活动剧情

お縄を頂戴!?天馬捕物帳

活动ID:136

第 1 话:レッツ体作り!

早朝
乃々木公園
えむ:みんな~っ! ぐっもーニンニン忍法おはようの術~☆
寧々:おはよ、えむ。 なんか今日も変なあいさつだけど……
えむ:えへへっ♪ 今、時代劇の練習してるから、 忍者さんの気持ちになってみたんだっ!
類:フフ、忍者がグッモーニンと言うかどうかは 審議が入るところだろうけれど——
類:今度の公演、『銀之助捕物帳』が楽しみなのは よく伝わってきたよ
類:実際、僕もとても楽しみだ。 路上で芝居をやったり、いつもとは趣向が違うからねえ
えむ:だよねだよね! 早く本番にならないかな~♪ ね、司くん——
えむ:……ほえ? そういえば、司くんは?
類:ああ、えむくんはまだメッセージを見ていなかったんだね
類:昨日の夜、司くんから 『自主練習をしているからお前達はお前達で行ってくれ』 と連絡が来ていたよ
えむ:あ、そうだったんだ!
寧々:司、最近本当にはりきってるよね
類:ああ。 今回の公演で、大きな役をもらえたからだろうねえ
類:きっと今も、鬼島さんと殺陣の練習をしているんじゃないかな
寧々:そっか……。 それじゃわたし達も早く合流しないとね
えむ:うんうんっ! みんなでレッツゴ~!!
劇団三日月組 稽古場
えむ:おっはようございま——
司:ぬうおおおおおおおおお~~~~!!!!
えむ:わ、わ~~~!?!?
寧々:な……!! つ、司……が…… なんか必死で行ったり来たりしてる……!?
司:ぬうおおおおおおおおお~~~~!!!!!!!!
類:これは……基礎練習の走り込みかな? それにしては気合いが物凄いけれど——
えむ:かっこいいね! ぬおおおおおおーーって!!
寧々:かっこいいっていうか、 もはや野生に還ってるっていうか……
鬼島:——やあ、みんなおはよう!
鬼島:今日も早くから来ているな! 感心感心!
えむ:あ、鬼島さん、おはようございますっ!!
寧々:えっと、その…… 司、今何をやってるんですか? いつものメニューとは違うみたいですけど……
鬼島:これか? これは、天馬くんのためのスペシャルメニューだぞ!
司:……ん!?
司:おお! お前達ではないか! もう到着——ゲホッゴホッゲホーッ!!
寧々:わ!? ちょ、ちょっと大丈夫!?
司:だ、大丈夫だ! 息が整ってない内に話し出したから、むせただけだぞ!
寧々:それならいいんだけど……
司:ああ、心配をかけてすまない! オレは全く問題ないからな!
司:——おおっと! トレーニング直後は、モタモタしていられない
司:45分以内に、食事——そしてプロテインを飲まなくては!!
司:ええと、プロテインとシェイカーはたしかバッグに……
寧々:な、なんか……なんていうか……
えむ:司くん、今日すっごくはりきってるね!
類:というか、急に何かに目覚めた、という感じがするね。 何かあったのかい?
司:うむ! よくぞ聞いてくれた!
司:オレは今日から、一段階上の体作りをすることにしたのだ!!
寧々:一段階上の体作り?
司:ああ! 間もなく次の公演——『銀之助捕物帳』がスタートするだろう?
司:それで昨日、鬼島さんと殺陣の練習をしていたんだが——
鬼島:『さあて、平八! ここらで俺達の腕っぷしを見せてやろうじゃあねえか!』
司:『へい! 銀之助の旦那!』
三日月組の座員達:『ええい! やっちまえ!』
司:……っ
司:(『銀之助捕物帳』は、 王道の捕物帳——捕り物を題材とした作品だ)
司:(鬼島さん演じる主役の銀之助は、江戸の町一番の同心。 その知恵と腕っぷしであらゆる事件を解決する)
司:(そしてオレが演じる平八は、 銀之助の弟分の岡っ引きだ。 殺陣も負けないよう頑張らねばならないが——)
司:(——やはり、鬼島さんの殺陣は、レベルが違う)
司:(まず全ての動きに無駄がなく、 『戦い慣れている』という説得力がある)
司:(そして、それだけではなく、 江戸の町の同心・銀之助という人間……その動きになっている)
司:(刀の受け方、かわし方も 普段の鬼島さんとはまるで違っていて挑発的だ。 あれも、あえてやっているのだろう)
司:(オレも、あんな風に、 役そのもののように体が使えれば——)
鬼島:よし! それでは一度休憩にするか!
三日月組の座員達:はいっ!
司:——あの、鬼島さん!
鬼島:ん? どうした天馬くん
司:その、ひとつ質問があるのですが……
司:どうすれば鬼島さんのような動きが できるようになるのでしょうか!?
鬼島:え?
司:……この『銀之助捕物帳』の練習をするようになってから、 何度も思っているんです
司:鬼島さんの殺陣は、本当に素晴らしい……。 一挙手一投足、細かい動きまでも役になりきって動いていて…… まるで神業です!
司:自分も三日月組に来てからトレーニングに励んではいますが、 やはり、動きはまだまだで……
司:オレも、役者として、 鬼島さんのように動けるようになってみたいんです!
司:だから、教えてください! どうすればオレが、鬼島さんのようになれるのか……!
鬼島:どうすれば、か……
鬼島:……そうだな。率直に言えば——
鬼島:——体を鍛えるしかないっ!!!!
司:……へ?
司:いや、えっと……。 体を鍛える必要があるのはわかるのですが、 それ以外で何か……
鬼島:いやいや待て待て天馬くん!
鬼島:たしかに『体を鍛える』というのは 安直な答えに見えるかもしれない
鬼島:だが——今の君にとっては、とても大切なことだ。 俺はそう思っている
司:と、言うと……?
鬼島:まず——天馬くん。 君にはすでに、一定の演技力がある
鬼島:役としてどう動くべきか、 どう見せれば感情が伝わるか…… そういったことも考えて動けている。これは素晴らしいことだ
司:あ……ありがとうございます! 光栄です!
鬼島:だがその一方で——
鬼島:やりたいことに、まだ体が追いついていない
司:……!!
鬼島:殺陣とは、ただの格闘ではない。『格闘のシーン』だ。 『役として動くこと』が求められる
鬼島:つまり——『自分ではない人間として戦う』のだ。 それは簡単なことではない。 より自由に体を使えるようにする必要がある
司:より、自由に……
鬼島:そうだ。そして、筋力、体幹、柔軟性……。 そのどれも、まだ君にはたりていない。体ができていない
鬼島:だからまずは、もっと体を自由に使えるよう、 鍛えていく必要があるんだ
司:な……なるほど……! たしかに、それはもっともだ……
司:基礎力がついていない内から、応用問題を解こうとしても、 うまくはいかない……そういうことですよね
鬼島:ああ、そうだ。 運よく解けることがあったとしても、 それでは再現性がないからな
鬼島:いい役者を目指したいならば、まずは基礎だ。 体を徹底的に鍛え、コントロールできるようにしていこう
司:——はい! わかりました!
司:……ということがあってな!
司:今オレは、更なるレベルアップのために、 体作りにいそしんでいるのだ!
えむ:なるほど~!
寧々:だから急にプロテインとか飲み始めたんだ
司:プロテインだけではないぞ! ささみ、ゆで卵、ブロッコリー! 筋肉をつけるのに効率のいい食べ物を多く摂取している!
類:フフ、まるで本物のアスリートのようだねえ
類:……ところで鬼島さん。 基礎力をつけたあとのことなんですが——
類:鬼島さんのレベルになると、やはり、 『役作りのために体を作っていく』 ということをされていらっしゃるんですか?
鬼島:ああ。それはもちろんだ
鬼島:役の性格、置かれた環境によって、 筋肉のつきかたも変わってくるからな。 そこはできるだけイメージに近づけている
えむ:ほええ……! 筋肉のつきかたまで変えちゃうなんて、すごいなあ……!
寧々:うん……。 全身で役になっていくんだね
鬼島:まあ、そういったわけで——
鬼島:まず、更なる体力をつける。それができたら 『この役ならばどんな体つきで、どんな動きをするか』 を考えていく
鬼島:そうやって追求していく内に、 『その役ならではの動き』を見つけていく。 ……そのような流れで、俺は役をものにしていっているな
司:その役ならではの動き……
鬼島:ああ。そこまで見事やりとげることができると、とても嬉しい! 演ずるべき人物を、この体で表現しきれたと感じるからな!
鬼島:天馬くんも是非、そこまでいけるように頑張ってくれ! 俺もできる限り協力するぞ!
司:——はいっ! ありがとうございます!
司:(まずは、基礎力をつける……!)
司:(そして役として完璧に動けるようになって、 更にスターへと近づくのだ!!)
司:うおおおお! やってやるぞ~~~~!!

