活动剧情
このひと針に想いを込めて
活动ID:156
第 1 话:いつものお返しに
放課後
宮益坂女子学園 中庭
雫:今日は勉強を教えてくれてありがとう、朝比奈さん。 お仕事でお休みした授業の内容だったから、助かったわ
まふゆ:どういたしまして。 ちょうど同じところを勉強しようとしてたし、 私にとっても、いい復習になったよ
まふゆ:そういえば、日野森さんが出てるコスメのCM、 クラスで話題になってたよ。 私も見せてもらったんだけど、すごく素敵でびっくりしちゃった
雫:まあ、見てくれたのね。嬉しいわ
雫:でも、見てもらえる機会が増えたからこそ、 気を引き締めてもっと頑張らなくちゃ
まふゆ:ふふ。本当に努力家だね
まふゆ:私も応援してるよ。 何かできることがあれば、いつでも言ってほしいな
雫:朝比奈さん……
雫:(朝比奈さんは、本当に優しいわね)
雫:(この前は早めに部活を抜けなきゃいけなかったから、 片づけも代わりにやってもらっちゃったし……)
雫:(いつも、助けられてばかりだわ)
雫:(何かお礼ができればいいんだけど……)
まふゆ:あ——日野森さん、危ない!
雫:えっ?
雫:きゃっ……!
まふゆ:急に引っ張ってごめんね。 雪が落ちてくるのが見えたから
雫:ううん、ありがとう。濡れちゃうところだったわ
雫:あっ……
雫:朝比奈さんの肩、少し雪がかかってるわ
まふゆ:えっ? あ、本当だ……
雫:待ってね、今ハンカチで払うから——
雫:……はい、これで大丈夫よ
まふゆ:ありがとう
まふゆ:あ、そのハンカチ—— 綺麗な刺繍がしてあるね。椿の花かな?
雫:ええ。庭の椿が綺麗に咲いていたから、ぬってみたの
まふゆ:ぬって……ってことは、自分で刺繍したんだ
まふゆ:前に見せてもらった時も思ったけど、本当に上手だね。 すごく複雑そうなのに、こんなに綺麗にぬえるなんて……
雫:ありがとう。でも、見た目ほど難しくないのよ?
雫:この椿も、家庭科で習うような手法を たくさん使っているの
まふゆ:そうなの?
雫:ええ。例えば……茎のあたりは『本返しぬい』だし、 おしべのところの黄色い点々は、『玉止め』の要領で出来るもの
まふゆ:へえ……もっと特別なことをしてるんだと思ってた
まふゆ:家庭科の課題でも、刺繍をやるって子がいたけど…… たしかに、そういうのならできるかもしれないな
雫:課題?
まふゆ:あっ、そっか。 日野森さん、今学期は家庭科受けてないんだっけ
まふゆ:実は今、小物を作る課題が出てるんだ。 ペンケースとかポーチとか、 好きな物を作っていいんだけど……
まふゆ:ボタンをつけたり、刺繍をしたり、 どういう風に仕上げるかも評価に繋がるんだって
雫:なるほど……それで、刺繍をする子がいるのね
雫:自由に小物を作っていいなんて、とっても楽しそう……! 朝比奈さんは何を作るの?
まふゆ:ティッシュケースを作るつもりだよ。 資料集に作りかたが載ってたから、 それを見ながらやってみようと思って
まふゆ:でも、仕上げかたはまだ考え中かな
まふゆ:日野森さんみたいに刺繍が上手だったら、 表現の幅も広がりそうなんだけどね
雫:表現の幅が……
雫:……私でよければ、教えましょうか?
まふゆ:え?
雫:あ、急にごめんなさい。 役に立つかはわからないけれど……
雫:もしかしたら、作品にも活かせるかもしれないし、 小物作りの課題も、もっと楽しくなるんじゃないかと思って
まふゆ:日野森さん……ありがとう
まふゆ:でも、大丈夫だよ。 気持ちはすごく嬉しいけど、 アイドルのお仕事もあって忙しいだろうし……
雫:私のことは気にしないで。簡単なステッチだけなら、 お昼休みを使って教えることもできると思うから
雫:それに……
雫:朝比奈さんには、いつもたくさん助けてもらっているもの。 私も、少しでも力になれたら嬉しいわ
まふゆ:……そこまで言ってくれるなら、 せっかくだしお願いしようかな
雫:本当? よかった……!
雫:それじゃあ、早速だけど明日のお昼休みはどうかしら?
まふゆ:うん、大丈夫だよ。 楽しみにしてるね
数時間後
雫の部屋
雫:えっと……針と、刺繍枠と、あと必要なのは……
雫:あっ、練習用の糸と布もあったほうがいいわよね。 布のはぎれは、たしかこの辺りに……
雫:(ふふ。朝比奈さんの役に立てそうで良かったわ)
雫:(ちゃんと教えられるように、しっかり準備しておかなくちゃ)
???:『——雫ちゃん』
雫:えっ?
雫:あ……レンくん! こんばんは
レン:『こんばんは。急にごめんね』
レン:『実は、少し相談したいことがあるんだけど—— 取り込み中だったかな?』
雫:大丈夫よ。明日の準備をしていただけだから
レン:『明日、何かあるの?』
雫:ふふ。お昼休みに、お友達に刺繍を教える約束をしているの
レン:『なるほど。 だから裁縫道具が出てるんだね。 刺繍の本も、こんなにたくさん……』
雫:あ、それは、教えかたの参考になると思って 久しぶりに読み返していたの
雫:それで、どのステッチから教えるのがいいか 考えたりして……
レン:『そうだったんだ。 かなり念入りに準備してるんだね』
雫:ええ。……少しでも、恩返しがしたくて
レン:『恩返し?』
雫:……そのお友達には、頼ってしまってばかりなの
雫:今日も勉強を教えてもらったり、 本当にいつも助けてもらっていて……
雫:でも今回は、私が力になれるチャンスだから。 ちゃんと教えられるようにしておきたいの
レン:『そっか……大切なお友達なんだね』
レン:『頑張ってね、雫ちゃん!』
雫:ええ、ありがとう!
