活动剧情
Competitive fire!
活动ID:175
第 1 话:残る熱
ニューヨーク州
ホテル内 カフェ前
杏:ふたりとも! こっちこっちー!
大河:おう
謙:悪い、待たせたか?
彰人:いえ。オレ達もさっき部屋から下りてきたばっかなんで
大河:んじゃ早速、飯食いに——
大河:あ? 双子の坊主がいねえじゃねえか
こはね:セドリックさんとスレイドさんなら、 少し遅れるって連絡がありました
こはね:向かってる途中で、偶然知り合いに会ったみたいで……
大河:へえ。俺を待たせるとは、あいつらも偉くなったもんだ
杏:大河おじさんはいっつも遅刻するほうなんだし、 たまには待つのもいいんじゃない?
謙:まあ、店の予約時間までは余裕があるからな。 ゆっくり待てばいいさ
杏:ふふっ。明日はもう、日本に帰っちゃうけど—— その前に、みんなでご飯行けることになってよかったな
冬弥:そうだな
冬弥:しかし……謙さんも大河さんも、 昨日の疲れは残っていないんですか?
彰人:たしかに、昨日あれだけのパフォーマンスしたばっかだしな
大河:はっ! そんなやわじゃねえよ
彰人:すげーな……
こはね:あんなに盛り上がったイベントの後なのに……
杏:父さん達は、いろいろ慣れてるっていうのもあるだろうけど——
杏:でも、私達もRAD BLASTの後はそうじゃなかった? 体はヘトヘトだけど、気持ちはアガりっぱなしっていうか!
こはね:あ……そうだったね
こはね:昨日、私達は見てるだけだったけど。 それでも、心が震えたっていうか……
杏:だよね! こう、胸がガッと熱くなってさ……!
杏:(————胸の奥が、今も熱い)
杏:(うずうずして、じっとしていられないくらい……)
杏:——本当に、アメリカに来てよかったな
杏:世界レベルのイベントを、 あんな近くで見られたのもだけど……
杏:RUSH BEATSで優勝するっていう、 新しい目標もできたしね!
冬弥:世界を獲るというのがどういうことか、 明確にイメージできるようになったのは大きいな
彰人:って言っても、 いろいろとまだ壁はあるけどな
冬弥:ああ。RUSH BEATSはトーナメント戦だ。 規模からいって、1日で決着がつくものでもない
冬弥:期間中は、日本とアメリカを行き来する必要があるし—— 海外でも活動しようと思うと、 移動の費用や拠点の問題が出てくる
こはね:うん……。 他にもいろいろ、考えないといけないことは多そうだね
杏:う、たしかに……
大河:まあ、せいぜい頑張るんだな
謙:焚きつけたからには、ある程度は相談に乗るさ
謙:だが——まずは自分達でやってみることだな。 本気でぶつかってみれば案外、どうにかなることも多い
謙:そうやって道を切り拓いていく中で、 自然と力もついてくるもんだ
杏:うん、わかった!
謙:そういえば——
謙:お前達がRUSH BEATSに参加するなら、 あいつらともそのうち顔を合わせるかもな
杏:あいつら?
謙:ああ。お前らと同い年くらいの——
???:みんな、お待たせー!!
大河:そうこう言ってる間に、坊主どもが来やがったな
スレイド:遅くなってごめん! だいぶ待たせちゃったよな
杏:大丈夫だよ! 来る途中で、知り合いに会ったんだって?
セドリック:ああ。大河さん達と食事に行くんだと話したら、 久しぶりだから一言挨拶をしたいと言ってきかなくてな
こはね:え? それって……
エレナ:やっほー! いきなりごめんね! アタシ達——って……
杏:あっ!
エレナ:あ~!! キミ達、昨日の!
レベッカ:どうしてここに……
エレナ:——もしかしてキミ達が、Vivid BAD SQUAD!!?
こはね:そ、そうです……けど……
杏:え~っと……
杏:これって、どういう状況?
第 2 话:意外な関係
数十分後
カフェレストラン
杏:——それじゃあ、かんぱーい!
スレイド・エレナ:『乾杯!』 『イエーイ!』
レベッカ:……セディ達から、Vivid BAD SQUADの メンバーも一緒だって聞いてはいたけど——
レベッカ:本当にいいの? 私達までまぜてもらっちゃって
杏:もちろん! こういうのは大人数のほうが楽しいしね
杏:でも、びっくりしたな。 まさかふたりまで、父さん達と知り合いだったなんて
レベッカ:私達は元々、RADderのファンなんだ
こはね:RADderの?
エレナ:そう! 小さい頃に3人の歌を聴いて、 うわ~何これ~!?って
エレナ:KABOOM! あー、日本語だと~……
冬弥:KABOOM……爆発や、雷が落ちた時の効果音だな
彰人:あー。ドーンとかドカン、とかそういう感じか?
