活动剧情

満たされないペイルカラー

活动ID:14

第 1 话:満たされない心

絵名の部屋
まふゆ:『——K、次の新曲の歌詞できたよ』
奏:『ありがとう。 ……うん、いいと思う』
瑞希:『へー、前の曲とはまた違うね。 雪の新しい一面が見れたって感じ!』
まふゆ:『……そうなんだ』
瑞希:『あ、これよくわかってないな?』
絵名:『たく、なんでよくわかんないくせに こんなの書けるわけ?』
瑞希:『感覚で書いてるって感じなのかな? OWNの曲聴いてる時も思ったけど、すごい才能だよね~』
絵名:『…………』
瑞希:『あ! そういえば、この前作った マリオネットの曲あったじゃん? あれ、再生数めちゃくちゃ伸びてたよ!』
瑞希:『割と有名なクリエイターが感想つぶやいてくれて、 話題になってるらしくってさ』
絵名:『えっ、すごいじゃん!』
絵名:『……本当だ。 コメントも、今までより多い……!』
コメント:『今回もイラストいいな』
コメント:『特にサビは、イラストが歌詞に合わせて切り替わるから、 複雑な感情が押し寄せてくる感じがするんだよな』
絵名:(あ……! この人、いつもイラストにコメントしてくれる人だ)
絵名:(私がこだわったところ、ちゃんとわかってくれてる……)
瑞希:『なんかさ、ニーゴも有名になってきたって 感じがするよね!』
瑞希:『ま、でもKと雪は、そういうの興味ないかな?』
まふゆ:『…………』
奏:『……たくさんの人に聴いてもらえるのは嬉しいよ』
奏:『その分、誰かを救えているかもしれないから』
絵名:『ふふ、相変わらずKはKって感じだね』
絵名:『……でも、誰かを救いたい、か』
絵名:『正直、私は自分の作品で誰かを救いたいとか、 そこまで考えられないな』
瑞希:『えななんは有名になって、いいねがいーっぱい つくほうが大事だもんね~♪』
絵名:『ちょっと、人をただの目立ちたがりみたいに 言わないでくれる?』
瑞希:『えー? 違うの?』
絵名:『そ……そりゃ、たくさんの人に見てもらえたら嬉しいけど』
絵名:『でも私は単純に、絵を描くのが好きだから描いてるだけ』
奏:『……そっか』
瑞希:『おー。えななん、いいこと言うじゃん!』
瑞希:『ま、でもこの曲が伸びたのは納得かな。 ボクも気合い入れてMV作ったし!』
瑞希:『えななんの絵も、 いつもよりいい感じだったもんね♪』
絵名:『“いつもより”は余計なんだけど』
奏:『わたしも、いいと思った。 曲と歌詞の世界観をうまく取りこんでくれてて』
絵名:『あ、ありがとう。K……』
瑞希:『ちょっとー、ボクの時と反応違くなーい?』
絵名:『Amiaは褒めてなかったでしょ』
瑞希:『え~?』
奏:『じゃあ、新曲を仕上げていこうか。 もう少しでアップできそうだから、頑張ろう』
瑞希・絵名:『うん!』
絵名:ふー……っ
絵名:Kもいいと思ってくれてたんだ。 私の絵……
絵名:ふふっ。今回のやつも、頑張ろっと
絵名:そうだ、今日も徹夜になりそうだし、 おやつ持ってこよっと
絵名:あ、彰人
彰人:……なんだよ
絵名:ちょうどよかった、おやつ持ってきてよ。 冷蔵庫にプリンが入ってたと思うんだよね
彰人:あ? なんでオレが……
絵名:ついでにジュースもよろしく~
彰人:こっちは忙しいんだよ、自分で取りに行け
絵名:何、彰人のやつ。ちょっとぐらいいいじゃん
絵名:はーあ。面倒だけど下まで取りに行こ
彰人の声:——親父、まだ起きてたのか
絵名:……!
絵名:(あいつ、なんでまだ起きてるわけ……!?)
父親:お前に、画家になれるほどの才能はない
絵名:……っ……
絵名:そんなこと、ない……
絵名:(……ニーゴの再生数も伸びてるし、 私の絵だって、前より評価されて……!)
絵名:あ……
絵名:(絵のアカウントのフォロワー、全然増えてない)
絵名:(アップした絵に反応もないし、いいねもされてない……)
絵名:そう、だよね。 ニーゴの絵を描いてるってこと、 このアカウントのプロフには書いてないし……
絵名:(……ニーゴの名前を出せば、 フォロワーは増えるかもしれない、けど)
絵名:——ううん。だめ
絵名:(このアカウントでは、 純粋に、絵だけを評価してもらいたい)
絵名:(ニーゴのイラスト担当じゃなくて、 ひとりの絵描きとして、認められたいから……!)
絵名:(……でも……)
絵名:…………
絵名:——そうだ。この前、彰人が友達からもらってきた ぬいぐるみがあったっけ
絵名:あれ、写真映えしそうだし、 今日のネタにしちゃおうかな
絵名:『もっと更新して』、『毎日見たい』、『今日も好き』……
絵名:ふふ
絵名:…………こんな、5分で撮れるような写真には反応くるのに
絵名:やっぱり、私は……
絵名:……ううん。 そんなことない
絵名:もっと描かなくっちゃ
絵名:(描き続ければ、きっと誰かが——認めてくれる)

