活动剧情

Parallel Harmonies

活动ID:128

第 1 话:Leo/needのデビュー曲

ソリス・レコード事務所
社員:——真堂は今打ち合わせ中なので、 終わり次第、こちらに来させますね。 皆さんは座って待っていてください
穂波:はい、よろしくお願いします
咲希:は~、なんだかドキドキするね!
志歩:咲希、さっきからずっと浮かれてない?
咲希:だってだって、全員で来てほしいって言われたってことは 何か特別な話かもしれないでしょ?
穂波:たしかにそうだね。 最近軽い打ち合せは、メールとかビデオ通話でやることが多いし
一歌:特別な話、か……
一歌:もしかして、デビューのことについて 新しく何か決まったのかな
咲希:あ、そうかも! まだデビューする日しか教えてもらってないもんね
咲希:あとは……フェスに出られるかどうか、決まったとか?
穂波:ふふ、どっちの話でもドキドキしちゃうね
志歩:まあ、それはわかるかな
咲希:えへへ、真堂さん早く来ないかな~
???:——本日は、ご足労ありがとうございました
咲希:あ……!
一歌:真堂さん、会議終わったみたいだね
咲希:うんっ! もうすぐこっちに来てくれるかも
志歩:……ん、あれ?
???:期待してるよ。その子達にもよろしくね
志歩:あの人、どこかで見たことあるような……
咲希:え?
真堂:——ああ、皆さんもう来ていたんですね。 ちょうどよかった、紹介させてください
真堂:こちら…… スターリーミュージックのプロデューサー、清水さんです
志歩:えっ……
咲希:スターリーミュージックって…… もしかして、あの大手の……!?
志歩:そっか、だから見たことがあったんだ……
清水:ああ、Leo/needの皆さんですね! どうもこんにちは、清水です
穂波:あ……はじめまして。 Leo/needです
志歩・一歌・咲希:『よろしくお願いします』
清水:うん、よろしく
清水:聞いたよ、あのジャムフェスに参加するんだよね。 デビュー前から、あんな大きなフェスに 参加することが決まってるなんて驚いたよ
清水:これから頑張ってね
穂波:あ……ありがとうございます
咲希:はいっ、がんばります!
咲希:……って、えっ? フェス決まったんですか!?
真堂:ああ、その話もこのあとしますね
清水:はは、ネタバレしちゃったかな。 ごめんね、真堂くん
清水:——だけど君達には本当に期待しているよ。 なにせ、真堂くんが手掛けたバンドはいいバンドが多いからね
清水:よく頼りにさせてもらってるよ
一歌:そうなんだ……
真堂:そう言っていただけると嬉しいですね。 こちらも大きな仕事になるので有難いです
清水:はは、ウィンウィンの関係ってやつだね
清水:っと……長話しちゃったな。自分はこれで。 皆さん、頑張って!
穂波:あ……! はい、ありがとうございます!
一歌:な、なんだかびっくりしたな……
志歩:だね……。 まさか、あんな大手の会社が……
咲希:——っていうか、真堂さん! フェス決まったんですか!?
真堂:ああ、はい。つい先日、社内会議で決まりました
真堂:フェスに出るバンドとしては、 まだまだ実力は欲しいところではありますが——
真堂:望月さんの短期間での成長、そして皆さんの音を聴いて 当日までに実力を伸ばせるだろうと判断しました
穂波:……!
真堂:ジャムフェスはしばらく先ですが、 それまで経験を重ねて、力をつけていきましょう
穂波:……はい! ありがとうございます!
咲希:やったね、ほなちゃん!
穂波:うん……!
真堂:今日はその話もですが——もうひとつ、大切な話があります
一歌:え……
志歩:それって……?
真堂:——Leo/needのデビュー曲を作りましょう
咲希:で……
咲希:デビュー曲~!?
真堂:はい。 こちらも社内会議でプロモーションの方針がまとまってきたので 本格的に着手してもらえることになりました
一歌:そっか……。 たしかに、デビューするんだから必要だよね
咲希:だよねだよね! 張り切って作らなきゃ!
真堂:ただ……今回の曲については、ひとつお願いがあります
穂波:お願い……ですか?
真堂:はい
真堂:——デビュー曲は、 天馬さんと星乃さんのふたりで作ってほしいんです
一歌:……あ、はい。 今までどおり、私が歌詞を書いて、曲は咲希が……
真堂:そうではなく—— 曲そのものを、ふたりで共作していただきたいんです
一歌・咲希:『えっ……?』

