活动剧情
Unreliable Notes
活动ID:161
第 1 话:あたたかい思い出
25時
誰もいないセカイ
奏:…………
奏:(……今回の曲はどうかな……)
奏:(少しでも、まふゆの心に届けばいいけど……)
まふゆ:……あたたかい……
奏:……!
奏:……よかった……
絵名:うん、デモの時からそうだけど…… 今回の曲も、すっごくいいよね
瑞希:わかる~! なんていうか、心に沁みる感じ!
ミク:わたしも、そう思う
奏:ありがとう。 そう言ってもらえてよかった
奏:(よかった、けど……)
奏:(……まだ、まふゆをちゃんと救えたわけじゃない)
奏:(……まふゆのお父さんは、まふゆの気持ちを受け入れてくれた)
奏:(そのおかげで、まふゆは 前よりも落ち着いた感じがする、けど——)
奏:(まだ、時々苦しそうな顔をしてる)
奏:(まふゆを救える曲を、ちゃんと作らなくちゃ)
奏:(でも、あれから何度も作ってるけど、まだ足りない)
奏:(どうすれば……)
奏:ねえ、まふゆ
まふゆ:……なに?
奏:まふゆは、わたしの曲を 『あたたかい』ってよく言ってくれるけど…… それって、どういう感じなの?
まふゆ:え……
絵名:どういうこと?
奏:あ……急にごめん
奏:えっと……まふゆは、よくわたしの曲を “あたたかい”って言ってくれるでしょ?
まふゆ:……うん
奏:あたたかいって感覚は、 まふゆにとって大事な気持ちだから……
奏:それをもっと深く知ることができたら、 まふゆを救う曲に近づけるかもしれないと思ったんだ
瑞希:なるほどね……
絵名:たしかに、そうだよね。 イメージができるって大事だし
リン:まふゆ、わかる?
まふゆ:…………
まふゆ:……奏の曲の、あたたかさは……
まふゆ:昔……風邪を引いた時に……
まふゆ:……お母さんが、看病してくれたんだ
奏:看病……
まふゆ:お母さんは、いつも町内会の仕事とかで忙しかったんだけど……
まふゆ:その日は、ずっとそばにいてくれたの。 それで——
まふゆ:りんごを、うさぎの形に切ってくれた
絵名:へ、りんご?
まふゆ:……うん
まふゆ:それが、なんだかすごく美味しくて……
まふゆ:お母さんが、手を握って、子守唄を歌ってくれた
瑞希:へえ……
まふゆ:奏の曲を聴いた時の、あたたかい感覚は——
まふゆ:その時の気持ちに、似てるんだと思う
奏:……そうだったんだ……
ミク:素敵な思い出だね
絵名:だね。なんだか意外だけど
瑞希:でも……ボクはちょっと納得したな
絵名:納得?
瑞希:ほら、前にまふゆが言ってたじゃん。 奏の曲を聴いた時の気持ちは、りんごを食べた時と似てるって
瑞希:そのりんごを食べた時の思い出が、 今話してくれた『お母さんが看病してくれた時のこと』って ことでしょ?
奏:あ……
奏:それなら、次は…… その思い出をイメージして、曲を作ってみるよ
まふゆ:奏……
まふゆ:……ありがとう
ミク:どんな曲になるのか、楽しみだね
リン:……うん
朝比奈家 リビング
まふゆの母:…………
まふゆの父:……まふゆは、本当は医者になりたいわけじゃないらしい
まふゆの父:——私はきっと、いろいろなことを見落としていた。 本当に申し訳なく思っている
まふゆの父:まふゆがこの先、どんな道に進むかは、まだわからない
まふゆの父:しかし……
まふゆの父:君にとっては、苦しいことかもしれないが——
まふゆの父:私は、まふゆが自分の進みたい道を選べるように、 応援してやりたいと思う
まふゆの母:…………っ
まふゆの母:(…………まふゆは、本当に、医者になりたいわけじゃない?)
まふゆの母:(本当に……?)
まふゆの母:(それなら、私がやっていたことは……間違っていたの?)
まふゆの母:(…………そんなわけない)
まふゆの母:(まふゆの幸せのためには、正しかったはず)
まふゆの母:(……でも……)
まふゆの母:(…………間違って、いたの……?)
まふゆの母:(……でも、それなら……)
まふゆの母:私は…………
第 2 话:イメージ
宮益坂
奏:(……お父さん、元気そうでよかったな)
奏:(今日は少しだけ話せたし…… 帰ったら、曲作りも頑張れそう)
奏:(でも……)
奏:それなら、次は…… その思い出をイメージして、曲を作ってみるよ
奏:……あたたかい、思い出……
???:『——奏』
奏:え……
奏:リン……どうしたの?