第 2 话:日織時代劇村

司:よーし! 今日は走り込みだ!
司:(走り込みは全ての基本! そして——)
司:(オレが『銀之助捕物帳』で演じる平八は、 江戸でも有名な俊足の岡っ引きという設定だ)
司:(つまり走って走って走って走れば走るほど、 体は作られ、役にも近づくことができる!)
司:ならば——やるしかない!! ぬおおおおおおおおおっ!!!!
通行人:う、うわっ! なんだあの人、叫びながら走り出したぞ……!
犬:ワンッ! ワンッ!
司:次は柔軟だな! リラックスできるよう風呂にも入ったから、準備は万端だ!
司:どんな役をやるにせよ、体が固いままでは なめらかな動きができないからな……。 タコのごとくグニャグニャになってみせよう!
司:よし、まずは開脚……ぐぐぐっ! やはり今はここが限界か……
司:しかし! 限界を突破してこそ、次の道が開けるというもの! いけ、天馬司! 限界を超えろ~!!
咲希:ちょっとお兄ちゃん! 大声出してるとまたご近所から『ワンちゃん飼い始めたんですか』 って言われちゃう——
司:あだだだだ~~! すまん咲希、やりすぎて股裂きの刑のようになってしまった! 助けてくれ~!
咲希:わわ……! お兄ちゃん、大丈夫~!?
数週間後
日織時代劇村
えむ:——わあ~!! すごーい!!
えむ:おうちとかお店とか、映画で見たのとそっくりだよ! あっ、お団子屋さんもある!
類:これが江戸の街並みを再現したテーマパーク『日織時代劇村』か。 とても素晴らしいね
寧々:うん……! まるで江戸時代にタイムスリップしたみたい……
えむ:あ! あっちに忍者さんがいっぱいいるよ! お侍さんも!
類:ここのキャストと、あとはお客さん達だろうね。 仮装体験コーナーがあるから、 お客さんもいろんな役になりきれるらしいよ
類:商人、茶屋の娘、侍……。 いろんな格好の人達がいるねえ。 連休だからか、家族で仮装してる人も多いようだ
寧々:ふふ、あっちで記念撮影してる忍者、 全然忍んでなくておもしろいな
寧々:あとは、からくり屋敷、忍者迷路、 乗馬体験に屋形船に……。 本当にいろんなことができるんだね
えむ:えへへ! 明日からこんなところでお芝居できちゃうなんて、 ホントにすーっごく楽しみ……だけど……
司:はぁぁぁぁ…………
えむ:……司くん、なかなか元気にならないねえ……
寧々:さすがにここまで来たら ちょっとは元気になるかと思ったけど……
類:これはなかなか重症のようだ
司:はぁぁぁぁぁ~…………
類:司くん、大丈夫かい?
司:ああ、大丈夫だ……
類:鬼島さんからも聞いたよ。 頑張った甲斐あって、基礎力をつけることも、 平八らしい体作りをすることもできたんだろう?
類:それなら、そんなに落ち込むことはないじゃないか
えむ:そうだよ! 司くんのふくらはぎ、ムキムキーってしててカッコイイよ!
司:それはもちろん、よかったんだが……
司:ただやはり、『壁登り』ができるようにならなかったことだけが 心残りでな……
類:……やっぱり、そのことを引きずっていたんだね
寧々:壁登りって……たしか、役作りで思いついた技だよね
司:ああ……
司:——『銀之助捕物帳』の中で、平八は何度も 盗人・韋駄天の忠助に足の速さで負ける
司:負けず嫌いの平八ならばきっと、 自分をコケにした忠助を出し抜くために、 新たな秘策を考えるはずだと思ったんだ
司:その秘策が、忠助の得意技でもある『壁登り』だ
司:それができれば、実際にやるかは置いておいても、 より平八らしい動きができるようになると思ったんだが……
寧々:まあ、壁登りなんてそう簡単にはできるようにならないよね。 ほとんど忍者の技みたいなものだし
???:——だが、『その役ならではの動き』を見つけたところは よかった。そこについては自分を褒めてやるといい
司:あ……! 鬼島さん!
鬼島:——落ち込む気持ちはわかる。 やりたい動きができない、というのは……歯がゆいものだ
鬼島:しかし——いつまでも落ち込んではいられないぞ!
鬼島:公演はもう明日から始まるのだからな! 切り替えていこう!
司:は、はい……!
司:(……そうだ。 いつまでもクヨクヨ落ち込んではいられない)
司:(この『銀之助捕物帳』は 日織時代劇村とのコラボ公演)
司:(その上、舞台ではなく路上でやる、 誰でも見ることができる芝居だ。 三日月組の名を多くの人に知ってもらうチャンスでもある)
司:(三日月組の皆さんに報いるためにも、 必ずや成功させてみせる!!)
司:よし……! 気合いを入れ直したぞ!
司:今回の公演も見事成功させ、 観客を笑顔にしようではないか!
寧々:ふふ、ようやくいつものテンションに戻った
類:やっぱり司くんはこうでなくてはねえ
えむ:えへへっ♪ それじゃあいつもので、 もう一回気合いを入れちゃおうっ!
えむ:時代劇村で——ニンニンわんだほ~い!
司・類・寧々:『ニンニンわんだほ~い!』
翌日
平八:『旦那ァ! 今日もいい天気ですな!』
銀之助:『よう、平八。 こんなところで油売ってたら、 カミさんに怒られるんじゃねえか?』
平八:『何言ってるんですかい、旦那! あの腕利きで有名な同心・銀之助を手伝わせてもらってんですから 怒られようがねえですよ!』
茶屋の娘・おはな:『た、大変だよ~! 旦那、事件だよ!』
平八:『どうしたんだ? こんな真っ昼間から騒いで』
茶屋の娘・おはな:『あの韋駄天の忠助が盗みを働いたらしいんだ! お代官様の屋敷から、家宝の藤の壺を盗ったらしいよ!』
銀之助:『なに!? あの韋駄天の忠助が現れただと……!?』
平八:『待て待て待て~い!!』
平八:『く……! 忠助め! 韋駄天の名に違わず、足が速え……!』
銀之助:『ふむ、平八でも捕まえられんとは……。 となると、こっちは頭をひねらねえと——』
お忍びの姫・百姫:『おや? お主ら、こんなところで何をしているんじゃ?』
銀之助:『ん? ここらで見かけんお嬢ちゃんだな。 ……いや、その顔もしかして——』
銀之助:『あんたもしや——お姫さんじゃねえか? 変わり者で、いつも町に降りてくる百姫……噂はよく聞く』
お忍びの姫・百姫:『なんじゃ、お主知っておるのか。 からかい甲斐がなくてつまらんのう』
銀之助:『……なあお姫さん。ちょっとばかり力を貸してはくれねえか? そうしたら、おもしろい捕り物を見せてやらあ』
お忍びの姫・百姫:『お、それはおもしろそうじゃな! そういうことなら、助けてやろうではないか!』
平八:『——やっぱりてめえが裏で手を引いていたのか、代官!』
銀之助:『忠助に壺を盗ませて、真面目な上役に罪を着せる……。 そういうやり方で、目障りな連中を切ってきたんだろう!』
代官:『く……! こうなったら——宗近! やつらをたたっ切れ!』
宗近:『承知。 この宗近、お心に従い、働くばかりにございまする』
宗近:『——いざ、覚悟!』
銀之助:『さあこい! 腕っぷしで負ける気はしねえ!』
忠助:『ぐ……! まさか、この忠助様が捕まるとは……』
銀之助:『残念だったな、忠助。 この銀之助と平八にかかれば、お前の足もここまでだ』
平八:『へい! 旦那が逃げ道を先読みして、この平八が先回りをする。 それだけであっという間に袋の鼠ってもんでさあ!』
銀之助:『さあ忠助! 観念してお縄につけ!』
司:……ふぅ! 今日はかなりの盛況だったな!
えむ:お客さん達、とーっても喜んでくれたね! ちっちゃい子も『がんばれー!』って応援してくれてたし!
寧々:うん。初日だし、慣れない場所だったから少し不安だったけど…… うまくいってよかったな
類:そうだね。この調子で明日からも頑張っていこう
司:ああ、そうだな!
司:(……しかし……)
司:(やはりまだ、惜しい気持ちがあるな……)
司:(壁登りができれば、 もっと観客を盛り上げることができただろうに。 オレの体が思うように動かないばかりに……)
司:(——いや! できなかったことを今更あれこれと言っても仕方がない!)
司:(今は目の前の公演に集中しよう! できることを全力で! それもスターにとって大事なことだ!)
えむ:司くん? おーい司く~ん
寧々:なんかすごい勢いで百面相しだしたけど……。 ま、いつものことか
類:フフ、とはいえこのままでは宿に移動しそこねてしまうからね。 ちょっと目を覚ましてもらおうか。——秘技猫だまし、と
司:な、なんだなんだ! 敵か!? 忠助が現れたか!?
寧々:いつまでボーっとしてるわけ? もう宿に移動するってさ
えむ:旅館に行こう、司くん! 今日のご飯はなんだろな~♪
司:あ、ああ! ってお前ら、ちょっと待てーい!
来場客達:は~。 さっきのお芝居、おもしろかったなあ
来場客達:『銀之助捕物帳』だっけ? なんとなく見始めたけど、殺陣が本格的ですごかったよね! また見たいなあ
来場客達:たしかに! 友達にも勧めてみようかな……って……
来場客達:あれ? ここに置いておいた巾着が……ない……!?
来場客達:え!? ホント!? どこかに忘れたとかじゃなくて?
来場客達:そ、そんなことないって! 絶対ここに置いておいたはずなのに……
来場客達:そんな……まさか、盗まれちゃったってこと?
来場客達:そ、そうなのかも……! スタッフの人に相談しに行ってみよう!