第 2 话:見返してやる

絵名の部屋
絵名:『ふあ……ねむ……』
瑞希:『あー、朝日がまぶしい~!』
絵名:『Amia、うるさい。 耳元で叫ばないでよ』
瑞希:『いいじゃーん、どうせえななんしかいないんだしー?』
絵名:『その私がうるさいって言ってるの!』
絵名:『はあ……そろそろ落ちようかな。 あとは細かい手直しだけだし』
瑞希:『じゃ、ボクもえななんのイラスト見たら落ちよーっと♪』
絵名:『まだ完成してないからダメ』
瑞希:『え~、いいじゃん途中でも。 どんな絵になるかイメージできたほうが、 ボクの作業も捗るし?』
絵名:『そんなこと言って、ただ見たいだけでしょ。まったく……』
絵名:『……そういえば、雪はいつもどおり早く落ちたけど、 今日はKも落ちるの早かったよね。 何か予定あったのかな』
瑞希:『あー。今日、病院行く日って言ってなかったっけ』
絵名:『そっか……。 お見舞いは昼間じゃないと行けないもんね』
瑞希:『えななんも、たまには朝日浴びたら?』
絵名:『浴びてるでしょ、こうやって』
瑞希:『そういう意味じゃなくってさ。 ほら、外に出たら気持ちいいかもよ?』
絵名:『それ、Amiaには言われたくないんだけど。 どうせ今から寝るんでしょ?』
瑞希:『まーね♪ 寝不足はお肌の大敵だし~?』
瑞希:『それじゃ、ボクはそろそろ寝よっかな。 えななん、またね~』
絵名:『うん、おやすみ』
絵名:……私も歯磨きして寝よ……
東雲家 リビング
彰人:……はよ
絵名:おはよ
彰人:また朝までやってたのかよ
絵名:ほっといて。 いいから早く学校行けば?
彰人:夜行ってるヤツは知らねえかもしんねえけど、 この時間は急がなくても余裕なんだよ
絵名:ふーん、別に興味ないけど 教えてくれてありがと
絵名:……ん、何これ?
彰人:ああ、親父がもらってきた美術展のフライヤーだろ。 毎回よくこんなに持ってくるな
絵名:ほんと、どうせ溜めこむだけなんだから もらってこなければいいのに
絵名:……あれ? このフライヤーの絵、 私が好きな画家の……?
絵名:『シブヤアートコンクール』か……。 この人の絵が、前の最優秀賞だったんだ
絵名:(……いいな。 私も、こんな風に賞をもらえたら……)
絵名:(でも、シブヤアートコンクールって本格的なやつだよね。 さすがにこれで賞は——)
???:そのコンクールに応募するのか?
絵名:えっ——
絵名:……な、なに? 急に。 どうしようと私の勝手でしょ
父親:そうだな
父親:だが、このコンクールは 毎年プロレベルの応募者が集まっている
父親:お前とはレベルが違う
絵名:……っ! レベルが低い私は、応募する資格もないってこと?
父親:そんなことは言っていない。 ただ、賞をとるのは難しいと言っているだけだ
父親:それでもいいのなら、応募すればいい
絵名:……っ
彰人:あ、おい——!
絵名:(私とはレベルが違う? 賞はとれない? そんなの……やってみなくちゃわからないじゃない!)
絵名:(……ここまで本格的な賞にはまだ応募したことないから、 どうなるかは、わかんないけど…)
絵名:(でも、賞をもらえたらきっと、みんな認めてくれる)
絵名:(あいつのことだって見返せる……!)
絵名:……決めた。 私、このコンクールで、絶対に最優秀賞をとってやる
ショッピングモール
絵名:ええと、絵の具は……あった
絵名:(コンクールに応募するって決めたのはいいけど、 まさか徹夜明けで画材買いに行くことになるなんて……)
絵名:(ま、絵の具なんてずっと使ってなかったし、 硬化しちゃったのは仕方ないんだけど)
宮益坂
奏:——絵名?
絵名:あ、奏! こんなところで何してるの?
奏:お父さんのお見舞いに行ってたの。 絵名は?
絵名:あ……そっか。 私は、画材を買いに来たの
奏:画材?
奏:へえ、絵のコンクールに応募するんだ
絵名:うん、結構本格的なコンクールなんだ。 プロレベルの人もいるみたい
奏:そうなんだ。すごいね
絵名:あはは、出すだけなら誰でもできるから全然……。 …………
奏:絵名?
絵名:えっ、あーごめん。 こういうコンクール応募したことなかったから、 ちょっと不安になっちゃって
奏:不安?
絵名:うん、なんていうか……うまく描けるかなって
奏:…………
奏:わたしは、絵のことは詳しくないし、 アドバイスはできないけど……
奏:絵名の描く絵は好きだよ
奏:だから、頑張って
絵名:……ありがと、奏
絵名:私、頑張って描くね
絵名:——ただいまー。 ……って言っても、誰もいないけど
絵名:ふふ。今日、奏に会えてよかったな
奏:絵名の描く絵は好きだよ
絵名:——よし、頑張ろうっと!
絵名:(あとは、ここに影を入れて……。 うん、いい感じ)
絵名:(……だけど……)
絵名:(少しモチーフが目立たなくなってるかも……?)
絵名:(全体がぼやけて見えると目を引かないし、 印象がよくないって聞いたことがある)
絵名:(賞を狙うなら、これじゃあ……)
絵名:——もう1回、描き直そう。 大丈夫、まだ時間はあるし
絵名:……ダメ!
絵名:全然インパクトがない。 もっと構図から目立たせていかないと……
絵名:(もっとみんなが見てくれるような—— 認めてくれるような絵にしなくちゃ……!)

