活动剧情

超克のプロタゴニスタ

活动ID:185

第 1 话:心地よい緊張

寧々:——ねえ、本当に入っていいの?
司:ああ! スタッフさんに許可をもらえたからな!
えむ:えへへ、久しぶりだから楽しみだね~!
類:それじゃあ、観客になったつもりで堪能しようじゃないか。 せーの——
寧々:わ……
司:……久々の再会だな
類:コンテストからしばらく時間があいたしね
えむ:じゃあ——『今日から本番まで、またよろしくお願いします』 だねっ♪
司:ああ!
司:しかし、胸が高鳴るな……!
司:これほど立派な劇場で、 オレ達、ワンダーランズ×ショウタイムの公演ができるとは!
寧々:——うん
寧々:(THE CENTER THEATREの座席数は2000。 ……国内最大クラスの劇場なんだよね)
寧々:(お客さんが入ったら、もっとすごいんだろうな)
寧々:(……2000人のお客さんが わたし達のショーを見に来る)
寧々:(しかもわたしは、その主演で……)
えむ:……寧々ちゃん、どうしたの?
寧々:え?
えむ:今、手がぎゅぎゅ~ってしてるから
寧々:あ……
寧々:……ふふ、びっくりした
えむ:え?
寧々:わたし——まだこんなに緊張するんだなって思って
えむ:寧々ちゃん……
司:……たしかに、これだけ大きな劇場で 観客を前に公演するのは初めてだしな。 しかし——
類:緊張は悪いものじゃないよ、寧々
寧々:え?
類:緊張は、恐怖や不安を感じた時に起こる反応ではあるけれど——
類:適度な緊張は、身体能力や集中力を大いに高めてくれるからね
寧々:……ふふ、そうだね
寧々:たしかに緊張はしてるけど、 手が冷えたりとか、そういう嫌な感じはしないんだ
寧々:やるぞ!って気持ちもすごく湧いてて、だから……
寧々:——この緊張も味方につけてみせるよ
司:うむ! その意気だ!
えむ:みんなでキキキーンって緊張してがんばろ~っ!
寧々:ふふ、何それ
司:さて、それではそろそろ レッスンルームに移動するか
寧々:うん!!
アークランド 練習室
類:それじゃあ次のシーンに行こうか
類:——ブレス王子が呪われていることに気づいたハート姫が、 それを王子に伝えようとするシーンだね
類:ここをきっかけに冒険が始まるから、 しっかりメリハリをつけていきたいね。 集中していこう
えむ:がんばれ~!!
寧々:『——聞いてブレス』
寧々:『さっき妖精さんが言ったことは本当。 あなたは……呪われてるの』
司:『呪われてる? ハート、何を言って——』
寧々:『思い出してブレス!』
寧々:『前のあなたなら、民のことをどうでもいいなんて…… そんな風には言わなかった!』
寧々:『……っ』
寧々:『ブレスが私のことだけ見てくれるのは すごく嬉しいの。でも……』
寧々:『今は同じくらい、それが嫌!』
寧々:『……私のことと同じくらいみんなの幸せを考えてる、 私は、そんなブレスが好きなんだって……わかったから……』
司:『……ハート……』
司:『…………たしかに、最近は妙な感覚がある』
寧々:『……!』
司:『いろいろなことが、 急にどうでもよくなっていくんだ』
司:『ニドの言うように肩の力が抜けたと思ったんだが、 もしかすると、これが呪いなのか……?』
寧々:『ブレス……!』
類:——うん、いいね
類:少し走り気味なところはあるけれど、 むしろ良い気迫になっているよ
えむ:寧々ちゃん、すっごくかっこよかったよ~! 泣きそうなところ、あたしもぐぎゅーってなっちゃった!
司:そうだな。 あそこは今までにない演技というか…… オレもつい引っ張られた
司:王子が呪われていることに気づけなかった悔しさや、 今になるまで王子のどこが愛しいのか理解できていなかった 申し訳なさが、表情だけで伝わってきたぞ
寧々:そっか……よかった
類:フフ、いい緊張感で演技が研ぎ澄まされているようだね
司:うむ! オレも負けんように頑張らなくてはな!
寧々:じゃあどっちがクオリティ上げていけるか、勝負だね
類:クオリティを上げるといえば…… 本番までアークランドのレッスンルームを 使わせてもらえるのはありがたいね
類:いつでも舞台の設備を確認しながら 進めることができるからとても助かるよ
司:そうだな! ありがたく使わせてもらって——
司:はっ!! そういえば!!
えむ:わっ! どうしたの? 司くん
司:いやなに、アークランドで練習するということは、 いつでも会いに行けるのだと思ってな
類:会いに? ああ、それはもしかして——
???:——フッフッフ、呼んだかな?
寧々:え?
司:おお! 噂をすれば——
寧々:旭さん……!