第 3 话:公演中止!?

司:な、な、な、なに~~~~~~!?!?
司:公演が、今日から中止になるかもしれない!? そ、それは本当なのか!?
寧々:わ、わからないんだけど……。 さっき倉庫のほうで、そんな話をしてるの聞いちゃって……
えむ:中止になっちゃうの!? そんなの絶対絶対ヤだよ~!! みんないっぱい練習したのに!!
類:…………。 一度冷静になろう、みんな
類:まだ正式にそう伝えられたわけではないし、 もしそれだけの大事になるなら、 鬼島さんから連絡があるはずだからね
類:今は、開演に向けて備えていこう
司:う、うむ。たしかにそうだな……! こういう時こそ、不動の心でいなければ……
鬼島:——急にすまない。全員集合してくれ
司:……! 鬼島さん!
類:……どうやら、早速話が聞けそうだね
鬼島:もしかすると、もう話を聞いた者もいるかもしれないが……
鬼島:本日からこの公演を、一時中止することになった
司:…………!!
寧々:や、やっぱり……! さっき聞いたこと、本当だったんだ……
三日月組の座員達:どうして中止になるんですか!?
三日月組の座員達:一時、ということは、 再開の目途は立っているんでしょうか!?
鬼島:いや。現状、再開の目途は立っていない。 ……中止の理由が理由だからな
類:……理由を伺っても、よろしいでしょうか?
鬼島:ああ、もちろんだ
鬼島:実はここしばらく、時代劇村で、複数の盗難が発生しているらしい
司:と、盗難!?
鬼島:多くは置き引きだ。 客の鞄や、購入した土産物を盗っていってしまうらしい
鬼島:最近は味を占めてか、土産物屋から直接盗ることもあるようだ。 スタッフも警備をしたり注意喚起をしているのだが、 なかなか捕まらないらしくてな……
えむ:ひ、ひどいよ~! お客さん達から大事なものを盗っちゃうなんて!
司:なんという卑劣な輩だ……! 許せん!
鬼島:……ああ、俺も同じ気持ちだ
鬼島:だがまずは、今回の公演について話そう
鬼島:この公演の『捕物帳』という内容は、 今のこの『盗難が続いている』状況には相応しくないという 判断となった
鬼島:そのため、犯人が捕まるか、盗難問題が収まるまでは この公演は中止——ということになった
鬼島:……もしかすると、これ以降は上演できんかもしれん
寧々:そんな……
えむ:あのっ、鬼島さん!!
鬼島:どうした、鳳くん
えむ:犯人が捕まるまで中止っていうことは、 それまであたし達は、 練習して待ってることになると思うんですけど——
えむ:空いた時間で、『泥棒さんに注意してね!』って お客さんに教えるお芝居をしてもいいですか!?
司:む? 注意してねと教えるお芝居……?
司:……ああ! 路上で芝居をして、来場客の防犯意識を高めようというのだな!
えむ:うん! せっかくニコニコしに来たのに 大事なもの盗られちゃったらとっても悲しいと思うから……
えむ:『泥棒さんがいるから注意だよ~!』って教えてあげたら いいんじゃないかなって!
類:フフ、とてもえむくんらしい発想だね
鬼島:——たしかにな。 公演をやらない分、時間もある
鬼島:今のアイディア、時代劇村の方々にも相談してみよう。 むこうも注意喚起が必要だと考えているようだったから、 採用してもらえるかもしれん
えむ:やった~! ありがとうございます!!
鬼島:……こんな事態となってしまい、 全員残念だと思うが——
鬼島:まだ公演が完全に中止となったわけではない。 気持ちは途切れさせずにいこう
司:……、はいっ!!
翌日
日織時代劇村 大通り
えむ:『皆の者、聞いたか~!?』
えむ:『最近、この辺りに盗人が現れるらしいんじゃ!』
寧々:『ええ? 盗人? それは怖いねえ……! どんな風に盗っていくんだい?』
えむ:『どうも、荷物を置いていると、 それをそーっと持っていってしまうようなんじゃ!』
えむ:『皆、持っている財布や巾着には、十分注意するんじゃぞ!』
類:『もし怪しい者を見かけたら、 周りにいる名札をつけた町人に声をかけるといい』
司:『おう! 腕っぷしのいい同心や岡っ引きが、必ず助けにくる! 安心しな!』
来場客達:……これ、世界観壊さないように お芝居で伝えてくれてるみたいだけど 本当に盗難があるみたいだね
来場客達:うん。気をつけなくっちゃ
司:(……よし。 ちゃんと注意喚起できているようだな)
司:(これで多少は、盗難の抑止ができるといいのだが)
司:(しかし……)
司:(盗人のせいで公演が中止になるとは、 まったくもって腹立たしい!)
司:(どうにか捕まえて、 再び公演ができるようになるといいのだが——)
類:さて、ここでの呼びかけも終わったし、 次はあちらの茶屋のほうに行こうか
えむ:うんっ! ……あれ?
司:…………
えむ:司くん? 大丈夫? お茶屋さんのほうに行くよ~?
司:んっ!? ああ、すまん! 少し考えごとをしていてな!
司:早速、次の場所に行くとしよう。 茶屋では『えむの頼んだ団子が類に盗られて、オレが捕まえる』 という流れだったな?
類:ああ。実際のシーンを見せることで、 危機感を持ってもらおう、という狙いだよ
寧々:じゃあ、小道具のお団子を出しておかないと……って……
寧々:あ……ごめん。 お団子、倉庫に置き忘れちゃったみたい。 ちょっと取りに行ってくるね
司:ああ、そういうことならオレが取ってくる。 みんなはここで待っていてくれ
寧々:え? いいの?
司:ああ! トレーニングのおかげでかなり足が速くなったからな。 倉庫まではあっという間だ!
寧々:ありがとう。じゃあ、お願い
司:任せろ! では、行ってくるぞ!
倉庫
司:うーむ……たしか小道具はこの辺りだったか……?
司:時代劇村の倉庫を貸してもらえているのはいいが、 広いせいでなかなか探しにくいな
司:たしかこの辺りに……お、あった!
司:よし、では茶屋に戻って——
司:ん?
司:(今、何か物音がしたような……?)
司:(座員の方か、それともここのスタッフの方か? ……いずれにせよ、挨拶をしておいたほうがいいだろうな)
司:(音がしたのはあの辺りだな。よし——)
司:——お疲れさまです! ……ん!?
忍者姿の怪しい男:……!!
司:な、な……!!
司:(に、忍者姿の男が……! 小道具の壺を抱えたまま、固まっている……!)
司:(あ、怪しすぎる……! 三日月組の方ではないし、 スタッフ証もつけていないようだし——)
司:(これはもう、上から見ても下から見てもまごうことなき泥——)
忍者姿の怪しい男:……っ!!
司:(に、逃げた!! ということはやはり——)
司:泥棒だ~~~~!!!!
司:逃げるな卑怯者! 待て待て待てーい!
司:(急なことで驚いたが……ここで会ったが100年目!)
司:(この天馬司が、必ずお縄を頂戴する!!!!)
司:御用だ御用だ~~~~!!!!

