活动剧情

Deep Dark For Light

活动ID:178

第 1 话:アークランドショーコンテスト

アークランド ワークショップ会場
ワークショップ主催者:——これで、ワークショップの全カリキュラムが終了しました。 皆さん、お疲れさまでした
ワークショップ主催者:今回のワークショップは外部の講師陣のご協力もあり、 非常に濃く有意義なものになりました
ワークショップ主催者:この時間が 皆さん自身の力にもなっていれば幸いです
司:(……アークランドでのワークショップも、今日で終わりか)
司:(海外でも活躍する一流の講師から学べただけでなく、 アークランドのキャストの皆さんからも様々な刺激をもらえた)
司:(必死で食らいつく日々も今日で終わってしまうと思うと、 少々寂しいが——)
司:(だからといって立ち止まってはいられん! ここで得たものを糧として、また研鑽していかなければな!)
ワークショップ主催者:それでは……と、締める前に一つ
ワークショップ主催者:皆さんに重要なお知らせがあります
司:ん……?
えむ:重要なお知らせ?
ワークショップ主催者:我々アークランドは、近日、 『アークランドショーコンテスト』を開催します
司:アークランド……ショーコンテスト?
ワークショップ主催者:アークランドでは現在、 新たなショーを制作する企画が進行しています
ワークショップ主催者:通常ならば、新作のショーは所属しているメンバーを中心に 制作していくところですが——
ワークショップ主催者:皆さんもご存じの通り、我々アークランド—— 特にその中のTHE CENTER THEATREには、 『世界をひとつにするショー』を作るという目標があります
司:(世界をひとつにするショー……)
旭:アークランドは元々、世界に向けて素晴らしいショーを 作っていきたいっていう考えを持ったテーマパークだから 興味を持ってたんだけど
旭:THE CENTER THEATREはさらに、 『世界をひとつにするショー』をしようって考えててさ
類:世界をひとつに……?
旭:はは、そう言われてもピンとこないよね
旭:つまりは——トムが俺に見せてくれたようなショーを 今、アークランドは作っていこうとしているんだ
旭:この世界には、どうにか生きのびることはできても、 笑顔になることができない……そんな境遇の人達がいる
旭:THE CENTER THEATREは そんな人達のために、世界中で公演をやる予定なんだよ
司:(——あの時、旭さんが言っていたことか)
司:(たしか今は、そのための土台作りをしていると 話していた気がするが……)
ワークショップ主催者:この目標のためには、 多くの素晴らしい役者の協力が欠かせません
ワークショップ主催者:そして素晴らしい役者を集めるためには、 まず、才能ある若手が成長できる場を作ることが必要です
ワークショップ主催者:そこで—— 今回は外部からも劇団を募集し、 コンテストという形で、その機会を作ろうと考えました
類:(……なるほど。 アークランドらしい考え方だ)
類:(興行のためだけではなく、 目的のため、業界の底上げを考え—— 未来への投資としてコンテストを開く、ということだね)
ワークショップ主催者:このコンテストで優勝した劇団には、 アークランド内のTHE CENTER THEATREで、 2週間公演をする権利が与えられます
司:……! THE CENTER THEATREでだと……!?
司:(THE CENTER THEATREは テーマパークの中にあるとはいえ、日本でも指折りの大型劇場だ)
司:(ワークショップの課題で実際に立つことこそできたが…… 観客が入れば、その表情はまた一変するだろう)
司:(あそこでオレ達のショーができれば、 きっと、かつてない規模の学びを得られるはずだ……!)
ワークショップ主催者:また、コンテストの審査員は、アークランドの制作陣と——
ワークショップ主催者:特別審査員として、ここにもいらっしゃる 榊黄龍さんに参加していただく予定です
榊:ってわけで、引き続きよろしくね~
類:(……! 榊さんが……!)
榊:あー、そうだそうだ。 僕からもひとつ
榊:みんな、なんとなく察してるかもしれないけど、 コンテストでいい結果を出せたら、 ちょっといいことがあるかもしれないよ?
えむ:いいこと? ……みんなでパレードができちゃうとか!?
寧々:いや、この流れでそれはさすがにないでしょ……
榊:やっぱ光る子は、僕も欲しいからねえ
榊:すぐどうこうってわけじゃないけど、 もしかしたら、ちょっとしたお誘いをするかもしれないよ。 『僕の海外公演に出ないか』とかね
寧々:海外公演……!
司:(つまり——)
司:(世界に羽ばたくチャンスに成りうるということか……!)
榊:ってわけで、頑張ってね
ワークショップ主催者:その他コンテストの詳細については、 明日の昼、アークランドの公式サイトで発表されますので、 そちらを参照してください
ワークショップ主催者:それでは改めて、ありがとうございました。 皆さんのこれからの活躍を祈っています
スクランブル交差点
司:——お前達!
司:ワークショップが終わって早々だが、 話したいことがある! というのも——
寧々:コンテストの話でしょ?
司:む! そ、そうだが——
えむ:もちろん出るんだよね、司くんっ!!
司:お!? と、当然だ!! 世界に羽ばたく一歩として——
類:このチャンスを逃すわけにはいかない——だよね?
司:……ぜ……ぜ……
司:全部言うんじゃな~い!!!! オレの台詞がなくなるだろうが!!!!
類:フフ、悪いねえ
類:僕も司くんと同じで、こんな機会をもらえることが嬉しくて ついね
寧々:わたしも。 今の実力を試すいい機会になりそうだしね
寧々:しかもうまくいったら夢に近づけるんだから。 出ないわけにはいかないでしょ
えむ:うんっ! あたしもあんなおっきな舞台の裏側が勉強できたら、 すっごく嬉しいな!
えむ:コンテストで優勝して みんなで、夢にギューンってちかづこーう!
司:……まったく、オレが言えたことでもないが 猪突猛進というか、なんというか……
司:しかしその意気やよし! すでに気合は十分!というわけだな!
司:ならば、オレから言うことは何もない!
司:ワンダーランズ×ショウタイム、 コンテスト優勝目指して——全力でいくぞ!!
寧々・えむ・類:『おー!!』

