活动剧情

Rise as ONE!

活动ID:126

第 1 话:相棒と共に

乃々木公園
彰人:はっ、はっ、はっ……
彰人:…………ふう
彰人:(これでノルマ分は走れたが……まだ余裕あんな)
彰人:(水飲んだらもう1周走るか。 たしか、その辺に自販機が——)
???:いくぞ~、マックス。 ……それっ、取って来い!
???:ワンッ!
彰人:……っ!
彰人:(……あの犬と飼い主、今日もやってんのか。 最近じゃほとんど毎日だな)
彰人:(あの皿みたいな……たしかフライングディスク、だったか? あれで犬を遊ばせてるみてえだが……)
飼い主:——よし、ナイスキャッチ!
マックス:ワンッ! ハッ、ハッ、ハッ……!
彰人:(……そんなにでかくねえ犬でも、走ってると迫力あんな)
彰人:(さっさと水買っちまおう)
飼い主:もう1回いくぞ! それ——
飼い主:っ、風が……。あっ——!!
飼い主:そこのお兄さーん! すみません、そっちにディスクが飛んでっちゃって……!
彰人:ん?
彰人:(ディスク……ああ、たしかにそこに落ちてんな)
彰人:……いや待て。 犬用のディスクがここにあるってことは——
マックス:ハッ、ハッ、ハッ!
彰人:げっ……! あ、あの犬、やっぱりこっちに向かって……!!
彰人:……っ!
彰人:(っ、やべえ、どうする……!)
彰人:(……そうだ、ディスク! こいつをどこか遠くに投げれば……!!)
彰人:……っし、向こうに——行け!
マックス:……! ワンッ!
彰人:い、行ったか……
彰人:(……咄嗟に投げちまったが、さすがに飛ばしすぎたか? あれじゃ、取りに行けな……)
マックス:……っ、ワンッ!
彰人:なっ……マジか。 ジャンプして取りやがった
飼い主:す、すみません……! 大丈夫ですか!?
彰人:……いえ、大丈夫です。 こっちこそすみません、勝手にディスク投げちゃって
飼い主:あ、いえいえ! 全然大丈夫です!
飼い主:急に走って来られてびっくりしましたよね。 すみません……ロングリードはつけていたんですけど、 焦って止めるのが遅くなって……
彰人:(……なんだ、リードついてたのか。ビビって損し——)
マックス:ワンッ!
彰人:(うおっ)
飼い主:おかえり、マックス。 お前、さっきのよくキャッチできたな~! お兄さんだいぶ遠くに投げてたのに
彰人:あはは……
飼い主:そうそう! お兄さん、すっごく綺麗なフォームでしたね! フライングディスク、普段からやってるんですか?
彰人:え、いや……小さい頃遊んだのが最後かな
飼い主:ええっ!? じゃあ、めちゃくちゃセンスいいですね! いいなぁ、僕はあんまり運動神経よくないから、 もっと練習しないといけなくて……
彰人:へ、へえ、練習か。 だからよく、ここで投げてるんですね
飼い主:え? あはは、見られてたんですね
飼い主:実は僕達、今度ディスクドッグ—— 投げたディスクを犬にキャッチさせる競技の 大会に出ようと思ってて
彰人:大会に?
飼い主:はい! いくつかの大会でいい成績を残したら、 全日本大会に出れるんですけど——
飼い主:いつかそこで優勝して、 日本一のチームになるのが僕達の夢なんです!
飼い主:な、相棒!
彰人:(……相棒……)
マックス:ワンッ!
彰人:あー……っと、今なんか、返事したみたいでしたね
飼い主:あはは、ですよね。 僕もたまに、こっちが言ってることわかってるんじゃないかな? って思います
飼い主:いや……ボーダーコリーって賢い犬種だから、 本当にわかってたりして
彰人:へ、へえ……、ボーダーコリー……
飼い主:あ……マックスのことばっかりで、 自分が名乗ってませんでしたね! 僕は石原樹って言います。えっと……
彰人:東雲彰人です。 あと、高校生なんで、お兄さんってほどの歳じゃないですよ
石原:あ、僕も高校生です! じゃあ……東雲くんって呼ばせてもらおうかな
彰人:……わかった。 それじゃあ、オレはこのへんで——
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……
彰人:(っ! な、なんだ? こいつ、こっち見て……)
石原:どうしたマックス? ……あ、もしかして東雲くんになでなでしてほしいのか?
彰人:えっ? なでなで?
石原:うん。いいプレイしたあとは、 こうやってお座りして『なでろ』って言ってくるんだ
石原:さっき投げたのは東雲くんだから、東雲くんに褒めてほしいのかも
彰人:(ま、マジか……)
マックス:……ワフッ
彰人:……っ!
石原:……? あ、もしかして——
石原:東雲くん、犬苦手だった!?
彰人:えっと、まあ……少しだけ
石原:うわーーー、気づかなくてごめん! しかも長々と引きとめちゃって……!
彰人:いや、気にしないで。オレも言わなかったし
石原:じゃあ、僕達はもう行くね!
彰人:うん、また
彰人:…………ふう
彰人:(なんか、騒がしいヤツだったな)
彰人:(でも……)
石原:いつかそこで優勝して、 日本一のチームになるのが僕達の夢なんです!
石原:な、相棒!
彰人:(……あいつも、相棒と頑張ってるんだな)
彰人:——よし。もういっちょ走るとするか

