活动剧情

Unsteady, still steady step

活动ID:173

第 1 话:嬉しい知らせ

昼休み
宮益坂女子学園 中庭
咲希:——このページ、ほなちゃんが写ってる! キリってしててかっこいい〜
一歌:演奏してる時の写真だね。 ……あ、紹介文もあるよ
一歌:『今注目のバンド、Leo/needを引っ張るリーダー。 メンバーからの信頼は厚く』……
穂波:ちょ、ちょっと恥ずかしいな……
一歌:そう? 穂波にぴったりだと思うけど
志歩:……咲希も一歌も、なんかテンション高くない? 雑誌に載ることなんて、今までもあったでしょ
咲希:そうだけど〜。 やっぱり今回は特別だよ! だって——
咲希:Leo/needが、表紙デビューしちゃったんだよ!?
一歌:今までも、小さいコーナーの取材とか特集はあったけど…… やっぱり表紙ってなると特別な感じがするね
穂波:そういえば……一歌ちゃん、2冊くらい買ってなかった?
一歌:あ、うん。家族で読む用と、保存用にと思って
志歩:保存用? 一歌ってそういうタイプだっけ
一歌:……今回、バーチャル・シンガーの特集もやってるんだ
一歌:ミクと一緒の雑誌に載れたのが嬉しくて、つい
志歩:なるほど。一歌らしいな
穂波:ふふ、そうだね
穂波:ミクちゃんっていえば…… たしか、雑誌にファンフェスタの情報も載ってたね
咲希:あ、前にいっちゃん達も出てたやつだよね!
一歌:うん。今年は出ないけど、見に行くつもりだよ
志歩:一歌はそういうところ、アクティブだよね。 今度もミクのライブにも行くんでしょ?
一歌:そうなんだ。 ファンフェスタよりは小さいライブなんだけど、楽しみで——
一歌:あ、予鈴……。 そろそろ戻らないとだね
志歩:じゃ、またあとで。 放課後はそのまま事務所に行くんだよね?
穂波:うん。真堂さんから、大事な話があるんだって
咲希:もしかして、次に出るフェスが決まったとかかな? それとも、また雑誌の表紙が決まったとか!
志歩:そんなにポンポン表紙飾れるわけないでしょ
咲希:え〜、わかんないよ!? アタシ達、『今注目のバンド』だし♪
志歩:はいはい
穂波:まだわからないけど、いい話だったらいいよね
数時間後
ソリス・レコード事務所
穂波:——真堂さん、今、なんて……
真堂:驚くのも無理はないですね
真堂:では、改めてもう一度言います
真堂:——皆さんの、ワンマンライブが決まりました
一歌:わ…………
咲希:ワンマンライブ……!
真堂:ええ。 元々、ワンマンの計画自体は動いていたんですが——
真堂:前々から交渉していたハコに ようやく空きが出まして。 これで、開催に踏み切れるなと
志歩:……ちなみに、そのハコってどこなんですか?
真堂:——『TONE BASEシブヤ』です
穂波:それって、有名なバンドとかが よくツアーをやったりする、あの……?
真堂:はい。音楽関係者だけでなく、 一般層にもかなり知名度の高いハコですね
真堂:収容人数は、スタンディングで1500人—— 今の皆さんには、うってつけだと思います
一歌:1500……
真堂:ライブまでの準備期間は、およそ2カ月
真堂:少しタイトなスケジュールにはなってしまいましたが、 TONE BASEでワンマンを成功させたとなれば バンドとしての箔がつく
真堂:俺達も、全力でサポートします。 なので——必ず、成功させましょう
みんな:『——はい!』
穂波:(……すごいな。 雑誌の表紙だけじゃなくて、ワンマンまで……)
穂波:(——忙しくなるだろうけど、精一杯頑張ろう。 たくさんの人に、わたし達の音楽を届けるために)