第 2 话:プリンセスと呪いの花

乃々木公園
司:いっちにっさんっしィ~!!
えむ・寧々:『ごーろくしちはち!』
司:ぃよーし! 準備運動も終わったところで次は発声に——と思ったが……
司:類が来ないな。 今日は脚本を持ってくると言っていたというのに
寧々:今朝は『書き上げたから最終確認が終わり次第行く』って 言ってたんだけど……あっ
えむ:類くんだ! 類くん、おはよ~っ!!
寧々:遅かったね。 一体何して、って……
類:……だから……レンブラントライトを……、 ラストは暗転せず……
えむ:あれれ~!? 類くん、あっちに行っちゃった!!
司:な、なんだ!? どうしたんだ!? おい、類~!!
類:はっ……
類:はは、すまないね。 演出プランを考えながら歩いていたら、 周りが見えなくなってしまっていたみたいだ
司:なるほど……類らしいといえば類らしいが……。 事故にだけは気を付けるんだぞ?
司:——それで、どうだ。脚本の方は
類:今の僕の全てを出し切れたと思うよ
寧々:自信、ありそうだね
類:フフ。 ワークショップでの経験と反省を生かした、渾身の一作だからね
司:——ならばよし! さっそく読ませてくれ!
類:ああ!
司:『プリンセスと呪いの花』……
えむ:おお~! お姫様が主人公なんだね!
類:アークランドは開園当初から、 『誰でもプリンセス』というコンセプトを掲げているからね
類:そしてこのコンセプトはそのまま、 今回の僕達に与えられたショーのテーマでもあり——
司:それをどう料理するかが、 各劇団の腕の見せ所というわけだな
類:ああ、その通りさ
司:…………ふむ
司:(冒頭はコメディタッチだが…… なるほど、中盤から毛色が変わるな)
司:(演技もここからテイストを変えていくべきだろう。 それから——)
司:(……なるほど。こういう展開になっていくのか)
司:(では、王子はどうなってしまうんだ? 続きは——)
司:…………
司:類!!
類:なんだい?
司:この脚本——おもしろいぞ!!
司:途中まで演技プランを考えながら読んでいたが、 最後はすっかりのめりこんでしまった。 さすがだな!
寧々:うん……! 『大切な人を愛をもって導けば、誰もがプリンセスだ』 っていうメッセージがすごくいいな
えむ:ねえねえ、早く読み合わせしよっ! あ、でもその前に発声練習しなくちゃだよね!
類:……ありがとう。 そう言ってもらえると、考え抜いた甲斐があったよ
類:それじゃあ、発声をしたら、すぐ読み合わせに入ろう!
寧々:——みんな準備できたみたいだし、いくね!
司:ああ!
司:(……今回の主役は、プリンセス——姫役の寧々だ)
司:(そしてオレは準主役の王子。 王道ならば、姫と王子のラブストーリーになりそうだが……)
司:(このショーは、その先の物語だ)
司:『姫! かの魔王を打ち倒し、お迎えに参りました!』
寧々:『ああ、王子……! 愛しい人! あなたとならば、どこまでも行けましょう!』
類:『そうしてふたりは結ばれ、幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし』
類:『——そしてここからはその先。 めでたしめでたしの、後のお話です』
寧々:『——はい、パンよ。 家族みんなで分けて食べてね』
寧々:『ふぅ。これで今日配る分は全部かな』
えむ:『ハート様~! 今日もお疲れ様ですっ!』
えむ:『貧しい民に食事を恵む! 我が国の姫として、立派なお心がけでございますね!』
寧々:『ありがと。 でも、別に褒めてもらうようなことじゃないよ』
寧々:『この国に来たばっかりの私にできるのは、 これくらいってだけだし』
寧々:『それに、隣の国との衝突が続いて 国のお金がそっちに使われてるから、 ご飯が食べられない人も増えてるしね……』
寧々:『……にしても、はぁ。 もう10日かぁ……』
寧々:『あいつってば、全然会いに来ないんだから!』
えむ:『あら! ハート様ったら! そんなに恋しいなら、働いてばかりいないで ブレス王子に会いにいけばいいじゃありませんか』
寧々:『それはそうだけど…… なんかちょっとムカつくの!』
寧々:『あいつってば、最初は“俺の永遠の愛を君に捧ぐ!”なんて 言ってたくせに、最近は全然会いにきてくれないんだもん!』
えむ:『それは仕方ないことですよ。 王子には、王の跡を継いで国をまとめるという 大切なお仕事があるんですから』
寧々:『それはそうだけど……はぁ。 ちょっと気分転換に散歩に行ってくる』
えむ:『はい! いってらっしゃいませ!』
司:『——ハート! ハート、どこだ!』
えむ:『あら? 王子、ハート様はちょうど散歩に行かれましたよ』
司:『なんと…! ようやく時間ができたというのに……』
類:『——王子。 まだ執務のお時間ですよ。どこに行かれるのですか?』
司:『うっ、ニド……! はぁ、わかったわかった……』
司:(——と、王子の忙しさもあって、 ふたりはすれちがい気味だ)
司:(そんな時、第二王子を担ぎ上げたい側近が、 王座を奪うための策略を企てる)
司:(側近は王国に封印されていた 『呪いの花』で王子に呪いをかけ——)
司:(呪いをかけられた王子は、 少しずつ絶望にさいなまれていく。すると——)
司:『よーし! 今日の仕事はこれで終わりだ!』
寧々:『え? このあとは、隣の国の使者と調停の話をする予定じゃ……』
司:『……そんなことをしても国の仲は良くならないだろう?』
司:『それよりはハートと遊びに行ったほうがいいさ!』
寧々:『あ……』
寧々:『……本当にいいのかな? なんだかブレスらしくない気がするけど……』
寧々:『でも、久しぶりにふたりで出かけられるのは嬉しいし……』
司:『前に、湖でボートに乗りたいと言っていただろう? 今日は天気もいいし、乗ろうじゃないか!』
寧々:『え、本当? ……じゃあ、新しいドレスに着替えてくる!』
司:(最初、姫は王子が 自分との時間を大切にしてくれているのだと喜ぶ)
司:(しかし、デート先の湖で出会った妖精により 王子にかけられた呪いに気づき——)
司:(姫は王子と共に呪いを解く旅に出る。 しかし……)
えむ:『王子さま~! もう、いい加減歩いてよ~!』
えむ:『王子さまが自分で花を抜かないと、 呪いは解けないんだよ!?』
司:『……わかっている、妖精! だが、どうしても体がいうことをきかない……』
司:『頭の中で何かがささやいているんだ。 呪いの花を抜いても無駄だ。何も変わらないと……』
寧々:『ブレス……』
類:(『呪いの花』の威力は、花に近づくほど増していく)
類:(呪いを解こうと進むほどに 王子は自分でもどうしようもないほどの 虚無感に苛まれていき——)
類:(目的地である山の頂にたどり着く頃には、 完全に絶望してしまっている)
司:『……もう、いい』
司:『ありがとう、ハート……。 だがもう無理だ……俺にはどうにもできない』
寧々:『ブレス! ブレスったら! あなたらしくもないわ!』
司:『…………いいんだ。もう』
司:『俺が何をしようと、 人は憎み合い、国は争い続ける』
司:『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、 行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
司:『——全て、無意味だ』
寧々:『ブレス!!』
寧々:『——許さない!』
寧々:『私はあなたと行きたい! あなたと共にある未来を生きたい!』
寧々:『だから……諦めるなんて、絶対に許さない!』
寧々:『もし全てに意味がないとしても、 見つかるまで、私が一緒に歩き続けるから!』
寧々:『だから——立って!!』
司:(姫は王子の背を押して山道を登り、 どうにか花のもとへとたどり着く)
司:(そうして呪いの花を抜き——)
類:……うん。いいね
類:読み合わせの時点で、みんなかなり役を掴んでくれている。 正直、驚いたよ
えむ:やった~!!
寧々:よかった……。 ふふ、この役好きだな。なんか自然と力が入るっていうか
司:ああ! ハートの諦めの悪さは実に寧々らしいしな!
寧々:ちょっと、どういう意味?
司:ハッハッハ! そのままの意味だ! 熱演を期待しているぞ!
司:(実際、この役は寧々のハマり役だろう。 ひねくれたところもあるが、情熱的で、 困難に立ち向かう強さを持っている)
司:(……今回注意する必要があるのは——オレの方だ)
司:(愛をもって情熱的に行動する……。 こういった性格の役は慣れている。 だが……)
司:(ブレスは、呪いに囚われ徐々に絶望していく)
司:(その心情を説得力ある演技で示さねば、 寧々がどれだけ奮闘しても ショー全体が軽いものになるだろう)
司:(『絶望していく王子』……。 この表現を突き詰めていかなければな)
えむ:ほよ? 誰かのスマホが鳴ってるよ?
類:ああ、僕のようだね。 ……ん?
司:どうしたんだ?
類:……意外な人物からかかってきてね
類:——旭さんだ
司・えむ・寧々:『え!?』

第 3 话:合同練習!?