第 2 话:ワンちゃん大集合

教室のセカイ
一歌:……ふぅ。今日の練習はここまでにしようか
咲希:はーいっ! ふぃ~、いっぱい弾いたなー!
ミク:お疲れさま。今日もいい演奏だったね。 みんな最後までバッチリ集中できてたし
穂波:ありがとう。ミクちゃん達が見てくれたおかげだね
志歩:あ……穂波。 間奏のところ、今度私達だけで合わせてもいい? さっきテンポが崩れてたから
穂波:あ、わたしも確認したいなって思ってたんだ。 じゃあ、明日はわたし達だけ少し早めに集まろうか
志歩:うん。何時から始める?
穂波:えっと……しばおのお散歩が9時くらいに終わるから、 そのあとでもいいかな?
志歩:わかった。じゃあ、9時半に集合しよう
MEIKO:そっか。当たり前だけど、 休みの日でもしばおの散歩は休めないんだよね
レン:そう考えると、犬を飼うのって大変だな
リン:うんうん! レンじゃ絶対続かないよねー!
レン:人のこと言えないだろ。 よく夜更かししたとかで、起きれなくなってるくせに
一歌:……あれ? でも、しばおの散歩って いつもはもっと早く終わってなかったっけ?
咲希:あ、たしかに! 前にみんなでお散歩ついていった時は、 8時くらいまでだったような……?
穂波:えっと、実はね……
穂波:この前定期健診に連れていったら、 『太りすぎ』って言われちゃって。 お休みの日は、ドッグランにも寄るようにしてるの
咲希:ええっ!? そうだったの!?
KAITO:……しばお、大丈夫?
穂波:はい。しっかり運動すれば問題ないって言われたので
KAITO:そっか……よかった
咲希:あれ? カイトさん、しばおに会ったことあるんですか?
KAITO:あ、えっと……
リン:『ばっしーのお留守番を見守ろう大作戦』で 仲良くなったんだよね~!
レン:ばっしーって……お前、しばおにまでまた変なあだ名つけたのかよ
リン:えーっ、変じゃなくて、かわいいあだ名だもん!
咲希:アタシは好きだな! サッキーとちょっとおそろいっぽいし♪
志歩:それで、見守ろう大作戦って……
穂波:実はこの前、家族がみんな用事で家にいなくて、 ひとりでしばおの面倒を見ないといけない日があったの
穂波:でも、その日は練習があったから、 わたしもずっとそばにいられなくて……
穂波:しばお、長い時間ひとりでお留守番するの慣れてないから ちょっと心配だったんだ
リン:それで、ほなっちが練習に行ってるあいだ、 カイト兄がばっしーを見守ることになったってわけ☆
MEIKO:部屋にタブレットを置いて、 そこから様子を見てたんだよね。 しばおに何かあったら、すぐ穂波に報告できるように
一歌:そんなことしてたんだ……
咲希:でもでも、なんでカイトさんが? もしかして、ワンちゃん好きなんですか?
KAITO:えっと……こういうのは、飼育委員の仕事だって言われて
志歩:飼育委員?
ルカ:実は私達、みんなを真似して委員会を決めているの
咲希:ええっ、そうだったんですか!? あ、じゃあもしかして、アタシと同じ 文化祭実行委員の人も……!?
リン:はーいっ! ちょっと違うけど、あたしとレンが『お楽しみ委員会』だよ!
ミク:まあ、遊びで決めただけだけどね。 『美化委員だから大掃除はルカに仕切ってもらおう』とか そういう時に使ってるくらいで
MEIKO:で、しばおを見守るのは飼育委員の仕事じゃない? ってなったわけ
穂波:あの時は、しばおを見ていてくれて 本当にありがとうございました
穂波:よければ、また会ってあげてください。 きっと喜ぶと思うので
KAITO:……そっか。 じゃあ散歩してるところ、今度見に行こうかな
穂波:はい、ぜひ
穂波:あ、お散歩といえば……。 今度の土曜日、花里さんと一緒に しばおとサモちゃんのお散歩するんだ
咲希:サモちゃんって、みのりちゃんちのワンちゃんだよね! ダブルデートならぬダブルお散歩! 楽しそう……!
志歩:そういえば、前にみのりが言ってたな。 サモちゃんはしばおと会うと リード引くのが大変なぐらいはしゃぐって
穂波:しばおもそうなんだよ。 お散歩してると、いつもは途中で疲れて『帰る』ってするのに、 サモちゃんが一緒だとずっと元気いっぱいなの
一歌:ふふ、運動不足の解消になりそうだね
咲希:ほなちゃんもしばおも、お散歩いっぱい楽しんできてね!
穂波:うん!
数日後
乃々木公園
彰人:……ふぅ。 今日はこんなとこだな
彰人:(……そういえば、今日は石原とマックスがいないな)
彰人:(どうりで静かなわけだ。 この時間は、いつもこの辺で練習してんだが……)
???:ワンワンッ!!
???:ヴァンッ!
彰人:……っ!
彰人:(やけに騒がしいな。 2匹いるっぽいが、どこに——)
彰人:……! あいつは——
みのり:わわっ! サモちゃん、 しばおと一緒で嬉しいのはわかるけど、 そんなにはしゃいだら危ないよ~!
穂波:ふふ、会うの久しぶりだもんね。 しばおもずっと尻尾振ってるよ
みのり:あ、ほんとだ! えへへ、かわいいなあ……!
彰人:やっぱり、花里か……
みのりの声:——あれ? 東雲くん!?
穂波の声:え?
みのり:東雲くーん! おはようございます!
彰人:お、おう……
穂波:えっと、花里さん。 そちらのかたは……
みのり:あ、紹介するね! こはねちゃんと同じチームで歌ってる、東雲彰人くん
穂波:こはねちゃんと……あ、 そういえばシブフェスでお見掛けしたような気がします
穂波:わたしは、花里さんの同級生の望月穂波です。 よろしくお願いします
彰人:ああ、はい。どうも……
彰人:(なんでこう、犬を連れてるヤツに声をかけられるんだ……)
しばお:? ヴァフッ
彰人:……っ、……
穂波:あ……
穂波:あの……東雲さん、もしかして犬、苦手ですか?
彰人:え?
みのり:ええっ! そ、そうなんですか?
彰人:あ、いや……。 別に苦手ってほどじゃ……
マックス:——ワンワンッ!
彰人:な……お前は……っ
石原:おいマックス、そっちに行っちゃダメだって!
石原:東雲くんは犬が苦手なんだから!
みのり:や……やっぱり苦手だったんだ……! ごめんね東雲くん、知らないで話しかけちゃって!
彰人:……いや、気にすんな
石原:ご、ごめんね東雲くん……!
石原:マックスもダメだろ? 大会は明日だから、はりきってるのはわかるけど……
みのり:大会?
石原:あ、はい。 僕達、ディスクドッグをやってるんです
みのり:え! ディスクドッグってあの、キャッチするやつですよね! ああいうのできちゃうなんて、すごいなぁ
穂波:大会にまで出るなんて……。 頑張ってくださいね
石原:はい、ありがとうございます! じゃあ、練習始めるぞマックス——あれ?
石原:どうして動かないんだよ、マックス
マックス:…………ワフッ
石原:嫌じゃないだろ? ほら、行ーくーぞー!
彰人:……ん?
彰人:(……気のせいか? 石原、いま足を……)
マックス:ワフッ、ワフッ……!
石原:こら、リード引っ張るなって!
彰人:(……やっぱり……)
彰人:……石原。もしかして、足ケガしてるか?
穂波:えっ?
石原:い、いや……そんなことないけど
彰人:でも——左足、庇ってるだろ

