活动剧情

覚めない幻想をノックして

活动ID:192

第 1 话:迷走

奏の部屋
奏:……このフレーズは良さそうだな
奏:(柔らかい空気感が伝わるし、ちゃんと表現できそう)
奏:……でも……
奏:(この前から、ずっと違和感がある)
奏:(……本当に、このままで救えるの?)
奏:(だって、まふゆは——)
???:『——奏』
奏:ルカ、どうしたの?
ルカ:『そろそろ曲が完成するんじゃないかと思って 見に来たのよ』
奏:あ……
奏:……もう少しかかりそう、かな
ルカ:『あら、そうなの?』
奏:……うん
奏:本当にこれで、まふゆを救えるのかわからなくて
ルカ:『どういうこと?』
奏:……今、まふゆが感じた『お母さんのあたたかさ』を 落とし込んだ曲を作ってるでしょ?
奏:まふゆが『あたたかい』って言ってくれる曲は、 お母さんの愛情を感じた記憶と似てるからって
ルカ:『ええ、そうだったわね』
奏:うん、でも——
奏:……まふゆのお母さんと会って、あたたかさを感じたんだ
奏:今でも——まふゆを心から愛してるんだなって
奏:まふゆも、まふゆのお母さんも、 お互いが想い合ってたように、わたしには見えた
奏:それなのに……
奏:そんなふたりが一緒に暮らしても、 うまくいかなかったから……
奏:この曲を作っても、まふゆを救えないような気がするんだ
ルカ:『そう……』
ルカ:『それであなたは、どうすればまふゆを救えると思っているの?』
奏:…………わからない
奏:どうすれば、救えるんだろう
奏:……それに……
奏:……どうして、ふたりはうまくいかないんだろう
ルカ:『…………』
奏:電話だ、誰かな……
奏:はい、もしもし宵崎です——
奏:あ、おばあちゃん。 どうしたの?
奏:え? あ……
奏:——うん、……うん
奏:……わかった、じゃあ今週末に

