待ってて~
立花:はい、これ。 ちょっと汚れてるけど
寧々:……スケッチブック?
寧々:え……これって……全部洋服のデザイン……?
寧々:(すごい……何十枚も……。 素材とか形……コンセプトまで、細かく描き込まれてる)
彰人:すげえな。 デザインも自分で考えたのか?
立花:うん。アタシ、デザイナーになりたいって思ってるんだ。 で、毎日コツコツ衣装考えてんの
杏:授業中に描いてて、よく先生に怒られてるもんね~
立花:も~、それは言わなくていいじゃん! てか、杏だって似たようなもんでしょ
立花:……ま、とにかく、衣装のことなら力になれるだろうし、 言ってくれたら協力するよ
寧々:……あ……ありがとう……
立花:じゃあ、またなんか決まったら声かけてね~
寧々:(……そっか)
寧々:(立花さんも、真剣に自分の夢を かなえようって頑張ってるんだ)
杏:ね? こんな感じでクラスのみんなに 得意なこととか聞いていけばいいんじゃないかな?
寧々:……たしかに、そうだね
杏:——よーし、それじゃあ……
杏:ねえみんな! ちょっと聞いて!
クラスメイト達:えっ、なに? どうしたの?
彰人:お前、いきなり……
杏:こういうのはまとめて聞くのが手っ取り早いって!
杏:……今度の芸術祭のことで、 みんなに相談したいことがあるんだけど、 ちょっと話聞いてもらえる?
寧々:あ……
女子生徒達:なになに、映画のこと?
男子生徒達:そういえば、まだほとんど何も決まってないよな
寧々:——えっと、映画の準備を進めるのに、 撮影のこととか、編集のこととか、 わたしもわからないことがたくさんあって……
寧々:詳しい人がいたら、教えてほしいって思ってるんだ
クラスメイト達:映画のこと……
網澤:あ、はい! 私、カメラのことならちょっとだけわかるよ。 お父さんがそういうの好きだから
網澤:映画の撮影できるような機材もあるかもしれないから…… 帰ったら借りられないか聞いてみるね!
宗田:この前も言ったが、アクションのことなら、 僕達柔道部や空手部に任せてくれ!
宗田:空手、柔道、ボクシング…… 小さい頃からいろんな格闘技を学んできた精鋭がそろってるんだ!
寧々:あ、ありがと……
宗田:——というか、クラス全員でやるべきことを 草薙さんに任せっきりにしてたのがおかしいよな
網澤:そうだね! ごめんね草薙さん。 私達も、できることは協力するよ
クラスメイト達:だから…… 一緒にいい映画を撮れるよう、頑張ろう! 監督!
寧々:……うん、そうだね
寧々:頑張ろう、みんな
クラスメイト達:『おー!』

第 5 话:撮影開始!

数日後
神山高校 2年A組
寧々:——あ、あの、網澤さん。ちょっといいかな。 撮影に使う機材のことで、相談が……
寧々:って、あれ……何見てるの?
網澤:え? ああ、これ、ドローンを使った映像なんだって。 上から撮るだけじゃなくて、 いろんな角度から回り込んで撮れるみたい
寧々:へえ、たしかに綺麗に撮れてるね
網澤:技術の進歩ってすごいよねえ。知ってる? 映画って19世紀くらいから発展していったの。 シネマトグラフっていう機器が作られて——
網澤:——って、ごめん! 関係ない話始めちゃった! お父さんにカメラのこと相談してるうちに、 なんか私まで興味出てきちゃって……
寧々:……ううん。大丈夫。 本当にカメラのこと好きなんだね
寧々:その話もすごく興味あるんだけど……。 機材のこと、聞いてもいいかな……?
宗田:——はああああっ!
寧々:宗田くん……何してるの?
宗田:ああ、監督か。撮影の稽古だよ! 実は……お世話になってる柔道教室があるんだけど、 そこの子供達が今度の映画を見たいと言ってるんだ
寧々:……そっか。 それで気合いが入ってたんだね
宗田:ああ! どんな要望でも応えてみせるさ! アクションシーン、楽しみにしててくれ!
寧々:……うん。頼りにしてるね
寧々:た、立花さん……? さっきからじっと見てるけど……何かついてる?
立花:ん~? そういうわけじゃないんだけど~。 監督、今度一緒に洋服買いに行かない?
寧々:え!? なんで……?
立花:なんか監督見てたら、 いろいろ着せたい服浮かんできちゃってさ~
寧々:え、えっと……考えとくね
杏:ねえ、草薙さん。 演技ってどうしたら、もっとうまくできるの?