エレナ:それ! ズドーン!って感じがしたんだよね
エレナ:それまでアタシ達が聴いてきた音楽と、全然違ったから
レベッカ:それがきっかけで、 スレイドやセディとも知り合ったんだ
レベッカ:時々だけど、一緒にRADderから歌を教えてもらったりね
杏:へえ、そうだったんだ……!
スレイド:習い始めたのは、オレ達のほうが先だよ
スレイド:だからエレナ達は~……イモウトダシ?
セドリック・レベッカ:『妹弟子だな』 『妹弟子だね』
スレイド:そう、それそれ!!
彰人:なんだよ、イモウトダシって
大河:ったく。4人集まると、相変わらずうるせえな
謙:あれから変わりないみたいで何よりだ
謙:ところで——エレナ、レベッカ
謙:お前達も出るんだろう? RUSH BEATSに
エレナ:当たり前じゃん! アタシ達、世界を目指してるんだから
スレイド:やっぱり! じゃあここにいる全員、ライバルだな
レベッカ:Vivid BAD SQUADも、大会に参加するんだね
杏:うん! こんなチャンス、参加しないわけにいかないもん
エレナ:やった! ケンさん達が話してた アンと戦えるなんて、夢みたい!
杏:あはは。なんかちょっと照れくさいな
杏:けど、そういうことなら余計負けられないね!
彰人:つっても、まだ申し込みすらできてねえんだが……
こはね:RUSH BEATSのことも、昨日知ったばっかりだもんね
レベッカ:え、そうなんだ。 じゃあ、大会の詳しい内容もまだ知らない?
こはね:はい……。 一応、大会のホームページは見てみたんですけど
こはね:どんなルールなのか、とか どういう大会なのかまでは、よくわからなくて
セドリック:そうだな、ざっくりと説明するなら……
セドリック:RUSH BEATSは元々、この地域に住む ストリートミュージックが好きな連中が集まって 有志で作ったイベントなんだ
セドリック:それが、だんだんと大きくなっていって 今や観客は数千人規模になる
彰人:数千人って……有志のイベントにしちゃ、なかなかの数だな
セドリック:ああ。それでついに去年、 大手のスポンサーがつくようになったんだ
セドリック:優勝賞金が出たり、テレビやネット上で 中継されるようになったり——
セドリック:Lasting ECHO Fesへの切符も手に入るようになった
冬弥:なるほど……
レベッカ:参加人数も多くなったから、 ほとんどのチームが予選で落とされちゃうんだ
レベッカ:本戦に勝ち進めるのは、 上位の8チームだけなの
エレナ:ま、規模は大きくなったけど、 やることは前と変わらないよ
エレナ:相手よりも、オーディエンスを盛り上げたほうが勝ち!
杏:盛り上げたほうが勝ち……
杏:——うん、いいね。わかりやすい!
彰人:変にごちゃごちゃルールがあるより、 よっぽどやりやすいな
エレナ:おっ。みんな、自信ありそうだね~?
冬弥:というより…… “慣れている”と言ったほうが正確かもしれない
こはね:うん……。 ビビッドストリートでも、 修行でいろんなライブハウスに行ったときも——
こはね:最後は、聴いてくれる人をどれだけ熱くできるかだったから
大河:——さて。 どいつが勝ち上がって来るか、見物だな
謙:そうだな
杏:(楽しみだな……最高に熱い大会になりそう!)
杏:(トーナメントでみんなと当たったら、 どんな感じになるんだろう——って……)
杏:(そういえば、セドリックの歌はまだ聴いたことなかったっけ。 前はスレイドだけだったし)
杏:(それに……エレナとベッキーもうまかったけど、 まだ余裕がありそうだったな)
杏:(たぶん、あれが本気じゃないはずだし)
杏:……みんなの歌、ちゃんと聴いてみたいな
第 3 话:やり残したこと
カフェレストラン前
大河:——俺達はここで解散だ。 レコード会社との打ち合わせがあるんでな
謙:明日は空港までオレが送っていくから、 それまでゆっくり休めよ
杏:うん! ありがとう、父さん
冬弥:今日はありがとうございました
エレナ:今度、アタシ達の歌も聴きに来てよね~!
大河:おう。気が向いたらな
彰人:——さてと。この後はどうする?
冬弥:そうだな。特に予定は入れていなかったが……
エレナ:ほんと? じゃあ、もうちょっとその辺をぶらつかない?
こはね:え?
エレナ:みんな、明日には日本に帰っちゃうんでしょ? せっかくだし、もうちょっと遊びたいな~って!
杏:あ、それいい! 私も、最後にいろいろ回りたいな
セドリック:遊ぶと言っても……あてはあるのか?