数日後
アークランド 練習室
旭:——急なお願いだったのに、オーケーしてくれて嬉しいよ
旭:というわけで……今日から合同練習、よろしく!
司:はいっ!
司:しかし、旭さん達もコンテストに出るとは驚きでした
旭:はは! まあ、外部向けのコンテストに 俺達アークランドチームが出るなんて思わないよな
旭:どうも上としては、このコンテストでアークランドの若手にも 成長してほしいみたいでさ
旭:『スタッフの手は借りないで、 他の劇団と同じように若手だけで作り上げろ!』って お達しが出ているんだ
類:なるほど。 たしかに、それはいい経験になりそうですね
旭:ああ! 実際、自分達の力だけで 同年代の役者や演出家と競い合えるのは楽しいしな!
寧々:そうですね……。 わたしも、楽しいし、負けられないなって気持ちになるので、 わかります
えむ:うんっ! みんなでせーので勝負して、もーっといいショーにしちゃおう!
旭:——みんなとも刺激し合えたらいいな。 この合同練習も、そのために頼んだしね
旭:というわけで、改めてよろしく! 負けないからな!
司:はい! オレ達も負けませんよ!
アークランドキャストA:お! ワンダーランズ×ショウタイム、来てくれたのか! またよろしくな!
アークランドキャストB:隣同士で練習できるなんて、嬉しいな! 演目は違うけど、準備運動とか発声は一緒にやっていこうね!
司:あ……はい! 皆さん、またよろしくお願いします!
旭:よーし! それじゃあ早速ストレッチからいこう!
えむ・寧々・類:『はーい!』 『はい!』
司:(連絡をもらった時は驚いたが…… いい機会をもらえたな)
司:(ライバルとなるアークランドのショーを近くで見られる…… これほどの刺激はないだろう)
司:いつも以上に、気合を入れていかねばな……!!
1時間後
えむ:——もう、おにぎりはこりごりだよ~!!
類:では、エチュードはこれくらいにして、 ここからは分かれて練習していきましょうか
旭:わかった。 この机のこっち側が俺達で、あっち側が類くん達だな
司:はい! それではまた!
類:さて、早速今日も冒頭のシーンからやっていこうか。 用意はいいかい?
えむ:はーいっ! フルパワーでがんばろ~っ!
寧々:コンテストまでは2カ月もないし、 1秒も無駄にしてられないもんね
司:——ああ!
司:(合同練習でもやることは変わらない)
司:(修行を経て身につけた技をもって、 全力で演じるのみ!)
司:やるぞ!
司:『さあ、行こうハート! 俺達の愛のパラダイスへ!』
寧々:『ちょ、ちょっと、ブレス~!?』
類:——うん、いいね。 特に司くん、ステージを大きく使えているよ
類:ここは小さな子供たちにも喜んでもらえるよう、 オーバーな演技にしてもらいたかったからね。バッチリだ
寧々:あ……なら、わたしは今の動きじゃまだ小さいんじゃ……
類:ふむ……。 悪くはないけれど……
類:たしかに、気を付けた方がいいね。 ハートの内向的な性格をそのまま素直に演じてしまうと、 あの大きな舞台では埋もれてしまう可能性がある
寧々:そうだよね……。 ……これぐらいの大きさならどう?
えむ:ん~、まだちょっとちっちゃいかも?
司:——ここはオレを基準に考えるといいだろう
司:観客は舞台上のハートとブレスを見ているからな。 自然、比べて見る。だから——これぐらいは動く必要がある
司:動きの緩急も同じだ。 オレのスピードよりもう少し遅くして……これぐらいか
寧々:たしかに……。 ありがと、司! もう1回やってみる!
司:ああ! ……そうだ、類。この台詞の次なんだが——
司:ハートに断られたあと、言い返すシーンがあるだろう? 今はコミカルに、瞬時に言い返すようになっているが…… ふたりの心情的なすれ違いを描くうえでは重要な場面だ
司:大げさに驚くよりは、一瞬動きを止める方が 印象に残るのではないかと思ってな。どうだろうか?
類:……ふむ。 ここは掛け合いで盛り上げようと思ったけれど…… 一度やってみせてくれるかい?
司:ああ、わかった。 寧々、やるぞ!
寧々:うん! …………
寧々:『——バカバカバカっ! ブレスはもう、私のことなんてどうでもいいんでしょう!?』
寧々:『だからそんな風に簡単に、 またあとで、また今度、って言うのよっ!』
司:『…………っ』
司:『それは君だってそうだろうっ! いつも俺が会いにいくと留守にしていて……! 手紙の返事だってそっけないじゃないか!』
寧々:『そ、それは……』
類:——うん、いいね。 止めると少々勢いが落ちてしまうかと思っていたけれど、 今のはとてもよかった
司:そうか……! ならばこれでいこう!
司:(——いい調子だ)
司:(春名座で修得した役の人生を想像する心。 三日月組で修得した役を全身で表現する力。 そして森ノ宮で修得した様々な役を演じる技——)
司:(これらのおかげで、 以前よりも役を掴みやすく、演じやすくなっている)
司:(ワークショップでも、アークランドの皆さんに 後れをとることはなかったと考えると……)
司:着実に成長できているな……!!
???:ふふふっ
司:ん?
えむ:旭さん! 練習はどうしたんですか?
旭:ちょうどついさっき昼休憩に入ったんだ。 そしたらおもしろいシーンが見えたからさ
旭:特に司くん! 演技が前とかなり変わったね!
司:え?
旭:まず動きが違うよね。 無駄がないっていうか…… 役を表現するのに必要なことをしっかりできてるっていうか
旭:みんなが知ってるかはわからないけど—— 三日月組にいる鬼島さんっていう人を思い出したよ
司:え!?!?
司:旭さん……鬼島さんをご存じなんですか?
旭:ああ。以前共演したことがあってね
旭:もしかして、本当に鬼島さんに習ったの?
司:はい! しばらく三日月組でお世話になりました
旭:なるほど! だから似て見えたんだろうな
旭:じゃあ……もしかしたら、春名座にも行ってたりしない?
類:そうですが……なぜわかるんですか?
旭:あはは、これはカンだよ。 役に入る前の司くんと寧々ちゃんの雰囲気が、 集中してる時の獏野くんにちょっと似てたから
寧々:そ、それだけで……!?
司:(見ただけでそこまでわかってしまうとは……)
司:(さすが旭さんだ。 様々な演技を学び、体得してきたからこそだな)
司:(……! そうだ!)
司:旭さん! もしまだ時間があったらでいいんですが——
司:オレが演じるこのブレス王子という役、 旭さんならばどう演じるか、聞かせてもらってもいいですか?
旭:え? そうだな……少し台本を見せてもらってもいいかな?
司:はい、どうぞ!
旭:ありがとう! 10分くらい時間をくれる?
司:わかりました! お忙しい中、ありがとうございます
司:(……演技プランは自分なりに試行錯誤している。 だが、あのシーン——)
司:『…………いいんだ。もう』
司:『俺が何をしようと、 人は憎み合い、国は争い続ける』
司:『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、 行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
司:『——全て、無意味だ』
司:(劇中で最も絶望するシーン)
司:(あそこでブレスの感じる“絶望”に、 オレはまだ到達していない気がする)
司:(旭さんならブレスをどう演じるか—— 聞かせてもらえれば、参考になるはずだ)
旭:……うん。ざっくりだけど、イメージできたよ!
司:本当ですか! じゃあ、早速聞かせていただいても——
旭:うん、そうだね。えっと——
旭:ああ……でも、話すだけだとちゃんと伝わるか微妙だから……
旭:よかったら、今ここでやらせてもらってもいいかな?
司:……え?