雫:あ……ごめんなさい。 話を聞いてもらっちゃって
雫:レンくんも、相談したいことがあったのよね?
レン:『あ、うん。実は今度、バレンタインライブのMCで “ハートファンサ対決”をすることになったんだけど、 そのポーズで悩んでて……』
雫:ハートファンサ対決?
レン:『ひとりずつハートを作るファンサをして、 誰が一番うまくできるか、対決する企画だよ』
雫:まあ、バレンタインらしい企画ね! 可愛いみんなが見られそうだわ
レン:『うん。でも、僕は可愛いポーズの中に スタイリッシュさも取り入れたいと思ってるんだ』
レン:『それで、余裕を感じられるような表情や仕草を 研究してるんだけど……こういうのに詳しい雫ちゃんに、 アドバイスをもらえないかなって』
雫:なるほど……そういうことなら、協力させてもらうわ
レン:『ありがとう、すごく助かるよ。 今考えてるポーズは——』
第 2 话:昼下がりの刺繍教室
翌日
宮益坂女子学園 空き教室
まふゆ:それじゃあ、よろしくお願いします、日野森さん
雫:ええ、任せてちょうだい
雫:今日はまず、基本のステッチを何種類か教えるわね。 慣れてきたら、実際に図案をぬってみましょう
まふゆ:『ステッチ』……それって、ぬいかたのことだよね?
雫:ええ。家庭科で習う『並ぬい』や『本返しぬい』も、 刺繍では『ランニングステッチ』、『バックステッチ』 って呼んだりするの
まふゆ:そうなんだ……詳しいんだね。 なんだか、先生みたいだな
雫:えっ? そうかしら……
雫:えっと……じゃあ、 最初は『アウトラインステッチ』からやってみましょうか
雫:線を描いたり、面を埋めたりするのに よく使うステッチなんだけど……まずは、やってみせるわね
まふゆ:うん、よろしくお願いします
雫:こんな風に、玉結びをして布から針を出したら…… 少し離れたところへ針を入れて——
雫:次は、少し戻って、 針を出したところと入れたところの真ん中から針を出すの。 これを繰り返すと——
まふゆ:あ……線になっていくね
雫:ええ。これが、アウトラインステッチ。 バックステッチよりも、丈夫で少し太い線になるのよ
雫:次は、一緒にやってみましょう
まふゆ:うん。えっと、まずは玉結びをして——
まふゆ:——こんな感じでどうかな?
雫:ええ、真っ直ぐな線になっていて、 とっても上手だわ!
雫:強いて言うなら……針を刺す間隔をそろえると、 もっと綺麗な線になりそうかしら
まふゆ:なるほど……ありがとう、やってみるね
女子生徒達:——ねえ、バレンタイン、どうするかもう決めた?
女子生徒達:うん! でも、プレゼントは当日まで内緒ね
女子生徒達:えー、参考にしたかったのになあ
雫:あ……
まふゆ:廊下のほう、楽しそうだね
雫:みんな、もうバレンタインの準備を始めているのね
まふゆ:私もそろそろ考えないとな
雫:朝比奈さんも、誰かにプレゼントを渡すの?
まふゆ:うん。サークルの子達とバレンタインパーティーを するんだけど、何か持ってきてって言われてるから
雫:あら、絵名ちゃん達と? 楽しそうね
雫:私も、バレンタインは周りの人達に プレゼントを贈ろうと思ってるの
雫:バレンタインは、感謝や大好きの気持ちを伝えられる いい機会だから——
雫:そういう想いをちゃんと伝えられるような、 心を込めたプレゼントにしたいわ
まふゆ:心を込めたプレゼント、か……素敵だね
まふゆ:でも、どんなプレゼントだといいんだろう
雫:そうねえ……あ! こんな風に、刺繍を入れた小物を 贈ってもいいかもしれないわ
まふゆ:刺繍か……。たしかに、手作りの贈り物って、 なんだか特別な感じがするよね
雫:でしょう? それに、これはあくまで私の感覚なんだけど…… 刺繍って、たくさん想いを込められる気がするの
まふゆ:想いを……?
雫:ええ。相手のことを考えながら図案を練ったり、 ぬい進めたりすると、 その分想いものせられるんじゃないかって
雫:だから昔から、特別なプレゼントをしたい時は、 刺繍をすることが多いのよ
まふゆ:そうなんだ。 ……なんだか、日野森さんらしいな
まふゆ:お互い、相手に喜んでもらえるような 贈り物ができたらいいね
雫:ええ!
遥:——あっ、雫。 ここにいたんだ
雫:遥ちゃん?
遥:あ……朝比奈先輩も一緒だったんですね。 お疲れさまです
まふゆ:お疲れさま。日野森さんに用事?
遥:はい、ちょっとだけすみません
遥:雫、グループメッセージ見た?
雫:メッセージ……? ちょっと待ってね
雫:あら……! ごめんなさい、電源が切れていたみたい……!
遥:ふふ、そうだったんだ。 じゃあ、あとで見ておいてもらえると嬉しいな。 次の活動の連絡を送ってるから
雫:ええ。わざわざありがとう、遥ちゃん!
遥:どういたしまして。 ところで——それって、何してるの?
雫:刺繍の練習よ
まふゆ:家庭科の授業で裁縫の課題が出たから、 日野森さんに教えてもらってるんだ
雫:今はまだ、ステッチの練習をしてるところだけど このあと実際に教本に載ってるデザインをぬっていくつもりよ
雫:例えば、このお花の図案とか
遥:へえ……すごいな。 こんなに綺麗な花がぬえるようになるんだ
雫:ええ。ハンカチや靴下のワンポイントにちょうどいいから、 私もよく使っているデザインなの
遥:そうなんだ。そんな風に自分でアレンジできたら、 楽しそうだね
遥:……これ、配信でやってもいいかも
雫:え……刺繍を?
遥:うん。前に愛莉の料理教室をやったでしょ?