リン:『暇だったから、奏の様子を見に来たの。 まふゆのために曲を作るって言ってたし』
奏:そうだったんだ。 曲は……帰ってから作る予定だよ
リン:『ふうん』
リン:『……奏、何かあった?』
奏:え?
リン:『さっき、少し悩んでる感じだったから』
奏:あ……
奏:……そうだね
奏:実は、曲がうまく作れないんだ
奏:……イメージが、わかなくて
リン:『イメージ……?』
奏:えっと……まふゆが言う“あたたかさ”が どういうものかは、なんとなく掴めた気がするんだけど
奏:……どうしても、まふゆのお母さんから そういうイメージが出来ないんだ
奏:わたしの中だと、真逆の印象だから
リン:『真逆?』
奏:うん。この前、会ったとき——
奏:……冷たいって、感じて
リン:『冷たい……』
奏:……うん。うまく言えないんだけど…… 背中が凍るみたいな冷たさを感じたんだ
奏:それに……話してて、 まふゆのことを本当に考えてるようには見えなかった
奏:だから……まふゆの感じてる“あたたかさ”を あの人からイメージできない
奏:それが……うまくいかない理由なんだと思う
リン:『……難しい……』
奏:……そうだね。わたしも、どうすればいいのかわからなくて
リン:『…………』
リン:『……でも、わからないけど……』
リン:『まふゆが、お母さんの思い出を “あたたかい”って思ってるのなら』
リン:『どこかに、そういうところがあるんじゃない?』
奏:……そう、だね……
奏:(たしかに、まふゆのお母さんのこと わたしは全然知らない。でも——)
奏:(あの時の、冷たさは……)
???:——宵崎さん?
奏:え、あ……
まふゆの父:こんにちは。 こんなところで会うなんて、偶然ですね
奏:えっと、そうですね。 朝比奈さんは、お出かけですか?
まふゆの父:はい、夕飯の買い出しに。 今日は鍋にしようと思いまして
奏:お鍋……。 いいですね、体もあったまりますし
奏:わたしも今日、まふゆと食べようかな……
まふゆの父:ええ、ぜひ
まふゆの父:……まふゆは、最近どうでしょうか
奏:え?
まふゆの父:ああいえ、毎週顔を見て話しているので 様子はわかっているつもりではあるのですが……
まふゆの父:おそらく、まだ私の前では言いづらいこともあると思うんです
まふゆの父:なので、無理をしていないか気になって……
奏:あ……
まふゆの父:ああ、もちろん 言えないことであれば無理にとは言いません。 差し支えない範囲で——
奏:……まふゆは、前よりも随分落ち着いたと思います
奏:以前は、表情もずっと暗くて、 毎日……家族のことで悩んでいるみたいでした
奏:けど、今は前よりも安心した表情をしてることが多くて……
奏:きっと、お父さんがちゃんと寄り添ってくれてる—— そう思えてるからなんじゃないかな、と思います
まふゆの父:…………
まふゆの父:そう、ですか……
奏:……わたしも、曲作りがんばらないとな
まふゆの父:曲作り?
奏:あ……すみません
奏:えっと……今、まふゆのために曲を作っているんです
まふゆの父:まふゆのために……曲を?
奏:はい
奏:まふゆが、わたしの曲を聴いて 笑ってくれたことがあるんです
奏:……曲ひとつで、今の状況が変わるわけじゃない とは思うんですが……
奏:ほんの少しでも、まふゆの心を軽くできるような——
奏:そんな曲を作りたいと思っていて
まふゆの父:そうだったんですか……
まふゆの父:ありがとうございます。 本当に、まふゆのために色々してくださっていて
まふゆの父:私も、宵崎さんに何かお返しができればいいのですが……
奏:いえ、わたしは何も……
奏:……あ……
奏:あの、もしよければ——
奏:まふゆのお母さんについて、教えてくれませんか?
第 3 话:『愛情』
まふゆの父:妻について……ですか?
奏:あ……突然すみません。 えっと……
まふゆの父:……わかりました
まふゆの父:少し長くなりそうなので、場所を変えましょうか
奏:……! はい、お願いします
カフェ
まふゆの父:——なるほど。まふゆがそんな話を……
奏:はい。風邪をひいた時、 お母さんがりんごを剥いてくれて
奏:その時の思い出が、まふゆにとってはあたたかくて…… とても大事なものみたいなんです
まふゆの父:私は、りんごの話についてはわからないですが……
まふゆの父:妻がまふゆのために、りんごを剥く姿は目に浮かびます
まふゆの父:はは、宵崎さんからすると びっくりするかもしれませんね
まふゆの父:ですが、そうですね——
まふゆの父:私から見て妻は、とても献身的で…… 愛情深い母親だと思っています
奏:愛情深い……
奏:……それって、どんな風にですか?