第 2 话:高まる気合い

アークランド 練習室
司:お久しぶりです旭さん! お元気でしたか?
旭:ああ! 毎日絶好調だよ!
旭:今日は特に、朝からワクワクしてたんだ。 みんなが稽古に来るって聞いてたからね
寧々:そうだったんですね……
えむ:えへへ、またよろしくお願いしますっ♪
旭:うん! よろしく!
旭:『今度のTHE CENTER THEATREのショーは2種類!?』って お客さん達も盛り上がってるんだ。 期待に応えられるように、一緒に頑張ろう!
司:はいっ!!
類:旭さん達にいい形でバトンを渡すためにも、 僕達の公演で盛り上げなくてはね
寧々:だね。わたし達が最初1週間やって、 そのあと旭さん達が1週間だから……
寧々:わたし達の公演が微妙だったら、 お客さん達のワクワク感も減っちゃうだろうし
司:なあに! そうはならん!
司:何せ——今のオレ達も絶好調だからな!
旭:ふふ、頼もしいな!
旭:それで、よかったらなんだけど…… 今日少し稽古を見させてもらってもいいかな?
寧々:え?
旭:コンテストからしばらく間があっただろ? みんながどれくらい仕上げてきてるか気になってさ
司:なるほど! そういうことでしたら、いくらでも見ていってください!
類:じゃあ、そちらの椅子に……
旭:ああ、いいよいいよ! 邪魔にならないよう隅の方に座ってるから、 いつも通りに稽古しててほしいな
類:そうですか……わかりました
類:それじゃあみんな、再開しようか。 準備はいいかい?
寧々:うん!
司:いつでもやれるぞ!
司:『……はぁ、はぁ。 どうにか城を抜け出すことはできたが……』
寧々:……司。ちょっといい?
司:ん? どうした?
寧々:今、アドリブで肩を落としたあと、 一度膝をついたでしょ?
司:ああ。 そうした方が『ここまで全力で逃げてきた』ということが より伝わると思ってな
寧々:それ自体はいいと思うんだけど…… 膝をつくのはやめたほうがいいんじゃない?
寧々:ブレスはまだ『追手が迫ってきてる』って思ってるでしょ? なら簡単に膝をつかないと思うんだ
司:む……! たしかにそれは一理ある……
司:しかし、ここはやっと城を抜けだせたという 観客が一息つけるシーンでもある! メリハリをつけるためにもオーバーに表現したい!
寧々:でもセリフは『できたが』だし、 ブレスの緊張感はまだ続いてるんだから、 そっちを表現していかないと!
えむ:『それじゃあ目指すは山のてっぺんにある呪いの花! みんなでレッツゴ~だよ!』
寧々:『うん!』
寧々:……あ
類:うん? どうしたんだい寧々
寧々:あ、その……ちょっと思いついて
寧々:ここでダンスを入れるのはどうかな
司:な……! 今から新しいダンスを入れるのか!?
寧々:うん。このあとシーンが変わって、 みんなで山を見上げて高さに驚いてるシーンになるでしょ?
寧々:そことくっつけたらおもしろいんじゃないかって……
えむ:あ……そっか! 最初はレッツゴールンルーン♪って踊ってるけど、 最後はうわあぁ~ってなってる感じ!?
寧々:そう! そういうイメージ!
類:……たしかに。 このあとの展開を考えると、一度コミカルなシーンを挟んだ方が メリハリがついてより観客を引き込めそうだ
類:これは試してみたいね。 いいかな、みんな
司:まったく、いつも直前までこうだ。 肝が冷えるぞ!
えむ:でもでも、もーっとおもしろくなりそう! 司くんもそう思うでしょ?
司:ああ!! では——早速振りつけを考えようではないか!!
寧々:——体力から考えると、ブレスはまだまだ余裕があると思うんだ。 だからここでハートの荷物を持ってあげる動作を入れるのはどう? そうすれば曲の終わりで全員ヘトヘトになる納得感が出せそう
司:おお、それはいいな! ではこのあたりで——
旭:(……みんな、熱量が高いな)
旭:(特に今回は、寧々ちゃんがすごい。 演技にも気迫があるし、積極的にアイディアを出して いい空気にしている)
旭:(でも——彼女だけじゃない)
旭:(ワンダショは、全員がぶつかって、意見を出し合って、 少しでもいいものにしようと思っている……そう伝わる)
旭:(……アークランドのみんなもそうだ。 だけど——)
司:そしてオレはこれからも、 仲間と共に、全力で駆け上がっていきます
旭:…………
司:よし! ではこの辺りで休憩に入るとするか!
旭:それじゃあ俺も、この辺りで戻ろうかな。 見学させてくれてありがとう!
司:あ……すみません。 せっかく来ていただいたのにあまり話せず……
旭:あはは、気にしないで! よかったらみんなも、こっちに遊びにきてよ
類:はい、ありがとうございます
えむ:旭さん、さよーなら~!
アークランドチーム 練習室
アークランドキャストA:すみません榊さん。せっかく来てくださったのに。 すぐに戻ると思うので……
榊:あー、ちょっと覗きにきたくらいだから、 俺のことは気にしないで進めて
アークランドキャストB:あ、はい……。 じゃあ、お言葉に甘えて……
榊:ふぁ……
榊:(会議に呼ばれたから、ついでに玄武旭を見に来たら…… まさか不在とはね)
榊:(『少ししたら戻ってくるはず』って言われたけど、 一体いつになるのやら……)
旭の声:——ただいま
榊:(おや。ようやく——)
榊:(ん……?)
アークランドキャストA:あ! おい旭、榊さんがお前に会いに来てるぞ!
旭:え? あ……すみません、お待たせしてしまって
榊:まあ、別に用事はないんだけどね
旭:え?
榊:本番も近いし、調子はどうかって思ってさ。 ってわけで、ちょっと稽古覗かせてよ
旭:あ……それならもちろん構いません。 好きなだけ見ていってください
榊:はーい
アークランドキャストA:じゃあ……旭、ちょっと相談してもいいか?
旭:ん? なんだ?
アークランドキャストA:さっき話し合ってたんだが、 やっぱり中盤がちょっとチグハグしてないか? 思ったより盛り上がらないっていうか……
アークランドキャストB:森の動物達が本気で言い争うシーンなのに ちょっと予定調和な感じがするんだよね
アークランドキャストB:旭くんだったらどうやるか聞かせてくれないかな?
旭:あのシーンか……。 だったら、リズムを変えた方がいいかもしれない
旭:今はケンカらしくなるようにあえて台詞を かぶせてると思うんだけど——
旭:繰り返す内にそのリズムが一定になってきてるから、 予定調和に見えるんじゃないかな
アークランドキャストA:ああたしかに……!
アークランドキャストB:うん、気付けなかったけど…… 旭くんがそう言うのなら間違いないね
アークランドキャストA:だな! じゃあ早速やってみるか!

