活动剧情

導く勇気、優しさを胸に

活动ID:121

第 1 话:わたしの目指すもの

教室のセカイ
穂波:……ふう
穂波:(ウォーミングアップ、これくらいでいいかな。 だいぶ腕もあったまってきたし)
穂波:(そろそろみんなも来る時間だよね。それまでは……)
穂波:(……あ……)
真堂:突然ですが、ひとつ質問をさせてください。 皆さんの……『目指す音楽』とは、なんですか?
穂波:(……やっぱりまだ見つけられないな)
穂波:(真堂さんに考えてほしいって言われた、 わたしの『目指す音楽』……)
咲希:アタシは……音楽で、 聴いてくれる人を元気にできたらいいなって思います
一歌:私は——音楽で、歌で みんなをつなげていきたいって思います
志歩:やっぱり私は、お客さんの心を震わせる演奏がしたい
穂波:(みんなは、もうちゃんと答えを出した……。 わたしも早く自分の答えを見つけないと)
穂波:(焦らなくていい、ってみんなは言ってくれるけど、 ずっと待たせるわけにはいかないよね……)
咲希:——ほなちゃん! もう来てたんだ!
穂波:あ……うん! 先に体をあっためておこうと思って
志歩:そっか。 じゃあ、早いとこ私達も準備しようか
一歌:うん
一歌:♪————!!!
ミク:へえ……
レン:すごいな……! なんかいつもより、 演奏に勢いがあるっていうか……
MEIKO:前より一段と力をつけたって感じがするね
穂波:(たしかに、すごい)
穂波:(みんなの音、いつもよりずっと力強く響いてくる)
穂波:(どうしてこんなに……)
穂波:(——あ)
穂波:(もしかして、みんなの『目指す音楽』が決まったから?)
穂波:(だから音にも気持ちが乗って、 いつもより演奏に勢いがあるのかも……)
穂波:(なら、わたしも——)
志歩:——穂波、遅れてるよ!
穂波:あ……!
穂波:っ、ごめん……
穂波:(だめ……。今は演奏に集中しないと)
ミク:——お疲れさま、みんな。 いい演奏だったよ
咲希:ありがとう、ミクちゃん! アタシも弾いてて、すっごく楽しかった!
志歩:でも、まだそろってないところはあったし 休憩したらもう1回やろう
穂波:……うん。わかった
一歌:……穂波、大丈夫?
穂波:え?
一歌:なんだか、ちょっと疲れてるように見えて……。 さっきの演奏の時も、少し集中できてなかったみたいだし
咲希:そういえばそうだね……。 何かあったの?
穂波:……ううん。平気だよ。 ちょっと考え事しちゃってただけ
穂波:——そうだ! それより、レモンのはちみつ漬け作ってきたんだ。 今持ってくるから、みんなで食べよう?
咲希:わあ……ありがとうほなちゃん! 楽しみだな~!
穂波:ふふ、それじゃあちょっと待っててね
一歌:…………
ソリス・レコード事務所
真堂:ふう……もうこんな時間か。 昼、食べ損ねたな……
真堂:……まあ、いいか。 それより企画書、もっと詳細詰めないとな
ソリス・レコード社長:——精が出るねえ、真堂くん
真堂:ああ、社長。 昼食の帰りですか?
ソリス・レコード社長:うん。でも今日は食べすぎたかな。 年々、油物がつらくなるのを感じるよ……
ソリス・レコード社長:君のほうは……その様子だと、昼食抜きみたいだな。 根を詰めるのはいいけれど、あまり無理はしないようにね
真堂:ええ、気をつけます
ソリス・レコード社長:それで? 作っていたのは、Leo/needの資料かい?
真堂:ああ……はい。 今度の会議で提出予定の企画書ですね
ソリス・レコード社長:なるほど。 いいものを出してくれることを期待しているよ
真堂:プレッシャーをかけないでくださいよ。 毎度のことですが、戦略を立て、 そのためのスケジューリングをして……
真堂:デビュー前のこの時期はいつも大忙しですよ。 飯を食う暇もない
ソリス・レコード社長:そうかい? ……それにしては、 ずいぶん楽しそうにも見えるけどねえ
真堂:え? ……そうでしょうか
ソリス・レコード社長:自分では気がつかないものなのかな。 なんだか、まだバンドマンだった頃の君を思い出すよ
真堂:やめてくださいよ。そんな昔の話……
ソリス・レコード社長:ははは! それでどうだい、Leo/needの調子は?
真堂:……そうですね……
真堂:……いいバンドなのは間違いないですよ。 演奏技術にはまだまだ伸びしろがありますし——何より芯がある
ソリス・レコード社長:芯、か……
真堂:まだまだ未熟な点はありますが…… 彼女達はバンドで、音楽で何をなしていきたいのか—— 自分の想いと真剣に向き合って考えられる
真堂:だからか……彼女達からは、どんな困難にぶつかっても、 立ち上がれるだけの精神的な強さを感じます
ソリス・レコード社長:…………
ソリス・レコード社長:……なるほど……
ソリス・レコード社長:たしかにそれは重要だね。 どんなにうまい演奏ができても、潰れてしまっては意味がない
真堂:はい。まあ、実際売れるかどうかは、 こっちの腕にかかってそうですがね
ソリス・レコード社長:そうか。 ……うん、なんとなくわかったよ
真堂:はあ。……けど、結局なんの用だったんですか?
ソリス・レコード社長:ああ。実は今、 うちに、大きな仕事の話が舞い込んできていてね
真堂:それは……
真堂:詳しく話を聞かせていただきたいですね