第 3 话:凡人

ファミリーレストラン
瑞希:みんな、新曲アップお疲れー!
瑞希:今回のもいい感じだねー! 昨日アップしたばっかりなのに 再生数20万いってるし♪
絵名:うん。コメントもいっぱい……
コメント:『今回も考察が捗るな』
絵名:(あ……この人、前もコメントくれた人だ。 もう見てくれたんだ)
コメント:『イラストからいろいろ読み取れるから、 何回も見るのが楽しいんだよな』
絵名:ふふっ……
瑞希:絵名ってば、なにニヤニヤしてるの? いいコメントでもあった?
絵名:まあね♪
奏:そういえば、絵名、コンクールの絵はできたの?
まふゆ:コンクール?
絵名:そ、絵のコンクール。 結構本格的なやつなんだ
瑞希:え! 絵名ってコンクールとか興味あったんだ!
絵名:まあ、絵描きとしてはね。 やっぱりそういうところで認められてこそ、 っていうのもあるじゃん?
絵名:1週間前に作品出したから、 結果はもうちょっと待つことになると思うけど
奏:いい結果が出るといいね
絵名:うん、ありがと
数日後
東雲家 リビング
絵名:ただいまー。 はぁ……学校疲れた
絵名:早く着替えて、次の曲の構図練っとこ
母親:おかえりなさい。 そういえば手紙が届いてたわよ。 シブヤアートコンクールですって
絵名:えっ……!
父親:シブヤアートコンクール? ……応募していたのか
絵名:っ! お母さん、ちょうだい! 部屋で見るから!!
絵名の部屋
絵名:結果……! ついに、来たんだ
絵名:(……大丈夫、だよね。 何枚も描いて、描き直して、 一番いい絵を送ったんだから)
絵名:きっと——
審査結果用紙:『この度は、シブヤアートコンクールに ご応募頂き、誠にありがとうございました』
審査結果用紙:『慎重に選考させていただきました結果、 今回は残念ですが、授賞を見送らせていただく こととなりました』
絵名:え……?
絵名:(うそ。なんの賞にも引っかからなかったの? 入選もなし?)
絵名:(………………じゃあ、やっぱり……)
絵名:(そんなことない……! あいつの言うことなんて、信じない!)
絵名:(それにちゃんと、私の絵を認めてくれる人だっている。 ニーゴのMVにも、あんなにコメントがついてるんだから)
コメント:『サビのイラスト、曲に合ってるよな』
絵名:(ほら、この人だって……!)
コメントへのレス:『そういえば、ニーゴのイラストって誰が描いてるのかな?』
コメント:『うーん、誰なんだろうな。 ニーゴはクレジット出してないから知らないけど……』
コメント:『でも正直、イラスト単体だったら好みじゃないし、 描いてる人はどうでもいいや』
絵名:……え?
コメントへのレス:『結構絵柄が独特だしね』
コメント:『そうそう。やっぱ、ニーゴの曲ありきなんだよな』
絵名:…………なに、それ
絵名:じゃあ……私の絵は、どうでもいいってこと……?
絵名:ニーゴの曲がついてない、私の絵は——
父親:……絵名
絵名:……っ! 何、勝手に入って——
父親:コンクールの結果が来ただろう。 どうだったんだ
絵名:は? ……そんなの、あんたに関係ないでしょ!
絵名:それとも、私を笑いに来たの?
絵名:せっかく『応募するだけ無駄』なんて ご親切に忠告してくれたのに
絵名:それも聞かずにコンクールに応募したから——
父親:——ああ、落選したのか
絵名:……っ、だから、なに……。 絵を辞めろって言いたいの!?
父親:何度も言うが、好きにすればいい。 絵を描くのは自由だ
父親:だが、お前が画家になりたいのなら、 今のような苦悩がずっと続くことになる
父親:才能がない者が、才能ある者と 同じステージで渡りあっていくということは、 お前が思っている以上につらいものだ
父親:……それだけは覚えておけ
絵名:私が思っている以上に、つらい——?
絵名:そんなこと……!
絵名:そんなこと、あんたに言われなくても 私が一番わかってる!!
絵名:どれだけ頑張って描いても、見てもらえなくて……! 見てもらえても、なんの魅力もないって言われて……!
絵名:それがどれだけつらいかなんて、あんたよりずっとわかってる!! だって——
絵名:……だって私は……持ってない……
絵名:あんた達みたいな才能なんて……持ってないから……

