活动剧情
The Power Of Regret
活动ID:149
第 1 话:いざ!森ノ宮歌劇団!
???
寧々:わぁ……
寧々:(すごい劇場……! まるで、おとぎ話の中の宮殿みたい……)
寧々:これが……森ノ宮歌劇団なんだ……
えむ:すっごくきれーな劇場だね~~~~!!!!
司:ああ、これほど豪華だとはな! しかも、駅からここにたどり着くまでの道も、 劇場と同じテイストで舗装されているとは……
類:さすがは、100年の歴史を誇る森ノ宮だね
寧々:うん。女性だけで演じる『鈴蘭組』の舞台が、 海外でも話題になるくらい人気なんだけど……
寧々:最近になって、男性だけの『桔梗組』もできたんだよね。 こんなところで修行できるなんて、すごいな……
司:うむ! つないでくれたえむの兄達には、 改めて礼をしなければな!
寧々:そうだね。 …………
えむ:……ほよ? 寧々ちゃん、ピリピリピシーン!ってしてるけど大丈夫?
寧々:あ……まあ、結構緊張はしてるかな
寧々:森ノ宮は、ミュージカル俳優になりたい! って思ってる人間にとっては、憧れの場所のひとつだし
類:ふふ、たしかにね。 森ノ宮は豪華で洗練されたショーで、 観客のみならず、多くの役者を魅了しているしね
司:ああ! まさに日本のミュージカル界の頂点の一つだ! 森ノ宮を出たあとも 俳優として活動している役者がごまんといるしな!
寧々:あとは……稽古もかなりハードだって聞くから
司:たしかに、森ノ宮といえば、 役者を徹底的にしごくことで有名だな
寧々:うん。 そのあたりも覚悟しないとって思って
寧々:(でも、今は緊張してるだけじゃない。 だって——)
???:——失礼します。 ワンダーランズ×ショウタイムの皆さんですか?
寧々:……! あ、はい。そうです!
有田:はじめまして。 森ノ宮歌劇団の制作スタッフを務めています、有田と申します
有田:今日は私が案内役として、諸々のご説明を させていただこうと思います。 よろしくお願いしますね
えむ:はいっ! よろしくお願いしますっ!!
有田:まずは当施設をご案内いたしますね。 どうぞ、こちらへ
寧々:はい……!!
司:いやはや……素晴らしいな! 劇場はもちろん、レッスンルームまでとても広かったぞ!
類:僕も、ここまで設備が整っているとは思っていなかったよ。 さすが、商業的にも大きな成功をしている劇団は違うね
えむ:うんっ! あたし、ここでもいっぱい運営の勉強したいな!
有田:ふふ、運営についてでしたら、 お兄様方からのご要望もあったので、学べる場を用意しました
有田:なのでえむさんは、基本的にそちらで 勉強していただくことになるかと思います
えむ:えっ、ホントですか!? ありがとうございますっ!
有田:では……施設の案内も終わりましたし、ここからは、 レッスンについてご説明いたしますね
寧々:あ……はい!
有田:まず、最初に断っておかなくてはならないのですが——
有田:今回、当歌劇団の団員と共に練習ができる機会は ございません
寧々:え?
有田:我々は、 皆さんのフェニックスワンダーランドでのご活躍を拝見し、 受け入れをさせていただいたのですが……
有田:上層部から、今回の公演の練習については 宣伝時以外は外部の方に見せないように、 と言われておりまして
寧々:あ……そうなんですね……
有田:なので——皆さんには今回、併設している『森ノ宮音楽学園』で レッスンをしていただくこととなります
司:な……! 森ノ宮音楽学園でレッスンを!?
えむ:あっ、それならあたしも知ってるよ! 森ノ宮歌劇団の役者さんになるための勉強をする学校なんだよね?
類:ああ。 数百人の応募に対して、受かるのは30人程度と言われるほどの 狭き門——
類:その学び舎に入って初めて、 森ノ宮歌劇団入団の資格を手にすることができる。 だから……非常にレベルが高い
有田:また、学園でのレッスンは、劇団と同じく男女別となっています
有田:なので、天馬さんと神代さんは男子部で。 そして——
有田:草薙さんは女子部でレッスンを受けていただくことになります
寧々:……!
えむ:あれ? じゃあもしかして——
えむ:あたしは運営のお勉強で、司くんと類くんは男子部さんで、 寧々ちゃんは女子部さんだから…… みんなバラバラで修行することになるの?
類:そのようだね。 多少変則的な形にはなるけれど——
寧々:……わかりました!
寧々:バラバラになるのはちょっと不安だけど——
寧々:あの森ノ宮音楽学園でレッスンさせてもらえるなんて すごく大きな経験になりますし……楽しみです!
翌日
森ノ宮音楽学園
担任教師:——さて、こちらが 今日から3カ月間、草薙さんがレッスンを受けるクラスです
寧々:はい……!
寧々:(……このドアの向こうに、森ノ宮の生徒がいるんだ)
寧々:(全国から集まった少数精鋭の集団……。 きっと、演技や歌のレベルも高いんだろうな)
寧々:(でも——)
寧々:(だからって、怖気づいてられない)
寧々:(わたしだって役者として成長するんだ!!)
担任教師:それでは、入りましょうか。草薙さん
寧々:——はいっ!
第 2 话:森ノ宮音楽学園
森ノ宮音楽学園 レッスンルーム
担任教師:——皆さん、おはようございます
生徒達:『おはようございます!』
寧々:……!
寧々:(……すごいな。 みんな、お辞儀の角度まで揃ってる)
寧々:(劇団っていうよりは、スポーツのチームみたいな 雰囲気っていうか……。 やっぱり、普段から厳しさが違うんだろうな)
寧々:(わたしも、この中でついていかなきゃいけないんだ——)
担任教師:こちらは草薙寧々さんです。 今日から3カ月間、皆さんと一緒に、 この森ノ宮で学ぶことになります
担任教師:草薙さん達の学校もあるので、平日は途中からの参加になりますが それ以外はこちらに通う形になります
担任教師:草薙さん、挨拶をお願いします
寧々:あ、はい……!
寧々:——草薙寧々です! ワンダーランズ×ショウタイムという劇団から 演技の勉強をしに来ました
寧々:今日から、どうぞよろしくお願いします!