第 2 话:嬉しいことから

宮益坂女子学園 2年A組
穂波:…………はあ
穂波:(……昨日は、あんまり眠れなかったな)
穂波:(早く、わたしの“目指す音楽”を見つけなきゃって思うのに、 考えれば考えるほど、よくわからなくなっちゃって……)
穂波:(このままじゃ、みんなにも迷惑かけちゃう……)
一歌:——おはよう、穂波……って、大丈夫? 目の下、クマできてるよ
穂波:……うん。ちょっと眠れなくって
一歌:…………
一歌:……やっぱり、真堂さんに言われたこと考えてるの?
穂波:え……?
一歌:今の穂波が悩むことって言ったら、それかなって思って。 昨日も少し、ぼんやりしてたし……大丈夫?
穂波:あ……
穂波:……うん、平気だよ。 でも、なかなか答えが出なくて少し焦っちゃってるかも
一歌:……そっか……
穂波:ごめんね……迷惑かけちゃって
一歌:ううん! 穂波のペースで、ゆっくり答えを出してくれれば大丈夫だよ
穂波:うん……
一歌:——あ、そうだ。 穂波の好きなことや嬉しいことってなに?
穂波:え?
一歌:あ、いきなりごめんね。 何か参考になればなって思って
一歌:私もそうやって答えを出したから
一歌:ほら、前にみんなに感謝を伝えるために、 ってライブをしたでしょ?
一歌:あの時、吉崎さんと花乃ちゃんが ふたりで一緒にライブに来てくれたのを見て思ったんだ
一歌:こんな風に、私達の音楽をきっかけに 『大切な人と一緒にいられるようになった』って人が 少しでも増えたら……すごく嬉しいなって
穂波:あ……
一歌:それで私は『誰かと誰かがつながるきっかけになる音楽』 をやりたいって言ったんだ
一歌:だから穂波も、自分が嬉しいって思うことや好きなこと、 やりたいって思うことから考えたら、 案外簡単に答えが出るんじゃないかな
穂波:自分が、嬉しいって思うこと……
穂波:……ありがとう、一歌ちゃん。 もう少し考えてみるね
一歌:うん。何かあったらすぐに言ってね。 いつでも力になるから
穂波:ありがとう。そうするね
放課後
教室のセカイ
穂波:(一歌ちゃん、日直で少し遅れるって言ってたけど…… 他のみんなはもう来てるかな)
穂波:こんにちは——
リン:え~! あたしは、もっと落ち着いた雰囲気のほうがいいって思うなー!
咲希:う~ん、そっかあ……
穂波:(咲希ちゃん? それにリンちゃんとカイトさんも。 何してるんだろう?)
咲希:アタシは、いろんな楽器を目立たせて もっと賑やかにしたいなって思ったけど……
咲希:——カイトさんはどっちがいいと思います?
KAITO:……俺は……
リン:カイト兄は、あたしの意見に賛成だよね!?
KAITO:……え
咲希:あっ、それはなしだよリンちゃん! カイトさんの素直な意見が聞きたいんだから!
リン:わかった! じゃあカイト兄の正直な意見を聞かせて!
リン:落ち着いた雰囲気か、賑やかな感じ……どっちにするのか!
KAITO:え、えっと、俺は……
穂波:ふたりとも……カイトさん、困ってるみたいだよ?
リン:え? あれ、ほなっちじゃん! いつからそこにいたの!?
KAITO:助かった……
穂波:ほんの少し前だよ。 みんな、集まって何話してたの?
咲希:ふっふっふ。実はね、 前に朔さんと対バンした時に作った曲をアレンジしてたんだ
穂波:アレンジ?
咲希:うんっ! アタシ達、まだそんなにオリジナル曲って多くないでしょ?
咲希:これからプロとしてライブすることが増えると思うんだけど、 その時おんなじ曲ばっかりやってたら お客さん飽きちゃうかなって思って
咲希:でも、だからってすぐに新曲作れるわけじゃないから、 いろんなアレンジを作って、ライブでやりたいな~って思ったの!
咲希:それで、セカイに来たらちょうどふたりに会ったから 手伝ってもらってたんだ~
リン:えっへん、偉いでしょ! たっくさん褒めてくれていいからね、ほなっち♪
穂波:ふふ、ありがとうリンちゃん。 カイトさんも、わたし達のためにありがとうございます
KAITO:……うん
穂波:でも、さっきは悩んでたみたいだったけど……何かあったの?
咲希:そうだった! サビのところをどうするか話してたんだ
咲希:アタシは、いろんな楽器が目立って 賑やかな感じにできないかなって思ったんだけど——
リン:ええ~! そしたら今と曲の雰囲気全然変わっちゃうじゃーん! この曲は静かで優しい感じなのがいいところなのに~
穂波:そっか、この曲は咲希ちゃんが 『寂しさに寄り添いたい』って思って作った曲だもんね
咲希:リンちゃんの言うことはわかるよ! でも、せっかくアレンジするなら思いっきり変えたほうが お客さんも新鮮な気持ちで聴いてくれると思うし……
穂波:(アレンジか……。 わたしは、曲作りのことは詳しくないけど……)
穂波:それなら……まずは、咲希ちゃんがこのアレンジで 『聴いてくれた人にどんな気持ちになってほしいのか』 っていうことを考えてみるのはどうかな?
咲希:え?
穂波:一歌ちゃんや咲希ちゃんが曲作りをする時って、 いつもそのことを考えてたでしょ?
穂波:この曲に『どんな想いを込めたいのか』、 この曲で、お客さんに『どんな想いを感じてほしいのか』 って……
穂波:だから、アレンジをする時も、 その気持ちは大事にしたほうがいいんじゃないかなって思って
咲希:想いを……
KAITO:……そうだね
KAITO:俺も、穂波の言うとおり、 アレンジでもそこが大事なのは変わらないと思う。 曲のコンセプトやテーマになるところだから
KAITO:リンの言うように、もっと落ち着いた雰囲気にするのも、 咲希の言うように、いろんな楽器を目立たせて賑やかにするのも、 どっちもいいとは思うけど……
KAITO:でも、本当に大事なのは—— そこに、どんな想いが乗ってるか、だと思う
KAITO:だから……まずはこのアレンジで、お客さんに 『前とは少し違う、どんな想いを感じてほしいのか』 ……それを考えるとやりやすいんじゃないかな
咲希:……前とは少し違う、どんな想いを感じてほしいのか……
咲希:……そっか……
咲希:ありがとう、ふたりとも! なんか、ちょっとわかったかも……!
リン:ホント!?
咲希:うん! アタシが伝えたいこと——『寂しさに寄り添う』って想いに、 少しだけアレンジを加えるなら……
咲希:そうだ……! 寄り添うだけじゃなくて『こっちだよ!』 って前に引っ張っていってあげられるような、 そんな曲にできたら……!
リン:わ~☆ それすっごくいいじゃん! よーし、もう1回イントロから一緒に考え直そ~!
咲希:うん!
数十分後
咲希:……ふう。 まだ半分くらいだけど、うまくいきそうかも!
リン:テーマが決まってから、サクサク進んだよね~
咲希:うんっ! みんな、相談に乗ってくれてありがとう! おかげで、いいアレンジになりそうだよ~!
穂波:ふふ、お疲れさま。咲希ちゃん
穂波:そうだ、頭使って疲れてない? おやつ用に買ってきたクッキーがあるから、 あとでみんなで食べよう
咲希:ホント!? やったー!
咲希:曲のアドバイスだけじゃなくて、クッキーまで……! もう、ほなちゃんが女神さまに見えてきたよ~!
穂波:もう……。大袈裟だよ
穂波:(よかった……。咲希ちゃんの力になれて)
穂波:(なんだかすごく……嬉しいな)
穂波:(あ……)
一歌:だから穂波も、自分が嬉しいって思うことや好きなこと、 やりたいって思うことから考えたら、 案外簡単に答えが出るんじゃないかな
穂波:(もしかして……わたしのやりたいことって……)
咲希:ほなちゃん? 急にぼーっとして、どうしたの?
穂波:あ……その、わかったかもしれなくて
KAITO:……わかった?
穂波:はい。 自分の『目指す音楽』が、なんなのか
咲希:え!? ホント?
リン:やったじゃんほなっち! それってどんな——
志歩:——みんな、おまたせ
レン:って、あれ? なんか盛り上がってた?
咲希:あ、みんな! ちょうどいいところに! みんなも一緒に、ほなちゃんの話を聞こう!