遥:あの時も、日常生活でも使えて便利だって好評だったから。 刺繍も配信でやったら、 興味を持ってくれる人がいるんじゃないかなって
雫:たしかに、いいかもしれないわね! 一緒に何かをする企画は、喜んでくれる人が多いし……
遥:あ……ごめんなさい。 急に仕事の話をしてしまって
まふゆ:ううん、気にしないで。 ふたりとも、本当にいつもファンのことを考えてるんだね
まふゆ:私もその企画いいと思うな。 日野森さん、教えるのすごく上手だし
雫:本当? 朝比奈さんにそう言ってもらえたら心強いわ
遥:それじゃあ、愛莉とみのりにも相談してみよう
遥:あ、それと……よかったら、 今度私にも教えてくれない? 企画を考える参考になりそうだから
雫:わかったわ。 時間を作ってみるわね
遥:うん、お願い
まふゆ:それなら、よかったら桐谷さんも一緒にやっていかない?
遥:え? でも……
まふゆ:私達もまだ始めたばかりだし、気にしなくて大丈夫だよ。 桐谷さんに時間があるならだけど
雫:そうね! 遥ちゃん、どうかしら?
遥:……そういうことなら、 交ぜてもらってもいいですか?
まふゆ:うん。一緒に頑張ろう
雫:じゃあ早速、遥ちゃんにも基本のステッチを教えるわね
遥:よろしくお願いします、雫先生
雫:はーい♪
遥:……雫、『レゼーデージーステッチ』って これで合ってるかな?
雫:ええ! 針を刺す位置も、糸を引く力加減も バッチリだと思うわ。じゃあ次は——
雫:あ……でも、もうすぐお昼休みが終わっちゃうわね
まふゆ:本当だ。集中してたらあっという間だったな
遥:いろいろ教えてくれてありがとう、雫
遥:今日はステッチの練習までだったけど、 少しずつ線ができていって、すごく楽しかった
まふゆ:それ、わかるな。 頑張った分だけ形になって、やりがいがあるよね
雫:ふふ。楽しんでもらえたならよかったわ
雫:本当なら、お花の図案をぬうところまで できればよかったんだけど……
遥:たしかに、配信をやるならそういうのもやってみたいな
まふゆ:じゃあ、やりきれなかったところもあるし、 よければまた一緒にやらない?
雫:ええ、そうしましょう!
雫:あ、そうだわ……! せっかくだし、遥ちゃんはペンギンさんの図案をぬってみない?
遥:えっ、ペンギンもぬえるの?
雫:ええ。家に動物の図案を集めた本があったはずだから、 持ってくるわね
遥:ありがとう……!
まふゆ:ふふ、次の刺繍教室も楽しみだね。 今度はいつ集まろうか?
雫:そうね……。 また休み時間に、教室でやってもいいけれど……
雫:みんながよければ、 私のおすすめの場所を紹介してもいいかしら?
第 3 话:楽しい作業タイム
数日後
ミシンラウンジ
雫:ふぅ……。ちゃんと迷わないで来れてよかったわ
遥:ふふ、案内してくれてありがとう。 ゆったりしてて、いい雰囲気のお店だね
雫:ええ。刺繍に必要な道具も貸し出されているから、 今日の会にぴったりかなって
まふゆ:……日野森さんのおすすめの場所って、 ミシンラウンジのことだったんだね
遥:朝比奈先輩、来たことがあるんですか?
まふゆ:ううん。でも、瑞希がよく話してたから知ってたんだ
まふゆ:あ……そういえば、今日って——
???:……あれ? そこにいるの……
瑞希:やっぱり、まふゆだ!
まふゆ:瑞希が服のアレンジしに行くって言ってた日だっけ
雫:まあ、瑞希ちゃん……!
瑞希:うわー、雫ちゃんと遥ちゃんもいる! どういう組み合わせ!?
まふゆ:日野森さんに刺繍を教わりに来たんだ
瑞希:そうなんだ……!
瑞希:ねえねえ! よかったら、ボクも交ぜてもらっていい? 最近刺繍入りのリボンとか流行ってるから、 ちゃんと作れるようになりたいな~って思ってて……!
雫:ええ、もちろんよ。 一緒にやりましょう
瑞希:やったー! ではでは、お邪魔しまーす♪
遥:ふふ、今日はよろしくね、瑞希さん
瑞希:うん! 遥ちゃん達と一緒に作業できるなんて嬉しいな~!
数分後
雫:それでは、これから第2回、刺繍教室を始めます♪
雫:朝比奈さんにはお花、 遥ちゃんはペンギンさんの図案を用意したから、挑戦してみてね
まふゆ:ありがとう。 ……へえ、花っていってもいろんな種類の図案があるんだね
雫:ええ。でも、全部この前教えたステッチを 組み合わせればぬえるから、安心してね
遥:このペンギンも? ちょっと難しそうだけど……
雫:大丈夫よ。アウトラインステッチで 線をなぞっていくだけだから、遥ちゃんならできると思うわ
雫:瑞希ちゃんは、一緒にステッチの練習から始めましょう
瑞希:はーい、がんばりまーす!
瑞希:おおー、さっすがまふゆ! すっごい綺麗にぬえてるじゃん!
まふゆ:そう? 先生の教えかたが上手だからかな
雫:朝比奈さんが器用だからよ。 始めたばかりでこんなに均等に刺せるのは、本当にすごいわ
瑞希:あ、ねえねえ! 花の真ん中にビーズとかボタンつけたら、 もっとカワイくなりそうじゃない!?
まふゆ:ふふ、そうだね。 日野森さん、よかったらビーズのつけかたも 教えてもらってもいい?
遥:——できた……!
瑞希:わあ~! このペンギン、ぽってりしたシルエットですっごくカワイイ!
遥:ありがとう。 アウトラインステッチは、だいぶ慣れてきたかも
雫:あ……それじゃあ次は、塗り絵みたいに 面を埋めるステッチにも挑戦してみない?
雫:色がついてもっと可愛くなるし、 糸の色を変えたら、グラデーションも作れるのよ
遥:そうなんだ……。 なら、子ペンギンのフワフワな毛並みとか、 コウテイペンギンの首元の黄色い部分も表現できそう……
遥:——教えて、雫
数時間後
まふゆ:——これで、全部終わったかな
瑞希:お、まふゆも完成?