まふゆの父:言葉で言い表すのは、難しいですが……
まふゆの父:自分の持てるすべてを、まふゆに注いでいるようでした
まふゆの父:まふゆのためになることは なんでもさせてやりたがっていましたし、 将来のためにと、いろいろ学ばせていました
まふゆの父:——おはよう。 あれ、まふゆ起きていたのか?
幼いまふゆ:うん! 今日ね、おとうさんのためにお弁当作ったんだよ! おかあさんに作り方教えてもらったの!
まふゆの父:そうだったのか……ありがとう、まふゆ。 だが、料理は早いんじゃないか?
まふゆの母:火を使うところは私がやっているから大丈夫よ。 今のうちから料理をすることで、食べ物の大切さも 手順を考えて行動することも学べるわ
まふゆの父:なるほどな……
まふゆの父:……ん? 何を読んでいるんだ?
まふゆの母:まふゆと明日、歴史の博物館に行くから予習していたの。 何か聞かれたら、ちゃんと教えてあげられるようにしたいから
まふゆの父:なるほどな、さすがはお母さんだ。 当日は頼んだぞ
まふゆの父:……それこそ、まふゆの興味を持ったものならなんでも。 子供には難しい教材なども買い与えていました
まふゆの父:少し厳しすぎるんじゃないか、と思ったこともありましたが ……まふゆも、妻から様々なことを学んで 成長しているようでした
まふゆの父:……私には、そう見えました
奏:なるほど……
奏:(まふゆから聞いてた印象と、同じだ)
奏:(なんとなく……想像できる気がするけど)
まふゆの父:……ああ、そうだ。 ひとつ、印象に残っていることがあります
奏:え……?
まふゆの父:まふゆが赤ん坊の時のことなのですが——
まふゆの父:初めて熱を出したんです。 かなりの高熱で……
奏:それは……大変だったんじゃ……
まふゆの父:はは、そうですね
まふゆの父:……いつも落ち着いている妻が、 その時はかなり取り乱した様子でした
まふゆの父:運悪く、大雪の降った日で……。 車もすぐに動かせず、病院へ向かうのも難しかったんです
まふゆの父:けれど妻は、まふゆを抱いて、病院へ向かいました
まふゆの父:まふゆが濡れないように盾になって、 降る雪で髪を真っ白にしながら
まふゆの父:その様相が、私が知る妻とはかけ離れていて—— とても驚いたのを覚えています
まふゆの父:ただの風邪だとわかってからは、 ほっと肩の力が抜けたようで…… いつもの妻に戻りましたが
奏:…………
まふゆの父:まふゆが産まれて、この腕に抱いた時から 今の今まで——その愛しさ、大切さは何ひとつ変わらない
まふゆの父:それは、きっと……妻も同じだと思います
奏:そう、なんですか……
奏:(たしかに……今の話を聞くと、そうなのかもしれない)
奏:(でも……)
奏:…………
まふゆの父:……あまり、ピンと来ませんでしたか?
奏:あ……すみません。その……
奏:……わたしが感じた、まふゆのお母さんのイメージとは ちょっと違ったので……
まふゆの父:……そうですね
まふゆの父:きっと、『まふゆのために』という想いが強くなるばかりに 妻も……そして私も、いつの間にか 道を間違えてしまったんだと思います
まふゆの父:あの子の気持ちに、本当の意味で向き合うことを忘れて…… いえ。向き合っていると、思い込んでしまっていた
まふゆの父:だからこそ……宵崎さんから見た妻は、 冷たく映ったかもしれません
まふゆの父:けれど——彼女は、まふゆのために病院へ向かったあの頃から 変わっていないと思います
奏:…………。 あの——
奏:まふゆのお母さんは……今、どうしてますか?
まふゆの父:……あれから、部屋にいます。 明かりも点けず、ずっとひとりで
奏:え……
まふゆの父:きっと……ひとりで、まふゆのことを考えているんだと思います
まふゆの父:私も、妻も——どうしたらいいのか、何が正しいのか、 まだわかっていませんが……
奏:…………
まふゆの父:……すみません、 あまり参考にならなかったかもしれませんね
奏:いえ、そんなこと……
奏:いろいろ聞かせてもらえて…… ありがとうございます
まふゆの父:いえ、こちらこそ
まふゆの父:ご迷惑をおかけしますが—— まふゆを、よろしくお願いします
奏:はい
第 4 话:変わらない想い
朝比奈家 リビング
まふゆの母:…………
まふゆの父:——ただいま
まふゆの父:遅くなってしまってすまない。 今日は鍋にしよう、材料は買ってきたから あとで準備するよ
まふゆの父:できるだけ君の作ってくれた鍋に近づけたいけど、 さすがに私だと難しいかな。はは……
まふゆの母:…………
まふゆの父:……そうだ。 今日、偶然宵崎さんに会ったんだ
まふゆの父:相変わらず、まふゆのことを気にかけてくれていたよ
まふゆの父:今はまふゆのために、曲を作っているそうだ
まふゆの母:…………
まふゆの父:……まふゆが小さい頃、風邪を引いて 君がりんごを剥いてくれたという話をしていた
まふゆの母:…………!