エレナ:任せてよ! ここはアタシ達の庭みたいなものだし——
エレナ:マンハッタン・スペシャルコース、行っちゃおう!
杏:スペシャルコース……!?
彰人:……ま、ついて行ってみるか
ミュージシャン:♪————! ♪————!!
杏:わ、すごい! あちこちで歌ってる人がいる……!
エレナ:ここは、ストリートミュージシャンがよく集まる場所なんだ!
セドリック:あそこの角で歌っているチームは、覚えておいたほうがいい。 かなりの実力派で、RUSH BEATSにもきっと出てくる
こはね:そうなんですね……
彰人:他にもレベルの高いチームがいくつかいるな。 聴いていくか
レベッカ:ここは、超レアな音楽系のグッズが揃う店だよ。 スレイド達もよく来るんだっけ?
スレイド:うん! 掘り出し物が多いから、見てて飽きないんだよな
杏:へえ~……。 あ、これ、LAST DAYSのライブTシャツ!?
レベッカ:しかも、メンバーのサインが入ってる……! どこから手に入れたんだろ
杏:こ、これ、写真撮らせてもらってもいいかな……!?
エレナ:それで、ここがプロのミュージシャンにも 大・大・大人気の音楽スタジオ!
彰人:ん? この建物、なんか見覚えがあんな
冬弥:映画の撮影にもよく使われる場所だから、 どこかで見かけているのかもしれないな
レベッカ:ふふ、そうなんだよね。 だから余計、みんな憧れるのかも
エレナ:いつか、ここでレコーディングしたいねって ベッキーともよく話してるんだ!
杏:ふたりとも、ほんとに音楽が好きなんだね!
エレナ:え?
杏:今まで紹介してくれたの、 全部音楽に関係してるところだから
エレナ:あはは、まあね! 毎日ず~っと音楽を聴くか歌ってるか、って感じだし
レベッカ:小さい頃からそうだったもんね
レベッカ:でも——ここまで夢中になれたのは、 RADderのおかげかな
レベッカ:あの3人に出会ってなかったら、 ここまで本気にはなれてなかったと思うから
杏:ふふ、そっか
エレナ:そういえば、こっちのおすすめの場所ばっかり 連れ回しちゃったけど——
エレナ:みんなは何か、やりたいこととかない? アメリカでやり残したことがあったら、今のうちだよ!
冬弥:やり残したことか
彰人:今のところは思いつかねえが……
杏:あ、それなら——
杏:歌! illysとEmbersの歌、聴かせてよ!
スレイド:オレ達の歌を……?
杏:うん。RUSH BEATSに出場したら、 みんなライバルになるでしょ
杏:お互いの実力、ちゃんと知っておきたいなって。 どうかな?
こはね:私も聴いてみたいな……!
彰人:……そうだな。 チームでの歌は、まだちゃんと聴いてねえし
エレナ:——いいね、やろっか! アタシ達も、コハネの歌しかちゃんと聴けてないしね!
スレイド:よーし、まずはどのチームから行く?
セドリック:待て。さすがにここでやると、通行の邪魔になる
冬弥:確かに、もう少し広い場所のほうがよさそうだな
こはね:昨日、エレナさん達が歌ってた場所とか……?
スレイド:どうせなら、ライブハウスは?
彰人:ライブハウスって……んな急に出られるのか?
スレイド:ここからちょっと歩いたところに、 オープンマイクのイベントをやってるところがあるんだよ
杏:オープンマイク、って…… 誰でも自由に飛び入りでパフォーマンスできるんだっけ?
冬弥:ああ。プロもアマチュアも関係なく、 歌や演奏を人前で披露できるんだ
冬弥:海外では一般的なイベントだと聞いたことがある
彰人:へえ。せっかくだから行ってみるか
スレイド:オッケー! こっちだよ!
杏:(みんなの歌、どんな感じなんだろう? 楽しみだな)
???:『——杏ちゃん、杏ちゃん』
杏:えっ? この声……
ルカ:『ちょっと覗きにきたんだけど、 なんだか面白いことになってるね!』
ルカ:『これから、それぞれのチームで歌うんでしょ? 私もこっそり聴いてるから、頑張って!』
杏:ありがとうございます! あ、せっかくだから、英語の歌をやろうと思うんですけど……
杏:聴いてて気になったところとか、 あとで教えてもらってもいいですか?
ルカ:『いいよ、任せて!』
ルカ:『それにしても……』
ルカ:『杏ちゃん、なんだか嬉しそうだね』
杏:え?
ルカ:『あれ、違った?』
ルカ:『目がキラキラしてるよ。なんていうか——』
エレナの声:——あれ? アン、誰かと電話してる?
杏:あ……! えっと、ちょうど終わったから大丈夫!