第 2 话:蘇る想い

数日後
墓所
奏:……これでよし、と
奏:(曲作りに夢中になってて、うっかりしてたな)
奏:(いつもこの時期は……お母さんのお墓参りに来てるのに)
奏:……ごめんね、お母さん
奏:その分、今日はたくさん話そう
奏:お母さんの好きなカーネーションも買ってきたんだ。 ……今お供えするね
奏:うん、きれい
奏の祖母:——奏ちゃん、お掃除は終わったかしら
奏:あ……うん。 お花もお供えしたよ
奏の祖母:ありがとう、とってもきれいね
奏:そうだね……
奏の祖母:それじゃあ、フルーツとお菓子もお供えしましょう。 お団子に、落雁に——
奏の祖母:お母さんが大好きな、薄皮まんじゅう
奏の祖母:病院にいた時、奏ちゃんと一緒に よく食べていたわよね
奏:そう、だったね……
奏:病院の近くに、できたてを売ってくれるお店があって よくお母さんのために買いに行ってたっけ
奏の祖母:ふふ、そうね
奏の祖母:そうだ、奏ちゃんも食べない? まだたくさんあるのよ
奏:え……大丈夫だよ。 お母さんにあげてほしいな
奏の祖母:お母さんには、もうたくさん供えてるもの。 それに——
奏の祖母:あの頃みたいに、奏ちゃんと一緒に食べられたら きっとお母さんも嬉しいと思うの
奏:あ……
奏:…………それなら、ひとつもらおうかな
奏の祖母:ええ。はい、どうぞ
奏:うん
奏:……美味しい
奏:(……一緒に、か)
奏:(今、お母さんも食べてくれてるのかな)
奏の祖母:……ふふっ
奏:え、どうしたの?
奏の祖母:ああ、ごめんなさい。 ……奏ちゃん、優しい顔になったなあって思ったの
奏:優しい……?
奏の祖母:ええ。ちょっと前までは、お母さんのお墓に来ても どこか苦しそうで……自分を責めているように見えて
奏の祖母:……話しかけるのも、躊躇うくらいだったのよ
奏:あ……
奏の祖母:けれど、今は—— お母さんのことで、そんな表情ができるようになったものね
奏の祖母:だから……よかったわ
奏:おばあちゃん……
奏:……心配かけて、ごめん
奏:……きっと、わたしが変われたのは—— みんなのおかげだな
奏の祖母:サークルで、一緒に音楽を作っているっていうお友達?
奏:うん。音楽を作るのもそうだけど、 それ以外でも支えられてるって思うんだ
奏:あんまり無理すると、怒られたりもするし……
奏の祖母:ふふ、いいお友達を持ったのね
奏の祖母:それじゃあ、最近の奏ちゃんのことも お母さんに話してあげましょう
奏:……わかった
奏:(……お母さん)
奏:(そっちで、どんな風に過ごしてるのかな)
奏:(わたしは元気だよ。 ……この前ちょっとだけ、倒れちゃったけど)
奏:(あれからは、ちゃんと気をつけてるんだ。 みんなを心配させちゃったし)
奏:(だから、お母さんも安心してね)
奏:…………
奏:(……昔は……)
奏:(昔は、お母さんのこと、思い出さないようにしてたんだ)
奏:(優しい記憶を思い出すと、つらくて—— そのまま、動けなくなりそうで)
奏:(でも、今は……ちょっとずつ思い出せてるんだよ)
奏:(お父さんの誕生日に、一緒にサプライズパーティーしたよね。 お母さんが作ってくれたケーキ、すごくおいしかったな)
奏:(それに……絵本を読んでくれた時のことも。 お母さんの優しい声、すごく好きだった)
奏:(わたしにごはんの作り方を教えてくれたりもしたよね。 あの時のあったかい匂いも、なんだか思い出せる気がする)
奏:(それに————)
奏の母:——ねえ、奏
奏の母:いつまでも、幸せでいてね
奏の母:お母さんは、先に眠ってしまうけれど…… ずっと、奏のそばにいるから
奏の母:だから……さみしく思わないで
奏の母:ずっと、ずっと……奏のことを想っているからね
幼い奏:おかあ、さん……?
奏:(……お母さんは、最後まで わたしの幸せを願ってくれてたよね)
奏:(いなくなったあとも、幸せな毎日を過ごせるようにって)
奏:(……お母さんの言葉は今でもずっと、私の宝物だよ)
奏の祖母:——さあ、そろそろ帰りましょうか
奏の祖母:奏ちゃん、お菓子は半分こしましょう。 何かほしいものはある?
奏:あ……じゃあ、おまんじゅう貰おうかな
奏の祖母:ふふ、それじゃあ全部あげるわね。 お友達と一緒に食べてちょうだい
奏:……うん
奏:——今日は、本当に来れてよかったな
奏:おばあちゃん、声をかけてくれてありがとう
奏の祖母:おばあちゃんも、一緒にお墓参りできてよかったわ
奏の祖母:……ひとりにしてごめんなさいね。 私の体のことがなければ、一緒に暮らせるのに
奏:ううん、大丈夫。 いつも電話してくれてるし、さみしくないよ
奏:……ありがとう
奏の祖母:ふふ。帰ったら、また曲作りをするの?
奏:……うん
奏:(作らなきゃいけない、けど……)
奏の祖母:……奏ちゃん、どうしたの?
奏:え?
奏の祖母:すごく難しい顔をしていたから。 ……何か悩みでもあるの?
奏:あ……
奏:…………友達の、ことなんだけど

