活动剧情
あの日、奏でた音色を
活动ID:116
第 1 话:進む先は
宵崎家 キッチン
奏:——どうぞ、お茶です
まふゆの父:ああ、どうも。 いつもお気づかいありがとうございます
まふゆ:…………
まふゆの父:それで——最近はどうだ? 体調を崩してはいないか?
まふゆ:……うん、大丈夫
まふゆの父:そうか、よかった
まふゆの父:ああ、そうだ。 駅前にあるケーキ屋のショートケーキを買ってきたんだ
まふゆの父:まふゆも好きだっただろう? あとで、宵崎さんと食べなさい
まふゆ:あ……
まふゆの父:ん?
まふゆ:…………なんでもない。ありがとう
まふゆの父:……まふゆ、何か思っていることがあれば 言ってもいいんだぞ
まふゆ:え……
まふゆの父:もちろん、言いたくないのなら言わなくていい
まふゆの父:だが、お父さんがここに来ているのは…… まふゆの気持ちを知りたいからだ。 だから、なんでも言ってほしい
まふゆ:…………
まふゆ:本当は……
まふゆの父:うん、なんだ?
まふゆ:本当は——そのケーキ、好きなわけじゃないの
まふゆの父:……そうだったのか……
まふゆの父:すまない、お父さんの勘違いだったんだな。 じゃあ、まふゆは何が好きなんだ?
まふゆ:……わからない……
まふゆの父:え?
まふゆ:前から、あんまり……味が、わからなくて
まふゆ:何を食べても、同じに感じて……
まふゆの父:味が……!?
まふゆの父:……そうだったんだな。 それは、いつからなんだ?
まふゆの父:もしよければ、教えてくれないか?
まふゆ:それは……
奏:(……まふゆ、前よりも話せるようになってるみたい)
奏:(まふゆのお父さんも…… まふゆのことを理解しようとしてくれてるみたいで、よかった)
奏:(……このまま、いい方向に進めるといいな……)
まふゆの父:——それでは、来週また伺わせていただきます
まふゆの父:まふゆ、またな
まふゆ:……うん、また
奏:……まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……大丈夫
まふゆ:でも、少し疲れたから ちょっと休んでくる
奏:わかった。 じゃあわたしは部屋で作業してるね
まふゆ:……うん
奏:あれ、電話だ。誰だろ……
奏:はい、宵崎です
奏の祖母:『奏ちゃん? おばあちゃんだけど、今大丈夫?』
奏:あ……おばあちゃん。 うん、大丈夫だよ
奏:今日はどうしたの?
奏の祖母:『奏ちゃんとお友達のことが気になってねえ。 元気にしてるかい?』
奏:うん、元気だよ。 まふゆ——一緒にいる友達も、元気にしてる
奏:望月さんのおかげで、毎日ごはんも食べられてるし 部屋も綺麗にしてもらってるから
奏の祖母:『そう、それならよかったわ……! 穂波ちゃんにも、改めてお礼を言わないとねえ』
奏の祖母:『ところで……奏ちゃん、 ちょっと前、学校の始業式に行ったのよね』
奏:あ……うん。そうだね
奏の祖母:『……どう? 何か、変わったこととか 困ってることはない?』
奏:……特に、ないかな。 勉強もいつもどおりだし
奏:お父さんのことも、大丈夫だよ。 ほとんど変わりはないし……
奏の祖母:『そう……』
奏の祖母:『ねえ、奏ちゃん。 今後のことって、考えているかしら?』
奏:え?
奏の祖母:『お父さんのこともあって、 考えにくいかもしれないけれど……』
奏の祖母:『おばあちゃん、そろそろ奏ちゃん自身のことを 考えてもいいと思うの』
奏:わたしの、こと……?
