活动剧情
Period of NOCTURNE
活动ID:12
第 1 话:五線譜は交わらない
ストリートのセカイ
crase cafe
ミク:メイコ。ここにあるカップ、拭いて棚に戻せばいい?
MEIKO:ええ、お願い。 いつもありがとうね、ミク
ミク:あれ? このカップ……
MEIKO:どうかしたの?
ミク:ヒビが入ってる。 これじゃ、飲み物入れてもこぼれちゃう
MEIKO:あら……本当。 気に入ってたから、残念だわ
ミク:……うん
ミク:なんだかちょっと、嫌な感じ
スクランブル交差点
冬弥:♪————
通行人A:わあ、かっこいい曲! あの人が歌ってるのかな?
通行人B:みたいだね……ていうか、すっごくうまくない? いつもここで歌ってるのかな?
冬弥:……ふぅ
冬弥:(だいぶ遅くなったな。今日の練習はここまでにするか)
冬弥:(しかし最近は調子がいい。 立ち止まって聴いてくれる人も以前より増えた気がする)
冬弥:(4人で活動するようになってから、 だいぶ上達できているようだ)
冬弥:(あとは——気持ちの変化が大きいだろうな)
冬弥:(彰人達と一緒に夢を追う。 そう決心してからこんなにも心が軽くなった)
冬弥:(あとはただ、ひたすら前に進むだけだ)
冬弥:だが……
冬弥:(……いや、こればかりは考えても仕方がない)
冬弥:(父さんのことは——)
青柳家 リビング
冬弥:……ただいま
冬弥:(こんな時間に電気がついている。 ということは……)
冬弥の父:——遅い
冬弥:……父さん
冬弥の父:こんな夜遅くまで、どこで遊んでいた
冬弥:……遊んでいない。 駅前で歌っていた
冬弥の父:それを遊んでいると言うんだ。 それすら理解できないほど堕落したか
冬弥:っ……遊びでやっているわけじゃない! 俺達は、最高のイベントを作るために——
冬弥の父:いつまでそんな子供じみた言い訳をして逃げる気だ
冬弥:逃げてなんていない!
冬弥:これは、俺が選んだ道だ
冬弥の父:選んだ道? あんな馬鹿げたものを選んで一体何になる!
冬弥の父:よく思い出せ、お前はクラシックでこそ活きる人間だ! ここまで言っているのに、なぜそれがわからない!?
冬弥:俺はもう子供じゃない! 自分の進む道は自分で決める
冬弥:俺はもう、クラシックには戻らない。 ストリート音楽一本でやっていく
冬弥:もう、俺のやることに口を挟まないでくれ!
冬弥の父:冬弥!
冬弥の部屋
冬弥:…………
冬弥:……これでいい
冬弥:これで——前に進める
シブヤの公園
杏:よし、声出しもバッチリだね! 私はいつでも歌えるよ!
彰人:こっちもいけるぞ。 冬弥はどうだ?
冬弥:問題ない
彰人:にしても、あいつ遅えな。 何してんだ?
冬弥:小豆沢か。 たしかに、いつもこの時間には着いているはずだが……
杏:あ、こはね! ちょうど今声出し終わったところだよ……って
杏:どうかしたの? なんだかいつもより元気ないけど
冬弥:何かトラブルか?
こはね:……うん。その、ちょっと……
こはね:私最近、ライブに慣れるために、 ひとりで対戦形式のライブに出てるでしょ?
杏:うん。前のライブも良かったよね! お客さん盛り上げるの、うまくなってきたし!
杏:それがどうかしたの? もしかして、変なヤツに絡まれたとか!?
こはね:あ、ううん! そういうわけじゃないよ!
こはね:ただ、お母さんの知り合いが、私がライブハウスに 入るところを偶然見ちゃったみたいで……
こはね:それで昨日の夜、お父さん達に『そんな危険な場所に 出入りするのはやめてくれ』って言われちゃったの……
杏:そっか……。 馴染みのない人にとっては、危ない場所に見えるよね
彰人:ったく、おっさん連中は どいつもこいつも頭が固えな
彰人:自分の頭で決めてやってることぐらい、 好きにやらせりゃいいだろうが
冬弥:……ああ、そうだな
こはね:で、でも、私も最初は怖い所だって思いこんでたから、 お父さん達の気持ちもわかって……
こはね:どうすればいいんだろう……
杏:そういうことなら簡単じゃない?
こはね:え?
杏:ほら、次に4人で参加するイベントって、対戦形式でしょ? それにお父さん達を呼んだらいいんだよ!
杏:対戦っていっても、お互いリスペクトして盛り上げてく イベントだから、イメージ変わると思うんだよね
杏:百聞は一見にしかずって言うし、 実際に見てもらうのが一番じゃない?
冬弥:(実際に見てもらう……。そういう方法もあるのか。 だが……)
杏:もし何かあったら、私も一緒に説得するからさ。 あ、あとはうちの店に来てもらうのもいいかもね
こはね:そっか……! そうだね!
こはね:実際に見て、杏ちゃん達にも会ってもらえたら、 きっと怖くないってわかってくれるよね!