第 2 话:ふたつの才能

宮益坂
穂波:みんな、お疲れさま。 今日はいろいろ盛りだくさんだったね
咲希:うんうん! デビューとフェス、 どっちの話をするんだろう?って思ってたら まさか両方だったなんてね!
一歌:……うん、それにデビュー曲の話は 本当にびっくりしたな
一歌:……まさか、咲希と私で曲を作ることになるなんて——
穂波:咲希ちゃんと一歌ちゃんで、デビュー曲を……?
一歌:でも……ふたりで共作って、どうしてですか?
一歌:曲はいつも咲希が作ってますし…… 今回も咲希だけのほうがいいんじゃ……
真堂:ええ、そうすることも一度考えました
真堂:デビュー曲は、そのバンドの第一印象となりますから いつもどおりのLeo/needを知ってもらったほうがいい—— 通常ならそうします
真堂:ですが——今回は“いつもどおり”ではなく、 “一歩先の”Leo/needを見せてほしいんです
穂波:一歩先の……Leo/need?
志歩:それは……どういう意図なんですか?
真堂:——今回、Leo/needのデビューについては 我が社にとって今期のファーストプライオリティになっています
咲希:ファースト……プライオリティ……?
真堂:イチオシとして、 最注力で宣伝させていただくということですね
穂波:えっ……!
真堂:本日、親会社のスターリーミュージックの清水さんに お会いしていたのも、その件でした
真堂:スターリーミュージックに デビューシングルの出版権を分配する代わりに、 Leo/needの宣伝に協力してもらえないかと
志歩:そうだったんですか……
真堂:ええ。清水さんも、 Leo/needの可能性を高く評価してくださって——
真堂:スターリーミュージックが持っている 街頭ビジョン枠でのスポット実施と SNSを中心とした各種広告費を負担してくれることになりました
咲希:街頭ビジョン……! それって…… もしかして、すっごくすっごーくすごいんじゃ……!
真堂:はい、すごいですね
真堂:正直、ここまでの投資をしてくれるとは 俺も思っていませんでした
真堂:しかし——もし実現すれば、皆さんの曲は 多くの人の耳に届くことになります
真堂:——つまり、世間に一気に名を知られるチャンス
一歌・咲希:『…………』
真堂:本来、皆さんの音楽は時間をかけて洗練されていくべきものです。 まだ結成から日が浅いですからね
真堂:俺も、まずはライブや音源のリリースを繰り返して、 地力が付いてから大規模な宣伝を行うことを考えていました
真堂:しかし、先日の社内会議の結果と、 スターリーミュージックの協力が得られることもあって——
真堂:俺は、Leo/needが大きなチャレンジをするのは “今”だと思ったんです
穂波・志歩:『…………!』
真堂:これまでのLeo/needの音楽も、もちろん素晴らしいものです
真堂:しかし——もっと高みにいけるはずだと。 もっともっと多くの人の胸を打つ “Leo/need”の曲をここで打ち出したい
真堂:そして俺は、星乃さんと天馬さんのふたりの才能が合わされば、 それができる可能性があると思っています
咲希:アタシと、いっちゃんなら……?
真堂:ええ
真堂:天馬さんの曲は、聴き手の心に寄り添うような、 あたたかみのある曲調——
真堂:星乃さんの曲は、 気持ちをストレートに届けようとする過程で生まれる、 まだ未熟ながらも突き刺さるような音楽が魅力だと思っています
真堂:それで、感じたんです。 色の違うふたりの曲が合わさることで、 ひとつ壁を超えたLeo/needの音楽が生まれるのではないかと
真堂:その音楽は、きっともっと多くの人の心を打つ—— つまり、Leo/needの音楽として “一歩先”にいけるんじゃないかと俺は思うんです
真堂:そして、それは皆さんのデビューの大きな成功に繋がる
咲希:一歩先の、アタシ達の音楽……
真堂:はい
真堂:——俺に、それを聴かせてください
一歌:“一歩先”、か……
一歌:……うまく作れるかな
咲希:だいじょーぶだよ、いっちゃん! アタシ達だったらできるよ!
穂波:うん、わたしもふたりならきっと大丈夫だと思うな
志歩:私もそう思うけど……
志歩:一歌に比べて、咲希は能天気すぎない? 本当に大丈夫?
咲希:えへへ、平気だって! だって、いっちゃんとやるんだもん!
志歩:何かイメージがあるってこと?
咲希:ん~、そういうのじゃないんだけど……
咲希:いっちゃんとなら、なんでもできそうだな~って!
一歌:咲希……
咲希:それに、真堂さんも“できない”って思ってたら やれ!なんて言わないでしょ?
一歌:……うん、そうだね
一歌:咲希と一緒なら、できる気がする
咲希:……うん!
咲希:待っててね、しほちゃん! ほなちゃん! アタシ達で最高のデビュー曲を作ってみせるから!
志歩:はいはい。期待してるよ
穂波:ふふ、頑張ってね

第 3 话:曲作り、開始!

教室のセカイ
咲希:よーしっ! いっちゃん、曲作りがんばろーね!
一歌:うん。でもふたりで曲を作るって、 どうやってやればいいんだろう
咲希:んー、真堂さんには一緒に作れって言われたけど…… やりかたまでは言われてないもんね
咲希:アタシも、どうやればいいのかまではわかんないけど…… できることからやってみようよ!
一歌:そうだね
一歌:じゃあ、どんな曲にするか決めて メロディーから作ってみる?
咲希:うん! じゃあ曲の方向性だけど——
ミク:——なるほどね。 それで、一歌と咲希で曲を作ることになったんだ