第 3 话:愛しているから

奏の祖母:……そう。 そんなことがあったのね
奏:うん……。その友達のお母さんも、 純粋に、その子のことを想って 学校を探したりしてたんだと思う
奏:その子も、そんなお母さんに応えたいって 思ってるみたいなんだ
奏:でも……どうしてもすれ違っちゃう、っていうか——
奏:……ふたりとも、お互いのことを想ってるのに どうしてうまくいかないんだろう
奏の祖母:…………
奏の祖母:……愛情って、難しいわよね
奏:え……?
奏の祖母:話を聞いていて思ったの。 お互いを深く愛しているからこそ、 恐怖が生まれてしまうことがあるのかもしれない……って
奏:愛してるから……怖い……?
奏:それって、何が……?
奏の祖母:そうね……
奏の祖母:——居場所がなくなること、かしら
奏:居場所……?
奏の祖母:ずっと一緒に生きている人達でも、 いつか離れなきゃいけない時は来ると思うの
奏の祖母:それは大人になる時なのかもしれないし—— 奏ちゃんのお母さんみたいに、突然別れる日が来るかもしれない
奏:あ……
奏の祖母:その人を大切に想っていればいるほど、 積み重ねた思い出があればあるほど……
奏の祖母:それは、受け入れ難くなるわ
奏の祖母:まるで……自分が立っていた場所が 崩れてなくなってしまうように思えてね
奏の祖母:だから、もしかしたらそのふたりも…… お互いに居場所がなくなる怖さを感じているのかもしれないわね
奏:…………
奏の祖母:……少し、難しいかもしれないわね
奏:…………おばあちゃんも、そういうことってあったの?
奏の祖母:そうね……。 若い頃は、あったかもしれないわ
奏の祖母:家族でも、友達でも、恋人でも 誰だって……居場所がなくなるのは怖いもの
奏:そう、なんだ……
奏:居場所がなくなるのは、怖い……か
奏:それは、わかる気がする
奏:お母さんがいなくなった時も、 お父さんの時も……怖かったし
奏:ニーゴも、なくなると嫌だなって思うから
奏の祖母:奏ちゃんの大切な場所だものね
奏:うん
奏:でも……その子は、 まだお母さんと離れなくてもいいんだよね
奏:それなのに……どうして、怖いって思っちゃうんだろう
奏の祖母:…………
奏の祖母:——奏ちゃんにとって、その子はとても大切なお友達なのね
奏:え……?
奏:……うん。 その子の力になりたいって思うんだ
奏の祖母:そう……
奏の祖母:それが、今、奏ちゃんがやるべきことなら…… おばあちゃんは応援するわ
奏:ありがとう
奏の祖母:——けれどね
奏の祖母:いつか、奏ちゃんも自分自身の人生を歩むのよ
奏の祖母:誰にも縛られない、奏ちゃんだけの人生を
奏の祖母:おばあちゃんは、奏ちゃんが元気に笑ってくれていれば ——それが一番だから
奏:うん

第 4 话:予感

誰もいないセカイ
MEIKO:(……今日も、変化はなさそうね)
MEIKO:(……奏のもとへ戻ってから、 まふゆはだいぶ落ち着いたように見えるわ)
MEIKO:(まだ動き出せるような心境ではないでしょうけれど……)
MEIKO:(少なくとも、最悪の状況ではない)
MEIKO:(何かきっかけがあれば、また……)
MEIKO:(……けれど……)
MEIKO:(また動いたとしても、 それがまふゆにとって本当に良いのかは——)
MEIKO:ルカ……
ルカ:あら、メイコ
MEIKO:……どこへ行っていたの?
ルカ:そんな怖い顔しないでちょうだい。 奏の様子を見に行っていただけよ
MEIKO:……奏の?
ルカ:ええ
ルカ:——最近、停滞していると思わない?
ルカ:瑞希も絵名も、抱えていた悩みを乗り越えて 前へ進んでいるわ
ルカ:けれど、まふゆは奏の家に戻ったあとから 前に進めていない
ルカ:そして奏も、まふゆを救う曲をまだ作れていない
ルカ:……どうしてだと思う?
MEIKO:……あんなことがあったあとだから、 仕方ないでしょう
MEIKO:奏も、どんな曲がまふゆを救えるのか—— きっと今も、探しているはず
ルカ:——そうね、わからないと言っているわ
ルカ:本当は、“誰よりも近い場所にいる”のに
MEIKO:それは——
瑞希:お、いたいた! おーい! さっきお店で美味しそうなお菓子見つけたから、 みんなで食べよーよ!
絵名:ふたりでいるなんて珍しいじゃん
絵名:って、なんか空気悪くない……?
ルカ:そんなことないわ。 仲良くお喋りしていただけよ
ルカ:ねえ、メイコ
MEIKO:…………
ルカ:あら、聞こえていないみたい
絵名:ていうか、本当に何があったの?
絵名:いや、言えないなら別に良いんだけど…… いつもよりピリピリしてない?
MEIKO:——まふゆと奏の話よ
瑞希:え? まふゆ達の?
MEIKO:ええ。お母さんといろいろあって、 奏のもとへ戻っているでしょう?
MEIKO:だから——あのふたりが どうしたら前へ進めるのかを考えていたの
絵名:あ……そういうこと
瑞希:……でも、難しいよね
絵名:うん。奏から状況は聞いてるけど—— 今の状態で、また家に戻るのは……
瑞希:……そうだね。 なんとなくだけど、今は、まふゆとお母さんは——
ルカ:——あら、誰か来たみたいね
ルカ:噂をすれば、というところかしら
MEIKO:っ、待ちなさい!
絵名:あっ、ちょっと!
絵名:行こう、瑞希
瑞希:う、うん……!