冬弥:…………
冬弥:(小豆沢の親は、それで理解してくれる可能性があるんだな)
冬弥:……うらやましいな
彰人:ん? 何か言ったか?
冬弥:いや……何も
杏:それじゃ、こはねのお父さんも来るかもしれないし、 次のイベントの練習、はりきってやろっ!
こはね:うんっ!
第 2 话:縛られた旋律
WEEKEND GARAGE
彰人:じゃあ、次のイベントのセトリはこれでいくぞ
杏:うん、私は文句ないよ。 今日の出来からいっても、この順番がいいだろうしね
杏の父:いらっしゃい。 ……おう、あんたか! 久しぶりだな!
男性客:よう、謙さん。久しぶり。 今日はちょっと話したいと思って……お!
男性客:タイミングがいいな! まさか全員いるなんて
こはね:……? ねえ杏ちゃん、あのお客さんこっち見てない?
杏:ん? あの人ってたしか……
男性客:なぁ、君達、Vivid BAD SQUADだろ? よかったら、俺に歌を聴かせてもらえないかな?
こはね:えっ?
彰人:謙さんの昔馴染み……ですか?
杏の父:ああ。元々は近くのライブハウスの音響スタッフでな。 イベント後によく飲みに行ったもんだ
杏の父:この店を開く時にもあれこれ手伝ってくれて、 奥のライブスペースの音響も手配してくれた
昔馴染みの客:仕事の都合で地方にいたんだけど、最近戻ってきてね。 久しぶりにこっちのライブハウスに行ったら、 君達を見かけたってわけだ
昔馴染みの客:まだ粗削りだけど光るものがあると思って、 謙さんに話したくなったんだが……
昔馴染みの客:まさかそれが杏ちゃん達だったとはな! 歌いかたが似てるとは思っていたけど、驚いたよ
杏:ふふ、昔より大きくなったから ビックリしたでしょ?
杏の父:態度も大きくなったしな
杏:ちょっと父さーん?
昔馴染みの客:ハハ。相変わらず仲がいい親子だな
昔馴染みの客:それで、よかったらまた君達の歌を聴かせてくれないかな?
杏:そういうことならもちろん! みんなもいい?
杏:おじさん、いつもいいアドバイスくれるから、 絶対損はないよ!
彰人:そういうことならオレはかまわねえ。 謙さんの知り合いの頼みなら、なおさらな
こはね:うん! 私も大丈夫だよ
冬弥:俺も問題ない
彰人:ああ……せっかくやるなら、 次のイベントでやるアレがいいんじゃねえか?
杏:だね! そしたら録画しておこっかな。 ステージでやるの初めてだし
杏:父さん、私のスマホで撮ってくれない? 始まったらここ押してくれればいいからさ
杏の父:おう
杏:よーし、それじゃビシっと決めちゃおう!
昔馴染みの客:いやぁ、素晴らしかったよ! ありがとう、いいものを聴かせてくれて
杏:ふふっ、どういたしまして!
昔馴染みの客:杏ちゃんは昔よりもさらにパワフルになってるね。 ステージ上での存在感もあって目が離せなかったよ
昔馴染みの客:君の伸びやかな声も素晴らしかった。 君のおかげで、グループとしても幅が出ているね
昔馴染みの客:君は感情的な歌唱に聴こえるけど、 冷静に周りを見てパフォーマンスをしているね。 そのバランス感覚がとてもいい
昔馴染みの客:それから君は、難しいパートでも音程が乱れず正確だったね。 ここまでピッチがブレないなんて、相当練習をしているんだろう
昔馴染みの客:それぞれの個性が光っていて、とても良かった。 これから更に伸びるかと思うとワクワクするよ!
杏:ありがとう! 私達、いつか絶対RAD WEEKENDを 超えるライブをやるから、楽しみに待っててね
昔馴染みの客:ああ、応援しているよ
彰人:そんじゃ今日は解散だな。 明日は機材使わせてもらうから、公園じゃなくてこっちに集合だ。 間違えんじゃねえぞ
杏:オッケー。 それじゃこはね、お父さんによろしくね!
こはね:うん! イベントのチケットとフライヤーもちゃんと渡すね
冬弥:(このあとは……自主練習に行くか)
冬弥:(この時間だと、まだ父さんは起きているだろうしな)
昔馴染みの客:そういえば、君、ちょっといいかい?
冬弥:俺……ですか?
昔馴染みの客:ああ。君くらいの年齢でそこまで正確に音程をとれる子は あまり見ないから、気になってね
昔馴染みの客:もしかして、クラシックをやっていたんじゃないかい?
冬弥:……!
冬弥:……はい、そうです。 幼い頃からずっとやっていました
昔馴染みの客:ああ、やはりそうか。 納得がいったよ
昔馴染みの客:……だからなのかな。 どこか型にはまっているようにも聴こえるのは
冬弥:え?
昔馴染みの客:型に囚われないで、君自身の表現したいことを出していったら、 もっと魅力的な歌になるんじゃないかと思ったんだが……
昔馴染みの客:いや、だがまずは君の武器を磨いていくのが一番だね。 君の正確さはきっとチームの支えになる。これからも頑張ってね
冬弥:…………はい。 ありがとうございます
冬弥:(型に囚われている……)
冬弥:すまない、白石。 さっき動画を撮っていただろう。見てもいいか?