奏の祖母:『ええ。今の学校を卒業したらどうするか、とか 進路のことも考えなくちゃいけないでしょうし』
奏の祖母:『だから……これからどうしたいのか、 奏ちゃんの気持ちを知りたいと思って』
奏:どうしたい……
奏:…………
奏の祖母:『……ごめんなさいね、急にこんなこと言っちゃって』
奏の祖母:『でも……時間がある時に、少し考えてみて? 奏ちゃん自身が、これからどうしたいのかっていうことを』
奏の祖母:『それがどんな道でも……おばあちゃんは応援しようと思うわ』
奏:……わかった
奏:少し、考えてみるよ
奏の祖母:『ええ。……それじゃあ、体に気をつけてね』
奏:うん、おばあちゃんも
奏:…………
奏:今後、どうしたいのか……か……
第 2 话:やりたいこと
25時
奏:…………
奏:(わたしの今後、か……)
奏の祖母:『おばあちゃん、そろそろ奏ちゃん自身のことを 考えてもいいと思うの』
奏:わたしの、こと……?
奏の祖母:『ええ。今の学校を卒業したらどうするか、とか 進路のことも考えなくちゃいけないでしょうし』
奏の祖母:『だから……これからどうしたいのか、 奏ちゃんの気持ちを知りたいと思って』
奏:(今まで、ちゃんと考えられてなかったな)
奏:(誰かを救う曲を作らなきゃって、そればっかりで……)
奏:(……将来のこととか、具体的にイメージできないな……)
奏:(……やっぱり、わたしは曲を作り続けなきゃいけないし、 それ以外のことは……)
奏:あ……
まふゆ:……お風呂わいたみたい
奏:あ、そっか……
奏:まふゆ、明日学校でしょ? もう遅いし、先に入ってきていいよ
まふゆ:わかった
まふゆ:『みんな、ちょっと抜けるね』
瑞希:『はいはーい。いってら~』
絵名:『ねえ、K。 今回の曲のイメージなんだけど——』
奏:『…………』
絵名:『K?』
奏:『あっ……ごめん、何?』
絵名:『曲のイメージ……っていうか、大丈夫? なんだか今日、Kにしては集中できてない感じがするけど……』
瑞希:『もしかして、何かあったりした?』
奏:『あ……えっと、たいしたことじゃないんだけど……』
奏:『……おばあちゃんから、電話があったんだ。 そろそろ、卒業したあとのことを考えてみたらどうかって』
瑞希:『卒業したあとのこと、か……』
奏:『うん。今まで、曲を作ることで頭がいっぱいで 考えられてなかったから……どうしようかなって』
絵名:『そっか……』
絵名:『……実際、将来のことって悩むよね』
絵名:『……私も、まだどうするか ちゃんと考えられてなくてさ』
奏:『え、えななんも?』
絵名:『うん。まあ、絵を描きたいとは思ってるんだけど、 ……大学どうしよっかな~とか』
瑞希:『あー、美大いくのって大変だって聞くしね』
絵名:『まあ、ね……』
瑞希:『でも、好きなことがあるなら その専門の学校とかいけるといいよね~』
瑞希:『そういえばKは、卒業してからしたいこととかあるの?』
奏:『卒業して……』
奏:『やっぱり……今までどおり 曲を作り続けるしかない、と思ってるけど』
瑞希:『あー、そうじゃなくって。 なんていうか……』
奏:『……?』
絵名:『それって……“こうしなくちゃ”じゃなくて、 “こうしたい”っていうことはないのか、ってこと?』
瑞希:『そうそう! えななんが絵を描きたいって思ってるみたいにさ。 Kがやりたいことはないのかな~って』
奏:『わたしの、したいこと……』
奏:(……なんだろう……)
奏:(——曲は作らなきゃいけない。 でも、他にしたいことも……特にないし)
絵名:『……K?』
奏:『あ……ごめん。 やっぱり、今は何も思いつかないな……』
瑞希:『そっか……』
瑞希:『まあ、これから一生のことになるだろうし そんなすぐ決められないよね』
絵名:『私も、まだどうするのか悩んでるとこだし…… ゆっくり考えていけばいいんじゃない?』
奏:『……うん、ありがとう』
絵名:『……でも、ちょっと安心したな』
奏:『え?』
絵名:『……ほら、Kって、いつも誰かのために頑張ってるでしょ?』
絵名:『誰かを救う曲をっていうのもそうだし 雪とか……私達のためにもいつも頑張ってくれてるしさ』
絵名:『……だから、K自身のことを考えてるのが ちょっと嬉しかったっていうか』
奏:『あ……』
