活动剧情
灯を手繰りよせて
活动ID:134
第 1 话:兆し
宵崎家 キッチン
まふゆの父:……そうか……
まふゆの父:味覚のほうは、体の問題というわけではなかったのか
まふゆ:……うん
まふゆ:精神的なもの…… ストレスが原因の可能性が高いって言われた
まふゆの父:ストレス、か……
まふゆの父:……なら、これから少しずつ、 心を軽くしていけるようにしよう
まふゆの父:お父さんも、いい病院を探してくるよ
まふゆ:……うん……
奏:——お茶です、どうぞ
まふゆの父:ああ、ありがとうございます
まふゆの父:あれ、この香りはもしかして——
奏:今日持ってきてくださったラベンダーのお茶です。 ……とてもいい香りですね
まふゆの父:ああ、やはり……
まふゆの父:リラックスできる香りらしいので、 作業の合間にでも飲んでください
奏:ありがとうございます
まふゆ:…………
まふゆの父:——そうだ。 まふゆに渡したいものがあるんだ
まふゆ:……私に?
まふゆの父:これなんだが——
まふゆ:え……
まふゆ:この……ノートパソコン……
まふゆの父:ああ、修理に出していたものが戻ってきたんだ。 まふゆが以前、使っていたものなんだろう?
まふゆ:…………
まふゆ:……うん、ありがとう
まふゆの父:——今日も、ありがとうございました
まふゆの父:宵崎さん、まふゆをよろしくお願いします
奏:はい、わかりました
まふゆの父:まふゆ、何かあったらすぐに連絡してくれ
まふゆ:……うん……
まふゆ:…………お父さん
まふゆの父:ん?
まふゆ:……また、来週……
まふゆの父:…………!
まふゆの父:……ああ、またな
住宅街
まふゆの父:……よかった……
まふゆの父:(以前よりも、まふゆの表情が明るくなった気がする)
まふゆの父:(味覚のことも、原因がわかってよかった)
まふゆの父:(だが……そうなると、やはり……)
まふゆの父:(まふゆのためにも——早く、現状を変えなければいけない)
まふゆの父:(……しかし……)
まふゆの父:(……私はまだ、まふゆのことをわかってやれていない)
まふゆの父:(ついこの前まで—— まふゆが味がわからなくなっていたことも、 精神的につらい思いをしてきたことも、知らなかった)
まふゆの父:(その理由が、なんなのかも…… まだ、はっきりとわかっていない)
まふゆの父:(まふゆの心を治すためにも—— まふゆのことを、もっと理解したい)
まふゆの父:(そのためには……)
第 2 话:進めない
朝比奈家 リビング
まふゆの父:——ただいま
まふゆの父:……また電気をつけずにいたのか
まふゆの父:昼は、ちゃんと食べたのか?
まふゆの母:…………
まふゆの父:駅前のデパートで寿司が安く売っていたんだ。 ふたり分買ってきたから、一緒に食べよう
まふゆの母:…………
まふゆの父:……そうだ、まふゆのことなんだが……
まふゆの父:味覚の検査の結果を聞いてきた
まふゆの父:味覚が失われた原因は……ストレスらしい。 今の問題が落ち着けば——
まふゆの母:…………そう
まふゆの母:……まふゆは、まだ戻ってこないのね
まふゆの父:……ああ、まだしばらくはかかりそうだ
まふゆの母:…………わかったわ
まふゆの父:…………
まふゆの父:……なあ、もう一度 あの日のことを話してくれないか?
まふゆの母:もう、すべて話したわ
まふゆの父:……本当か?
まふゆの母:……どういうこと?
まふゆの父:——たしかに、話は聞いた
まふゆの父:まふゆの成績が下がって、 スマホを預かろうとして揉めてしまったことも
まふゆの母:…………
まふゆの父:……だが、本当にそれがすべてなのか?
まふゆの父:私には……その話以上のことが あったんじゃないかと思える
まふゆの父:でないと、まふゆは帰ることをあんなに拒まないだろう
まふゆの母:…………
まふゆの父:頼む、もっと詳しく話してくれ
まふゆの父:まふゆのことを知って、何が原因なのか突き止めて 問題を解決しないと……
まふゆの父:まふゆは、この家に戻ってこないかもしれないぞ
まふゆの母:…………っ
まふゆの父:あの日、まふゆに何が——
まふゆの母:——私だって……
まふゆの母:私だって、わからないわよ!