杏:うん、もちろんいいよ。 あとでスマホに送っとくね
冬弥:ああ、頼む
スクランブル交差点
彰人:じゃあな、冬弥。 自主練すんのはいいけど、無理はすんなよ
冬弥:ああ。大丈夫だ
冬弥:白石から送ってもらった動画は……これか
冬弥:『♪———— ♪————』
冬弥:(…………たしかに)
冬弥:(こうして聴くと彰人達の歌は、表現が豊かだ。 ……自由だと感じる)
冬弥:(だが、俺は……)
冬弥の父:リズムが違う! もう一度だ
冬弥の父:よく見ろ、楽譜どおりに弾くんだ。 何度言えばわかる?
冬弥の父:勝手な演奏をするんじゃない!
冬弥:……俺は
冬弥:俺は、クラシックに囚われているのか……?
第 3 话:欠けているもの
翌日
WEEKEND GARAGE
冬弥:……どうも
杏の父:おう、冬弥。今日はこっちで練習だったな。 テーブル席とってあるから、使っていいぞ
冬弥:ありがとうございます。 注文は……ブレンドで
杏の父:了解だ
冬弥:…………
冬弥:(やはり何度動画を見ても、 俺の声だけが固く聴こえる)
冬弥:(一体どうすれば……)
彰人:冬弥、悪い。待たせたな。 サッカー部の連中に捕まってよ
冬弥:…………ああ
彰人:なんだよ辛気臭い顔して。 またなんか悩んでんのか?
冬弥:……ああ、そうだ。 自分の歌の、致命的な欠点に気づいてしまった
冬弥:正直どうすればいいのかさっぱりわからない。 彰人、よければお前の意見も聞かせてほしい……ん?
冬弥:どうした彰人。そんなに驚いた顔をして
彰人:いや、お前がそんなに素直に話すとは思わなかったからな……
冬弥:……どういう意味だ?
彰人:どういうも何も、お前、悩み出すとすぐ黙りこむだろ
彰人:で、ひとりで沼にハマってくっつーか……。 前にもめた時がガッツリそうだっただろ
冬弥:……たしかに
彰人:ま、その辺の癖もちょっとは直ってるみたいだな
冬弥:そのようだ。 彰人のおかげだな
彰人:ハッ、おだてても何も出ねえぞ
杏の父:待たせたな。ブレンドだ。 彰人も同じでいいか?
彰人:あ、はい。お願いします
冬弥:ありがとうございます、謙さん
杏の父:今日はとっておきの豆だ。香りもいい。 冬弥も、少しは気分がよくなるんじゃないか
杏の父:何を悩んでるのか知らんが、 またあんまり抱えこむなよ
冬弥:あ……
彰人:謙さん、気づいてたんですか?
杏の父:なんとなくな。 年の功ってヤツだ
冬弥:気をつかわせてしまってすみません……
杏の父:なに、たまにはそんなこともあるだろ。 何かあったのか?
冬弥:はい。実は——
彰人:——クラシックのせいで型にはまってる、か
冬弥:……俺はもともと、クラシック畑の人間だからな
冬弥:例えば、クラシック音楽を専門に学んだピアニストが ジャズにうつると、スイングをうまく弾けないことがあるらしい
冬弥:クラシックの型に囚われて、 ジャズのグルーヴを出すことができないんだ。 だから……
杏の父:自分もそうなってると思うのか?
冬弥:……はい
冬弥:俺の歌は、彰人達の歌と何かが違う気がするんです。 うまく言えないんですが……自由になりきれていないと感じて
冬弥:そのせいで、型にはまった、 つまらない歌しか歌えていないように思えるんです
彰人:……オレは、そうは思わねえ
彰人:型にはまった歌しか歌えないヤツなら、そもそも組んでねえしな
杏の父:そうだな。 そいつはオレも同感だ
冬弥:ですが……
冬弥:——いや。 彰人が言うなら、そうなんだろう
杏の父:ハハ、信用されてるな
冬弥:だが……なぜだろう。 俺にはどうしても、自由さが欠けているように聴こえてしまう
冬弥:クラシックに囚われているような……そんな気がする
杏の父:ふむ。 オレ達には問題ないように聴こえるが、 冬弥にとってはそうじゃない……
杏の父:なら、答えは簡単だな
冬弥:え?
杏の父:歌いかたに問題がないのにまだ気になるってんなら、 原因はクラシックじゃなく、別にあるってことだ
冬弥:別に……?
冬弥:…………
杏の父:思い当たる節があるって顔だな
冬弥:はい。 ですがこれはもう、自分の中で 決着をつけたつもりなんですが……
彰人:……親父のことか?
冬弥:……ああ。ついこのあいだも、 クラシックに戻れと言われて口論になってしまった
冬弥:だが、俺はもう、彰人達と進んでいくと覚悟を決めた
冬弥:だから父さんにも、 『クラシックには戻らない。ストリート音楽一本でいく』と 伝えたんだ
冬弥:父さんは納得いかない様子だったが、 それは価値観の違いだ。どうしようもない
冬弥:だから、俺はもう割り切れたと思っているんだが……
杏の父:ふむ……
杏の父:それでも、冬弥の中ではまだ割り切れてないのかもしれないな
冬弥:え?