生徒達:『よろしくお願いします!』
担任教師:草薙さんもここで学ぶ以上、 森ノ宮の生徒として扱います
担任教師:ただこの学園の規律・規則については、 まだわからないことも多いと思いますので、 皆さんも力になってあげてくださいね
担任教師:それでは、朝礼は以上です。 本日も1日、森ノ宮の名に恥じぬよう努めていきましょう
生徒達:『はい!』
寧々:(ふぅ……)
寧々:(緊張したけど、 ちゃんと挨拶できてよかったな……)
寧々:(って、安心してる場合じゃないよね。 これまでみたいに、新しい演技の仕方とか、 体の使い方とか勉強するために頑張らなくっちゃ……!)
寧々:……えっと、このあとはバレエのレッスンだっけ。 教室は——
???:草薙さん!
寧々:は、はい! えっと……
井村:私、井村です! 今日からよろしくね! うちは厳しいから、特に最初は大変だと思うけど、 困ったことがあったらいつでも聞いて!
寧々:あ……。ありがとうございます
森:私は森です。よろしくお願いします
森:そういえば、時間割はもうもらってますか? ないと困りますし、まだだったらコピーしましょうか
寧々:時間割なら、さっきもらったので大丈夫です。 わざわざありがとうございます
寧々:(……クラスの人達、思ったより優しいな)
寧々:(厳しいって有名だから、つい身構えちゃったけど…… そこまで心配することなかったのかも)
???:——草薙さん
寧々:はい、なんでしょう—— ……!
寧々:(わ……)
寧々:(この人、すごく姿勢がいいな)
寧々:(体幹がしっかりしてるっていうか—— 今も舞台の上に立ってるみたいな感じがする)
???:レッスン前に失礼。 新しい学友に、挨拶をさせてもらおうと思ってね
白虎町:私は、白虎町。 このクラスの級長だ
寧々:級長……っていうと、 委員長みたいな感じですか……?
白虎町:ああ。その認識で問題ないよ
森:白虎町さんは私達の学年の総代—— トップでもあるんですよ
森:うちの学校は もともと歌やダンスが得意な子達が入ってきてるんですけど——
森:その中でも白虎町さんは頭一つ抜けてるんです。 劇団の方達にもすっかり覚えてもらってて
寧々:そうなんですね……! えっと、そんな方と話せるなんて、すごく光栄です
白虎町:はは、そんな風に言われると照れるな
白虎町:ともかく——級長として、そして同じクラスの仲間として、 草薙さんをサポートできればと思っているよ
白虎町:今日のレッスンが終わったら、 更衣室やレクリエーションルームの案内をしよう
寧々:あ……ありがとうございます。 助かります
白虎町:いや、これは級長として当然のことだよ。 ……おっと、そうこうしていたら、 そろそろレッスンが始まる時間だね
寧々:はい! えっと、準備は何からやればいいですか?
白虎町:じゃあ、鏡を——ああ、その前に……
白虎町:ひとつ伝えておくよ、草薙さん
寧々:え?
白虎町:ここでは、外部生だろうが、期間限定での参加だろうが、 この学園の生徒として扱われる
白虎町:そして同時に、 『自分の意思を行動で見せること』が求められる
白虎町:だから厳しいと感じることもあるだろう。 だが……気を抜かず頑張ってほしい
寧々:——はい! わかりました!
バレエ教師:グランフェッテは指先まで意識! バレエは、自分の体を隅々までコントロールしなければ 踊れないわよ!
生徒達:『はい!』
寧々:……っ
寧々:(三日月組で体力はかなりつけてきたのに…… 基礎のバー練習だけで、もう足が限界……!)
寧々:(なのに、みんなはさっきからずっと踊りっぱなしで……。 体力、どうなってるの……!?)
寧々:(でも——負けてられない)
寧々:(どんなに厳しいレッスンにも食らいついていかなくっちゃ!)
バレエ教師:——いいでしょう。 本日のレッスンはここまでです
寧々:……はぁ、はぁ、はぁ……!!
寧々:(……よかった。やっと一息つける……)
井村:草薙さん、すごいね! 最初からここまでついてこれるなんて!
森:ええ! 私なんて初日は体力がもたなくてヘトヘトでしたよ
森:慣れない中でここまでハードな練習をするのは 大変だと思いますから……たくさん水分補給してくださいね
寧々:……はい! ありがとうございます!
白虎町:——すみません、先生。 少しお時間いいでしょうか?
バレエ教師:なんですか? 白虎町さん
白虎町:中盤からフィナーレまでの流れを 見ていただいてもいいでしょうか? どうしても納得いくようにできなくて……
バレエ教師:……あなたほどの完成度ならば、 そう根を詰める必要はないでしょうが——
バレエ教師:……わかりました。 さあ、踊って。一度だけですよ
白虎町:はい!
寧々:…………綺麗…………
森:……すごいですよね、白虎町さん。 あれだけレッスンしても、息が全然乱れてなくて
井村:ね。……やっぱり、世界レベルは違うなあ
寧々:世界レベル?
井村:うん。『スピリット』を手掛けたジャック・ハワードさんとか、 世界的に有名な演出家が、公演を見るついでに うちの見学に来たことがあるんだけど……
井村:白虎町さんは、そういう人達に声をかけられたことがあるんだ。 しかも一度や二度じゃなくて、何度も
寧々:え……! そうなんですか?
井村:そうなの! しかも『興味があったら入団オーディションに来てほしい』って 言われてて……ホントにすごいんだよ!
井村:それでも白虎町さんは『森ノ宮に入る』って言ってるんだよね! 本当に、うちの劇団が好きだから!
寧々:そうなんだ……
寧々:(……世界を狙えるレベルっていうのは、わかる。 動きが洗練されてるし、すごく雰囲気があるし)
寧々:(わたしも、世界を狙うなら、 あれぐらいできるようにならないと——)
寧々:……次のレッスンも、頑張ろう……!
声楽教師:——それでは次に、ひとりずつ歌っていきましょう。 前列端からお願いします
生徒達:はい!
生徒達:♪————————
寧々:(この授業は、歌唱のレッスン。 やっぱりみんな上手いけど……)
寧々:(でも、歌だったらわたしも負けられない……!)
寧々:(得意分野だし、積極的にいかなくっちゃ!)
声楽教師:それでは次の方
寧々:はい!
寧々:♪————————!!
白虎町:…………!
生徒達:わ……!
生徒達:すごい、綺麗な声……!
寧々:♪————————!!