リン:一歩先のLeo/need……! すっごくワクワクするワードじゃん!
KAITO:……どんな曲になるんだろ
MEIKO:今から楽しみだね
志歩:じゃあ、私達は邪魔にならないように 向こうで練習しようか
穂波:うん! そうだ、ふたりでやるならジャムセッションしない?
志歩:いいね、今の穂波がどこまでやれるのか楽しみだな
穂波:ふふ、負けないよ。 わたしも特訓したからね
志歩:言うじゃん。 じゃ、やろっか
MEIKO:……みんな、頑張ってね
一歌:一歩先のLeo/needって言っても、 今までの私達らしさは絶対必要だよね
咲希:だね! “今までとこれから”って感じを出すなら…… 全体的には明るいメロディーのほうがいいかも
一歌:あ、それいいね。 ギター乗せるならこんな感じかな
一歌・咲希:『…………』
咲希:これ、アタシ達らしい曲だとは思うけど……
一歌:一歩先……って感じじゃないよね
咲希:うう~……じゃあ、もうちょっと尖らせてみよ! 最近流行ってるコードも使って——
一歌・咲希:『うーーーん……』
一歌:……個性的すぎるっていうか、 これだと流行りに寄せすぎてて Leo/needっぽくないって言われちゃいそうだね
咲希:んー、難しいなあ……。 もう1回、やってみよ!
一歌:あ……もうこんな時間か
咲希:ホントだ! そろそろ帰らないと、怒られちゃうな……
一歌:……結局、しっくりくる曲は作れなかったね
咲希:だね……
咲希:うーん、“一歩先のLeo/need”って難しいなあ。 どうやったら、いい感じの曲になるんだろ……
穂波:——ふたりとも、ただいま
咲希:あ、ほなちゃん! しほちゃんも……! 練習終わったの?
志歩:うん、さっき一段落したから。 ふたりは?
咲希:アタシ達は……
一歌:実は、あんまりうまくいってなくて
穂波:そうなの?
一歌:うん……。 いつもみたいに方向性を決めて、 ふたりでメロから詰めていってるんだけど……
志歩:なるほどね……
志歩:それなら、作りかたを変えてみるのはどう?
一歌:え?
志歩:前に、知り合いのバンドから聞いたことがあるんだ。 曲作りに行き詰まったら、作りかたを変えてるって
志歩:普段、メロディーから作ってる人だったら コードから作ってみたり、とか
一歌:なるほど……
咲希:たしかに、いつもの方法でうまくいかないなら 作りかたから変えてみるのはいいかも!
咲希:さっきまでふたりでメロディー考えてたから…… 次はコードから作ってみよっか!
一歌:いいと思う。 あ、でもそれなら——
一歌:お互いにコードを作って、 それを交換してメロディーを乗せてみるのとかどうかな?
一歌:話し合って作るよりも、お互いの個性が出そうだし、 ゴールに近づくかもしれないなって
咲希:あ……それいいかも!
穂波:たしかに、コード進行とメロディーって 作る人によって違いが出ておもしろいよね
志歩:でもその方法だと、2曲できちゃうんじゃない?
一歌:そっか……
一歌:じゃあ、途中でどっちかいいほうを採用して 1曲をブラッシュアップするとか
咲希:うんうん! そうすれば問題なさそう!
一歌:じゃあ、明日からその方法で作ってみようか
咲希:はーい♪
咲希:……そうだ! じゃあコード作ってくるのを宿題にして、 次集まった時に聴かせっこしようよ!
志歩:へえ、いいんじゃない? おもしろそうだし
一歌:うん、私も賛成
咲希:やった~! アタシ、がんばって作ってくるね!
一歌:ふふ、私も気合い入れて作らないとな
咲希の部屋
咲希:……どんなコードにしよっかな……
咲希:アタシ達らしくて、 一歩先のLeo/needらしさもある感じかあ……
咲希:う~ん、難しいなあ……
司の声:——咲希、入っていいか?
咲希:あ、お兄ちゃん! いいよ、どうしたの?
司:夕飯だから呼んで来いと言われてな。 ……む? 曲を作っていたのか?
咲希:うん! 今ね、アタシ達のデビュー曲作ってるんだ!
咲希:しかも、今回はなんと! いっちゃんと一緒に作ってるの!
司:おお、共作か! それは楽しそうだな!
司:しかし……大丈夫か? 何やら難航している様子だったが……
咲希:えっ!? なんでわかるの!?
司:部屋の外まで『う~~~ん、どうやって作ろ~~!』 『難しいよ~~~!』 という声が聞こえていたからな
咲希:そ、そんな声出してたっけ……。 恥ずかしいなあ……
咲希:でも……実はそうなんだ。 なかなかうまくいってなくて……
司:なるほどな……
司:——そうだ、咲希。 それならば、作曲合宿をするのはどうだ!?
咲希:作曲合宿?
司:ああ、宣伝公演でホテルに泊まった時、 みんなで一晩語り合ったのだが、いいアイディアが出てな!
司:いつもとは違う状況で、ゆっくり作ってみることで 新しいアイディアが出るかもしれんぞ
司:ちょうど今週末、母さん達が旅行に行くだろう。 その日に一歌を呼んで、作曲をしてみたらどうだ?
咲希:えっ!? い、いいの?
司:もちろんだ。一歌が来るのであれば、 オレも演技の研究合宿を計画しよう
司:だから遠慮せず、作曲に専念してくれ
咲希:お兄ちゃん……
咲希:うん、ありがとう!
咲希:(いっちゃんと作曲合宿……! それなら、いいアイディアが出るかも……!)
咲希:(えへへ、お兄ちゃんのおかげですごくいい曲が作れそう!)
咲希:(応援してくれるお兄ちゃんのためにも、 待ってくれてるみんなのためにも—— 最高の曲を作らなきゃね!)