第 2 话:おめでとうパーティー

数日後
教室のセカイ
リン:いっちー達、ちゃんとジュース持った? いっくよ〜☆
リン:Leo/needワンマンライブ開催決定、おめでと〜!!
みんな:『おめでとう!』
咲希:いえ〜い! みんな、ありがとー!
志歩:急にセカイに来てって言うから、何かと思ったら……
リン:えへへ、サプライズ大成功〜!
ルカ:よかったわね、リン。 みんなに気付かれないように準備して 驚かせるんだって、張り切ってたもの
レン:まあ、一番挙動不審だったのもリンだけどな
リン:え〜、そんなことないって! お楽しみ委員として、ちゃーんとクールに振る舞ってたよ!
ミク:そうだったっけ
リン:とにかく——今日のパーティーは あたしがめちゃ盛り上げちゃうよ〜♪
リン:ここからの進行も、リンにおまかせ! みんな、思いっきり楽しんでいってね♪
リン:じゃあ早速—— カイト兄とレンのセッションから、いってみよー!
1時間後
リン:いえーい! 楽器シャッフルバンド、2組目は…… ほなっち、いっちー、めーこ姉でした〜
穂波:や、やっぱりキーボードって難しいね……。 全然ついていけなかったな
一歌:私も……ドラムって手と足を 両方動かさないといけないから……
MEIKO:あはは。けど、慣れない楽器でも 音を出すだけで気持ちいいよね
志歩:メイコさんはさすが、余裕そうでしたね
咲希:そうだ! 次のワンマンのMCで、 こういうのやるのはどうかな?
ミク:MCで?
咲希:うん! お楽しみコーナーって感じで、 楽器を交換してちょっとだけ弾いてみるの!
穂波:たしかに、面白そうだね
志歩:でも、トークとかで盛り上げないと、 下手な演奏を聴かせるだけになるんじゃない? それは避けたいな
一歌:そうだね……。 やるとしても、ワンフレーズだけにするとか?
KAITO:……みんな、もうライブのことで頭がいっぱいみたいだね
志歩:あ……すみません。 せっかくパーティーやってもらってるのに
リン:もー! そんなの気にしなくていーのっ! みんなが楽しそうにしてたら、パーティーは大成功なんだから!
MEIKO:あはは、そうだね。 それに——
MEIKO:ワンマンまで、あと2カ月しかないんでしょ? 今のうちから、しっかり考えておかないとね
レン:やることも考えることも いっぱいあるから、大変そうだよな
一歌:うん。でも、穂波がスケジュールアプリで 予定を組んでくれたから、 なんとかなりそうなんだ——ほら
リン:わ、すごーい!
ルカ:セトリの相談や、練習のスケジュール…… かなり細かいところまで書いてあるわね
一歌:うん。スタッフさんとの打ち合わせ日とか、 それまでに用意しておくことも全部入ってて…… 見せてもらった時はびっくりしたな
穂波:プロになってから初めてのワンマンだし、 予定通りに進まないこともあるかもしれないけど……
穂波:みんなで、成功させたいもんね。 少しでも役に立ったら嬉しいな
リン:——あ! ここ、新曲のスケジュールもある!
志歩:うん。プロになって初めてのワンマンだし、 やっぱり新曲は出したいなって話になってさ
一歌:お客さんにとっても、私達にとっても 思い出に残るライブにしたいしね
ミク:でも新曲まで作るってなると、ますます忙しくなりそうだね
MEIKO:私達にできることがあれば、なんでも言ってよ。 力になるからさ
リン:はいはーい! あたしも、いっぱいお手伝いしちゃうよ!
穂波:ありがとう、みんな
志歩:考えることはたくさんあるけど、 ひとつひとつ、丁寧にやっていこうと思う
志歩:パフォーマンスでも、音楽でも 今までで最高のものを見せられるように
咲希:うん!
穂波:(みんな、すごく張り切ってるな)
穂波:(……プロとして、初めてのワンマンだもんね)
穂波:(わたしも、できることはなんでもやろう)
穂波:(このワンマンを、成功させるために——!)
穂波:(メッセージ? 誰から……)
穂波:あ……
一歌:穂波、どうしたの?
穂波:えっと……真堂さんから連絡がきたの
穂波:急ぎの相談があるから、 明日みんなで事務所に来てほしいって
咲希:なんだろう……。 も、もしかして、ワンマンのことで何かあったとか……!?
志歩:……たしかに、タイミング的にはその可能性が高いよね
穂波:詳しくはわからないけど…… トラブルなら、電話とかで前もって内容を 伝えてくれると思うんだ
穂波:とにかく明日、話を聞いてみよう
一歌:うん……そうだね
リン:よーし、じゃあじゃあ パーティーの続きやっちゃおーう!
志歩:え、まだ出し物あったの?
リン:とーぜん! まだまだ半分くらいだよ!
リン:次は、レンと考えた ババ抜きのアレンジで——
穂波:(けど、本当に……なんの話なんだろう?)