第 3 话:力になりたい

教室のセカイ
志歩:そっか、目指す音楽が……
ミク:それじゃあ、聞かせてほしいな。穂波の答え
穂波:うん
穂波:あのね……思ったんだ
穂波:わたしは—— Leo/needのみんなの力になりたいんだって
志歩:……私達の力に?
穂波:うん。一歌ちゃんに言われたの。 『目指す音楽は、自分の好きなことから考えてみたら』って
一歌:あ……
穂波:それで、さっきの咲希ちゃんを見て思ったんだ。 わたしは……誰かの力になれるのがすごく嬉しいんだなって
一歌:誰かの力に……
一歌:……そっか。 たしかに穂波、昔からそうだったもんね
咲希:うんうん! 誰かが困ってると、 いつもその人の話を聞いてあげて……
志歩:みんな、穂波のそういうところに助けられてるよね
穂波:あ、ありがとう……
穂波:それでね。 その……誰かの助けになれるのが嬉しいっていうのは、 バンドでも同じなんだ
穂波:みんなにはやりたいことや届けたい大事な想いがある。 だからわたしは、それがちゃんと叶うように力になりたいの
一歌:穂波……
穂波:この前のワンマンの時も、 お客さんが喜んでくれてすごく嬉しかったんだ。 でも、嬉しかったのはそれだけじゃなくて——
穂波:みんなの叶えたい想いがちゃんと叶ったから。 それに、その手助けができたから、なんだよね
咲希:ほなちゃん……
穂波:“音楽を聴いてくれる人達の心に響かせたい” その想いと同じくらい……ううん、もしかしたらそれ以上に——
穂波:“みんなの想いを叶える手助けがしたい”…… その想いは、わたしにとって大事なことなんだ
一歌:……そっか
一歌:それが穂波の……目指す音楽なんだね
穂波:……うん
穂波:でも……本当にこれでいいのかなってちょっと迷ってるんだ
志歩:え?
穂波:その……わたしの答えは、 みんなと違って“お客さんにこういう想いを届けたい” ……っていうのじゃないから
志歩:それは、そうかもしれないけど——
MEIKO:——別に、いいんじゃない?
MEIKO:それが穂波が真剣に考えて出した答えなら、 間違いなんてことは絶対ないと思うよ
穂波:え?
リン:あたしもそう思う! それに、『みんなの手助けがしたい』ってめちゃすてきだよ~!
KAITO:……俺も、穂波らしいって思う
穂波:あ……
穂波:……ありがとうございます、皆さん
ミク:これで、みんなの気持ちは決まったみたいだね
一歌:うん。私達が音楽でやっていきたいのは……
穂波:『音楽を響かせること』『音楽で元気をあげること』 『音楽で、誰かと誰かをつなげていくこと』
咲希:それに『みんなの想いを叶える手助けをすること』だよね!
志歩:こうして並べてみると、見事なまでにバラバラだね……
咲希:ここから、今度は『Leo/needの目指す音楽』を 決めなくちゃいけないんだよね? うーん、結構難しそうだな~!
一歌:……たしかにそうだね。 真堂さんは『4人の考えをすり合わせて』って言ってたけど……
一歌:これをLeo/needの目指す音楽として まとめるのって、どうやってやればいいんだろう
穂波:どれかひとつ選ぶっていうわけにもいかないよね……。 どれも大切な想いだし、みんなそれぞれ違ってるから
ミク:……そうかな? 私は、違ってるとは思わなかったけど
穂波:え?
ミク:だって、志歩の想いは 『音楽を聴いてくれる人の心に響かせたい』だったけど……
ミク:咲希と一歌の『元気にしたい』『つなげていきたい』だって、 その気持ちがあってこそ出てきたものでしょ?
志歩:それは……
穂波:あ、だったら わたしは少し違うかも……
穂波:わたしのは、みんなみたいに 『響かせたい』から生まれた想いじゃないから
ルカ:あら、そうかしら?
穂波:え?
ルカ:だって穂波はみんなをサポートすることで、 Leo/needの音楽を 『聴いてくれる人の心に響かせたい』と思っているでしょう?
ルカ:だったら、それは穂波の想いが みんなと同じ『心に響かせたい』に つながっているってことじゃないかしら
穂波:あ……
ミク:なら、やっぱりそれがLeo/need、 4人の共通する想いなんじゃないかな
一歌:『音楽を聴いてくれる人の心に響かせたい』が、私達の想い……
一歌:……たしかに、ミクの言うとおりかも
咲希:でも、いいのかな? これって最初の答えに戻っちゃってない?
ミク:いいんじゃないかな。 それがLeo/needにとって、一番大事なことだってことでしょ?
ルカ:そうね。大切なのは、響かせたい気持ちを深掘ったこと——
ルカ:そのおかげで、前よりもみんなの想いが よくわかったことだと思うわ
志歩:……そうだね。 真堂さんも前の答えに行き着くなら、 それはそれでいいって言ってたし
穂波:……そっか。 じゃあ、やっぱりこれがわたし達4人の『目指す音楽』なんだね
咲希:うん! それじゃあ……決まりだね……!
咲希:よ~し! アタシ達4人の目指す音楽…… 真堂さんにバシッと突きつけちゃお!