杏:ほらほら、早く行こう?
彰人:……ったく、ヒヤヒヤさせんなよ
ライブハウス
スレイド:——受付してきたよ!
セドリック:パフォーマンスは1チーム10分だ。 2曲くらいが目安だと思ってくれ
彰人:ああ、わかった
エレナ:アタシ達は最後かあ。 早く歌いたいな~!
レベッカ:じゃんけんで順番を決めようって言い出したのは お姉ちゃんでしょ?
スレイド:へへ、一番はもらった!
彰人:ここからだとステージが遠いし、もうちょい前のほう行くか
杏:オッケー! ……ん?
こはね:杏ちゃん、どうしたの?
杏:あそこのカウンターで、飲み物もらえるみたい。 せっかくだから、みんなにも声かけて——
???:『——おっと』
杏:あ……!
杏:『すみません! えっと……』
???:『いや。こちらこそすまない』
???:『ステージに気を取られていてね。 ぶつからなくてよかった』
杏:……!
杏:(この人の声……。 張り上げてるわけじゃないのに、すっと耳に入ってくる)
杏:(父さんとか、大河おじさんみたいに——)
???:『——アンから離れて!』
杏:エレナ……?
第 4 话:ひりつく空気
ライブハウス
こはね:え、えっと……
杏:っ——ごめん、エレナ! 勘違いさせちゃったかもしれないけど……
杏:私がよそ見してて、ぶつかりそうになっちゃったんだ。 だから、この人は悪くなくて……
エレナ:そういう問題じゃない
エレナ:こいつには近づかないで、アン
杏:え?
???:なかなかの言われようだな
こはね:っ、日本語……?
エレナ:なんでここにいるの?
???:野暮用でな。 ここのオーナーとは、仕事上の付き合いがあるんだ
杏:(……空気がピリピリしてる)
杏:(エレナ達とこの人、知り合いみたいだけど……)
彰人:——おい、どうした?
杏:あ……みんな!
冬弥:何かあったのか? あまり、穏やかではない雰囲気だが……
セドリック:『……ダグラス?』
スレイド:『ええっ……!?』
スレイド:『な、なんで“DG”がここに——!?』
彰人:DG?
スレイド:伝説のストリートミュージシャンだよ!
セドリック:マイク1本でのし上がって、 いまや音楽事業を幅広く手掛けるプロデューサーだ
セドリック:メディアへ積極的に顔を出すほうじゃないが、 彼の歌には熱狂的なファンが多い
ダグラス:——“伝説”は恐れ多いな
ダグラス:だが、君達のような若いミュージシャンに 知ってもらえているのは嬉しいよ
ダグラス:君達は、娘の友人かな
杏:(娘…………)
杏:(じゃあ、この人はエレナとベッキーの——)
スレイド:……オレはスレイド、こっちはセドリック。 Embersってチームを組んでます
スレイド:エレナとベッキーとは、友達です
セドリック:初めまして
ダグラス:ほう。君達がEmbersか
ダグラス:若手の中でも今、勢いがあるチームだと聞いたことがある。 会えて光栄だよ
セドリック:こちらこそ。 あのDGに名前を知ってもらえているとは思いませんでした
セドリック:それで、こちらの4人は——
杏:Vivid BAD SQUADです
ダグラス:Vivid BAD SQUAD……
ダグラス:いいチーム名だ。覚えておくよ
エレナ:……もういいでしょ?
エレナ:カッとなって突っかかったのは謝るけど——
エレナ:もう、アタシ達には関わらないで
レベッカ:…………
ダグラス:わかっているさ。 俺だっていつまでも、子守はしていられない
ダグラス:——君達も、騒がせてしまって悪かった
ダグラス:また機会があれば、どこかで
杏:あ……はい!
観客A:『——おい、今通ったのDGだよな!?』
観客B:『え、すごい大物じゃん! なんでこんなところにいるの!?』
杏:……えっと——
スタッフ:『次、Embers! スタンバイいける?』
スレイド:あ……! ヤバい、オレ達の番だ!
セドリック:……思ったよりも早かったな
レベッカ:ふたりとも、行ってらっしゃい!
エレナ:思いっきりかましてきてよね!
杏:——ふたりの歌、楽しみにしてるよ!
彰人:日本では結局、聴きそびれたからな。 期待してんぞ
スレイド:任せといて! 行こう、セディ!
セドリック:ああ
エレナ:こいつには近づかないで、アン
杏:(……エレナが、あんなに怒るなんて……)
杏:(お父さんと、何かあったのかな)
杏:(でも、部外者の私が聞くのは——)
エレナ:アン、さっきはごめん!
レベッカ:変な感じになって、心配かけちゃったよね
杏:あ……
エレナ:アタシ達は大丈夫だから
エレナ:——今は、めいっぱい楽しもう?