第 4 话:作曲合宿!

数日後
咲希:いっちゃん、いらっしゃーい!
一歌:おじゃまします
咲希:どうぞどうぞ~♪ えへへ、いっちゃんが泊まりに来てくれて嬉しいな
一歌:ふふ、作曲合宿なんて初めてだから ちょっとワクワクするね
咲希:うん! しほちゃんとほなちゃんを 呼べなかったのは残念だけど……
咲希:でも、その分最高の曲を作って ふたりをびっくりさせちゃお!
一歌:そうだね、頑張ろう!
咲希の部屋
咲希:——では、第1回作曲合宿を始めまーす♪
一歌:ふふっ、ふたりしかいないのに 何そのテンション
咲希:こういうのは雰囲気が大事でしょ? じゃあ、さっそくコード聴いていこっか!
咲希:はい、いっちゃん! アタシが作ってきたコード、スマホに送ったよ
一歌:ありがとう。 じゃあ私のも送るね
咲希:わーい! いっちゃんのコード聴くの、楽しみだなあ
咲希:アタシも、がんばって考えてきたから 聴いて聴いて!
一歌:わかった。じゃあお互いに聴いてみようか
咲希:はーい!
咲希:わあ……いっちゃんのコード、すごいよ! まっすぐで、勢いがあって…… いい曲が作れそう!
一歌:そ、そうかな。 それならよかった
一歌:この曲は、誰かをつなげられるような…… 大事な人達とのつながりを思い出せる曲にしたいなって 思ったんだ
咲希:そうだったんだ……! いっちゃんらしい感じでいいね
一歌:よかった……! 咲希のもすごくよかったよ。 明るいけど、ちょっと切ない感じがあって
咲希:えへへ、アタシはね。 悩んでも、つらい気持ちになっても前を向いていこうって 思える曲にしたいなって思ったんだ
一歌:ふふ、そっちも咲希らしいな
一歌:……早く、メロディーつけてみたいな
咲希:アタシも! じゃあさっそく作ろうよ!
一歌:うん。 ……でも、一緒の部屋でやったら作りにくいかな
一歌:咲希、リビング借りていい? ここで作ると音が混ざっちゃうかなって
咲希:あ……たしかに。 いっちゃんが来てくれたのに、 離れちゃうのはさみしいけど……しょうがないよね!
咲希:じゃあ、曲ができたらもう1回集合ってことで!
一歌:わかった。 それじゃあ、またあとで
咲希:はーい! がんばろうね、いっちゃん♪
咲希:……よーしっ! アタシもメロディー作りがんばろ~っと!
咲希:(……ふふっ。このコード、 ホントにいっちゃんって感じがするなあ)
咲希:(——大事な人達とのつながりを 思い出せるような曲、か……)
咲希:(このコードに、アタシの想いを乗せるなら——)
2時間後
咲希:……ふう……
咲希:いい感じになってきたかも!
咲希:ちょっと粗いけど、形はできてきたし もう少し整えたらいっちゃんに聴いてもらって——
咲希:あれ、誰だろ? 宅配便とかかな?
咲希:はいはーい!
咲希:ええっ!? しほちゃんとほなちゃん!?
一歌:ふたりとも、どうしたの?
穂波:ふふ、一歌ちゃんと咲希ちゃんが頑張ってるから、 わたし達も何かしたくて
穂波:志歩ちゃんと相談して、差し入れを持ってきたんだ
志歩:私はたいしたものじゃないけどね。 コンビニで買ってきたお菓子だから
志歩:はい、これ
咲希:わ~! ポリポリチップスとチョコクッキー…… 他にもいっぱいある!
咲希:あっ、いっちゃん! このお菓子、焼きそばパン味だって!
一歌:本当だ……。 こんな味のお菓子、あるんだね
志歩:たまたま見つけたんだ。 食べたらあとで感想教えて
一歌:ありがとう、志歩
穂波:わたしはシーフードカレーを作ってきたの。 咲希ちゃん達、ごはん食べてないかもって思って
咲希:あ……! そういえば、夕ごはんのことすっかり忘れてた!
一歌:うん、集中しちゃってたな
穂波:ふふ、曲作りになると みんなそうなっちゃうのかな?
穂波:でも、それなら持ってきてよかった
咲希:えへへ♪ ふたりともありがとう!
咲希:あ——そうだ! ふたりも一緒に食べていかない!?
咲希:せっかくだし、みんなで一緒に食べたいな~って思って!
咲希:ね、いっちゃん!
一歌:うん。もし時間があるなら、一緒にどうかな
志歩:……それなら、ごはんだけ一緒に食べてく?
穂波:ふふ、そうしよっか。 それじゃあ、おじゃまします
志歩:……ん、このカレー美味しい
咲希:ほなちゃんのごはん、ホントにおいしいよね~! 野菜もごろごろ入ってて食べごたえあるし!
一歌:そういえば、咲希のうちのカレーって 野菜ごろごろ系だったよね
咲希:そうそう! だから家庭の味って感じがする♪
志歩:つくったのは望月家だけどね
穂波:ふふ、でも実は咲希ちゃんのおうちのカレーを意識して 作ってみたんだ
穂波:あと、一歌ちゃんはコクがあるカレーが好きだって言ってたから リンゴをすりおろしてみたんだよ
一歌:えっ、そうだったの?
志歩:そうだったんだ……。 さすがだね
咲希:ありがと~! 疲れも吹っ飛んじゃったよ~!
穂波:もう、大げさだなあ
一歌:だけど、私も元気が出たよ。 おかげでいい曲作れそう
一歌:志歩のお菓子も、咲希と一緒に食べさせてもらうね
志歩:うん、頑張って