第 4 话:ひとりのセカイ

絵名の部屋
瑞希:『ねえねえ、この前すごい伸びてるって 話した曲あったじゃん? マリオネットの!』
瑞希:『あれ、もう70万再生いってるらしいよ! すごくない!?』
奏:『そうなんだ……。 いつもは伸びても30万再生くらいだったのに、すごいね』
瑞希:『だよねー! びっくりしちゃった♪ ……って』
まふゆ:『…………』
絵名:『…………』
瑞希:『まあ、雪はいつもどおりだけど……。 えななん、テンション低くない?』
絵名:『別に』
瑞希:『別にって……嬉しくないの? 再生数が多いってことは、それだけたくさんの人が ボクらの作品を見てくれてるってことじゃん』
絵名:『……私の絵なんて、曲のおまけでしょ』
瑞希:『え?』
奏:『えななん?』
まふゆ:『……言ってる意味が、よくわからない』
絵名:『あっそ。 そりゃわかんないよね、特にあんたには』
まふゆ:『……?』
絵名:『何も考えなくてもいいものが作れて、 評価されて、期待されて……』
絵名:『そんなあんたに、わかるはずない……!』
瑞希:『ちょ、ちょっと、どうしたのえななん。 なんか今日変だよ?』
奏:『……何かあったの?』
絵名:『…………っ』
絵名:『ごめん。私、今日はもう落ちる』
瑞希:『あっ、えななん!』
奏:『えななん、どうしたんだろう……』
まふゆ:『…………』
絵名:……バカみたい。 みんなに当たっても意味ないのに
絵名:何も、変わらないのに……
絵名:……あはは、酷い顔。 今日のタグは『病み』かな
絵名:……っ
絵名:こんなの……! こんなことで認められても、意味ないのに……っ!
絵名:私は描かなきゃいけないのに……!
絵名:……でも、描いたって意味ないか。 私の絵なんて、誰も待ってないんだから
絵名:なら——絵なんて、もう描かない
絵名:絵の具もペンタブも……、全部、いらない!!
彰人:おい、さっきからうるせーな。 何してんだ——
彰人:……なんだよ、この部屋。 どんだけ散らかしてんだよ
絵名:うるさい、ほっといて。 どうせあとで捨てるんだから
彰人:だったら静かに……って、 それ、絵描く道具じゃねえか。捨てんのか?
彰人:いいのかよ。大事なものなんだろ
絵名:……彰人には関係ないでしょ
彰人:……後悔すんじゃねえのか
絵名:——うるさい
彰人:もし、親父のことが原因なら——
絵名:うるさい!! あんたには関係ないって言ってるでしょ!!
絵名:出てって!! もう私にかまわないでよ!!
彰人:おい、絵名……!
絵名:もう、ほっといてよ! 大事だとか、後悔するとか……もう聞きたくない!
絵名:ひとりにさせて……っ!
絵名:……そうだ、あそこなら……
誰もいないセカイ
絵名:…………すごく、静か
絵名:(——あ、そっか)
絵名:(ここによく来る雪の気持ち、 前はあんまりわかんなかったけど)
絵名:(ここに来れば、何も考えなくて済むんだ)
絵名:(私にあれこれ言うやつも、思い出したくないものも、 ……ここには何もない)
絵名:——何も……
ミク:……絵名?
絵名:ミク、いたんだ
ミク:うん。絵名が来てる気がしたから
絵名:……そっか
ミク:ん……
絵名:ミクは、聞かないの? どうしたのかって
ミク:……うん。話したくなさそうだから
絵名:——ありがと
ミク:…………
絵名:…………。 ……ごめん、ひとりにしてもらってもいいかな
絵名:今は——ひとりになりたいの
ミク:…………
ミク:……うん、わかった
絵名:ごめんね、ミク
絵名:……でも、もうどうでもいいの。全部——
絵名:このまま、全部、忘れたい……