まふゆの母:まふゆが……
まふゆの父:ああ。君が看病してくれたことが嬉しかった、 心があたたかくなった、と感じたそうだ
まふゆの父:それを、小さい頃から今の今まで、 ずっと大切に覚えている——
まふゆの父:そう、宵崎さんは言っていたよ
まふゆの母:…………っ
まふゆの父:……まふゆには、良い友人がいるな。 まふゆのことを心から大切にしてくれて——
まふゆの父:悩んで、迷った時……一緒に道を探してくれるような友人が
まふゆの父:——私も、まふゆの心に寄り添っていきたい
まふゆの父:あの子が、私達の前で心から笑ってくれるように
まふゆの母:………………
まふゆの母:……でも……
まふゆの父:え……?
まふゆの母:本当に、まふゆが……医者になりたいわけじゃないのなら
まふゆの母:私のやり方は………………間違っていたのかもしれないわ
まふゆの母:だけど…………
まふゆの母:……だけど……!
まふゆの母:それなら——宵崎さんが正しいの?
まふゆの母:まふゆは宵崎さんと出会って、あんなに変わったのに……
まふゆの母:予備校をサボったり、成績が悪くなったことを隠したり—— あんなこと、前はしなかった……!
まふゆの母:それに……
まふゆの母:それに…………っ
まふゆの父:……すまない。 君を否定しているわけじゃないんだ
まふゆの父:そう聞こえてしまっていたら……本当に申し訳ない
まふゆの母:…………っ
まふゆの父:まふゆは、確かに変わった。 私も……最初知った時は驚いた
まふゆの父:だが、私は……まふゆと話していて、 根本的なところは変わっていないと思ったよ
まふゆの父:とても優しくて—— 自分が辛い時でも、誰かを思いやることができる
まふゆの父:私達がよく知っている、まふゆのままだ
まふゆの父:……なあ、覚えているか? まふゆが産まれた時のことを
まふゆの母:……え……
まふゆの父:1月の、とても寒い日だったな。 予定よりもお産が長引いて、すごく不安だったが——
まふゆの父:産まれてきたまふゆは、とても小さくて……
まふゆの父:触れると、小さな手で、私の指を握り返してくれた
まふゆの父:そのあたたかさを感じた時——
まふゆの父:君の腕の中で眠っているこの子を 守っていかなければ……と、そう思ったんだ
まふゆの母:…………
まふゆの父:君も、言っていたな
まふゆの父:とても小さくて、愛らしくて、あたたかい
まふゆの父:この日の感動と、小さな体温を忘れないように “まふゆ”と名付けよう、と——
まふゆの母:…………っ
まふゆの父:あれから、まふゆはすくすく育ってくれた。 とても優しく、人を思いやれるいい子に
まふゆの父:そんなまふゆを、幸せにしたい…… 一緒に、そう話していたな
まふゆの母:…………そうね……
まふゆの母:……まふゆが、笑ってくれるだけで幸せだった
まふゆの母:まふゆの笑顔を、絶対に守りたい ……そう思ってたわ
まふゆの母:今も、気持ちは変わらないはずなのに……
まふゆの母:……どうして……
まふゆの母:まふゆ……
まふゆの母:まふゆと、話したい……っ
まふゆの父:…………
まふゆの父:……大丈夫、大丈夫だ
奏の部屋
奏:——よし
奏:作ろう。 ……まふゆを救うために
第 5 话:焦燥
奏:——違う、この音じゃない……
奏:朝比奈さんは……まふゆのお母さんを『愛情深い』って言ってた
奏:まふゆが、りんごの思い出にあたたかさを感じてるのは 多分、それが『愛情』だから
奏:もっと、それを感じられるような音にしなきゃ——
奏:もう1回、最初から作ろう
奏:…………どうかな
まふゆ:……いい曲、だと思う
奏:そっか……
奏:……ありがとう、まふゆ
奏:また、作ってみるよ
まふゆ:…………うん
奏:(……まふゆのお母さんをイメージすると、 どうしても冷たい音になる)
奏:(だから、わたしのお母さんの“あたたかさ”を 落とし込んでみたけど——)
奏:(……やっぱり、まふゆの感じた“あたたかさ”とは違う)
奏:(わたしの経験じゃ駄目なんだ。 まふゆのイメージに近づけないと——)
奏:……また駄目だ
奏:これじゃ、今まで作ってきたのと変わらない……
奏:(どうすればいい?)