寧々:え、な、なんで?
杏:私、自分で演技した映像撮って見てみたんだけどさ。 結構……ていうか、かなり棒だったんだよね……
杏:特にラストのとことか、もっと感情入れたくて! どうしたらうまくいくのか教えてほしいの!
彰人:ああ、それならオレも聞いておきてえ。 役者班の一員として手は抜けねえからな
寧々:わ、わかった。 教えるのあんまりうまくないかもしれないけど……
杏:そんなの大丈夫だって! お願い、草薙さん!
寧々:う、うん。えっとね——
寧々:(……明日からは、いよいよ撮影か)
寧々:(今日まですごく忙しかったけど…… その分、みんなと話す機会も増えて 前よりは自然に話せるようになった気がする……)
寧々:(撮影……うまくいくといいな)
撮影場所
杏:わあ……これが今回のロケ地?
女子生徒達:すごいね……! 崖とかもあって、映画の内容にピッタリ!
寧々:網澤さん達が探してきてくれたんだけど、 本当、いい場所だよね
杏:ここまで来ると、 撮影が始まるんだって感じして、うずうずするね! 彰人、ちゃんとセリフ頭に入れてきた?
彰人:当たり前だろ。 オレがとちるわけにはいかねえしな
杏:さっすが! 気合いの入りかたが違うね
杏:でも、まさか彰人が主演をやるなんて思わなかったな~
彰人:まあ……仕方ねえだろ。 宗田と背格好が似てるのが、オレしかいなかったんだからな
宗田:……すまないな、東雲。 僕の演技が下手なせいで……
宗田:どうにも、僕は体と頭で同時に別のことをやるのが苦手らしい! 体だけで生きているタイプなんだ!
杏:まあ、しょうがないんじゃない? 人には向き不向きってあるし
彰人:そうだな。……けど、アクションはお前の腕の見せどころだろ。 スタントマンとしてよろしく頼むぞ
寧々:……白石さんも、よろしくね。 主人公の料理人に助けられる女の子…… 大事な役だから、大変だと思うけど頑張って
杏:うん!
立花:おーい、役者の人~。 着替え終わったらメイクするから、 早いとここっち来てくださ~い!
杏:あ、ヤバ……! じゃああとでね、草薙さん!
寧々:(ついに……撮影が始まるんだ)
寧々:(初めてのことばっかりだけど、 監督として……頑張らなきゃ——!)
数十分後
網澤:監督~、照明とカメラ、セット完了でーす!
寧々:う、うん。ありがとう
寧々:(役者の人達は……)
杏:いつでもいけるよー!
寧々:(……大丈夫そう)
寧々:(最初に撮影するのは……暗黒料理人に襲われる村の女の子を、 主人公が助けるところ……)
寧々:(物語でも一番初めの、大事なシーンだ……。 ちゃんと成功させて、流れをつかんでいきたい)
寧々:それじゃあ……いくよ、みんな
寧々:——アクション!
少女:『はあ……はあ……。 家まで、もう少し……』
少女:『お腹すいたな……』
少女:『ちょっとだけ……ってダメ! これは病気のお母さんのための食料なんだから』
少女:『待っててね、お母さん。 今ご飯を持って行くから……!』
寧々:(白石さんの演技……いいな。 ちょっと硬いところはあるけど…… 恥ずかしがってないから、自然にしゃべれてる)
暗黒料理人A:『はっはっは! どこに行くんだお嬢さんよー!』
暗黒料理人B:『お、おやおや~! そのパンパンのカバンに入ってるのは……食い物じゃねえか!』
暗黒料理人C:『こりゃめでてーぜ! 鴨がネギをしょってくるたあ、このことだなあ!』
少女:『そ、そんな……! あなた達は……』
暗黒料理人A:『残念だったなあ、お嬢さん。 その食料は俺達……あ、あ……あ…… “暗黒料理人会”がいただいてくぜー!』
寧々:——カット!
男子生徒A:ご、ごめん監督。セリフ、ミスっちゃって
男子生徒B:俺も……声上擦っちゃってたかも……
寧々:う、ううん……大丈夫。 初めてだし、仕方ないよ
寧々:(でも……なんて言ったらいいんだろう……。 自然な演技って言われても、難しいよね……)
寧々:えっと……やっぱり…… 本番って思うと緊張しちゃうよね?
男子生徒A:ああ……。練習はしたんだけど、 やっぱ本番は違うっていうか……
男子生徒A:これがみんなの前で流れるんだって思うと、 頭真っ白になっちゃって……
寧々:そっか……
寧々:(あ……もしかして)
寧々:えっと……少し、深呼吸して肩の力を抜くといいかも。 それから……
寧々:……まずは、思いきり楽しんでみるといいって思うな
杏:楽しむ?