第 5 话:重ならない音

1時間後
咲希:……よし、できた!
咲希:えへへ、ほなちゃんのごはんのおかげかな? 元気いっぱいになったら、サクサク作れちゃった!
一歌の声:咲希、メロディーできたんだけど そっちはどう?
咲希:あ、いっちゃん! ちょうどアタシもできたとこ!
咲希:こっち来て一緒に聴こうよ♪
一歌の声:うん、わかった。 それじゃあ——
咲希:えへへ、どんな曲ができたのか なんだかワクワクするね!
一歌:今回は、私のやりたい感じで作ったから ちょっとドキドキするけど……
咲希:だいじょーぶだよ! いっちゃんの作るメロディー、アタシ好きだし!
一歌:そう言ってもらえると、ホッとするな
咲希:えへへ♪ じゃあいっちゃんのはあとのお楽しみってことで アタシのから聴いて聴いて!
一歌:ふふ、咲希がどんな感じで作ってくれたのか楽しみだな
咲希:(いっちゃん、どんな反応するかな~?)
咲希:(えへへ、このメロディーすっごく自信作なんだよね。 いっちゃんのコードにピッタリのメロディー、 思いついちゃったから!)
咲希:(いつものLeo/needとはちょっと違う雰囲気も出せてるし、 アタシの伝えたいメッセージも入れられてる)
咲希:(それに、いっちゃんが言ってた想いも ちゃーんと考えて作ってあるから)
咲希:(いっちゃんも、きっと喜んで——)
咲希:(あ、あれ……?)
咲希:えっと……いっちゃん、どうだった?
一歌:あ……うん。 すごく綺麗だし、いいなって思う
一歌:でも……
一歌:……ねえ、咲希。 どうしてこういうメロディーにしたのか、聞いてもいい?
咲希:え? あ……ほら、いっちゃんさっき、 “大事な人達とのつながりを思い出せるような曲にしたい”って 言ってたでしょ?
咲希:だから、大事な人と出会えた時の嬉しい気持ちとか、 ちょっとケンカしちゃった時の悲しい気持ちとか……
咲希:そういうのが感じられるようなメロにしたかったんだ!
一歌:そっか……。 だから、ちょっと切ない感じになってるんだ
咲希:えっと……イメージと違っちゃった?
一歌:あ……
一歌:…………うん、そうだね。 私のイメージとは違った……かも
一歌:もう少し……まっすぐ想いを届けたかったから、 どちらかといえばポジティブなイメージだったかな
咲希:まっすぐ……
咲希:……うん、わかった! いっちゃんのイメージに合わなかったみたいだし、 ちょっと直してみるよ!
一歌:……ごめんね、咲希。 私も、最初にもっとイメージを伝えておけば良かったな
咲希:ううん、全然だいじょーぶ。 むしろアタシのほうが、うまく汲み取れてなくてごめんね!
咲希:じゃあ、えっと……次はいっちゃんの聴かせてもらってもいい?
一歌:わかった、流すね
咲希:うん!
咲希:(……はあ、駄目だったかあ。 自信作だったんだけどなあ……)
咲希:(ちょっとアタシのイメージを強く出しすぎちゃってたかも。 反省しなきゃ)
咲希:(でも、いっちゃんの作ってくれたメロディーがよかったら、 こっちをブラッシュアップすれば——)
咲希:(……これ……ちょっと違う……)
咲希:(なんでだろ、うまく言えないけど……)
一歌:……咲希? えっと……
咲希:あ……! ご、ごめん。 ちょっと考えちゃってて
一歌:その感じだと……微妙、だったかな
一歌:私的には、咲希の“悩んでも前を向いていこう”ってイメージを 表現してたつもりだったんだけど
咲希:……えっと、なんていうか……
咲希:アタシが考えてたより、ポップすぎる感じがしたかも
一歌:ポップすぎる……
咲希:あ、悪いことじゃないよ! 前向きな感じがいっちゃんらしいなって思ったし!
咲希:でも、この曲は明るさ全開ってわけじゃなくて、 誰かに寄り添うイメージにしたいなって思ってたんだ
一歌:寄り添う、か……。 ……うん、わかった
一歌:ごめん、私もあまり咲希のイメージわかってなかったみたい
咲希:ううん、気にしなくていいって。 また調整したら聴きっこしよ!
一歌:うん! またリビング借りるね
咲希:はーい。いってらっしゃい!
咲希:……はあ……
咲希:……難しいなあ。 これしかない!って思ってたのに……
咲希:……でも、もっといいメロディーを作らなきゃ! アタシ達Leo/needの……大事な曲になるんだもん
咲希:えっと、いっちゃんのイメージに合わせて——
数十分後
一歌:……やっぱり、ちょっと違和感あるかな
一歌:さっきより、明るいメロにはなってると思うし Dメロの疾走感は聴いてて気持ちいいなって感じるんだけど……
咲希:そっかあ……
咲希:ねえねえ、どのあたりが違ってる感じ?
一歌:えっと……
一歌:……やっぱり、 ところどころ切ない感じになってるのが気になるなって
咲希:えっ、そうなの? 切ない感じは結構控え目にしたんだけどな……
一歌:うん……。 でも、Aメロとサビで結構そう感じてて——
咲希:……ごめん、いっちゃん。 もうちょっとマイナーな感じにできないかな?
咲希:アップテンポなのはいいと思うんだけど やっぱりこの曲は、そこまで明るいイメージじゃないから……
一歌:…………
一歌:でも、それだと“前へ進んでいこう”って感じが 薄くなりそうじゃない?
咲希:そ、そんなことないと思うよ!
咲希:それに、明るすぎるとコードにも合わないから…… もうちょっとだけ抑えてくれるといいなって
一歌:…………、わかった。 もう1回やってみる
数十分後
咲希・一歌:『…………』
咲希:……ごめん、やっぱり……
一歌:……咲希が言ってたみたいに、 明るさはできるだけ抑えたんだけど……
一歌:まだ駄目……かな……
咲希:……うん……
一歌:…………
一歌:ごめん、咲希がこだわってるところ、 ちゃんとわかりたいんだけど…… 自分でもよくわからなくなってきてるかも
一歌:私は、そんなにポップにしてるつもりじゃないから……
咲希:いっちゃん……
一歌:ただ、私が表現するなら こんな感じのほうが曲にとっても いいんじゃないかって思ってて……
咲希:……その気持ちもわかるよ。 いっちゃんらしいメロだなって思うし
咲希:でも、アタシはもっと—— 悩みに寄り添う感じが欲しい……のかも
咲希:今の感じだと、勢いで押してってる感じがしてて…… アタシが入れてるコードにも合ってない気がして
一歌:…………
咲希:(……なんでだろ)
咲希:(何回作っても、何回話しても、うまくいかない……)
咲希:(アタシといっちゃんなら、 ちょっとイメージが違っても すぐにわかりあえるって思ってたのに……)
一歌:寄り添う、か……
一歌:咲希が大事にしたいポイントは、やっぱりそこなんだね
咲希:…………!
咲希:うん、そうなの。 だからメロでもそこは活かしたくって!
一歌:——ならやっぱり、違う気がする
咲希:え……
一歌:私は、Aメロとサビがマイナーなままじゃ、 悲しい曲の印象が強いって思う
一歌:それだと“寄り添う”あったかい感じも伝わりづらいな……って
咲希:で、でも……! それだと軽くなりすぎちゃうよ!
一歌:軽い……?
咲希:うん、嬉しいって気持ちも、楽しいって気持ちも、 たしかに明るい音のほうがわかりやすいんだけど——
咲希:それだけじゃ、寄り添うことって表現しきれないって思うの
咲希:アタシ達だって、悲しい時があったから 寄り添ってもらった時の嬉しさや、 あったかく感じる気持ちが強くなったでしょ?
一歌:……それは……そうだけど……
咲希:(……伝わらない、のかな……?)
咲希:(いっちゃんだって、悲しくって、もどかしい気持ちに なってたことがあるはずなのに)
咲希:(なんで——)
咲希:じゃあ、例えば……こういう音にしてみるとかはどう?
咲希:今のイメージからは大きく変えないんだけど、 印象を暗めにして——
一歌:——ごめん、咲希
一歌:全体の展開も考えると、それでもまだ駄目だと思う
咲希:それって……
咲希:……アタシの考えたメロディーだと、駄目ってこと?
一歌:……!
一歌:違う、そういうわけじゃないよ……!
一歌:ただ……咲希の言うとおりに変えたとしても、 うまくできるイメージが持てなくて
咲希:……っ!
咲希:…………
咲希:……だったらいっそ、 最初から全部変えちゃったほうがいいのかもね
一歌:……え?
咲希:……あ…………
咲希:……ごめん、変なこと言って
咲希:でも、アタシも……ずっと、なんかピンとこなくって
咲希:いっちゃんに言われたとおりに直しても、 イメージに近づけようって意識しても……
咲希:全然、これじゃないって感じるの
一歌:…………
一歌:……なんだか、うまくいかないね
咲希:…………そうだね……
一歌:ごめん、ちょっと飲み物買ってくる
咲希:あ……
咲希:…………うん
咲希:…………
咲希:(……どうして、うまくいかないんだろ)
咲希:(いっちゃんとなら……いい曲が作れるって思ってたのに)
咲希:このままじゃ、一歩先にいけるどころか、 完成するかどうかも……
咲希:(……どうすればいいんだろ……)
咲希:(……真堂さんとみんなに謝って、 いつもの作りかたに戻したほうがいいのかな)
咲希:(でも、アタシひとりじゃ…… “一歩先のLeo/need”には、きっと届かないんだろうな……)
咲希:(……それに……)
咲希:このままじゃ……嫌だよ……
???:『——咲希!』
咲希:え……