第 3 话:イヤイヤの理由

乃々木公園
穂波:練習中にケガを……
石原:あはは、バカですよね……。 でも軽い捻挫なので、投げる分には問題ないと思います
彰人:……捻挫でも、安静にしてないと治りが遅くなるだろ。 無理はするなよ
石原:うん、ありがとう。 でも本当に大丈夫だよ。見ててね……それ!
石原:……っ
彰人:(……本人はいけるって思ってるみたいだが、 前に見た動きよりぎこちないな)
彰人:(……やっぱ、いてえんじゃねえか)
石原:……よし! マックス、ゴー!
マックス:…………
石原:……あれ? なんで行かないんだ? ゴーだぞ、ゴー!
マックス:くーん……
みのり:あ……マックスくん、座っちゃった
石原:どうしちゃったんだよ、マックス。 大会は明日なのに……
穂波:あ……もしかして——
穂波:マックスくん、石原さんのケガに気づいてるんじゃ……
石原:え?
穂波:だから、石原さんにディスクを投げてほしくなくて、 動かないのかも……
みのり:そっか……。 『自分が取ってきたら、また投げさせちゃう』って 思ってるのかな
彰人:(……それってつまり、マックスが石原を心配して、 わざと言うこと聞かねえようにしてるってことだよな)
彰人:(犬が、そこまで考えられるもんなのか……?)
石原:……そうだったのか? マックス
マックス:……クーン
みのり:あ……石原さんの足、すりすりしてる……!
穂波:やっぱり心配してるんだね
彰人:(マジか……すげえな)
石原:……マックス……
穂波:あの……石原さん
穂波:余計なお世話だとは思うんですけど…… 無理はなさらないほうがいいんじゃないですか?
穂波:石原さんに何かあったら、マックスくんも悲しいと思いますし……
石原:…………。 そう、ですね……
石原:……心配してくれてありがとな、マックス。 早くケガが治るように、明日の大会は諦めるよ
石原:でも……やっぱり悔しいな
石原:明日の大会に向けてずっと頑張ってきたのに……。 僕のせいで出れなくなっちゃうなんて……
穂波:石原さん……
彰人:…………
彰人:(……そうだよな。 あんだけ毎日練習してきたんだ。悔しくないわけがねえ)
彰人:(自分のせいで相棒の頑張りまで無駄になるってなると、 なおさら……)
石原:……ごめん、マックス
マックス:く~ん……
みのり:石原さん……マックスくん……
みのり:……あの! その大会って、 わたしとマックスくんでも出られるんでしょうか!
石原:え……?
石原:えっと、当日受付もあるから出れるとは思うけど……
みのり:じゃあ——よければ、石原さんの代わりに、 わたしに出させてくれませんか!?
石原:え……ええっ!?
石原:たしかに、それならマックスは大会に出れるけど…… いいんですか?
みのり:はい! むしろやらせてください!
みのり:夢に向かって一生懸命がんばってるマックスくんを 応援したいんですっ!
彰人:花里……
石原:……ありがとうございます、花里さん
石原:僕とマックスのチームで出ないと、 全日本大会に出るための実績にはならないんですけど……
石原:でも、僕はこいつの練習を無駄にしたくない。 ちゃんと、大会で走らせてやりたい
石原:だから……お願いしてもいいですか?
みのり:はい……! 任せてください!
みのり:じゃあ、さっそく投げてみますね! マックスくん、いくよ~!
みのり:えーーーーいっ!
彰人:お、すげえ勢いだな
彰人:けど……
穂波:あっ……
みのり:え~~~!? なんでそっちに飛んでっちゃうの~!?
石原:えっと……ちょっと曲がっちゃったけど、 勢いは満点でした!
彰人:いや、真横に飛んでったぞ
みのり:う~、もう1回! えいっ!
穂波:あ、今度は後ろのほうに……
みのり:な、なんで~!?
マックス:ワウ……、ワウ?
みのり:はっ! マックスくん、ディスクを探してくれてるのかな? あっち! あっちに飛んでったよー!
サモちゃん:ワフンッ!
みのり:わわっ、サモちゃんは行かないで~~~!
みのり:うう~、すみません。 こんなに難しいなんて思ってなくて……
石原:い、いえ! コツを掴むまで、僕もかなり時間がかかりましたから!
石原:狙った方向に投げるのだって練習が必要ですし、 簡単にしていいお願いじゃなかったですよね
みのり:あ……でも、もっともっとがんばって練習すれば——
石原:……いえ。お気持ちは本当に嬉しいですけど、 そこまでしてもらうわけにはいきません
石原:マックスには申し訳ないけど…… 今回は、諦めようと思います
彰人:石原……
マックス:…………
マックス:……ワンッ!
彰人:っ! な、なんだ?
穂波:え……マックスくん、 東雲さんにディスクを渡そうとしてませんか……?
彰人:は?
みのり:ほんとだ! ディスクをつんつんして、 『投げてー!』って言ってるみたいだね
彰人:な、なんでオレなんだよ
みのり:もしかして…… 東雲くんと大会に出たいんじゃないかな!?
彰人・石原:『はぁ!?』 『えっ!?』
マックス:ワンワンッ
みのり:ほら、マックスくんも『うんうん』って!
彰人:いや、適当言うなよ……ありえねえだろ
穂波:…………
穂波:でも……たしかに、その可能性はあるのかも……
彰人:は?
穂波:あ、えっと……。 マックスくん、すごく真剣な顔してるので……
穂波:……もしかしたら、石原さんが悔しがってるのを見て、 大会に出たいって思ったのかもしれないなって……
彰人:(そう……なのか……?)
マックス:…………
彰人:(たしかに……なんか言いたそうな顔してんな、こいつ)
彰人:……だからって、なんでオレなんだよ……
石原:あ……それは、多分……
石原:東雲くん、すごく投げるの上手だったから。 それを覚えてたんじゃないかな?
彰人:え? ……あ
彰人:(……そうだ、ディスク! こいつをどこか遠くに投げれば……!!)
彰人:……っし、向こうに——行け!
マックス:……! ワンッ!
彰人:あの時か……
マックス:ワフッ……!
彰人:っ、…………
彰人:(石原の……相棒のために、か——)
彰人:…………はあ
彰人:わかった、投げてやるよ
マックス:!!
穂波:え……!?
彰人:……オレがマックスと大会に出る。 この前投げてみた感じ、わりとすぐコツ掴めそうだったからな
石原:でも……東雲くん、犬が苦手なんじゃ……
彰人:……ああ。正直、どこまでできるかはわからねえ
彰人:だが……
彰人:まあ……相棒を大事に思う気持ちは、オレにもわかるからな
石原:東雲くん……。ありがとう……!
石原:……じゃあ、お願いしてもいいかな? 僕も、全力でサポートするから
彰人:ああ、頼む
彰人:お前も……
マックス:ワンッ
彰人:よ、よろしくな
穂波:あ……
穂波:(……東雲さん、手が震えてる……)
穂波:あの……よかったら、わたしにもお手伝いさせてくれませんか?
彰人:え?
穂波:犬のお世話には慣れているので。 力になれることがあるかもしれません
みのり:はい! わたしもお手伝いしたいです!
しばお:ヴァウッ!
サモちゃん:ワンワンッ!
みのり:あ! しばおとサモちゃんもやりたいって言ってます!
彰人:本当かよ……
石原:すっごく助かるな……! 僕はあんまり動き回れないから、 逸れたディスクを取りに行ったりできないし……
彰人:……ま、たしかに人手が多いにこしたことはねえか
彰人:それじゃ、頼む
みのり:うんっ!