第 3 话:新たな知らせ

翌日
ソリス・レコード事務所
穂波:書き下ろし楽曲の依頼、ですか……!?
一歌:し、しかも……
一歌:バーチャル・シンガーファンフェスタから……!?
真堂:そうです。 ……やはり、このフェスのことはご存じのようですね
一歌:は、はい。ミクが好きなので、毎年見てて……
真堂:なるほど、そうでしたか。 それなら話は早い
真堂:今回は、そのファンフェスタの メインステージで披露される楽曲の依頼なんです
咲希:メインステージ……? それって、いっちゃんが出てたやつとは違うんだっけ
一歌:う、うん……
真堂:では、そのあたりも含めて 順を追って説明しましょうか
真堂:まずファンフェスタには、 誰でも参加可能なアマチュアステージと、 バーチャル・シンガーが歌うメインステージがあります
真堂:メインステージでは、 クリエイターが作った様々な曲を バーチャル・シンガーが歌います
志歩:あ、配信で見たことあるかも……。 いつもすごい盛り上がりですよね
真堂:バーチャル・シンガーの人気は、凄まじいですからね
真堂:——通常、メインステージでは ヒットした既存楽曲が歌われることがほとんどです
真堂:ただし、それとは別に…… 毎回、若手クリエイターのピックアップ企画が設けられています
穂波:ピックアップ企画……
一歌:それって……フレッシュ枠のことですか?
真堂:ええ。さすが、よく知っていますね
真堂:フレッシュ枠は、簡単に言えば 若いクリエイターにスポットを当てて、 その才能をみんなに知ってもらおうという企画です
真堂:勢いのある若手クリエイター3組を選定して、 彼らの書き下ろし楽曲をバーチャル・シンガー達に 披露してもらうんです
穂波:あ……わたし達にきた話って、もしかして……
真堂:はい。そのフレッシュ枠です。 3組のうちの1組に、Leo/needはどうかと
志歩:たしかに……私達のデビュー曲は、 バーチャル・シンガーバージョンのほうで話題になったしね
一歌:そっか……! じゃあこの話も、ミク達のおかげだね……
真堂:ただ……非常にイレギュラーな話なので 今回はそこを踏まえて、 受けるかどうかを皆さんに考えてもらいたいと思っています
穂波:イレギュラー、っていうと……?
真堂:まず、先方の都合で 納期までのスケジュールが非常にタイトになっています
真堂:というのも—— 実は、フレッシュ枠はかなり前に選定が完了して、 楽曲の依頼も済んでいたそうです
真堂:しかし、しばらくして…… そのうちの1組のクリエイターが、 体調不良で書き下ろしが難しくなってしまった
一歌:え……
真堂:それで、代わりのクリエイターを探して Leo/needに白羽の矢が立ったというわけです
穂波:そう、だったんですね……
真堂:先方から提示されている締め切りは、2カ月後です
一歌:2カ月? それって……
志歩:……ちょうど、ワンマンの新曲作りと被ってる
真堂:もちろん、事情が事情なので無理にお願いするつもりはない。 納期も短いため、ダメ元での相談ですが もしご検討いただけるなら、と
真堂:少しでも締め切りを延ばせないかの交渉はしていますが…… 先方も、なかなか厳しい状況らしくて
真堂:そもそも無理なお願いではあるので、 もしLeo/needが難しい場合は 書き下ろしは2組で進めようとしているそうです
真堂:ですから今日は、そのあたりも踏まえて ご相談できればと思いまして
穂波:じゃあ、つまり——
穂波:わたし達は、ワンマンとファンフェスタ、 どちらに曲を書き下ろすか 決めないといけない、ということですよね……
真堂:はい
咲希:で、でも……それって、どっちもできないのかな!?
咲希:ほら、作曲はアタシといっちゃんができるし、 1曲ずつ作れれば……
一歌:……どうかな
一歌:ワンマンでもファンフェスタでもきっと 私と咲希で作った、Leo/needの曲が求められてると思うんだ
一歌:私は、ひとりでLeo/needの曲を作ったことは ほとんどないし……自分ひとりで作った曲を 今のLeo/needの曲として出すのは、やっぱり違うと思う
志歩:……そうだね
穂波:それじゃあ、やっぱり選ばなくちゃいけないんだね
真堂:——プロ初のワンマンで新曲を披露するというのは、 バンドにとって大きなプラスがあります
真堂:新曲を披露すれば、話題性が跳ね上がる。 何より、ファンの期待にも応えられます
真堂:しかし一方で—— ファンフェスタに曲を書き下ろすメリットも大きい
一歌:……そうですね
一歌:メインステージは配信もあるし、 公式SNSで宣伝もしてもらえるので
穂波:うん……。 わたし達の音楽を、たくさんの人に届けるチャンスなんだよね
真堂:もちろん、 マネジメント側でどちらを選ぶか決めることも可能です
真堂:ただ、俺としては……今回の件は、 皆さん自身の意志で決めたほうがいいと思っています
真堂:何よりこれは、『バンドとしてどうしたいか』という 指針の話になってきますから
穂波:(バンドとしての指針、か……)
穂波:——わかりました。 みんなで話し合ってみようと思います
穂波:少し、お時間をいただけますか?
真堂:もちろんです。 本来なら、納得できるまでゆっくりと—— と言いたいところですが……
真堂:スケジュールの問題で、 待てるのは1週間が限界です
穂波:そうですか……。 では、それまでに意見をまとめてきます
真堂:ありがとうございます。 忙しい時期に、本当に申し訳ない
真堂:ただ、たとえどちらを選んだとしても、 皆さんにとってマイナスになることはありません
真堂:ですから、あくまでフラットに。 今の自分達はどうしたいかというところを 考えてもらえたらと思います
穂波:はい。わかりました
数十分後
スクランブル交差点
咲希:どっちに曲を書き下ろすか、かあ……
志歩:……すぐに答えが出るようなものじゃないよね。 考えないといけないことも多そうだし
一歌:うん……
穂波:……もう少し、考えをまとめてから 話し合ったほうがよさそうだね
穂波:今日はこのまま解散して、明日の練習終わりに 改めて話し合いの時間をとるのはどうかな?
一歌:……わかった。それまで考えてみるね
咲希:アタシも!
穂波:うん。それじゃあ……また明日