まふゆの母:私も、まふゆには帰ってきてほしいわ! 決まってるじゃない!
まふゆの母:でも……っ!
まふゆの母:もう、わからないの!
まふゆの父:わからない……?
まふゆの母:どうすればいいの?
まふゆの母:どうしたら、まふゆはわかってくれるの……?
まふゆの母:まふゆ……
奏の部屋
奏:……まふゆ、お茶いれてきたよ
まふゆ:ありがとう
瑞希:『お。それっていつもの、 穂波ちゃんが持ってきてくれる美味しいお茶?』
奏:『今日は違うんだ。 雪のお父さんが持ってきてくれたお茶で——』
絵名:『え、雪の……?』
まふゆ:『香りなら少しわかるって話したら、買ってきてくれたの』
奏:『えっと……ラベンダーのフレーバーティーなんだ。 心を落ち着かせてくれて、 自律神経を整える効果があるんだって』
絵名:『へえ……。 実際、どうなの?』
まふゆ:『……よくわからないけど、スッキリする気はする』
絵名:『そうなんだ。じゃあ、ちょっとは効果あるのかもね』
まふゆ:『……そうだね』
まふゆ:『……歌詞、できたからナイトコードに送る』
瑞希:『お、ありがと~!』
瑞希:『ていうか雪、今日もしかしてパソコンで作業してる? 雪のほうからキー叩く音が聞こえてたんだけど……』
まふゆ:『あ……うん』
まふゆ:『今日、お父さんが……私のパソコンを持ってきてくれたの』
絵名:『え……!?』
絵名:『パソコンって……壊れたって言ってたやつだよね? それ、届けてくれたの?』
まふゆ:『……うん。 前から使ってたものだから……って』
瑞希:『……よかったじゃん!』
絵名:『これで、またパソコンで詞も作れるし Kに借りなくてもミックスできるしね』
まふゆ:『……うん……』
瑞希:『……お父さんと、いい感じみたいでよかったな』
まふゆ:え……
奏:『……そうだね』
奏:『話してる時も、まふゆの学校の話とか 最近あった話とかを聞いてて……』
奏:『まふゆが話したがらないことは、 無理に聞かないようにしてくれてる感じがする』
絵名:『そっか……』
絵名:『まふゆのこと、少しは考えてくれてるのかもね』
まふゆ:…………
まふゆ:(私のことを、考えてくれてる……)
まふゆ:(……そう、なのかも)
まふゆ:(毎週会いに来てくれて、 『帰りたくない』って言っても 嫌な顔をしないでくれて——)
まふゆ:(このお茶も、パソコンも…… 私のために持ってきてくれた)
まふゆ:(私の、ために——)
まふゆ:(……私、は?)
まふゆ:(お父さんは、私のためにいろいろしてくれてるのに)
まふゆ:(私も、早く——帰らないといけないのに)
まふゆ:(でも——)
第 3 话:あの日の夜
1週間後
宵崎家 キッチン
まふゆの父:……そうか、今週も変わりがないようでよかった
まふゆの父:パソコンも問題なく使えているか?
まふゆ:……うん。前のデータもちゃんと残ってた
まふゆ:……ありがとう……
まふゆの父:そうか……
まふゆの父:うん、よかった
まふゆの父:…………
まふゆ:…………
まふゆ:……お父さん?
まふゆの父:……あ、ああ。すまない。 少し考えごとをしていたんだ
まふゆ:考え、ごと……
まふゆ:…………
まふゆ:……ごめんなさい、私……
まふゆの父:いや、謝らなくていい。 まふゆは何も悪くないんだ
まふゆ:でも……
まふゆ:…………
まふゆの父:……まふゆは優しいな
まふゆの父:それなら……ひとつだけ、教えてくれないか?
まふゆ:……うん、何?
まふゆの父:あの夜——まふゆとお母さんが話した時のことだ
まふゆ:…………!
まふゆの父:あの日あったことは、お母さんから大体は聞いてはいるんだが……
まふゆの父:一方からの話だけでは、すべてのことを 把握できているとは思えない
まふゆの父:だから、思い出すのはつらいと思うが—— あの日何があったのか、聞かせてほしいんだ
まふゆ:……あの日の、こと……
まふゆ:……あの日、あの日は……
まふゆ:お母さんに、私の——
まふゆ:————!