寧々:うん。演技をするのが初めての人が多いから…… うまくできるかとか、いろいろ気にして緊張しちゃうとは思う
寧々:でも……大事なのは楽しんで役に取り組めてるかどうかだって わたしは思うんだ
男子生徒A:楽しんで……
寧々:うん。……わたしも昔、そういう気持ちを忘れちゃって うまくできなかったことがあったから、気持ちはわかるんだ
男子生徒A:監督……
男子生徒B:……たしかにな。 監督の言うようなこと、俺も感じてたかも。 でも、まずは……楽しんでやってみることにする
男子生徒B:——よし! もう1回お願いします!
寧々:うん……!
数時間後
網澤:——休憩入りまーす! みんな、水分補給はしっかりねー
寧々:……ふう
寧々:(撮影も、だいぶ進んできたな)
寧々:(最初はどうなることかと思ってたけど、かなり順調だよね。 それも、みんなのおかげなんだけど——)
立花:か~んとく!
寧々:ひゃっ……! つ、冷たい……!
網澤:あはは、キンキンに冷えたジュースだよ。 特別に冷やしといたやつ、監督にあげるね
寧々:え……いいの?
立花:もっちろ~ん! 監督が一番お疲れだろうしね
寧々:そんなことないと思うけど……。 でも、ありがとう。もらっておくね
網澤:うん! ……それにね、 そのジュースはちょっとしたお礼も兼ねてるんだ
寧々:……お礼?
網澤:うん。だって——
網澤:映画、絶対おもしろくなるから!
網澤:結構ノリで決まったみたいなところあったけどさ、 草薙さんが監督やってくれたおかげで、 なんか本格的になったでしょ?
立花:わかるわかる。アタシらだけだったら、 しょうもないおふざけ映画になってた気がするしね
網澤:うん。でも、監督のおかげでクオリティもどんどん上がって…… 私も——みんなも、『もっと頑張ろう!』って気合い入ったよ
寧々:わたしの……おかげで……?
網澤:そう! だから…… 最後まで一緒にいい映画作ろうね!
寧々:…………
寧々:……うん
寧々:みんなで一緒に、頑張ろう

第 6 话:後悔しないように

数週間後
寧々の部屋
寧々:(撮影も、あとはラストのアクションシーンだけか。 大事なシーンだし、ちゃんと準備して挑まないと——)
レン:『——ねーねちゃん!』
寧々:わっ……れ、レン? どうしたの、こんな時間に
レン:『えへへ、このあいだ話してた映画撮影のこと、気になって! あれからどうなったかなあって』
寧々:うん、順調だよ。 それに——レンの言うとおりだったな
レン:『えっ、ボクの?』
寧々:『みんなのことをもっと知れたら だんだん壁もなくなってくるんじゃないか』って 言ってくれたでしょ?
寧々:撮影をとおして、みんなといろいろ話をして…… 本当にそうだなって思うことがたくさんあったんだ
寧々:みんなそれぞれ、好きなことも性格も全然違ってて—— 夢を持ってるとか、子供の世話が好きとか、 そういう話がたくさん出てきたの
寧々:それを聞いてたら、 レンが言ってくれたみたいに、少しずつ壁がなくなって……
寧々:今では普通に…… クラスメイトとして話せてる気がするんだ
レン:『寧々ちゃん……』
寧々:……て言っても、まだ苦手なのがなくなったわけじゃないけどね。 勢いがよすぎるところとか、 テンション高いノリとかはついていけないし
レン:『でも、少しでも仲良くなれたならよかったよ!』
レン:『寧々ちゃんが、みんなと作ってる映画…… ボクも楽しみにしてるね!』
寧々:うん。ありがとう
レン:『……でも、ボク見れるのかなあ。 芸術祭って、学校の中だけで公開するんだよね?』
寧々:大丈夫だよ。撮り終わったら、データを持って行くから。 セカイでみんなで一緒に見よう
レン:『本当!? よかった~』
寧々:あれ、メッセージ? こんな時間になんだろう……
寧々:えっ……!?
翌日
神山高校 2年A組
杏:あ、草薙さん!
寧々:白石さん、東雲くんも。 ……宗田くんは?
彰人:もう来てる
宗田:ははは……。すまないな、草薙さん。 このタイミングでケガをするなんて……
寧々:ううん……! それより、大丈夫なの?