第 4 话:力の差

アークランド 練習室
旭:『……もう、いい』
旭:『ありがとう、ハート……。 だがもう無理だ……俺にはどうにもできない』
司:(……なんだ……これは……)
司:(視線も、体の動きも……全てが“虚ろ”だ)
司:(まるで旭さんの後ろに、 深く暗い穴が空いているようで——)
司:(目が、離せない……)
寧々:『ブレス! ブレスったら! あなたらしくもないわ!』
旭:『…………いいんだ。もう』
旭:『俺が何をしようと、 人は憎み合い、国は争い続ける』
旭:『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、 行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
旭:『——全て、無意味だ』
寧々:『ブレス!!』
司:(一読しただけで、ここまでのものになるとは……)
えむ:…………っ
類:(この短時間で、僕の描いていたイメージを ほぼ完璧に掴んで表現している。 ……相変わらず、恐ろしいね)
旭:……っと。 ごめん、ずいぶん長くやっちゃったな
旭:この役、演じ甲斐があるから ついついのめりこんじゃったよ
類:旭さんにそう言っていただけるとは、光栄です
旭:あ、そうだ! それで、この役をどう演じるかだけど……
司:は、はい!
旭:俺はやっぱりこの本のテーマでもある 『絶望』の表現が鍵になるって思ったよ
旭:最後、王子が陥る絶望をどれだけ真に迫って演じられるか…… そこに全てがかかっていると言っていいかもしれないな
旭:王子の絶望が深ければ深いほど、 希望を追い求める姫の姿がまぶしく見えるから
司:……やはり、そうですか
司:オレもそう考えているんですが…… まだうまく表現できていない状況です
旭:わかるよ。ここはかなり難しいもんね
旭:どう表現するかもそうだけど…… そもそも『絶望』って呼べるほど強い感情を感じることって、 そこまで多くないしね
旭:だから——
旭:まずは、自分が一番絶望する状況を想像してみるのはどうかな
司:絶望する、状況……
旭:ああ。そうやって『自分の中の絶望』の感情を掴めれば、 王子の絶望もイメージしやすくなるかもしれない
旭:……ちょっと苦しい作業にはなるだろうけどね
司:いえ……ありがとうございます。やってみます
アークランドキャストA:おーい、旭! そろそろ練習再開するぞ!
旭:え、もうそんな時間!? 昼飯、食べ損ねた……!
司:あ、すみません! オレが急に頼んでしまったばっかりに……
旭:いや、急いでかき込むから大丈夫! 俺もすごく楽しかったしね!
旭:また何か手伝えそうなことがあったらいつでも言ってよ。 力になるからさ!
司:……はい!
司:(……ここまで修行して、 成長を実感してきたからこそわかる)
司:(オレと旭さんの間には——)
司:(それでもなお埋まらない差が、ある)
司:(不断の努力がなせる技か、生まれ持ったセンスなのか…… それとも、その両方なのか)
司:(いずれにせよ——)
司:(旭さんとオレの間には、大きな差がある)
司:(大きな……力の差が)
司:(……辿り着けるのか?)
司:(オレは、あの場所に——)
司:——いや
司:辿り着けるか、ではない。 辿り着くんだ
司:(自分のふがいなさは、既に知っている。 思い描いたようには進めないことも)
司:(そしてそれでも進むと覚悟した)
司:(だから——揺らぐことはない)
えむ:……あれ?
えむ:司くん……?

第 5 话:一番の絶望

司の部屋
司:(……絶望……)
司:(王子の絶望をどうイメージし、どう表現するか。 それが、このショーの鍵になる)
司:(そしてそのためにはまず、旭さんも言っていたように、 『自分が一番絶望する状況』を掴む必要がある)
司:(だが——)
司:想像ができん……
司:(……何度か、絶望しかけたことはある)
司:(病気で苦しむ咲希に何もしてやれなかった時。 初めてのショーが失敗に終わった時。 自らの不甲斐なさを知った時——)
司:(なんとオレは無力かと……そう感じた。 しかし——)
司:(立ち上がれないほど絶望はしなかった。 無力でも、まだ立ち上がりたいと思えた)
司:(だが……)
司:(このシーンでのブレス王子は、完全に絶望しきっている。 動くこともできないほどに)
司:(それほどの絶望を感じる状況——)
司:ダメだ……。 行き詰まってしまったな……
司:……はぁ。 もう遅いが……セカイに行って頭を切り替えるか
司:ん? 誰かの声……?
司:父さん達はもう寝たはずだが——
司:は……っ! も、もしや……!?
天馬家 リビング
司:泥棒ならば、返り討ちにせねば……! いや、その前に通報か……!?
司:いずれにせよこの天馬司、なんとしても家族を守—— む?
テレビCM:『——わたしの保険はこれで決まり! フラワー生命!』
司:な……なんだ。テレビか
司:誰かが消し忘れていたようだな。 まったく。リモコンはと……
アナウンサー:『——ここからはワールドニュースです』
司:ん?
アナウンサー:『先週から本格化した軍事侵攻により、 現地では深刻な影響が出ています』
アナウンサー:『両国の対立は激化の一途を辿っており、 国連は報復の連鎖が起きることを懸念して————』
司:あ……
司:戦争か……
司:(……これこそ、想像がつかんな)
司:(——生まれ育った場所に、爆弾が落ちる)
司:(街や学校が破壊され、 人々の顔が悲しみと怒りに染まる)
司:(当たり前の日常が一変し、 そこでは笑顔も消え失せ——)
司:……あまり積極的に想像したくはないな
司:(だが……)
司:(いつか、こんな苦しみのただ中にいる人達も 笑顔にできるようになりたい)
司:(そのためにも、もっと力をつけて 役を掴めるようになりたいが——)
司:……まだまだ、道は遠いな……
ワンダーランドのセカイ
司:……オレが一番絶望する状況……
司:(……何度か考え、 『実際どうなったら絶望するか』は、見えてきた気はする)
司:(オレが絶望するとすればきっと——)
司:いや、しかしそれでは……
???:ぴょん、ぴょん、ぴょーん……
司:ん? また何か聞こえたような……
ミク:ぴょんぴょーん!! 司くん、こんばんぴょーん!!
司:どわっ! ミ、ミク!!
司:な、なんだそのぴょんぴょんというのは!
ミク:えへへ、うさぎさんのショーを考えてたら、 いつの間にかぴょんぴょんしちゃってたんだ~♪
司:そ、そうか……。 なんというか、相変わらず自由だな……
ミク:えへへ、それほどでもないぴょん~♪ 司くんは練習に来たの?
司:ああ……。 王子への理解を深めようと思ってな
ミク:わあっ☆ それって、コンテストのショーの王子さまだよね?
ミク:楽しみだな~! 王子さまみたいな役、司くんすっごく上手だもんね☆
司:しかし……これがなかなかうまくいかん
ミク:そうなの!? なんでなんでーっ!?
司:……簡単に言えば、 まだ想像力が足りんのだろうな
司:今日は、王子の絶望について考えていたんだが——
ミク:なるほど~。 司くんは、どうなれば絶望するのかなって考えてたんだね!
司:……一応、自分なりの答えは出ているんだがな
ミク:えっ? そうなの?
司:ああ。 オレが絶望するとすれば——
司:それは、夢を失う時だ
ミク:それって、スターになる夢がなくなっちゃうってこと?
司:そうだ。 正確には、夢を諦める時だろうな
司:一番の夢を諦める。 ……そうなったら、きっとオレは深く絶望するだろう
司:これからどうすればいいのか、 何を目的に生きていけばいいのかわからず…… 己を見失うかもしれない
司:だから絶望をイメージしたいならば、 夢を諦める瞬間を想像すればいい
司:しかし——ここでひとつ問題が出てくる
ミク:問題?
司:夢を諦める自分が想像できない、ということだ
ミク:あ……そっか!
ミク:司くんは、絶対絶対スターになる!って決めてるもんね!
司:そのとおりだ!
司:たとえば事故にあって歩けなくなっても、 声が出なくなっても——オレは、スターになるという夢を 諦められないだろう
司:何があっても夢を追い続ける!と覚悟したからな!
ミク:司くん……
ミク:えへへっ♪ 司くんはやっぱり司くんだね~☆
司:……そういう自分自身の決意は誇らしく思う
司:しかし、そうなると結局、王子の絶望を掴めなくてな。 ……これからどうするべきか……
司:…………。 これでは、旭さんに追いつけんな
ミク:旭さん? あ……そういえば、一緒に練習するって言ってたよね!
司:ああ。おかげでいろいろと勉強になっている
司:しかし……同時に思い知らされる。 あの人は、オレよりもずっと速く、遠くへ進んでいるのだと
ミク:司くん……
司:だが——ともかく、やるしかない
司:進むことでしか、道を切り拓くことはできないからな
ミク:あ…………
ミク:(……今日の司くん、 いつもよりずーっと遠くを見てる)
ミク:(きっと、ほんとにほんとに、 旭さんが遠くにいるのが、悔しいんだろうな)
ミク:(でも、悔しい気持ちも悲しい気持ちもぐーって飲み込んで、 ちょっとずつ前に進もうとしてて………)
ミク:……すっごく、かっこいいなあ
司:ん? 今、何か言ったか?
ミク:えっとね——あっ!
ミク:ミクにじゃんけんで勝ったら教えてあげるっ☆
司:なぬ? そう言われると余計気になるが——
???:——司く~~~~ん!!
ミク:ひょ? この声って——
えむ:あっ、ミクちゃんもいる! こんばんわんだほーい!
類:やっぱりここにいたんだね
司:お前達……どうしてここに!?