奏:まふゆ……!
まふゆの父:だ、大丈夫か!?
まふゆ:…………っ
まふゆ:(どうして……)
まふゆ:(言わなきゃ、いけないのに……)
まふゆ:(どうして、私は——)
まふゆ:ごめん、なさい……
まふゆ:ごめんなさい……っ
まふゆの父:……いや、いいんだ。 ありがとう、まふゆ
まふゆの父:無理をさせてすまない
まふゆの父:……もう、大丈夫だ
まふゆ:…………っ
数十分後
寝室
奏:……まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……うん、少し、落ち着いた
まふゆ:……お父さん、は?
奏:心配してたみたいだけど、 『今日はゆっくり休んでほしい』って言って、帰ったよ
まふゆ:……そう……
奏:……まだ、少し顔色が悪いみたいだし 今日は、早めに休んだほうがいいかもね
まふゆ:……そう、だね
まふゆ:…………ごめん
奏:まふゆが謝ることじゃないよ
奏:今日はゆっくり休んで。 瑞希達には、わたしが話しておくから
まふゆ:……わかった
まふゆ:——もっと時間をかけて……自分に合った夢を考えてみたいの
まふゆの母:…………
まふゆの母:そう、まふゆの気持ちはわかったわ
まふゆ:お母さん……
まふゆの母:そんなことを言うなんて……
まふゆの母:——どうして、こんなことになっちゃったのかしら?
まふゆ:え……
まふゆの母:まふゆは、お医者さんになるために あんなに頑張って勉強していたのに——
まふゆ:っ……!
まふゆ:ごめんなさい、お母さん
まふゆ:でも、私は——
???:——そうだな
まふゆ:え……
まふゆの父:お父さんも、お母さんに賛成だ。 まふゆは医者を目指したほうがいい
まふゆの父:——本当に、なぜこんなことになってしまったんだ
まふゆの父:……残念だ
まふゆ:————!!
まふゆ:っはあ、はあ……
まふゆ:……夢……?
???:『——まふゆ?』
まふゆ:え……
第 4 话:話せない理由
まふゆ:ミク、リン……
まふゆ:……どうしたの?
ミク:『奏から、まふゆが具合悪くて休んでるって聞いたの』
リン:『ミクが心配してたから……わたしも、一緒に来た』
まふゆ:……そうだったんだ
ミク:『……大丈夫?』
ミク:『少し、うなされてたみたいだった』
まふゆ:…………
リン:『……もしかして、嫌な夢とか見てたの?』
まふゆ:嫌な……
まふゆ:…………っ
まふゆ:……そう、かもしれない
ミク:『まふゆ……』
リン:『どんな、夢だったの?』
まふゆ:……あの日の、夢……
リン:『あの日……』
まふゆ:……うん
まふゆ:お母さんに、私の気持ちを伝えた日
ミク:『あ……』
まふゆ:それで、お母さんに——否定されて……
まふゆ:……お父さん、にも……
ミク:『お父さん……?』
ミク:『でも、あの日、まふゆのお父さんは——』
まふゆ:……いなかった
まふゆ:でも、夢にはいて——
まふゆ:私が……医者を目指さないのは 残念だって、言って
ミク:『まふゆ……』
リン:『……怖い、夢だったんだね』
まふゆ:怖い……
まふゆ:…………
まふゆ:(あの日、お母さんに、私の気持ちを否定されて…… わかってもらえなかった)
まふゆ:(……もし、お父さんにまで、否定されたら……)
誰もいないセカイ
ミク:…………
リン:まふゆ、大丈夫かな
リン:あれから、また眠ってたけど…… ちょっとうなされてたみたいだった
ミク:……うん……
ミク:否定されるのが、怖い……
リン:…………
リン:……だから、進めないのかな
ミク:え……?
リン:あの日、家を出てから…… まふゆはずっと、前に進もうとしてる
リン:でも……まだ、進めてない
リン:それってもしかしたら……怖いから、なのかなって
リン:また、否定されることが
ミク:あ……
リン:……もし、本当にそうなら……
リン:わたし、まふゆの力になりたい
ミク:リン……
リン:……でも、どうすればいいんだろう
???:おーい、リン~!
リン:あの声……
瑞希:やっほ~! 今日はミクも一緒なんだね
リン:……どうしたの?