第 5 话:居場所

奏:(居場所がなくなるのが、怖い……)
奏:(もし本当に、まふゆとまふゆのお母さんが そう思ってるのなら、わたしには何ができるんだろう)
奏:あれ? みんな……
瑞希:やっほー、奏もセカイに来てたんだ!
絵名:私達もさっき来たところなんだ。 瑞希と遊んでる時に珍しいお菓子を見つけたから、 ミク達にもあげようと思って
瑞希:奏とまふゆの分もあるから、あとでゆっくり食べよ!
奏:……うん、ありがとう
瑞希:奏、何かあった?
奏:え?
瑞希:なんか、ちょっと考えごとしてる感じするっていうか……
絵名:うん……曲のこと考えてる時と ちょっと雰囲気違うよね。 どうかした?
奏:あ……
ルカ:——奏、聞かせてあげたら?
ルカ:さっき、おばあさんと話していたこと
奏:ルカ、見てたんだ……
奏:……でも、そうだね。 わたしひとりで考えても、答えが出ないかもしれないし
奏:実は——
絵名:居場所を守るために、か……
奏:うん……
瑞希:その気持ちは、ボクにもわかるな
奏:瑞希も?
瑞希:……うん、まふゆとボクだと、 考え方とか状況は全然違うんだけどさ
瑞希:でも、居場所がなくなるかもしれない—— それが嫌で、怖いって気持ちはボクにもあったから
瑞希:何も言わなければ、本当のことを話さなければ このままでいられるかも——
瑞希:それなら、黙って、ごまかして、隠してればいい
瑞希:どうしても辛くなったら—— もう、逃げちゃおうって思っちゃうんだけどさ
絵名:瑞希……
瑞希:だから……本当、まふゆはすごいよ
瑞希:今だって、すごく苦しいはずなのに……
瑞希:家を出てからも、ずっとずっと—— どうしたらいいか考えてるんだもんね
奏:…………
奏:……ニーゴは、まふゆの居場所になりきれないのかな
MEIKO:——まふゆにとっても、 ニーゴの存在は大きいはずよ
MEIKO:あの子にとって、ふたつめの居場所になっているはずだから。 そのおかげで、今の状況を耐えられているんだと思うわ
MEIKO:ただ——
MEIKO:まふゆにとって、家族は より大きな、自分の存在に関わるような居場所なんでしょうね
MEIKO:少なくとも——そう思っているはず
瑞希:…………友達は、家族にはなれないもんね
奏:………………
絵名:……でも、難しいな。 今のままじゃ、同じことを繰り返しちゃう気がする
絵名:まふゆが、まふゆにとっての居場所に—— お母さんのところに戻りたいって思ってるのなら、また……
奏:(……どうすれば、いいんだろう)
奏:(まふゆは、“家族”っていう居場所を失いたくない)
奏:(それはまふゆのお母さんも同じで…… お互いに失うのが怖いから、苦しくなる)
奏:…………
ルカ:——奏
奏:え?
ルカ:あなたは、どう思うかしら