第 6 话:繋がるイメージ

ワンダーランドのセカイ
司:なぜ全員いるんだ? 今夜は各自で自主練だったはずだが……
寧々:うん。 だから、わたしも類も家で練習してたんだけど——
寧々:えむから連絡が来てさ
司:えむから?
えむ:うん! あのね——
えむ:あたし今日、司くんが旭さんを見てる時、 ギューってしてるなあって思ったの
えむ:それできっと、司くんは 『もっともっとがんばろう!』って思ってるんじゃないかなぁって
えむ:電話で寧々ちゃんにその話をしたんだ。 そしたら……寧々ちゃんも、類くんと帰り道に 同じ話をしてたって教えてくれて
類:それで、僕達にできることはなんだろうと思ってね。 会って話をしようとここに来たら——
類:なんと先客がいたというわけさ
司:……まったく。 お前達はなんでもお見通しだな
寧々:ま、そこそこ長い付き合いだからね
えむ:——司くん!
えむ:あたし、なんでもやるよ!
司:な、なんでもとはまた大きく出たな……
寧々:わたしはさすがに、なんでもは無理だけど……
寧々:……でも、ダメ出しならいくらでもするから言って。 いつもそうしてもらってるしね
類:ああ。 ——とはいえ、これは僕達の勝手な希望だ
類:自分の力だけでやり遂げたい、と司くんが願うなら 僕達はそれを信じて待つよ
司:寧々、類……
類:ただ、覚えていてほしいな。 君が望む限り、僕達はどこまでも応える
えむ:うん!
えむ:だってあたし達、自分の夢と同じくらい—— 司くんの夢が叶ってほしいって思うから!
司:(……オレはまだ、 先を行く旭さんの背を見ることしかできない)
司:(想像力も、表現力も、何もかも…… まるで追いついていない)
司:(だが——)
司:(オレにはこいつらがいる)
司:感謝するぞ、お前達!
司:では早速相談に乗ってほしい。 少し長くなりそうだが、いいか?
類・えむ・寧々:『ああ!』 『うん!』
類:……やはり、ラストの最も絶望するシーンで悩んでいたんだね
寧々:難しいもんね。 正直、わたしもイメージできないし……
えむ:ん~……! ぜつぼう、ぜつぼう……
えむ:う……う~!!
司:ど、どうしたえむ!?
えむ:もしフェニックスワンダーランドがなくなっちゃったら、 って想像したら、悲しくなっちゃって……!!
寧々:ああ……えむにとって一番大切なものだもんね
寧々:あんまり無理しないで、えむ。 これって結構しんどい作業だから
えむ:うん……
類:辛いだろうけれど…… やはり、『大切なものを失う』という考え方で進めたほうが 掴みやすそうだね
司:しかしさっきも言ったとおり、オレにとっての大切なものは、 オレ自身の夢だからな……
司:そうなると、失うイメージがつかない。 ……堂々巡りだな
えむ:そういえば、旭さんはどうやって想像したんだろう?
寧々:あ、たしかに。 もしかしたら、それを聞いてみれば——
類:旭さんのイメージは、 僕らの参考にはならないんじゃないかな
類:……彼は、紛争を経験しているからね
司:……!
寧々:あ……そっか。そうだよね……
司:たしかに、以前話していたな。 争いに巻き込まれて、親ともはぐれ……
司:(そう考えると、 ブレス王子は旭さんに近いのかもしれないな)
司:(絶望に触れながらも、 世界の平和と人々の笑顔を心から願い——)
司:……ん?
ミク:あれ? どうしたの司くん?
司:……いや……何か、繋がりそうな気が……
旭:『俺が何をしようと、 人は憎み合い、国は争い続ける』
アナウンサー:『先週から本格化した軍事侵攻により、 現地では深刻な影響が出ています』
司:(当たり前の日常が一変し、 そこでは笑顔も消え失せ——)
司:……そうか……
司:これならば……
寧々:何? 何かわかったの?
司:……ああ
司:お前達のおかげで、ヒントが見つかった
司:——オレにとっての絶望。 それを、どうイメージすればいいのか
1カ月半後
THE CENTER THEATRE
旭:……ええと、 たしか、ワンダーランズ×ショウタイムの席は——
旭:あ、いた! おーい、みんな!
司:旭さん! 本日はよろしくお願いします
旭:こちらこそ、よろしく! お互い、全力を出し切って頑張ろう!
旭:けど——まさか、司くん達が 今回のコンテストのトリになるとはね
司:ええ。くじを引いた時は驚きました
司:しかも旭さん達が、オレ達のひとつ前ですしね
旭:ああ。はは、ちょっと運命を感じるな!
旭:……結構有名な劇団も参加してるから、 トリは緊張するかもしれないけど——
旭:……いや、そんなことはなさそうだな。 だいぶ自信がありそうだ
司:はい
司:仲間のおかげで、 オレなりの絶望を掴むことができました
司:ですから——今までで一番の演技を見せられる自信があります
旭:そうか! それは楽しみだ!
スタッフ:『皆さま、ご着席ください。 まもなく開演いたします』
旭:おっと、もう始まるみたいだ
旭:話せてよかったよ! それじゃ、またあとで!
類:……フフ。今までで一番の演技を見せる、ね
寧々:言い切ったじゃん、司
司:む? それがどうした?
えむ:えへへ♪ 司くんがシャキシャキピカーン!で嬉しいな!
司:当然だ! オレは未来のスター・天馬司だからな
司:(みんなをショーで笑顔にするスターになる——)
司:(その夢を追い続けてきたからこそ…… この役作りはとても苦しかった)
司:(何冊も本を読み、何本も映像を見て、話を聞き—— 想像のし過ぎで悪夢まで見た)
司:(しかし……だからこそ確信がある)
司:(最高の演技ができると)
司:(演じ切ってみせる。 オレが掴んだ一番の“絶望”を——!)