寧々:……以上です。ありがとうございました
声楽教師:……………………
寧々:……? あの……
声楽教師:ああ、いえ、結構です。 座ってください
寧々:は、はい……
寧々:(……なんだかすごく間があったけど、駄目だったのかな? 自分としてはよく歌えたほうだと思うけど……)
寧々:(……ううん。グズグズ考えてないで、 今はレッスンに集中しなくちゃ)
声楽教師:——それでは、本日のレッスンはここまでです。 あとは先生、よろしくお願いします
担任教師:はい。さて——
担任教師:皆さんもご存知でしょうが、 間もなく、次の定期公演のオーディションが始まります
白虎町:…………
生徒達:……っ
寧々:(定期公演の、オーディション……? そんなのがあるんだ)
寧々:(……でも、なんだろう。 今、教室の空気が急に変わったような……)
担任教師:公演の演目は、明日の演技レッスン時に発表します。 やむを得ず欠席をする場合は、必ず連絡をしてください
担任教師:そして——草薙さん
寧々:……! は、はい!
担任教師:今回のオーディションには、 草薙さんにも参加してもらいます
寧々:——え?
第 3 话:ひとりで挑むオーディション
担任教師:——待たせてごめんなさいね、草薙さん
寧々:あ、いえ。むしろ、ありがとうございます
寧々:わざわざ個別に、定期公演とオーディションの説明を していただけるなんて、助かります
担任教師:ふふ、当然よ。草薙さんは初めてだもの。 ……じゃあ、早速説明させてもらうわね
担任教師:——この定期公演は、 3カ月に一度行われる内部向けの公演なの
担任教師:目的は、本番の場数を踏ませるため。 ……要するに、経験を積んでもらうためね
担任教師:あとは当日、他のクラスの公演も見ることができるから、 各クラスのいい役者を研究してもらいたい、という狙いもあるわ
寧々:なるほど……
担任教師:——今回草薙さんに声をかけたのは、 声楽の先生から、草薙さんの歌のことを聞いたからなの
寧々:え?
担任教師:レッスンで、すばらしい歌を披露してくれたと聞いたわ。 森ノ宮の中でも、まったく引けを取らないって
担任教師:だから参加してくれたら、 他の生徒にもよい影響を与えそうだと思ったの
寧々:……! 本当ですか? ありがとうございます!
担任教師:ふふ、是非頑張ってちょうだいね。 ただ——
担任教師:ここでは、“舞台に立つ”ということは、 選ばれた者にしかできないことよ
担任教師:だからこそみんな常に本気で…… それこそ必死の思いでオーディションに向き合うわ。 草薙さんも、参加するからにはその心づもりできてほしいの
寧々:あ…………
寧々:——わかりました。 頑張ります……!
担任教師:ええ! 期待しているわ
寧々:(……必死の思いで……か)
寧々:(だからみんな、さっきすごくピリピリしてたんだろうな)
寧々:(……わたしも頑張ろう)
寧々:(もっと成長するためにも、 このチャンスを活かさなくっちゃ——!)
ワンダーランドのセカイ
港
寧々:——っていうわけで、 今度のオーディションに参加することになったんだ
えむ:ほわわ……! 寧々ちゃんすごーい! 入ってすぐにオーディションに参加できちゃうなんて!
レン:いいなあ、オーディション! 楽しそうだし、ボクも行ってみたいな!
リン:えへへ、みんなで競争するのって、 楽しそうだよね~♪
寧々:あー……そこまで楽しいって空気ではないんだけど……
司:う、う…………
えむ:ほえ? 司くん、どうし——
司:うらやましすぎるぞ~~~~!!!!
寧々:わっ!!
司:ううう、オレもオーディションに出たかったぞおおお……!
司:森ノ宮音楽学園のオーディションともなれば、相当にハイレベル! だからこそ様々なことが学べただろうに……っ!
類:実は、男子部の方でも定期公演があるという話を聞いていてね
類:ただ、今回は時期がズレていたから、 僕達は参加できないんだ
レン:え!? そうだったんだね……!!
司:はぁ……非常に残念だ……。 オーディションは己を高める絶好の機会だというのに……
寧々:それは……たしかにそうだよね
寧々:『ハッピーフェニックス』の時とかも、 司は最後すごく成長してたし
司:ああ! しのぎを削ることで多くを学べた! ……それだけに参加できないのは非常に残念だ……う、う……
レン:オーディションは己を高める絶好の機会、かぁ……!
レン:じゃあ今回のオーディションは、 寧々ちゃんを成長させてくれる、大チャンスだね!
司:そうだな! オレ自身が参加できないのは残念だが、 その分、チャンスを得た寧々を応援しようではないか!
レン:うん、みんなでいっぱい応援しよう!
レン:がんばれがんばれ寧々ちゃん! 負けるな負けるな寧々ちゃん!
司:ハッハッハ! 本番はこのオレのスターパワーを分け与えてやってもいいぞ!
えむ:あたしも応援するよ~! えーっとえーっと、寧々ちゃんに届け、ニコニコパワ~!!
リン:リンもやるね~♪ オーディションに受かっちゃうパワ~!
類:じゃあ僕は、演出家パワ~をお届けしようかな♪
寧々:いやなにそのパワー……
寧々:でも……ありがとう、みんな
寧々:(オーディションは、成長のチャンス……やっぱりそうだよね)
寧々:(わたしも役者として成長するために、 思いっきりぶつかっていこう!)
第 4 话:張りつめる空気
翌日
森ノ宮音楽学園 レッスンルーム
担任教師:それでは——今回の定期公演の演目を発表します
担任教師:タイトルは『リュカ』。 今回の公演用に書き下ろされたものになります
寧々:(内部用の定期公演のために わざわざ書き下ろしの脚本を……すごいな)
担任教師:台本は今から配りますので、 まずは軽く目を通してください
担任教師:またその際、どの役を希望するかも 考えておくように
生徒達:『はい!』
寧々:(『リュカ』……。 一体、どんな話なんだろう)
寧々:(……なるほど)
寧々:(——主人公は、貴族出身の気弱で心優しい少年 リュカ・ルーセル)
寧々:(リュカは、薔薇園で出会った姫に恋したことをきっかけに、 彼女に相応しい男になろうと決意するんだ)
寧々:(でも……時は、動乱の時代。 彼は暴動を起こす民衆を鎮圧するため、 暴虐さや狡猾さを身につけるようになっていって——)
寧々:(いつの間にか、何千何万の民を虐げる、 残虐な策士になっていってしまう)
寧々:(そして彼は、最年少で軍の参謀補佐となり、 ようやく姫と近づくことができる。でも——)
寧々:(大規模な民衆弾圧を前に、 愛する姫により殺されてしまう)
寧々:(姫は泣きながら彼に言う。 『私は、薔薇を慈しむあなたを愛していた。 これ以上あなたの手が血で染まるところを見たくない』と……)
寧々:(なんていうか、悲しい話だな……)
寧々:(でも……なんだかグっとくるな。 国を巻き込んでいくところもドラマチックだし)
白虎町:——草薙さん、少しいいかな
寧々:わ……! 白虎町さん!