第 4 话:天秤

翌日
レッスンスタジオ
穂波:……なかなか、決まらないね
咲希:うう、やっぱり難しいよ〜〜! ワンマンか、ファンフェスタかって……
志歩:……どっちをとっても、バンドのためにはなるんだよね
志歩:新しいファンを増やすことも、 今までファンでいてくれた人達に喜んでもらうのも どっちも大事なことだし
穂波:ねえ。みんな——
穂波:もし……バンドのためっていうのを抜きにしたら、 みんなはどっちをやってみたい?
一歌:どっちをやってみたい、か……
一歌:それなら…… 私は、ちょっとだけファンフェスタに傾いてるかも
志歩:……なんとなく、そんな気はしてた
一歌:あはは……。 ずっと見てきた、憧れのステージだからっていうのもあるけど……
一歌:今までLeo/needを知らなかった人達に 私達の曲を聴いてもらえる機会って、すごく貴重だと思うから
穂波:一歌ちゃん……
咲希:でも……ファンフェスタに書き下ろすなら、 ワンマンで新曲はできないんだよね……
志歩:咲希……
咲希:あ、ごめんね! 反対してるわけじゃなくて……!
咲希:プロになって、初めてのワンマンだし。 今まで応援してくれた人達のために、 できるだけのことをしたいなって
咲希:だから……たぶんアタシは、 ワンマンのほうに新曲を出したいんだと思う
志歩:……私も、どっちかっていうと ワンマンで新曲をやりたい気持ちはあるかな
志歩:新曲をライブで初めて聴いてもらえるのも 反応を直接見れる機会も、そんなに多くないから
一歌:……そうだね
一歌:私も……ふたりがさっき言ってくれたのと 同じ気持ちがあって。 ずっとグラグラしてるんだ
志歩:……そもそも、 そんな単純に比べられるものじゃないもんね
穂波:(やっぱり……難しいな)
穂波:(でも、このまま決まらなかったら……)
穂波:(ワンマンのスケジュールも遅れてるし、 どっちに新曲を書き下ろすにしても……早く決めないと)
穂波:(本当は、もっとゆっくり時間を取って考えたいけど——)
穂波:——みんな
穂波:この話、一度わたしに任せてもらえないかな?
志歩:え?
穂波:みんなで話してて思ったけど…… バンドにとってのメリットとか、自分達の気持ちが、 今は同じくらいなんだと思う
穂波:だから——もっといろんな面を比べて、 考えたらいいんじゃないかなって
穂波:どっちを選ぶのが、よりLeo/needのためになるのか
咲希:Leo/needのため……
穂波:うん。でも、情報をひとつひとつ比べてたら きっとすごく時間がかかっちゃうから
穂波:まずはわたしが、今わかってることを比べて 考えてみようと思う
穂波:だから、そのあとで またみんなで集まって話すのはどうかな
一歌:穂波……
志歩:……でも、それだと穂波の負担にならない?
穂波:大丈夫。みんなにはセトリとか演出のことも 考えててもらいたいし……
穂波:それに……真堂さんも言ってた通り、 これはバンドとしての指針の問題だと思うから
穂波:結論は、みんなで納得いくまで話し合って 決めたいと思ってるけど—— せめて、方向性をちゃんと示せるようになりたいんだ
穂波:Leo/needの、リーダーとして
咲希:ほなちゃん~……
志歩:……わかった
志歩:穂波が考えてくれてる間、 私達はワンマンの準備を進めておくよ
一歌:うん……。 でも、無理はしないでね、穂波
一歌:何かあったら、相談してほしいな
穂波:うん、ありがとう
穂波:最後はみんなで考えて、 納得のいく答えを出せるようにしようね
穂波:(少しだけ不安はあるけど……頑張ろう)
穂波:(Leo/needにとっていい選択ができるように—— しっかり考えなくちゃ)