宗田:たいしたことはないんだ。 メッセージにも書いたとおり、軽い捻挫さ
宗田:ただ……足首だからね。 本当に申し訳ないが……スタントはできないと思う……
寧々:そう……なんだ……
寧々:と、とりあえず……よかった。 大きなケガじゃなくて
宗田:うん……。みんなも、本当にごめん! 演技どころかアクションまでできなくなって、 迷惑ばかりかけて……
彰人:……やっちまったもんは仕方ねえだろ。 お前だって、わざとケガしたわけじゃねえんだしな
杏:そうだよ! すごく頑張ってくれてたのも知ってるし、 気にする必要ないって!
彰人:だが……この先どうするかは考えねえとな
彰人:クライマックスの撮影はもうすぐだ。 ロケ地の予約と、編集の時間を考えたら ケガが治るのを待ってるわけにはいかねえ
寧々:……そうだね。 誰か、代役を立てないと
女子生徒達:けど……宗田くんの代わりができる人なんているの? ただでさえ、練習の時間もないし…… クライマックスのシーン、前より地味になっちゃわない……?
男子生徒達:でも、多少は妥協するしかないんじゃないか。 映画が完成しなくなるよりはマシだと思うし……
女子生徒達:でも、せっかくここまでやってきたのに……
寧々:(……たしかに、宗田くんが動けなくなった今、 クオリティの高いものを撮影するのは難しいかもしれない……)
寧々:(でも……これでいいのかな)
寧々:(せっかくここまで頑張ってきたのに…… 『こうするしかなかった』『ちょっと地味だけど仕方ない』 って思いながら、撮影を終えたら……)
寧々:(きっと、後悔の残る映画になるんじゃないかな)
宗田:………………
寧々:(そうなったら宗田くんは…… 自分のせいで映画をダメにしたって考えちゃうかも)
寧々:(それって——)
寧々:(次のセリフが、出てこない……! どうしよう、どうしよう、どうしよう……!)
寧々:……みんな、ずっと必死に練習してきたのに、 わたしのせいで、全部台無し
寧々:(……すごく、苦しいよね)
寧々:(わたしには、チャンスがあった。 司達がくれた、やり直すチャンス……)
寧々:(でも、みんなは、この映画だけ——)
宗田:どんな要望でも応えてみせるさ! アクションシーン、楽しみにしててくれ!
男子生徒B:——よし! もう1回お願いします!
網澤:だから…… 最後まで一緒にいい映画作ろうね!
寧々:(わたしは……監督として、 この映画を後悔のある形で終わらせたくない)
寧々:(だから——!)
寧々:……ねえ、みんな。 ちょっと聞いてほしいんだけど
杏:どうしたの、草薙さん?
寧々:わたしは……みんながここまで全力でやってくれてた 映画撮影を誰かが後悔したまま終わらせたくないって思ってる
寧々:ちゃんと、最後にみんなで 『よかった』って言えるようにしたいって
宗田:監督……
寧々:だから……考えよう。 誰も後悔しないように……
寧々:仕方ないって妥協するんじゃなくて、 今のわたし達にできる、一番いい方法を
杏:……そうだね
杏:いいものが作れなくなるかも~って気持ちじゃなくて、 今よりも、もっとよくできるようにって考えてくほうが ずっといいよね!
寧々:うん。 まずは、誰が代役をやるかだけど——
彰人:……オレがやる。ケガしたのは主役のスタントマンなんだから、 主役のオレがやるのが、一番手っ取り早いだろ
宗田:東雲……
彰人:宗田。ラストやる予定だったアクション、全部教えろ。 時間はねえが、やるしかないからな
宗田:わかった。 ……ありがとう
彰人:おう。……つっても、 どうしても格闘技経験者の宗田とオレじゃ、 動きのキレに差が出ちまう
彰人:なんとかして穴埋めできねえか? アクションを派手に見せる工夫とか……
杏:派手に見せる……
杏:——あ! はいはい! マントみたいなのをつけるのはどう?
彰人:マント?
寧々:……たしかに、悪くないかも
寧々:マントは派手に見せられるから、ショーでもよく使われるし…… 今までにない見せかたもできそう
寧々:ラストのシーンはちょうど食材探しの旅から 帰ってきたところだし、外套として羽織ってても不自然じゃない
寧々:——立花さん、衣装のアレンジ 今からお願いできる?
立花:オッケ~。任せといてよー。 衣装班のみんなでデザイン描いて、超特急で仕上げるからさ
寧々:ありがとう……! 宗田くんとアクション班のみんなも、 マントを使った動きの見せかた、考えてくれないかな
宗田:あ、ああ! もちろんだ!