杏の父:前に話を聞いた時も思ったが、冬弥にとって親父さんの存在は 相当大きいものなんだろう
杏の父:親父さんが反対してる道を進むことに、 まだ後ろめたさがあるんじゃないか?
冬弥:それは……
杏の父:ま、だからって親父さんに理解してもらうのは 難しそうだが……
杏の父:いずれにせよ、引きずっちまうなら、 腹くくって正面から向き合う必要があるかもしれねえな
冬弥:…………
杏:遅くなってごめーん! 風紀委員が長引いちゃった!
こはね:私も、遅れちゃってごめんなさい!
彰人:……謙さんと話してたから大丈夫だ。 準備できたら声出し始めるぞ
杏:ん? 冬弥、大丈夫? なんだか元気なさそうだけど……
冬弥:……いや、問題ない
冬弥:謙さん、ありがとうございました。 できることがないか、少し考えてみます
杏の父:おう。あんまり根詰め過ぎるなよ
冬弥:はい……
こはね:あ、そういえばこのあいだのことなんだけど、 お父さん、イベントに来てくれることになったの
こはね:危ない所じゃないかどうかは、見てから考えるって 言ってくれたんだ
杏:本当!? よかったじゃん!
杏:こはねのお父さん、イベントで歌うカッコイイこはね見たら びっくりしちゃうかもね?
こはね:えへへ、ちょっと恥ずかしいな
冬弥:…………
第 4 话:届かない言葉
スクランブル交差点
冬弥:…………
杏の父:いずれにせよ、引きずっちまうなら、 腹くくって正面から向き合う必要があるかもしれねえな
冬弥:正面から……か
彰人:やっぱり、親父のことか?
冬弥:……ああ。 謙さんにはああ言われたが、 どうにも、これ以上向き合える気がしない
冬弥:俺には父さんが、目の前にそびえ立つ大きな壁のように思える。 越えることも、壊すことも……うまく想像できない
彰人:……何回言ってもわからねえようなバカ相手に、 無理に向き合う必要もねえだろ
冬弥:そうできたらいいんだがな……
冬弥:何にせよ、今のまま引きずっていては、 チームにも迷惑をかけてしまうかもしれない
冬弥:だから……今日、話してみようと思う
彰人:……そうか
彰人:(何か、オレにできることはねえのか?)
彰人:(……いや。 これは、冬弥がひとりで向き合う必要がある問題だ)
彰人:(冬弥が決めたなら、オレは黙って見守らねえとな)
青柳家 リビング
冬弥:……ただいま
冬弥:(父さんはリビングにいるようだな。 よし……)
冬弥の父:ようやく帰ってきたか。 冬弥——このチラシはなんだ
冬弥:え?
冬弥:これは……今度のイベントのフライヤー? どうして父さんが……
冬弥の父:お前の部屋にあった。 大事な楽譜の上にこんなものを置くとは……信じられん
冬弥:こんなもの……
冬弥:……俺達の音楽へのイメージが悪いのは仕方ない。 チームメンバーの父親も、そう誤解していた
冬弥:でもそうじゃないんだ。 一度来てくれれば、きっと父さんにも……!
冬弥の父:いい加減に目を覚ませ!
冬弥の父:お前もクラシックの価値を知っているだろう! どれだけ人生を豊かにするものか、私が教えたはずだ!
冬弥の父:だというのに、あんな雑音に夢中になって……! そんなものに時間をかけたところで、 お前の人生には何も残らない!
冬弥:何も……残らない?
冬弥:……違う。 何もなかったのは、クラシックを辞めるまでの俺だ
冬弥:ただ父さんの言われるままに動いていた、 奴隷のような俺だ!
冬弥:どうしてわかってくれないんだ! どうして父さんは……知ろうとすらしてくれない……!
冬弥:……っ!
冬弥の父:冬弥!
宮益坂
冬弥:……ハァ、ハァ、ハァ……
冬弥:どうして……父さんは……
翌日
WEEKEND GARAGE
冬弥:♪————!
彰人:冬弥ストップだ! そこはお前が出てくとこだろ
冬弥:……あ。すまない……
杏:冬弥、もしかして疲れてる? ちょっと休憩しよっか?
冬弥:……いや、大丈夫だ
こはね:……?
彰人:(冬弥のヤツ、親父ともめたな。 顔には出てねえけど歌に出てやがる)
彰人:(……クソ、どうする?)
杏:じゃあ今日はここまでにしよっか。 みんなお疲れ!
冬弥:…………
こはね:ねえ杏ちゃん、青柳くん大丈夫かな? 今日あんまり調子よくなさそうだよね
杏:うん……
杏:——ねえ冬弥! 今日いつもと違うけど、何かあった?
こはね:あ、杏ちゃん!?