第 4 话:抗えない恐怖

乃々木公園
石原:それじゃあ、簡単にディスクドッグのルールを説明をするね
石原:ルールはシンプルで、スローワー……投手が投げたディスクを 犬がキャッチしたらポイントになるんだ
石原:60秒以内までなら何回でも投げてよくて、 獲得したポイントの合計で順位を競うんだよ
穂波:なるほど……。じゃあ、制限時間内に なるべくたくさん投げたほうがいいんですか?
石原:あ、そうとは言い切れないです。 より遠くへディスクを投げたほうが、 キャッチした時のポイントが大きくなるので
彰人:てことは、近くに投げて回数を稼いだり、 逆に遠くに投げて1回の得点を大きくしたり、 戦略を立てられるってことだな
石原:うん! それと、ディスクは地面に落ちる前に キャッチしないとポイントにならないんだ
石原:だから、ちょっと高めに投げて、 マックスにジャンプキャッチしてもらうのがコツだよ
彰人:ああ……そういや、オレが咄嗟に投げたディスクも ジャンプして取ってたな
石原:マックスが得意な距離とか高さは、 投げながら教えていくね
彰人:わかった
石原:じゃあ、まずはディスクを投げる練習をしようか。 コツが掴めてきたら、マックスと一緒に練習をしよう
穂波:あ……それなら、 そのあいだわたし達がマックスくんを見てましょうか?
石原:助かります……! よろしくお願いします
石原:それじゃあやろう、東雲くん!
彰人:おう
数十分後
彰人:(胸の高さで、水平に……)
彰人:——っと
石原:わ……! さすが東雲くん! もうコントロールばっちりだね!
彰人:だいたいの感覚は掴めてきたな
彰人:……んじゃ、そろそろ——
石原:うん、マックスと一緒に練習してみようか。 みんなを呼んでくるね!
彰人:(ここまでは順調だが……問題はここからだ)
彰人:(ディスクドッグは、ディスクを犬に キャッチさせて終わりじゃねえ。 そのディスクを、犬から受け取る必要がある)
彰人:(走ってくる犬から、ディスクを……)
彰人:(……弱気になるな。 引き受けた以上、やるしかねえだろ)
石原:——おまたせ、東雲くん! 連れてきたよ!
マックス:ワンッ
彰人:……おう。じゃ、さっそく投げるぞ
石原:うん。難しそうだったらマックスを止めるから、 すぐに言ってね
みのり:がんばって、東雲くん……!
彰人:(——よし)
彰人:行け、マックス……!
マックス:ワンッ!
穂波:わ……東雲さん、すごい。 綺麗にまっすぐ飛んでいったね
みのり:うん! それに、マックスくんも ちゃんと追いかけてるよ!
マックス:ワンッ!
みのり:わあ、ジャンプしてキャッチした! かっこいい……!
石原:あとは……
彰人:(オレがあいつからディスクを受け取って、 もう1回投げる……)
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……
彰人:(……ビビるな)
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……!
彰人:(……! ビビるな……!)
幼い彰人:あ……う、うわああああ!!
彰人:……っ!
石原:あ……! ——マックス、ストップ!
マックス:! ワンッ
石原:よし、いい子だ。こっちに来て
彰人:…………クソッ
みのり:あ……
穂波:……大丈夫ですか? 東雲さん
彰人:……ああ……
彰人:(情けねえ……)
石原:ごめんね、東雲くん。無理させちゃって……
彰人:なんでお前が謝るんだよ。 オレは、自分の意志で引き受けたんだ
彰人:……むしろ、悪い。 お前の大事な相棒なのに、ビビったりして
石原:東雲くん……
彰人:……もう1回やらせてくれ。 次は絶対——
???:ワオーンッ、ワンワンッ!
彰人:(なんだ? マックス達は吠えてねえし、 近くに別の犬でも……)
???:——おや? 東雲くんじゃないか
彰人:え……なっ……!?
類:いやあ、こんなところで会うとは奇遇だねえ!
穂波:神代さん……!
類:おや? 望月くんと花里くんもいたんだね。 元気にしていたかい?
みのり:はいっ! お久しぶりです!
石原:えっと、こちらの方は……
彰人:あー、学校のセンパイだ。一応な
みのり:その連れてるワンちゃん、神代さんのおうちの子ですか? 毛がフワフワでかわいい……って、あれ?
穂波:ワンちゃんの中から、ジージーって音が聞こえてくる……
彰人:まさか、これ……
類:ああ。犬型ロボットだよ
類:部屋を整理していたら昔作ったものが出てきてね。 せっかくだから改良して、動作確認に来たんだ
みのり:え……ええっ!? このワンちゃん、神代さんが作ったんですか!?
穂波:す、すごいですね……
彰人:こんなもんまで作れんのかよ……
犬ロボ:ワオンッ!
彰人:(……うおっ、鳴き声まで犬そっくりなのかよ)
類:……ところで、みんなはここで何をしていたんだい?
彰人:あーまあ……ディスクドッグって競技の練習っす
類:ディスクドッグ?
石原:はい。ケガした僕の代わりに、 東雲くんが大会に出てくれることになって
類:へえ、そうだったんだねえ。 しかし……大丈夫なのかい?
彰人:え……
類:その様子だと、苦戦しているんじゃないかなと思ったんだ
類:特に、犬のことでね
彰人:はっ? なんで……
類:フフ、演出家の洞察力をなめてもらっては困るねえ
彰人:うぐ……
彰人:——まあ実際、順調ではないっすね……
類:……なるほど。 ディスクを投げるところまではいいけれど、 受け取るのに苦戦している、ということだね
彰人:はい。だから、早く練習に戻らねえと……
類:……ふむ……
類:(僕が代わりに大会に出る、という手もあるけれど……)
類:(……東雲くんは、真剣にマックスくんと 向き合おうとしているようだ)
類:(であれば、ここはサポートに回らせてもらおうかな)
類:——大会は明日のようだし、焦る気持ちはわかるけれど…… 実践練習の前に、まずは犬に慣れる必要があるんじゃないかな
類:犬への苦手意識が強いままでは、 何回やってもうまくいかないだろうしね
彰人:それは……
類:だからまずは……そうだね。 なでたり、遊んであげたりするところから始めてみてはどうかな
彰人:遊ぶ……?
彰人:そんなので、効果あるんすか?
みのり:わたしも、それいいと思う!
穂波:……そうですね。 簡単な触れ合いから少しずつハードルを上げていけば、 自然とディスクを受け取れるようになるかもしれませんし
彰人:…………。 まあ……たしかに、一理あるか
彰人:だが、いきなりなでろって言われてもな……
穂波:あ……でしたら、まずはわたしがマックスくんを なでてみせるのはどうでしょうか?
穂波:会ったばかりのわたしでも、なでられるってわかれば 少しは安心できるんじゃないかなって
石原:たしかに……
彰人:……わかった。じゃあ頼む
穂波:はい
穂波:まずは……こうやって、 手の甲の匂いを嗅がせて自己紹介をします
彰人:自己紹介?
穂波:はい。犬も人と同じで、いきなり知らない人に触られたら びっくりしちゃうんです
穂波:なので、匂いを覚えてもらって、 心を許してくれるのを待ってからなでるようにしてください
彰人:……なるほど……
穂波:なでる時は、こんな風に顎の下辺りをそっとなでます。 頭やお尻は嫌がる子が多いので、 はじめましての時は触らないでくださいね
彰人:…………
穂波:こんな感じなんですけど……東雲さん、できそうでしょうか?
彰人:……ああ。やってみる
彰人:(まずは、手の甲を前に出して……)
マックス:……くんくん
彰人:……っ!
みのり:あ……!
類:これは……想像以上に苦手なようだね
彰人:(……クソッ。犬に近寄られると、体が勝手に反応しちまう)
彰人:(こんな簡単なこともできねえのかよ……)
類:——東雲くんは、いつ頃から犬が苦手になったんだい?
彰人:え……
類:原因がわかれば、苦手を克服するヒントが 見つかるかもしれないと思ってね。 もしよければ、聞かせてくれないかい?
彰人:それは……
彰人:……わかった、話す
彰人:あの日は——たしか、まだ幼稚園の年中くらい、だったか。 家族と公園に遊びに来てたんだ