瑞希:『たしかに、それはわかるなあ。 Kっていつも自分のことより、 他の人を優先してくれるっていうか』
絵名:『そうそう。 そういうKがすごいなって思うし、尊敬してるけど——』
絵名:『もっと、Kがやりたいこととか、 K自身が楽しいって思うことを考えてもいいんだからね?』
奏:『わたしがやりたいこと、か……』
奏:『……わかった。 ありがとう、ふたりとも』
第 3 话:わたしにとっての音楽
2時間後
瑞希:『んーっ、もう3時かぁ。 そろそろ寝よっかな~』
絵名:『え、いつもより早くない?』
瑞希:『ボクも朝まで作業したいんだけど、 明日は学校来いって言われてるんだよねー』
瑞希:『ていうか、えななんも美大いくことになったら ちゃんと早起きする必要あるんだし、 今のうちに練習しといたら?』
絵名:『う、まあ……たしかにそうかも……』
瑞希:『あははっ! それじゃ、ボクはそろそろ落ちるねー。 みんなおやすみ~!』
奏:『おやすみ』
絵名:『また明日ー』
まふゆ:『……私も、作業が一段落したから寝るね。 データは送っておくから』
絵名:『あ、じゃあ私もお風呂入ってこよっかな。 ちょっと眠くなってきちゃったし』
奏:『わかった。雪、えななん、お疲れさま』
絵名:『お疲れー』
まふゆ:じゃあ、おやすみ。奏
奏:おやすみ
奏:……わたしも、朝までに作業を終わらせないと
奏の祖母:『……ごめんなさいね、急にこんなこと言っちゃって』
奏の祖母:『でも……時間がある時に、少し考えてみて? 奏ちゃん自身が、これからどうしたいのかっていうことを』
絵名:『もっと、Kがやりたいこととか、 K自身が楽しいって思うことを考えてもいいんだからね?』
奏:…………
奏:(……わたしがやりたいこと、 わたし自身が、楽しいって思うこと……)
奏:(……そういえば、昔はあった気がする)
奏:(お父さんが作るような、あたたかい曲を作りたくて……)
奏:(ただ純粋に、好きだって気持ちで曲を作ってた)
奏:(……今は、やらなくちゃいけないとしか 考えられないけど)
奏:(……でも……)
奏:(……本当に、それだけなのかな)
奏:(わたしにとって、音楽は……)
奏:(わからない、けど…… 『やらなくちゃいけない』ってだけじゃ、ないような——)
奏:……わからないな……
奏:集中力も切れちゃったし、 ……少し、息抜きしよう
誰もいないセカイ
湖
KAITO:…………
KAITO:(……あの日、母親に噛みついてから、 まふゆはたしかに前進した)
KAITO:(これまで停滞していたこのセカイに、 新しい場所が生まれたのがその証拠だ)
KAITO:(だが——)
KAITO:…………
リン:あ……カイト
KAITO:……なんだ。何か用か?
リン:別に、カイトにはないけど ここに用があるから
KAITO:……スケッチブック? 絵を描くのか
リン:うん。絵名に、湖を描いて見せるって約束してるから
KAITO:……そうか
KAITO:なら、俺は向こうへ行く
リン:別にいい。 邪魔にならないし
リン:カイトも描いてあげようか
KAITO:描くな
リン:……!
リン:誰か来たみたい
KAITO:あれは——
リン:奏だ。何かあったのかな
リン:あ……カイト。 奏のところ、行かないの?
KAITO:お前が行くなら十分だろ
リン:……そう、わかった
KAITO:(……いや)
KAITO:(……あいつは、まふゆに届く曲を作るんだったな)
KAITO:(あいつが何を抱えているのか—— どうして、まふゆに届く曲を作れるのか)
KAITO:……少し、見にいくか
第 4 话:辿る、記憶の先は
誰もいないセカイ
湖
奏:(……今日も、湖から音楽が聴こえる)
奏:(わたしが……ニーゴで作った曲だ)
奏:(この曲を作ったの、いつだろう)
奏:(たしか、まだみんなの顔も知らない頃だったっけ。 なんだか懐かしいな……)
奏:(あの時は、誰かを救う曲を作らなきゃって、 とにかく必死で——)
奏:(寝る時間も、食べる時間も削って作ってたから よく望月さんに心配されたな)
奏:…………
奏:(……考えてみたら、わたしはずっと曲を作ってるな)
奏:(今もそうだけど、ニーゴを始める前から、ずっと——)
リン:——奏
奏:あ……リン
リン:今日はどうしたの? 何か考えてるみたいだったけど……
リン:……もしかして、まふゆのこと?