第 7 话:変わる世界

THE CENTER THEATRE
他劇団の役者:『——今こそ、この扉を開く時!』
司:(……さすがだな)
司:(劇団アラウミ、乙女企画——。 有名な劇団から、知る人ぞ知る劇団まで 集まっているだけのことはある)
えむ:はあ~! これもすっごくおもしろかったね!
寧々:うん……! 正直、どの劇団が優勝してもおかしくないって感じだよね
類:ああ。どの劇団もハイレベルだからね
類:しかし——次は優勝候補と言われている劇団だ。 更に期待できそうだよ
司:……旭さん達のチームか……
司:ん? なんだ? 急に劇場が……
王子:『——うーん、見つからないなあ!』
寧々:あ……! 旭さんが、客席から……!
王子:『もしかして君かい!? 僕の運命の人!』
寧々:えっ、わ、わたし!?
王子:『それとももしかして……たくましい腕の君かい!?』
他劇団の役者:オ、オレ!?
王子:『うーん、どうも違うようだな……。 こんなに探してもいないなんて、 僕のプリンセスは一体どこにいるんだろう?』
類:……フフ、掴みはばっちりだね
司:(なるほど、旭さんは『運命の姫を探す王子』だったか)
司:(隣で稽古を見てはいたが、 通しで見るのは初めてだ)
司:(どんなショーになるのか……楽しみだな)
王子:『ああ、どうしてこんなに探しても 僕のプリンセスは見つからないのだろう?』
王子:『はっ! もしや、悪い竜に囚われている……!? ならば助けださないと!』
小鳥:『王子、王子! そもそも、姫はどんな人か知ってるの?』
王子:『そりゃあもちろん! 僕のプリンセスは、 それはそれは深い愛で僕を包み込んでくれる存在さ!』
小鳥:『深い愛ねえ……。 なんだか漠然としてるなあ』
王子:『……ねえ、本当に僕のプリンセスはいるのかな?』
老いた猿:『ふむ。 なぜそう考えるんだい?』
王子:『昔、僕を育ててくれたばあやに、 いつかあなたを深く愛する人が現れるでしょうって言われて、 ずっとそう信じてきたけれど……』
王子:『僕は王子なのに、バカで、役に立たないから…… こんな僕を愛してくれる人は、本当にいるのかなって』
王子:『ああ……そうか。 やっとわかったよ』
王子:『愛をもらおうとするんじゃなくて、 僕は、ただ、愛そうと思えばよかったんだ』
王子:『そして、共にいたいと思える誰かと生きて…… 愛を育てていけば』
王子:『本当は誰だって——僕のプリンセスだったんだ』
司:…………
司:(伝わってくる)
司:(王子の胸に広がるあたたかさが、こちらにまで——)
司:……さすが旭さんだ
類:そうだね。 脇を固める皆さんも含めとてもレベルが高かった。 ……脚本も演出も巧みで、思わずのめりこんでしまったよ
寧々:うん……
寧々:でも——
司:負ける気はしない、だろう?
寧々:ちょっと、人の台詞取らないでよ
司:前のお返しだ! 役者ならば誰でも、いい台詞はほしいものだからな
えむ:えへへっ♪ みんなすーっごくメラメラしてるね!
司:ああ。 何せ——今から最高のショーができるのだ
司:では、皆に見せようではないか
司:ワンダーランズ×ショウタイム、 その進化した姿を!
えむ:うん! いっくよ~!
えむ:みーんなニコニコ笑顔にしちゃおう! わんわん~~~~
司・えむ・寧々・類:『わんだほ~い!』
榊:(……ん~。次でやっと最後か)
榊:(どこの劇団も悪くなかったけど…… 想像の範囲内って感じだなぁ)
榊:(面白かったのは、玄武旭くらいかな。 とにかく演技の引き出しが多い。 彼の力でショー自体のクオリティも一段階上がっていた)
榊:(……やっぱり使えそうなのは彼ぐらいかな)
???:『お兄ちゃんお兄ちゃん! あのお話、また聞かせて!』
???:『ああ、いいよ。 本当にエミリーはあの話が好きだね』
榊:ん……?
榊:(ああ……。最後はあの、神代くんの劇団か)
榊:(今回はどこまでやれるか……お手並み拝見ってとこかな)
旭:さあ、いよいよだ……!
旭:(合同練習のときからすでに、かなり完成度が高かったけど——)
旭:(みんなの、あの自信。きっと“何か”やってくれる)
旭:(どんなショーになるんだろう……!)
とある青年:『——昔むかしあるところに、 勇敢な王子様と、優しいお姫様がいました』
とある青年:『王子様は、魔王に捕まったお姫様を助けるため たくさんの試練を乗り越え、そして——』
とある青年:『ついに魔王を打ち倒しました』
王子:『姫! かの魔王を打ち倒し、お迎えに参りました!』
姫:『ああ、王子……! 愛しい人! あなたとならば、どこまでも行けましょう!』
とある青年:『そうしてふたりは結ばれ、幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし』
とある青年:『——そしてここからはその先。 めでたしめでたしの、後のお話です』
司:(さあ、行くぞ——!!)
ブレス:『はぁ……。なぜこうなってしまうのだろう』
ブレス:『ハートのことを大事に思っているのに、 顔を合わせればお互いケンカ腰になったり、 嫌味を言ってしまったり……』
ブレス:『いや……理由はわかっている。 王子としての仕事が忙しすぎるせいだ』
ブレス:『ハートもそれはわかっているからこそ、 手助けしようとしてくれている……。なのに俺は……』
ブレス:『いや——きっと話しあえば、新たな道が開けるはずだ』
ブレス:『人と人も、国と国も、手を取りあえばこそ繁栄する。 愛し合う者同士ならなおさらだ!』
ブレス:『よし、仕事を終えたらハートに会いに行って とことん話し合おう!』
ニド秘書官:『……ふぅ。相変わらず、体力だけはありますね』
ニド秘書官:『しかし、困りました。 早く弟君様にその座を渡していただきたいというのに』
ニド秘書官:『やはり——あの手を使うしかなさそうです』
ブレス:『ハート、俺達はちゃんと話し合って——うっ!』
ハート:『ど、どうしたのブレス?』
ブレス:『は……話し……合……』
ブレス:『——よし! 今日の仕事はこれで終わりだ!』
ハート:『え……。 このあとは、隣の国の使者と調停の話をする予定じゃ……』
ブレス:『そんなことをしても国の仲が悪いのは直らないだろう? それより、ハートと遊びに行ったほうがいいさ!』
ハート:『ブレス! 山の方で異変があったらしいの。 黒い雲が渦巻いてるって。 みんなが心配してるから、誰か調査に行かせたほうが……』
ブレス:『はぁ、心配しているだけなら放っておけ。 そんなところまで気にしていたら疲れるだけだ』
ブレス:『民の声なんて、聞いているフリをしておけばいい』
ハート:『え?』
ブレス:『奴らは俺達がどれだけ“みんなで幸せになれるように”、 “苦しむ者が一人でも減るように”と考えたところで、 その努力をわかろうともしない』
ブレス:『自分達に都合がいいルールができた時だけこちらをおだて、 そうでなければ文句を言うだけだ。 そんな奴らのために汗水垂らす必要はない』