奏:(どうすれば、まふゆが感じた “お母さんの愛情”が表現できる?)
奏:(ただメロやコードを変えればいいわけじゃない)
奏:(もっと、根本的なところが足りてない……?)
奏:(……わからない。でも……)
奏:……次……
奏:次の曲……作らなきゃ……
数日後
奏:…………違う……!
奏:(デモの時は、方向性は合ってるかもと思ったけど 音を足せば足すだけ遠のいていく)
奏:(どんな音だったら、あたたかさが出るんだろう。 オンコードを使いすぎた? 構成を変えて——)
奏:(いや——そもそも、この曲自体だめなのかもしれない)
奏:(ここからどう動かしても、よくなる気がしない)
奏:……っ、次
奏:次は必ず——
奏:………………っ
奏:こんなところで止まってられない
奏:作らなきゃ——
まふゆ:……奏、少しは食べないと
奏:…………うん、そうだね
奏:落ち着いたら食べるよ
まふゆ:…………
数日後
まふゆの父:——よし、それじゃあお父さんはそろそろ帰るよ
まふゆの父:暖かくなってきたが、体調には気をつけるんだぞ
まふゆ:……わかった
まふゆの父:ええと、宵崎さんは—— 向こうで曲を作っているんだったか
まふゆ:…………
まふゆの父:帰る前に、声だけかけさせてもらおう
まふゆの父:——宵崎さん、そろそろ失礼します。 お邪魔しました
まふゆの父:……っ! だ、大丈夫ですか?
まふゆの父:宵崎さん……!?
奏:……すみません、同席できなくて
奏:気を付けて帰ってください
まふゆの父:え、ええ……
まふゆの父:あの……大丈夫ですか? 顔色があまりよくなさそうですが……
奏:……大丈夫です。 少し、寝不足気味なだけなので……
まふゆの父:——それなら、少し休みましょう。 まふゆ、宵崎さんをベッドへ連れて行ってくれるか?
まふゆ:……わかった
奏:え? でも……
まふゆの父:疲れが溜まっているようなので、今日はゆっくり休んでください
奏:……はい……
奏:(やっぱり……目が冴えて眠れそうにない)
奏:(……さっき作ってた曲のイメージ……忘れないようにしなきゃ)
奏:(最初はマイナーキーにしてみて…… メジャーコードに切り替えて、それから——)
リン:『……奏?』
奏:…………これも、違う
リン:『……!』
奏:…………何回作っても、近づけない……
奏:どの音が正しい? 中低音が足りてない? 試してないコードは……
奏:考えろ。考えるんだ
奏:次の曲は————
リン:(奏……)
第 6 话:極限の果てに
25時
寝室
まふゆ:…………
絵名:『……よし、出来た……』
瑞希:『お、頼んでた素材上がった?』
絵名:『うん、思ったより時間かかっちゃったけど。 今送るね』
瑞希:『ありがと~!』
瑞希:『……うん、良い感じ! これで進めるね!』
絵名:『はーい。……じゃ、ちょっと休憩っと』
瑞希:『お疲れさま~♪ えななんには、作ってもらいたい素材いーっぱいあるから 休憩後もよろしくねー』
絵名:『はあ……。まあ、Kがまだ動けないっぽいし とことんクオリティ上げてもいいけどね』
絵名:『ていうか、K……。 雪のための曲を作るからって ログインしてないみたいだけど……大丈夫なの?』
瑞希:『最近ずっとだもんね……。 Kのことだし、休んでなさそうでちょっと心配だな』
瑞希:『まあ、雪が一緒にいるから ごはんとかは食べてるだろうし——』
まふゆ:『……わからない』
絵名・瑞希:『えっ?』
まふゆ:『作業の合間に食べてるみたいだけど…… 本当に、少しだけだから』
瑞希:『少しだけって……それ、大丈夫なの?』
絵名:『いや、そんなの倒れちゃうでしょ! 雪からちゃんと食べるように言ってあげてよ』
まふゆ:『……言ってる、けど……』
まふゆ:『私が何を言っても、聞こえてないみたい』
絵名:『え……?』
まふゆ:『ずっと、この曲じゃダメだ、って——』
絵名:『…………』
瑞希:『…………そんなに、行き詰まってるんだ』
まふゆ:『あ……リン』
絵名:『どうしたの? 何かあった?』
リン:『……奏の様子が気になって、見に来たの』
リン:『今日も、ずっと休まないで作ってるみたい』
瑞希:『そうなんだ……』
絵名:『でも……なんで急に? 今までもスランプになったことはあったけど、 こんなに詰まってることなんて、最近は……』
リン:『……奏、イメージがわかないって言ってた』
絵名:『え?』
瑞希:『リン、それってどういう——』
まふゆ:『…………!』
絵名:『え、今雪のほうからすごい音しなかった!?』
瑞希:『なになに、どうしたの!?』
まふゆ:『……ちょっと見てくる』
奏:——どの音なら……
奏:まふゆが感じた、あたたかさを表現できるんだろう
奏:この、音かな……
奏:……ああ、だめだ
奏:また……駄目だった……
奏:…………探さなきゃ……
奏:まふゆを救えるような音を……
奏:じゃないと、まふゆは——
???:……おかあさん……
奏:え……
奏:あの声、どこかで……
???:……おかあさん、どこ……?