第 5 话:力になりたい

奏の部屋
奏:…………
瑞希:『えななん大丈夫かな。 メッセージも送ってみたけど、全然既読つかないし……』
まふゆ:『…………』
奏:『……どうして、おまけだなんて思ったんだろう』
奏:『えななんの絵とAmiaのMVがあるから、 たくさんの人に歌が届くのに』
瑞希:『え、そうかなぁ?』
奏:『うん。えななんとAmiaが入ってくれてから、 再生数もすごく伸びた』
奏:『歌の世界観が一目でわかるアートワークがあるからこそ、 歌はたくさんの人に伝わる』
奏:『だから……おまけなんかじゃない。 そういう風に、思ってほしくない』
瑞希:『……やっぱ、もう1回えななんと話そう!』
瑞希:『なんであんなこと言ったのかはわかんないけど……。 わかんないなら、話したほうがいいって思うんだ』
奏:『うん、そうだね』
まふゆ:『…………』
瑞希:『でも、どこに行けばえななんに会えるんだろ……。 えななんちは知らないし、ファミレスで待ってても さすがに会えないよね』
奏:えななんに会えそうな、場所……
奏:『セカイ——』
瑞希:『えっ?』
奏:『前に雪がいなくなった時は、セカイに行ってた』
奏:『だから、えななんも……セカイにいるかもしれない』
瑞希:『そっか……そうだね! そしたらみんなで行ってみよう!』
まふゆ:『——私も行く必要、ある?』
瑞希:『えっ?』
まふゆ:『えななんが何を言いたいのか、私にはわからないから。 行っても意味がないと思う』
奏:『……雪の好きにしていいよ』
瑞希:『……うん、そうだね。 もしえななんがいたら、ボク達が説得してくるからさ!』
まふゆ:『…………』
誰もいないセカイ
ミク:…………
瑞希:——あ、いた! ミク!
ミク:あ……みんな、来てくれたんだ
瑞希:うん、絵名がいるかもって思って
奏:……まふゆも来てくれたんだね
まふゆ:……うん……
瑞希:それで、絵名は来てる?
ミク:……うん、いる。けど……
瑞希:やっぱ来てたんだ! よかった~!
瑞希:じゃあ、みんなで会いに行こうよ! さっき話した気持ちを、絵名に伝えよう!
奏:うん、そうだね
奏:ミク、絵名がどこにいるのか教えてくれる?
ミク:…………
瑞希:ミク?
ミク:今は話せないと思う。 ひとりになりたい、誰にも会いたくないって言ってたから
奏:会いたくない……
奏:絵名、そんなに……
瑞希:……でも、まだわかんないよ。 もう1回、ちゃんと会って話せばわかってくれるかも……!
まふゆ:……ひとりになりたい……
奏:あ……
瑞希:そっか。まふゆもそうだったもんね
まふゆ:……でも、私は奏に見つけてもらった
まふゆ:だから、ここにいる
奏:……!
絵名:『そ……そりゃ、たくさんの人に見てもらえたら嬉しいけど』
絵名:『でも私は単純に、絵を描くのが好きだから描いてるだけ』
奏:(絵名は……ひとりになりたいわけじゃない。 本当は、ただ……)
奏:……ミク、やっぱりわたし、絵名に会いたい
奏:絵名の力になりたい
???:……ふうん
???:そんなに助けたいの?
瑞希:えっ?
???:じゃあ、わたしも手伝ってあげる
奏:あなたは……リン……!?
瑞希:え……! セカイにいるのって、ミクだけじゃなかったんだ!?
ミク:ううん、今まではわたしだけだったよ。 でも……
まふゆ:…………?
ミク:前、マリオネットがセカイに現れたみたいに、 少しずつ変わり始めてるのかも
瑞希:んー、よくわかんないけど……。 いい方向に変わってきてるって考えてもいいのかな?
リン:そうかもね
奏:そっか。 よろしく、リン
リン:うん、よろしく
リン:でも、どうやって助けるつもりなの?
リン:会いに行っても、その子がひとりになりたいなら、 逃げられちゃうかもしれないでしょう?
瑞希:あ、そっか……
奏:それなら——
奏:わたしにできることは、ひとつしかない