第 5 话:恐怖をなくすには

十数年前
公園
幼い彰人:うわっ、姉ちゃんどこにボールけってんだよ~
幼い絵名の声:うるさいなぁ。 ほら、はやくボールとってきて!
幼い彰人:はあ……
女性の声:あ……! マロンちゃん待って、そっちに行かないで~!
犬:ワンワンッ!
幼い彰人:(ん? 犬の声だ。どこから……)
幼い彰人:……わっ!
幼い彰人:(こ、こっちに走ってきてる……!)
犬:わふっ?
幼い彰人:(! め、目が合った! もしかして、おれのことねらって……)
犬:ワンッ!
幼い彰人:うわあ! こっち来た!
犬:ワンワンッ!
幼い彰人:な、なんでこっち来るんだよ~!
母親の声:あ、待って彰人! 走ったら逆に——
犬:ハッ、ハッ、ハッ……!
幼い彰人:(くそ、おいかけてきてる!)
幼い彰人:(ど、どうしよう……! どっか、あいつがついて来れないところは……)
幼い彰人:(あ! あそこのすべり台にのぼれば……!!)
幼い彰人:よ、っと……
幼い彰人:(——よし! これでだいじょ……)
犬:ワンッ!
幼い彰人:えっ——
幼い彰人:(す、すっげえこっち見てる……!)
幼い彰人:(もしかして、おれがおりるまで待ってるつもりか!?)
幼い彰人:あ……あっち行けよ!
犬:ワンッ!
幼い彰人:うわっ!
幼い彰人:っ! やべ、バランスが……!
幼い彰人:……と、とと……うわあっ!
幼い彰人:いって……
犬:ワンワンッ!
幼い彰人:わあっ! く、来るな!
犬:わふんっ!
幼い彰人:あ……う、うわああああ!!
彰人:……ってことがあってな
彰人:あとから聞いた話じゃ、走って逃げるオレを見て 遊んでもらえるって勘違いした、らしい
彰人:だが……あれ以来、 犬を見ると反射的に身構えるようになっちまったんだ
彰人:走って来られたり、顔を近づけられたりすると、余計にな
みのり:あ。だから、ディスクを受け取る時も……
類:マックスくんが走ってくる様子が トラウマを想起させてしまうようだね
類:けれど、競技の性質上、 マックスくんからディスクを受け取るのは必須だし…… これはなかなか解決が難しそうだ
穂波:そうですね……
彰人:…………
彰人:(……難しいのはわかってる。 だが、このままじゃ……)
みのり:あ……
みのり:えーっと……皆さん! 一度休憩しませんか!?
みのり:朝からずっと練習してたし……リフレッシュしたら、 いいアイディアが出るかもしれないですよ!
石原:花里さん……
穂波:ふふ、そうだね。 近くに食べ物の屋台もあったし、みんなでお昼にしよっか
彰人:……ああ。 んじゃ、ちょっと休憩入れるか
みのり:はい!
サモちゃん:わふんっ!
みのり:わわっ! サモちゃん、 このホットドッグは食べちゃダメだよ~! めっ!
サモちゃん:く~ん……
穂波:ふふ
穂波:あ……
穂波:(東雲さん、休憩中もずっと考えてるみたい)
穂波:(……本当に、どうすればいいんだろう)
穂波:(東雲さんが犬に感じてる怖さをなくすには——)
しばお:ヴァンッ!
穂波:しばお? どうしたの?
穂波:(あ……わたしのカバンをつついてる。 おやつが入ってると思ってるのかな?)
穂波:しばお、おやつは帰ってからだよ……って——
しばお:ハッ、ハッ、ハッ……ヴァフッ!
KAITO:し、しばお、静かに……
穂波:カイトさん……!
KAITO:あ、穂波……
みのり:どうしたの? 穂波ちゃん
穂波:あ! え、えっと……!
穂波:しばおがどうしてもおやつを食べたくなっちゃったみたいで…… ついでにお水も汲みたいから、ちょっと向こうであげてくるね
みのり:そっか! しばお、食いしん坊だって言ってたもんね!
穂波:う、うん……
穂波:(今はちゃんとおやつ我慢してくれてるんだけど……。 ごめんね、しばお……!)
KAITO:……ごめん。しばおに会いに来たんだけど、 タイミング悪かったね
穂波:いえ、わざわざありがとうございます
穂波:今はあまりゆっくりはお話できないんですけど…… でも、来てもらえてよかったね、しばお
穂波:あ……見てくださいカイトさん! しばお、尻尾だけじゃ足りなくて、お尻までフリフリしてますよ
KAITO:本当だ……
しばお:ヴァンッ!
KAITO:わっ……
穂波:あ、こら。 嬉しくても、吠えちゃダメだよ?
KAITO:大丈夫。悪気はないってわかってるから
KAITO:……初めて吠えられた時は、ちょっと怖かったけど
穂波:え? 初めてって、もしかして……
KAITO:うん……前にしばおの留守番を見てた時も、 今みたいに吠えられたんだ
穂波:す、すみません……! もう、しばおってば……
穂波:……でも、それならどうして怖くなくなったんですか?
KAITO:それは……
KAITO:しばおがどういう子なのか、ちゃんとわかったから、かな
穂波:どういう子なのか……
KAITO:うん
KAITO:最初は、しばおが吠えてくるのは、 俺を『敵だ』って警戒してるからだと思ってたんだ
KAITO:俺も、知らない人が家にいたら警戒するだろうし……
穂波:それは……そうかもしれないですね
KAITO:だから、しばおに見つからないように、 画面の中から様子を見てたんだけど……
KAITO:そうしたら——しばおのこと、誤解してたって気づいた
穂波:誤解?
しばお:く~ん……
KAITO:(……しばお、さっきからずっとドアのほうを見てる)
KAITO:(穂波達が家にいなくて、寂しいのかな。 顔もなんとなく、悲しそうだし……)
KAITO:…………
KAITO:……し、しばお……
しばお:! ハッ、ハッ、ハッ……!
KAITO:(わっ。走ってきた……!)
しばお:ヴァンッ!
KAITO:(う……吠えてる。 やっぱり、出てくるんじゃなかったかな……)
しばお:……! ハッ、ハッ……
KAITO:え……しばお、どこに行くの?
KAITO:(あ……戻ってきた。 あれ? 何かくわえて——)
KAITO:……ボール?
KAITO:もしかして……それで遊んでほしいの?
しばお:ヴァフッ
KAITO:(最初に吠えてたのも……もしかしたら、 俺を追い出そうとしてたんじゃなくて、 『遊んで』って言ってたのかな)
KAITO:……勘違いしてごめん。 警戒心が強い子なんだって思ってたけど、本当は——
KAITO:寂しがり屋で、少しやんちゃな子だったんだね
KAITO:(でも……どうしよう。 ボールでは遊んであげられないし……)
KAITO:あ……そうだ
KAITO:(しばおに喜んでもらえそうな歌は……あ。 穂波が好きって言ってた曲なら、聴いたことあるかな)
しばお:! ヴァンッ
KAITO:——そんな風にしばおのことを知ってからは、 吠えられても怖くなくなったんだ
KAITO:多分、しばおは俺を襲ってきたりしないって、 信じられるようになったからだと思う
穂波:そうだったんですね……
穂波:(その子のことを知って、信じる……)
穂波:(東雲さんも、マックスくんのことを知って、 信じることができれば、 怖いって気持ちを少しは減らせるのかも——)
穂波:……ありがとうございます、カイトさん
KAITO:え?
穂波:実は、ちょっと悩んでいたことがあって……。 でも、カイトさんのお話を聞いて、 どうすればいいか分かった気がするんです
KAITO:……そっか。事情はわからないけど……
KAITO:——力になれたなら、よかった