瑞希:この前、近所に新しい生地屋さんができてさ!
瑞希:すっごくいい布が安く売ってたから、 みんなにリボン作っちゃおっかなって思って買ってきたんだ!
瑞希:リン達は、この中の生地で気に入りそうなやつ——
瑞希:どうしたの? 何かあった?
ミク:あ……えっと……
瑞希:もしかして……まふゆのこと? 今日、具合悪いって休んでたみたいだし
ミク:あ……
ミク:……うん、実は——
瑞希:……そっか。まふゆが……
ミク:……うん……
瑞希:…………
瑞希:——否定されるのが怖い、か……
瑞希:(……きっと、あの時のことが影響してるんだろうな)
瑞希:(お母さんに、受け入れてもらえなかった時のことが——)
瑞希:(まふゆにとって…… 自分のことを話すのは、すごく勇気がいることだったと思うし)
瑞希:(もし話して、お父さんにも受け入れてもらえなかったら…… もっと、傷つくことになる)
瑞希:(……怖いって思うのは、当然だよね)
リン:……瑞希?
瑞希:あ……ごめん
瑞希:……まふゆの気持ち、ちょっとわかるかもなって思って
リン:え……?
瑞希:あ……えっと、 まふゆにとって、お父さんってすごく大事な人だと思うんだ
瑞希:家族だからっていうのもあると思うけど…… それだけじゃなくて
瑞希:まふゆのことを、ちゃんと考えてくれてるんだなって 最近、話を聞いてるだけのボクも思うからさ
瑞希:だから……そんな、自分のことを想ってくれてる人に わかってもらえなかったら、つらいだろうし
瑞希:もしかしたら、今よりもっと悪い状況に なっちゃうかもしれないしさ
瑞希:そう思うと、怖くて……動けなくなるんだ
リン:…………
瑞希:(だけど——)
瑞希:(……受け入れてくれる人がいると、すごく安心するんだよね)
瑞希:(まふゆにも、そういう味方ができたら…… 今より、楽になるかもしれない)
瑞希:……それなら——
第 5 话:優しい帰り道
翌日
宮益坂女子学園 3年B組
教師:——では、以上です。 皆さん、気を付けて帰ってください
クラスメイト達:はー、今日の宿題多すぎない?
クラスメイト達:思ったー。 部活休んじゃおっかなー……
まふゆ:…………
まふゆ:(……次、お父さんが来る日には……ちゃんと話さなきゃ)
まふゆ:(あの日の、こと……)
まふゆ:(お父さんは、私が帰ってくることを—— 私が話すのを、待ってくれてる)
まふゆ:(……でも……)
まふゆ:…………っ
クラスメイト達:まふゆー、今日って部活だっけ? 予定なかったら一緒に宿題やらない?
クラスメイト達:そんなこと言って、 まふゆのを写させてもらうつもりでしょ!
クラスメイト達:え、そ、そんなことないけどー
まふゆ:——もう、駄目だよ。 宿題はちゃんと自分でやらなきゃ
クラスメイト達:それはわかってるってば~! ちゃんと自分でやるから、それはそれとして一緒にやろうよ!
まふゆ:んー……そうだね……
まふゆ:……あ……
まふゆ:(……メッセージ? 誰から……)
校門前
瑞希:やっほー、まふゆ! 今日もお疲れ~
まふゆ:……急に、どうしたの
瑞希:まふゆもそろそろ帰る頃かなって思ってさ。 せっかくなら一緒に帰りたいな~って
まふゆ:……学校、違うのに?
瑞希:まあまあ、それはいいじゃん!
瑞希:で、どう? 一緒に帰る?
まふゆ:……ここまで来てるのに、追い返すわけにいかないし
瑞希:あはは、まふゆは優しいな~。 じゃ行こっか!
宮益坂
瑞希:——それでさ、新しい店で買った生地で リン達にリボン作ったんだけどカワイくって!
まふゆ:そうなんだ
瑞希:そう! まふゆにも作りたいから 今度、どの生地がいいか選んでよ! 本当にどれもカワイイから♪
まふゆ:多分、見てもよくわからないから 瑞希が選んでいいよ
瑞希:そっか~。じゃ、ミクとおそろいにしちゃおっと。 きっとミクも喜ぶと思うし!