遥:わ……どの花も素敵ですね。 特にこのビーズがついてる青い花、 キラキラしてて可愛いな
瑞希:これならアクセサリーにしても映えそうだね! ボクも帰ったらやってみよっと♪
雫:ふふ。これでみんな出来たわね
雫:——みんな、今日はお疲れさま。 3人とも、飲み込みが早くてびっくりしちゃったわ
まふゆ:日野森さんが丁寧に教えてくれたおかげだよ。 おかげで、課題でも素敵な作品がつくれそう
遥:私も、こんなに可愛いペンギンがぬえるなんて思わなかったな
瑞希:ボクもボクも! みんなとおしゃべりしながら作業するのも楽しかったし、 機会があったらまたやりたいな~!
遥:そうだね、私も
雫:あ……
雫:それなら……みんなで一緒に バレンタインのプレゼントを作るのはどうかしら?
遥:バレンタインの?
雫:ええ。私、今年は刺繍入りの小物を作るつもりなの。 だから、よければ一緒にどうかと思って
遥:刺繍入りの小物か……いいかも。 前に雫に刺繍入りのハンカチをもらった時、 すごく嬉しかったし
瑞希:ボクはもう決まってるんだけど…… そういうことなら、 ラッピング用のリボンに刺繍入れちゃおっかな♪
雫:よかった……! 朝比奈さんも、もしまだプレゼントが決まっていないなら、 一緒にどうかしら?
まふゆ:そうだね。私も今日は楽しかったし、参加させてもらおうかな
遥:それじゃあ、全員集合ですね
雫:ええ! さっそく日程を合わせましょう
まふゆ:…………
雫:それに、これはあくまで私の感覚なんだけど…… 刺繍って、たくさん想いを込められる気がするの
雫:だから昔から、特別なプレゼントをしたい時は、 刺繍をすることが多いのよ
まふゆ:(……想いを込めたプレゼント、か)
数時間後
ステージのセカイ
雫:——こなれた感じを出すなら、 表情はにこっと微笑むくらいに抑えたほうが良いと思うわ
雫:あとは、さりげなくウインクを入れてみるとか
レン:軽く微笑んで、ウインクだね。 ありがとう、もう1回やってみるよ
雫:ええ!
レン:『みんな、いつも応援ありがとう! 大好きだよ』
レン:『——ふふ。僕の気持ち、受け取ってくれたかな?』
レン:……今のは、どうだった?
雫:とってもよかったと思うわ……! レンくんらしい、素敵なファンサになったんじゃないかしら
レン:よかった、雫ちゃんが相談にのってくれたおかげだね。 練習までつきあってくれて、本当にありがとう
雫:どういたしまして。力になれたならよかったわ
レン:そういえば、雫ちゃんのほうはどうだったの? 刺繍教室、うまくいった?
雫:準備したことは、教えられたと思うわ。 それでね——
レン:そっか……。みんなで一緒に プレゼントを作ることになったんだね
雫:ええ。セカイのみんなにもプレゼントするから、 楽しみにしていてね
レン:本当? ありがとう!
レン:……でも、全員分だと大変だよね
レン:僕にできることがあれば、言ってほしいな。 練習を見てくれたお礼もしたいから
雫:あら、いいの? じゃあ……よければ、 図案を考えるのを手伝ってもらってもいいかしら?
雫:ひとりひとりに合わせてデザインする予定なんだけど、 レンくんは物知りだし、ミクちゃん達のことも良く知ってるから、 意見を聞けたら嬉しいわ
レン:任せて。素敵なプレゼントを贈る 手助けができるように、頑張らせてもらうね
第 4 话:浮かぶイメージは
数日後
カフェ
瑞希:ではでは、刺繍でプレゼント大作戦、張り切っていこ~!
遥・雫・まふゆ:『おー!』
雫:今日は、刺繍のデザインを決めていきましょう
雫:まずはノートを使って、自由に考えてみてね
瑞希:りょうかーい!
遥:デザインする時、何か気をつけることってある?
雫:そうねえ……。 あまり複雑すぎると刺繍をするのが大変だから、 なるべくシンプルにしたほうがいいと思うわ
雫:それから、ノートに描いたデザインを そのまま布に写して刺繍するから、大きさも大事ね
雫:例えば、遥ちゃんが作るのはメイクポーチだから、 少し大きめのデザインでも綺麗に収まると思うけど……
雫:ハンカチの隅に刺繍をする朝比奈さんは、 小さめにしたほうが見栄えが良くなると思うの
まふゆ:なるほど……。 完成品をイメージしながら考えるってことだね
雫:ええ。小物の仕立て方が載ってる本も持ってきたから、 よかったら大きさの参考にしてみて
雫:それじゃあ、喜んでもらえるデザインになるように、 頑張りましょう
瑞希:うん!
まふゆ:…………
まふゆ:(喜んでもらえるデザイン、か……)
数十分後
瑞希:あ、それってお花? カワイイ~!
遥:うん。みのりに渡すポーチのデザインなんだけど…… ここからもっと増やして、花畑にするつもり
雫:ふふ、みのりちゃんの イメージにぴったりで、とっても素敵ね
雫:じゃあ私は、サモちゃんの ワッペンキーホルダーにしようかしら
遥:いいね。みのり、絶対喜ぶと思う
まふゆ:…………
雫:朝比奈さんは、何か浮かんだ?
まふゆ:あ……ううん。 こういうデザインってあまり考えたことがないから、難しくて
雫:わかるわ。私も得意ってわけじゃないから、 なかなか案が出ない時があるもの
雫:でも、そういう時は相手の好きなものから 考えることが多いかもしれないわね
まふゆ:好きなもの、か……
瑞希:んー……例えば、奏なら『音楽』とか? 純粋な好きとは、ちょっと違うかもだけど
まふゆ:たしかに、奏はいつも音楽と向き合ってるもんね
遥:それなら、音楽のモチーフ…… 音楽記号を入れてみるとか?
瑞希:でも、音符とかだけだとちょっと寂しいよね。 あと奏が好きなものといえば……カップラーメン、とか?
雫:そうねえ……。 パッケージをぬうのが、少し大変かもしれないわ
遥:そもそも、カップラーメンでいいのかな……?