第 4 话:勝負!盗人忍者

日織時代劇村 大通り
えむ:司くん遅いね~? お団子、見つからないのかなあ?
寧々:あの倉庫、結構広いしね……。 やっぱり一緒に行けばよかったな……
類:ふむ。 たしかスマホは持っているはずだから、一度連絡して——
司の声:御用だ御用だ~~~~!!!!
寧々:あれ? この声って……
司:待て待て待て~い!!
えむ:あっ! 司くんだ!
寧々:やっぱり……! っていうか、御用って一体……
えむ:わーっ! 今、忍者さんがあっちに走っていったよ!
司:この盗人、観念しろ~~~~っ!!!!
えむ:あ! 忍者さんを、司くんが追いかけてった!
類:……もしかするとあの忍者——例の窃盗犯なのかもしれないね
えむ:えーっ!? あの忍者さんが!?
寧々:たしかにそうかも……! さっき、盗人!って言ってたし
えむ:じゃあじゃあ、あたし達も追いかけないと!
類:ああ。行こう!
類:寧々は周囲にいるスタッフに知らせてほしい。 窃盗犯らしき人物がいると
寧々:うん、わかった!
司:待て待て待て~い!!
司:(クソ……! そう距離は離れていないし、すぐに捕まえられると思ったが——)
司:(あの泥棒忍者、足が速い……!!)
司:(三日月組のトレーニングにより、 オレの足もかなり速くなったというのに——!)
司:(だがあと少し……! あと少しで手が——)
忍者姿の怪しい男:…………!!
司:(……っ! 着物に手がかかったが、止められん!)
司:(……ん? この忍者、手の甲に——)
司:(……! 奉行所の方は人が多い! このままでは——)
司:く……! あっという間に人混みで見えなくなってしまった……!
司:(しかし、あの風貌なら目立つはず! どこに——)
忍者キャストA:皆の衆! 間もなく忍者教室が始まるでござる!
忍者キャストB:忍者の技を極めたい者は いざ、お集まりあれ~!
司:……! に、忍者がたくさん出てきてしまった……
子供達:わー、楽しそう! お母さん、わたしやりたーい!
来場客達:そうねえ。 お母さんもちょっと気になるから行ってみましょうか
司:(人も集まってきてしまったぞ! これでは——)
司:…………ダメだ。 完全に見失ってしまった……
三日月組稽古場
鬼島:……なるほど。 倉庫で見かけて、そのまま追いかけたが、見失ってしまった……と
司:はい……。 面目ないです……
鬼島:——いや、謝ることはない。 犯人を見つけてすぐ、追跡しようと判断をする、 その勇気は素晴らしいものだ
鬼島:ただ……追い詰められたら相手は何をするかわからない。 これ以降は見かけても、 ひとりで捕まえようとするのはやめてくれ
鬼島:いざという時は、俺達や周囲の大人、警備員に任せてほしい
司:はい……
えむ:司くん、しょんぼりしてるね……
寧々:うん……
類:あと少しで捕まえられそうだったからね……。 心中察するよ
司:…………
司:(あともう少し……もう少しオレの足が速ければ、 きっと捕まえられた)
司:(そしてあそこで捕まえられていれば、また再び 公演ができるようになったかもしれんというのに……!)
鬼島:しかし——天馬くんのおかげで 大きな手掛かりが得られた
司:え……
鬼島:犯人は忍者に扮装して、窃盗を働いている。 これはとても大きな手掛かりだ
司:ですが……そんなのは着替えてしまえば すぐにわからなくなってしまうのでは……?
鬼島:——実はこの時代劇村では、 忍者に仮装できる場所は決まっていてな
鬼島:ひとつがキャスト用更衣室で、もうひとつが忍者の里エリア—— さっき天馬くんが犯人を追い詰めた場所の近くだ
鬼島:実は、草薙くんから連絡をもらった時、 ちょうど座員がそこにいてな。 すぐ、着替える者がいないか、見張ってもらっていたんだ
鬼島:しかし子供以外、着替えに来た者はいなかった。 ということは——
寧々:まだ忍者の格好のままでいる可能性が高い、っていうことですか?
鬼島:そうだ。 無論キャストが窃盗を、という可能性もまだあるが——
鬼島:先ほどスタッフに聞いたところ、 あの時間以降、着替えた者はいないらしい。 事務所のカメラでも確認できた
司:……! では……!
司:ヤツはまだ、忍者の姿でこの時代劇村の中にいる……!?
鬼島:ああ、おそらくな
鬼島:もちろん、更衣室以外で着替えたかもしれないが、 この時代劇村は隠れて着替えられるような場所は少ない。 トイレの入り口や入退場口にも監視カメラがついているしな
司:なるほど……ならば——
司:(まだヤツを捕まえるチャンスはある……!!)
三日月組の座員:それにしても…… どうしてヤツは小道具の壺を盗んでいったんでしょう?
三日月組の座員:たしかに。 金目のものでもないのにな
類:それはおそらく—— 明日から展示する、このチラシの壺と勘違いしたんでしょう
司:なになに? 『時代劇村に名匠・藤野菊王の壺が!』……だと?
寧々:つまり、高価な壺と勘違いした……ってこと?
類:おそらくね。 僕達が時代劇村の倉庫を借りていたから、 似た壺を見つけて勘違いしてしまったんじゃないかな
三日月組の座員:なんというか……間抜けな奴だな。 倉庫に高価な壺が何気なく置かれているわけもないというのに……
鬼島:しかし、逃げ足の速さは一流のようだ。 まるで韋駄天の忠助のようにな
鬼島:さて……そういったわけで、 俺達は注意喚起と並行して、 犯人と壺の捜索を行うことにする
鬼島:壺はどこかに隠しているかもしれんが…… 『忍者の格好をしている』ということはおそらく間違いない
鬼島:だから、俺達は手分けをして怪しい忍者がいないか捜索しよう。 忍者の里、大通り、茶屋街に分かれてな
鬼島:天馬くん達には、大通りをお願いしよう。 だがくれぐれも、無茶はするんじゃないぞ
司:——はい!!
司:(……ヤツめ! かならずや、尻尾を掴んでやるからな……!!)
司:さて、泥棒忍者を探しに さっきの場所までやってきたはいいが……
司:う~む、ここからどう探していったらいいものか……
類:司くんが追いかけた時は、 犯人はどちらのほうに行ったんだい?
司:向こうだ。 しかし、あの先の道は十字路になっているからな……
寧々:どっちの方向に行っててもおかしくないってことか……。 じゃあ本当に忍者の格好してるってこと以外、手がかりゼロだね
司:となると、やはり地道に探していくしかないな……
???:『あら~。みんな、難しい顔してどうしたの~?』
司:ん? この声は……
寧々:ルカさん……! どうしたの?
ルカ:『ほら、前に、“次はここで劇をやるんだ”って 時代劇村のことを教えてくれたでしょう?』
ルカ:『それで見たくなって…… こっそりのぞきに来ちゃったの♪』
ルカ:『でも、なんだかみんなが困ってるみたいだったから、 どうしたのかしら~って思って』
えむ:あ、実はね! 小道具の壺が泥棒の忍者さんに盗まれちゃったの!
ルカ:『壺が……泥棒の忍者さんに……?』
寧々:ちょっとえむ、さすがにそれだと何が何だかでしょ
司:これは、ことのいきさつから説明したほうがいいだろうな。 実は——
司:——というわけで、 オレ達は泥棒忍者と壺を探しているのだが……
司:まったく手がかりがないので、 どうやって探したものかと考えていたのだ
ルカ:『そうだったのね~……』
類:——おそらく犯人は、忍者に扮したキャストや一般客に紛れて この町を巡っているはずだ
類:だから、少々時間はかかるけれど、 忍者に仮装した人ひとりひとりに 当たっていくのがよさそうだね
えむ:でも、話しかけても泥棒忍者さんだって わかるのかな~?
司:ああ、それはおそらく大丈夫だ
寧々:そうなの?
司:ついさっき思い出して、鬼島さんにも伝えたんだが——
司:追いかけている時、ヤツの右手に傷があるのに気づいたんだ。 ネコにでも引っかかれたのか、特徴的な3本線の傷でな
司:だから右手さえ出してもらえば、 そいつが犯人だとすぐわかるはずだ
類:なるほど。その情報はとてもありがたいな。 あれこれとアリバイを聞く必要もなくなる
えむ:うんうんっ! じゃああとは泥棒忍者さんを探すだけだね!
寧々:でも……こう広いと そもそも忍者に仮装してる人を見つけるだけでも一苦労じゃない?
司:たしかにな。 人が多くて視界も悪い
司:効率的に探す方法があるといいんだが……、 やはり、自分の目でコツコツ探していくしかないのだろうか
類:せめて、ドローンを持ってきていたらよかったんだけどねえ……
ルカ:『……あっ♪ うふふ、いいこと思いついたわ~』
司:ん? いいこと?
ルカ:『そうなの♪ ええと……えむちゃん、お手伝いお願いしてもいいかしら~?』
えむ:ほえ? あたし?
ルカ:『ええ! きっと泥棒忍者さんを探しやすくなると思うの~♪』