第 5 话:後悔しないように

穂波の部屋
真堂:『——以上が、 うちの会社に所属しているバンドのライブで行われた アンケート結果です』
穂波:『……なるほど』
穂波:『そのアンケートだと、 新曲が演奏されたライブと、そうじゃないライブの満足度に あまり差は無かったんですね』
真堂:『ええ。あくまで このバンドのライブでは、という話ではありますが』
穂波:…………
穂波:(SNSで調べるには限界があったから、 他のバンドのアンケートを共有してもらったけど——)
真堂:『……データだけでは、 なかなかわからないかもしれませんね』
穂波:『そうですね……』
穂波:『ただ……それでも、Leo/needのみんなが——』
穂波:『わたし自身が納得できる決断をするために、 ひとつひとつ、ちゃんと知らないといけないと思うので』
真堂:『……そうですか』
真堂:『また何かあれば、いつでも連絡してください。 できる限り力になります』
穂波:『はい。ありがとうございます。 それでは——』
穂波:(せっかくデータをもらったけど…… まだ、うまくイメージがわかないな)
穂波:(ワンマンか、ファンフェスタか—— もっとお客さんの声がイメージできれば、 考えやすくなるのかもしれないって思ったけど……)
???:『やっほー、ほなっち!』
穂波:え……
穂波:リンちゃん……メイコさんも
穂波:こんばんは。今日はどうしたんですか?
リン:『えへへ。ワンマンの準備はどうかなーって思って! ほら、明日はステージングの打ち合わせなんでしょ?』
MEIKO:『それにパーティーのとき、真堂さんから連絡がきたって 言ってたからさ。なんの話だったのか気になって』
穂波:あ……
リン:『ほなっち、どうかした?』
MEIKO:『……もしかして、あんまりよくない話だったとか?』
穂波:あ、いえ。悪いことがあったわけじゃないんです。 ただ——
穂波:ちょっと、いろいろ迷ってしまって
MEIKO:『なるほど。どっちに曲を書き下ろすか、か……』
穂波:はい。バンドとして いろんな話がくるのは、もちろんありがたいんですけど……
穂波:どっちを選べばいいか、悩んでしまって
MEIKO:『そっか……難しいね』
穂波:そうですね……。 それに、今のやり方でいいのかどうかも わからなくて……
リン:『あたしは、ほなっちのしてること 間違ってないと思うけどなあ』
リン:『どっちがいいかなって決めるために、 たくさん知るのってめちゃ大事だと思うもん!』
穂波:リンちゃん……
MEIKO:『……そうだね』
MEIKO:『単純に比べられないからこそ、 数字とか、どんな人に届くんだろうってことを たくさん動いて知る必要があるんじゃないかな』
穂波:たくさん動いて……
穂波:(……そう、だよね)
穂波:(イメージできないなら、たくさん動くしかない)
穂波:(どっちを選んでも、後悔しないように)
穂波:(それなら——)
穂波:——ありがとうございます、ふたりとも
穂波:悩むからこそ…… 納得いくまで、たくさん調べてみようと思います
リン:『えへへ。がんばれ、ほなっち! あたし、応援してる!』
MEIKO:『もしまた悩んじゃった時は、 いつでも相談に乗るよ』