第 6 话:導かれる想い

咲希:……メイコさん!
咲希:えっと……どうしたんですか?
MEIKO:『穂波達に聞いたんだ。 今、咲希達が曲を作ってるって』
MEIKO:『だから、調子はどうか見に来たんだけど——』
MEIKO:『……あんまり良くないみたいだね』
咲希:…………っ
咲希:メイコさん、アタシ……
MEIKO:『……そっか、一歌とそんなことがあったんだ』
咲希:……はい……
咲希:アタシ、もう……どうすればいいのかわかんなくって
MEIKO:『そう……』
MEIKO:『——ねえ、咲希。息抜きにセカイに来ない?』
咲希:えっ? でも、曲作りが……
MEIKO:『曲作りも大事だけど、行き詰まった時は しっかり休憩することも大事だよ?』
MEIKO:『向こうで待ってるから、一歌が戻ってきたら 一緒においで』
咲希:あ……
咲希:は、はい……
MEIKO:『大丈夫だよ、咲希』
咲希:え……
MEIKO:『一歌とぶつかって、不安だろうけど——』
MEIKO:『同じバンドで音楽やってると、 ぶつかっちゃうことって、どうしてもあると思うんだ』
MEIKO:『……でも、今までもふたりは 何があってもわかりあえてたでしょ?』
MEIKO:『だから、きっと大丈夫』
咲希:メイコさん……
咲希:……そう、ですね。 ありがとうございます
咲希:あ……
一歌:——咲希、ごめんおまたせ
一歌:……あれ、メイコ?
MEIKO:『ちょうど、一歌も来たみたいだね。 じゃあ一緒に行こうか』
教室のセカイ
ミク:——あ、ふたりともいらっしゃい
ルカ:聞いたわよ。 作曲合宿をしているのよね
ルカ:調子はどう?
咲希:あ……えっと……
一歌:…………
MEIKO:ねえ、よかったらふたりの作ってる曲を 聴かせてくれない?
一歌:え……?
ルカ:そうね。ふたりがどんな曲を作ってるのか、私も知りたいわ
咲希:でも、アタシ達もまだ…… ……納得できるものが、作れてなくて
ミク:いいよ、途中でも。 ふたりが作ってる曲を聴いてみたいんだ
咲希・一歌:『…………』
一歌:それなら——
ルカ:——なるほど。 これがふたりの作った曲なのね
一歌:うん……1曲目は私がコードを書いて、 咲希にメロディーを作ってもらった曲で…… 2曲目はその逆なんだけど……
咲希:…………
ミク:——どっちも、いい曲だね
咲希:え……
ルカ:私もそう思うわ。 一歌と咲希の想いが感じられて、素敵な曲ね
咲希:ほ、本当に……?
一歌:でも……バラバラじゃない?
ミク:まあ、たしかにまとまってないっていうか…… お互いが『私はこう思う』って主張してる感じはするね
ミク:でも、これはこれでいい曲だと思ったよ
咲希:そ、そうなのかな……
一歌:…………
ルカ:……でも、ふたりが納得してないのなら もっとよくしていく必要はあるわね
ルカ:ねえ、一歌。 一歌がコードを作った曲は、どういう想いで作ったの?
一歌:あ……
一歌:えっと……まっすぐ想いを伝えられるような 明るい曲にしたいなって思ったんだ
ミク:なるほどね、だからストレートな進行になってるんだ 一歌らしいな
一歌:あ、ありがとう
咲希:…………
MEIKO:咲希は、どうしてこういうメロディーにしたの?
咲希:アタシは……悩んでも、つらい気持ちになっても 前を向いていこうって思える曲にしたくって
ルカ:そうだったの……。 だから、少し切ない雰囲気になっているのね
ルカ:ふふ、咲希らしい優しいメロディーね
咲希:…………!
ルカ:……なんだか少し、最初の咲希達のことを思い出すわ
咲希:あ……!
咲希:そう……! そうなんです……!
咲希:えっと、アタシ達って最初バラバラだったけど 悩んで、前を向いてここまで来れたから
咲希:それで、いっちゃんは大事な人達とのつながりを 思い出せるような曲にしたいって言ってたので……
咲希:それなら、最初はあの頃のアタシ達がピッタリだなって 思ったんです
一歌:あ……
一歌:(そう、だったんだ……)
MEIKO:……うん、いいね
ミク:じゃあ……あの時の悲しみを乗り越えて、 走り出した感じも出したいのかな
咲希:走り出した……
咲希:そっか……。 たしかに、プロになるぞ~!って必死にやってきてたね
咲希:そこまではまだ、メロディーで表現できてなかったかも
咲希:じゃあ……もう少し明るい音にして、 勢いを出す感じにしてみようかな
咲希:そのほうが、いっちゃんのコードとも合いそうだし
一歌:……!
MEIKO:うん、どんな感じになるか聴いてみたいな
咲希:はい! やってみます!
咲希:あ、そうなったら次のメロも——
一歌:(……咲希、すごく楽しそう)
一歌:(それに……どんどんアイディアが出てきてる。 これって——)
一歌:(ミク達が、受け止めて導いてくれてるから……?)
一歌:(私達も……ちゃんと話し合ってるつもりだったけど……)
一歌:…………