第 6 话:一番大切なことは

東雲家 リビング
彰人:……ごちそうさん
母親:はい、おそまつさま。 そういえば、絵名はまだかしら。 起きてはいるみたいだけど……
彰人:さあな。あの調子じゃ、しばらく下りてこねえだろ
母親:じゃあラップかけときましょ。 残りの家事済ませちゃうから、彰人も食器だけ シンクに運んでおいてね
彰人:はいはい
父親:…………
彰人:……親父
父親:なんだ
彰人:コンクールのことで、絵名になんか言っただろ
父親:……ああ
彰人:中学の時もそうだったけどよ、 なんであいつにキツく当たんだよ
彰人:たしかに絵名は、親父の思うレベルには届いてないかも しれねえけど、だからって——
父親:——画家は、孤独だ
彰人:……孤独?
父親:時には、誰にも見向きされなくとも描き続けなければならない。 後の巨匠であってもだ
父親:ましてや、生業とするのは簡単なことではない。 生半可な努力と才能では、“本物”と渡りあうことすらできない
父親:だが、それでも画家になることを望むならば—— 生涯もがき苦しむことになるだろう
彰人:…………
父親:技術の話だけではない。 俺は、その苦しみを、絵名が乗り越えられるとは思えない
父親:とても——過酷だからな
父親:……俺はひとりの画家として、それを伝えるべきだと思った
彰人:…………
彰人:親父の言うことは、わかる
彰人:どんな世界でも、才能がないヤツは才能があるヤツの 何百倍も努力しなきゃならねえ。 そのつらさは、オレも少しは知ってる
彰人:それに絵名はああいうヤツだし、 今のままじゃ厳しいって思うのは……わかる
彰人:でもよ、今の絵名がほしいのは、 もっと単純な言葉なんじゃねえのか
父親:……なに?
彰人:絵名は、親父と一緒で、絵が好きなんだよ。 好きなことで才能がないって言われたら、傷つくのは当然だろ
彰人:画家としてじゃなく父親として—— もっと単純に……あいつの絵を見てやれよ
父親:…………
誰もいないセカイ
絵名:…………静かだな
絵名:(このまま、消えちゃいたい——)
???:『——♪ ——♪』
絵名:……——え?
絵名:歌が、聴こえる……
絵名:(なんだろ、ミクの声じゃないし……)
絵名:(歌詞も乗ってない、ただのメロディーなのに ……すごく、胸に響く)
絵名:……優しくて、さみしくて……
絵名:痛い……。 もう、忘れたいのに
絵名:でも……
まふゆ:『このイラスト、色が汚いね』
絵名:『あのね! この色はドロッドロした感情を表現したいから あえてこういう色にしてるの!』
まふゆ:『そうなんだ。よくわからなかった』
絵名:『はあ……そろそろ落ちようかな。 あとは細かい手直しだけだし』
瑞希:『じゃ、ボクもえななんのイラスト見たら落ちよーっと♪』
絵名:『まだ完成してないからダメ』
奏:わたしは、絵のことは詳しくないし、 アドバイスはできないけど……
奏:絵名の描く絵は好きだよ
奏:だから、頑張って
絵名:…………
絵名:……声、こっちのほうからかな……
絵名:あ……
リン:『——♪ ——♪』
絵名:(あれって、バーチャル・シンガーのリン……? でも、どうしてここにいるの?)
絵名:(ミクの他には、誰もいないんじゃなかったの?)
リン:『——♪ ——♪』
絵名:……リン?
リン:……キミが、絵名? はじめまして、わたしはリンだよ
絵名:え? は、はじめまして……?
絵名:ていうか、どうしてここにいるの? 今までセカイには、ミクしかいなかったのに
リン:聞こえたんだ、あの子達の願いが
絵名:え……?
リン:だから歌ってたの。 キミに、この歌が届くように
絵名:私に、届くように?
絵名:……そんなの、頼んでない……
絵名:私は、もう絵のことなんて忘れたいの
ミク:どうして?
絵名:……描いたって、虚しくなるだけだから
絵名:誰も見てくれない。 もし見てもらえても、誰も認めてくれない
ミク:……絵名……
絵名:だから、全部忘れたくて…… もうどうでもいいと思って、セカイに来たのに
絵名:なのに……リンが歌うのを聴いたら……
彰人:いいのかよ。大事なものなんだろ
彰人:……後悔すんじゃねえのか
絵名:……っ
絵名:私、だって……
絵名:私だって、辞めたくない。諦めたくない……っ
絵名:だけど、もうこれ以上頑張ったって意味ないじゃない!
絵名:誰にも認めてもらえないなら—— 私の絵は、存在してないのと同じなの!
リン:本当に?
リン:誰かに認めてもらえないと、キミの絵は存在しないの?
絵名:……っ
絵名:……でも、そうじゃないと……描き続けられない……
絵名:本当は……私だって……
リン:——キミがそう思うなら、そうなのかもしれない。けど
ミク:きっと、あの子達はそう思ってない
絵名:え……?
ミク:だから奏達は、この歌をわたし達に託したの
ミク:絵名に、気づいてほしくて
絵名:奏が……? ていうか、気づくって何に?
リン:本人に聞いてみたら?
絵名:え、でも……
ミク:もし、あの歌を聴いて何か感じたなら、 奏達に会いに行ってほしい
リン:あの子達は、いつでも帰りを待ってるって
絵名:…………