第 3 话:懐かしい顔

スクランブル交差点
えむ:それじゃあみんな、バイバーイ!
司:しっかり休んで、明日に備えるんだぞ!
類:じゃあ僕は、今朝言ってたとおり備品を買ってから帰るよ
寧々:本当に手伝わなくて大丈夫? また大きなもの買ったりしない?
類:ああ。今回はそのつもりはないから 僕ひとりで大丈夫さ
類:それに、主演に大荷物を持たせて ケガでもさせたら大変だからね?
寧々:とか言って、荷物持つより何倍も大変なことさせてるくせに
類:フフ、それじゃあまた明日も いい演技を期待しているよ
寧々:ん。じゃあね
寧々:さてと……帰ったら今日の振り返りしなくちゃ
寧々:(後半はまだまだよくなりそうだし、 稽古の動画見てブラッシュアップしたいな)
寧々:(あとはやっぱりラストだよね。 迫力を出すためにできることがないか……もっと考えなくちゃ)
寧々:……ふふ
寧々:(楽しいな)
寧々:(あの舞台に立つって考えると、 今もまだドキドキするけど——)
寧々:(そのドキドキも力になってる。 ……そう感じる)
寧々:(よし。明日もこの調子で——)
???:……寧々ちゃん?
寧々:え?
???:やっぱり、寧々ちゃんだ!
寧々:えっと……
???:ふふ、髪とかバッサリ切ったからわかんないかな?
みやこ:劇団ゆめみの中等部——ジュニアクラスで一緒だった、 広橋みやこだよ
寧々:あ……!!
劇団員達:草薙さん、よく今日の練習来られたよね。 あんな失敗したのに……
劇団員達:誰も話しかけてないみたい。当然だよね
劇団員達:みんなで練習したのに、あんな酷い失敗されたら——
???:もうやめなよ!
みやこ:過ぎたことじゃなくて、これからのこと話そう。 私達、同じチームなんだから
寧々:……みやこちゃん……!
寧々:——ここのベンチで本当に大丈夫?
みやこ:うん! カフェいっぱいだったし、 寧々ちゃんと話せるならどこでも嬉しいし?
寧々:ふふ、ありがとう。 わたしもだよ
寧々:でも、本当に久しぶりだよね。 結局あのあと、わたしは稽古場行かなくなっちゃったし……
寧々:……あの時は、本当にごめんね
みやこ:もう、そんなに気にしないで! あの時だっていっぱい謝ってくれたし、 何よりもうずいぶん昔のことなんだからさ
みやこ:それより……寧々ちゃん、今も芝居頑張ってるんだよね?
寧々:え?
みやこ:アークランドの新しいショーの出演者を見てたら、 そこに寧々ちゃんの名前があったから。 しかも主演なんでしょ?
寧々:え!? し、知ってたの?
みやこ:うん! 私も芝居続けてるから、 気になる公演はちゃーんとチェックしてるんだ♪
寧々:そうだったんだ……。 なんだか照れるな
みやこ:あはは、照れることないよ! 頑張ってきたからこそつかみ取れたんだろうし!
みやこ:あれ見て私も、負けてられない!って思えたんだよ
寧々:そっか……
寧々:みやこちゃんは、今どこの劇団に入ってるの?
みやこ:私は今は、劇団六花の研究生なんだ
寧々:すごい……! あの六花に入れたんだ!
みやこ:まだ研究生だから正式な団員じゃないけどね。 でも、次のオーディションで昇格狙ってるんだ
寧々:みやこちゃんならきっとなれるよ。 昔からすごい頑張り屋だったし、演技も上手かったし
みやこ:ありがと! まあ寧々ちゃんも、私に負けず劣らずだったけどね~
みやこ:なんだか、こうやって話してると本当に最近のことみたいだな。 寧々ちゃんと一緒にやってたの
寧々:……そういえば、他のみんなはどうしてるか知ってる?
みやこ:え?
寧々:少し気になってたんだ。 あのあと、ゆめみのみんなはどうなったのかなって
寧々:……今もゆめみにいるの?
みやこ:あ……その……
みやこ:……ごめん。わからないんだ
寧々:え?
みやこ:あの時の公演が、なんだかんだ、 あのメンバーでの最後の公演になっちゃって……
寧々:……それって、もしかして……
寧々:——わたしが、失敗したせいで……?
みやこ:あ……
みやこ:……どうなんだろうね。 私は、みんなのことはわからないから……
みやこ:でも……少なくとも私は、 寧々ちゃんのことがあったから辞めたわけじゃないよ
みやこ:だから……昔のことは気にしないで。 前を向いてほしいな
みやこ:それで——今度の公演、思いっきり頑張って!
寧々:……うん。 ありがとう
みやこ:でも……少なくとも私は、 寧々ちゃんのことがあったから辞めたわけじゃないよ
寧々:(みやこちゃんは、ああ言ってくれたけど——)
寧々:(……本当に関係なかったのかな)
寧々:(……だって……)
寧々:(それぐらい、失敗は重い)
寧々:(——あの時…… 積み重ねたものが、一瞬で台無しになったって感じた)
寧々:(何週間もずっと、みんなで頑張ってきたのに、 全部があの瞬間、駄目になっていって……)
寧々:(……もし、わたしがあの時失敗しなければ……)
寧々:(……ううん。 もう起きたことを考えても仕方ない)
寧々:(時間は……戻ってこないんだから)