第 5 话:もっと速く走れれば

日織時代劇村
司:あれからしばらくたつが…… ルカとえむは何をしているんだ?
寧々:さあ……
司:——電話? ……えむからだ!
えむの声:『もしも~し! みんな聞こえる~?』
ルカの声:『今、わたし達はどこにいるでしょ~?』
司:なに? どこにいる、と言われても……
えむの声:『こっち、こっち! 上だよ~!』
寧々:——あ! あそこ!
類:……! なるほど、火の見やぐらの上か!
えむ:えへへ、運営の人に頼んで、特別に入れてもらったんだ! ここからなら、泥棒忍者さんも探しやすいかな~って!
司の声:『なるほど……! たしかに高い位置からなら探しやすい……。 いいアイディアだな!』
寧々の声:『えむなら目もいいし、適任だね』
ルカ:『あら? さっそくそれっぽい人がいるわ~』
ルカ:『えむちゃん、見えるかしら~? お蕎麦屋さんの前にいる、忍者さん』
えむ:うん! あ、あと、弓道場の前と、からくり屋敷の前にもいるよっ!
えむ:みんな、お願いっ!
ルカ:『一緒に泥棒忍者さんを 捕まえちゃいましょう~♪』
司:ああ、任せておけ!
類:あとは——この方法なら、三日月組の皆さんとも 一緒に探せそうだね
類:鬼島さんとも連携して、 みんなで探していこう
司・寧々:『おう!』 『うん!』
寧々:(蕎麦屋の前……あ! きっとあの人だ!)
寧々:あ、あのすみません! ちょっとお話を聞かせてもらってもいいですか?
忍者A:え? あ、はい。 なんでしょうか——
忍者姿の子供達:くらえ、手裏剣アターック!! シュッシュッシュー!!
寧々:え!? なになになに!?
忍者A:こ、こらお前達! 手裏剣は人に投げるなって言っただろう!? お姉さんにも当たるところだったぞ!
忍者姿の子供達:ごめんなさ~い。 ねえねえ、パパも手裏剣練習場で遊ぼうよ~!
忍者A:わかったわかった! あとでな! ……すみません。それで、お話ってなんでしょうか?
寧々:あ、いや、えーっと……
寧々:(さすがにこんな忙しそうなお父さんは 泥棒しないよね……)
類:(弓道場の前……この辺りかな。 けれど忍者姿の人物は見当たらないような……?)
忍者B:クックック……
類:……!? これは、なんとも怪しい笑い声……!
忍者B:忍者の里に立ち入りし者達よ、 生きて帰れると思うな! とーうっ!
類:これは、煙玉……!? いや、それに見せかけたスモークか……!?
忍者B:拙者は織影! この里を守る忍者! 不届き者は拙者がすべて、打ち倒してみせる!!
来場客達:おおーっ! かっこいい!
類:うーむ、これは…… 右手に傷もないし、正式なキャストのようだ
類:しかし今の演出は見事だったねえ! スモークのタイミングもバッチリで…… これはやり方を聞いておいたほうがよさそうだ……!
司:……よし、からくり屋敷に着いたぞ!
司:さて、どこにいるだろうか……。 屋敷の中に入られていたら厄介だが——
司:(む! ちょうど前方から歩いてくるな!)
司:(よし、それでは声を——)
忍者C:…………!!
司:ん?
司:(オレを見て、急にソワソワし始めたな……)
司:あの!! すみません!!
忍者C:……ハ、ハイッ!
忍者C:ナ、ナンデショウか……!?
司:(……異常に緊張している。 声もひっくり返っていて、脂汗もすごい)
司:(壺こそ持っていないが、 これは——)
司:あの、突然失礼ですが……
司:——右手を見せてもらっても、いいでしょうか?
忍者C:……………………
司:……………………
司:あーっ! 逃げた!!
司:——ついに見つけたぞ!! 泥棒だ!! 待てーい!!
司:……っと、鬼島さん達にも連絡をして…… 行くぞ!!
司:(クソ……! こんなことならば、先に手首を掴むなりしておくんだった!!)
司:(しかし、ヤツとオレの距離は前回ほどない!)
司:(それに、この先は行き止まりになっている! これならばきっと——捕まえられる!!)
司:待て待て待て待て~い!!!!
来場客達:お、すごいなあ。 本物の捕り物みたいだ
来場客達:どっちも足が速いわねえ
子供達:がんばれ~!!
司:(よし! ここまできたらあと少し……! 行き止まりまで、追い詰めて——)
忍者姿の怪しい男:…………せいっ!!
司:な……!?
司:(壁を蹴って、そのまま塀を登った……!! あの技は——)
司:『壁登り』……!!
司:(この音は…… 塀の向こう側に着地して、逃げていってしまったのか……)
司:…………っ
司:クソ……!! またしてもオレは……!!
司:(——あと一歩だった……!)
司:(だというのに、ヤツに追いつくことはかなわず…… またも目の前で取り逃がしてしまった)
司:(せめてあと少し、足が速ければ——)
司:(もし練習した『壁登り』を完成させられていれば、 捕まえられただろうに……!)
司:……本当に……オレは……
???:——天馬くん!!
司:え? その声は——
司:鬼島さん!! もう来てくださったんですね!
鬼島:さっき、天馬くんが忍者を追いかけている姿を見かけてな、 その後ろから追っていたんだ
鬼島:だが、一足遅かったようだな……すまない
司:いえ……。 オレの方こそ、すみません。取り逃がしてしまって……
鬼島:気にするな! むしろあそこまで追い詰めたのは大したものだ
鬼島:幸い座員の何人かが、この壁のあちら側を捜索してるはずだからな 近くに怪しい忍者がいたら教えるよう、連絡しておこう
司:……はい……
鬼島:…………。 天馬くん、大丈夫か? どこかケガでもしたのか?
司:あ、いえ、そういうわけではないのですが……
司:……自分が、不甲斐ないと思ったんです
司:一度ならず二度までも、 犯人を目の前で取り逃がした
司:あれだけ体を鍛え、平八として俊足になるよう特訓したというのに オレは…………
鬼島:…………
鬼島:——よし、わかった
司:え? わかったとは、何が……
鬼島:天馬くん!!
鬼島:今から俺に——ついてこい!!
司:……え??