第 7 话:認められたいなら

奏の部屋
瑞希:『やっぱ、えななんがいないと静かだね~』
奏:『そうだね……』
瑞希:『…………。 ホント、大丈夫かな。えななん……』
まふゆ:『…………』
奏:『あっ……!』
瑞希:『うわっ、びっくりした~! ミクじゃん、どうしたの!?』
ミク:『——みんな、セカイに来て』
まふゆ:『え……』
瑞希:『もしかして、えななん……!?』
奏:『……!』
誰もいないセカイ
奏:……絵名
瑞希:絵名、大丈夫!?
絵名:……うん。みんな、心配かけてごめん
絵名:奏も……あの歌、ありがとう
奏:うん……絵名に聴いてもらえてよかった
瑞希:あの歌、絵名のために奏が作ったんだよ。 すっごい勢いで、ガガガーってメロ作ってて びっくりしちゃったよ!
奏:早く聴いてもらいたかったから
絵名:…………そっか
絵名:奏の作る歌は、やっぱり優しいね
絵名:すごく優しくて、胸が痛くなって……。 この気持ちをどうにかして表現したいって、思えた
奏:……よかった
奏:——絵名、あの歌に絵をつけてほしい
奏:絵名があの歌にどんな絵をつけるのか、見たい
絵名:…………
絵名:……私も、描きたいって思ってる
絵名:けど、怖いの
奏:怖い……?
絵名:描いても描いても、誰にも認めてもらえなくて。 ……ずっと絵を描けてる気がしなかった
絵名:ニーゴで描いた絵には、そこそこコメントもついてたから、 少しは認められてるって思ってたけど——
絵名:結局、その絵も曲がないと…… 『ニーゴのイラスト』って肩書がないと、 誰も興味を持ってくれないってこともわかった
奏:そんなこと……
絵名:昔、親にも言われたの。才能がないって
絵名:すごく悔しくて……、 でも、そんなことないって思いたくて、ずっと描き続けてた
絵名:……でも、悔しいけど……あいつの言うとおり、 私には才能がない。だから、誰にも認めてもらえない
絵名:このまま誰にも認めてもらえないなら、 私が絵を描く意味は……
絵名:……ううん。違う
絵名:そんな風に思っちゃう自分が嫌なの
絵名:誰かに認めてもらわないと描き続けられない自分が、大嫌い……!
瑞希:絵名……
瑞希:……絵名は、自分に才能がないって言うけどさ、 ボクはそう思わないよ
絵名:……慰めならいい
瑞希:そんなんじゃないって! お父さんとか、絵名の言う『誰か』は認めてくれないのかも しれないけど、少なくともボクは、絵名の絵が好きだよ
絵名:…………
奏:……そうだね
奏:それにわたしは、絵名が誰かに認めてもらわないと 描き続けられない人間だとも思ってない
絵名:え……
奏:だからわたしは、絵名の絵に惹かれたし—— ニーゴに誘った
奏:絵名、認める人が必要ならわたしが認める
奏:絵名の絵が、ニーゴには必要だよ
瑞希:そうそう! 絵名のことは、ボク達が一番認めてるよ!
瑞希:ね、まふゆ!
まふゆ:…………
まふゆ:認めてもらいたいことの、何が悪いの?
絵名:は?
瑞希:ま、まふゆ……!?
まふゆ:どうして認めてもらいたいって思うと 自分を嫌いになるの?
絵名:それは……
まふゆ:誰かに認められたいなら、 認められるまで描けばいいじゃない
まふゆ:どうせ私達は、作り続けなきゃいけないんだから
絵名:……っ
絵名:そんなこと、簡単に言わないでよね
絵名:でも——そっか。 そうだね
絵名:はぁ。 グチャグチャ考えすぎちゃったのかな、私
絵名:描いてみるよ。 ……うまく描けるか、わかんないけどね
奏:絵名……!
絵名の部屋
絵名:……ふう。 ていうか、部屋すっごい散らかってる
絵名:今すぐ描きたいけど、とりあえず片づけるのが先かな
絵名:……はあ、絵の具拾うのめんど。 資料も散らばってるし
絵名:とりあえず、まとめて棚に……
絵名:——ん? これ……スケッチブック?
絵名:うわ、懐かしい。 小学生の時に水彩で描いたやつだ
絵名:ふふっ、下手だなぁ。 一応水張りしてるみたいだけど、 紙もよれちゃってる
絵名:……でも、この頃から画家になるって決めてたんだよね
絵名:(今の私は……きっと、あの頃 夢見てた“私”とは全然違うけど)
絵名:——ねえ、私……。 まだ、描いてていいかな