瑞希:あはは、だよね……。 刺繍映えして奏が好きなものってなると難しいなあ
遥:あ……だったら、宵崎さんのイメージから 考えるのはどうですか?
まふゆ:イメージ?
遥:はい。『花畑』のデザインは、 みのりのイメージから出てきたものなので
遥:『花里』って苗字に合うし……なによりみのり自身が、 花がほころぶみたいな笑顔で、 気持ちをぱっと明るくさせてくれる子ですから
まふゆ:……そっか。そういう決め方もあるんだね
まふゆ:奏のイメージ、か……
雫:……宵崎さんは、朝比奈さんにとってどんな人なの?
雫:一緒にいて落ち着くとか、明るい気分になるとか…… そういうイメージも参考になるかもしれないわ
まふゆ:……そうだね……
まふゆ:答えになるかはわからないけど……
まふゆ:奏が作った曲を聴いたり、一緒にいると…… あたたかい気持ちになる、かな
瑞希:それ、すっごくわかるな! ボクも奏には助けられてるし
遥:そうなんだ。素敵な人なんだね
瑞希:うん! 奏の曲って、暗闇の中に差す光って感じで…… 聴いてて胸がぎゅっとするんだよね
瑞希:それで、また少し、前を向けるようになるっていうか……
まふゆ:あ……
まふゆ:(暗闇の中に差す、光……)
まふゆ:……そうだね
まふゆ:奏は——
まふゆ:前に進めなくなった時、そばにいてくれて……
まふゆ:“大丈夫だよ”、“一緒に進もう”って言ってくれる
まふゆ:それが——私にとっての奏なのかも
まふゆ:……ごめん。やっぱりまだ抽象的すぎるよね
雫:そんなことないわ。 朝比奈さんにとって、宵崎さんがどんな存在なのか ちゃんと伝わってきたもの
雫:(暗闇で前に進めなくなった時、 一緒に道を探してくれる……)
雫:(そういうあたたかさを、デザインに落とし込むなら……)
雫:あ……
雫:『灯火』、なんてどうかしら……?
まふゆ:灯火……?
雫:ええ。灯火は、暗い場所を照らして、 道を探す手助けをしてくれるでしょう?
雫:それに、暗闇でも小さな灯があれば、 心細い気持ちがやわらいで、少しほっとするから…… もしかしたら、イメージに合うんじゃないかって思ったの
雫:あっ……これはただの思いつきだから、 全然違うかもしれないけれど……
まふゆ:……ううん。そんなことないよ。 なんだか、しっくりきた気がする
瑞希:うんうん! ボクも、奏のイメージに合ってる気がするな
雫:本当? よかった……!
まふゆ:それじゃあ、みんなの意見を参考にして デザインを練ってみるね
まふゆ:一緒に考えてくれてありがとう
雫:ええ。迷ったら、またいつでも相談してね
まふゆ:——うん
雫:ふう……これで、みんなデザインは決まったかしらね
遥:うん。どのステッチを使ってぬうかも、 雫のおかげで固められたし…… あとは、材料をそろえて作るだけかな
瑞希:それじゃ、いいプレゼントになるように、 みんなでがんばろー!
雫・まふゆ・遥:『ええ!』 『うん!』
第 5 话:おばあちゃんの宝物
数日後
ステージのセカイ
遥:——レンくん、今日は時間を作ってくれてありがとう
レン:ううん。もともと、 雫ちゃんが刺繍のデザインを考えるのを手伝うって、 約束してたから
レン:みんなに素敵なプレゼントを贈れるように、 僕にも協力させてほしいな
雫:ありがとう! じゃあ、まずはめーちゃんのデザインから考えましょうか
遥:そうだね……。メイコは、 トレーニングが好きなイメージがあるけど……
レン:モチーフにするのは少し難しそうだね。 ……なら、明るくてパワフルな歌声から考えるのはどうかな?
雫:いいわね……! こんな感じで、スタンドマイクやエフェクトを入れてみたり……
MEIKO:あ、みんなー! 来てたのね!
雫:……! どうしましょう、めーちゃんがこっちに……!
レン:——僕に任せて
遥:えっ?
レン:めーちゃん! さっき、カイトくんが探してたよ。 トレーニングのメニューを見直したいんだって
MEIKO:本当? それは急いで行かなくっちゃね! ありがとう、レン!
レン:(……ごめんね、カイトくん……)
瑞希の部屋
瑞希:(……よし、このエフェクトもいい感じ♪ 次は——)
まふゆ:『……ごめん、今日は早めに落ちるね』
奏:『うん、わかった。 学校の課題とか?』
まふゆ:『ううん、もう終わってる』
絵名:『じゃあ、明日何か用事でもあるの?』
まふゆ:『……別に、そういうわけじゃないけど……』
絵名:『……なんか、歯切れ悪くない?』
瑞希:『まあまあ、雪だって早く休みたい時くらいあるでしょ』
瑞希:『とにかくお疲れ、雪! また明日ね』
まふゆ:『……うん。お疲れさま』
瑞希:(……がんばれ、まふゆ!)
数日後
宮益坂女子学園 空き教室
雫:あ……灯火の刺繍、形になってきてるわね
まふゆ:うん。あとは、ロングアンドショートステッチで 火の部分を刺したら終わりかな
雫:たしか、糸を変えてグラデーションにするのよね。 少し難しいけど、困ったらいつでも相談してね
まふゆ:うん、ありがとう
まふゆ:……日野森さん、本当に刺繍が好きなんだね
雫:え、どうして?
まふゆ:さっき、鼻歌を歌ってたから
雫:えっ、本当? 無意識だったわ……
雫:でも……そうね
雫:刺繍もそうだけど…… 私、この時間が好きなんだと思うわ
まふゆ:え?
雫:相手のことを考えながら、想いを形にしていく—— ゆったりした時間が
まふゆ:想いを、形に……
雫:ええ。前に、刺繍は『たくさん想いを込められる気がする』 って言ったと思うけど……
雫:それも、この時間があるからなの
まふゆ:……そっか。 日野森さんは、そういう風に考えながら刺繍をしてたんだね
雫:……と言っても、 これは全部おばあちゃんに教えてもらったことなんだけどね
まふゆ:おばあさんに?