第 6 话:壁にぶつかる時

日織時代劇村 広場
鬼島:と、いうわけで——
鬼島:さあ食え! そこの飯屋で買ってきたおにぎりだ!
司:え、え~と……?
鬼島:まだ昼を食べてないだろう? このベンチに座って、一緒に食べようじゃないか!
司:し、しかし、今はヤツを探すのが先決では——
鬼島:無論、それも重要なことだ。 だが——
司:……!!
鬼島:はっはっは! やはり体はそうもいかんだろう!
鬼島:——腹が減っては戦はできぬ! 焦る気持ちもわかるが、まずは腹ごしらえだ!
司:あ……
司:……たしかに、そうですね。 ショーも、中途半端なコンディションでは いいパフォーマンスができませんし
司:では、遠慮なくいただきます!
数分後
司:……うまい!! うまいですね、このおにぎり!!
鬼島:はっはっは! いい食いっぷりだが、あんまり急いでのどに詰まらせるなよ?
鬼島:お茶も買ってあるから、ここに置いておくぞ
司:はい! ありがとうございます!
鬼島:よし! ではそれを食べ終えたら、また捜索に戻るとしよう!
司:わかりました!
司:その……改めて、ありがとうございます
鬼島:ん?
司:鬼島さんのおかげで、気持ちを切り替えることができました
司:さっきは、ヤツを取り逃がしてしまったことばかり考えて、 後ろ向きになってしまっていたので……
鬼島:……たしかに、そうだな
鬼島:だが——
鬼島:取り逃がしたこと以外も いろいろと考えているんじゃないか?
司:え? あ——
司:(壁を蹴って、そのまま塀を登った……!! あの技は——)
司:『壁登り』……!!
司:…………はい
司:さっき、ヤツが壁登りをする姿を見て、思ったんです
司:もっと速く走れないことが—— そして壁登りができないことが、歯がゆい……と
司:頭の中にはイメージがある。 地面を強く踏んで、高い位置で壁を蹴って、まっすぐ跳ぶ。 そうすれば頭の中のオレは成功する
司:けれど現実は、どうしても体が追いつかない。 鍛えても鍛えても、思ったような結果が出せない
司:……それが、どうしても、悔しくて……
鬼島:——その気持ちはよくわかる
司:え……
鬼島:イメージはできるが、そのイメージに自分が追いつかない……。 その苦しみは、筆舌に尽くしがたい
司:鬼島さんにも、そういったことがあるんですか?
鬼島:はっはっは! それはもちろんあるさ! 神や仏ではないのだからな!
鬼島:ただ、俺の場合は天馬くんと違って、 演技で壁にぶつかったんだがな
司:演技で……?
鬼島:はは、意外か?
鬼島:——実は、俺はもともと、レスリングの選手でな。 演技のほうはからっきしだったんだ
司:え!? レスリングですか……!?
鬼島:ああ。子供の頃からそれ一本でな。 高校の時は、全国で優勝したこともあるんだぞ
司:ぜ、全国で優勝……!? すごいですね……!!
鬼島:はっはっは。そうだろう?
鬼島:……だが、最後の大会で、肩に怪我をしてな
鬼島:生活する分には問題のない怪我だったが、 レスリングで世界を狙うには致命的だった。 ……何度か挑戦する内に、わかってしまった
鬼島:この傷と一緒じゃ、もう勝てない。 ……俺の行きたい場所には、たどり着けないと
司:それは……悔しかったでしょうね……
鬼島:……ああ、そうだな
鬼島:だから大学に入学した時は、だいぶ腐っていたよ。 何を目標にして生きたらいいのか、さっぱりわからなかったからな
鬼島:毎日ふらふらして……ただ時間を無駄にしていた
鬼島:けれどそんなある日、出会ったんだ
鬼島:芝居——演劇というものに
司:あ……
鬼島:学祭で、演劇サークルがやっている芝居を見たんだ。 客もほとんどいないような状態だったが——
鬼島:そこで初めてまともに芝居を見て、感動したんだ
鬼島:中でも——『役者の体』にな
司:役者の体に……?
鬼島:ああ
鬼島:——それまで、俺にとってこの体は、 『試合に勝つため』にあるものだった
鬼島:限界まで鍛えた体で真剣に戦い、相手を打ち負かす。 そうすれば観客は盛り上がるし、俺も気分がいい
鬼島:ただそのためだけに、この体を鍛えてきた
鬼島:だから……芝居を見て——役者の体を見て、 衝撃を受けた
鬼島:『勝つため』じゃなく、 『物語と役の想いを表現するため』に体を使う。 そんな世界があったのか……と思ってな
鬼島:そして——俺もこんな風に体を使ってみたいと思った。 誰かを感動させることで幸せを感じたい、とな
鬼島:それで、その日のうちに入会届を出しに行ったんだ
鬼島:……といっても、俺は演劇なんぞこれっぽっちも触れたことのない レスリング一筋の男だったからな。 最初は酷いなんてもんじゃなかった
鬼島:先輩方は俺のひどい演技を見て、 呆れるを通りこして笑っていたよ。 はっはっは!
司:なんと……。 そんな経緯があったんですね……
鬼島:まあ、それでも少しずつ演技はよくなっていったんだ
鬼島:しかし、うまくなっていく度に——何度も壁にぶつかった
鬼島:『感情が台詞に乗っていない』 『動きはそれらしいが、それだけだ』とな
鬼島:自分としてはしっかりと演技しているつもりだった。 だがオーバー過ぎたり、弱すぎたり…… どうしてもうまくいかなくてな
鬼島:ここにたどり着くまでは、 とても……レスリングで全国優勝をする以上に 苦しい道を歩んだように思う
司:……そんなにも……
鬼島:まあ、つまり何が言いたいかというと——
鬼島:殺陣にせよ、演技にせよ 『イメージに近づく』のは本当に難しいということだ
鬼島:しかしそれでも、俺達は進み続けていくしかない
鬼島:あらゆる手段を考え、模索し続け、自らを高みへと押し上げる。 そうやって進んでいった者だけが—— 理想に近づくことができるのだからな
司:————はいっ!!
司:(あらゆる手段を考え、模索し続け、 自らを高みへと押し上げる……)
司:(……そうだ。 今までだってそうしてきた)
司:(不甲斐ない自分自身を受け止めて、 前に、前に、少しずつ)
司:(ならば、今回も——)
鬼島:……と、言ったところでなんだが、 ここでひとつ、俺からアドバイスがある
司:え?
鬼島:実は昨日、ここの元キャストで 一番人気の忍者役をやっていた人と知り合って—— 壁登りをやったことがないか聞いてみたんだ
鬼島:背格好もちょうど天馬くんに似ているから、 何かヒントがもらえるんじゃないかと思ってね
司:え……! そ、それで……!?
鬼島:ありがたいことに、快くコツを教えてもらえたぞ!
鬼島:そして、壁登りのコツは——
鬼島:————————
司:……! なるほど……!
司:たしかにその観点は抜けていました! この件が落ち着いたら、試してみようと思います!
鬼島:ああ! もしうまくできそうだったら—— そして公演が再開することになったら、 取り入れることを検討しよう
鬼島:だから最後まで諦めず、 模索し続けていこう! 天馬くん!
司:はいっ!!
鬼島:ん? 電話か
鬼島:鬼島だ。 ……何?
鬼島:例の泥棒がこちら側に向かってきているだと!?
司:……!!
鬼島:大通りから西……ではまさにこちらの方だな! わかった、ならば茶屋前で待ち伏せをしよう!
鬼島:天馬くん! 一緒にこの道を塞ぐ手伝いをしてくれないか?
司:……いや……少し待ってください!
鬼島:ん? なんだ?
司:オレに考えがあります!!