杏:……うん、そうだね!
杏:(——私も、切り替えよう)
杏:(せっかく、みんなの歌が聴けるんだから!)
第 5 话:実力
ライブハウス
観客達:『——おい。ありゃあ、Embersじゃねえか?』
観客達:『本当だ! なんでこんなところに……』
冬弥:……周りの空気が、一気に変わったな
こはね:それだけ、注目されてるんだね
セドリック:『——Embersだ』
スレイド:『みんな、振り落とされないでついてこいよ!』
スレイド・セドリック:『♪——————————————————!!』
彰人:っ……!?
杏:……これ…………
エレナ:うひゃ~! ほんとに最初から飛ばしてきたね!
レベッカ:このブレスの感じ、 昨日のタイガさん達のパフォーマンスを参考にしたのかな
彰人:(…………確かに、似てる)
彰人:(いきなり音でぶん殴られるみてえな、あの感じだ)
冬弥:(さすがに“そのもの”ではないが—— たった一度聴いただけで、ここまで近づけたのか?)
冬弥:(元の実力もあるだろうが…………とんでもない吸収力だ)
セドリック:♪——————!
スレイド:♪——————~~~!
スレイド:『はあ、楽しかったー!』
セドリック:『楽しかったのはいいが……即興でアレンジを入れすぎだ。 2曲目の中盤、危うく空中分解するところだったぞ』
スレイド:『あはは、ごめん! セディなら絶対合わせてくれるって思ってさ』
セドリック:『まったく……』
杏:ふたりとも、お疲れ様!
冬弥:素晴らしい歌だった。 いろいろと感想を伝えたいが……
セドリック:ありがとう。あとでゆっくり聞かせてくれ
スレイド:持ち時間削られちゃったらもったいないしね! 行ってらっしゃい!
彰人:ああ。行ってくる
観客達:『あ、次のチームが出てきたよ!』
観客達:『見たことない子達だな……』
杏:(ま、こういう反応になるよね)
杏:(でも……)
杏:(RUSH BEATSで優勝するなら、 こんな空気くらいひっくり返さなきゃ!)
杏:(そうじゃなきゃ——世界なんて届かない!)
杏・こはね:『♪————————~~~!!!』
彰人・冬弥:『♪——————! ♪——————!』
観客達:『へえ……』
観客達:『かなり熱いじゃん』
杏:♪————————!!
レベッカ:『……いいなあ』
レベッカ:『コハネの歌を聴いた時も思ったけど…… まっすぐで、すごく力強いね』
エレナ:『だね。英語の発音なんかは、まだ甘いところもあるけど……』
エレナ:『まるで——あの時のRADderみたい』
スレイド:みんな、お疲れ! いいパフォーマンスだったよ!
セドリック:ああ。客席の反応もよかった
こはね:あ……ありがとうございます
彰人:けど、やっぱまだまだ足りねえな
冬弥:そうだな。もっと序盤から観客の心を掴めるように、 工夫が必要だ
杏:だね。英語だと、やっぱり感情を うまく乗せきれてない感じがしたし——あ
観客達:『ヒュー! illysだ!!』
観客達:『ぶちかませー!!』
こはね:ひゃっ……!?
冬弥:これは……
彰人:街中で歌ってんのを見たときも思ったが……。 すげえ人気だな
スレイド:この辺りの音楽好きで、 ふたりのことを知らない人はいないんじゃないかな
セドリック:——今年のRUSH BEATSで、どのチームが優勝するか
セドリック:もし、街の人間に予想を聞いたとしたら 間違いなく、一番多く名前が挙がるのがillysだ
杏:…………そっか
エレナ:『みんな、いっくよー!』
杏:(…………あれ?)
杏:(なんだろう。 昨日、街で歌ってたときと、雰囲気が……)
レベッカ:♪——————————————……
エレナ:♪————————————~~……
杏:————何、これ……
こはね:なんだろう、静かなのに……
こはね:すごく、ぞくっとする
冬弥:……まるで、火のついた導火線だな
彰人:導火線? どういう——
エレナ・レベッカ:『♪————————————————!!』
杏:…………っ!?
エレナ:♪——————————! ♪——————————!
レベッカ:♪————————~~~!
観客達:『なんだ、今の……!?』
観客達:『とんでもねえギアの上げ方すんな……!』
スレイド:うわあ……!
セドリック:相変わらず、凄まじいな
彰人:“導火線”って、爆発するってことかよ……
杏:…………
エレナ・レベッカ:『♪————! ♪————! ♪————!』
杏:(…………すごい)
杏:(心臓を掴んで、揺さぶられて……)
杏:(一度聴いたら、絶対に忘れられなくなる)
杏:(でも……)
杏:なんだか……怒ってるみたい……
冬弥:——そうだな。 そう表現するのがしっくりくる
杏:え?