雫:ええ。……実は私、おばあちゃん子なの。 お父さんもお母さんも忙しかったから、 小さい頃はよく面倒を見てもらっていたのよ
雫:とっても趣味が多い人でね。 いろんなことを教えてもらったんだけど、 刺繍もそのひとつで——
公民館
子供達:ねえねえ、一緒におはじきやってみようよ!
子供達:うん、いいよー!
子供達:えいっ……! よっしゃ、竹とんぼ飛ばせた!
幼い雫:(ふふ。いろんな昔の遊びができて、 ふれあい会、とっても楽しいわ!)
幼い雫:(次は、何をやってみようかしら? しぃちゃんは——)
幼い雫:(あ……コマ回しを練習してるみたい。 集中してるみたいだし、私はちがうやつを——)
幼い雫:あ……
幼い雫:(おばあちゃん、向こうでおさいほうしてる。 何を作ってるのかしら……?)
幼い雫:おばあちゃーん!
祖母:あら、雫ちゃん。 いらっしゃい
幼い雫:えへへ、おばあちゃん何作ってるのー?
祖母:ふふ、これはね……
祖母:雫ちゃんと志歩ちゃんの、新しいお洋服よ♪
幼い雫:えっ! お洋服……?
祖母:ええ。今は、襟元にお花の刺繍を入れていたの
幼い雫:わあ、小さいお花がいっぱいで、かわいい……!
幼い雫:ねえ、おばあちゃん。 作ってるところ、見ててもいい?
祖母:いいわよ。でも、針が当たらないように近づきすぎないでね
幼い雫:はーいっ!
幼い雫:…………
幼い雫:(あ……)
幼い雫:(おばあちゃん、とってもニコニコしてる……)
幼い雫:……えへへっ
祖母:あら? 雫ちゃん、ご機嫌さんね
幼い雫:うん! だって、おばあちゃんがニコニコしてるんだもん!
祖母:本当? きっと、幸せだなって気持ちが溢れちゃってたのね
祖母:刺繍をしている時間は、おばあちゃんの宝物だから
幼い雫:宝物……?
祖母:ええ。こうやって、『雫ちゃんにはどんな刺繍が似合うかしら』 『喜んでくれるかしら』って想いながら、 丁寧に針を刺す時間はね——
祖母:おばあちゃんにとって、とっても大切な時間なの
幼い雫:そうなんだ……
祖母:ふふ。興味があるなら、 雫ちゃんも一緒にやってみる?
幼い雫:……! うん、やってみたい……!
第 6 话:大切な時間
公民館
幼い雫:針を入れて、下にひっぱって……
祖母:そうそう、上手よ。 次は、布の裏から針を出してね
幼い雫:うん……!
幼い雫:ん、しょ……、ん、しょ……
幼い雫:わあ……見て、おばあちゃん。 うさぎさんのおひげ、1本できた……!
祖母:本当だ、立派なおひげね
幼い雫:えへへ……
幼い雫:あ……上手にできたら、 しぃちゃんにあげようかしら
祖母:ふふ。志歩ちゃん、うさぎさんが好きだからきっと喜ぶわね
幼い雫:ほんと? それなら、しぃちゃんのために、 とってもかわいいうさぎさんを作ろうっと!
幼い雫:(あ……うさぎさんのお耳、少しずつできてきたわ)
幼い雫:(ふふ。ピンク色の糸、かわいい……。 プレゼントしたら、しぃちゃん喜んでくれるかしら……?)
幼い雫:(早く、しぃちゃんに見せたいなあ)
幼い雫:(あっ、でも、ズレないようにゆっくり、ゆっくり……)
幼い雫:(しぃちゃんが、『かわいいね』って 笑ってくれるように……)
祖母:……ふふっ
幼い雫:おばあちゃん、どうしたの?
祖母:ううん、雫ちゃんが、すごくにこにこしてるから
祖母:刺繍、楽しい?
幼い雫:うん! 線ができると嬉しいし…… なんだか、胸がぽかぽかするわ
祖母:そう……それじゃあ、おばあちゃんと一緒ね
幼い雫:一緒……? あっ……
祖母:本当? きっと、幸せだなって気持ちが溢れちゃってたのね
祖母:刺繍をしている時間は、おばあちゃんの宝物だから
幼い雫:(おばあちゃんも、ぽかぽかしてたのかな……?)
幼い雫:(まだ、ちゃんとはわからないけど……)
幼い雫:(私も、ししゅうしてる時間、好きだな……)
雫:——それで、うさぎさんのハンカチを しぃちゃんにプレゼントしたら、とっても喜んでもらえて……
雫:もっと、刺繍が好きになったのよ
まふゆ:そうだったんだ……素敵な思い出だね
雫:ふふ、ありがとう
雫:……今でも、刺繍をする時は おばあちゃんの言葉を思い出すの
雫:誰かを想って、ひと針ひと針、 丁寧に針を進める時間はとっても大切なものだって
雫:それに……そんな風に想えるような相手がいるのは、 とても恵まれたことだって思うの
雫:だから、私はこの時間が大好きだし 大切にしたいって思っているのよ
まふゆ:…………
まふゆ:そっか……そういう考え方もあるんだね
雫:あ……と言っても、これはあくまで私の考えなんだけど……
雫:綺麗なものを作るのが好きって人も、 作業をしている静かな時間が好きって人もいるだろうし…… 刺繍の楽しみかたは、人それぞれだと思うから
雫:だから……朝比奈さんも、 自由な気持ちで刺繍してくれると嬉しいわ
まふゆ:うん、ありがとう。 自分なりに楽しんでみるね
雫:ええ……!
雫:って、ごめんなさい。長々と話してしまって
まふゆ:ううん。小さい頃の日野森さんの話が聞けて、嬉しかったよ。 ……それじゃあ、作業に戻ろうか
まふゆ:…………
まふゆ:(……刺繍の楽しみかたは人それぞれ、か)
まふゆ:(たしかに、作業をしてる静かな時間が好きっていうのは、 わからなくもない、かな……)
まふゆ:(……こうして手を動かしてると、少し、落ち着く気がする)
まふゆ:……………………
まふゆ:……………………
第 7 话:想いを込めたプレゼント
バレンタイン前日
ミシンラウンジ
雫:接着芯は、ちゃんと貼りつけられているし…… 糸のほつれも大丈夫そうね
雫:——これで、最終チェックも終わったわ。 みんな、本当にお疲れさま!