ハート:『あ……』
ハート:『違う……。 たしかに、今のブレスは私と一緒にいてくれる。でも……』
妖精:『はぁ、はぁ……ハート姫~!』
ハート:『あら? あなた……! 以前、ブレスと一緒に私を助けに来てくれた妖精さん?』
妖精:『うん! あたしは悪い魔法の力を嗅ぎ取れるから、 魔王を倒しに行く王子さまの旅を手伝ってたんだ!』
妖精:『それで、さっき山からすごく嫌な臭いがしたから、 王子さまに伝えようとしたんだけど……』
妖精:『王子さまからも同じ臭いがするの! だからもしかしたら、王子さまは山の何かに 呪われちゃってるんじゃないかって思って……!』
ハート:『え……!? 呪い……!?』
ハート:『そっか、だからブレスは……! どうして早く気づけなかったんだろう……』
ハート:『ううん、それより——妖精さん! 呪いはどうやれば解けるの?』
妖精:『解く方法は一つしかないんだ』
妖精:『呪いをかけられた本人が、 呪いの元凶となってる物を壊すの。つまり——』
妖精:『王子さまが山に行って、 呪いのアイテムを壊さなくちゃいけないんだ!』
旭:(……やっぱりワンダショはすごいな)
旭:(役者はたった4人。 なのに、とても壮大な話に見える)
旭:(これも類くんの演出がなせる業だろうな)
旭:(それに……司くん達の演技もずいぶんレベルアップしていたし、 ここからの展開にも期待ができそうだ!)
旭:(……司くんは最後の絶望を、 どんな風に演じるんだろう?)
ハート:『はぁ……なんとか岩場を越えられた……』
妖精:『それにしても、あのニドって人が悪い人だったなんて びっくりだったね! 眠らせて置いてきたけど、あとでちゃんと連れてかないと!』
ブレス:『ああ……そうだな……』
司:(——間もなく、例のシーンだ)
司:(大丈夫だ。練習は何度もした)
ハート:『呪いの花までは、あともう少し……! ブレス、あの坂道を登り切れば頂上よ!』
ブレス:『ああ……。 ありがとう、ハート……』
ブレス:『……そうだ、あともう一息だ……。 あともう少しで、この呪いも……』
ブレス:『う……っ!』
ハート:『ブレス!?』
妖精:『……っ、ひどい臭い! 呪いが濃くなってる!』
ハート:『花まで、あともう少しなのに……! ブレス!』
司:(——ここだ)
司:(絶望に飛び込め!!)
司:(オレが絶望するならばきっとその時は——夢を失う時だ)
司:(だが、オレが夢を諦めない限りその瞬間は訪れない。 決して絶望もしないだろう)
司:(しかし……ひとつだけ可能性はある)
司:(もしも——)
司:(もしも『世界』のほうが変わったら)
司:(そして、その世界にどれだけ抗っても、 オレが無力なままだとしたら——)
司:…………!
司:……ここは……駅前……?
司:なぜ、こんなに荒れ果てて——
司:いや……そうだ。 思い出した
司:……変わってしまったんだ。いつの間にか
司:この世界は——憎み合う世界に
声:許せない
司:……!
声:僕はただ普通に暮らしたいだけなのに……
声:どうしてこんなに苦しいの?
声:——そうか、あいつらのせいだ
声:そうだ……あいつらがいなければ——
司:……っ
声:話せばわかると言いたいのか? そんなのは理想論にすぎん
声:そうだ、現実は違う
声:あいつらが私を苦しめてるの。 だから邪魔なあいつらさえいなくなれば——
声:そうよ! そうすれば——幸せになれる!
司:違う……!
司:それではみんなで笑顔になれない。 誰かが傷つき泣くことになる
司:みんなで笑顔になるんだ! そしてそのために、オレは……ショーをやる!
司:今こそ、笑顔を届けに行くのだ!
司:『さあ、幕が上がるぞ! 勇者ペガサスが皆の夢を守りに行く!』
声:ショー……? そんなもの見てる時間はないの
声:作り物で喜んでいるほど暇じゃないんだ。 帰ってくれ
司:……っ。 ならば——!
司:『道化師のショーだ! お嬢さんの笑顔のためなら、地球に玉乗りでもしてみせよう!』
声:そんなことより、私を救ってくれる人はどこ?
声:不幸をばらまく連中を叩きのめさなければ!
司:…………!
司:いいや……! まだだ! 何度でもやってみせる!
司:みんなが笑顔になるまで、何度でも!!
司:……はぁ、はぁ……
司:『——これは、小さな希望の物語だ』
司:『憎み合う人々が、また手を取り合えるようになる。 そんな、小さな——』
声:もういいよ
司:え?
声:そういうの、くだらないよ
声:一瞬だけ楽しんで、笑って……。 そんなこと繰り返してどうするの?
声:お腹が膨れるわけでもない。 病気が治るわけでもない
声:そのくせ、愛とか、希望とか、 キラキラしたものばかり見せられて…… 何も持ってない自分が惨めになる
司:そんな…………
声:それに……みんなで笑顔に?
声:それこそいらないよ
声:僕たちを苦しめるあいつらに、笑顔になる資格なんてない
司:…………!!
声:俺は行く。 こんなところにいても時間の無駄だ
声:まったくだ。 ひとりでも多く、敵を……敵を叩きのめさないと
声:誰も近づかないで、誰も……
声:そういうのも全部、くだらない……
司:……おい!! 待て!! どこへ行くんだ!?
司:——待ってくれ!!
えむ:……やっぱり……
えむ:やっぱりダメだったね、司くん……
司:えむ……
類:……まったく、直視しがたい現実だ
類:こんなにも人が憎み合えるなんてね
司:あ……
類:……垣根を超えるショーなんてなかった
類:ショーは、無力だ
司:類……!
司:……いいや! いいや、まだだ!
司:諦めたら終わりだ! 笑顔は戻ってこない!!
司:だから、ショーを続けるんだ! そうすればきっと——
寧々:でも、誰も見てくれない……!
寧々:みんな、誰も信じられなくなって、家から出てこなくなって…… 歌も届かない……
司:……それでも!
司:それでも、諦めたらおしまいだろう!
類:僕達が諦めずにいるだけじゃ駄目なんだ!
司:…………!
類:観客が——ショーを求める人々がいなければ、 ショーは無意味になる
類:…………無意味になったんだ
司:そんな…………
司:(誰も——必要としていない?)
声:もういいよ
司:(オレ達のショーも、笑顔も……いらない?)
声:そういうの、くだらないよ
司:(ならオレは……)
司:(オレは、もう——)
榊:ん?
旭:え……?
ブレス:『……もう、いい』
ブレス:『ありがとう、ハート……』
ブレス:『だが……もう無理だ。 俺には、どうにもできない』
ハート:『……ブレス! ブレスったら! あなたらしくもないわ!』
ブレス:『いいんだ。もう』
ブレス:『俺が何をしようと、 人は憎み合い、国は争い続ける』
ブレス:『平和のためにどうすればいいのか考え続けても、 行動し続けても、どうせ……何も変わらない』
ブレス:『——全て、無意味なんだ』
旭:…………!
旭:司くん…………?