第 4 话:新たな役割

ソリス・レコード事務所
真堂:……なるほど
真堂:音楽を響かせ……元気を与え……人と人をつなげる。 そして、そのすべての想いを叶えられるよう力になりたい
真堂:……それぞれ細部は違っていても、 『聴いてくれる人達の心に響く演奏がしたい』 その想いは変わらない……ですか
一歌:……はい、これが私達の答えです
真堂:なるほど。とても皆さんらしいですね
咲希:本当ですか!? よかった~!
真堂:——望月さんの想いは、他のメンバーとは 少し違っているようにも思えますが……
真堂:メンバーを助けたい、支えたい、という気持ちは バンドをまとめる力になります
真堂:望月さんのような人がいることは、 Leo/needにとってラッキーなことだと思います
穂波:真堂さん……
穂波:……ありがとうございます
真堂:さて……。皆さんの想いはわかりました
真堂:この考えをもとに、皆さんの売り出しかたや、 今後の活動の方向性を、一度練ってこようと思います
真堂:具体的な内容が決まったら、また共有させていただきますね
一歌:は、はい……!
真堂:それと——
真堂:今日は皆さんに 他にも話したいことがあるんです
志歩:話したいこと……
咲希:って、なんですか?
真堂:これからプロとして活動するためにも——
真堂:Leo/needのリーダーを決めてほしいと思っています
穂波:バンドの……リーダー……
咲希:そ、そういえば……!
咲希:アタシ達……なんでそんな大事なこと 今まで決めてなかったんだろ~!!
志歩:まあ、特に必要だって感じたこともなかったからね。 基本的に決めなきゃいけないことは、 みんなで話し合って決めてたし
真堂:それも皆さんらしくていいとは思いますが、 これからはうちとのやり取りや 外部のインタビューなども増えるでしょうからね
真堂:そういった際には、バンドの代表者がいたほうが都合がいい
一歌:なるほど……
咲希:はいはい! 質問です! バンドのリーダーって、他にどんなことをするんですか?
真堂:そうですね……。 実際のところ、それぞれのバンドによって違いはあるのですが……
真堂:やはり大きな仕事は、 バンドの方針や意向について決断をくだす、という点でしょうね
咲希:そ、そうなんですね……。大変そう……
真堂:まあ、そこまで硬くならなくても大丈夫ですよ。 それより、何よりも大事な仕事は——
真堂:バンドを支え、導くことです
穂波:バンドを、支える……
真堂:——皆さんはこれから、 プロとして様々な困難に直面することになると思います
真堂:そのことで迷い、揺れ……バンドとしてどうするべきか、 自分達がどんな音楽をやっていくのか 何度も何度も悩む時がくる
穂波:…………
真堂:もちろん、何かあれば俺もサポートするつもりです。 皆さんが立ち上がり前に進むよう、力にはなる
真堂:ですが、俺はあくまでレコード会社の人間です。 俺の仕事は、皆さんの音楽を できるだけ多くの人に売り出すことです
真堂:……自分達のバンドを守るのは、自分達にしかできません
咲希:あ……
真堂:だからこそ、もしもこの先 バンドが崩壊するような事態になったとしても……
真堂:柱となり、メンバーを支え 守ることができるリーダーが必要なんです
志歩:……!
真堂:そして俺は、そのリーダーには——
真堂:望月さん、あなたがふさわしいと思っています
穂波:え……
穂波:わ、わたし……!?
穂波:……ど、どうして……わたしがリーダーに……?
真堂:はは、そんな驚くことじゃないでしょう。 理由はすでに説明しましたよ
穂波:え? それって……
一歌:……たしかに
一歌:——私も穂波がぴったりだと思うな
穂波:一歌ちゃんまで……
一歌:さっき、真堂さんが言ってたでしょ? バンドを支えて守るのがリーダーの仕事だって
一歌:だったら……私は、やっぱり穂波が一番だと思うんだ
咲希:……うん、アタシもそう思う!
咲希:だってほなちゃん、Leo/needを守ってくれたもんね!
穂波:え……?
一歌:前に、真堂さんに『私達の武器』を聞かれた時のこと覚えてる? あの時——
穂波:わたし達はお客さん達に、『青春を賭けて頑張っている』 というところを見てほしいわけじゃないんです
穂波:何よりもわたし達4人の——演奏で、心を震わせてほしいんです
一歌:穂波がああ言ってくれたから、 私達は大事なことを捨てずにすんだんだよ
志歩:……ふたりの言うとおりだね。 穂波はいつも、Leo/needを守ってくれてる
志歩:私も、穂波が一番リーダーに相応しいと思う
穂波:みんな……
穂波:(たしかにあの時は、『プロになれるかもしれないからって 一番大切なことを忘れちゃダメだ』って思って、 ああ言えたけど……)
穂波:(でも、あの時は無我夢中で……)
穂波:(これから先も、 またあんな風にできるのかって言われたら……)
穂波:…………
真堂:……気持ちが追いつかないのはわかります
真堂:ですが——俺も、 星乃さんが今言っていた時のことはよく覚えています
真堂:あの時、感じたんです。 このバンドは折れない強さを持ってると
穂波:そう、だったんですか……?
真堂:ええ。 ……正直なところを言えば、俺は皆さんの演奏に、 圧倒的な才能や技術を感じたわけではありません
真堂:それに……若いバンドは情熱がある反面、脆さもあります。 ……少しの衝突で、あっという間に崩壊してしまうこともある
真堂:それでも俺が皆さんと契約したのは……
真堂:このバンドなら、何があっても進んでいけるんじゃないか、 そう思ったからです
穂波:…………
真堂:そして、それは—— あなたの言葉があったからだ
穂波:わたしの言葉が……
真堂:もちろん、無理強いするつもりはありません。 今、ここで答えを決める必要もない。 家に帰ってゆっくり——
穂波:……いえ、大丈夫です
穂波:やらせてください
穂波:……正直、怖い気持ちはあります。 わたしなんかに、本当に務まるのかって
穂波:だけど、みんなの力になれるなら——
穂波:ううん、“わたしが”そうしたいから
穂波:わたしは……Leo/needのリーダーになります
咲希:ほなちゃん……!
穂波:……みんなも、いいかな?
一歌:うん……! もちろん!
志歩:よろしく、リーダー
真堂:では、望月さん。 リーダーとしてこれからよろしくお願いします
穂波:はい……!
穂波:(い、言っちゃった……。 まだ胸が、ドキドキしてる……)
穂波:(でも、みんなの力になれるなら——)
穂波:(頑張ろう……。リーダーとして……!)
???:——真堂くん、そろそろいいかな?
一歌:え?
真堂:ああ、はい。ちょうど終わったところです。 来ていただいて大丈夫ですよ、社長
咲希:え……社長さん……!?
真堂:……会うのは初めてでしたね。 こちら、うちの社長の太田です
咲希:は、はい! えっと、こんにちは! あ、あの、アタシ達……
志歩:Leo/needです。 いつも真堂さんにはお世話になっています
ソリス・レコード社長:ははは! そんなに硬くならなくても大丈夫。 それに当然、知ってるよ。 こちらこそ挨拶が遅れて申し訳ない
穂波:い、いえ。それより、今日はどうして……
ソリス・レコード社長:実は、ひとつお願いがあってね。 今度、君達の演奏を生で聴かせてもらいたいんだ
志歩:演奏を……?
ソリス・レコード社長:うん。まだ先の話なんだけど、 毎年やってる大きな音楽フェスがあってね。 そこに、うちからひと枠推薦できることになったんだけれど……
ソリス・レコード社長:君達を、その候補に挙げようかと考えてるんだよ
咲希:アタシ達を……!?
ソリス・レコード社長:と言っても、まだ仮の話だよ。 ただ、君達のことは真堂くんから とてもいいバンドだと聞いているしね
ソリス・レコード社長:私としても、君達がたくさんの人に知ってもらえるよう できるだけのサポートをしたいと考えてるんだ
ソリス・レコード社長:とはいえ、大きなフェスとなると実力も必要だし 会社として、まだ未熟なバンドを推薦するわけにもいかない
志歩:だから……演奏を見せてほしい、ということですか
ソリス・レコード社長:試すような真似をして申し訳ないね
ソリス・レコード社長:けどやはり、実力を知るのなら 生の演奏を聴くのが一番だと思っているんだ
ソリス・レコード社長:そこで、できたら練習の際にでも1曲 聴かせてもらえたら嬉しいと思っているんだが、どうだろう?
穂波:……わかりました
穂波:たくさんの人にわたし達の音楽を聴いてほしい…… わたし達は、そう思ってプロになったんです
穂波:そのためのチャンスがあるなら……やります
志歩:穂波……
穂波:……いいよね、みんな
志歩:……もちろん。 演奏をたくさんの人に響かせる機会があるなら、 いくらでもやる
ソリス・レコード社長:……では、決定だね
ソリス・レコード社長:了承してもらえてよかったよ。 私もひとりの音楽ファンとして、 君達の最高の演奏を楽しみにしているよ
穂波:(最高の演奏……)
穂波:……は、はい……!
咲希:すごいすごいすご~い! フェスに出れるかもしれないなんて……!
真堂:驚かせてしまってすみません。 ですが俺としても……皆さんにはぜひとも フェスの出場権を勝ち取ってほしいとは思っています
真堂:しかし、それを意識するあまり 硬い演奏になってしまっても仕方がない
真堂:ですから皆さん、あまり気負いすぎず、 力を十分に発揮できるようリラックスして挑んでください
一歌:は、はい
真堂:……それでは、今日はもう帰ってもらって大丈夫ですよ
真堂:社長やフェスのこともありますが……デビューも近い。 体調には十分気を付けてください
真堂:……それと望月さん。 改めて、リーダーとしてこれからよろしくお願いします
穂波:……はい!