瑞希:やったー! お疲れさま~!
まふゆ:たくさん作ったから、こうして並べると達成感があるね
遥:そうですね。 明日、みんなに渡すのが楽しみです
雫:みんな、すごく頑張っていたし……喜んでもらえるといいわね
バレンタイン当日
ステージのセカイ
MEIKO:さっすが愛莉ちゃん! こういうムースのケーキまで作れちゃうのね
リン:しかもハート形で、すっごくかわいい~!
愛莉:味も期待してくれていいわよ? カロリー控えめにしてあるから、たくさん食べてちょうだい!
ルカ:みのりちゃんのは、 スプーンの上にチョコレートが載っているのね
みのり:うんっ! 『スプーンチョコ』っていって、 溶かしたチョコをスプーンに入れて固めるだけで、 簡単にできちゃうんだ
レン:でも、ひとつひとつデコレーションが違うね。 アラザンは、メンバーカラーになってるのかな?
ミク:ハートとかお花とか、トッピングの形も違ってて どれが誰のデザインなのか、一目でわかっちゃうね♪
みのり:えへへ……見た目でも喜んでもらいたいな~って思って 作ったんだ!
遥:そっか……。 たくさん考えてくれてありがとう、みのり
雫:それじゃあ……私達からも、 プレゼントをさせてもらっていいかしら
KAITO:私達? もしかして、ふたりで準備してくれたの?
遥:はい。私は雫に教えてもらいながらだったので、 あんまり上手くできてないかもしれないけど…… 気に入ってくれたら嬉しいです
遥:えっと……じゃあまず、みのりから。 これ、受け取ってくれる?
みのり:えっ…………
みのり:ええ~~~~っ!? こ、こんなにすてきなポーチを、 わたしのために……!?
ミク:わあ、きれいなお花の刺繍……! もしかして、これも遥ちゃんが?
遥:うん。みのりはいつも、ぱっと花が咲くみたいな笑顔で みんなを元気づけてくれるから——
遥:そんなみのりをイメージして、花畑の刺繍を入れたんだ
みのり:わ、わぁあ……!
ルカ:今、みのりちゃんのまわりに ポンポンッて花が咲いた気がするわね
愛莉:まさに、花畑の笑顔ね
みのり:うう~……ありがとう、遥ちゃん……! わたし、このポーチもさっきの言葉も、 ずっとずっとず~っと大切にするね!
遥:うん。喜んでもらえてよかった
雫:——じゃあ次は、私が愛莉ちゃんにプレゼントを渡してもいい?
愛莉:えっ? ええ……。 なんか、この流れだと妙に緊張するわね
雫:はい、どうぞ。 ハッピーバレンタイン、愛莉ちゃん♪
愛莉:これって……キーホルダー? わたしのは、お日様の刺繍なのね
リン:わあ、ビーズや糸がキラキラしてて、きれいだね!
雫:ふふ。愛莉ちゃんは——いつも眩しく輝いて、 私達を照らしてくれるから
雫:愛莉ちゃんにぴったりだなって思ったの!
愛莉:雫…………
MEIKO:ふふ、愛莉ちゃんの目もキラキラしてるわね
愛莉:しょ、しょうがないじゃない。 こんなプレゼントもらっちゃったら……!
愛莉:……ありがとう、雫。 大切に使わせてもらうわ
雫:うん……!
遥:次は——レンくん、頼んでもいい?
レン:わかった。じゃあミクちゃん達には僕から
リン:えっ! なんでレンなの?
レン:実は、みんなへのプレゼントに入ってる刺繍は、 僕も一緒にモチーフを考えさせてもらったんだ
雫:みんなのことをたくさん考えて、 素敵なアイディアを出してくれたのよ
ミク:そうだったんだ……! どんなデザインなのか、楽しみだな
リン:レン、はやくはやくー♪
レン:じゃあ、まずはリンから渡すね
レン:——はい、リン。 ハッピーバレンタイン!
リン:ありがとー! わ、ふかふかの汗拭きタオルだ!
リン:この刺繍は……わたしの似顔絵と、 黄色いお花……?
遥:菜の花だよ。 似顔絵は雫が、花は私が刺繍したんだ
レン:——菜の花の花言葉は、『元気いっぱい』
レン:いつも元気いっぱいのパフォーマンスで、 ファンのみんなを笑顔にしてるリンをイメージしてみたんだ
リン:ありがとう、レン……! それに、雫ちゃんと遥ちゃんも……!
リン:このタオルを使って、い~っぱい練習して、 みんなにも元気をお届けできるように、がんばるねっ!
MEIKO:ねえねえ、わたしはどんなデザインなの?
レン:うん、めーちゃんのは——
遥:愛莉と雫にもポーチを作ってきたから、 プレゼントさせて
雫:私も、ふたりの分のキーホルダーも渡させてほしいわ
みのり:わあ、ありがとう……!
雫:……ふふっ
雫:(みんなに喜んでもらえて、本当によかったわ)
雫:(想いを込めたプレゼントを贈れて、 みんなの笑顔が見られて——)
雫:(……とっても、幸せだわ)
雫:(こんな風に、たくさんの想いを届けられて…… やっぱり、刺繍って素敵ね)
雫:(朝比奈さん達のほうも、上手くいっているかしら……?)
第 8 话:伝わったもの
誰もいないセカイ
ミク:絵名のチョコ、おいしいね
絵名:ふふ、人気のブランドのやつだからね。 期間限定で、今しか食べれない味なんだって
奏:瑞希のは、いろんな種類のチョコが入ってるんだね
瑞希:個包装のチョコをいくつか買って、 詰め合わせにしてみたんだ~! 見た目もカラフルでカワイイでしょ?
絵名:まあね。ラッピングも凝ってるみたいだし。 あ……このリボン、全員柄が違うんだ
瑞希:おっ! さっすが絵名、目ざとい! 実はそれ、ボクが自分で刺繍したんだ~
レン:ししゅう……って、この糸の絵のこと?