第 8 话:ライバルとして

THE CENTER THEATRE
榊:……これは驚いたな
榊:(名前は……なんだったっけ? 荒削りだし、これまで特に目立つところもない 印象だったけど——)
榊:(これは完全に、入ってる)
旭:……っ
旭:(今……一瞬、息をするのを忘れてた)
旭:(ステージから、 重くてドロドロしたものが広がったみたいに見えて……)
旭:(本当に……司くんなのか……?)
ハート:『——許さない!』
ハート:『私はあなたと行きたい! あなたと共にある未来を生きたい!』
ハート:『だから……諦めるなんて、絶対に許さない!』
ハート:『もし全てに意味がないとしても、 見つかるまで、私が一緒に歩き続けるから!』
ハート:『だから——立って!!』
ハート:『……! ブレス! 花が見えてきた!』
ハート:『あと……少し……!』
ハート:『あ……。 綺麗……』
ハート:『呪いの花なんて思えないくらい、 綺麗な薔薇のつぼみ——』
ハート:『さあ、ブレス抜いて! この花を……ほら!』
ブレス:『………………』
ハート:『もう、手を貸して! ……えいっ!』
ブレス:『…………っ』
妖精:『あ、王子さま……!』
ハート:『ブレス!? ブレス、どうしたの!? 花を抜いたのに……!』
妖精:『もしかして、呪いがもう回り切って……?』
ハート:『え!?』
妖精:『絶望のせいで、 生きたいって気持ちまでなくなっちゃってるとしたら、もう……』
ハート:『……嫌! 嫌よブレス! 駄目!』
ハート:『この冒険が終わったら、 あなたの秘密基地に行くって言ったじゃない! 小舟で川を下って、小さな島で夜通し語り合おうって……』
ハート:『……永遠の愛を君に捧げるって言ったじゃない!!』
ブレス:『……ハート』
ハート:『ブレス……!』
ブレス:『…………すまない』
ハート:『ブレス……?』
ハート:『ブレス! ブレス!!』
旭:…………
他劇団の団員達:……まさか、これで終わりじゃないよな?
他劇団の団員達:アークランドのショーだし、 バッドエンドにはならないと思うけど……
他劇団の団員達:でも…………
榊:(……みんな動揺してるねえ。わからなくもないけど)
榊:(覆しようのない絶望的な空気ってやつ? しかもそれが——)
榊:(何も言わず、ただ横たわる彼から生まれてる)
榊:(さて、ここからどうするか——)
ハート:『お願い……誰か!』
ハート:『誰でもいい! 神様じゃなくても!』
ハート:『私達を見ている誰か! お願い! 力を貸して!!』
ハート:『——声を届けて!!』
榊:(ん……? まさか……)
榊:(この空気の中で、観客に——)
???:——立て!!
旭:立てブレス!!
旭:君は、そんなところで終わる奴じゃないだろう!!
ハート:『声が……!!』
ハート:『ブレス、聞こえる!? 誰かがあなたを呼んでる!』
ハート:『あなたにいてほしい、 諦めないでって呼んでるの!』
観客達:……そうだ! 諦めるな!
観客達:立って王子様!
旭:負けるな!! ブレス!!
司:(……なんだ?)
司:(まぶしい……。光……?)
司:(それに、光の向こうに——)
司:(観客がいる……)
司:(そうか……。 そうか、まだ世界は——)
司:(オレ達のショーを必要としてるんだ)
司:(オレの夢はまだ……)
司:(終わっていないんだな——ハート)
旭:あ……!!
ハート:『ブレス!!』
ブレス:『ハート……』
ブレス:『……ふふ、悪い夢から覚めたような気分だ』
ブレス:『呪いに負けてしまうような、弱い俺ですまない』
ブレス:『だが……ハートがいれば、 どんなことにも立ち向かえる気がする。だから——』
ブレス:『これからも……一緒にいてくれないか?』
妖精:『あ……』
妖精:『バラのつぼみが開いて……! ……なんていい香りなんだろう』
ハート:『——バカ! 本当にバカ!』
ハート:『あなたが抱えてた辛さも、悩みも…… 最初からちゃんと、私に分けてくれたらよかったのに!』
ブレス:『ハート……』
ハート:『……一緒に考えよう。 どうしたらみんなが、幸せに暮らしていけるのか』
ハート:『それで——本物のハッピーエンドを、私達の手で作るの』
ハート:『お姫様と王子様は、苦難を乗り越えて、 みんなと幸せに暮らしましたとさ、って!』
1時間後
コンテスト主催者:では——最後に、最優秀賞の発表です
司:(……ここまで、オレ達の名前は呼ばれなかった)
司:(つまり結果は——優勝か、選外かだ)
司:(…………やれることは全てやった)
司:(どんな結果も受け止めよう)
コンテスト主催者:最優秀賞は——
コンテスト主催者:アークランドチーム!
旭:……!
えむ:あ……!!
司:…………
榊:——え~、というわけで、 アークランドチームの皆さん、おめでとう
榊:アークランドのコンテストでアークランドチームが最優秀っていう 手前味噌な結果になっちゃったけど…… やっぱり、完成度が一番高かったからね
榊:特に、玄武旭くん。 なかなか見れないものを見せてもらったよ。ありがとう
旭:いえ! こちらこそ、ありがとうございます!
司:(…………心とは、簡単に制御できんものだな)
司:(やはり……悔しい)
榊:ただ、ね
榊:今回は完成度以外の観点からも評価してみたいんだ
寧々:え……?
榊:『観客が入った状態でもう一度見てみたい』。 そういう芝居がもう一つあった
榊:というわけで——
榊:ワンダーランズ×ショウタイム。 君達にも公演してもらおっか
司:……え?
旭:……!
榊:ま、審査員特別賞ってやつだね
榊:本来最優秀団体は2週間の公演をする予定だったけど、 そこは上がうまいこと分けるってさ
えむ:えっと……それって……
類:僕達もここで、 公演をすることができる——
類:そう受け止めていいのでしょうか?
榊:うん、そういうこと
榊:今回のコンテストの目的としても、 なるべく外の劇団に活躍してほしいしね
榊:あ、そうだ。 そこの君、名前なんていうんだっけ?
司:え? あ……て、天馬司です!
榊:天馬くんね。了解
榊:それじゃあ僕からは以上。 マイク戻すよ
コンテスト主催者:——榊さんのコメントを踏まえ、 改めて結果を発表します
コンテスト主催者:審査員特別賞として、 ワンダーランズ×ショウタイム
コンテスト主催者:4人という少人数の劇団でありながら、 全員の素晴らしい熱演で、広がりのある世界を見せてくれました
コンテスト主催者:イレギュラーな形ではありますが、 ワンダーランズ×ショウタイムとアークランドチームは 公演の権利を分配することになります。詳細は追って連絡をします
寧々:……ねえ、これってつまり……
えむ:と~ってもわんだほいな結果になったってことだよね!?
類:——ああ……!
類:僕達の手で、新たなステージを掴み取ったんだ。 だろう? 司くん
司:…………
司:…………っ
司:——当然の結果だ!!!!
司:何せオレ達が全力を尽くし、最高のショーを上演したのだからな!
寧々:とか言っちゃって。目、ちょっと赤くなってるじゃん
類:あれだけやったからねえ、嬉し涙も出るというものだよ
えむ:あっ、司くん!? ハンカチいる!?
司:ええい、やかましい! ちょっとは浸らせろ!
司:——コホン。 いいか? お前達
司:本番の公演も、オレ達の持てる力すべてでやりきるぞ!!
類・えむ・寧々:『ああ!』 『うん!』
えむ:それじゃあみんな、バイバーイ!
類:明日からもハードな練習になる。 今日くらいは全員、きちんと休息をとるようにね
寧々:うん。特に司はここ最近練習で動きっぱなしだったし、 ちゃんと休んでよ?
司:ああ、もちろんだ! ではな!
司:……ふぅ
司:なぜだろうな。 妙に夕日が鮮やかに見える
司:(……本当に、あっという間の1日だった)
司:(まだ、余韻が抜けないが——)
???:——司くん!!
司:ん!? この声は——
司:旭さん! どうされたんですか? 衣装のままで……
旭:ああ……司くんと話したかったんだけど、 反省会が長引いちゃって、慌てて探しに来たから
司:わざわざ……! ありがとうございます!
旭:いや、お礼を言うのは俺のほうだ!
旭:今日のショー、本当に素晴らしかったよ。 寧々ちゃんの歌も、えむちゃんのアクションも進化してるし、 類くんの演出もすごく攻めてて——
旭:つい芝居なのを忘れて応援しちゃうくらいには のめりこんじゃったな
旭:それに——
旭:今日、司くんの演技を見られてよかった
司:え?
旭:初めてフェニックスワンダーランドの ナイトショーを見た時から、 君は魅力的ないい役者だと思っていたんだ。けど……
旭:今日の演技を見て、思った
旭:俺は——君に負けたくない
司:…………!!
司:旭さんが……オレに……?
旭:ああ
旭:司くんの芝居を見ていると、 不思議なくらいワクワクするんだ
旭:『次はどんな顔をするんだろう』 『何が飛び出すんだろう』って
旭:それが楽しみで、でも——
旭:同じくらい胸がジリジリする
司:旭さん…………
司:——光栄です
司:さっきの……胸がジリジリするという感覚はきっと、 オレが旭さんに出会った頃から感じているものと、 同じだと思います
司:オレには旭さんがずっと眩しく映っていました。 だから——
司:ようやく同じ舞台に立てたことを、嬉しく思います
司:そしてオレはこれからも、 仲間と共に、全力で駆け上がっていきます
司:旭さんのライバルとして
旭:——ああ
旭:次の公演、お互い、全力を尽くそう
司:ええ!
司:(……胸が熱い)
司:(旭さんがオレを——ライバルとして見てくれた)
司:(ならば、更に走っていこう)
司:(彼のライバルとして、高め合うためにも……!!)
旭:(……きっと、彼はまだまだ伸びる。 そう感じる)
旭:(なぜだろう。 今まさに成長してるからか? それとも——)
司:そしてオレはこれからも、 仲間と共に、全力で駆け上がっていきます
旭:仲間……か