第 6 话:マックスを知るために

乃々木公園
彰人:マックスのことをもっと知る……?
穂波:はい。何をされると嬉しいとか、嫌とか、 どんな時、どういう風に動くかとか……
穂波:そういうことを知って、 マックスくんのことを信じられるようになったら、 怖さが和らぐかもしれないと思ったんです
彰人:……なるほど……
彰人:(……言ってることは、なんとなくわかる。だが……)
彰人:(少し性格を知ったくらいで、 怖くなくなるもんなのか……?)
マックス:ワンッ
彰人:…………
彰人:(……いや、やるだけやってみるか)
彰人:(実際、オレが石原の代わりに大会に出ようと思ったのは、 こいつが相棒想いな犬だって知ったからだ)
彰人:(望月の言うとおり、こいつのことをもっと知れば、 もしかしたら——)
彰人:……わかった。 その方法、試させてくれ
穂波:……はい!
彰人:だが、マックスを知るっつっても、 具体的にどうすれば……
穂波:あ……それなんですけど、 マックスくんを観察してみるのはどうでしょうか?
穂波:少し離れたところから見るだけなら、 東雲さんの負担にもならないんじゃないかなって
類:いいんじゃないかな? 彼がどんな犬なのか興味を持って眺めるだけでも、 得られる情報は十分あるだろうしね
みのり:……あ! それなら、こんなのはどうでしょう?
犬達:『ワフンッ!』 『ヴァンッ!』 『ワンッ』
穂波:わっ! しばお、そんなに引っ張らないで~!
みのり:お友達がいっぱいで、みんなはしゃいでるね!
類:ああ。犬ロボも楽しそうだ
犬ロボ:ワオーン!
彰人:…………
彰人:(……まさか、犬の散歩を観察する日が来るとはな)
彰人:(だが……)
彰人:(歩いてるところを見てるだけじゃ、 なんもわかんねえ気がするが……これでいいのか?)
類:大丈夫かい? 東雲くん
彰人:あー……はい。 こんだけ離れてれば、まあ
彰人:これでマックスのことがわかるかって言われると、 微妙っすけど
類:そうかい? 僕は、散歩を選んで正解だったと思っているよ
彰人:え……?
類:例えば……サモくんは、 花里くんにぴったりついて歩いているね。 とても甘えんぼうな性格のようだ
彰人:…………
類:しばおくんは、好奇心旺盛だね。 犬ロボにも興味を示しているようだし
彰人:……そうか?
類:フフ、では試してみようか
類:——犬ロボ、トリプルアクセル!
犬ロボ:ワオーンッ!
しばお:!!
みのり:ええっ!? 今犬ロボくん、空中でたくさん回転してなかった!?
穂波:あ……ふふ。 しばお、犬ロボくんに興味深々みたい
みのり:本当だ! いっぱいくんくんしてる!
類:——ほらね
彰人:(いや、なんで犬にあんなジャンプ機能つけてんだよ……)
彰人:(だが……こうして見ると、 たしかに、結構性格に違いがあるみたいだな)
類:……さて。では、マックスくんはどうかな?
彰人:…………
彰人:(……他の犬より、歩くのが遅い……)
彰人:(それに……ときどき立ち止まって、 石原のほうを振り向いてるな)
彰人:(もしかして、足のケガを気づかって……)
子供:——あ~! ワンワンがいっぱいいる!
彰人:ん?
母親:こら! 急に近づいちゃダメでしょ。 すみません……
穂波:いえ、気になさらないでください。 ふふ、ワンちゃん好きなの?
子供:うん! このワンワン、 毛がシュッてなってて、かっこいい!
石原:お、マックスが気になるのか? よかったらなでてみる?
子供:いいの? やったあ! えへへ、頭なでなでしてあげるね!
彰人:(ん……頭?)
穂波:頭やお尻は嫌がる子が多いので、 はじめましての時は触らないでくださいね
彰人:(あ……)
彰人:——おい、そこは触らないほうが……
マックス:…………
彰人:(嫌がってねえ……わけじゃなさそうだな。 なのにこいつ、我慢して……)
マックス:……ペロッ
子供:きゃっ、あはは! ママ、なめられたよ!
母親:よかったわね。 それじゃあ、お兄さんにお礼を言って
子供:うん! お兄ちゃん、ありがとう! ワンワンばいばい!
母親:ありがとうございました
彰人:……大人しかったな
石原:えっ?
彰人:頭触られんの、嫌なんだろ?
石原:あ、そうだね。 でも、マックスはあれくらいで怒ったりしないよ
石原:相手は子供だってわかってるし…… こいつ、すっごく優しいから!
彰人:……そうみたいだな
彰人:(相棒のことを想って、ずっとケガの心配をして……)
彰人:(子供に嫌なことをされても、怒らないで我慢する)
彰人:(そういう……優しいヤツなんだな)
穂波:どうですか? 東雲さん
彰人:ん? ああ……
彰人:まあ……少しはこいつのことがわかった気がするな。 さっきより、怖くなくなったっつーか……
みのり:ホントですかっ!? やったー! 効果ありだね!
穂波:うん! じゃあ、もう少しマックスくんの観察を 続けてみましょうか
彰人:ああ。だが……このまま散歩ばっか見てても、 進展があるかっつーと……
穂波:あ……たしかに、他のことをしている様子も見たほうが、 いろいろな面を知れそうですね
類:……では、今度は少しハードルを上げて、こんな観察はどうだい?