第 5 话:バラバラな音

翌日
教室のセカイ
リン:ふぇ、フェス~~~!!!
志歩:うん。演奏の出来次第では候補に挙げてくれるみたい
レン:それなら気合い入れて演奏しないとな
一歌:……そうだね。頑張りたいな
一歌:それに、フェスのこともそうだけど 社長や真堂さんにも最高の演奏を聴かせたいよね
志歩:一歌……
志歩:……うん。プロとして—— どんな時でも、誰が相手でも、 最高の演奏を届けられるようにしよう
ルカ:じゃあ、このやる気のまま、 今日も練習頑張ってね
穂波:はい!
数十分後
MEIKO:——みんな気合い入ってるね
ミク:うん。特に、穂波……
ミク:目指す音楽が決まって、悩みも晴れたからかな。 前よりずっと集中できてるね
ルカ:ええ。それに、リーダーのことも関係してるんじゃないかしら。 演奏に前にはなかった気迫を感じるわ
KAITO:そうだね……
KAITO:(……たしかに、みんなの演奏に気迫は感じる。 力強い音で——胸に響くものがある)
KAITO:(けど……なんだろう)
KAITO:(この音は……)
志歩:——ストップ
志歩:……やっぱり息が合ってない
志歩:勢いはこの前と同じくらいあるけど…… なんだか音がバラバラに感じる
一歌:……そうだね。私もしっくりこなかったな
咲希:なんでだろう……。 アタシ、走らないように気をつけてたつもりなんだけど……
志歩:誰かひとりのせいってわけじゃないと思う。 息が合わないこの感じ、最近ずっとだから
穂波:うん……
穂波:(最初は、わたしのせいだと思ってた……)
穂波:(自分だけ『目指す音楽』を決められてないから、 集中できなくて、みんなの足を引っ張っちゃってるんだって)
穂波:(でも、今はそうじゃない。 だから、演奏にもちゃんと集中できてると思う)
穂波:(それなのに……)
咲希:あ~もう、なんでバラバラになっちゃうんだろ~!
志歩:うん……。なんていうか、さっきの演奏は…… みんなが別の方向を向いてるみたいだった
KAITO:別の方向……
KAITO:……それかもしれない
リン:え? どういうこと?
KAITO:多分……だけど
KAITO:みんなが『目指す音楽』をはっきりさせたことと、 関係してるんだと思う
ミク:はっきりさせたことと……?
KAITO:目指す音楽を決めたことで、想いが明確になって…… ひとりひとりの演奏は、前よりも力強さが増した
KAITO:けど、その想いが向いてる方向は、 みんな少しずつ違ってて——
KAITO:みんながみんな、きっと無意識のうちに 自分のやりたい想いを優先させてる
穂波:あ……
ミク:……なるほどね。 だから演奏がバラバラになってるんだ
一歌:……そっか。 たしかに、カイトの言うとおりかも
ルカ:響かせたいって思う志歩の演奏は力強くて、 元気にしたいって思う咲希の演奏は、 優しく盛り上げる感じがして……
ルカ:そんな風に、みんなが自分の想いを優先させてしまったことで、 音の出しかたがそろわなくなってたのね
リン:え~……それじゃあいっちー達が目指す音楽を決めたのは よくなかったってこと?
MEIKO:そういうわけじゃないと思うよ。 前よりも想いが乗って、いい演奏ができるようになったんだし
MEIKO:それぞれの想いはもちろん大事。けど、4人で演奏する時は、 ちゃんと4人の気持ちを合わせないとだめってことなんだろうね
リン:え~! そんなのどうやるの~~~!? めちゃ難しそうなんだけど!
穂波:…………
KAITO:……一度、演奏する際のみんなの想いを すり合わせる必要があるんじゃないかな
一歌:すり合わせる、それって……
ルカ:そうね。 たとえば、この曲のイントロは——
ルカ:『みんなに元気になってほしいっていう想いを 一番大事にしたいと思ってるから、 全員でそれを意識して演奏しよう』……っていう感じにね
穂波:なるほど……
穂波:……みんな、やってみよう
咲希:え?
穂波:全員の想いを合わせて演奏するのは、 大変なことかもしれないけど……
穂波:できたらきっと、今よりもっといい演奏になると思うんだ
穂波:だから……頑張ろう! 社長や真堂さん、それにこれから聴いてくれる たくさんのお客さんの心に響く演奏をするために
一歌:うん……!