???:全然、見つからないよ……
奏:泣いてる……?
奏:——ねえ、大丈夫? お母さんって……
まふゆ:……お母さん……
奏:————!!
まふゆの母:——まふゆ、どこへ行っていたの?
まふゆの母:お母さんから離れちゃだめでしょう?
まふゆ:……うん、ごめんなさい
まふゆの母:さあ、行きましょう。 お母さんと一緒に
まふゆの母:——大丈夫よ。 お母さんと一緒にいれば、まふゆは幸せになれるわ
まふゆの母:だって私は……まふゆの親なんだから
奏:あ……
まふゆ:……うん……
奏:だめだよ、まふゆ……!
奏:そっちに行ったらだめ——!
奏:まふゆ!
???:『——奏!』
リン:『奏、大丈夫……!?』
リン:『わたしの声、聞こえる!?』
奏:……っぅ、……
奏:あ……れ? なんで……体、動かな……
まふゆ:……奏、動かないで
奏:っ、でも……
絵名の声:『奏、無理しちゃ駄目!』
奏:え……?
まふゆ:……スマホで、絵名と瑞希に繋いでる
瑞希:『奏、大丈夫? 落ち着くまで、無理に体動かさないで』
瑞希:『……まふゆも心配してたよ。 ご飯も全然食べてないみたいだって』
奏:あ……
奏:……ごめん。心配かけて
まふゆ:……別に、謝ることじゃない
まふゆ:奏は、私のために作ってくれてるんだから
まふゆ:でも……
まふゆ:…………あまり、無理はしないで
奏:あ……
まふゆ:……奏、吐き気とかはない?
奏:うん、大丈夫。 ……少しくらくらするくらいで
まふゆ:じゃあ、少しでも何か食べたほうがいいと思う
絵名:『あ、それいいと思う。 おかゆとかなら食べられるんじゃない?』
奏:そうだね、それくらいなら……
まふゆ:それなら、作ってくるね
奏:え、だ、大丈夫だよ。わたしが——
絵名:『奏は休んでて』
奏:う……
瑞希:『そうだね。今は休むのが先だよ』
奏:……ごめん。じゃあ、お願いできるかな
まふゆ:うん、行ってくる
瑞希:『……ねえ、奏』
瑞希:『そのあいだに、少しだけ話さない?』
奏:え……
第 7 话:前に進むため
数分後
奏:はあ……
リン:『奏、落ち着いた?』
奏:……うん、ありがとう
瑞希:『よかった~! いやあ、びっくりしたよね。 作業してたら、急にでっかい音するんだもん』
絵名:『奏が倒れたって聞いた時、心臓がぎゅってなったんだから』
奏:う……ご、ごめん……
瑞希:『——さっき、リンとまふゆから聞いたよ』
瑞希:『奏が、曲を作れてないみたいだって』
奏:あ……
瑞希:『ボク達じゃ、作曲のことで いいアドバイスはできないかもだけど……』
瑞希:『何か悩んでることがあるのなら、話してくれたら嬉しいなって』
絵名:『……うん。話すだけでも、頭がスッキリして いいアイディア浮かんでくるかもだしね』
奏:…………
奏:……そうだね
奏:……どうしても、表現できないんだ
奏:まふゆが感じた“あたたかさ”を
絵名:『表現できない、か……』
絵名:『それって、どのあたりでそう感じるの?』
奏:えっと……あの話を聞いたあとで、 まふゆのお父さんと話して思ったんだ
奏:まふゆが、りんごの思い出に感じてた“あたたかさ”は ……お母さんの愛情だったんじゃないかって
奏:……だから、その愛情を 曲に落とし込もうとしてたんだけど……うまくいかなくて
絵名:『……そうなんだ……』
瑞希:『でも、なんだか意外だな。 奏だったら、そういうのはうまく曲に落とし込めそうだけど』
奏:…………
リン:『……奏。何か、心当たりがあるの?』
奏:……さっき、夢を見たんだ
奏:まふゆを、まふゆのお母さんがどこかに連れて行こうとする夢
瑞希:『え……』
奏:……それで、なんとなくわかったの
奏:曲を作れないのは…… わたしが、あの人のことを信じきれてないからだって
絵名:『信じきれてない……?』
奏:……うん……
奏:まふゆの思い出と、 まふゆのお父さんの話の中のあの人は ……すごく、愛情深い人なんだって思った
奏:でも——
奏:曲を作ってると、どうしても…… 会って話した時の、あの冷たい感覚がよぎるんだ
リン:『あ……』
奏:それが、まふゆ達から聞いたあたたかさのイメージを 邪魔してたんだと思う
奏:だから……ずっと、うまくいかなかったんだ
奏:まふゆ達の中のあの人と、わたしが話したあの人じゃ どうしてもイメージが重ならなくて……
絵名:『…………』
絵名:『……奏がそう思っちゃう気持ち、なんとなくわかるよ』
絵名:『私は奏と違って、電話で話したことがあるくらいだけど…… まふゆの話を聞いて、何度も“信じられない!”って思ったし』
瑞希:『……特に、奏はまふゆを守ろうって頑張ってたしね』
瑞希:『だから余計に、そういう想いが残っちゃってるのかも』
奏:…………
絵名:『……でもさ、よく考えたら——』
絵名:『イメージが重ならないっていうのは、当たり前じゃない?』
奏:え……?