冬弥:やり場のない怒りや……苛立ちのようなものを、 彼女達の歌から感じるんだ
冬弥:最初は曲の主題のせいかと思ったが…… どうも、それだけではなさそうだな
杏:……もしかして……
エレナ:もう、アタシ達には関わらないで
レベッカ:…………
杏:(どんな事情があるのかは、わからないけど——)
杏:(この歌は…………少し、苦しいな)
第 6 话:心にひっかかるもの
数十分後
ニューヨーク市 公園
杏:うわ~……! 広ーい!
こはね:すごく綺麗な公園ですね……!
エレナ:へへ。 天気もいいし、ライブの感想言い合うにはぴったりでしょ!
レベッカ:ここ、街の人もよくピクニックに来たりするんだ
スレイド:フードトラックでおやつも買ったし、 つまみながら話そっか!
彰人:そうだな。あの芝生の辺りでいいか
冬弥:ああ、ベンチもあるしちょうどいいな。 早速移動しよう
30分後
スレイド:——はあ。 こうやって直接感想言い合えるっていいな~
冬弥:自分達の歌について、客観的な視点で 語ってもらえるといろいろと発見があるな
エレナ:じゃあ、次はアタシ達の番だね! どうだったどうだった?
冬弥:そうだな……まず、イントロからの転調が かなり大胆で驚かされた
セドリック:ああ。常識外れというか……エレナらしいトラックだ
エレナ:えへへ、そんなに褒められると照れるなあ
こはね:illysの曲は、エレナさんが作ってるんですか?
レベッカ:うん。私もアレンジの相談に乗ったりはするけど、 だいたいはお姉ちゃんが作ってるんだ
杏:歌もすごかったよ!
杏:街で聴いた時も、力強い歌だなーって思ってたけど、 今回はそれ以上で——
こはね:杏ちゃん?
杏:あ……
杏:……本当に、すごかった。 1曲目の頭で、鳥肌が立ったくらい
杏:一度聴いたら、絶対忘れられない歌だなって
杏:ただ……
エレナ:ただ?
杏:ごめん、変な意味じゃないんだけど……。 街で歌ってた時とは、全然違って聴こえたんだ
杏:なんていうか…………苦しそう?みたいな
エレナ:……!
エレナ:……はあ。ダメだなあ、アタシ
エレナ:ステージに立ったら切り替えなきゃいけないのに、 すぐ歌に出ちゃって
レベッカ:……ごめん。私もフォローできればよかったね
レベッカ:まさか、あんなところで会うとは思わなかったから……
杏:え?
セドリック:…………
セドリック:だが、大会に出場する以上、 どうしたって顔を合わせることになるんじゃないのか
こはね:えっと、それって、どういう……
レベッカ:……ちょうどいいタイミングかもね
レベッカ:大会に出場するなら、そのうち知ることになると思う
レベッカ:だから……Vivid BAD SQUADのみんなには、 直接言っておきたいんだ
彰人:……なんか、込み入った事情がありそうだな
こはね:それって……RUSH BEATSに関わること、ですか?
エレナ:……うん
エレナ:実は——うちの父親、 RUSH BEATSのスポンサーなんだよね
エレナ:しかも、結構大手の
こはね:え……
冬弥:RUSH BEATSの……?
セドリック:ああ。それでついに去年、 大手のスポンサーがつくようになったんだ
杏:(そういえば……セドリックがそんなことを言ってたっけ)
エレナ:RUSH BEATSに出場したら…… きっと、いろんな噂を聞くことがあると思うんだ
エレナ:ほんとのことも、そうじゃないことも、 いろいろ……
エレナ:だから、そうなる前に—— みんなには、ちゃんと話しておきたい
エレナ:——聞いてもらってもいいかな? アタシ達と、DG……父さんのこと
杏:エレナ……
杏:——うん。聞かせて
第 7 话:ライバルとして
ニューヨーク市 公園
エレナ:アタシとベッキーは、 子供の頃から父さんに歌を習ってきたんだ
エレナ:誰よりもうまくて、誰よりも“売れる”——
エレナ:そういう歌を、ずっと
杏:……それって……
レベッカ:無理やりやらされてたわけじゃないんだけどね
レベッカ:でも……なんていうのかな。 他の選択肢を全部、見えなくされてるみたいな…… そういう不安は、ずっとあったかも
エレナ:あいつがアタシ達に優しくしてたのは、 アタシ達が“商品”だからだよ
レベッカ:お姉ちゃん……
エレナ:ベッキーだって知ってるでしょ? あいつは目的のためなら、なんだってやる
エレナ:他人の夢を食い物にして、蹴落として。 それでも平気な顔で……アタシ達の前で笑うんだ
エレナ:隠してるつもりかもしれないけど、 どれだけのミュージシャンがあいつのせいで……っ
エレナ:……ごめん。また熱くなっちゃったね
杏:ううん。でも……平気? 無理しなくても——
エレナ:平気だよ! ただ、あの頃のことを思い出すと、腹が立つってだけ
エレナ:あいつにも…… 全部諦めて、ただ言いなりになってた自分のことも
こはね:エレナさん……
レベッカ:……あの頃の私達にとって、歌は “歌わなきゃいけないもの”だったんだ
レベッカ:父さんとか、周りの大人に褒めてもらうために…… だから、好きとか嫌いとか、考えたこともなかったな
エレナ:うん……だけど——
エレナ:そんな時に、RADderの歌を聴いて、全部変わったんだ
冬弥:RADderの歌を……?