第 6 话:答えは

奏:わたしは……
奏:…………わからない
ルカ:あら、どうして?
奏:……考えてみたんだけど、やっぱり、わからないんだ
奏:まふゆとまふゆのお母さんにとって、 何がそんなに怖いことなのか……
ルカ:ふうん……
ルカ:……驚いたわ。 随分、自分を見ないようにしているのね
ルカ:奏だからこそ、まふゆを救える唯一の可能性があるのに
奏:え……
ルカ:——奏
ルカ:もし、あなたが願い通り、まふゆを救うことができたとして——
ルカ:まふゆに曲を作らなくてもよくなったら…… どうするの?
奏:————え?
奏:どういう、こと……?
ルカ:……まだわからない? それなら——
MEIKO:いい加減にして!
MEIKO:——これ以上続けるのは、私が許さないわ
瑞希:ちょっ……! ストップストーップ!
瑞希:まあまあ、ふたりとも落ち着いて~!
瑞希:ほら、奏もびっくりしちゃってるし……! ここは美味しいお菓子でも食べて、気分変えようよ!
MEIKO:いらないわ
瑞希:そう言わずに!!
ルカ:あら、いいじゃない。 私はいただきたいわ
絵名:奏……
奏:あ……ご、ごめん。 ちょっと、ぼうっとしちゃって
瑞希:……無理しなくていいからね
瑞希:ほら、お菓子一緒に食べようよ!
奏:……うん
ルカ:——それじゃあ、あなたがどんな答えを出すのか期待しているわ
奏:……あ……
MEIKO:——待ちなさい!
MEIKO:あなた……どういうつもり?
MEIKO:今のあの子達は、 ただでさえ崩れそうな中で、なんとか立てているのよ……!
ルカ:私も別に言うつもりはなかったわ
ルカ:けれど……奏が、いつまでも “見ないように”しているんだもの
ルカ:そろそろ知るべきだって思わない? 奏も——依存しているってことを
MEIKO:……それは……
ルカ:そんなに怖い顔しないでちょうだい
ルカ:大丈夫、もう何もしないわ
ルカ:今はただ、あの子の答えを待ちましょう
MEIKO:(物事を前に進ませるためには、 時に干渉することも確かに必要だわ)
MEIKO:(でも——)
MEIKO:(……やっぱり、ルカのやり方には同意できないわ)
MEIKO:(けれど——こうなってしまった以上、 見届けなければいけないわね)
MEIKO:(あの子の、行き着く場所を——)

第 7 话:ざわめき

宵崎家 キッチン
奏:(もし、まふゆのために曲を作らなくてもよくなったら……)
奏:(そうしたら、きっとまた、前の生活に戻る)
奏:(誰かを救える曲を、作り続けるだけ——)
奏:(……それだけのはずなのに、なんでだろう)
奏:(胸が————)
まふゆ:……奏、セカイに行ってたの?
奏:あ、まふゆ——
奏:……うん、ちょっと考えを整理したくて
まふゆ:そうなんだ
奏:…………
まふゆ:……何か、あったの? 顔色がよくないけど
奏:え? あ……
奏:…………ううん、なんでもないよ
まふゆ:そう……
まふゆ:……それなら、今日は休んだほうがいいよ。 体調が悪いのかもしれないし
奏:え、そこまでは——
まふゆ:みんなには私が言っておくから、休んで
奏:……わかった
まふゆ:じゃあ、もし何か欲しいものがあったら言って
奏:うん。あ——
まふゆ:どうしたの?
奏:…………ごめん、なんでもない
奏:今日はちゃんと休むから、安心して
まふゆ:……うん
奏の部屋
奏:(もし——)
奏:(まふゆに曲を作らなくてよくなったら……)
奏:(わたしの曲で、ちゃんとまふゆを救うことができて)
奏:(家族みんなで、わかりあえて、幸せになって……)
奏:(……まふゆが、心から笑顔で過ごせるようになって……)
奏:(わたしは、まふゆに曲を作らなくてもよくなる)
奏:(作らなく、ても——いいんだ)
奏:(……なんだろう、これ)
奏:(どうして————)
奏:ナイトコードの通知…… もう、みんな作業してるのかな
絵名のメッセージ:『K、起きてる? 寝てたらごめん』
奏:……えななんと、Amia? どうしたんだろう
絵名のメッセージ:『もし体調がよかったら……なんだけど。 さっきのことで、ちょっと話したいんだ』
絵名のメッセージ:『まふゆのために、どうしたらいいのか…… って言っても、今はそうするしかないのかもって話なんだけど』
奏:まふゆの、ために……
奏:(——そうだ、自分のことばかり考えてちゃだめだ)
奏:(わたしは、まふゆを——救わなきゃいけないんだから)
奏:『わかった。DMで通話しよう』——っと
絵名:『——ごめん、K。 突然声かけちゃって』
奏:『ううん、大丈夫。それより、さっきの……』
瑞希:『うん』
瑞希:『……ふたりで、ちょっと考えてたんだ』
瑞希:『まふゆのために、どうすればいいんだろうって』
絵名:『……それでね、私達なりの答えは出たんだけど……』
奏:『——聞かせて』