瑞希:デザイン描いたらまた見せるから、楽しみにしててね♪
まふゆ:……わかった
瑞希:……そういえば昨日、作業休んでたけど 体調は大丈夫?
まふゆ:……うん、今は落ち着いたから
瑞希:ホント? それならいいけど——
瑞希:(……やっぱ、そんなすぐには切り替えられないよね)
瑞希:——ごめん。 実は、昨日休んだ時のこと……ミク達から少し聞いたんだ
瑞希:……あの日のことをお父さんに話したいけど、 話すのが怖いって
まふゆ:あ……
まふゆ:……それで、わざわざ来たの?
瑞希:うん。……おせっかいだなとは思うんだけど、 まふゆと話したくってさ
瑞希:……今も、やっぱり怖いって思う?
まふゆ:…………
まふゆ:……うん……
まふゆ:……お父さんにも、あの日のこと—— 私の気持ちを、話したい
まふゆ:だけど——
瑞希:……そっか……
瑞希:……自分のことを否定されるかもって思うと、怖いよね
瑞希:特に……相手が、すごく大事な人だと
瑞希:ちゃんと話して、もし、受け入れてもらえなかったら ……拒絶されたらって思うと、怖くて
瑞希:それなら、このまま……黙ってたほうがいいのかもって、 そんな風に思っちゃうんだよね
まふゆ:…………
瑞希:だからボクも、全然進めないままなんだけどさ
瑞希:……でもね、思うんだ
瑞希:この世界に、味方になってくれる人は 思ったよりいるんじゃないかなって
まふゆ:……え……
瑞希:もし、ちゃんと話したら…… 『話してくれてありがとう』 『何があっても味方でいるよ』って、言ってもらえるかもしれない
瑞希:……そんな気がするんだ
まふゆ:…………
瑞希:怖いって気持ちもわかるし、 吹っ切るのも難しいと思う
瑞希:でも——
瑞希:まふゆが、お父さんに話したい、 理解してもらえたら嬉しいって少しでも思うのなら—— 話してもいいんじゃないかな
まふゆ:私は……
瑞希:……あ、雨! タイミング悪いなあ、もう
瑞希:傘持ってないし……濡れないうちに帰ろっか!
瑞希:まふゆはそっちの道だよね。 ひとりで大丈夫?
まふゆ:……うん
まふゆ:——瑞希
瑞希:ん?
まふゆ:……ありがとう
瑞希:あはは、全然だよ
瑞希:じゃあ、またナイトコードで!
瑞希:(……ズルいな、ボクは)
瑞希:(自分は全然できてないのに、まふゆにあんなこと言うなんて)
瑞希:(……でも……)
瑞希:味方……か
第 6 话:思い出
寝室
まふゆ:…………
瑞希:この世界に、味方になってくれる人は 思ったよりいるんじゃないかなって
瑞希:もし、ちゃんと話したら…… 『話してくれてありがとう』 『何があっても味方でいるよ』って、言ってもらえるかもしれない
瑞希:……そんな気がするんだ
まふゆ:(……本当に……)
まふゆ:(……本当に、そう言ってもらえたら……)
まふゆ:……でも……
まふゆ:…………っ
???:『——まふゆ』
まふゆ:え……
まふゆ:……リン……
リン:『……まふゆ、まだ顔色悪い』
まふゆ:…………
リン:『……昨日のこと、考えてるの?』
まふゆ:……うん
リン:『そっか……』
リン:『……そんなに怖いなら、話さなくてもいいんじゃない?』
まふゆ:それ、は……
リン:『…………』
まふゆ:……お父さんは、私のために毎週会いに来てくれてるのに 私は……何もできてない
まふゆ:それに……
まふゆ:私のことで、お父さんにあんな顔をさせてる
まふゆ:……だから……
まふゆ:せめて——あの日のことを、話したい
まふゆ:そう……思うのに……
リン:『…………』
リン:『ねえ、まふゆ』
リン:『まふゆにとって、お父さんってどんな人?』
まふゆ:え……
まふゆ:……普通の、人だよ
まふゆ:仕事が忙しいから、普段はあまり家にいないんだけど
リン:『……そうじゃなくて』
まふゆ:え?