第 8 话:私が絵を描く意味

絵名の友達A:ねえ、絵名。進路希望出した?
中学生の絵名:まだだけど、美術科があるところにいくつもり
絵名の友達B:あー、画家になるんだって、 いつも言ってるもんね
中学生の絵名:まあね。うちのお父さん、一応画家だし。 昔からお父さんの影響で、絵ばっかり描いてたから
中学生の絵名:いつかはお父さん以上の画家になるつもりだし、 今から専門的な勉強しておきたいんだよね
絵名の友達A:へえ、いいじゃん。 絵名のサインもらっとこっかな~
中学生の絵名:あははっ、気が早くない? でも、絶対有名になるから楽しみにしててよね!
中学生の絵名:えーと、この辺りの高校で絵を学べるのは2校か……。 こっちは基礎教育を重視してて、もうひとつのほうは ……へえ、プロの画家から直接学べるんだ
中学生の絵名:基礎をしっかりやるか、プロから学ぶか……。 ま、基礎は昔から描いてるから問題ないし、 プロもうちにいるんだけど
中学生の絵名:どっちの高校がいいんだろ。 お父さんに相談してみよ
中学生の絵名:ねえ、お父さーん
中学生の絵名:受験する高校なんだけど、どっちがいいかな。 どっちも美術科があるから 本格的に学べるとは思うんだけど
父親:美術科?
中学生の絵名:うん。だってほら、私、画家目指してるし
中学生の絵名:早いうちから、ちゃんと勉強できるほうが——
父親:やめておけ
中学生の絵名:えっ?
父親:お前に、画家になれるほどの才能はない
中学生の絵名:なっ——、なに、言って……。 え、なんかの冗談? やめてよね、つまんないから
父親:冗談ではない。 お前に絵の才能はない
中学生の絵名:……そんなわけないじゃない。 だって、私、小さい頃から描いてるし、 中学アートコンクールだって特別賞もらったのに……
父親:ああ、知ってる。 だがプロになりたい人間は、ごまんといる
父親:それこそ、コンクールで大賞を取れないレベルでは 誰にも見向きされないだろう
中学生の絵名:……なんで?
中学生の絵名:なんで、急にそんなこと言うの? 今までそんなこと言わなかったじゃん
中学生の絵名:私、本気なのに、どうして……!
父親:——絵名
父親:お前は、お前が目指すような画家にはなれない
父親:……覚悟に足る才能があれば、違うのかもしれないがな
中学生の絵名:……何、それ
中学生の絵名:じゃあ、私が今までずっと絵を描いてきたのも、 全部無駄だったってこと?
中学生の絵名:才能がないから、努力しても意味がないってこと!?
父親:……そうだ。 少なくとも、この世界はそういう世界だ
父親:今のお前に、可能性はない
中学生の絵名:……っ!
中学生の絵名:……そんなの、決めないでよ……
中学生の絵名:私の未来を、勝手に決めないでよ!!
父親:…………
中学生の絵名:もういい、あんたには頼らない……! 私は私の力で、あんたよりすごい画家になってみせる!
絵名:(——あれから、いきたかった学校にもいけなくて……、 結局誰にも認めてもらえなかった)
絵名:(ニーゴの曲を聴いてる人にも、 コンクールの審査員にも、 ……あいつにも)
絵名:(私には、才能がない。 本当は、絵をコンクールに出す前から気づいてた)
絵名:(でも、みんなは——私の絵を必要としてくれた)
絵名:(だったら、私もまだ諦めたくない)
絵名:(私のために奏がくれた歌を、 全身全霊で絵に落としこんでみせる)
絵名:……できた……
絵名:結構、大作になっちゃったな。 ていうかもう真っ暗だし、一日中描いてたわけ? 疲れるわけだ……
絵名:昨日のこと、彰人にも謝らなきゃだけど、 さすがにもう寝ちゃってるよね
絵名:みんなに絵を見てもらって、今日は寝ようかな
絵名:『……みんな、遅くなってごめん。 まだ起きてる?』
瑞希:『あっ、えななん! も~、全然顔出さないから心配したじゃん!』
絵名:『ちょっと集中したかったの。 でも、おかげで絵ができたよ』
奏:『……見せて』
絵名:『うん、今データ送るね』
奏:『……これ、雨上がりの空を見上げる女の子?』
絵名:『そう、Kの曲を聴いた時、モヤモヤしてた何かが 晴れていく感じがしたんだ。 それを表現してみたの』
瑞希:『すごくいいじゃん! 空から差しこむ光がキラキラしてて、すごくきれいだね!』
絵名:『ふふん。そこ、こだわりポイントだから。 一番時間かけて描いたんだよね』
絵名:『それで……K、どうかな』
奏:『うん、……すごくいい』
奏:『わたしの曲、えななんに こういう風に届いたんだ』
奏:『……なんだか、嬉しい』
絵名:『そ、そう? そんな大げさなもんじゃないけど……』
まふゆ:『…………』
奏:『雪はどう感じた?』
絵名:『……聞いても無駄でしょ。 どうせ、またケチつけてくるんだから』
まふゆ:『いいと思う』
絵名:『——へっ?』
まふゆ:『いいと思う』
絵名:『……それ、からかってんの?』
まふゆ:『どうして? 感じたまま言っただけだけど』
絵名:『………………!』
絵名:『あ、あんたに私の絵が理解できるなんてね……』
奏:『ふふっ』
絵名の部屋
絵名:ふわぁ……。あれ? もう朝? 疲れてたからぐっすり眠っちゃったな
絵名:あ、そういえば……。 彰人に当たっちゃったから、謝ろうって思ってたんだ
絵名:今なら学校に行く前だし、話せるかな
東雲家 リビング
絵名:あ……彰人、おはよう
彰人:はよ
絵名:……その、昨日はごめん。 当たったりして
彰人:別に気にしてねえよ。 いつものことだろ
絵名:ちょっと、いつもってことはないでしょ!
彰人:あーわかったわかった。 朝からうるせえな
絵名:……あと、絵は続けることにしたから
絵名:その、ちょっと……いろいろあって
彰人:……そうか。 ま、頑張れよ
彰人:そいや昨日、親父と話したんだけどよ
絵名:えっ……
彰人:親父に悪気はねえ。 親父は親父なりに、絵名を心配してんだよ
彰人:あの言いかたはどうかと思うけどな。 だから、絵名も——
絵名:……ごめん。 私、部屋戻る
彰人:はぁ。そう簡単にはいかねえか
絵名:(……心配してるから、なに)
絵名:(今更そんなこと言われたって、許せるわけ……)
父親:…………
絵名:……っ! ちょっと、何勝手に私の絵見てんの!? 返して——
父親:よく描けてる
絵名:え……
父親:雨雲から差す光が、良いコントラストになっているな
父親:この少女の迷いは晴れそうだ
絵名:……っ、な……
父親:だが、色のバランスは見直したほうがいい。 せっかくの構図が台無しだ
絵名:は!?
絵名:あっ、ちょ……!
絵名:もう、なんなの! 一言多いし!
絵名:……でも、言われてみればちょっとバランス悪いかも
絵名:別に、どこかに発表するつもりはないけど——
絵名:もうちょっとだけ、直してみようかな