第 8 话:選択肢

瑞希:『……正直、この問題に正解はないんじゃないかって思うんだ』
瑞希:『それに……まふゆとまふゆの家族のことだから、 ボク達が口出しできる問題じゃないってことも』
奏:『……うん』
絵名:『その上で、ふたりで考えてみたんだけど——』
絵名:『……本当なら、奏が言うような形が一番だとは思うんだ』
絵名:『お互いに、自分の気持ちとちゃんと向き合って 家族一緒にいられたならって』
奏:『……え?』
絵名:『もし傷つけ合っても、ちゃんと話し合って前に進めるなら…… それが一番いいって思うの』
絵名:『でも……』
絵名:『今じゃなきゃダメなのかな、って』
奏:『……どういうこと?』
絵名:『私達は、話しか聞いてないけど…… まふゆの様子を見てると、お母さんと会う度に 傷ついてる気がするの』
絵名:『だからってわけじゃないんだけど……』
絵名:『あのね、私達—— 私と瑞希は、の話なんだけどさ』
奏:『……うん……』
絵名:『……少し前、瑞希がニーゴを離れてた時、あったでしょ?』
絵名:『あの時……私、ずっと考えてたの』
絵名:『どうして瑞希を引き留めなかったんだろう。 ……せめてあの瞬間、何か言えてたら、って』
奏:『あ……』
絵名:『でも、今は…… あの時、無理に話そうとしなくて、 よかったかもなって思うんだ』
奏:『え?』
絵名:『あの時の私は、まだ全然、気持ちが整理できてなくてさ』
絵名:『瑞希の気持ちもちゃんと考えられてなかったし、 自分自身どうしたいのかも…… 混乱して、よくわからなくなってたの』
絵名:『そんな状態で、瑞希のそばにいたらきっと…… もっと傷つけてたと思うんだ』
絵名:『それこそ……取り返しのつかないくらい』
瑞希:『……それは、ボクも同じでさ』
瑞希:『あの時、いろいろグチャグチャになってて。 誰かの言葉を受け入れる余裕もなくなっちゃっててさ』
瑞希:『多分、何を言われても…… うまく受け入れられなかったんじゃないかって思うんだ』
瑞希:『だから、なんていうんだろ……』
瑞希:『ちゃんと向き合うのにも、時間が必要だと思うんだ』
瑞希:『ふたりがちゃんと心を落ち着かせて、 次の行動を決めるための時間が』
絵名:『……うん』
絵名:『だから——』
絵名:『“距離を置く”っていう選択肢も、 あるんじゃないかな……って』
奏:『…………』
瑞希:『も、もちろん、ずっととは言わないよ!』
瑞希:『でも……今の状況を、 急いでなんとかしようって思わなくても いいんじゃないかって感じたんだ』
瑞希:『時間と距離があれば、 自分の心を整理できるんじゃないかって思うし』
絵名:『もしかしたら離れてる間に、 お互い、人間的に成長できるかもしれないしね』
奏:『成長……』
奏:(……たしかに、まふゆのお母さんは最初に会った時と この前会った時だと、印象が違った)
奏:(……離れてる時間の中で、心境に変化があったのかも)
奏:(……でも……)
奏:『……一緒にいられる方法は、ないのかな……?』
奏:『ふたりはお互いに一緒にいたくて、愛し合ってるから……』
奏:『ふたりとも、そうしたいって思ってるだろうし 家族なんだから——』