杏:私達チームだし、何か悩んでるなら、 話しあったほうがいいと思うんだよね
冬弥:それは……。 …………
杏:もちろん、答えたくないなら答えなくても大丈夫だよ。 できれば話してほしいけど……人に話したくないこともあるしね
彰人:——いや
彰人:気づかれたなら、こいつらにも話したほうがいい
冬弥:彰人……
彰人:冬弥、歌に影響が出てる以上、 お前だけの問題じゃねえぞ
彰人:だから……オレにも少しは頼れ
冬弥:…………すまない
杏:そうだよ、私達もいるんだし! 悩みがあるならみんなで考えたほうが早く解決するし、 なんでも言ってよ!
彰人:足りない頭でも、数突きあわせれば 少しはマシな答えが出るかもしれねえからな
杏:ちょっと~足りないって何? あんただって成績は同じレベルでしょ?
彰人:うるせえな。そこはどうだっていいだろ
こはね:わ、私も頑張って考えるよ! 青柳くんには前助けてもらったし、力になりたいもん!
冬弥:……ふっ
冬弥:ありがとう……助かる
冬弥:楽しい話じゃないが、ふたりにも相談に乗ってもらいたい。 いいか?
こはね・杏:『うん!』
こはね:そっか……お父さんと、そんなことが……
冬弥:……父さんは聞く耳を持ってくれない。 俺達の音楽も、子供の遊びだと思っている
冬弥:もう理解はしてもらえないと割り切れば、 いいのかもしれないが……
彰人:そんな器用なタイプじゃねえからな。お前は
彰人:にしても、お前の親父は頭固い通り越して化石かよ。 なんでそこまでクラシックやらせたがんだ
杏:たしか冬弥のお父さんって、すごい音楽家なんだよね
こはね:青柳春道さん……だよね。 テレビにも出てるから知ってるよ。 青柳くんのお父さんだって知った時はびっくりしちゃった
こはね:たしか、海外ではピアニストとして活躍してたんだっけ?
冬弥:ああ。ウィーンの音大を出たあとにプロとして活動していた。 日本では作曲家として有名になったな
杏:うわー、ザ・音楽家!って感じだね
冬弥:そうだな……父さんは昔からクラシック音楽一筋だ
冬弥:俺の家族も同じような道を進んでいる。 俺にはふたり兄がいるんだが、どちらも父さんの指導を受けて、 ひとりはプロに、もうひとりはニューヨークの音楽院に通っている
冬弥:父さんとしては、俺にもそういった道に 進んでもらいたかったんだろう
冬弥:だが俺は……兄さん達と同じようにはなれなかった
彰人:別に、なる必要もねえだろ。 親の願い叶えるためにいるんじゃねえんだ
冬弥:……ああ、そうだな
杏:にしても、聞けば聞くほど説得するのが難しそうな お父さんだね
彰人:……兄貴達から、親父にもっと話を聞くように 言ってもらうのはどうなんだ?
冬弥:一度相談してみたことはある。 だが兄さん達は、どちらも父さんを尊敬していて、 むしろ俺の考えが甘いと否定されてしまった……
こはね:あ、じゃあ、お母さんは?
冬弥:……母さんも昔からクラシック音楽をやっていて、 クラシックに戻ってきてほしいと言っているんだ
杏:あ~、じゃあもう私が直接話しに行こっか!?
彰人:お前じゃ話が余計ややこしくなるだろ
こはね:うーん……どうしたらいいんだろう……
第 5 话:お互いの信じるもの
WEEKEND GARAGE
杏:はぁ……全然いいアイディア出ないなぁ……
こはね:そうだね……
彰人:足りねえ頭の限界だな
冬弥:3人とも、ありがとう。 真剣に聞いてくれて
杏:そんなの当たり前でしょ。 同じチームなんだからさ
杏:だからちょっと休憩したら、また考えよ! ……って
杏:ちょっとお客さん増えてきたみたい。 あんまりのんびりもしてられないかな
彰人:なら、気分転換がてらあっちに行くのはどうだ?
こはね:あっち? ……あ! そうだね!
crase cafe
ミク:小物入れとかどうかな……シュガースティックを入れたり……
MEIKO:あら、ミク。何をしてるの?
ミク:このあいだ、ヒビが入ったカップがあったでしょ?
ミク:このまま捨てちゃうのはもったいないと思って、 何かに使えないか考えてたの
MEIKO:フフ。大事にしてくれてるのね。 ……あら?
杏:メイコさん、こんにちは!
こはね:お邪魔します!
彰人:ちわっす
MEIKO:いらっしゃい! よく来てくれたわね
ミク:リンとレンは出かけているから、 どの席座っても大丈夫だよ
ミク:今日はここで練習していくの?
杏:ううん、練習は終わったから、ちょっと休憩! いろいろ話しあってたら疲れちゃってさ
MEIKO:そうなのね。イベントのセトリでも話しあってたの?
冬弥:いえ……今日は、俺のことで……
ミク:冬弥のこと……?
ミク:お父さんか……
MEIKO:それはまた難しい話ね。 私達だけでなんとかなる話でもないし……
杏:そうなんだけど……。 でも、何かできないか考えたいなって思ったんだ
ミク:そっか。杏達らしいね
ミク:だけど——そっか。 冬弥のお父さんはそういう考えかたなんだね。 …………
こはね:どうしたの? ミクちゃん
ミク:ああ、ちょっと考えてたの
ミク:クラシック音楽も、ストリート音楽も、 音楽なのは一緒でしょ?