第 7 话:受け止めて、音に

教室のセカイ
咲希:……すごい……
咲希:ミクちゃん達に話を聞いてもらってたら、 なんだかできそうな気がしてきちゃった……!
一歌:うん……
一歌:……私、なんとなくわかった。 なんでさっき、うまくいかなかったのか
ミク:え?
一歌:きっと、ミク達と違って…… 咲希の想いを、しっかり受け止められてなかったんだ
一歌:咲希の想いに合うようにって作ってたつもりだったけど…… どこかで、自分の『こうしたい』っていう気持ちを優先させてた
一歌:……少なくとも、私は……そうだったなって思った
咲希:…………
咲希:それは……アタシもだったと思う
咲希:いっちゃんの想いを受け止めるよりも、 自分が表現したいことを優先させちゃって…… 押し付けちゃってた
咲希:……ちょっとケンカみたいにまで、なっちゃって……
咲希:本当にごめんね、いっちゃん……
一歌:ううん……。 こっちこそごめんね、咲希
咲希:でも……なんであんな風になっちゃったんだろう。 作ってる時は、いっちゃんの気持ちを大事にしようと思ってたのに
咲希:…………
MEIKO:それは——咲希達にクリエイターとしての こだわりがあるからなんじゃないかな
咲希:こだわり……
MEIKO:……うん。みんな、譲れない想いを持ってる。 それは何かを表現する人なら、誰でもそうだと思うんだ
MEIKO:咲希も一歌も、同じ表現者だからこそ 譲れないものがあって、うまく噛み合わなかったんだと思う
咲希:あ……
咲希:そう、だったのかも
ルカ:……もちろん、表現者同士、 想いをぶつけあって作ることも間違いじゃないわ
ルカ:ふたつの想いが共鳴して、 すごくいい曲が作れることもある
一歌:……じゃあ、さっきの作りかたは 間違ってるわけじゃなかったんだ
咲希:……うん。でも……難しいよね
咲希:ふたつの想いを両方入れるってなったら、 また……ぶつかっちゃいそうで……
一歌:…………
一歌:それなら、今回は私が……咲希の想いを音楽にするよ
咲希:——えっ?
一歌:私も……今の私達には、 両方の想いを込める作りかたは難しいと思う
一歌:でも……さっきのミク達みたいに、 もっともっと受け止めるやりかたなら、 今の私でもできるかもしれないって思うんだ
一歌:咲希の想いをちゃんと受け止めて、 どんなことがしたいのか、どんな音にしたいのか 私自身が探って作っていく形なら——
咲希:で、でも……!
咲希:それじゃあ、いっちゃんの想いは——
一歌:想いを込めないわけじゃないよ。 この方法が、今私達にできる一番いい方法だと思うし——
一歌:咲希の想いを、聴いてくれる人に 届けたいなっていう気持ちもあるから
咲希:いっちゃん……
一歌:それにね。 私も、ミク達みたいに受け止めてみたいって思ったんだ
一歌:私は……これまで、ミク達にたくさん想いを 受け止めてもらってたから
一歌:歌詞を書いた時も、曲を作った時も—— いつも、ミク達が私の想いを受け止めてくれてた
一歌:そのおかげで……私は、想いを音楽にできてたって気づいたの
ミク:一歌……
一歌:だから、次は…… 私が咲希の想いを受け止めて、音楽にしたい
一歌:私が、ミク達にしてもらってたみたいに
咲希:いっちゃん……
咲希:……ありがとう
咲希:一緒に、最高の曲を作ろう……!
一歌:うん……!
一歌:——みんな、ありがとう
一歌:みんなのおかげで、大事なことに気づけたよ
一歌:これで——いい曲が作れそう
咲希:ありがとうございます!
ミク:どういたしまして
ルカ:私達は、こういうやりかたしかできないから そう言ってもらえると嬉しいわ
一歌:こういう、やりかた……?
MEIKO:うん
MEIKO:私達は——誰かの想いが音楽になるのを 手伝うことしかできないからね
一歌:え……
MEIKO:私達は、一歌達みたいに曲が作れるわけじゃないでしょ?
MEIKO:誰かの想いを受け止めて、音にするだけ——
MEIKO:だから……こういうことしかできないのは歯がゆいんだけど
MEIKO:こういう私達の姿が ふたりの力になったのなら、すごく嬉しいよ
咲希:メイコさん……
MEIKO:——頑張ってね、ふたりとも
MEIKO:最高の曲、期待してるよ
咲希:——はい!