寧々:それと……撮影の仕方も工夫できるかも
寧々:網澤さんがこの前言ってたドローン、使えないかな。 アクションの時、戦ってるふたりの周りをぐるっと撮れたら 臨場感出るかもしれないし
網澤:たしかに! それじゃあ私は操縦方法とか撮影のやりかた、調べておくね!
寧々:……わたしが思いつくのは、このくらいかな
寧々:他にもアイディアがあったら、どんどん出しあおう。 それで——
寧々:クランクアップまで、あと少しだけど、 いい映画にできるように、最後まで一緒に頑張ろう
クラスメイト達:『うん!』 『おう!』

第 7 话:クランクアップ

撮影最終日
撮影場所
杏:……ついに、最終日だね
寧々:うん……
寧々:(今日撮るクライマックスのアクションシーンが、 この映画の鍵だ)
寧々:(少女のために必死で戦う料理人の姿を、 どれだけしっかり見せられるか……)
網澤:草薙さん、機材の準備できたよ!
寧々:ありがとう。……役者のみんなも、大丈夫?
彰人:ああ
杏:草薙さんに演技指導してもらったからね! バッチリいける気がするよ!
寧々:ふふ、よかった
寧々:それじゃあ……いくよ
寧々:——アクション!
暗黒料理人A:『とうとう見つけたぜ、さすらいの料理人! 今度こそ、貴様の持つ食料を根こそぎ奪ってやるー!』
少女:『そんな……。またあの人達……』
さすらいの料理人:『なんでそこまで俺達を狙う! お前らは、十分すぎる量の食材を持ってんだろ!』
暗黒料理人B:『……この世の食材と料理は、 我々暗黒料理人会の支配下にあるべきなんだ』
暗黒料理人C:『その考えを否定する貴様の存在は、 組織にとって目障りなんだよー!』
さすらいの料理人:『はっ……くだらねえな。 俺は、必要としてるヤツら全員に料理を届ける』
さすらいの料理人:『それが……料理人としての、俺の使命だ!』
暗黒料理人A:『御託はいい! 貴様はここでおしまいだ! いくぞお前ら!』
少女:『や——やめて! もうやめてよ……!』
寧々:(ここからだ……! 3人の敵が、一斉にさすらいの料理人に襲いかかってきて——)
寧々:(まずはひとりめの拳をかわして、腕をつかむ……。 練習では、うまくいったけど……)
さすらいの料理人:『——!』
寧々:(……成功!)
寧々:(でも、問題は次だ……。 腕を引っ張って、体ごとふたりめの敵にぶつけながら、 3人目の攻撃を体を回転させてかわす……)
寧々:(東雲くん、宗田くんに教わりながら 何度も練習してたけど——)
さすらいの料理人:『はあっ——!』
寧々:(すごい……! バッチリ決まった……!)
寧々:(それに……羽織ってる外套の動きで、 かなり映像映えする見せかたができてる……!)
寧々:——カット! 映像見せて!
網澤:う、うん!
彰人:……どうだ?
寧々:……躍動感が、ちゃんと映像でも表現できてる
寧々:すごいね。 宗田くんでさえ難しいって言ってたアクションを 一発で成功させるなんて
彰人:まあ、そうできるように仕上げてきたからな
彰人:……それより、まだ続きはあるだろ。 時間ももったいねえし、さっさと次いくぞ
寧々:うん……!
数時間後
さすらいの料理人:『……まだ、やるか?』
暗黒料理人A:『はあ……はあ……。つ、強い……』
さすらいの料理人:『これ以上やるってんなら、こっちも容赦しねえぞ』
寧々:(……これで最後のカット……。 本当に最後の撮影になる……)
寧々:(あと少し、みんな頑張って——)
彰人:(さっきの撮影で、アクションの山場は越えた)
彰人:(あとは、基本の立ち回りをすればいいだけだ。 向かってくる敵の動きに合わせて、 タイミングよく首のうしろを殴って気絶させる……)
彰人:(……集中していくぞ)
暗黒料理人B:『くらえ——!』
彰人:(よし、ここから——)
彰人:(っ——、風で砂が目に……!)
彰人:(やベえ、タイミングが……!)
寧々:(なんか、東雲くんの様子が変……)
寧々:(いったん止めて——)
少女:『——待って!』
寧々:……!?
少女:『もう……やめて。 集めた食材は渡します。 だから、これ以上料理人さんを傷つけるのはやめてください!』
寧々:(……台本にないセリフ……。 アドリブ……?)