白虎町:よかったらオーディションの形式について説明しようと思うが、 どうだろう
寧々:あ、そういえばそこは説明されてなかったような……。 わざわざありがとうございます
白虎町:ふふ、敬語はいいよ。 私達は共に学ぶ仲間だからね
寧々:うん。ありがとう
白虎町:それじゃあ早速、 今回のオーディションの形式について説明しよう
白虎町:うちのオーディションは少し特殊な形式をしていてね、 ——2週間の授業の中で、 力のない者からふるい落とされていくんだ
寧々:ふるい落とされる……?
白虎町:ああ
白虎町:——最初は、全員が希望する役にチャレンジできる
白虎町:ただほとんどの場合、希望者が複数いるから、 ワンシーンごとに交代して、 先生に演技を見せていくことになる
白虎町:ただ——そこで力が及んでいないと思われたら ワンシーンやりきることはできず、次の人にチェンジされる
寧々:え……
白虎町:まあ、全員チェンジされたら、また先頭の人から順番に 挑戦することができるけれど——
白虎町:先生達は厳しい。 少しでも半端な演技をしたらすぐに止められると思った方がいい
白虎町:加えて——
白虎町:1日の最後に、『役に挑む実力がない』と判断された者は 希望する役に挑戦する資格を失うことになる
寧々:……!
寧々:そ、その場合って、その後のオーディションではどうするの?
白虎町:他の役に挑戦する権利は残っている
白虎町:舞台に立ちたいなら、他の役で必死に巻き返すしかない。 ……素早く気持ちを切り替える臨機応変さも見られているよ
寧々:……そうなんだ……
白虎町:——草薙さんは今回、どの役を狙うつもりなんだい?
寧々:……リュカを狙おうって思ってる
白虎町:ふふ、そうこなくてはね
白虎町:リュカは、演技力も歌唱力も求められる難しい役だ。 だからこそ、やりがいもある
寧々:……じゃあ、やっぱり……
白虎町:もちろん、私も狙う役は同じだ
白虎町:——負ける気はないよ、草薙さん
寧々:うん……!
寧々:(……白虎町さんがいるなら、 リュカを狙うのは厳しいかもしれない)
寧々:(でも——)
寧々:(男役にも挑戦してみたいし、 役者としてもっと成長するなら、 絶対、リュカを狙ったほうがいい)
寧々:(負けないように、頑張ろう……!)
担任教師:では、これから読み合わせに入ります
担任教師:立ち稽古でのオーディションは明日からになりますので、 各々、それまでに台詞を入れてくるように
生徒達:『はい!』
寧々:——はい!!
レッスン後
寧々:……ふぅ
寧々:(読み合わせもすごい緊張感だったな。 春名座とも、三日月組とも違う、ピリっとした空気があって……)
寧々:(呑まれないように、わたしも気合いを入れなくちゃ)
寧々:(あ——そうだ)
寧々:(このあとは自由時間だけど、 せっかくならクラスの人達を誘って練習しようかな。 やっぱり、人と合わせた方が感覚もつかみやすいし)
寧々:えっと……
寧々:あ、あの子は——
森:そういえば、時間割はもうもらってますか? ないと困りますし、まだだったらコピーしましょうか
寧々:あ、すみません。 よかったら一緒に練習しませんか?
森:えっ? 一緒に……?
森:……お誘いありがとうございます。 でも、ごめんなさい。 ひとりで練習したいので
寧々:え……
寧々:……行っちゃった。 あんまり他の人と練習したくないタイプなのかな……?
寧々:じゃあ、別の人を——
生徒達:——その解釈は違うでしょ。 ここのリュカはもっと思いつめてるはずじゃない
生徒達:それはそっちが読み間違えてるんでしょ。 ここは、初めて市民と敵対することに戸惑ってるんだから、 これでいいの
生徒達:よくない! ちゃんと文脈読んでやってよ……!
寧々:(あ……)
寧々:(なんだか、ちょっとピリピリしてるな……)
生徒達:——ちょっと、やめてよ……!
寧々:え……
生徒達:何の話?
生徒達:とぼけないで。 私の演技プランのメモ、今覗こうとしてたよね?
生徒達:そんなことしないわ。 同じ役を狙ってるからって、疑わないでちょうだい
生徒達:それよりあなたこそ、私の練習を覗きにこないでもらえる? この前のオーディション、私の真似をしていたでしょう?
生徒達:何それ……! あれは同じ解釈だっただけで——
寧々:あ……えっと……
白虎町:——ふたりとも、落ち着いて
生徒達:あ……
白虎町:大事な練習時間を、言い争いで使うべきじゃない
生徒達:でも……!
白虎町:実際、覗き見をしたかどうかは、 私にはわからない
白虎町:だが、そんなことで時間を浪費するべきじゃないだろう
白虎町:この間にも、他の生徒は役の人物像に近づいていっている。 つまり君達は、確実に後れを取っていることになる
白虎町:それに——もし人から奪ったもので勝ち上がっても、先はない。 先生もすぐに気づくさ
生徒達:……それは、たしかに、そうだね……
生徒達:………………
白虎町:じゃあみんな、それぞれ有意義な練習をしよう。 それでは、また
寧々:…………
寧々:(……なんだろう。 みんなの空気が……すごく……)
寧々:(今までの劇団でもオーディションはあったけど…… こんな感じには1回もならなかったな)
寧々:(森ノ宮が厳しいっていうのは知ってた)
寧々:(けど……。 あのキラキラした舞台は、こんな空気の中で生まれてたんだ……)
寧々:(……ううん! どんな環境だって関係ない!)