第 6 话:同じ方向を向いて

放課後
宮益坂女子学園 中庭
咲希:ほなちゃん、いっちゃん、おまたせー! ごめんね~、帰りのHRが長引いちゃって
一歌:大丈夫だよ。私達も、さっき終わったところだし
穂波:それじゃあ早速だけど……すり合わせ、始めよっか
咲希:お! やる気まんまんだね、ほなちゃん! さすが我らのリーダー!
穂波:も、もう、やめてよ咲希ちゃん……
穂波:えっと、何曲分か楽譜を印刷してきたから、 それを見てほしいんだけど……
穂波:ルカさんが言ってたみたいに、 イントロから曲の終わりまで細かく見ていって——
穂波:その歌詞やメロディーにどんな想いがこもってるのか、 どんな風に演奏するかを改めて話し合っていきたいんだ
志歩:うん、わかった
穂波:じゃあ、最初はこの曲——
咲希:あ、吉崎さん達のために作った曲!
一歌:“離れ離れになってしまっても、ふたりが 幸せな記憶を胸に前に進んでいけるように” ……っていう想いを込めて作った曲だね
一歌:私も、離れ離れになった時…… みんなとの思い出があってここまで来れたから
咲希:……うん。それにアタシ、 そんな風に幸せな記憶を思い出して……元気になってほしいな、 って思って曲を作ったんだよね
穂波:じゃあこの曲には、吉崎さんみたいな人達を 『つなげていきたい』って気持ちだけじゃなくて……
穂波:『大切な記憶を思い出してほしい』『元気になってほしい』 って想いも込められてるんだね
志歩:……そっか。 だったら私、サビのところ激しく弾きすぎちゃってたかも
志歩:自分の“響かせたい”って気持ちが走っちゃって、 曲に込められた想いを表現しきれてなかった
咲希:アタシも、“元気になってほしい”って 気持ちばっかり意識しちゃってたけど、ちょっと違うよね
咲希:大事な思い出を思い出してもらえるように、 ここはもっと……静かに語りかけるみたいに 演奏するほうがよかったのかな
穂波:——うん、サビはそうしてみようか
穂波:この先も、曲に込められた想いを確かめて、 どう表現するかを話し合っていこう
咲希:うんっ!
咲希:それじゃあ、この調子でどんどん進めていこう! スタジオの予約時間が来るまでに、10曲!
志歩:いや、さすがに多すぎ。いきなり10曲は無理でしょ
咲希:そ、そうだけど~! それくらいのやる気でいこうってことだよ!
一歌:じゃあ、目標はそのくらいってことで。 始めようか
数十分後
咲希:んー! つっかれた~
咲希:って、もうこんな時間!? まだ半分くらいしか終わってないよ~!
志歩:数曲話し合うだけで、こんなに時間がかかるとはね
穂波:……それに、まさかここまで議論が盛り上がるなんて 思わなかったな
一歌:でも……話し合ってよかったな
一歌:みんなと話す中で、曲の譲れないところとか、 自分が一番大事に思ってることが もっとよくわかったっていうか
咲希:解釈が人によって全然違うところもあったよね。 いっちゃんとしほちゃん、途中ケンカみたいになってたし!
一歌:あはは……。ごめんね、志歩。 さっきは少し熱くなりすぎちゃったかも
志歩:別に大丈夫
志歩:……それに、ぶつかるくらいでちょうどいいんだと思う
一歌:え?
志歩:だって私にも、譲れない想いはあるから、 一歌の気持ちはよくわかるんだ
志歩:だからこそ、こうやって話し合って 納得できる落とし所を見つけるのは大事だって思う
志歩:それで初めて、みんなが同じ方向を向いて、 いい演奏ができるようになると思うから
穂波:ふふ、そうだね
穂波:ぶつかっても、ケンカしちゃっても…… お互いの想いを伝えあって、納得できるまで話して——
穂波:それで最後には、最高の演奏ができるようにしよう……!
咲希:うん!
志歩:……て言っても、今日はここまでかな。 スタジオの予約時間、そろそろだから
咲希:あ、そうだった! でもでも、今話したこと早速実践するチャンスだよね!
穂波:うん。 ……それじゃあ、急ごっか!
レッスンスタジオ
志歩:いくよ——
一歌:♪————!!!
穂波:(……うん。ちゃんとさっき話し合った成果が出てる)
穂波:(みんな、ちゃんと曲の想いや 周りの音を意識して演奏ができてる……)
穂波:(……だけど、なんだろう)
穂波:(この音……)
一歌:ねえ、今の演奏……
咲希:えっと……ちゃんと息は合ってたね! 周りの音とか、曲の想いをちゃんと意識できてたし
穂波:うん……
穂波:(……たしかに、咲希ちゃんの言うように、 問題のある演奏じゃなかったとは思う……)
穂波:(でも、何か足りないような……)
咲希:——さ、最初だからみんなちょっと硬くなっちゃってたかも! もう1回やってみようよ!
穂波:うん……。そうだね
穂波の部屋
穂波:(結局……あのあと何度も練習したけど 納得いく演奏はできなかったな)
穂波:(やっぱり、まだすり合わせがたりなかったのかな。 もっとみんなで話し合わないと……)
穂波:(本当に、それだけなのかな。 さっきの演奏は、前よりは曲の想いや 周りの音を意識できてたはずなのに)
穂波:(だけどなにか、足りない感じがして——)
穂波:(あ——)
一歌:♪————!!!
ミク:へえ……
レン:すごいな……! なんかいつもより、 演奏に勢いがあるっていうか……
穂波:(足りてなかったのは……あの時の力強さ……?)
穂波:(でも、それってどうしたら……。 バラバラなままじゃ、いい演奏はできないのに、 周りの音に合わせようとすると、勢いが消えちゃうなんて)
穂波:(まだ、練習が足りないだけ? もっと何度も練習すれば、 勢いもまとまりもある演奏ができるのかな)
穂波:(……それとも、何かもっと別の方法が……)
穂波:……はあ
穂波:(みんなの想いを叶える手助けをするって、決めたのに)
穂波:(もっと、たくさん考えないと……)
穂波:(……でも……)
穂波:(電話……? 誰から……)
穂波:あ……
穂波:真堂さん……?