寧々:(……さっきの東雲くんのアクション、すごくよかったし そのおかげで、いい流れがきてる)
寧々:(ここで止めたくないって気持ちは、わたしも……わかる)
寧々:(——よし、このまま……!)
さすらいの料理人:『……よせ……! その食材はお前の母親のためのもんだろ』
少女:『でも……これ以上は料理人さんが……』
さすらいの料理人:『……俺のことは、気にすんな』
さすらいの料理人:『……俺は、料理人だ。 必要としてるヤツに、最高の料理を届けることが使命……』
さすらいの料理人:『その道がどれだけ困難だったとしても、 俺は諦めねえ……!』
暗黒料理人A:『なんだ、お前……! おたまなんか持ち出して……!』
さすらいの料理人:『戦いに料理道具を持ち込みたくはなかったが……』
さすらいの料理人:『このおたまは、俺の長年の相棒だ。 料理道具ひとつであっても、クセを知り、 心を通わせれば、俺の想いに応えてくれる……』
さすらいの料理人:『こんな風に、な——!』
暗黒料理人B:『ふたつのおたまから……風が……!?』
暗黒料理人C:『う、うわあああああ』
さすらいの料理人:『終わりだ——!』
寧々:——カット!
寧々:——お疲れさま、みんな
寧々:今日撮れたものを確認したんだけど…… 全部問題なかったよ
杏:……それって……!
寧々:……うん。 これで、クランクアップだね
彰人:……っし!
杏:やった……! みんな、お疲れさま!
立花:ホントによかったよね~、ここまで撮り切れて
宗田:ああ……。僕のせいで映画が台無しになるんじゃないかと ヒヤヒヤしたこともあったが…… 本当に、ここまでこれてよかった
宗田:クライマックスのシーンには出られなかったけど…… 柔道教室の子供達にも、ぜひこの映画を見てもらいたいよ!
寧々:……そっか。 そう言ってもらえて、よかった
網澤:……ふふ。 こうやって無事にクランクアップ迎えられたのも、 全部監督のおかげだよね
寧々:え?
網澤:宗田くんがケガした時…… 後悔しないようにやろうって言ってくれて本当によかったよ
立花:そーそー。あれがあったから、 今こうやって、みんなで喜べてるよね~
杏:そうだね……! ありがとう、草薙さん!
寧々:あ……
寧々:ううん。こっちこそ、ありがとう。 でも……
寧々:わたしにとっては、みんなのおかげだよ。 みんなが諦めないで一生懸命頑張ってくれたから、 わたしも監督として、ここまでやってこれたんだと思う
寧々:撮影班も、衣装班も…… それに役者のみんなも、本当に全員が活躍してくれたし——
寧々:白石さん達の最後のアドリブのところなんて、 わたし、見てて本当に感動しちゃった
杏:草薙さん……
寧々:まだ撮影が終わっただけで、編集も残ってるけど…… この映画は、絶対いいものにできるって確信があるんだ。 だから、みんなも——
寧々:本当に、お疲れさま……!

第 8 话:わたし達の映画

神山高校芸術祭 当日
体育館
彰人:ついにこの日が来たか……
杏:そうだね。 他のクラスの発表も楽しみだな~
杏:あ、それと、発表のあと投票もあるんだっけ。 どうせなら1位とりたいよね!
寧々:い、1位は難しいんじゃないかな……。 他のクラスも結構本格的なのが多いみたいだし……
瑞希:やっほ~、3人とも!
寧々:あ……暁山さん。それに青柳くんも
杏:瑞希達のクラスは、今日ダンスやるんだっけ? まだ着替えてないみたいだけど、準備は大丈夫なの?
瑞希:うん! 発表順のくじ引きでうしろのほうだったから、まだ大丈夫!
冬弥:そっちのクラスは、映画だったな。 ……出来はどうだ?
彰人:ああ。撮影はキツかったが、 本番は流すだけだから、そこは楽だな
寧々:流されてるあいだは緊張でドキドキしそうだけどね
冬弥:……その様子だと、撮影はうまくいったみたいだな
寧々:うん、青柳くんにオススメしてもらった本も すごく役に立ったよ
寧々:お礼言うのが遅くなっちゃってごめん。 ……本当にありがとう
瑞希:っていうかその映画って、弟くんが主演なんだよね? 楽しみだなあ。どんな演技するんだろ~
彰人:うるせえな。黙って見とけ
司会:ただいまより『第1回神山高校芸術祭』、開会式を行います。 皆さん、ご着席をお願いします
杏:あ! そろそろ始まるみたい。 みんな、クラスのところに戻ろ!