第 7 话:高いハードル

乃々木公園
穂波:いくよ、しばお——それ!
しばお:ヴァンッ!
穂波:わ、ちゃんと取ってこれた! お利口さんだねしばお~!
みのり:サモちゃんも、ちゃんと取ってきて、えら……
サモちゃん:ワッフン!
みのり:だ、抱き着かないでサモちゃん! 重いよ~!
彰人:…………
彰人:(ハードル上げるっつーから何かと思ったが…… 次は、ディスクで遊んでる犬の観察か)
彰人:(たしかに、散歩より抵抗あるが…… 見るだけならそんなに難しい気はしねえな)
類:——では、こちらも始めようか、東雲くん
類:ディスクは僕が投げるから、 東雲くんは先程のようにマックスくんを観察してくれるかな
彰人:はい
類:そしてこの観察なんだけれど…… 少しだけ、僕の近くで見ていてほしいんだ。いいかい?
彰人:? わかりました
石原:すみません、神代さん。 本当なら僕がマックスと遊んでやれればいいんですけど……
類:ケガをしている石原くんに投げさせるわけにはいかないからね。 マックスくんの観察は犬ロボの改良にも役立つし、 ちょうどよかったよ
類:では——マックスくん、ゴー!
マックス:ワンッ!
彰人:…………
類:——うん。ナイスキャッチだね
石原:いいぞ、マックスー!
彰人:(……やっぱり、見てるだけなら大丈夫そうだな)
彰人:(マックスが優しいヤツって知ったからか、前よりも怖さは——)
類:ではマックスくん、戻っておいで!
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……!
彰人:……!!
幼い彰人:わあっ! く、来るな!
彰人:(クソ……)
彰人:(マックスはオレを噛もうとしてるわけじゃねえ。 それはわかってんのに、体が……!)
類:……やはり、まだ難しいようだね
彰人:…………
類:マックスくんのことを知った東雲くんなら もしかして、と思ったけれど……
類:東雲くんの場合、『犬が走ってくる』という状況が 恐怖につながってしまっている
類:そこを払拭するとなると……頭で理解するだけでなく、 この状況に慣れていく必要がありそうだ
類:繰り返し、時間をかけてね
彰人:……どれくらいかかるんすか
類:正直、僕にはわからない。専門家ではないからね
類:ただ……トラウマを乗り越えるには、 それ相応の時間をかけなければならないとは聞くよ
彰人:それじゃ、間に合わねえ……。 大会は明日なんだぞ……
石原:東雲くん……
彰人:(……いや、悩んでも仕方ねえ。 可能性があるなら、時間いっぱいまで繰り返して慣れるしか——)
みのり:——あーっ!! 東雲くん達、ごめんなさいーっ!!
彰人:はっ?
みのり:わたしの投げたディスクが、そっちに飛んでっちゃって……!
彰人:な……!
サモちゃん:ワンワンッ!!
類:まずい……! サモくんがこちらに向かってきている!
彰人:……っ!
穂波:このままじゃ、東雲さんにディスクがぶつかっちゃう!
みのり:東雲くん、避けて——
彰人:避けるっつっても……
彰人:(犬が、こっちに——くそ、体が動かねえ)
彰人:う……っ!
マックス:——ワンッ!
彰人:っ!
彰人:…………?
彰人:(なんだ……? 何も起こらな——)
みのり:あ……!!
類:……マックスくんが、東雲くんの前に……
穂波:これって……
穂波:……東雲さんを、守ってくれたのかな
彰人:お前…………
マックス:……ワフッ……
彰人:……っ
彰人:ったく……本当に優しいんだな、お前は
みのり:ご……ごめんなさい、東雲くん! わたしのせいで……
サモちゃん:くぅ~ん……
彰人:いや、大丈夫だ
彰人:こいつが……マックスがかばってくれたからな
彰人:……ありがとな、マックス
彰人:(……マックスは、あの時の犬とは違う。 誰かを——守るために走れるヤツだ)
彰人:……石原。マックスのこと、もう1回なでてみていいか
石原:え……、うん……!
みのり:がんばって、東雲くん……!
彰人:(……まずは、手の匂いを嗅がせるんだったよな)
彰人:…………
マックス:………くんくん
彰人:…………ふう
彰人:(次は、顎の下をなでる……)
彰人:(……っ、手が、震える……)
彰人:(……いや、大丈夫だ)
彰人:(マックスを、信じろ——!)
彰人:あ…………
彰人:で、きた……
みのり:わ……!
穂波:やりましたね、東雲さん……!
彰人:……ああ
類:フフ……なるほどね
石原:え?
類:犬に走ってこられるという体験は、 東雲くんにとって恐ろしい体験だった
類:けれどマックスくんは…… その体験を塗り替えてくれたんだ
類:ただ花里くんが投げたディスクを追いかけただけ、 という可能性もあるけれど……
類:結果的にマックスくんは、東雲くんを守ってくれた。 その経験が、東雲くんに『マックスくんなら大丈夫』、 と思わせてくれたのかもしれないね
石原:それって……マックスの優しさが、 東雲くんの恐怖を取り除いてくれたかもしれない、 ってことですよね
石原:……だとしたら、嬉しいな……
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……
穂波:ふふ。マックスくん、 東雲さんになでてもらって嬉しそうだね
みのり:うん! 尻尾ゆらゆらしてるもんね!
彰人:……悪い、マックス。 お前は何も悪くないのに、勝手にビビっちまって
彰人:でも——もう大丈夫だ
彰人:……今度こそ、お前からディスクを受け取ってみせる
彰人:そんで……一緒に、勝つぞ!
マックス:ワンッ!