第 6 话:動いて、知って

昼休み
宮益坂女子学園 中庭
穂波:(……あ、真堂さんから 追加でアンケートの結果がきてる。えっと——)
アンケートコメント:『初めて現地に行けただけでも嬉しいのに、 新曲まで聴けるなんて夢みたいだった』 『次は新曲って言われた時、テンション上がった!』
穂波:(こういう生の声が知れるのは、ありがたいな)
穂波:(あ、他にも送ってきてくれてる。えっと——)
咲希:ほなちゃん、お待たせ! お弁当食べよー♪
志歩:一歌は今日、委員会だっけ?
穂波:うん。お昼食べながら話し合うんだって
志歩:そっか。 ……ていうか、何見てたの?
志歩:なんか、すごく真剣だったけど
穂波:他のバンドのライブで新曲が披露された時の ファンの反応を見てたんだ
穂波:メリットとか、数字とか…… そういう情報は、だんだんわかるようになってきたんだけど
穂波:データとかじゃわからないところを、 もっとイメージできるようになりたいなって思って
志歩:もしかして……今日頼まれてたのもそういうこと?
咲希:頼まれてた?
穂波:うん。実は今、お世話になったライブハウスの人達に いろいろ話を聞きにいっててね
穂波:今日は、志歩ちゃんのバイト先の店長さんに 話を聞く予定なんだ
穂波:ライブで新曲が披露された時の反応とか、 それを見た人がどう感じたかとか。 ちゃんと知らないと、決められないって思うから
咲希:ほなちゃん……
志歩:他にも、何かできることがあれば言ってよ。 知ってるハコのスタッフとかなら、話通せると思うし
穂波:うん……ありがとう!
数時間後
神山通り
穂波:——お忙しい中お時間をいただき、 ありがとうございました
店長:いやいや、僕も久しぶりに顔が見られてよかったよ。 ワンマン開催、本当におめでとう
店長:またうちのライブハウスでも演奏してくれたら嬉しいな。 それじゃ、これからも頑張ってね
穂波:はい、ありがとうございます
店長:ライブでの新曲の反応? そうだなあ……
店長:主観にはなっちゃうけど、 熱心なファンほど喜んでるイメージはあるかな
店長:好きなバンドの新しい曲を、一番最初に生で聴けるなんて ファンにとっては最高の体験だからさ
穂波:(最高の体験、か……)
穂波:(わかる気がするな。 プロデビュー前も、新しい曲をライブでやったら、 すごく良い反応をもらったこともあるし……)
穂波:(でも、こういう声は 数字を見るだけじゃわからなかった)
穂波:(いろんな人のおかげで、 ワンマンを楽しみにしてくれてる人達のことを イメージできてきてる気がする)
穂波:(でも……ファンフェスタのほうは、まだまだだな)
穂波:(バーチャル・シンガーが好きな人が集まるサイトとか、 SNSは見てみたけど……わたしがそこまで詳しくないせいで 理解しきれなかったりしてるし)
穂波:(何か、他に調べられることは——)
穂波:あ……
志歩:一歌はそういうところ、アクティブだよね。 今度もミクのライブにも行くんでしょ?
穂波:(そういえば一歌ちゃん、 今度ミクちゃんのライブに行くって言ってたっけ……)
穂波:…………
穂波:(ライブに来てる人達を見れば もっとイメージができるかもしれない)
穂波:(一緒に行けないか、相談してみようかな)