レベッカ:……私達がRADderに初めて会ったのは、 音楽イベントの会場だったの
レベッカ:父さんの仕事について行ったんだけど、 私達は別にやることもなくって
レベッカ:お姉ちゃんと一緒に、こっそり控室を抜け出したんだよね
エレナ:会場で迷子になって、あの時は泣きそうだったな~
杏:それ、大丈夫だったの?
エレナ:うん。その時のイベントに、RADderも参加しててさ
エレナ:——通りかかったナギさんが、助けてくれたんだ。 タイガさんやケンさんと会ったのも、その時だよ
こはね:そうだったんですね……
冬弥:では、その時にRADderの歌を聴いたのか?
レベッカ:うん。父さんに頼んで、関係者席に入れてもらってね
エレナ:あの時は、ほんとにびっくりしたなー!
エレナ:あんなにまっすぐに、 楽しそうに歌う大人、初めて見たからさ
エレナ:歌って、ほんとは心とか魂で歌うもので——
エレナ:誰かに褒めてもらうためじゃない。 お金を稼いだり、有名になるためでもない
エレナ:ものすごく純粋なものなんだ、って。 教えてもらった感じがしてさ
レベッカ:……うん。 あの歌を聴いた時に、思ったんだ
レベッカ:私達も、あんな風に心から歌えたら、って……
レベッカ:それ以来、RADderがこっちに来たときに こっそり会いに行くようになったの
レベッカ:スレイドとセディの練習にまぜてもらうように なったのも、その頃
スレイド:……懐かしいなあ
セドリック:ああ。凪さん達の国の言葉で話してみたいからと、 ふたりも日本語を覚えたんだったな
エレナ:うん! ナギさん達からは、 ほんとにいろいろ教えてもらったな
エレナ:まあ、父さんはさすがに、 RADderから歌を習うのにはいい顔しなかったけど
彰人:自分がやらせたい音楽と違うからか?
レベッカ:そうだね。実際、私達は どんどんRADderの音楽に惹かれていって……
レベッカ:自由に歌いたいって思うようになったんだ
エレナ:うん。 あんな風に、人の心を熱くできるような歌を歌いたい——
エレナ:だから、父さんに“自由にやらせてほしい”って言ったんだ。 もうアタシ達には関わらないで、って
杏:お父さんは……それで納得してくれたの?
エレナ:……それ以来、ぴたっと口を出してこなくなったんだよね
エレナ:あっさりしすぎてて、ちょっと不気味なんだけど
レベッカ:父さんは、無駄なことが嫌いだから。 私達じゃダメだ、って見切りをつけたんじゃないかな
エレナ:あー、それはありそう!
セドリック:ふたりがDGの娘なのは知ってはいたが…… そういう話は、俺達も初めて聞いたな
エレナ:隠してたわけじゃないんだけどね。 あいつをふたりにも近づけたくなかったし……
エレナ:何考えてるかわかんないから、 これからも近寄りたくないな
レベッカ:って言っても…… 音楽をやってると、関わらないのは難しいんだけど
レベッカ:今日みたいに、偶然会っちゃうこともあるし。 周りが勝手に変な噂したりもするしね
エレナ:そうなんだよね~~。 七光りとか、出来レースとかさあ
杏:(そっか——)
杏:(あの時のふたりの歌が、怒ってるみたいで、 苦しそうに聴こえたのは……)
杏:(そういう過去があったからなんだ)
杏:(周りの大人達に、勝手にいろいろ決められちゃうのは…… 辛かっただろうな)
杏:……どうして!? どうしてっ!!?
杏:どうしてそんなに大事なこと、私だけ知らされてないの!?
杏:(……私の時とは、全然違うけど——)
杏:——ふたりとも、話してくれてありがと
エレナ:ううん。こっちこそ、聞いてくれてありがと
レベッカ:ごめんね。面倒なことに巻き込んじゃって……
こはね:いえ……! ベッキーさん達のせいじゃないですから
彰人:妙な噂だのなんだのも、気にしなきゃいいだけの話だしな
杏:そうそう! それに……
杏:私もちょっとだけ、気持ちがわかるなあって
杏:だから、なんていうか……私達なら大丈夫!