絵名:『うん……』
絵名:『でも……やっぱり、今すぐは難しいんじゃないかな』
絵名:『私は、まふゆとは違って 父親のことは嫌いだったんだけどさ』
絵名:『そのせいで、見えてなかったものとか 逆に、見ないようにしてた気持ちがあったなって ……最近になって、ようやく気づけたんだ』
絵名:『だから——やっぱり、自分の考えを変えるのって すごく大変なんだって思うの』
奏:『…………』
瑞希:『それに……まふゆも、きっとお母さんも、 頑張って向き合ってるけど』
瑞希:『向き合うたびに、 傷が深くなることもあるかもって思って』
奏:『あ……』
瑞希:『……もしかしたら、向き合うことで 変わっていくこともあるのかもしれないけどね』
瑞希:『それは、ボク達にはわからないよ』
瑞希:『ただ……』
瑞希:『ずっと向き合い続けるって選択肢以外も あるんじゃないかなってことを伝えたかったんだ』
奏:『……そっか……』
奏:(……たしかに、そうだ)
奏:(怖いって気持ちも、お母さんを大事に想う気持ちも……)
奏:(まふゆの心の、すごく深い場所にあって—— きっと、簡単には変えられない)
奏:(わたしは……本当は、家族なら 一緒にいられる形で解決できればいいと思ってた)
奏:(お互いに愛してるのなら、きっと…… 一緒にいるのが一番幸せだって)
奏:(だけど——)
奏:(…………どうするのが、一番いいんだろう)
奏:(わたしは——)
瑞希:『……ごめんね、こんな話しちゃって』
瑞希:『でも、これは本当にボク達の考えで、 正しいってわけじゃないと思うから』
奏:『……うん、わかってる』
奏:『でも、話してくれて助かったよ。 わたしだけだと、本当にわからなかったから』
絵名:『ただ……これをまふゆに、どういう風に言えばいいのか、 そもそも伝えるべきなのかどうか、悩んでるの』
絵名:『……これをまふゆに伝えたら、 まふゆの人生が変わっちゃうかもしれないし』
絵名:『だけど、奏には——伝えておこうと思って』
奏:『……ありがとう』
奏:『わたしも……どうするのがいいのか、考えてみる』
瑞希:『じゃあ、ボク達は作業に戻るね。 まふゆも待ってると思うし』
奏:『うん、ありがとう。それじゃあ——』
絵名:『あ、奏。待って!』
奏:『え?』
絵名:『……気負いすぎないでね』
絵名:『まふゆを救うために、頑張ってる奏のことは、尊敬してるよ』
絵名:『でも——』
絵名:『自分のことも、大事にしてね』
絵名:『それだけが……奏の幸せじゃないんだから』
奏:『あ……』
絵名:『何かあったら、いつでも話は聞くから。 ……それだけ』
絵名:『じゃあね』
奏の祖母:いつか、奏ちゃんも自分自身の人生を歩むのよ
奏の祖母:誰にも縛られない、奏ちゃんだけの人生を
奏:……わたしは……
ルカ:まふゆに曲を作らなくてもよくなったら…… どうするの?
奏:(……わたしと、まふゆは……)
奏:…………ちゃんと、考えなきゃ
奏:(まふゆが救われるには、どうすれば一番いいのか)
奏:(絵名が言ったことも、瑞希が言ったことも——)
奏:(それに、ルカが言ったことも)
奏:(ちゃんと考えて……答えを出さなきゃ)