第 4 话:あの日の悪夢

???:『——もう! わかってよ!』
少女:『ダム建設で、もうすぐこの祠は壊されちゃうの! ここにいたら、神様も一緒に消えちゃうんだよ!?』
神様:『だとしても構わぬ!』
神様:『この地を守るのがワシの役目なのだ! 守れぬのなら——ここで共に消え去るのみ!』
少女:『この……わからずや!』
少女:『神様なんて、このまま消えちゃえばいいんだ!』
少女:『……さっきはついあんなこと言っちゃったけど…… でも、わたしはやっぱり……』
少女:『神様と友達でいたい……!』
少女:『行かなくちゃ!』
少女:『あの祠だけは、絶対に壊させないんだから!』
中学生の寧々:(……うん、いい調子)
中学生の寧々:(みんな練習の時よりも熱が入ってる)
中学生の寧々:(あとはわたしが、工事を始めようとする大人達の前に立って みんなを止めれば……!)
神様の声:『無礼者どもめ! ワシは絶対にどかんぞ!』
神様の声:『残された力はもうわずかだが…… 土砂崩れを起こしてみせようぞ!』
中学生の寧々:(今だ……!)
少女:『——待って!!』
中学生の寧々:(…………え?)
中学生の寧々:…………っ
中学生の寧々:あ……
村人達:『……なんだおめえさんは! 今から工事だ、危ねえぞ!』
村人達:『何か用でもあるのかい?』
中学生の寧々:……その……!
中学生の寧々:(『こんなのおかしい』……違う、これは次のシーン……! 『許してほしいの』……これも違う……!)
中学生の寧々:(みんなアドリブでつないでくれてるのに——)
中学生の寧々:(……出てこない……!)
観客達:ねえねえ、あのお姉ちゃんどうしたの?
観客達:しー。 多分、忘れちゃったのかもね……
観客達:なんだか可哀想ねえ……
中学生の寧々:………………っ
寧々:(……え? ここは——)
ブレス:『——全て、無意味なんだ』
寧々:……あ
寧々:(本……番……?)
寧々:(どうしてわたし、ぼんやりして……!)
寧々:(早く、台詞を……!)
寧々:(…………あれ?)
寧々:(思い出せない……。 あんなに練習したのに——)
寧々:(大丈夫、落ち着いて……! もうあの時とは違う……)
寧々:(きっと思い出せる……! わたしなら、きっと——)
寧々:(きっと…………!!)
観客達:ねえねえ、あのお姉ちゃんどうしたの?
観客達:しー。 多分、忘れちゃったのかもね……
観客達:なんだか可哀想ねえ……
寧々:(……どうして?)
寧々:(どうして、また、わたしは……)
寧々:(こうなっちゃうの……?)
寧々:————っ!!
寧々:はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……
寧々:……夢……?
寧々:……っ
寧々:よか……た……
寧々:う……ティッシュ……
寧々:(…………久しぶりに思い出したな、あの感覚)
寧々:(体が冷たくなって、 人の声や心臓の音ばっかり大きく聞こえて……)
寧々:(……もう二度と、あんな失敗しない)
寧々:(みんなを悲しませて終わるなんて……そんなの嫌)
寧々:(今度こそ、成功させてみせる)
寧々:(みんなのためにも——絶対に……!!)
翌日
アークランド 練習室
類:それじゃあ今日は、後半を通していこうか
寧々:——うん!
えむ:……あれ?
えむ:寧々ちゃん、なんだかちょっとピリー!ってしてる……?
司:そうか? 昨日とそう変わらんように見えるが…… もしかすると、より気合いが入っているのかもしれんな
えむ:そうなのかなあ……?
寧々:『ブレス……。 あの島に行くのはやめない?』
司:『ん? どうしてだ? ハートも楽しみにしていただろう』
寧々:『だって、こうしてる間も民は苦しんでる』
寧々:『私達だけ遊び惚けるなんて……できない』
寧々:『——聞いてブレス』
寧々:『さっき妖精さんが言ったことは本当。 あなたは……呪われてるの』
司:『呪われてる? ハート、何を言って——』
寧々:『思い出してブレス!』
寧々:『前のあなたなら、民のことをどうでもいいなんて…… そんな風には言わなかった!』
寧々:『……っ』
司:——すまん。 一度止めてもらっていいか?
類:……そうだね。 僕もそうしようと思っていたところだよ
寧々:え……?
司:さっきえむが言っていたとおりだったな……
司:今日の寧々はどうもおかしい。 本当にわずかだが……昨日までより力が入っているように感じる
類:うん、最初はただ本番が近づいているからだと思っていたけど…… 何度かやり直しても、結果は同じだったからね
えむ:……寧々ちゃん、何かあったの?
寧々:何かって、別に何も……
寧々:あ……
寧々:……もしかして……
司:何か心当たりがあるのか?
寧々:……実は——
司:……なるほど。 昔の友人に会ったことをきっかけに、そんな夢を……
寧々:うん……
寧々:でも……前みたいに落ち込んだり、 逃げたいって思ってるわけじゃないの
寧々:むしろ、絶対に成功させてみせる!って思ってる
寧々:なのに、どうして……
類:……緊張が、悪い方向に作用してるのかもしれないね
えむ:ほえ?
類:前に言っただろう? 適度な緊張はパフォーマンスを上げる
類:けれど……メンタルのバランスが崩れれば、 それは容易く、力みに変わってしまうんだ。 役者はもちろん、アスリートにもよくある現象だね
類:もちろん、今の寧々の演技だって悪くない。 合格点だ。だが——
類:今は寧々の全力を出し切れていない。そう感じる
寧々:そんな……
えむ:じゃあ、今ちょっとよくない方に強くなってる緊張を ふわふわのびのびーーってやわらかくすればいいんだよね!
寧々:あ……
類:ああ。一緒にその方法を探していこう
司:それでは……まずは、とことん稽古して 自信をつけるのはどうだ?
司:やはり緊張というのは、不安からやってくるからな! 不安に思う隙がないほど練習しようではないか!
えむ:うん! 一緒にがんばろう、寧々ちゃんっ!!
寧々:うん……!!