リン:『まふゆにとって、どんな人なの?』
まふゆ:私に、とって……
まふゆ:……よくわからない。 小さい頃から、お父さんは忙しくて家にいなかったから
まふゆ:でも——
まふゆ:『お父さんは私達のためにお仕事を頑張ってくれてる』 『お父さんのために、いい子で頑張りましょうね』って お母さんは、いつも言ってた
まふゆ:それで……
数年前
朝比奈家 リビング
まふゆの母:——さあ、お弁当のおかずができたわ。 あとはおにぎりを詰めて完成ね
幼いまふゆ:わあ……!
幼いまふゆ:おべんとう、すっごくおいしそう……!
幼いまふゆ:えへへ、ありがとうおかあさん!
幼いまふゆ:……運動会、おとうさんも来れたらよかったのにね
まふゆの母:お仕事だからしかたないのよ。 でも、お母さんがまふゆのかっこいいところを たくさん撮ってあげるわ
まふゆの母:それで、お父さんに見てもらいましょう
幼いまふゆ:……うんっ! かけっこ、がんばるね!
まふゆの母:ハッピーバースデー、まふゆ!
まふゆの母:ケーキのろうそく、消してちょうだい
幼いまふゆ:はーい!
幼いまふゆ:ふー……
まふゆの母:ふふ、おめでとう!
まふゆの母:はい、お母さんからのプレゼントと…… こっちはお父さんからのプレゼントよ
幼いまふゆ:わあ、ありがとう!
幼いまふゆ:おとうさん、今日もおしごと?
まふゆの母:ええ、まふゆのお誕生日パーティーには 間に合うように帰って来たかったみたいだけど…… お仕事が長引いちゃったみたいね
幼いまふゆ:そっかあ……
幼いまふゆ:ちょっとさみしいけど、 おしごとならしょうがないよね
幼いまふゆ:わたしたちのために、がんばってるんだもんね!
まふゆの母:ふふ、そうね。 明日は早く帰れそうだって言ってたから、 あとでプレゼントのお礼を言いましょうね
幼いまふゆ:はーい!
中学生のまふゆ:(……明日は、高校の入学式か……)
中学生のまふゆ:(学校も同じだし、別に何かが変わるわけじゃないけど——)
中学生のまふゆ:あ……
中学生のまふゆ:……お父さん、おかえりなさい。 今日は早かったんだね
まふゆの父:ああ、なんとかな。 また明日から出張だが
まふゆの父:そうだ、まふゆ。 せっかくだから、今日は一緒に外で寿司でも——
まふゆの父:……会社からだ。こんな時間に……
まふゆの父:——もしもし、どうかしたか?
まふゆの父:……何、それはまずいな……。 わかった。今から戻る
まふゆの父:すまない、まふゆ。 寿司は出張から戻ったあとになりそうだ
中学生のまふゆ:ううん、大丈夫だよ
中学生のまふゆ:お仕事頑張ってきてね、お父さん
まふゆ:……ずっと、そんな感じだったな
リン:『…………』
リン:『それだけ?』
まふゆ:え……
リン:『お父さんのこと、家にいなかったってことしか わからなかったから』
リン:『他にはないの? お父さんとの思い出』
まふゆ:他に……
まふゆ:あとは——
リン:『……!!』
リン:『な、何……今の音……?』
まふゆ:今の?
まふゆ:ああ、ただの雷だよ
リン:『雷……?』
リン:『……っ!!』
まふゆ:……大丈夫?
リン:『だ、大丈夫……だけど……』
リン:『ま、まふゆ……怖くないの?』
まふゆ:私は……
まふゆ:……? メッセージ……
まふゆ:誰から——
まふゆの父のメッセージ:『すごい雷だったが、大丈夫か?』
まふゆ:あ……
リン:『まふゆ?』
まふゆ:……もうひとつ、あった
第 7 话:雷鳴の夜
数年前
まふゆの部屋
幼いまふゆ:ひゃっ……!
幼いまふゆ:(かみなり……さっきよりも強くなってる……)
幼いまふゆ:……っ!
幼いまふゆ:(ううっ……こわいよ……)
幼いまふゆ:おかあさん……
幼いまふゆ:(おかあさんのとこ、行きたい……)
幼いまふゆ:(……だけど、もうおねえさんだから ひとりでねなきゃダメ、って言われてるし……)
幼いまふゆ:(でも……)
幼いまふゆ:っ! うう……
幼いまふゆ:やっぱり、こわいよぉ……
幼いまふゆ:おかあさん……
まふゆの父:——まふゆ?
まふゆの父:……ちゃんと眠っているか……?