奏:あ、ううん、わたしのことだよ
リン:奏の?
奏:うん。……でもまふゆみたいに、 すごく悩んでるってわけじゃないから、心配しないで
リン:……そうなんだ
リン:……でも、奏のこと、聞かせてほしい
奏:え?
リン:まふゆだけじゃなくて……奏の力にも、なりたいから
奏:うん……ありがとう。 実はね——
リン:奏にとっての、音楽……?
奏:うん、ずっと考えてるんだけど…… 答えが出てこなくて
奏:今まで誰かを救う曲を作らなきゃって思ってたし、 それが、わたしのやらないといけないことだと思ってる
奏:でも……それだけじゃないような気がするんだ
奏:どうしてそんな風に思うのか、 自分でもよくわからないんだけど……
リン:……そっか……
リン:奏は、どうして曲を作り始めたの?
奏:え……?
奏:どうしてって……それは……
奏:…………お父さんが……
リン:お父さん?
奏:……うん
奏:お父さんが作ってくれる曲が……好きだったから
奏:お母さんもいつも笑ってて、優しくて、幸せな気持ちになれて
奏:それで——
十数年前
奏の父の部屋
奏の父:……ここは、もう少しテンポを落としたほうがいいな。 あとは——
幼い奏:わあ……
奏の母:あ……奏、またお父さんの仕事部屋に入って。 お仕事の邪魔しちゃだめよ?
奏の父:はは、大丈夫だよ。 奏が見ていてくれると、僕も頑張れるからね
幼い奏:ほんと?
奏の父:ああ。今作ってる曲も、もうすぐできそうだ
奏の父:聴いてみるかい?
幼い奏:うんっ!
奏の父:じゃあ、途中までだけど……いくよ
幼い奏:わ……! すっごくきれいな曲……!
幼い奏:すごいね、おとうさん、まほうつかいみたい!
奏の父:はは、そんなにすごくはないよ。 でも、奏が好きだって言ってくれるのなら 今回の曲はヒット間違いなしだね
幼い奏:うんっ! ぜったい、ぜーったい みんな好きになってくれるよ!
幼い奏:ねえねえ、どうしたら そんな曲が作れるの?
奏の母:あら、もしかして奏も作ってみたいの?
幼い奏:うんっ! おとうさんの曲は、おかあさんもわたしも、 みんなニコニコにしてくれるから!
奏の父:ふふ、そうか。 じゃあ奏がもう少し大きくなったら、曲の作りかたを教えるよ
幼い奏:わあ……! ありがとう、おとうさん!
奏:——お父さんが曲を作るところが好きで、 いつも横で見てたっけ
奏:それで、あの日——
第 5 话:あたたかい音色
宵崎家 キッチン
幼い奏:さぷらいず、ぱーてぃー?
奏の母:ええ、そろそろお父さんの誕生日でしょう?
奏の母:奏とお母さんでこっそり準備して、 お父さんをびっくりさせようと思うの
幼い奏:おとうさんを……
奏の母:ふふ、奏が手伝ってくれれば きっと、とっても喜んでくれるわ
奏の母:奏、お母さんと一緒に準備してくれる?
幼い奏:うんっ!
幼い奏:ねえねえ、どうすればよろこんでくれるかな? あっ! ケーキどうしよう! クリームいっぱいでイチゴもたくさんのせたいな!
奏の母:そうね。お父さんはショートケーキが好きだから、 奏とお母さんで手作りしましょうか
幼い奏:わあ……わたしも作っていいの!?
奏の母:もちろんよ。 一緒にとびっきり美味しいケーキを作りましょう!
奏の母:あとは——
幼い奏:(さぷらいずぱーてぃー、 すっごく楽しみだなあ……!)
幼い奏:(あ……! そうだ! おとうさんがびっくりしちゃうプレゼントもしたいな)
幼い奏:(でも、何がいいんだろ……?)