第 8 话:交わる音

咲希の部屋
咲希:(……絶対、最高の曲を作るんだ)
咲希:(いっちゃんは、 アタシの想いを曲にするって言ってくれた)
咲希:(Leo/needの、最高のデビュー曲を作るために——)
咲希:(アタシも——その気持ちに応えたい!)
咲希:——いっちゃん、ラフだけどメロディーできたよ!
一歌:わかった、聴いてみるね
一歌:……うん、いいと思う
一歌:咲希が表現したいって言ってた、 “何があっても大丈夫だよ” “みんなで一緒に走っていける”って想いも感じるよ
咲希:ホント!? よかった……
一歌:うん、ただ——
咲希:なになに!?
一歌:——咲希、サビのフレーズを曲頭に使って サビ始まりの構成にしない?
咲希:えっ?
一歌:このサビのメロディー、すごくインパクトあるから 歌から始まったら耳に残るし——
一歌:悩んでも、前を向いていこうって気持ちを表現するんだったら、 最初から歌で始まったほうがいいかもって思ったんだ
一歌:それで、1フレーズずつ音が重なっていく感じにしたら、 みんなで一緒に走っていける感じも 表現できるんじゃないかなって
一歌:……バンドとして始まった、私達みたいに
咲希:あ……
一歌:どうかな
咲希:そうだね……。 ありがとう、いっちゃん!
咲希:じゃあ、頭にサビをもってきて…… キーボードとボーカルだけで展開していく感じにしよっか
一歌:うん、いいね
一歌:それで、えっと……サビ終わりはアップテンポになる感じかな
咲希:うん! みんなでひとつになって、 これからがんばっていくぞ!って走り出すイメージなんだ
一歌:……じゃあ、音が重なったあとに ブレイクを入れて、一気に展開させるのはどう?
一歌:タイミングがぴったり合って演奏が始まれば、 ひとつになった感じも出せるし、聴いてて気持ちいいと思う
咲希:あ……それ、すっごくいい!
咲希:それなら、次のメロは—— 勢いを残したまま展開させたほうがいいのかな
一歌:そこって、どんなイメージなの?
咲希:悩んだり、落ち込んだりしちゃって…… でも、前を向かなきゃって思ってるような感じかな
一歌:……それなら、今の少し落ち着いたイメージのままでいいと思う
咲希:ホント?
一歌:うん。私達も、いろいろあったな……って考えたら、 このメロはわかるなって
一歌:その時の気持ちを考えながら聴いたら、 メロディーが寄り添ってくれてる感じがして
咲希:あ……
一歌:——そうだ、一歩ずつ進んでるってところを もう少し強調するのはどうかな
咲希:一歩ずつ……
咲希:あ、それならここを三連符にしてみる?
咲希:それで、しほちゃんとかに1フレーズずつ歌ってもらうの!
一歌:いいね、みんながそれぞれ進んでる感じが出そう!
咲希:えへへ、じゃあ決定! 次は——
咲希:(さっきと全然違う……。 ふたりで話してると、どんどんアイディアが出てくる)
咲希:(いっちゃんが、ミクちゃん達みたいに 想いを受け止めてくれてるおかげだな……)
咲希:(今度こそ……)
咲希:(今度こそ、できる)
咲希:(ううん、やるんだ……!)
咲希:(いっちゃんと——ミクちゃん達の力を借りてる曲なんだもん!)
咲希:(アタシが絶対、最高の曲にしてみせる——!!)
数時間後
咲希:……できた……!
一歌:そうだね……!
一歌:……つらくても前を向いて、っていう咲希の想いが、 ちゃんと伝わってくる……
一歌:……よかった……
咲希:うん、うん……! いっちゃんのおかげだよ。ありがとう!
一歌:ううん、私は何も……
一歌:……これも、ミク達が助けてくれたおかげだね
一歌:この曲は……メイコやミク…… セカイのみんながいなかったら できてなかったと思うから
咲希:……うん……
咲希:えへへ、なんだかすごいよね
咲希:アタシ達って、ミクちゃんの曲でバンド始めて、 ミクちゃん達のおかげでつながれて——
咲希:それで、またミクちゃん達のおかげで デビュー曲を作ることができて……
咲希:……アタシ達にとって、バーチャル・シンガーのみんなって すっごく大事な存在なんだなって感じちゃった
一歌:咲希……
一歌:……私も、そう思う
咲希:だよねだよね! ……あっ!
咲希:……ねえねえ、いっちゃんって ミクちゃんの曲投稿してるんだよね?
一歌:え? うん……してるけど……
咲希:だったら、この曲も投稿するのはどう?
咲希:たくさんの人に聴いてほしいし…… それに、この曲はミクちゃん達にも歌ってほしいなって思うの
咲希:ミクちゃん達のおかげでできた—— アタシ達の、大切な曲だから!
一歌:咲希……
一歌:うん、私もそうしたい……!
咲希:じゃあ、曲を聴いてもらう時に 真堂さんに相談してみようよ!
一歌:そうだね。……そもそも、曲が駄目って 言われる可能性もあるけど
咲希:だいじょーぶだって! アタシ達の自信作だもん♪
咲希:しほちゃん達にも早く聴いてもらいたいね!
一歌:うん!
咲希:あ……それと——
咲希:いつか……ちゃんとふたりの想いを込めた曲を作ろうよ
一歌:え……
咲希:今回は、アタシのこだわりを優先してもらっちゃったでしょ?
咲希:でも……アタシ、いっちゃんとふたりの想いを込めた曲も、 ちゃんとぶつかって、ちゃんと作りたいから
一歌:……じゃあ、約束だね
一歌:ふたりの想いを込めた曲——いつか、作ろう!
咲希:うんっ!
数日後
ソリス・レコード事務所
真堂:……なるほど
真堂:正直な話、ふたりの個性がそれぞれはっきりと出るような曲を 想像していましたが……
真堂:これはこれで——とてもいい曲です
咲希・一歌:『……!』
真堂:切ない気持ちに寄り添うような優しさの中に、 僅かに……それでも確かに感じる 共に進んでいこうとするストレートな力強いサウンド——
真堂:うまく調和していますね。ふたりで作りつつも、 天馬さんは作曲寄りで星乃さんは編曲寄り……でしょうか
咲希:は、はい……。最初は真堂さんが言ったとおり、 どっちもふたりでやろうとしてたんですけど うまくいかなくて……
真堂:……いえ、この短期間で ここまで落とし込めたのは素晴らしい
真堂:よく頑張りましたね
真堂:どういう形であれ、俺はこの曲は、 ふたつの才能が合わさって生まれた “一歩先のLeo/needの音楽”だと思います
咲希:じゃあ……!
真堂:はい、この曲でいきましょう。 これなら清水さんも納得してくれるでしょうし——
真堂:なによりも……多くの人の心を打つと思います
一歌:…………!
咲希:あ、ありがとうございます!
穂波:よかった……! ふたりとも、お疲れさま!
志歩:この短期間で、よくここまでクオリティー高いの作れたよね
咲希:えへへっ♪ いっちゃんと、“先輩達”のおかげだよ
志歩:え?
一歌:ミク達にちょっと、アドバイスしてもらって
志歩:ああ、そういうこと
咲希:あ、そうだ。 それで……真堂さんにお願いがあるんです!
真堂:ん? なんでしょう
一歌:実は……この曲のバーチャル・シンガーバージョンも 投稿したいなって思っていて
真堂:え?
咲希:えっと……そのほうが、たくさんの人に 聴いてもらえるかもしれないですし!
咲希:だめ、でしょうか……?
真堂:……ふむ。バーチャル・シンガーバージョンですか……
真堂:……面白いですね。いいでしょう
咲希:ホントですか!?
真堂:ええ、皆さんが歌ったバージョンが発売されたあと、 Leo/needの曲だとわかるように投稿していただければ 問題ありません
真堂:Leo/needのいい宣伝にもなりそうですしね
真堂:投稿日については、近くなったら相談しましょう
咲希:やった~! ありがとうございます!
咲希:えへへ、早くいろんな人に聴いてほしいなあ
真堂:すぐに聴いてもらえることになりますよ
真堂:ですが……その前にレコーディングですね。 俺も立ち会いますので、最高の音を録りましょう
一歌:レコーディング……!
咲希:な、なんかすっごくプロっぽい!
穂波:ちょっと緊張しちゃうね……
真堂:すぐに慣れますよ。 肩の力を抜いて、いつもどおり演奏してくれれば大丈夫です
咲希:は……はいっ!
志歩:なんでもう緊張してんの
咲希:あはは、ついつい~!
志歩:でも、まあ……緊張するかもね。 ふたりにとっても、大事な曲になったんだし
志歩:……でも、本当にいい曲だと思う
志歩:……ありがとう。ふたりとも
穂波:早く、この曲をみんなで演奏したいね
咲希:……うんっ!
2カ月後
女性:はあ、待ち合わせ遅れるって信じらんない。 暇だな……
一歌の声:『……——♪ ——♪ ——♪』
女性:あれ? これ、誰の曲だろ
女性:……なんだか、いい曲だな
女子高生:——ねえ、あの曲聴いた?
女子高生:すごくいい曲だよね、励まされるっていうか……
女子高生:あれ、バーチャル・シンガーのバージョンもあるんだけど そっちもすごくよくて——
男子高生:最近、お前ずっとその曲聴いてるよな
男子高生:ああ、なんかいいんだよな。 落ちてる時に聴くと、励まされるっていうか
男子高生:お前も聴いてみろよ。 今、URL送るから
SNS:『この曲聴いて~!』 『えっまだ知らないの?最近すごい人気だよ』
SNS:『なんか聴いてると、私も頑張んなきゃって思える』 『ミクの調声がすごくいい!』
SNS:『なんていうバンドなんだっけ?』
SNS:『——Leo/needだよ!』