幼いまふゆ:おとうさん……
まふゆの父:え……
まふゆの父:まふゆ……! 起きていたのか?
幼いまふゆ:う、ご、ごめんなさ……
幼いまふゆ:っ……!
幼いまふゆ:う、うええ……
まふゆの父:まふゆ……!
まふゆの父:……もしかして、眠れなかったのか?
幼いまふゆ:……っ、ごめんなさい……
幼いまふゆ:かみなりの音、おっきくて、こわくて……
まふゆの父:そうだったのか……。 気づいてやれなくてごめんな
まふゆの父:大丈夫だ。 眠れるまで、お父さんがそばにいる
幼いまふゆ:あ……
幼いまふゆ:で、でも、ひとりでねなきゃダメ、って おかあさんが……
まふゆの父:心配しなくていい。 お父さんが、まふゆはひとりで寝たと言っておくから
幼いまふゆ:……いいの?
まふゆの父:ああ、大丈夫だ
まふゆの父:——ほら、お父さんが手を握っているから 雷も怖くないだろう?
幼いまふゆ:……うん……
幼いまふゆ:……あ……
幼いまふゆ:(おとうさんの手、あったかくて…… ぎゅってされると安心する)
幼いまふゆ:(……おとうさんが、いてくれるなら……)
まふゆ:私にとって、お父さんは……
まふゆ:……わからない、けど……
まふゆ:あの夜、手を握ってもらえて、安心して眠れた
リン:『……そうだったんだ』
リン:『なら……信じてみても、いいんじゃない』
まふゆ:え……?
リン:『……まふゆの話を聞いて、思ったの』
リン:『まふゆのお父さんのこと。 ……優しい思い出も、ちゃんとあったんだって』
まふゆ:あ……
リン:『……それだけで絶対大丈夫とは言えない、けど……』
リン:『お父さんには今も、その時と同じ優しさがあるんだと思う』
リン:『それを信じて、話してみてもいいんじゃないかな』
まふゆ:あの時と、同じ……
まふゆの父のメッセージ:『すごい雷だったが、大丈夫か?』
まふゆ:…………
第 8 话:灯を握りしめて
数日後
宵崎家 キッチン
まふゆの父:……すみません、週末の予定でしたのに 急にお邪魔してしまいまして
奏:いえ、大丈夫です。 でも何かあったんですか?
まふゆの父:ああ、いえ…… 良さそうな病院をいくつか見つけてきたので、 早くまふゆに紹介したくて
まふゆ:病院……
まふゆの父:ああ、心を治す手伝いをしてくれるところだ。 候補はいくつかあるんだが——
まふゆの父:……ここは、宵崎さんの家からも通いやすくて評判もいい。 お父さんも少し話してきたが、先生も優しそうだった
まふゆの父:まふゆさえ良ければ、今度行ってみないか?
まふゆ:…………
まふゆの父:ああ、もし嫌なら構わない。 それに行ってみて、違和感があれば通わなくても——
まふゆ:……わかった。考えておく
まふゆの父:それなら、病院に連絡しておくよ。 いつくらいに時間が取れそうか、あとで話そう
まふゆの父:……ああ、そうだ
まふゆの父:この前は、大丈夫だったか? すごく大きな雷が鳴っていたが……
まふゆ:……あ……
まふゆ:……うん。もう、雷は怖くないから
まふゆ:でも……ありがとう
まふゆの父:そうか……
まふゆの父:それならいいんだ
まふゆ:…………
瑞希:まふゆが、お父さんに話したい、 理解してもらえたら嬉しいって少しでも思うのなら—— 話してもいいんじゃないかな
まふゆ:……あの、ね
まふゆの父:ん?
まふゆ:あの日のこと……なんだけど
まふゆの父:あの、日の……
まふゆの父:あ……
まふゆの父:聞かせて、くれるのか
まふゆ:……うん……
まふゆ:私……
まふゆ:……お母さんと話をしたの。 テストの成績が、下がったから……
まふゆの父:…………
まふゆ:それで、勉強に集中するために スマホを……預かるって言われて
まふゆの父:……ああ
まふゆ:勉強はするから、スマホは許してほしいって言ったんだけど ……お母さんは聞いてくれなくて
まふゆ:スマホを取り合ってるうちに 水槽に落ちて……壊れたの
まふゆの父:…………
まふゆの父:……そう、だったのか
まふゆ:成績が下がったのは、私が悪いの
まふゆ:……でも……
まふゆ:パソコンも、シンセも、スマホも…… 大切なものが……なくなっていって
まふゆ:奏達との……つながりも……
まふゆ:このままだと、全部、なくなるかもしれないって、思って
まふゆの父:…………
まふゆ:このままじゃ、もう……無理だって感じて
まふゆ:……全部、なくなる前に…… お母さんに、私の気持ちを話さなきゃって、思ったの
まふゆの父:まふゆの……気持ち?