幼い奏:(そうだ……!)
翌日
幼い奏:(えっと、おしいれの中に……)
幼い奏:(……あった!)
奏の母:……あら、奏? お父さんが昔使ってたキーボードなんて持ち出して、どうしたの?
幼い奏:ひゃっ!
幼い奏:あっ、えっと、その……! おえかきするから、これをかこうと思って……
奏の母:お絵描き? それなら、わざわざ押し入れから出さなくても、 もっと綺麗なものがあると思うけど……
幼い奏:うっ……ううん、これがいいの! しゅーちゅーしたいから、おかあさんあっちに行ってて!
奏の母:わかったわ。 それじゃあ、ごゆっくり
幼い奏:えっと、ここを押せば音が出るんだよね……
幼い奏:わあ……
幼い奏:これで、曲が作れるかも……!
幼い奏:あれ? でも、どうやったら おとうさんみたいに作れるんだろ……?
幼い奏:じー……
奏の父:……奏、そんな遠くでどうしたんだい? いつもみたいに、近くで見てもいいんだよ
幼い奏:ううん、大丈夫。 わたし、今はナイショだから!
幼い奏:おとうさん、わたしのこと気にしないで お仕事してていいよ
奏の父:わ、わかったよ
幼い奏:ここと、ここを押して……
幼い奏:あ……。 おとうさんみたいにできたかも……!
幼い奏:あれ? 今のってどこ押したんだっけ?
幼い奏:ねえねえ、おかあさん! おとうさんに言いたいこと、ない?
奏の母:言いたいこと? そうねえ……今日のご飯は何が食べたいか——
幼い奏:えっと、そういうのじゃなくて、 おたんじょうびの日に、言いたいこと!
奏の母:ああ、そういうことね。 もしかして、お手紙を書いてくれるの?
幼い奏:う、うん。 おとうさんのプレゼントに……
奏の母:ふふ、それなら…… 『誕生日おめでとう。 お父さんの作ってくれる曲はいつも、とても優しくて』——
幼い奏:……——♪ ……——♪
誕生日 当日
奏の母:——というわけでお父さん、 改めて、誕生日おめでとう!
幼い奏:おめでと~!
奏の父:ふたりとも、ありがとう。 いやあ、びっくりしたよ……
奏の父:まさか、こんなに美味しそうなごちそうを 用意してくれてるなんて思わなかったな
奏の母:ケーキは奏と一緒に作ったのよ
幼い奏:クリームぬるの、むずかしかったけど がんばったよ!
奏の父:ありがとう、奏。 とっても美味しそうだ
幼い奏:えへへ……
奏の母:それとね、奏からお父さんに プレゼントがあるんですって
奏の父:え、そうなのかい?
幼い奏:うんっ! ちょっと待っててね
幼い奏:よい、しょ……
奏の父:あれ? それは…… 僕が昔使っていたキーボード?
奏の母:あら? 奏、プレゼントはお手紙じゃなかったの?
幼い奏:えへへ、ちがうの。 わたしのプレゼントはね……
幼い奏:『奏とおかあさんの、おとうさんだいすきの歌』!
奏の父:え……
幼い奏:……——♪ ……——♪
奏の母:この歌詞……。 私が奏に話した……
奏の父:奏……
幼い奏:(おとうさんとおかあさん、すごくびっくりしてる……! えへへ、よかったあ!)
幼い奏:(……あ、あれ? 次はどこをひけばいいんだっけ……)
幼い奏:(わかんないけど……ここ、かな?)
幼い奏:(あ……こっちの音も、いいかも。 練習してたのとちがうけど、このまま——)
幼い奏:♪—— ♪————
幼い奏:♪——……
幼い奏:えっと……
奏の父:今の曲は……奏が作ったのかい?
幼い奏:うん! おとうさんみたいに、うまくできたか わかんないけど……
幼い奏:でも、おうた歌ってる時のおとうさん、 すごく楽しそうだから……よろこんでくれるかなって
奏の父:奏……
奏の父:——すごいじゃないか!
奏の母:ええ! まさか、奏が曲を作っていたなんて……!
幼い奏:えへへ……びっくりした?