第 7 话:熱気と迷い

週末
スクランブル交差点
一歌:——ふふ。 まさか穂波も、ミクのライブに来てくれるなんて思わなかった
穂波:急に声をかけちゃってごめんね。 リセールチケットも一緒に探してもらって……
一歌:全然! 私は嬉しいよ
一歌:でも、ちょっと意外だったかな。 もしかして、聴きたい曲があったとか?
穂波:そういうわけじゃないんだけど…… もっと、知りたいなと思って
一歌:知りたい?
穂波:うん。一歌ちゃんが、よくミクちゃんのことを 話してくれるけど……わたしはそこまで、 バーチャル・シンガーに詳しいわけじゃないから
穂波:だから、バーチャル・シンガーを好きな人達のこととか、 何を感じてるのかを、もっと知りたいんだ
一歌:……そっか。 それなら、今日のライブはぴったりだね
一歌:だって、ミクが好きな人達ばっかりだから!
穂波:うん……! 今から楽しみだな
ライブ会場
穂波:……すごい熱気……
一歌:穂波?
穂波:あ……ごめんね。 ちょっと圧倒されちゃって
穂波:配信とかで、ミクちゃんのライブに たくさん人が来てるのは見たことあるんだけど……
一歌:わかるよ、その気持ち
一歌:ネットとかで人気なのはわかってるんだけど、 実際にこうやって人が集まってるのを見ると ちょっとびっくりするよね
穂波:うん。それに、海外から来てる人もいるみたいだね
一歌:世界中にミクを好きな人がいるって思うと、なんだか嬉しいよね
穂波:……そうだね。わかる気がする
穂波:あ、照明が……
一歌:始まるみたいだね
一歌:ミクだ……!
ミク:みんなー! 今日は来てくれてありがとう!
ミク:想いをこめて歌うから、 今日は楽しんでいってね!
穂波:(……! すごい歓声……)
ミク:♪——————————
観客達:やった……! 1曲目からこれ聴けるなんて!
観客達:ミクー! こっち向いて〜〜!
穂波:(……動画で見るのとは、全然違うな……)
穂波:(ファンの人達の熱気が、 大好きって気持ちが、伝わってくる……!)
穂波:(それに——)
ミク:みんなの声、届いてるよ! 次の曲は、みんなでコーラスを歌ってほしいな
ミク:♪—————— ♪——————……
観客達:俺、この曲めちゃくちゃ好きなんだよな……!
観客達:わかる! これ聴くと、 ひとりじゃないって思えるんだよね……
穂波:(……きっとここにいる人達は、 ただミクちゃんが好きなだけじゃなくて……)
穂波:(ミクちゃんを通して聴く音楽そのものも、好きなんだろうな)
穂波:(きっと、この人達にLeo/needが…… 一歌ちゃん達が曲を書き下ろしたら)
穂波:(一歌ちゃん達が込めた想いを、 すごく真剣に受け止めてくれるような気がする)
穂波:(……見てみたいな)
穂波:(この人達に、わたし達の——Leo/needの音楽が届く瞬間を)
ミク:♪——————! ♪——————!
一歌:やっぱり、ミクはすごいなあ……!
穂波:(一歌ちゃん、すごく楽しそう)
穂波:(……そうだよね。 一歌ちゃんにとって、ミクちゃんはずっと特別だから——)
一歌:私は、ちょっとだけファンフェスタに傾いてるかも
穂波:…………
穂波:(……きっと、ファンフェスタの曲を書けたら)
穂波:(一歌ちゃんは喜ぶんだろうな)
終演後
一歌:はあ……楽しかったな…………
穂波:そうだね……まだ胸がドキドキしてるよ
一歌:そっか。穂波も楽しめたみたいでよかったな
穂波:うん! それに……すごいなって思った
一歌:すごい?
穂波:あんなにたくさんの人から、 ミクちゃんのことを大好きだって思う 気持ちが伝わってきて——
穂波:バーチャル・シンガーを好きな人達の 想いの大きさを感じたっていうか
一歌:……うん。私もライブに行くと、同じ気持ちになるよ
穂波:(でも……)
一歌:……新曲のこと、考えてる?
穂波:あ……
穂波:……うん、そうなんだ
穂波:どっちを選ぶべきか、 いろいろ自分なりに調べてみたんだけど……
一歌:……そっか……
一歌:ねえ、穂波
穂波:え……?
一歌:穂波がリーダーとして 私達のためにたくさん考えてくれてること、 すごく嬉しいって思う
一歌:そのおかげで、私達はライブの準備もできてるし
一歌:でも——穂波だけが悩むのは、 ちょっと違うなって思うんだ
一歌:だから……あんまり、ひとりで抱え込みすぎないでね
穂波:……うん。 ありがとう、一歌ちゃん