絵名:『ほら、自分が見てるものと 他人が見てるものって違うわけだし』
絵名:『ちょっと話を聞いただけじゃ、 そのイメージを完璧に理解するのって難しいんじゃないかなって』
絵名:『……私だったらそうだなって、今思ったの』
瑞希:『まあ、そうかもね……。 特に今回は、家族の話だし』
瑞希:『なんていうか……家族の前でしか見せない顔? みたいなのもあるのかなーって』
瑞希:『そういうのは、ボク達にはわかんないよね。 悪いところも、いいところもさ』
奏:……そう、だね……
奏:(……絵名達の言う通りだ)
奏:(まふゆとわたしのイメージを、完全に重ねるのは難しい)
奏:(だけど、イメージが重ならない限り きっとわたしは……永遠に作れない)
奏:(…………本当に、重なるのかな)
奏:(だって——)
絵名:『……ねえ、奏』
絵名:『やっぱり……奏が、自分の目で確かめるしかないんじゃない?』
奏:え?
絵名:『私だったら——って話なんだけど、 やっぱり自分の中に落とし込まないと、 納得いくものは作れないんじゃないかって思うの』
絵名:『自分の目で見て、確かめて—— 掴んだイメージを落とし込むほうがいいんじゃないかって』
奏:あ……
絵名:『それで、あの人の印象がまふゆと重なるかはわからないし ……もしかしたら、遠くなっちゃうかもしれないけど』
絵名:『知らないと、今より前に進めないんじゃないかって思うんだ』
奏:…………そうだよね
奏:わたし……まふゆのお母さんのことを 必要以上に知りたいと思わなかった
奏:わかりあえないし、わからなくてもいい、って…… 思ってたから
奏:でも……
奏:きっと、それじゃだめなんだ
奏:わたしは、自分が知らないものは作れない。 ――自分の中にない想いを、音にはできない
奏:ずっと……今まで、そうだったから
絵名:『奏……』
奏:だから——まふゆのお母さんのことを もっと知ってみようと思う
リン:『……奏、もう苦しそうな顔じゃないね』
奏:うん……。 リンも、心配かけてごめん
リン:『ううん。——頑張って』
奏:ありがとう
奏:じゃあ、今からまふゆのお母さんに連絡して——
絵名:『は!? ちょっと、今からはさすがにまずいでしょ! ていうか休んでってば!!』
奏:あ、そっか……。 でも寝るのももったいないし、 せめて手は動かしたいな……
絵名:『まふゆ、いる!? 早く奏を寝かせて~!』
まふゆ:……なに?
奏:あ、まふゆ……
まふゆ:……何か絵名が叫んでたけど
絵名:『奏がまだ曲作ろうとしてんの! 今日はゆっくり寝かせて!!』
まふゆ:…………!
まふゆ:……奏、本当なの?
奏:え、あ……
まふゆ:…………無理しないで、って言ったよね
奏:ご、ごめん。 今日はちゃんと寝るよ
奏:……まふゆ、ごめんね
まふゆ:……何が?
奏:ちゃんと、作れなくて
奏:もっと、知ろうと思う
奏:まふゆと、まふゆのお母さんのことを
奏:そうしたら……“あたたかさ”を掴めたら、 きっと作れるから
奏:だから……もう少しだけ、待っててほしい
まふゆ:……奏……
まふゆ:…………
まふゆ:——私も……
奏:え?