まふゆ:……うん
まふゆの父:……大丈夫だ、まふゆ。 話してくれ
まふゆ:…………
まふゆ:私……私、ね……
まふゆの父:ああ
まふゆ:……本当は、医者になりたいわけじゃないの
まふゆの父:…………え?
まふゆの父:それは……本当なのか?
まふゆ:……あ……
まふゆの父:私は……ずっと、まふゆは医者を目指しているんだとばかり……
まふゆ:…………っ
まふゆの父:…………そうか
まふゆ:——ごめんなさい、お父さん!
まふゆ:でも、私……っ
まふゆの父:…………
まふゆの父:——いや、謝らなくていい
まふゆの父:……そうか
まふゆの父:…………そうだったのか……
まふゆの父:——すまない、まふゆ
まふゆ:……え……
まふゆの父:……今まで、まふゆの夢は 医者になることだとばかり思っていた
まふゆの父:まふゆは成績もいいし、頑張れば夢じゃない。 将来も、きっと安泰だろう、と……
まふゆの父:だが——
まふゆの父:……その思い込みが、まふゆを苦しませてしまっていたんだな
まふゆの父:…………わかってやれなくて、すまなかった
まふゆの父:ちゃんと、まふゆのことを見ていてやれば こんなことには——
まふゆ:お父さん……
まふゆ:お父さんは悪くないよ、私は——
まふゆの父:——まふゆ
まふゆの父:まふゆがやりたいことをしていいと、お父さんは思う
まふゆ:…………!
まふゆの父:お母さんがどう考えているのかは、まだわからないが—— あとで話をしてみよう
まふゆ:お母さん、は……
まふゆの父:大丈夫だ。 お母さんも、きっとわかってくれるさ
まふゆの父:それに——
まふゆの父:何があってもお父さんはまふゆの味方だ
まふゆ:あ……
まふゆ:…………
まふゆの父:……まふゆ?
まふゆ:手を……
まふゆ:……手を、握っても……いい?
まふゆの父:手、か? ああ、もちろんだ
まふゆ:……あ……
まふゆ:(あの時と、同じ——)
まふゆ:(——あたたかい……)
リン:『お父さんには今も、その時と同じ優しさがあるんだと思う』
瑞希の部屋
瑞希:——よっし、絵コンテ完成~!
瑞希:夜になったらみんなに見てもらお~っと
瑞希:いやー、学校サボっての作業ははかどるな~♪ 一段落したし、ちょっとおやつでも——
瑞希:……あれ、メッセージ?
まふゆのメッセージ:『——Amia』
瑞希:え、雪? でも、こんな時間にどうしたんだろ
瑞希:(もしかして、お父さんと何か……)
まふゆのメッセージ:『ありがとう』
まふゆのメッセージ:『お父さんに、話せた』
瑞希:え……
まふゆのメッセージ:『私の気持ちをわかってもらえた』
瑞希:あ……
瑞希:……『よかったね』、と……
瑞希:そっか……。 まふゆ、話せたんだ
瑞希:(……まふゆは、強いなあ)
瑞希:(もう、前に進めたなんて)
瑞希:それに……ちゃんと、受け入れてもらえたんだ
瑞希:……ボクも、進みたいな
瑞希:今度こそ——ちゃんと
神山高校
絵名:はあ……
絵名:ほんっと最悪。 文化祭の出し物がイカ焼きとか……
絵名:ソースのにおいキツいし、クラTも可愛くないし…… モチベ上がんないな……
絵名:まあでも、瑞希もやる気出してるみたいだし ……今回は私もちゃんと参加しよっかな
絵名:……そういえば、瑞希のクラスは面白そうなことやるんだっけ
絵名:——そうだ、せっかくだし見に行っちゃおうっと。 ふふっ驚くだろうなー