第 7 话:己を、高みへと

日織時代劇村
えむ:待て待て待て~っ!!!!
類:まさか合流した矢先に、 犯人に遭遇するとはね……!
寧々:にしてもホント……足速すぎじゃない……!?
類:たしかに、このままでは撒かれてしまいそうだ……! さっき座員の方が応援を呼んだと言っていたけれど、 間に合うかどうか——
えむ:う~!! 泥棒忍者さん、足が速すぎるよ~!!
えむ:……あれ? 道のあっち側に誰か立ってる——
???:——止まれ!! そこの盗人!!
寧々:あ! この声——
えむ:鬼島さんだ~!!
忍者姿の怪しい男:く……!!
鬼島:さあ、もう逃げ場はないぞ! 観念しろ!
類:よし、このまま鬼島さんのほうに追い詰めていけば——
忍者姿の怪しい男:……っ!! せいっ!!
類:な……!!
寧々:よ、横の壁に飛びついて……登ってる!?
えむ:すごーい!! 本物の忍者さんみたい!!
寧々:そ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! このままじゃ逃げられちゃう——
鬼島:——かかったな
司:うおおおおおおおおお!!!!
類:司くん……!?
類:まさか…… あの壁を登って捕まえる気なのか!?
寧々:え!? でも壁登りって、結局できなかったんじゃ……!
えむ:がんばれー! 司くーん!!
司:(——壁を蹴る位置は、 低すぎても高すぎても駄目だ)
司:(足がしっかりと壁を押せる場所。 そこに足を置く)
司:(ここまでは練習でもできていた。 しかしなぜかあと一歩、届かなかった)
司:(だが—— さっきのアドバイスのおかげで、 その理由がわかった!)
司:(登れなかったのはおそらく—— 上に跳ぶ、という意識がなかったからだ)
司:(『壁に指をかけなければ』と考えるあまり、 前のめりになりすぎていた)
司:(だから——全身を使って、上に跳ぶ! それを意識すればいい!)
司:(きっとできる……! できるはずだ! コツを教えてもらった今なら、きっと……!!)
鬼島:——跳べ! 天馬くん!
鬼島:自らを高みへと——押し上げろ!!
司:ぬうおおおおおおおお!!!!
忍者姿の怪しい男:……っ!!
類:やった……!!
えむ:の……のぼれた~~~~!!!!
寧々:で、でも、これ結構危険なんじゃ……! 上で取っ組み合いするわけにもいかないし——
司:さあ——
司:ここからはオレと共に——地獄に落ちてもらうぞ!!
寧々:え? じ、地獄?
司:とおおおおおおう!!!!
寧々:あ、あんな高いところでタックルしたら——
類:落ちる……!! 司くん!!
忍者姿の怪しい男:う、うわああああああ!!!!
司:(——このままでは、ふたりとも地面に激突する! だが……!)
司:(大丈夫だ! オレには——仲間がいる!!)
鬼島:うおおおおおおおお!!!!
えむ:わっ! 鬼島さんがフワフワしたのいっぱい担いで走ってきた!
類:あれは……稲わら!? そうか、畳屋の前にあったものをクッション代わりに——
司:う……
司:……ふぅ。 なんとか、助かった……
えむ:や、やった~!! 司くん達、大丈夫だよ!!
寧々:よかった……
忍者姿の怪しい男:う……う……
鬼島:おっと、もう逃がさんぞ! 事情は事務所でしっかりと聞かせてもらうからな
忍者姿の怪しい男:くう…………
司:鬼島さん、ありがとうございます……! おかげで捕まえることができました!
鬼島:いいや、これは天馬くんの手柄だろう。 待ち伏せていただけでは、また逃げられていただろうからな
鬼島:ともかく、これで一件落着——
子供達:お母さん今の見た!? すごかったよ~!!
司:え?
来場客達:本当ねえ……! まるで本物の捕り物みたいだったわ!
来場客達:時代劇村の芝居はすごいと聞いてたが、 まさかここまでだとは……!
寧々:えっと、これは……
類:やっぱりみんなお芝居だと勘違いしているみたいだねえ
司:『……まったく、 とんでもねえヤツでしたね、銀之助の旦那!』
鬼島:ん?
司:『この俊足、身のこなし—— オレはまだ会ったことはありやせんが、 韋駄天の忠助にも劣らねえんじゃねえですかい?』
鬼島:『——いいや平八。 忠助はこんなもんじゃあねえ』
鬼島:『あいつの足は天下一だ! それこそ韋駄天そのものと言われるくらいにはな』
司:『そ、そんなにもすげえんですか? 忠助ってヤツは……』
鬼島:『ああ。だが——』
鬼島:『その忠助も、必ず捕まえる』
鬼島:『——俺達ふたりでな!!』
司:『……へいっ! 銀之助の旦那となら、 どんなヤツだって捕まえてみせまさあ!』
司:——というわけで、本日中止となっていた 『銀之助捕物帳』の特別番外公演でございました!
司:再開の暁には、皆さま是非ご覧くださいませ!!
来場客達:へえ……! さっきのお芝居、本編があるんだ!
来場客達:今日のもすごかったけど、 もっとすごい敵が出てくるのかな? 見てみたいな~!
鬼島:(……まったく、大したものだ)
鬼島:(若くして演技を磨き、 肉体もここまで鍛え上げ、 そして……ここぞというところでイメージを形にする)
鬼島:(それができるのは、きっとこの心——)
鬼島:(どんな時も観客を楽しませようとする、 この心意気があるからなのだろう)
鬼島:……本当に、この先が楽しみだな!