第 7 话:最高の演奏をするために

穂波の部屋
穂波:——こんばんは、真堂さん。 えっと、どうされたんですか?
真堂:『夜分遅くにすみません。 この前の社長が演奏を見たいと言ってた件、 日程を決めたいと思って連絡させていただきました』
真堂:『来週末でお願いします。 社長の日程があいているのが、一番早いものでそこでして』
穂波:来週末……
穂波:(たしか、みんな予定は入ってないはずだけど……)
穂波:(でも、今のままで本当に 満足してもらえるような演奏ができるのかな……)
穂波:…………
真堂:『……どうかされましたか?』
穂波:……え? あ、すみません。 来週末ですね。みんなにも伝えておきます
真堂:『…………』
真堂:『何か、悩み事ですか?』
穂波:え……?
真堂:『いえ、声に元気がないような気がしまして。 何か困っていることがあるなら、話を聞きますよ』
真堂:『これでも、皆さんのマネージャーですから』
穂波:あ……
穂波:ありがとうございます。 あの、それじゃあ——
真堂:『なるほど。バラバラな音楽をどうにかするために 曲の表現の仕方をすり合わせたが、 今度は演奏に勢いがなくなった……と』
穂波:はい……。 この方法なら、バラバラになっちゃうのを 解決できるって思ったんですけど……
真堂:『そうですか——』
真堂:『……それなら、解決自体は簡単ですね』
穂波:え?
真堂:『——誰かが……全員の音をまとめて、導けばいいんです』
穂波:導く……?
真堂:『話を聞く限り……今の皆さんの演奏は、 いわば指揮者がいないオーケストラのようなものです』
真堂:『全員が周りの顔色をうかがって、 自分の演奏に集中しきれていない』
真堂:『では、それを解決するためにはどうすればいいのか……。 答えは簡単です』
真堂:『——誰かが指揮を執ればいい』
穂波:……!
真堂:『全員の状態を把握し演奏の先頭に立つ。 どんな想いを込め、どんな表現をするのか、 すべてを把握して皆を導く』
真堂:『そうすれば、勢いを保ちつつ、まとまりもある—— 最高の演奏になるんじゃないでしょうか』
穂波:(誰かが、演奏をしながらみんなを導く……。 それができれば、どっちの問題も解決した最高の演奏ができる)
穂波:(たしかに、そうだ……。 それなら——)
穂波:わたし……やります……!
穂波:みんなを導く……演奏でもそれが必要なことなら、 それはリーダーのわたしがやらなきゃいけないことだと思うんです
穂波:ううん……やらなきゃ、じゃない。 わたしがそうしたいんです
真堂:『……なるほど。望月さんならそう言うと思っていました』
真堂:『ですが、それはとても難しい作業ですよ。 全員の音を導くためには、高い演奏技術が必要ですからね』
真堂:『その技術は、時間をかけて習得していくしかない。 一朝一夕ではどうにもなりません』
穂波:それは……
穂波:(……そんなに簡単なことじゃないってことはわかってる)
穂波:(でも……)
穂波:(だからって、諦めたくない……)
穂波:(このままだったらずっと、中途半端な演奏のままになっちゃう)
穂波:(そうしたら、社長さんも…… これから聴いてくれるお客さんの心にも、何も響かせられない)
穂波:(——Leo/needのみんなが大事にしてる想いが、 叶わなくなっちゃう)
穂波:(そんなの……嫌だ……)
穂波:(みんなに後悔してほしくない。 みんなの想いも演奏も、すごく素敵なものなんだって 聴く人に絶対伝わるようにしたい……!)
穂波:それでも、やります……!
穂波:自分の演奏技術がまだまだ足りてないってことはわかってます
穂波:でも、やりたいんです。 みんなで最高の演奏をするために……
穂波:どうしたらそんな演奏ができるようになるのか わからないけど……
穂波:みんなを導く演奏ができるようになるためなら、 いくらでも練習、頑張ります……!
真堂:『……なるほど』
真堂:『ですが——そんな演奏はすぐにできるわけじゃない』
真堂:『それでもどうにかしたいと思うなら、 今よりも何倍も厳しい練習をこなすしかないでしょう』
真堂:『それでも……やらないよりはマシ、という程度ですが』
穂波:……っ……
真堂:『しかし、それでもやるというのなら——』
真堂:『……望月さん、特訓をしましょう』
穂波:え……?
翌日
レッスンスタジオ
穂波:あ、あの……今日はよろしくお願いします
真堂:ええ、よろしくお願いします
真堂:……さて、それじゃあさっそくですが 始めていきましょうか
穂波:は、はい。でも——
真堂:はは。そうは言っても、きっと戸惑ってしまいますよね。 俺に楽器の何がわかるのかって
真堂:実はこれでも昔、音楽をかじってましてね。 手広くやってたんで、ある程度の楽器は弾けるんです
真堂:……まあ、論より証拠ですね。 少しやってみますか
穂波:(これって……!)
穂波:(手首のスナップ、すごく柔らかい……。 これ、“音楽をかじってた”ってレベルじゃない……!)
真堂:……ふう、こんなものですかね
真堂:さて、それじゃあそろそろ始めましょうか
穂波:……あ……
穂波:——はい……!
真堂:ドラムの練習はどこまでいってもリズムキープをすることです。 クリックに合わせ、表拍だけでなく、 裏拍まで常に正確に叩けるようになってください
真堂:どんな状況でも、というのが肝心です。 本番では、練習の時と同じだけの力を発揮できるなど、 まずありえない。練習では常に完璧を目指すんです
穂波:……はい……!
真堂:パラディドルをこなすには、 ストロークを完璧にコントロールすることが大事です
真堂:アップストローク、ダウンストローク、タップ、 そしてそれらの奏法の切り替えを スムーズにこなせるよう、徹底的に腕に叩き込むこと
穂波:……っ
真堂:リバウンドがまったく意識できていないですね。 それにリズムが乱れ始めてる
真堂:1回できるだけではダメ。 音の粒を均一に……どれだけ疲れていても、 音量と間隔を変えずにキープし続けるんだ
穂波:……はい……
穂波:(腕が……重い……!)
穂波:(……でも……!)
穂波:(でも、やるんだ……!)
穂波:(みんなを導いて…… 最高の演奏をするために——!)