ミク:どうしてストリート音楽だとダメなんだろうって思って
彰人:頭が固えからだろ? 音楽に上下があると思ってんだよ
ミク:でも、お父さんだって音楽が好きなんだよね。 そこは私達と一緒だと思うんだけどな
杏:音楽が好き、か……
こはね:……あ、もしかしたら……
こはね:私達はストリート音楽が好きだから、 青柳くんのお父さんにそのよさをわかってほしいって 思ってるけど……
こはね:青柳くんのお父さんも同じなんじゃないかな?
冬弥:同じ?
こはね:うん。クラシックが好きで、よさをもっとわかってほしいから クラシックをやらせたいんじゃないかなって
冬弥:クラシックが好きだから……
冬弥の父:よく思い出せ、お前はクラシックでこそ活きる人間だ! ここまで言っているのに、なぜそれがわからない!?
冬弥の父:いい加減に目を覚ませ!
冬弥の父:お前もクラシックの価値を知っているだろう! どれだけ人生を豊かにするものか、私が教えたはずだ!
冬弥の父:だというのに、あんな雑音に夢中になって……! そんなものに時間をかけたところで、 お前の人生には何も残らない!
冬弥:俺の人生に、何も残らない……
冬弥:……そうか。父さんは信じているのか
彰人:信じてる? 何をだ?
冬弥:クラシック音楽が、人生に、 たしかなものを残してくれるということをだ
冬弥:クラシックを続け、探究していくことで幸せになれると…… そう強く信じている
冬弥:だから俺の幸せのために、 戻るべきだと言っているんだろう
彰人:……だとしても、そんなのお前の親父が勝手にそう思いこんで、 勝手に押しつけてるだけじゃねえか
彰人:お前がどうすりゃ幸せになれるかは、 お前にしかわからねえだろ
冬弥:そうかもしれないが……
冬弥:父さんからしてみれば、俺は、自分から幸せになる道を 捨てているように見えるのかもしれない
冬弥:だが——
冬弥:父さんがクラシックでこそ幸せになれると信じているなら、 俺は、俺達の音楽でこそ幸せになれると信じている
冬弥:この音楽があったからこそ、 俺は彰人と出会えたし、夢を見つけられた
冬弥:白石や小豆沢とチームも組めた
冬弥:歌うことを楽しいと—— 誰かに届けたいと心から思えた
冬弥:この音楽が俺の人生になくてはならないものだと、 俺は信じている
彰人:なら、それを伝えろよ
冬弥:え?
ミク:うん、そうだね
ミク:今の冬弥、かっこよかったよ。 本気だって伝わってきた
杏:うん! 今の言葉ならきっと、お父さんにも伝わるんじゃないかな
こはね:頑張って、青柳くん!
冬弥:そうか……そうだな。 立ち止まっていては、変えられない
冬弥:前に進むためには、何度でも、勇気を出さなくてはな
第 6 话:背を押す言葉
スクランブル交差点
彰人:今日、また親父と話すのか?
冬弥:そのつもりだ。 決意が変わらないうちに話したほうがいいだろう
冬弥:今度こそ、わかってもらえるといいんだが……
彰人:…………
彰人:オレは——わかってるからな
冬弥:え?
彰人:お前が、馬鹿みたいに音楽が好きだってことだ
彰人:最初お前があそこで歌ってた理由を聞いた時は、 なんて動機で始めてやがるってキレかけたけどよ
彰人:お前の歌を聴けば、音楽を真剣にやってきたってことは 嫌でもわかった
冬弥:彰人……
彰人:それに、考えてもみろよ
彰人:まともに遊べないくらい、朝から晩まで 音楽漬けだったヤツがそこから逃げ出したら、 普通は音楽から離れるだろ
彰人:けど、冬弥は音楽から離れて——もう一度音楽を選んだ
彰人:そんなの、相当好きじゃなきゃできねえだろ
彰人:だから……それだけは忘れんなよ
彰人:……あー、クソ。 うまく言えねえな
冬弥:そうか
冬弥:それなら俺は、彰人がわかってくれていることを、 ずっと——ずっと覚えておこう
彰人:……おう
彰人:そんじゃ、親父に一発決めてこい。 お前が納得できるまでな
冬弥:ああ
青柳家 リビング
冬弥:(……もうすぐ、父さんが帰ってくる時間だ)
冬弥の父:戻ったぞ。 ……ん?
冬弥の父:珍しいな、こんな時間に帰っているとは
冬弥:——話があります
冬弥の父:なんだ、突然かしこまって。 やっと馬鹿げた考えを改める気になったか?
冬弥:違います
冬弥の父:……なら、話す必要はない
冬弥:いえ、聞いて下さい。 俺は父さんと話したい
冬弥の父:……今日はやけに食い下がるな。 だが何を言われても私は……
冬弥:父さん、俺は——クラシックが好きです
冬弥の父:……なに?