第 5 话:暗中模索

ワンダーランドのセカイ
寧々:『思い出してブレス!』
類:——ストップ
類:さっきよりは良くなっているけれど、まだ必死さが強い。 言い出すかどうか揺れながら話す……その微妙なバランスを 大事にしてほしい
寧々:うん……!
寧々:あ……みんなも、何か気になることがあったらどんどん言ってね。 参考にしたいから
リン:あ、じゃあはーい☆
リン:寧々ちゃん、そのまま立っててね~……ぎゅっ!
寧々:え!? な、何!?
リン:ん~……やっぱり寧々ちゃん、いつもより体がカチカチしてる!
寧々:カチカチ……?
類:ああ……緊張していて、 体に力が入ってしまっているということかな?
リン:うん! 前に練習してた時の寧々ちゃんは、 もーっとのび~ってしてた気がするのっ!
寧々:体に……
えむ:じゃあ、みんなでのびのび~ってしてみる!?
リン:あ! なら、へびのぬいぐるみさんと考えたストレッチ してみるといいかも~♪
レン:あ、それいいね! あれすっごく体が柔らかくなるから!
寧々:——そっか。それじゃあ教えてもらってもいい?
リン:うん! えっとね、まずはニョロニョロのポーズで——
寧々:『思い出してブレス!』
寧々:『前のあなたなら、民のことをどうでもいいなんて…… そんな風には言わなかった!』
類:……うん。 力が少し抜けたね
類:ただ同時に、寧々ならもっとできるとも感じる。 ……寧々はどうだい?
寧々:うん……そう思う
寧々:前は流れるみたいに感情が乗ってたんだけど、 今はひとつひとつの動作を意識しちゃってるせいで、 流れに乗れてないって感じる
寧々:だから『こう動こう』って意識しないように やってるんだけど……
司:そう考えてしまう時点で、意識してしまっている ということだな……。これは難しい
えむ:でもでも! 何回も繰り返せばできるようになるかもしれないよ!
リン:そうだよ! いっぱいのび~ってやろ! リン達も手伝うよ~♪
寧々:……うん。ありがとう、みんな
寧々:(……できないなら、できるまでやるんだ)
寧々:(絶対、乗り越えてみせる)
寧々:(今までわたしが学んできたこと、全てを使って——!)
寧々:忙しいのに時間を作ってくれてありがとう、白虎町さん
白虎町:構わないよ。 私も、草薙さん達の役に立てるなら嬉しいしね
白虎町:じゃあ……もう試してはいるようだけど、 筋弛緩法からやってみようか。 体からリラックスは生まれるからね
寧々:うん!
寧々:ふぅ……体を楽にして……よし
寧々:『ブレス! ちょっと、どこに行くの!?』
司:『ハートもよく知っているところだ! さあ、いざ行かん!』
櫻子:そうね……。時間はかかるかもしれないけど、 ルーティーンを作って集中力を上げるのはどう?
寧々:ルーティーン……
櫻子:ええ。スポーツ心理学でよく使われる方法なんだけど—— 意図的に『いつも通り』の状態にすることで、 平常心を保つの
櫻子:私の場合は、新しい芝居に入るごとに その役に入るためのポーズを決めるようにしているわ。 フェニックス役なら、翼を広げるポーズ……とかね
寧々:なるほど……。 そういう方法もあるんだ。ありがとう青龍院さん
寧々:いつも通り……いつも通り……
類:寧々、次のシーン、もうやれるかい?
寧々:少し待って。 もうすぐ落ち着くから……
寧々:——うん。やれそう。 お願い!
夕夏:『あとは……ジャーナリングは効果があったな』
夕夏:『自分の感情を書き出してみるの。 客観視するだけで、随分冷静になれたなって』
寧々:客観視……たしかにそうですね……
夕夏:『でも……こういうのは人によって乗り越え方が違うんだ』
夕夏:『だからひとつひとつ、焦らずに、 自分の方法を見つけていってほしいな』
寧々:………………
寧々:『……嫌! 嫌よブレス! 駄目!』
寧々:『この冒険が終わったら、 あなたの秘密基地に行くって言ったじゃない! 小舟で川を下って、小さな島で夜通し語り合おうって……』
寧々:『……永遠の愛を君に捧げるって——言ったじゃない!』
寧々:……違う。こうじゃない……!
寧々:(いろんな方法を試してみたけど、 やっぱり駄目だ……)
寧々:(こんなにやってるのに……!)
寧々:……焦っちゃ駄目だ
寧々:大丈夫。 苦しい時だって、わたしはいつもちゃんと乗り越えてきた
寧々:落ち着いて……もう一度!
リン:………………
スタッフ:それでは、リハーサルを始めます! よろしくお願いします!
司:はい! よろしくお願いします!
えむ:寧々ちゃん……
???:——やあ、みんな
寧々:あ……
司:旭さん!
旭:今日は稽古だったんだけど、みんながリハだって聞いてさ。 よかったら少し見ていってもいいかな?
類:……ええ、もちろんです
旭:……ん?
旭:みんな、何かあった? 少し元気がないみたいだけど……
えむ:あ、えーっと……
寧々:——いえ。何もありません
寧々:是非見ていてください。 ……全力でいいショーにします
旭:……うん、期待してるよ
寧々:………………
寧々:まだ、前みたいな調子は出せてない
寧々:だけど——ここで出す
寧々:ここで……出さなきゃ……!
類:……寧々……
寧々:………………
寧々:(リハでも……駄目だった……)
寧々:(……類が言うように、全く駄目ってわけじゃない)
寧々:(ショーとしては成立してる。でも——)
寧々:(全力が出せてない。 ……自分でもわかる)
寧々:(これまで頑張って積み上げてきたことも、 あとちょっと出し切れてなくて……)
寧々:……っ
???:『こんこんこーん……』
寧々:え……?
???:『ノックしたから覗いちゃうよ~』
寧々:リン……! どうしたの? こんな遅くに
リン:『寧々ちゃん達、明日が本番でしょ~?』
リン:『だからがんばれーって言いにきたんだけど……』
寧々:あ……
寧々:ごめん。 わたしがこんなだから心配させちゃったね……
リン:『——ううん。心配してないよ』
リン:『寧々ちゃんは、大丈夫』
リン:『寧々ちゃんずーっとがんばってきたでしょ? リン、見てたよ~』
リン:『それでね、いっぱいがんばった人は、 パーってお花が咲くんだよ』
リン:『だから——自分のことも、みんなのことも信じて、 最後までがんばろっ☆』
寧々:……リン……
寧々:——うん
寧々:最後まであきらめないよ
類の部屋
類:(……この1カ月、思いつくことは全て試した)
類:(それでも寧々は全力を出し切れていない)
類:(なら、あとできることは——)