まふゆ:……私も、知りたい
まふゆ:……怖いけど、それでも……
まふゆ:私の思ってることが、本当なのか、どうか
奏:まふゆ……
奏:——うん。一緒に、確かめよう
第 8 话:決意
住宅街
まふゆの父:…………
まふゆの父:(……宵崎さんは、本当に、まふゆに良くしてくれている)
まふゆの父:(家に住まわせてくれているだけではなく、 まふゆを笑顔にできるようにと、あれ程まで……)
まふゆの父:(……まふゆも最近、少しずつ話をしてくれるようになった)
まふゆの父:(少しずつでも……)
まふゆの父:(ふたりが歩み寄る機会を、作れないだろうか)
朝比奈家 リビング
まふゆの父:——ただい……
まふゆの父:あれ、今日は……
まふゆの母:…………おかえりなさい
まふゆの父:……ただいま
まふゆの父:何をしているんだ? 編み物か?
まふゆの母:ええ
まふゆの母:……小さい頃のアルバムを見ていたの
まふゆの母:それで、まふゆは昔、とても寒がりだったことを思い出して……
まふゆの母:——私が今、まふゆのためにしてあげられることは 少ないから
まふゆの父:そうか……
まふゆの父:……暖かそうなマフラーだ。 きっと、まふゆも喜ぶだろう
まふゆの母:…………
まふゆの父:……なあ、提案なんだが——
数日後
宵崎家 キッチン
奏:……もうすぐ、まふゆのお父さんが来る時間だね
まふゆ:……そうだね……
奏:……まふゆ、大丈夫?
まふゆ:——うん。もう、決めたから
まふゆ:お母さんと話せないか……相談してみる
奏:……わかった
奏:(まふゆは……決めたんだ)
奏:(それなら、わたしも進まないと)
奏:(まふゆのお母さんのことを、もっと知るために——)
奏:はい、今行きます……!
まふゆの父:——うん、今日も元気そうでよかった。 何か変わったことはなかったか?
まふゆ:……大丈夫
まふゆの父:そうか
まふゆの父:——そうだ、まふゆに渡したいものがあるんだ
まふゆ:え……?
まふゆの父:お母さんからだ
まふゆ:お母さん……
まふゆ:これ……マフラー?
まふゆの父:……ああ
まふゆの父:まだ急に寒さがぶり返す日もあるから 風邪を引かないように、と
まふゆ:…………
まふゆ:————ありがとう
まふゆの父:それで……今日は、提案したいことがあるんだ
まふゆ:……なに?
まふゆの父:——お母さんと、話してみないか?
まふゆの父:宵崎さんのおかげで、 まふゆも以前より落ち着いてきたんじゃないかと思う
まふゆの父:それに——お母さんも、冷静に話せるようになった
まふゆ:……!
まふゆの父:だから……まふゆがよければ、 もう一度、話し合わないか?
まふゆの父:もちろん、無理にとは言わないし、 今日、答えを出さなくてもいい
まふゆの父:まふゆが話したいと思ったタイミングでいいから——
まふゆ:…………
まふゆ:(お母さん、と……)
まふゆの母:……ふふっ。今日のまふゆは甘えん坊さんね
まふゆの母:ほら、ねーんね……。 まふゆは、いいこ……
まふゆの母:でも、まふゆはきっとわかってくれるでしょう?
まふゆの母:まふゆは本当はいい子で 優しい子だって、お母さんは信じているもの
まふゆ:(……やっぱりまだ、怖い……)
まふゆ:(……っ、でも……)
まふゆ:(…………私も、進まなきゃ)
まふゆ:(奏が——ここまでして、知ろうとしてるんだから)
まふゆ:(私も——)
まふゆ:————わかった
まふゆの父:…………!
まふゆの父:本当か……?
まふゆ:……うん
まふゆ:私も、お母さんと話したいと思ってたから
まふゆの父:そうか……
まふゆの父:……ありがとう
まふゆ:……奏
奏:え?
まふゆ:……一緒に、いてほしい
まふゆ:お母さんと話す時、奏にも
奏:わたしも……?
奏:えっと、わたしは大丈夫だけど……
奏:……ご迷惑じゃ、ないですか?
まふゆの父:いえ――ぜひ、お願いします
まふゆの父:まふゆも、そのほうが安心すると思いますし——
まふゆの父:ずっと、まふゆのことを見てくださっていたので、 同席していただけるとありがたいなと
奏:あ……
奏:……わかりました。 こちらこそ、よろしくお願いします
まふゆ:奏……
奏:……大丈夫だよ
奏:まふゆの気持ちを、聞いてもらおう
まふゆ:……うん
奏:(……まふゆにとって、大事な話し合いだし—— 近くで支えたい)
奏:(それに……思ってたのと違う形だけど、 まふゆのお母さんのことを知れる機会かもしれない)
奏:(——わたしが、できることをやろう)
奏:(まふゆを救うために——)