第 8 话:心技体

数日後
日織時代劇村
平八:『待て待て待て~い!』
平八:『く……! 忠助のヤツ、ちょこまかと走り回りやがる!』
銀之助:『さすが韋駄天の忠助……。 足の速さじゃあ敵わねえな』
銀之助:『ならば——罠にかけるか!』
平八:『罠ですかい? それは一体……』
銀之助:『平八。 お前、最近夜な夜なあの技を練習していただろう?』
平八:『……! 旦那、知っていたんですかい』
銀之助:『当たり前だ。 何年お前とやってると思ってる』
銀之助:『あの技を使え、平八! 忠助を追い詰めるぞ!』
平八:『——へいっ!』
忠助:『はっ! 悔しかったら上まで来てみやがれ!』
忠助:『もっとも、亀みたいにのろまなお前らじゃあ、 何年かかっても追ってこられないだろうがな!』
銀之助:『——さて。 それはどうかな?』
忠助:『なに……!?』
平八:『ぬおおおおお!!』
忠助:『な……! 壁を登ってきただと!?』
子供達:わ……! すごーい!! 平八、かっこいい!
来場客達:あんな風にスルスルっと登れちゃうのねえ!
平八:『舐めてもらっちゃあ困る! オレは銀之助の旦那の右腕・平八だ!』
平八:『いつまでもお前を逃がしてばかりじゃあ 格好がつかねえからな! ——せいっ!』
忠助:『う、うわあ~!』
子供達:あっ、忠助が落っこちちゃう!!
銀之助:『——どっせい!!』
来場客達:わ……!! すごい!! そのままキャッチしちゃった!!
来場客達:大の大人をひとりで……すごい力だな!!
忠助:『ぐ……! まさか、この忠助様が捕まるとは……』
銀之助:『残念だったな、忠助。 この銀之助と平八にかかれば、お前の足もここまでだ』
銀之助:『さあ忠助! 観念してお縄につけ!』
数日後
司:ふう……
司:これで、最後の公演も終わりか……。 あっという間だったな
類:——司くん、お疲れさま。 今日も見事な壁登りだったよ
えむ:うんうんっ! お客さんもすっごく喜んでたよ!
司:ハッハッハ! そうだろうそうだろう! オレの躍動感ある平八の動きは素晴らしかっただろう!
寧々:もう、すぐ調子に乗るんだから
寧々:でも……よかったね。 本番でもやらせてもらえることになって
司:うむ! 土壇場で演出の変更を許可してくれた 鬼島さん達には感謝しなければな
司:っと、噂をすれば……
司:鬼島さん! お疲れさまです!
鬼島:おお、お疲れみんな!
鬼島:全員、今日はとてもいい芝居ができていたな! 殺陣も、練習の成果がよく出せていたぞ!
司:……! ありがとうございます!!
えむ:鬼島さん達にいーっぱい教えてもらったおかげです! ほんとにありがとうございましたっ!!
鬼島:はっはっは! そう言ってもらえると俺も嬉しいぞ!
鬼島:そういえば——聞いているか? あの泥棒が何者なのか、わかったそうだ
司:え……!? 一体、誰だったんですか!?
鬼島:ここの元キャストだそうだ。 久々に来た時、つい出来心で置き引きをしてしまったら 意外にもうまくいってしまったらしくてな
鬼島:忍者キャストのフリをすれば怪しまれることもないと気づいて、 味を占めてあそこまでやってしまったようだ
司:そうだったんですね……。 だからあれほどの身のこなしを……
鬼島:まったく、惜しいな。 あれほど動けても、それを良い方向に使えないというのは
司:そうですね……
鬼島:君達の体は、どうか君達が本当に良いと思えることに使ってくれ
司:——はいっ!
鬼島:しかし——これからは寂しくなるな
鬼島:今回の公演で、君達の修行期間もほとんど終わってしまった
寧々:あ……
司:——改めて、ありがとうございました。鬼島さん
司:三日月組での修行で、 本当にたくさんのことを学ぶことができました
司:そして——『役者は体が資本』。 その本当の意味を、やっと知ることができたように思います
鬼島:……そうか。 君達に道を示せたとしたら、俺も嬉しい
鬼島:だが——礼を言うのは俺も同じだ
司:え?
鬼島:天馬くん、そしてワンダーランズ×ショウタイムの皆を見て、 俺は改めて感じた
鬼島:理想に到達するために必要なもの。 それは——心なのだと
司:…………!
鬼島:肉体、技術。 それは俺達の理想に到達するために必要なものだ
鬼島:だが時に、それだけではどうにもならない時がある。 今回の天馬くんのようにな
鬼島:だがそれでも——
鬼島:誰かを笑顔にしたい。感動させたい
鬼島:その心こそが俺達の背中を押す、 どんなに苦しい時も、前に進む力となる
司:鬼島さん……
司:(心……。 そうか……)
司:(心技体。 その全てがそろって初めてオレ達は、正しく前に進めるのだな)
鬼島:君達を見て俺も、 『俺の中に燃える気持ちを大事にしながら進もう』と、 そう改めて思えた
鬼島:だから——ありがとう
鬼島:これからも、共に頑張ろう! 互いの理想のためにな!
司:……はいっ!
鬼島:よし! それでは最後に——別れを惜しむハグといこうではないか!!!!
司:え? うおあーっ!!
えむ:わわーっ! ぎゅうぎゅうする~!!
鬼島:君達は、本当に素晴らしい教え子だった!!
鬼島:いつかまた共に芝居をしよう! 次の劇団でも、その美しき魂を燃やし頑張るのだぞ!! はっはっはっはっ!!
鬼島:——それでは、またあとでな! 今、三日月組のみんなと送別会も 準備しているから期待しておいてくれよ!
えむ:はーいっ! ありがとうございます!
司:——本当に、よい劇団だったな
寧々:うん。毎日ハードだったけど…… 体のこと、自分の鍛え方のこと——たくさん学べたな
類:フフ、僕達は新たな場所に行くたびに、 とてもたくさんのことを教えてもらえているね
類:この調子で次の劇団でも、 多くのことを吸収していこうじゃないか
司:ああ!
司:——ついに次は、最後の劇団だな
えむ:うん! 今度は『森ノ宮歌劇団』だよね!
類:日本最大の歌劇団、『森ノ宮歌劇団』……。 まさかここで修行ができるとはね
寧々:……うん……
寧々:次の劇団の修行も……頑張ろう!
司:ああ!
司:(……三日月組の皆さんと別れるのは名残惜しい。 だが——)
司:(ここで教えてもらったことを胸に、どこまでいけるか、 また、新しい地で試していきたい)
司:(だから今は、しばしの別れだ)
司:(そしてオレは——オレの道を進んでいこう)
司:(道の先が見えなくとも、努力で切り開く。 そして、必ずたどりついてみせる)
司:(世界中を笑顔にする……スターに!!)