第 6 话:主役と演出家

ワンダーランドのセカイ
司:……結局、リハでも戻らなかったな……
えむ:うん……
えむ:あたし達にできること、もうないのかな……
司:そんなことはない、と言いたいが……
司:他に何かできることがあるかというと……
えむ:…………
???:みんな……どうしたの?
リン:もしかして、寧々ちゃんのこと?
司:リン、カイト……
えむ:うん……そうなんだ
えむ:みんなでいっぱい練習して、 寧々ちゃんもいろんな人にお話を聞いて すっごく頑張ってるけど……
司:……今日のリハでも、 ベストな演技にはならなかった
司:むろん、今の演技でも公演はできる。 だが……
KAITO:ワンダーランズ×ショウタイムとして 一番いいショーを見せることはできない……ということだね
KAITO:……やっぱり、まだ悪い緊張が残っているのかな
司:おそらく、そうだと思う
司:だが……どうすればいいのかまるでわからん
司:寧々は、必要だと考えられることはほとんどすべて試した。 メンタルコントロールもいくつも実践していたし……
えむ:……最近の寧々ちゃん、 お芝居しててもずっと苦しそうで……
えむ:ハート姫もぐるぐる~ってしちゃってるから、 前みたいにできるようにお手伝いしたいのに……
司:……そうだな
司:あの夢を見るまで、寧々は順調だった。 それこそ、寧々にしか演じられないと思えるほどにな
司:寧々自身もそういう感覚を掴んでいたのであれば、 あの状態で舞台に立ちたいはずだ
司:だからこそ、どうにかしてやりたいが——
???:——その件について、いいかい
えむ:類くん……!
司:ひとりで考えたいと言っていたが、 何かいいアイディアが出たのか?
類:——ああ
類:最後に、寧々とふたりだけで話をしたい
えむ:話……?
司:何を話すんだ?
類:……とてもシンプルなことさ
類:だけど演出家として——どうしても伝えたいことがある
類:だから本番前に、話す時間がほしいんだ
司:どういうことかはわからんが……
司:座長として、演出家のお前を信じるぞ。 もちろん、寧々もだ
えむ:うん!!
類:——ありがとう。ふたりとも
公演初日
スタッフ達:影が気になるから上手の平台、もう少し内側に! バミテに乗せちゃっていいから!
スタッフ達:はい!
寧々:…………
寧々:(本番は——1時間後)
寧々:(粘ったけど…… 結局、最後までできなかった)
寧々:(わたしの演技は、もう——)
寧々:……切り替えないと
寧々:今やれることを、やりきらなくちゃ……
類:——寧々
寧々:あ……
寧々:類、どうしたの? 何か確認したいことでも——
類:本番の前に、大事な話があるんだ
寧々:……え?
旭:ここにもいない……
旭:もしかしたら、まだヘアメイクをしてるのかな。 本番前に少し話せればって思ったけど……
旭:(……リハの時のみんなは、どこか固かった)
旭:(稽古の時の勢いが消えてしまったのは…… おそらく、主役の寧々ちゃんに変化があったからだ)
旭:(どうしてそうなったのかはわからないけど、 せめて、何かの役に立てれば——)
えむ:もうすぐ本番だから、 類くん、きっと今お話してるんだよね……
司:ああ。 どんな話をするのかはわからないが、 うまくいくことを願うしか……ん?
司:旭さん!
旭:ああ……よかった。 みんなを探してたんだ
司:え? オレ達を?
旭:うん。リハを見た時に少し気になって——
寧々の声:——大事な話って、何?
旭:ん? この声は……
類:今日はワンダーランズ×ショウタイムの演出家として、 言わせてもらうよ
類:寧々。この舞台の成功は——主役である君にかかっている
寧々:え……
類:今日の公演、ここで必ず、 最高の演技を見せてほしい
類:そうでなければ——ここに君がいる意味は、ない
寧々:…………っ!