第 8 话:導く音

数日後
レッスンスタジオ
穂波:はあ……はあ……はあ……
穂波:もう1回……あっ
穂波:スティックが……。 ……いたっ……!
真堂:血豆になっていますね。 ……今日はここまでにしましょうか
穂波:っ……
穂波:……いえ、やらせてください
穂波:まだ、やれますから
真堂:ですが……
穂波:……このままじゃ、いやなんです。 満足する演奏ができなくて、 一歌ちゃん達みんな、後悔することになっちゃう……
穂波:それに、わたし……
穂波:——今、すごく嬉しいんです
真堂:嬉しい……?
穂波:わたしは、みんなと比べて特別演奏がうまいわけじゃありません。 それに、一歌ちゃんや咲希ちゃんみたいに 曲が作れるわけでもない
穂波:その分、それ以外のことで力になれるようにって、 スケジュールのことだったり動画のことだったり、 いろんなことをやってきたけど……
穂波:やっぱり、音楽のことで力になれないのが、 ずっと歯がゆくて……
穂波:……でも……
穂波:でも、今——初めて演奏でみんなの力になれるかもしれないんです
穂波:だから、頑張りたい……!
穂波:演奏でもみんなの力になれるなら、 できるようになりたいんです……!
真堂:…………
真堂:——わかりました。 では……あと30分だけ続けましょう
穂波:ありがとうございます……!
数日後
志歩:いよいよだね、太田社長が見に来る日
咲希:真堂さんはリラックスして、って言ってたけど やっぱり緊張しちゃうな
一歌:うん。……でも大丈夫だよ。 この日のために、すり合わせもしっかりやったし、 何度も練習もしたんだから
穂波:そうだね
穂波:(一歌ちゃんの言うとおり…… 今日のために、できるだけのことはした。 あとはその成果を出すだけ)
穂波:(だから——きっと大丈夫)
リン:『——やっほ~♪ みんなー!』
一歌:リン、それにみんなも。 どうしたの?
ミク:『もうすぐ事務所の社長が見に来るんでしょ? 緊張してないかなって思って』
ルカ:『どうかしら。いい演奏ができそう?』
一歌:あ、それは……
穂波:……たしかに緊張はしてます。 でも……大丈夫だと思います
穂波:みんなが演奏に乗せてる想いは、どれもすごく素敵なものです。 だから、それをしっかり発揮できれば、 きっと最高の演奏ができる……
穂波:——ううん。わたしが必ず、できるようにしてみせますから
志歩:穂波……
穂波:だから、みんなも自信を持って演奏してほしいな
一歌:……うん。わかった
ルカ:『……心配はいらないみたいね』
MEIKO:『だね。……支えるだけじゃない 穂波の新しい演奏、楽しみにしてるよ』
穂波:……はい!
一歌:あ、そうだみんな。 スマホ、すみっこに置いておくからよかったら聴いていって
リン:『ほんと!? ありがといっちー!』
ミク:『——そろそろ時間かな。 頑張ってね、みんな』
咲希:うん! ばいばーい!
一歌:あ——
真堂:皆さん、おまたせしました。 今日はよろしくお願いします
咲希:はい……! こちらこそ、よろしくお願いします!
ソリス・レコード社長:はは、元気があっていいね。 改めて、今日は私の勝手な願いにつきあわせてしまい申し訳ない
ソリス・レコード社長:今日の演奏はとても楽しみにしていたんだ。 君達の全力の音楽、期待してるよ
志歩:……わかりました
真堂:皆さん、準備のほうはいいですか? ……よければ、早速ですが1曲お願いしたい
穂波:——はい、大丈夫です
穂波:……みんな、いくよ
真堂:……これは
穂波:(ずっと……みんなの力になりたかった)
穂波:(みんなが音楽でやりたいこと……)
穂波:(音楽を響かせること、元気を与えること、 誰かと誰かをつなげていくこと……)
穂波:(みんなの想いは本当に素敵で…… 音楽に向き合うみんなのことが、すごく大好きで……)
穂波:(そんなみんなの想いを叶えるために、 手助けがしたい、支えになりたい……って思ってた)
穂波:(でも……この日のために特訓して、ようやくわかった)
穂波:(ただ手助けするだけじゃ足りない——)
穂波:(みんなの想いを、演奏を、最高の形で響かせるためには…… 誰かが引っ張って、ひとつにしなくちゃいけないんだ)
穂波:(そのために……)
穂波:(支えるだけじゃない……。 わたしが——)
穂波:(みんなを導くんだ……!)
ソリス・レコード社長:……ほう
穂波:(いくよ、みんな……!)
穂波:(Aメロ……。 ここは『心に響かせたい』っていう想いが一番大事になるところ)
穂波:(胸に響く音で……お客さんの気持ちを掴む!)
穂波:(だからまずは志歩ちゃん……お願い!)
穂波:(……うん、いい調子)
穂波:(次はBメロ……。 少しずつ、音楽の雰囲気が変わってくところ)
穂波:(苦しんでる人に寄り添いたい……。 つらい気持ちでいる誰かのために、 少しでもできることをしたい……)
穂波:(そんな想いを込める……。 だから、語りかけるように、繊細に、優しく……)
穂波:(……みんなはただ、自分の演奏に集中するだけでいい。 他のことは、全部わたしが考える)
穂波:(どんな想いが必要なのか、どんな風に演奏するのか。 最高の形で表現できるように…… わたしのドラムでみんなに伝えるから)
穂波:(もうすぐサビ—— いくよ、一歌ちゃん……!)
一歌:……!
一歌:(すごい……。今までで一番歌いやすい)
一歌:(みんなの気持ちと演奏が、ひとつになってく……)
一歌:(……私の歌で、みんなをつなげていく……。 私の想いを、願いを、みんなが背中を押してくれてる感じがする)
一歌:(きっと、今なら——)
穂波:(さあ、いって……一歌ちゃん——!)
一歌:♪————————!!!!
真堂:(…………驚いたな。 まだまだ粗削りだが、確実に成長している)
真堂:(ひとりひとりの実力が、格段に進化したわけじゃない)
真堂:(全員が今持ってるポテンシャルを 最大限発揮して、息を合わせた)
真堂:(バンドはひとりでするものじゃない。 メンバー全員の気持ちが重なれば、 それだけで何倍もいい演奏ができるようになる)
真堂:(だがそれは、簡単なことじゃない。 メンバー同士の深い信頼関係があって初めてできることだ)
真堂:(いや……そうか)
真堂:(日野森さん以外のメンバーは 楽器の経験はまだ浅いが……)
真堂:(それでも、この4人には初めからその信頼関係があった。 どんなバンドにも負けないと言えるだけの、4人の絆が)
真堂:(——なら、やはりこれが……彼女達の武器か)
ソリス・レコード社長:……いい音だね
真堂:……社長……
ソリス・レコード社長:君が気に入った理由も、わかった気がするよ
一歌:——ありがとうございました!
ソリス・レコード社長:お疲れさま! いやあ、素晴らしかった。 君達の想いのこもった最高の演奏を見せてもらったよ
ソリス・レコード社長:これなら、デビュー後も楽しみだね。 それと……
ソリス・レコード社長:フェスの件、前向きに考えておくよ
咲希:わあっ……!
一歌:ありがとうございます……!
真堂:……俺も、とてもいい演奏だと感じました
真堂:特に望月さん、皆を率いるリーダーに 相応しい演奏だったと思います
穂波:……真堂さんのおかげです。 本当に……ありがとうございました!
真堂:……いえ、俺は俺の仕事をしただけですから
真堂:——ああ、それと、 仕事といえば、今日は皆さんにいい知らせがありますよ
咲希:いい知らせ? なになに、なんですか!?
志歩:咲希……
真堂:長らくお待たせしましたが…… デビューの日が決まりました
咲希:で、で、で……
咲希:デビュー~~~~~~!!!???
咲希:や、やったやったやったよ! デビューだってみんな!
志歩:うん……。ようやくだね
穂波:(そっか……。デビューできるんだ)
穂波:(プロとして、どんな音楽をやっていきたいのか、 何ができるのかって悩む時もあったけど……もう大丈夫)
穂波:(わたしは、みんなの力になりたい。 そのために——)
穂波:(支えるだけじゃない。わたしが……)
穂波:(——Leo/needを、導いていくんだ)