寧々:(リュカは、今まで挑戦したことのない難しい役……。 しかも周りもすごくレベルが高い)
寧々:(だからこそ、この役を勝ち取ってまっとうできたら、 きっと確実に成長できる)
寧々:(わたしはわたしの夢のために、 リュカを、勝ち取らなくっちゃ——!)
第 5 话:脱落者
翌日
森ノ宮音楽学園 レッスンルーム
担任教師:それでは——本日より、 『リュカ』のオーディションを行います
担任教師:まず、主演・リュカを希望する人は前へ
寧々:はい!
白虎町:よろしく、草薙さん。 お互いにベストを尽くそう
寧々:……うん!
寧々:(7、8……9人。 やっぱり希望者が多いな)
寧々:(……この中で勝ち残らないと、 リュカを演じることはできないんだ)
寧々:(必死で食らいついていかないと……!)
担任教師:それでは、冒頭から薔薇園で別れるシーンまで、 立ち稽古をしていきましょう
担任教師:では……このシーンのリュカは白虎町さん。 王女ルイーズは小宮山さん、お願いします
白虎町:はい!
担任教師:——田口さん、そこまでです。交代してください
田口:え、で、でも……!
担任教師:聞こえませんでしたか? 交代です。——次の人!
田口:……っ……はい
寧々:(……始まってまだ10分もたってないのに、 王女ルイーズはもう、3人も入れ替えになってる)
寧々:(みんないい演技なのに、厳しいな……)
寧々:(でも、リュカは——)
白虎町:『——あの!』
白虎町:『名前を……名前を聞いても、いいですか?』
白虎町:『あ……! きゅ、急にごめんなさい! ぼ、僕は、リュカです!』
白虎町:『リュカ・ルーセル……。 お……覚えてもらえたら、嬉しいな……』
寧々:やっぱり、うまい……
寧々:(ここでは、気弱で、人の目もちゃんと見られないリュカが、 ルイーズに初めて恋をする)
寧々:(リュカは、美しいルイーズの姿を目に焼き付けたいけど、 まっすぐ見ることは難しくて、そんな挙動不審な自分が 変に思われていないかも気になって——)
寧々:(……白虎町さんの演技からは、そういう不安や緊張感が、 すごく自然に伝わってくる)
寧々:(それに——)
白虎町:『ルイーズ……』
白虎町:『そうか……。ルイーズって言うんですね……』
寧々:(リュカの純粋さも……すごく感じられて)
担任教師:——はい。いいでしょう。 それでは次のシーンに入ります
担任教師:では次のリュカを……草薙さん!
寧々:は、はい!
寧々:(次のシーンは、歌から始まる……! わたしもあの演技に負けないように、頑張らなくちゃ!)
数時間後
担任教師:それでは、本日はここまでです
寧々:……はぁ……
寧々:(歌のシーンはどうにか乗り切れたけど…… そのあとは1分足らずで交代させられちゃった……)
寧々:(そのあとも、ちょっと迷ったりすると 代えられて……このままじゃ……)
担任教師:——さて
担任教師:最後に、本日の脱落者を発表します
寧々:(……っ!)
白虎町:加えて——
白虎町:1日の最後に、『役に挑む実力がない』と判断された者は 希望する役に挑戦する資格を失うことになる
寧々:(……もしも初日から脱落になったら、どうしよう……)
寧々:(今、やれることは全力でやれたと思うけど——)
担任教師:——リュカ役、沢田さん。 ルイーズ役、野村さん
担任教師:宰相ベルナール役、熊木さん。 以上です
寧々:(……よかった。 通過できた……)
沢田:……っ。 うう……
寧々:(あ……)
寧々:(そう、だよね……。 悔しいよね……)
翌日
リュカ役希望者A:『ああ、ルイーズ! 君のためなら僕は、どれだけの命をこの手にかけても構わない!』
担任教師:次!
リュカ役希望者B:『反逆者は、ひとり残らず殺すしかない……!』
担任教師:次!
リュカ役希望者C:『ルイーズ……。 僕は、ただ……君のそばにいたかった……』
担任教師:そんな演技をお客様に見せるつもりですか? 次!
寧々:……っ
寧々:(すごい空気……)
寧々:(息をするのも躊躇うくらい、ピリピリしてる……)
担任教師:……井村さん。 あなた、本当に練習をしてきたんですか?
井村:も、もちろん練習しました!
担任教師:では、この台詞、リュカはどんな心情で話していると 考えていますか?
井村:そ、それは……、 あ、愛の告白として……
担任教師:それだけですか?
井村:…………えっと、その…………
担任教師:…………
担任教師:——あなたのように、甘い解釈をする人に主役は任せられません。 出て行きなさい
井村:……っ!!
寧々:あ……!
寧々:(……あの演技でも、ダメなんだ……)
寧々:(たしかに先生の質問にはうまく答えられてなかったけど……、 わたしはあの感じ、リュカらしい繊細さが出てて、 素敵だなって思ったのに……)
担任教師:——では次、草薙さん
寧々:……! え、えっと……
担任教師:準備が遅い。 本番前もそうしているつもりですか?
寧々:す、すぐ始めます……!!
レッスン後
寧々:…………
寧々:(オーディションだし、 こういう空気になるのは当然だって思う。けど……)
沢田:……っ。 うう……
井村:……っ!!
寧々:(……苦しいな……)
寧々:(……でも、気持ちを切り替えないと。 レッスンルームの掃除も終わったし、 今日指摘されたところの復習をして——)
寧々:あれ? ノートが落ちてる
寧々:あ……井村さんのノートだ……
寧々:(でも井村さんは、さっき……)
担任教師:——あなたのように、甘い解釈をする人に主役は任せられません。 出て行きなさい
井村:……っ!!
寧々:…………
寧々:(たしか井村さんは、 ここの寮に住んでるって聞いたし……)
寧々:(——部屋まで届けにいこうかな)
寧々:えっと、寮はたしか南廊下の方に……
井村:あ……!
寧々:わ……!
寧々:ああ……井村さん。 戻ってきたんだね
井村:……うん。 ノート忘れちゃったから……
寧々:あ、ノートってこれ? ちょうど今、持っていこうと思ったんだ
井村:……ありがとう、草薙さん
寧々:……えっと、よかったら、一緒に購買に行かない? 練習のあとって、お腹減るし……
寧々:(……やっぱり、すごく落ち込んでるな、井村さん。 目も腫れてるし……)
井村:……ううん。今日は……ごめんね
井村:じゃあ……また明日、草薙さん……
寧々:あ……! え、えっと、井村さん!