奏の父:びっくりどころじゃないさ! すごく驚いたし……とても嬉しいよ
奏の母:お母さんのメッセージも歌にしてくれて、 すっごく嬉しかったわ!
奏の母:こんな素敵なメロディーをつけてくれてありがとう、奏! とっても上手だったわ
奏の父:うん……とてもあたたかい、良い曲だ
奏の父:奏、またお父さんのために曲を作ってくれるかい?
幼い奏:うんっ!
奏の父:いやあ、こんなに小さいのに、 曲が作れるなんて……奏は天才だな
奏の母:ふふ、本当ね
幼い奏:(よかったあ、おとうさんとおかあさん、 たくさんよろこんでくれた……!)
幼い奏:(えへへ、うれしいなあ)
幼い奏:(また、わたしが曲を作ったら よろこんでくれるかな……)
第 6 话:優しい思い出と現実
誰もいないセカイ
湖
奏:——それが、最初に作った曲
奏:あれから、ときどきお父さんに教えてもらいながら 曲を作るようになったんだ
奏:どんな曲を作ったら、ふたりが笑ってくれるかな、とか……
奏:幸せな気持ちになってくれるかな、とか ……そんなことを考えて作ってたな
リン:そっか……
リン:奏は本当に、お父さんとお母さんが大好きなんだね
奏:……うん
奏:お母さんはいつも、わたしを見守ってくれてて ……不安な時はぎゅっとしてくれたり、 寝る時は子守唄を歌ってくれてた
奏:お父さんも、いつも優しくて……。 何かあれば頭を撫でて褒めてくれたな
奏:お父さんとお母さんといると、あったかくて—— いつも、幸せな気持ちになれたんだ
奏:——わたしが曲を作るたびに お母さんも、お父さんも笑ってくれて……
奏:……すごく、嬉しかったな
リン:……よかったね
奏:え?
リン:奏にとって、音楽は—— すごく大事なものだって、わかって
奏:あ……
奏:…………そうだね
奏:(わたし達のそばには、いつも音楽があって…… その時間が、幸せだったから)
奏:(だから……音楽が、とても好きだったんだ)
奏:(……でも……)
奏:(わたしのせいで、お父さんは……)
奏:(お父さんは——)
リン:……奏?
奏:あ……
リン:どうしたの? 苦しそう、だけど
奏:……そろそろ、戻るね。 曲、早く仕上げなくちゃいけないし
奏:(……わたしは、誰かを救う曲を 作り続けないといけないから)
奏:(……これからも、ずっと……)
リン:でも……
奏:……大丈夫、心配かけちゃってごめん
奏:話、聞いてくれてありがとう。 おかげで少しすっきりした
奏:曲ができたら……また来るね
リン:奏……
リン:……わかった
KAITO:…………
KAITO:……なるほど
KAITO:(あいつが作る曲の背景には、そんな想いがあったのか)
KAITO:(それが——まふゆの胸に届いているのかもしれないな)
KAITO:(だが——)
KAITO:あいつ、今……想いを殺そうとしたな
第 7 话:願い
奏の部屋
奏:…………
奏:(……もう、あの日には戻れない)
奏:(戻りたいなんて……思っても、どうしようもない)
奏:——作らなきゃ。 やっぱりわたしには……それしか、ない
絵名:『——あれ、K? まだやってたんだ』
奏:あ……
奏:『えななん、お風呂から戻ってきたの?』
絵名:『うん。頭もすっきりしたし、 今日は1枚仕上げられるかも』
奏:『わかった。いつもどおり作業してるから、 何かあったら呼んで』
絵名:『ん、わかった』
絵名:『ねえ、K。ちょっと相談なんだけど……』
絵名:『落ちサビの絵、今は暗い印象にしてるでしょ? でも、もう少し光が見えるほうがいいのかなって 思ってるんだけど……どう?』
奏:『……そうだね。 ………………』
絵名:『……K?』
奏:『あ……ごめん。 ちょっと考えごとしてたから、うまくまとまらなくて』
絵名:『……もしかして、さっきの進路のことで悩んでる感じ?』
奏:『悩んでるってわけじゃないんだけど、 ちょっとだけ考えちゃって』
絵名:『そうなんだ……』
奏:『あ……大丈夫だよ。 さっきリンと話して、少し考えが整理できたんだ』
絵名:『え、リンと?』
奏:『……うん』
奏:『わたしがしたいこと……って考えてたんだけど、 やっぱり何も思い浮かばなくて』
奏:『でも、昔は……音楽が純粋に好きだったなって思ったんだ』
絵名:『へえ……』
絵名:『……それって、どうしてなのか聞いてもいい?』