第 8 话:最高のワンプレー

大会当日
競技会場
石原:はあ、もうすぐ東雲くんとマックスの番だね。 緊張するなあ……
彰人:ったく、さっきからオレより緊張してんなお前
みのり:——おーい! 東雲くん、石原さん、マックスく~ん!
石原:あ、皆さん……! 応援に来てくれたんですね!
穂波:はい。本番、頑張ってくださいね!
彰人:おう。わざわざ悪い。 ……まさか、センパイまで来るとは思わなかったっすけど
類:フフ。その後が気になっていたし、 犬のデータを集めるにはもってこいだからね。 東雲くんの活躍、楽しみにしているよ
穂波:それにしても……すごい熱気ですね
みのり:うんっ! 飼い主さんもワンちゃんも、やる気満々……!
石原:あ……東雲くん、そろそろコートのほうに移動しないと!
彰人:わかった。 んじゃ——いってくる
数分後
類:たしか、第1ラウンドと第2ラウンドの合計ポイントで 上位に入ると、決勝ラウンドに進めるんだったね
石原:はい。なのでまずは、 この第1ラウンドでしっかりポイントを——あ!
実況スタッフ:『続いて、東雲・マックスチーム!』
みのり:東雲くん達、コートに入ってきたよ!
穂波:いよいよだね……!
石原:……東雲くんとマックスは、 時間内に中距離で5回キャッチする練習をしてます
石原:5投全部成功すれば、決勝ラウンドに進めるはず……!
彰人:——行けるか、マックス
マックス:ワンッ
彰人:よし
彰人:お前の相棒も、ちゃんと見てる。 絶対に——勝つぞ!
実況スタッフ:『では、参ります。 レディ……ゴー!』
彰人:——行け、マックス!
マックス:ワンッ!
石原:さすが東雲くん! ナイススロー! 高さも距離も、マックスが得意なコースだよ
穂波:マックスくんは……
マックス:……ワンッ!
みのり・穂波:『取った!』
石原:いいぞ! マックス!
穂波:(次は、たくさん練習してたディスクの受け渡し)
穂波:(練習では成功してたけど……)
マックス:ハッ、ハッ、ハッ……!
彰人:——来い、マックス!
マックス:ワンッ!
彰人:——よしっ!
みのり・穂波:『わ……!!』
みのり:やったー! 東雲くん、ちゃんとディスクもらえたね!
類:ああ。ふたりともぴったり息が合っているね
石原:2投目も……よし! ナイスキャッチ!
彰人:マックス、次も決めるぞ!
マックス:ワンッ!
みのり:——やった! 3投目も取ったよ!
穂波:すごい……ここまでノーミスですね!
石原:うん。このままいけば……!
彰人:——次、4投目。いくぞマックス!
マックス:ワンッ!
彰人:よし、行け——
みのり:……っわ、すごい風……!
彰人:なっ……!
彰人:(マズい、風でディスクが曲がって……!)
マックス:!?
みのり・穂波:『あっ……!』
彰人:(……落としちまったか。 クソ、オレが風に注意してれば……)
彰人:(ノーミスで5本決めたかったが、これじゃ、決勝には……)
石原:——諦めるな!
石原:最後まで頑張れ、マックスー!
マックス:……! ワンッ……!!
みのり:東雲くん! ファイトー!
彰人:(あいつら……)
彰人:(ああ。まだ終わってねえよな……!)
彰人:(——4投目の失敗をカバーしてえが、 時間的に6本投げるのは無理だ。次が最後のスローになる)
彰人:(だったら……!)
彰人:最後、思いっきり飛ばすぞ、マックス!
彰人:——取ってこい!
マックス:ワンッ……!
みのり:え……ええっ!?
みのり:あんなに遠くに飛ばしちゃったら、 マックスくんが取れないんじゃ……!
類:いや。あれは多分、高得点を狙って わざと遠くに投げたんじゃないかな
みのり:で、でもマックスくんが取れなかったらまた0点に……
石原:大丈夫だよ。だって——
彰人:……っし、向こうに——行け!
彰人:(——初めて投げた時は、もっと飛ばしてたもんな!)
彰人:跳べ、マックス!
マックス:……っ、ワンッ!
彰人:よしっ!
みのり・穂波・石原:『やったー!!!』
スタッフ:3、2、1——そこまで!
彰人:……ふぅ。どうにかやり切れたな
彰人:お疲れさん、マックス——
マックス:ワンッ!
彰人:——ん?
彰人:あ……この仕草……
石原:うん。いいプレイしたあとは、 こうやってお座りして『なでろ』って言ってくるんだ
彰人:……よくやったな、マックス。 っと……
マックス:ワンッ!
数時間後
穂波:東雲さん、マックスくん、3位入賞おめでとうございます!
彰人:ああ……まあ、優勝はできなかったけどな
石原:そんな、気にしないで! 初出場で決勝ラウンドに進めただけでも、 ものすごい快挙なんだから
みのり:うんうんっ! 本当にすごいよ!
石原:……東雲くん、本当にありがとう
彰人:ん?
石原:東雲くんのおかげで、これまでのマックスの努力が 無駄にならなかった……。 僕にとっても、マックスにとっても、最高の大会になったよ
石原:だからありがとう! 皆さんも……一緒に練習してくれたり、 応援に来てくれたり、本当に嬉しかったです!
みのり:石原さん……!
類:こちらこそ、貴重な経験をさせてもらったよ
みのり:はい! それに、すっごく感動しました……!
穂波:うん……そうだね
穂波:東雲さんがマックスくんのことを信じられるようになって、 わたしもすごく嬉しかったですし——
穂波:石原さんが大会で走るマックスくんを見られて、 本当によかったなって思います……!
石原:望月さん……
マックス:ワンッ……!
石原:わっ……! あはは、もちろんお前にも感謝してるよ。 僕のために、一生懸命走ってくれてありがとな
石原:最っ高にかっこよかった! お前みたいな相棒を持てて、すっごく誇らしいよ
石原:——次は絶対に、ふたりで優勝しような
マックス:! ワンッ……!
彰人:(優勝、とはいかなかったが…… こいつらの力には、なれたみてえだな)
彰人:(それに……)
彰人:最後、思いっきり飛ばすぞ、マックス!
彰人:——取ってこい!
彰人:……まさか、犬とあんな関係になれるとはな
類:この調子なら、他の犬も大丈夫になるかもしれないねえ
みのり:はっ、たしかに!
彰人:ん? まあ……言われてみれば、 前よりは平気になった気が——
犬:ワンワンッ
彰人:うおっ
穂波:あ…………
飼い主:すみません、うちの子が急に吠えちゃって……!
彰人:い、いえ……
彰人:…………はあ
彰人:(やっぱり、当分は無理そうだ)