第 8 话:決意

数日後
穂波の部屋
穂波:(みんなで話し合うのは、明日……)
穂波:(ワンマンとファンフェスタ……。 自分なりに調べられることは、全部調べられたと思う)
穂波:(どっちのお客さん達の気持ちも、今ならわかる)
穂波:(でも……)
穂波:(どっちがいいのか、まだ…… わたしの中で、答えが出てない)
穂波:…………
穂波:(方向性を示したいって言ったのは、わたしだ)
穂波:(一歌ちゃんは『抱え込みすぎないで』って言ってくれたし、 これはみんなで決めることだけど……)
穂波:(わたしが決められないままだと、 みんなを迷わせちゃうだけかもしれない。だから——)
穂波:(わたしの、気持ちを決めなくちゃ)
アンケートコメント:『初めて現地に行けただけでも嬉しいのに、 新曲まで聴けるなんて夢みたいだった』 『次は新曲って言われた時、テンション上がった!』
穂波:(……ワンマンの新曲は、 絶対にファンのみんなが喜んでくれる)
穂波:(それに、咲希ちゃんも志歩ちゃんも—— きっとそっちをやりたいと思ってる)
穂波:(だけど……)
観客達:俺、この曲めちゃくちゃ好きなんだよな……!
観客達:わかる! これ聴くと、 ひとりじゃないって思えるんだよね……
穂波:(バーチャル・シンガーを好きな人達にも、 わたし達の曲を聴いてもらいたい——)
穂波:(一歌ちゃんも、きっとそう思ってる)
穂波:(……難しい、けど……)
穂波:(どっちかに決めなきゃいけないなら、わたしは——)
穂波:わたしが、選ぶのは……
穂波:電話……真堂さんから?
穂波:『——もしもし。お疲れさまです』
真堂:『お疲れさまです。 すみません、遅くに電話してしまって……』
真堂:『急ぎ、報告したいことがありまして』
穂波:『報告、ですか?』
真堂:『はい。実は——』
真堂:『ファンフェスタへの書き下ろし依頼が、取り下げになりました』
穂波:『え……?』
真堂:『ああ、身構えないでください。 こちら側に何か落ち度があったわけではありません』
真堂:『さっき、担当者から連絡があったんです。 体調不良だったクリエイターから連絡があったようで』
穂波:『……! それって、もともと書き下ろしを担当されてたっていう?』
真堂:『はい。それで、当初の予定通りに 3曲とも間に合いそうだということで』
真堂:『先方は平謝りしてましたよ。 電話の向こうで、 土下座でもするんじゃないかってくらいの勢いで』
穂波:『そ、そうだったんですか……』
穂波:『でも……元気になられて、よかったです。 お話がなくなったこと自体は、少し残念ですけど……』
真堂:『そうですね。 ただ、実は新たに依頼がきまして』
穂波:『新たな依頼……?』
真堂:『担当者から“次のファンフェスタでは、 ぜひフレッシュ枠でLeo/needに書き下ろしをお願いしたい”と 言われているんです。今回のお詫びも兼ねて』
穂波:『え……!?』
真堂:『少し期間は空きますが、 前向きに検討してはどうかと考えています』
真堂:『先の予定なので、スケジュールも問題ないでしょうしね』
穂波:『わ、わかりました。 その件に関しては、改めてみんなに相談してみようと思います』
真堂:『お願いします。 急ぐ話ではないので、ゆっくり決めていただいて問題ありません』
真堂:『しかし……結果的に、いろいろと掻き回すことになってしまって 本当に申し訳ありませんでした』
真堂:『ワンマン前の、大事な時期だというのに』
穂波:『いえ……! 仕方のないことだと思いますから』
穂波:『それに、お話を受ける前にわかってよかったです』
真堂:『……そう言ってもらえると、救われますね』
真堂:『今後は新曲作りも含め、ワンマンに集中できるように 全力でバックアップしていきますので。 よろしくお願いします』
穂波:あ……
穂波:(…………よかった)
穂波:(わたし、今……?)
真堂:『——それでは、 メンバーの皆さんへの連絡はお任せしますね』
真堂:『俺は、ワンマンのスタッフに連絡しておきます。 新曲をやるセトリで進めたいと』
穂波:『あ……はい。伝えておきます』
真堂:『よろしくお願いします。 それでは、失礼します』
穂波:(……わたし……)
穂波:(わたし、今……)
穂波:(ほっとした……?)
穂波:…………っ
穂波:(…………そうだ)
穂波:(わたし、安心したんだ……)
穂波:(ちゃんと自分の考えを決めなきゃって、思ってたのに)
穂波:(どっちかを選ばなきゃって、思ってたのに)
穂波:(それをしなくてよくなって……安心したんだ)
穂波:(こんなんじゃ、駄目だ……)
穂波:(今回は、たまたま決めなくて済んだけど——)
穂波:(この先、何かを選ばなきゃいけない時は きっと来る)
穂波:(正解がない選択を、決断しないといけない時が)
穂波:(だから——)
穂波:(——決められるようにならなくちゃ)
穂波:(みんなを導けるように——)
穂波:(Leo/needの、リーダーとして……!)