奏:『うん。……わたしが幸せだなって思った瞬間は、 いつも音楽があって……』
奏:『わたしが作った曲で、お父さんとお母さんが笑ってくれて』
奏:『……そんな時間が、とても好きだったんだ』
絵名:『そっか……』
絵名:『——だから、Kの曲ってあったかいんだ』
奏:『え……?』
絵名:『Kの作る曲から感じるあたたかさって、 そういう気持ちから来てるのかなって。 なんだか納得できるっていうか』
絵名:『じゃあ、卒業したら音楽をやることにするの?』
奏:『あ……うん、そうだね。 今までどおり——音楽を続けるよ』
奏:『やっぱりわたしは……作り続けないといけないから』
絵名:『え……?』
絵名:『それって、どういうこと……?』
奏:『…………』
奏:『……話してて、気づいたんだ』
奏:『……いくら曲を作り続けても、 あのあたたかい時間は、もう戻ってこないんだなって』
絵名:『あ……』
奏:『そんなこと考えても、 仕方ないんだってことはわかってるけど……』
奏:『でも……お父さんが曲を作れなくなったのは わたしのせいだから』
奏:『だからお父さんの分も、曲を作り続けないと——』
絵名:『ちょ、ちょっと待って!』
奏:『え……』
絵名:『……それで……』
絵名:『……それで、Kは幸せになれるの?』
奏:『わたしは……』
奏:『誰かが、わたしの曲で救われてくれれば それで——』
絵名:『——奏、聞いて』
奏:『え……』
絵名:『……お父さんのことは、大変だと思う。 自分のせいだって責めちゃうのも……仕方ないと思う』
絵名:『でも……でも、それと奏の幸せは別じゃない?』
絵名:『ていうか、そうじゃないと私が嫌……!』
絵名:『奏は、こんなにみんなのために頑張ってるんだから……! 奏自身が幸せにならなきゃ、絶対おかしい』
奏:『……あ……』
奏の母:奏がお父さんみたいな曲を作れるようになったら すごく素敵なことだとお母さんも思うわ
奏の母:でも……奏が、奏自身が幸せに過ごしてくれれば、 お母さんは、それが一番幸せなのよ
奏:『……でも……』
???:『——そいつの言うとおりだ』
絵名:『えっ?』
奏:『……カイト?』
KAITO:『お前……自分の想いを殺そうとしたな』
奏:『想いを……殺す?』
KAITO:『……そうだ』
KAITO:『望んではいけない、自分にそんな資格はない、 そんな風に思い込んでな』
KAITO:『……違うか?』
奏:『……それは……』
KAITO:『……お前は、いつもまふゆに言ってるだろ』
KAITO:『想いを大切にしろと』
KAITO:『誰かを救うため、幸せにするために 曲を作り続けることは別にいい』
KAITO:『だが……お前自身の想いから目をそらすな』
奏:『わたしの、想い……』
奏:『……っ、でも……』
絵名:『……ねえ、奏』
奏:『え……』
絵名:『ニーゴに入る前も、今も…… 私、奏の曲にはたくさん救われてるの』
絵名:『苦しい時も、奏の曲を聴くたびに…… まだ描いてていいのかなって、 ニーゴでだったら、描き続けられるんじゃないかって思えたんだ』
奏:『絵名……』
絵名:『……まあ、描き続けるのは、苦しいけど…… それでも、私にとってはやりたいことだから』
絵名:『それにね、卒業したあとのことも、 ちゃんと考えようって思えたんだよ』
絵名:『……ニーゴに入ってなかったら、 ここまで向き合えてなかったと思う』
奏:『………』
絵名:『それにね、奏』
絵名:『私が、そうやって将来のことを考えようって思えたのも 奏のおかげなんだよ』
絵名:『ほんのちょっとだけど、……やりたいことができてるから』
絵名:『だから、奏にも…… 自分が幸せになれる道に進んでほしいって、そう思うんだ』
KAITO:『——本当に望む想いがあるのなら、自分で殺すな』
KAITO:『自分の想いをないがしろにするやつが、 本当の意味であいつを救えるとは、俺は思えない』
奏:『あ……』
絵名:『ちょ、カイト! ……もう、言いたいこと言って帰るんだから』
奏:『…………』
奏:(……本当に、いいのかな)
奏:(昔みたいに、って……望んでいいのかな)
奏:(わたしは、お父さんの未来を……奪ったのに)
奏:(……でも……)
奏:(もし……本当に……)
奏:本当に、許されるなら——
第 8 话:あの日の音色を
数日後
誰もいないセカイ
リン:…………
ミク:リン、どうしたの?