瑞希:じゃあまたね! 初めての芸術祭、楽しんでいこ~う♪
寧々:(……ついに、わたし達の映画をみんなに見せるんだ)
寧々:(出番はまだ先なのに、なんかもうドキドキしてる……。 発表の時まで心臓持つのかな……)
数時間後
類:『——それでは、本日のご観劇……』
司:『誠に、ありがとうございました!!』
杏:おもしろかったね! 神代先輩達のクラスの演劇!
彰人:まあ、わけわかんねえ内容ではあったけどな……。 『オペラ座の怪人』のオマージュって言ってたが……
寧々:まさか、地下の奥が異世界につながってて、 その先で竜と戦うなんてね。……司達らしいけど
寧々:(すごくおもしろかったけど…… 最後は集中できなかったな)
寧々:(だって、次が——)
司会:——以上、3年C組による演劇でした。 続いては、2年A組による映画の発表です
司会:『世紀末料理武闘伝~さすらいの料理人~』 ……上映開始です
寧々:……いよいよだね
杏:うん……。なんかドキドキしちゃうなあ。 スクリーンに自分の顔が映るなんて
彰人:今更あれこれ言ったってしょうがねえだろ
杏:彰人だって、表情硬いじゃん。 なんだかんだ言って緊張してるんでしょ?
彰人:……うるせえ
寧々:(このふたりでも、緊張することとかあるんだ)
寧々:(……本当に、今回の芸術祭をとおして、 みんなのいろんな一面が見れたな)
杏:あ、始まる……!
ナレーション:『遠い未来……。 人類は幾たびもの災害によって、滅亡の危機に瀕していた……』
少女:『はあ……はあ……。 家まで、もう少し……』
さすらいの料理人:『俺は……しがない料理人だ』
瑞希:へえ~、杏も弟くんも、いい演技じゃん!
冬弥:……そうだな
さすらいの料理人:『……俺は、料理人だ。 必要としてるヤツに、最高の料理を届けることが使命……』
さすらいの料理人:『その道がどれだけ困難だったとしても、 俺は諦めねえ……!』
司:ほう……なかなか本格的なアクションだな
類:たくさん練習したんだろうねえ
少女:『待って……! 料理人さん、どこに行くの……?』
少女:『ずっとここにいてよ……! この村で、みんなと一緒に暮らそう!』
元暗黒料理人A:『そうさ、兄貴! 俺達、兄貴のおかげで変われたんだ! 俺達が兄貴を襲ったあと……腹を減らして動けなくなった俺達に、 あんたは料理を持ってきてくれた……』
元暗黒料理人B:『誰であっても、求める者に料理を届ける……。 あんたのおかげで、 俺達は料理人としての気持ちを思い出せたんだ!』
元暗黒料理人C:『ああ! だから、この村に残って俺達に料理を教えてくれよ!』
さすらいの料理人:『俺は……料理人だ』
さすらいの料理人:『なら、俺のやるべきことは決まってる』
少女:『……そう、だよね。 必要とする人に料理を届ける。それが、あなたの使命だもんね』
少女:『……でも、ひとつだけお願い』
少女:『いつか……私が、あなたの料理を必要とする時が来たら、 その時は、また料理を届けに来てね』
さすらいの料理人:『ああ。約束する』
ナレーション:『——こうして、さすらいの料理人はまた旅に出た。 彼の料理を必要とする者達のために』
ナレーション:『荒野には、そんな彼を見守るように いつまでも佇む少女の姿があった』
少女:『——さよなら、料理人さん』
数時間後
司会:以上を持ちまして、 『第1回神山高校芸術祭』、発表の部は終了となります
杏:どのクラスのも、おもしろかったね! 特に瑞希達のダンス、すっごくよかった!
寧々:青柳くんもすごく楽しそうに踊ってたね
立花:でも、アタシ達のクラスも 歓声とかあがって結構盛り上がってたし、 いい感じだったんじゃない?
網澤:たしかに! もしかしたら、優勝狙えちゃうかも!?
杏:あはは、さすがにそれは難しいって 最初に草薙さんと——
寧々:……もしかしたら、ありえるかも
杏:えっ?
寧々:わたし……実は、ずっと不安だったんだ
寧々:みんなで一生懸命作った映画だし、大丈夫だとは思うけど…… 見る人には、どう思われるのかなって
宗田:監督……
寧々:でも、いざ映画が始まったら…… 見てくれてるみんな、すごく楽しんでくれてた
寧々:それに、わたしも—— 大きなスクリーンで改めて映画を見て思ったんだ
寧々:——これ、すごくおもしろいって!