冬弥:父さんの指導はとても厳しくて、 正直、ずっと苦しかったです。 ですが——
冬弥:父さんはクラシックのおもしろさを たくさん教えてくれました
冬弥:運指ひとつとってもまるで違う音が出ることも、 楽譜を読めば、作曲家の意図や背景までわかることも、 知れば知るほど楽しくて……ワクワクしました
冬弥:何より俺は、父さんの弾くピアノが好きです
冬弥:あんな風に、自由に弾くことができたら、 どんなに素晴らしいだろうと思っていました
冬弥の父:……なら、どうしてお前は……
冬弥:最初は、父さんの言うように、ただ逃げたかった
冬弥:毎日練習に縛られていることに耐えきれなかった。 それに、父さんに反発したい気持ちもありました
冬弥:だから……父さんが嫌がりそうな音楽を始めました
冬弥の父:……だろうな。 どうせ、そんなくだらない理由だと思っていた
冬弥:ですがそこで俺は、自分のやりたい音楽を持った 友人に出会えました
冬弥:歌えば歌うほど……どんどんストリート音楽が 好きになっていきました
冬弥の父:…………
冬弥:これは今度のイベントのチケットです
冬弥:どうか、今の俺の覚悟を聴いて下さい
冬弥の父:こんなものを聴いたところで……
冬弥:父さんには取るに足らないものかもしれない。 ですが、俺にとっては違います
冬弥:父さんにとってクラシック音楽が何より大切なように、 俺にとっても、この音楽が何より大切なんです
冬弥:初めて……絶対に失いたくないと思ったんです
冬弥:それをわかってもらいたいんです。 誰でもない——音楽のおもしろさを教えてくれた父さんに
冬弥の父:…………
冬弥:待ってます
冬弥:それから……今までクラシックを教えてくれて、 本当にありがとうございました
冬弥:父さんがクラシックを教えてくれなかったら、 俺はきっと、彰人達にも、この夢にも出会えていなかった
冬弥:だから——ありがとう、父さん
冬弥:……それじゃあ、おやすみなさい
冬弥の父:…………
冬弥の部屋
冬弥:…………
冬弥:…………はぁ
冬弥:(話せることはすべて話せた)
冬弥:(あとは、明日、できるだけのことをするだけだ)
第 7 话:夜の終わりのカンタービレ
ライブハウス
冬弥:…………
彰人:もうすぐ開場だな。 準備はできてるか?
杏:もちろん! 今日は喉の調子もいいし、 これっぽっちも負ける気しないよ!
こはね:うん、絶対に勝とうね! ……あ
彰人:開場したみたいだな
こはね:……あ! お父さん!
杏:え? どこどこ?
こはね:えっと、メガネかけてて…… あ、あの大きなカメラ持ってる人……
杏:あ、あの人? ふふっ、雰囲気がこはねに似てるね
こはね:う、うん。でも……あっ! お父さん、スタッフさんに注意されてる!
杏:ああ、イベントの撮影って禁止されてるからね
こはね:もう、だからカメラ持ってきちゃだめだって言ったのに……
彰人:…………冬弥は、大丈夫か。親父のことは
冬弥:ああ
冬弥:実は——父さんを、今日のイベントに呼んだ
彰人:え……
こはね:青柳くんのお父さんを?
杏:それで、来るって?
冬弥:来るかどうかはわからない。 チケットだけ渡してきた
冬弥:だが俺としては、父さんが来ても来なくても、 どちらでもいいと思う
冬弥:俺にできることは、ただ歌うことだけだからな
彰人:……そうか
彰人:そんじゃ、今日もいつもどおりやるぞ
冬弥:ああ
杏:じゃ、私達も思いっきり頼らせてもらっちゃおうか、こはね!
こはね:うん!
冬弥:……頼る?
こはね:前に杏ちゃんと話してたんだ。 青柳くんと一緒だと、すごく安心して歌えるねって
杏:そ。きっと冬弥の歌が、私達のこと 支えてくれてるからだと思うんだよね
杏:ってわけで、今日も期待してるよ!
冬弥:そうか。 なら——任せろ
MC:続いては、Vivid BAD SQUADだ!
観客A:お! 今回の優勝候補だな!
観客B:どうだかなぁ。前に『STAY GOLD』で聴いた時は バラバラだったぞ
観客B:ひとりひとりは上手いんだけど、 チームとしてまとまりがねえっつーか……
メガネの男性:こ、こはねー! がんばれー! 負けるなー!
こはね:お、お父さん……恥ずかしいよ……
冬弥:…………
冬弥:(父さんは……やはり、いないか)
冬弥:(だが——問題ない)
彰人:いくぞ、冬弥
冬弥:ああ
こはね・杏:『♪————!』
彰人:♪————!
冬弥:(……なぜだろう。 いつもより、彰人達の声がよく聴こえる)
冬弥:(次にどう歌うのか、どう合わせていけばいいのか、 理屈でなく感覚でわかる)
冬弥:(なら、俺にできることは……)
冬弥:♪————!
彰人:……!
観客A:……おい! どこがバラバラなんだよ! すげえじゃねえか!
観客B:な、なんだ? 前と全然違うぞ!?
冬弥:♪————!
冬弥:(俺にできることは、ただ、全力で歌うことだけだ……!)
冬弥:……ハァ、ハァ……
MC:今日一番の歓声だ! Vivid BAD SQUAD!