杏:エレナ達について、誰が何を言っても全然気にしないし…… なんならガツンと黙らせちゃうから!
杏:だから——これからも、ライバルとしてよろしくね!
レベッカ:こっちこそ、よろしくね
エレナ:絶対負けないから、覚悟しててよ!
第 8 话:再会の約束
翌日
空港
こはね:——ついに、日本に帰るんだね
杏:父さん達のイベントを見て、 illysとEmbersの歌も聴いて……
杏:なんだかあっという間だったな
冬弥:だが、本当に得るものが多い旅だった
彰人:日本に戻ったら、 RUSH BEATSに向けて準備しねえとな
謙:やる気満々だな。 いい経験ができたようで、何よりだ
杏:アメリカでしかできないようなことも いっぱいやれたしね!
こはね:ふふ。ニューヨーク音楽院に泊まらせてもらったの、 すごく楽しかったな
冬弥:音楽院の生徒達とやらせてもらったセッションも、 勉強になった
彰人:そんな暇はねえと思ってたが、意外と観光もできたしな
杏:たしかに! 地元の人のおすすめもいっぱい聞けたしね
謙:——おっと。事務所からだな
謙:悪い、少し出てくる
杏:あ、行ってらっしゃい!
ルカ:『——みんな、ついに日本に帰るんだね!』
杏:ルカさん! 来てたんですね
ルカ:『うん! 最後にアメリカの景色をもう1回 見ておこうと思って』
ルカ:『アメリカも楽しかったから、 ちょっとだけ寂しいなー』
こはね:そうですね……
杏:でも、そんなに遠くないうちに また来ることになりますよ!
ルカ:『あ、そっか! RUSH BEATSに出場するんだもんね』
冬弥:はい。いろいろと壁はありますが……
彰人:けどまあ、どうにかするしかねえだろ
ルカ:『あはは。頼もしいなあ!』
杏:そういえば…… バタバタしてて、聞きそびれちゃってましたけど
杏:ルカさん、前に来た時、何か話そうとしてませんでした?
ルカ:『ああ、あれ? えっとね——』
ルカ:『ふふっ。杏ちゃんの目がキラキラしてたからさ』
ルカ:『“全力でぶつかって、勝ちたい。 そう思える相手ができたことが、嬉しい”——』
ルカ:『そんな気持ちだったんじゃないかなって 言おうとしてたんだ!』
杏:あ……
ルカ:『友達とか、チームメイトとはちょっと違うけど……』
ルカ:『ライバルって、同じ夢を目指して高めあう存在なんでしょ?』
ルカ:『良いライバルが見つかって、よかったね』
杏:——ふふ、そうですね!
杏:これから楽しくなりそうだなって思います!
ルカ:『いいねえ、私も楽しみ…………あれ?』
杏:どうしたんですか? ルカさん
ルカ:『ん~~~……?』
ルカ:『遠くてよく見えないけど、あれって……』
杏:えっ?
???:——あ、いたいた~!
杏:え……みんな!?
スレイド:よかったー! 間に合った!!
彰人:お前ら、なんでここに……
レベッカ:えっと…… ケンさんから、帰りの飛行機の時間を聞いてたから……
セドリック:……本当は、もっと余裕を持って着くはずだったんだが……
エレナ:ごめんっ!! アタシが途中でスマホなくして、 時間ロスしちゃって……
エレナ:あ、でもでもちゃんと見つかったから!
冬弥:それは……大変だったな
スレイド:あはは……でも、ちゃんと見送りたかったからさ
エレナ:うん。またすぐ会えるだろうけど—— 一緒に競う、ライバルなんだし
杏:——ありがと! 最後にまた会えて嬉しいよ
レベッカ:次に会う時は、敵同士だね
エレナ:あはは! 早く戦いたくて、うずうずしちゃうな~
こはね:……はい。私も、楽しみにしてます
セドリック:お互いに、全力を尽くそう
スレイド:オレ達もそれまでに仕上げておくから、覚悟しててよ!
彰人:こっちのセリフだ
冬弥:ああ。こちらも負けるつもりはない
杏:うん! 優勝は絶対、譲らないから!
謙:——さて。 別れを惜しむのもいいが……
謙:お前達、そのままだと飛行機に乗り遅れるぞ
杏:あ……はーい!
冬弥:では、そろそろ行くとするか
エレナ:気を付けて帰ってねー!
杏:ありがと! じゃあ、みんな——またね!
杏:絶対、絶対戻ってくるから……!
杏:また、RUSH BEATSで!