瑞希:そうそう! しかも、リボンの裏にピンがついてて、 ブローチにもなるんだよ!
瑞希:リン、ちょっとごめんね~。 ほら、こんな風にたくさん生地を挟むと、 服にも穴が目立たないようにつけられるし……
リン:ちょっと、瑞希。自分でできる
瑞希:あはは、ごめんごめん! みんなに似合うようにデザインしたから、 早くつけてほしくって
奏:瑞希、こういうのも作れるんだね。 すごいな……
瑞希:ありがと! でも、驚くのはまだ早いよ? ……ねっ、まふゆ!
まふゆ:…………
絵名:え? まふゆも何か持ってきたの?
まふゆ:うん、一応。 チョコじゃないけど
まふゆ:——はい、これ
奏:えっと……ハンカチ?
ルカ:あら、意外なチョイスね。 それに、刺繍が入っているみたいだけど、 もしかして……
まふゆ:……うん。私がぬった
瑞希:雫ちゃんに、一緒に教えてもらいながら作ったんだよねー
絵名:へえ……。結構本格的じゃん
絵名:これって、キャンバスの刺繍?
まふゆ:うん
瑞希:よくできてるでしょ~!
絵名:なんで瑞希が自慢げなわけ?
絵名:でも、そうだね——キャンバスだけじゃなくて、 描いてる風景画も表現できてるし、 花の装飾も、複雑っぽいのに綺麗にぬえてるし……
絵名:……かなりいい出来かも……
まふゆ:そう、よかった
ミク:奏のは、どんなデザインだった?
奏:えっと、わたしのは……ロウソク、かな?
レン:火のところ、すごく綺麗だね……。 どうして、このデザインにしたの?
まふゆ:…………。 うまく、言えないけど…………
まふゆ:奏には、この刺繍がいいと思った
奏:……そっか
奏:……ありがとう、まふゆ。 素敵なプレゼントをくれて
奏:なんだか……あったかい気持ちになったよ
まふゆ:……そう
まふゆ:……あと、瑞希にも
瑞希:え、ボクにも作ってくれてたの!?
まふゆ:うん。なんとなく、 そのほうがいいと思ったから
瑞希:えへへ、ありがと! 何かな何かな~♪
瑞希:あ……猫の刺繍だ! めちゃくちゃカワイイ……! 大事にするね!
リン:……まふゆ。 わたし達にはないの?
まふゆ:あるよ。でも、メイコとカイトはいないみたいだから、 あとで渡しておいて
レン:えっ? でも……
ミク:……いいの?
まふゆ:どうして?
ミク:このハンカチには、 まふゆの想いが込められてる気がするから…… 直接渡した方が、いいんじゃないかと思って
まふゆ:……わかった
ルカ:ふふ。それじゃあ、今からふたりを探しにいきましょうか
絵名:えっ!? いや、どこにいるかわかんないんだし、 すっごく時間かかりそうじゃない?
瑞希:でも、いい運動になりそうじゃん! お腹すかせた方が、チョコも美味しく食べれるかもしれないよー?
絵名:まあ、そうかもしれないけど……
瑞希:ってことで、しゅっぱーつ!
絵名:あっ、ちょっと! 待ちなさいってば、もう……
奏:ふふ。 ——まふゆも、行こう
まふゆ:…………うん
数日後
宮益坂女子学園 中庭
雫:あ……!
雫:朝比奈さん……!
まふゆ:あ、日野森さん。 お疲れさま、今帰り?
雫:ええ。よかったら一緒に帰らない?
まふゆ:うん。タイミングが合って嬉しいな
雫:私もよ。 実は、朝比奈さんと話したいなって思ってたの
まふゆ:え? 何か用事があったとか?
雫:用事ってほどのことでもないんだけど…… バレンタインのプレゼントがどうだったか、 聞いてみたくって
まふゆ:ふふ、そういうことか。 みんな、私が刺繍をしたのが意外だったみたいで、 すごく驚いてたよ
まふゆ:それに……日野森さん達が一緒にデザインを 考えてくれたおかげで、喜んでもらえたと思う
雫:本当? よかったわ……!
まふゆ:うん。改めて—— 刺繍を教えてくれてありがとう、日野森さん
まふゆ:おかげで、素敵なプレゼントができたし…… 『刺繍をする時間』の楽しさも、少しわかった気がするよ
雫:朝比奈さん……
雫:——ええ! そう言ってもらえて嬉しいわ
雫:よかったら、また一緒にやりましょうね
まふゆ:うん、楽しみだな
まふゆ:あ、それで……お礼になるかわからないけど、 日野森さんにも、刺繍入りのハンカチを作ったんだ
雫:えっ、そうだったの? 実は私もなのよ
まふゆ:本当? ふふ、お揃いだね
雫:嬉しいわね
雫:そうだわ、せっかくだし『せーの』で交換しない?
まふゆ:いいよ。じゃあ——
雫・まふゆ:『せーのっ』
まふゆ:あれ、これって……
雫:まあ、朝比奈さんも雪ウサギの刺繍をしてくれたのね……!
まふゆ:まさか、刺繍もおそろいだなんて思わなかったな
雫:ふふ、そうね。 前にここで、雪ウサギを作った時のことを思い出して このデザインにしてみたんだけど……
雫:朝比奈さんも、覚えていてくれたのね
まふゆ:うん。あの雪ウサギ、すごく可愛かったから
まふゆ:……ありがとう、日野森さん。 大切にするね
雫:ええ。私も、ずっと大切にするわ
雫:(……刺繍をしようって誘って、本当によかったわ)
雫:(みんなに喜んでもらえたし、 朝比奈さんの役にも、少しは立てたかもしれないし……)
雫:(それに——)
雫:(朝比奈さんにも、刺繍の楽しさをわかってもらえて……)
雫:(なんだか、ちょっとだけ…… 前よりも近づけたような気がするわ)
雫:(あの時間が、朝比奈さんにとって…… 少しでも、大切に思える時間になっていたなら——)
雫:(とっても、嬉しいわね)