寧々:……本当はね、最初の頃は監督として、 みんなをまとめられる自信なかったんだ
寧々:わたし、人見知りで……。 みんなとも、勝手に距離感じてたし
彰人:そうだったのか?
寧々:う……うん。でも、今回みんなと作業していく中で みんなのいろんなことが知れて、 距離も近づいたなって思うし——
寧々:一緒にやれてよかったな、って思った
立花:監督……
杏:草薙さん!
寧々:——ひゃっ!? な、なんで手を……
杏:えっへへ~♪ いいこと言ってくれたから、すっごく嬉しくて!
杏:こちらこそ、本当にありがとね! 私も、草薙さんと一緒にできて楽しかった!
網澤:私も私も! またふたりでドローン飛ばそうね!
立花:あ、アタシと服買いにいく約束も、忘れてないよね~?
宗田:今度道場に招待するぞ! この映画の監督だって子供達に紹介したいんだ!
寧々:みんな……
寧々:ありがとう
彰人:……ったく、あんまはしゃぎすぎんなよ
司会:——皆さん、おまたせしました。 ただいま、評価点の集計が完了しました
寧々:あ……
彰人:……いよいよか
杏:みんなと頑張って作った映画だし、 いい結果だといいな~……!
司会:それでは早速、3位から発表させていただきます。 3位は——2年B組
司会:創作ダンスパフォーマンス 『アリゲーター~水に流され俺達はどこへ~』です
司会:代表の方は、壇上にお願いします
冬弥:やったな……! 暁山!
瑞希:うん! 結構難しいコンセプトだったけど、 一緒にがんばって衣装作ったかいあったね~!
司会:続いて、2位は——1年A組。 合奏、『そなたに贈るソナタ』です
寧々:あ、あのオーケストラやってたクラスの……
彰人:音楽の先生巻き込んで、ガッツリやってたらしいな。 ……楽器初めてのヤツがいるとは思えない出来だった
杏:うん……入賞するのも納得って感じだね!
寧々:(もうあとは1位だけ……)
寧々:(……やっぱり、入賞は難しかったかな。でも……)
司会:では、優勝クラスの発表となります。 『第1回神山高校芸術祭』、栄えある1位に輝いたのは——
司会:——3年C組! 『オペラ座の怪異~地下に降りたら異世界にいた件~』です
司:おおおおおおおおお! やったぞ、類!
類:ああ。司くん……それに、クラスみんなの頑張りのおかげだよ
杏:……残念だったね
寧々:……うん。 可能性あるかもって思ったんだけどな
寧々:でも、入賞してないからダメってわけじゃないと思うんだ。 この作品は、わたしにとって——
司会:——続いて、特別審査員賞の発表です
寧々:え……?
彰人:こんなのあったか……?
杏:そういえば、ゲストの審査員を呼んでるって 先生が言ってたような……
司会:現役で脚本家を務められている 谷山平三郎さんによる審査の結果——
司会:——特別審査員賞は、2年A組に決定しました!
寧々:え……
杏:え~~~~っ!?!?
谷山:正直、脚本家としての観点でみると、 この内容をどうやってまとめるんだろうと 見ている最中はハラハラしていました
谷山:ですが、それをしっかりと形にしていて、 何より映像の端々からも、クラスが一丸となって この作品を作っていることが大いに感じられて——
谷山:料理人の物語をとおして、 僕は皆さんの青春のきらめきを感じました。 ……特別審査員賞、おめでとうございます
寧々:あ……
杏:——やったね、草薙さん! 審査員賞だって!
寧々:……うん……よかった……!
司会:それでは、2年A組の代表の方は、 壇上にあがってください
寧々:代表……
彰人:まあ、ひとりしかいねえだろ
杏:だね! いってらっしゃい、草薙さん!
寧々:えっ、わ……わたし!?
立花:頑張れ~、監督~!
寧々:わ……わかった……
谷山:おめでとう、素晴らしい映画だったよ
寧々:あ、ありがとうございます
寧々:(……トロフィーってこんなに重いんだ)
寧々:(……この重さに、みんなの気持ちが詰まってるみたい)
女子生徒達:——監督ー、写真撮るから、こっち向いて~!
男子生徒達:かっこいいぞー! 監督ー!
寧々:も、もう……
寧々:(……相変わらず、このクラスの人達はノリがよすぎたり、 ちょっとわたしと違うところはあるけど……)
寧々:(……監督を引き受けて本当によかった)
寧々:(これからもこのクラスのみんなと—— 仲良くすごしていけると、いいな)