井村:……何?
寧々:あ、その……!
寧々:井村さんのリュカ……わたしは好きだったよ……
井村:え…………
寧々:だから、えっと、明日のレッスンも——
井村:…………っ
井村:やめてよ
寧々:え…………
井村:慰められたくなんてない……
井村:——勝ち残ったあなたに、慰められたくなんてない!
寧々:…………っ!!
寧々:そんな……慰めだなんて…… わたしは本当に……
寧々:(でも……)
寧々:(たしかにわたしは今……何か言わなきゃって思って…………)
???:『……寧々ちゃん……大丈夫?』
寧々:え? あ……
寧々:レン……
第 6 话:ぶつかり合う覚悟
森ノ宮音楽学園 中庭
寧々:……そっか、見てたんだね。 さっきのやりとり
レン:『うん……。 ごめんね、のぞき見しちゃって』
寧々:ううん、大丈夫。 ……むしろひとりじゃうまく飲み込めなかったと思うから いてくれてよかったな
寧々:……さっきのは、わたしが悪かったって思う
寧々:井村さんの気持ちを考えてなかったから
寧々:……なんだか、ここに来てから、 気持ちがうまく追いつかないな……
レン:『え?』
寧々:役者としてもっと成長するために、 ここでも頑張りたいって思ってるんだけど……
寧々:でも、ここではみんな、なんていうか…… 強くぶつかり合いすぎてる気がして……
寧々:それに……誰かが困ったり泣いたりしてても、みんな気にしてない
寧々:……オーディションだからっていうのはわかるんだけど、 そういうのって、なんだか……
レン:『……そうだね。 一緒にショーを作ってるのに、そんな風になっちゃうのは ボクもつらいな……』
レン:『でも、それって本当に……』
???:——草薙さん
寧々:白虎町さん!
白虎町:……今、誰かといるのかなと思ったのだけど…… ひとりかい?
寧々:あ……うん、ひとりだよ。 それより、どうしたの?
白虎町:実はさっきそこで、井村さんに会ってね
寧々:……!
白虎町:泣いてるようだったから声をかけたら、 『心配してくれた草薙さんに酷いことを言ってしまった』 と言っていてね
白虎町:謝りたそうにしていたのだけれど、 動揺もしていたから…… 私が代わりに伝言をしようと申し出たんだ
寧々:あ……。 そうだったんだ……
寧々:ありがとう、白虎町さん
白虎町:礼には及ばないよ
白虎町:——ただ、君にはひとつ、言っておきたいことがある
寧々:……え?
白虎町:草薙さん。君にはまだ、理解が足りない
寧々:理解……っていうと……
白虎町:きっと君は、井村さんが同じ夢を追う仲間だからこそ、 助けたい、手を差し伸べたいと思って、 声をかけたんだろう
白虎町:だが——森ノ宮のみんなは、 そういった考えを持たない
白虎町:あえて、持たないようにしている
寧々:……!
白虎町:ここにいる人間はみんな、 最高の役者になるという夢を必ず叶えると、心に決めている
白虎町:そしてそれを理解しあっているからこそ、 競うべき時は全力で競い合い、ぶつかり合っているんだ
白虎町:——そこに情けは必要ない。 ……いや
白虎町:情けをかけるべきではない。 これは、真剣勝負だからね
白虎町:情を持つ余裕があるなら、その分、役と向き合うべきだ。 ……涙を流した者達のために
寧々:……あ……
寧々:(そっか、わたしは……)
白虎町:もし、このやり方に賛同できないなら、 君はここを去ったほうがいい
寧々:…………
白虎町:——以上だ
レン:『寧々ちゃん……大丈夫……?』
寧々:……うん
寧々:今、白虎町さんに言われて、 やっとわかった気がする
寧々:……わたしは、全然、 覚悟できてなかった
寧々:役者として成長したいって思ってるつもりだった。でも……
寧々:経験を積ませてもらおうとか、 学ばせてもらおうとか……どこかで受け身に考えちゃってて——
寧々:『本気で役を奪い合う』っていう覚悟ができてなかった
寧々:だから、甘くて…… よそ見ばかりしてて……
寧々:……でも森ノ宮のみんなは、そうじゃない
寧々:“役者として成長したい”ってすごく強く願っているからこそ、 真剣に、目の前の人に負けないように、 ぶつかり合ってたんだ
レン:『寧々ちゃん……』
レン:『ボクは寧々ちゃんの、 周りの人のことを考える優しいところ、 とっても素敵だと思うよ』
レン:『……ただ、きっと こうやってぶつかり合う時は、 もっと大切にしなきゃいけないことがあるんだよね』
寧々:……うん
寧々:それがわかって……よかったな
寧々:もう、よそ見はしない
寧々:ここにいる人達の本気に負けないように—— 向き合うよ
レン:『——うん! 頑張って!』
寧々:うん
寧々:世界に飛び出していったら、 きっとこうやってぶつかり合う時が何度も来るから——
寧々:思いっきりやろう……!!
寧々:『ああ、ルイーズ! 君のためなら僕は、どれだけの命をこの手にかけても構わない!』
寧々:(……駄目だ。 これじゃあ表現しきれてない)
寧々:(ここのリュカは——)
寧々:(台詞こそ勇ましいけど、 もっと複雑な感情を持ってる)
寧々:(……本当は誰も殺したくなんてなかった。 でも、もう後には戻れない。進むしかない。だから——)
寧々:『ああ……ルイーズ! 君のためなら僕は、どれだけの命をこの手にかけても構わない!』
寧々:……うん。 少しだけど、近づいてる気がする
寧々:よし、次は——
寧々:——みんな! 今、少しいい?
司:ん? どうしたんだ、寧々
寧々:今度のオーディションのために役作りしてるんだけど、 後半の方向性で悩んできちゃって……意見をもらいたいんだ
類:おや、そういうことなら是非手伝わせてほしいな。 どこで悩んでいるんだい?
えむ:あたしもあたしも~!!
寧々:えっと、 リュカが参謀補佐として 取り立てられるところからなんだけど——
寧々:『——拝命いたしました』
寧々:『このリュカ・ルーセル、 叛逆する者達を、ひとり残らず掃討してみせましょう』
司:ううむ……最初のものよりはよくなったが、 寧々ならまだいけるのではないか?
レン:うんうん! ボクもそう思う!