第 7 话:わたしのやるべきこと

寧々:最高の演技をって……
寧々:そんなことわかってる……!
寧々:わたしだってそうしたい! でも、今のわたしじゃ——!
類:言い訳は聞かないし、 ここで議論をする気もない
寧々:な……
類:寧々が今、壁にぶつかって苦しんでいることはわかっている
類:実力を出し切れず、不甲斐なさを感じていることも。 けれど——
類:草薙寧々という人間がどういう状態かは、 観客には一切関係ない
類:彼らはただ素晴らしいショーを求めている。 僕達はそれに応える
類:——そのためだけに、この舞台はある
寧々:……それは……
類:だからなんとしても、どんな手を使ってでも、 最高の演技をしてくれ
類:それが君の——主役としての仕事だ
寧々:あ……
えむ:類くん……
司:あいつ……!
旭:あ……!
司:——話は聞かせてもらったぞ!
寧々:……!
類:ふたりとも……!
司:類。立ち聞きするような形になってすまない
司:だが……聞いたからにはオレ達にも言わせてくれ
司:——寧々!
司:オレも類と同じ気持ちだ
司:お前がここで殻を破らなければ このショーは不完全なまま終わる!
司:だから——何が何でも突破しろ!!
寧々:司……
えむ:寧々ちゃん!
えむ:今日、いっちばん—— 寧々ちゃんのいちばんすごいハート姫を出して!
えむ:お願い……!!
寧々:えむ……
類:——もう一度言うよ。寧々
類:君が本当に世界の舞台に立つ俳優になるというならば、 今日、ここで、その責任を果たすんだ
寧々:そうしたい……そうしたいよ……
寧々:でも、これ以上どうすればいいのか、わからないの……!
寧々:……みんなの力も借りて頑張ったけど、 わたしじゃ、もう——
寧々:……あ……
寧々:(……なんで?)
寧々:(どうしてみんな……そんなにまっすぐ見るの?)
寧々:(わたしはもうできないのに、どうして——)
類:寧々
類:このショーの主役は、寧々しかいない
類:僕達は——ずっとそう思っているよ
寧々:(……あ)
寧々:(……そっか)
寧々:(みんな——信じてるんだ)
寧々:(みんな、わたしならきっとできるって思ってるから——)
寧々:(信頼してるから——こんな風に言ってるんだ)
寧々:(なら……)
寧々:(なら、わたしは——)
寧々:(——応えなきゃ)
寧々:(ここで応えなきゃ——役者じゃない!!)
寧々:…………当然でしょ
寧々:わたしはこれから、 ワンダーランズ×ショウタイムの看板を背負って、 大舞台に立つんだから
寧々:主役としてやるべきことを、 絶対にやりとげてみせる!
寧々:最高の演技以外——見せる気はない!!
旭:…………
司:——うむ! ならば、行くとするか! オレ達の舞台に!
類:ああ。 2000人の観客が、首を長くして待っているよ
えむ:み~んな、あたし達のショーで ニッコニコにしちゃおう!!
寧々:——うん
寧々:行こう、みんな!
アークランドキャストA:よう、旭! ワンダーランズ×ショウタイムのみんなとは挨拶できたのか?
旭:……いや。 みんなやる気満々だったから、 水を差さないようにそのまま戻ってきたよ
アークランドキャストB:へえ……。 旭くんにしては珍しいね。そういう時こそ声かけそうなのに
旭:……ちゃんと見てみたいと思ったんだ
アークランドキャストB:え?
旭:——彼らの力を
レン:『……もうすぐ本番だよね……?』
ミク:『わあ、すっごいお客さん……!』
リン:『本当だ……! いーっぱいいる!』
リン:(寧々ちゃん、がんばって……!)
とある青年:『——昔むかしあるところに、 勇敢な王子様と、優しいお姫様がいました』
とある青年:『王子様は、魔王に捕まったお姫様を助けるため たくさんの試練を乗り越え、そして——』
とある青年:『ついに魔王を打ち倒しました』
寧々:(…………不思議)
寧々:(これまでの練習だとずっと、 『絶対に成功させてみせる』って思ってたのに)
寧々:(今は——)
寧々:(これまでの自分の、全部の演技に勝って——)
寧々:(ここを、世界中のどこよりも 笑顔でいっぱいにしたいって思ってる)
寧々:(だから、みんな——)
寧々:(力を貸して!)
王子:『姫! かの魔王を打ち倒し、お迎えに参りました!』
姫:『ああ、王子……! 愛しい人!』
姫:『あなたとならば、どこまでも行けましょう!』
ハート:『ブレスったら…… こんな手紙ひとつで私が喜ぶと思ってるの?』
ハート:『どうせまた、やたらと褒め称える言葉ばかり 書いてあるんでしょうけど……』
ハート:『……“君という花は、たとえいつか枯れたとしても 永遠に美しく、この心の中に咲き続けるだろう”……』
ハート:『も、もう……! こんなの、なんて返事すればいいわけ……!?』
ハート:『はぁ、はぁ……。“愛のパラダイスに行こう”って 走り出すからどこに行くかと思ったら、城の庭じゃない!』
ブレス:『構わないだろう? 俺にとってはどこだろうと、ハートと行けば愛のパラダイスだ!』
ブレス:『花と触れ合うハートは、まさに花の妖精だな!!』
ハート:『なっ……! そういうのいいから!!』
ブレス:『ハッハッハ! いやぁ、このまま時が止まればどれほど良いだろうか』
ハート:『え?』
ブレス:『国を捨て、ハートとふたり穏やかな場所で暮らせれば、 それはそれは幸福だろう!』
ハート:『ブレス……?』
ハート:『思い出してブレス!』
ハート:『前のあなたなら、民のことをどうでもいいなんて…… そんな風には言わなかった!』
ハート:『……っ』
司:(——さすがだ、寧々! この土壇場で、最も乗りに乗ったハートを出してくるとは!)
司:(オレも、負けてはいられん!!)