リン:奏、大丈夫かなって
ミク:あ……。少し前に、ここに来たんだよね
リン:……うん、奏は『すっきりした』って言ってたけど 少しだけ気になるんだ
ミク:そっか……
KAITO:…………
リン:あ……
ミク:奏、来てくれたんだ
奏:……うん、今日はみんなにデモを聴いてもらう予定だから このあとまふゆ達も来るよ
奏:でも、その前に……リン達に聴いてほしい曲があって
リン:え、わたし達に?
奏:うん。……流すね
KAITO:……!
リン:なんだか、いつもの奏の曲とちょっと違うね
ミク:うん……。 いつもは、もっと胸がぎゅっとなって—— ふわっとあたたかくなるけど……
ミク:この曲は……すごく、幸せな感じがする
奏:……あれから、少し考えたんだ
奏:大好きだったあの時間は、もう戻ってこないし ……わたしがお父さんにしたことは、変えられない
奏:でも、もし……
奏:“もし、元に戻れるなら”って考えるくらいは、 いいのかなって……
KAITO:…………
奏:だから……初めて作曲した時を思い出して この曲を作ってみたの
ミク:そうなんだ……
奏:うん。……ニーゴにしては明るすぎるかもって思ったから 投稿はしないつもりなんだけど
リン:え……
リン:わたし……この曲、すごく好き
リン:このまま、誰にも聴かれないのは…… もったいないと思う
ミク:わたしも
奏:そう……かな?
リン:うん、まふゆ達にも聴かせてあげて
奏:……わかった
絵名:あれ? 奏、先に来てたんだ
瑞希:みんなで集まってなんの話してたの?
奏:あ、うん。えっと……
奏:——聴いてほしい曲があるんだ
数時間後
病室
奏の父:…………
奏:……お父さん、ごめん。 ちょっと遅くなっちゃった
奏:最近寒くなってきたけど大丈夫? 暖かそうなセーターがあったから、買ってきたよ。 よかったら着てみてね
奏の父:…………
奏:……そうだ、お父さん覚えてる? わたしが初めて曲を作った時のこと
奏の父:…………
奏:……あの時のことを思いだして、曲を作ってみたんだ
奏:今のわたしが作る曲は…… もしかしたら、あの頃とは違うかもしれないけど
奏:でも……お父さん達に喜んでほしいっていう気持ちは、 昔と同じように乗せてる、つもり
奏の父:…………
奏:……あのね、お父さん
奏:わたし、あの日から…… 誰かに幸せになってもらえるような曲を作ってるんだ
奏:まだ、お父さんみたいには作れてないけど…… わたしの曲を必要としてくれてる人もいるの
奏:その子は、今大変な状況だから…… わたしもちゃんと救えるように、頑張ろうと思う
奏:……その子を救えたら、 たくさんの人を……幸せにできたら
奏:少しはお父さんみたいに……なれるかな
奏の父:…………
奏:…………
奏:もし、それができて…… お父さんが、わたしを思い出してくれたら
奏:昔みたいに……
奏:昔みたいに、よくできたねって…… 今まで、頑張ったねって、褒めてくれるかな
奏:それで、ほんの少しでいいから また——
奏の父:…………
奏:(こんなこと、本当は望んじゃいけないのかもしれない)
奏:(でも……)
奏:(今は……そう願っても、いいかな……)