彰人:……おい、冬弥!
冬弥:え? ……うわ!
彰人:お前、あんな歌いかたできるなら早く聴かせろよな
冬弥:……いや、今日のは偶然だ。 俺も、自分がこんな風に歌えるとは思わなかった
彰人:偶然じゃねえよ
冬弥:……?
彰人:お前が親父のこと吹っ切ったからだろ
彰人:頑張ったな、冬弥
冬弥:……ああ。 ありがとう、彰人
第 8 话:その手に掴みとった光
イベント後
ビビッドストリート
こはね:それじゃあお父さん、気をつけて帰ってね。 私達も反省会したらすぐに帰るから、心配しないでね
杏:今日は見に来てくれて、ありがとうございました!
杏:お父さん、わかってくれてよかったね、こはね!
こはね:うん! みんなも一緒に説明してくれてありがとう!
杏:そういえば、彰人のいい人モード久しぶりに見たかも。 ほんっと外面はいいよね~
彰人:余計なトラブル起こしたくねえだけだ、オレは
彰人:それで……そっちの親父はどうだったんだ
冬弥:残念ながら、来てくれなかったようだ
こはね:あ……
冬弥:だが、問題ない。 俺の中で決着はついた
冬弥:父さんになんと言われようとも、 俺は俺の道を進む
杏:ふふ、今日の冬弥すごかったよ。 一緒に歌っててすっごく興奮したもん!
杏:いつもみたいに支えてくれるだけじゃなくて、 背中を押してもらってるみたいだったよ
冬弥:そうか。なら、よかった
彰人:ま、オレの相棒ならこれくらいはやってくれねえとな
杏:とか言って、一番テンション上がってたくせに~。 歌い終わったあと、冬弥の頭ワシャワシャーってしてたでしょ?
彰人:いらねえとこばっかり見てるなお前……
冬弥:あとで、あちらにも伝えに行かないとな。 特にミクには、大事なことに気づかせてもらった
冬弥:ありがとう、みんな。 相談して本当によかった
青柳家 リビング
冬弥:ただいま
冬弥:……父さん
冬弥の父:…………遅い
冬弥:すみません
冬弥:ですが、イベントがある日はどうしても遅くなってしまうので、 これからは前もって連絡を入れるようにします
冬弥の父:…………
冬弥:それじゃあ、おやすみなさい
冬弥の父:冬弥
冬弥:……はい
冬弥の父:私には…………ああいう音楽の良さはわからん
冬弥:……ああいう音楽?
冬弥:父さん、まさか……
冬弥の父:私はまだ仕事がある。 さっさと寝ろ
冬弥:…………そうか
冬弥:見に来てくれたのか
冬弥:(まだ、理解してはもらえないかもしれない。 だが……)
冬弥:ありがとう——父さん
crase cafe
ミク:……よし、できた
リン:やっほー! 遊びに来たよー! メイコ、今日はココアが飲みたいな♪
MEIKO:はいはい、リンはココアね。 レンは?
レン:オレもココア! ……あれ?
レン:ミク、そんな鉢植えあったっけ?
ミク:ああ、これは鉢植えじゃなくて、カップだよ
ミク:ヒビが入って使えなくなっちゃったんだけど、 こうやって、下に受け皿を置けば使えるなって思って
レン:あ、ヒビで漏れちゃうのを逆に利用したってこと? よく思いついたね!
リン:あれ? 植えたの、お花じゃなくて草なんだね。 なんて名前の草なの?
ミク:タイムっていうハーブだよ。 前こはね達が来てくれた時に相談したら、教えてくれたんだ。 ハーブティーにもできるみたい
ミク:それから、タイムの花言葉って——『勇気ある行動』なんだって
MEIKO:勇気ある行動ね。 あの子達にピッタリだわ
MEIKO:……冬弥くんは大丈夫かしら
ミク:きっと大丈夫だと思うよ。 あ……
ミク:ほら、来てくれたみたい
リン:え?
杏:こんにちはー!
MEIKO:あら、いらっしゃい! 今日も来てくれたのね
こはね:あっ! レンくんとリンちゃんもいる
リン:みんなで来てくれたんだねっ! ほらほら、座って座って~!
レン:座ってって、リンの店じゃないだろー?
リン:えー、それくらい言ってもいいじゃーん!
彰人:お前ら、しょうもないことでケンカしてんじゃねえぞ
ミク:ふふっ
ミク:この感じだと、うまくいったみたいだね
冬弥:ああ。今日はその話をしに……
冬弥:ん? こんな鉢植えがあったんだな
ミク:うん。ヒビが入ったカップを 鉢がわりにしたんだ
ミク:壊れかけても、諦めなかったらずっと使い続けられるよね
冬弥:壊れかけても……か。 そうだな
冬弥:今なら、いい歌を歌えそうだ。 よければ、1曲歌わせてもらっても構わないか?
ミク:もちろん。断る理由なんてないしね
彰人:歌うのか? ならオレも入れろよ
レン:えっ、彰人達歌うの? ならオレも歌う!
リン:わたしも歌いたーい!
彰人:おい、順番だ順番。 まずはオレ達からだ
レン:えー! 一緒に歌おうよ~!