類:リュカは、 このシーンをきっかけに更に残虐さを増していく——
類:ならばここは、『少年が狂気の一歩を踏み出してしまった』と 強く感じさせる必要があるだろう。 どう見せるか……まだまだ考えられそうだ
寧々:うん……
寧々:——あ、もっと目の演技を入れてみるのはいいかも……?
レン:目?
寧々:こう、少し力を入れて……こんな感じ
えむ:あ! たしかに! なにがなんでもやらなくちゃ!ってなってる感じが出そう!
寧々:よかった。 ——流れでやってみるね
寧々:最後の歌は、 ルイーズの腕の中で、死にかけながら歌うんだよね……
寧々:横になったまま歌うってだけでも難しいから、 うまく体勢を整えて……
寧々:♪——————……
寧々:……ダメだ。 気持ちにひっぱられて声も落ちちゃう
寧々:あ……そうだ。 こういう時は風祭さんに習った方法で——
第 7 话:最終日
オーディション最終日
森ノ宮音楽学園 レッスンルーム
担任教師:さて——本日はオーディションの最終日です
担任教師:今日で全ての配役を決定しますので、 皆さん、そのつもりで挑むように
生徒達:『はい!』
担任教師:候補者には、こちらが選んだシーンを演じてもらいます。 今回は途中で止めませんので、終わりまで演じるように
担任教師:では、対象となるシーンを発表します
担任教師:主人公リュカは、台本78ページ——。 ルイーズに刺されてから、最後の歌唱までになります
寧々:……!
担任教師:次に、王女ルイーズは、台本35ぺージ——
寧々:(思った通り……。 最終日にラストシーンがきた)
寧々:(民衆を殺すことに何も感じなくなってしまったリュカが、 愛するルイーズの手で殺される、クライマックス)
寧々:(この芝居の中で、 一番演技力と歌唱力が試される……!)
担任教師:さて——リュカの候補者は……5名ですね。 相手役によって差異が出ないよう、 ルイーズ役は変えず、そのまま進行します
担任教師:順番は—— 逢沢さん、伊藤さん、叶さん、草薙さん、白虎町さんの順で お願いします
生徒達:『はい!』
担任教師:それでは時間もありません。 早速始めましょう
寧々:(……ついに、始まるんだ。 最後のオーディションが……!)
リュカ役希望者A:『ルイーズ……。 僕は、ただ……』
リュカ役希望者A:『君のそばにいたかった……』
リュカ役希望者A:『♪————……』
担任教師:——はい、結構です
リュカ役希望者A:ありがとうございました!
寧々:(……みんな、すごいな。 初日とは比べ物にならないくらい仕上がってる)
寧々:(それに……この空気。 いつも以上に——触ったら破裂しそうなくらい張り詰めてる)
寧々:(……みんな、本気なんだ)
寧々:(本気で……死に物狂いで、 この役を取りたいって思ってるんだ)
寧々:(でもそれは——)
担任教師:——次、草薙さん。準備をしてください
寧々:はい!!
寧々:(わたしだって、同じだ——!!)
寧々:(……このシーンのリュカは、 本当に誇らしい気持ちで薔薇園にやって来る)
寧々:(自分の力で、愛する人の傍に立てるようになったから)
寧々:(だから……ここは嬉しさを隠しきれない表情で行く)
寧々:(何千もの命を奪ったことは、まるで忘れて——)
寧々:『……やあ、ルイーズ。 ここで会うのは久しぶりだね』
ルイーズ役の生徒:『リュカ……。 ……そうね。一体何年ぶりかしら』
寧々:『まだ僕が、薔薇の棘が指に刺さった程度で 泣いていた頃だったから——5年ほど前かな』
寧々:『ただ……今はもう違うよ、ルイーズ』
寧々:『暴徒の投げる石が当たっても、 槍の先が頬をかすめても、泣きはしない』
寧々:『僕は今——君のための騎士になったから』
ルイーズ役の生徒:『リュカ……』
白虎町:…………
白虎町:(ここまではいい調子だね、草薙さん)
白虎町:(だが……難しいのはここからだ)
白虎町:(リュカは、ルイーズの手によって心臓を一突きされる)
白虎町:(突然の事態への混乱、怒り、死への恐怖。 そしてそれを超越する……愛。 ……そういった複雑な感情を抱き演じなければならない)
白虎町:(君がどうさばき切るか——見せてもらうよ)
ルイーズ役の生徒:『……ねえ、この薔薇を見て、リュカ』
ルイーズ役の生徒:『昔、話をしたでしょう? いつか青い薔薇を見てみたいって』
ルイーズ役の生徒:『この薔薇は少し、青みがかってるような気がするの』
寧々:『え? 本当かい?』
ルイーズ役の生徒:『ええ。……もっとこっちに寄って、 そこからじゃ見えないわ』
ルイーズ役の生徒:『もっと、私の近くに——』
寧々:『…………え…………?』
寧々:『……っ、これ……は……!』
白虎町:……!
白虎町:(……うまい。 草薙さんは、体の使い方はまだ硬い印象だったけれど——)
白虎町:(体の止め方、手の動き……。 刺された時の衝撃、感じている痛みまで、 こちらに伝わってくるようだ)
寧々:『ルイー……ズ……?』
ルイーズ役の生徒:『……っ。ごめんなさいリュカ! でも——』
ルイーズ役の生徒:『私はもう……! 見たくない……!! あなたの手が、血で染まるところを!!』
ルイーズ役の生徒:『あなたは言っていたわ、薔薇園の庭師になりたい、 棘に傷つけられても構わない、って……!』
ルイーズ役の生徒:『私はそんなあなたを、愛していたのに——!!』
寧々:『……なんだい、それは……?』
寧々:『じゃあ、僕は…… 僕がやってきたことは——う……!』
ルイーズ役の生徒:『リュカ!!』
寧々:『は……はは……』
寧々:『全て、無駄だったんだね……』
寧々:『罪なき民衆を罠にかけて、皆殺しにしたことも、 幼き者たちさえ容赦せず、刑に処したことも——』
寧々:『全部……全部、 ただ君から遠ざかることで……』
寧々:『……どうしてなんだ……?』
寧々:『どうして僕は、 君の心を、もっと見つめようとしなかったんだろう……?』
寧々:『近づきたいと、もがくばかりで——』
寧々:『……ねえ、ルイーズ……。 これだけは、覚えておいておくれ……』
寧々:『ルイーズ……。 僕は、ただ……君のそばにいたかった……』
寧々:『いつか、ここで青い薔薇を一緒に見て…… ただ、幸せに、歌って……』
寧々:『♪————……』
白虎町:……!!