第 8 话:信じてくれて

ニド秘書官の声:『馬鹿な……。 私が、こんな手に……』
妖精の声:『——やった! ニドって人、眠り草で眠ったよ!』
ブレスの声:『はぁ、剣を弾き飛ばされた時はどうなるかと思ったが……。 どうにかなったようだ』
ブレスの声:『しかし、もたもたはしていられん。 洞窟に捕われているハートを迎えに行って、頂上を目指そう!』
妖精の声:『うん!』
寧々:(————いい調子)
寧々:(お客さんの反応もすごくいい。 一緒に笑ったり、泣いたり、ハラハラしてくれてる)
寧々:(あとは……ラストだけ)
寧々:(……あの時と似てるな)
寧々:(このショーが最高のものになるかどうかは、 主役のわたしにかかってて——)
寧々:(……ううん。そうじゃない)
寧々:(わたしは、このショーのラストを飾れるんだ)
寧々:(みんなの心に、このショーがいつまでも輝き続けるように 魔法をかけられる。それが主役の特権で——使命)
寧々:(だから——)
旭:(……驚いた)
旭:(気づいたら引っ張り込まれて…… あっという間にラストシーンになった)
旭:(もう、リハとはまるで違う舞台だ)
旭:(……たった1日で、いや、一瞬でここまで変わる。 それはきっと——)
ハート:『……嫌! 嫌よブレス! 駄目!』
ハート:『この冒険が終わったら、 あなたの秘密基地に行くって言ったじゃない! 小舟で川を下って、小さな島で夜通し語り合おうって……』
ハート:『……永遠の愛を君に捧げるって言ったじゃない!!』
ブレス:『……ハート』
ハート:『ブレス……!』
ブレス:『…………すまない』
ハート:『ブレス……?』
ハート:『ブレス! ブレス!!』
観客達:声って……
観客達:もしかして……私達に……?
観客達:おうじさま、がんばってー!!
観客達:あ、ちょっと……!
観客達:負けんなー!!
ハート:『聞こえる……』
ハート:『声が……!!』
旭:…………
旭:(…………輝いてる)
旭:(舞台が、寧々ちゃんを中心に——)
ハート:『聞かせて、もっと!!』
ハート:『ブレスの絶望を、打ち払って!!』
ハート:『ブレス、聞こえる!? 誰かが——みんながあなたを呼んでる!』
ハート:『あなたにいてほしい、 諦めないでって……呼んでるの!!』
ハート:『ブレス!!』
ハート:『ブレス……!!』
ブレス:『ハート……』
ブレス:『……たくさんの声が聞こえた』
ブレス:『ハートが呼んでいたのか?』
ハート:『ううん。私だけじゃない』
ハート:『この世界が、呼んでくれたの』
ブレス:『……世界が……』
ブレス:『……ふふ、悪い夢から覚めたような気分だ』
ブレス:『呪いに負けてしまうような、弱い俺ですまない』
ブレス:『だが……ハートがいれば、 どんなことにも立ち向かえる気がする。だから——』
ブレス:『これからも……一緒にいてくれないか?』
ハート:『——バカ! 本当にバカ!』
ハート:『あなたが抱えてた辛さも、悩みも…… 最初からちゃんと、私に分けてくれたらよかったのに!』
ブレス:『ハート……』
ハート:『……一緒に考えよう。 どうしたらみんなが、幸せに暮らしていけるのか』
ハート:『それで——本物のハッピーエンドを、私達の手で作るの』
ハート:『お姫様と王子様は、苦難を乗り越えて、 みんなと幸せに暮らしましたとさ、って!』
リン:『あ……』
リン:『今……寧々ちゃん、ハート姫に……』
リン:『……よかった』
リン:『よかったね……寧々ちゃん……!』
旭:…………
旭:(そうか、これが——)
旭:(君達の力か)
2週間後
司:ううむ……! やはり旭さん達の公演は最後まで素晴らしかったな!
えむ:うんうん! わわわ~!で、びゅんびゅんぽぽ~ん!だったよねっ!
類:最初から完璧に仕上げられていたけど―― 見るたびに新しい発見があって解像度が上がっていく……。 そんな、常に新鮮な驚きのある公演だったね
寧々:うん。 みんな本当にすごかったな
寧々:だけど——
寧々:わたし達の公演も負けてなかったよ
司:ああ! えむの家での打ち上げパーティーでも見たが、 SNSの感想は同じくらい好評だったしな!
類:もう再演を望む声もあって…… 本当にありがたいね
えむ:えへへ、それに~~~……ぽちぽちっと!
えむ:寧々ちゃんの名前で検索すると、 いーっぱい名前、出てくるようになったもんね!
寧々:あ……それはちょっと照れるかな……
司:照れることなどないだろう! お前の名を世に知らしめたのだぞ!? せっかくだし音読してやろう!
寧々:え!? なんで!?
司:え~ 『お姫様役の草薙寧々って子すごかった! 最後泣いちゃったよ!』
寧々:ちょ……!
えむ:あたしもあたしも! 『アークランドのショーのお姫様は草薙寧々ちゃん、 王子様は天馬司くんっていうんだって! 覚えておこ~!!』
寧々:も、もういいってば!
司:ハッハッハ! 脳裏に深く刻みこんでくれ!
えむ:『寧々ちゃんのファンになっちゃった! 個人アカウントってないのかな!?』
類:たしかに、宣伝用に作ってもよさそうだね。 寧々はゲーム用のちょっと口の悪いアカウントしか 作っていないようだし——
寧々:なんで知ってんの!?
寧々:っていうかもういいから! 自分でも毎日ちゃんと確認してるし!
司:ん? そうなのか?
寧々:そりゃまあ、感想とかちゃんと見たいからね
類:それで……どうだい? 感想を見た感想は
寧々:…………うん
寧々:頑張って、本当によかったって思ったよ
寧々:それから——
寧々:わたしを信じてくれて、ありがとう
司:仲間なのだからな!! 信じるのは当然だろう!!
えむ:そうだよ寧々ちゃん! あたし達は1円タクシーだもん!
類:一蓮托生かな?
寧々:ふふっ
寧々:わたし、今回の公演で、 今までよりもっと自信が持てた
寧々:『わたしはどんな困難も乗り越えていける』 『世界に羽ばたいていける』って
えむ:寧々ちゃん……
寧々:だから——
寧々:これからもよろしくね!
司・えむ・類:『ああ!』 『うん!』
旭:…………
アークランドキャストB:ふぅ……。 今回も千秋楽までバッチリだったね!
アークランドキャストA:おう! あ、そういえば打ち上げって、いつもの店だよな?
アークランドキャストB:そうだよ。もう移動しちゃおっかって…… 旭くん、どうかしたの?
旭:あ……。 いや、少し考えごとをしていて
アークランドキャストA:……何か気になるところでもあったか?
アークランドキャストB:もしあるなら、言ってね。 次の公演に生かしてみせるから
旭:いや、何があるっていうわけじゃないんだ。 ただ……
旭:——ごめん。 打ち上げ、少し遅れて行っていいかな。 少し振り返りしたくって
アークランドキャストA:……そうか。 旭がひとりで考えたいなら、それがいいな
アークランドキャストA:んじゃ、遅れるって幹事に伝えておくよ
旭:ありがとう。 じゃあ、また後で
旭:…………
旭:(今回の公演も、たくさん実りがあった)
旭:(初めて完全に若手だけでやった公演だけど、 みんなそれぞれ得意分野を活かせて……)
旭:(だけど——)
旭:(……本当に俺は、このままでいいんだろうか)
旭:(——今の環境も、仲間も、俺にはもったいないぐらいだ)
旭:(ただ……)
旭:(俺の目指す、『世界をひとつにするショー』は、 そう簡単に作れるものじゃない)
旭:(まずは俺自身が、 それを体現できるほどの役者になる必要がある)
旭:(そしてそれには——)
旭:(あんな仲間が必要なんじゃないか……?)
旭:(ショーのために本気でぶつかって、 時に叱りつけてくれる——そんな仲間が)
旭:(……でも——)
???:——やぁ。どうしたんだい?
旭:え……
榊:千秋楽も無事に終わったっていうのに、 ずいぶん暗いじゃないか
旭:榊さん……いらしてたんですね
榊:はは、審査員もやらせてもらったしね。 どっちも千秋楽は見に来てたよ
榊:それより……何か思い詰めている顔だね
榊:——よければ、相談に乗ろうか?
旭:実は——