寧々:『♪————…… ♪————……』
寧々:『……泣かないで、ルイーズ……』
寧々:『笑っていておくれ……。 世界で一番……美しい薔薇……』
寧々:『♪————…… ♪————……』
白虎町:(……そうか。 そう解釈したのか……!)
白虎町:(この歌は、かつて幼いふたりが薔薇園で歌った歌だ。 それがこの別れのシーンで歌われることで、 悲壮感がより一層大きくなる)
白虎町:(だから皆、リュカを演じる際はその悲しみが引き立つように 弱々しく歌う。しかし——)
白虎町:(草薙さんは、最後まで愛を込めた)
白虎町:(ルイーズが泣かないようにと、優しくあたたかく歌った)
白虎町:(彼は目的のために狂ってしまったけれど、 そこにはたしかに愛があったのだと……そう感じられるように)
白虎町:(そしてそんな彼の純粋な想いが伝われば伝わるほど、 余計に、悲しみは引き立つ)
白虎町:…………やるね
担任教師:……はい、結構です。草薙さん
寧々:あ……はい! ありがとうございました!!
寧々:(……緊張したけど、練習したことは全部やりきれた……!)
寧々:(わたしの全力を、出し切れた——!!)
白虎町:……さて、次は私の番だな
白虎町:草薙さんには感謝しなくちゃならないね
白虎町:——今までで一番のリュカができそうだ
第 8 话:本気だからこそ
森ノ宮音楽学園 レッスンルーム
担任教師:それでは、定期公演の配役の発表です
寧々:(こんなにすぐに結果が出るんだ……)
寧々:(……どうしよう。 本番前よりも緊張してる)
寧々:(わたしの後の、白虎町さんの演技は本当にすごくて——)
白虎町:『♪————…… ♪————……』
白虎町:『……泣かないで、ルイーズ……』
白虎町:『笑っていておくれ……。 世界で一番……美しい薔薇……』
寧々:(…………圧倒された)
寧々:(でも……わたしだって、やれるだけのことはやった)
寧々:(えむ達に協力してもらって、 風祭さんに教わったことも全部使って、役を仕上げたんだ)
寧々:(だから……信じよう……!)
担任教師:では、最初にリュカ役を発表します。 リュカ役は——
担任教師:——白虎町さん
寧々:…………!!
白虎町:はい!
担任教師:また、万が一の際の代役は、伊藤さんにお願いします
生徒:はい!
担任教師:では次に、ルイーズ役は——
寧々:……………………っ
寧々:(ダメ、だった…………)
寧々:(代役にすら…………)
寧々:(…………でも、そうだよね)
寧々:(白虎町さんもそうだし、 他のみんなの演技も、本当に良かったし——)
寧々:(わたしは、歌以外のパートじゃ、 まだまだみんなほど磨き切れなかった)
寧々:(……っ、でも……)
寧々:(悔しい…………)
寧々:(今できることを全部やったのに…… 全然……敵わなくて……)
寧々:…………っ
寧々:(……そっか)
寧々:(井村さんは……こんな気持ちだったんだな……)
担任教師:——以上で、配役の発表は終了です
担任教師:皆さん、ここからは気持ちを切り替えて、 定期公演に集中して向かっていきましょう
生徒達:『はい!』
寧々:……はいっ!
寧々:……白虎町さん。 今、いいかな?
白虎町:草薙さん……。 なんだい?
寧々:——おめでとうって言いたくて
寧々:白虎町さんのリュカ、本当に素敵だった。 ……本番も頑張ってね
白虎町:——ああ
寧々:それじゃあ——
白虎町:待ってくれ
白虎町:……私からは君に、お礼を言いたい
寧々:……え?
白虎町:今回私は、追い上げてくるみんなに—— 特に草薙さんに力をもらったからね
白虎町:君の演技と歌は、本当に素晴らしかった
白虎町:歌い出しから、リュカが息絶えるその瞬間まで…… ルイーズに対する、彼の強い愛を感じることができた
白虎町:……正直悔しかったよ。私にはない発想だった
白虎町:でも、だからこそ超えたいと思った
白虎町:あの演技を見せられたからこそ、私は、 絶対に負けられないと、強い気持ちで挑むことができた
白虎町:つまり——私は君の歌に、大いに触発されたということさ
寧々:(わたしの歌で、白虎町さんが……?)
寧々:(あ……。 そっか……)
寧々:(ぶつかって成長するって、こういうことなんだ)
寧々:(勝ったり負けたりしながら、 悔しいと思って、自分を磨いていって——)
寧々:(そうやって前に進んでいくんだ)
寧々:(みんなはそういう形の——仲間なんだ)
寧々:(……わたしももっと、ぶつかっていこう)
寧々:(もっと成長するために。 もっと、夢に近づくために)
寧々:(今回みたいに、本気で向き合って、高めあって——)
寧々:リュカを演じられないことは、 本当に……本当に悔しいけど——
寧々:これが今の実力だってわかった
寧々:……ここからもっともっと頑張りたいって—— ぶつかってでも進みたいって、心から思えた
寧々:だから、このオーディションに参加して、 本当によかったよ
寧々:……最高の公演にしてね、白虎町さん
寧々:わたしも裏方として、全力を尽くすよ
白虎町:——ああ、任せてくれ
白虎町:君の努力の分までいい公演にする。必ず
寧々:うん!
白虎町:しかし……草薙さんと私は似ているようだね
寧々:え?
白虎町:今回の君の変化を見て感じたんだ
白虎町:本当にいい舞台を作りたい。 本当にいい役者になりたい。 ……そう強く願ってやまないところが似ている、とね
寧々:……!
白虎町:君のような生徒が来てくれて嬉しいよ。 改めて——これからたくさん、しのぎを削っていこう
寧々:——うん!!
白虎町:そういえば、君が在籍する 『ワンダーランズ×ショウタイム』という劇団について 教えてもらってもいいかな?
寧々:え?
白虎町:どういう劇団なのか、俄然興味がわいてきてね。 是非聞かせてもらいたいんだ
寧々:うん、もちろん!
寧々:えっと、わたしがここまでやれたのは、 みんなに助けてもらったのも大きくてね——