活动剧情
灯のミラージュ
活动ID:35
第 1 话:見つからない鍵穴
まふゆの部屋
まふゆ:…………。 ……よって、X=Yと証明できた、と
まふゆ:今日の宿題、ようやく全部終わった
まふゆ:……もうすぐ25時か。 ナイトコード、入らないと
まふゆ:『みんな、いる?』
まふゆ:…………返事、返ってこないな。 ログインもしてないみたい
まふゆ:……あ。そういえば、 今日はセカイに集まる約束だったっけ
まふゆ:たしか、新曲のMVや歌詞について 直接話しあいたいって奏が言ってた
まふゆ:(…………。 あの時の、奏の曲……)
まふゆ:……うまく、言えないけど……
まふゆ:よかった、と思う
奏:え……
瑞希:まふゆ、笑って……!?
まふゆ:みんな、何をそんなに驚いてるの?
絵名:え、あんた気づいてないわけ?
瑞希:まふゆ、笑ってたんだよ! 奏の曲聴いて!
まふゆ:私が……?
まふゆ:(……あの曲……)
まふゆ:(最初は、いつもと同じだと思った。 ただなんとなく、胸の奥がもやもやするだけ)
まふゆ:(でも、いつもと少しだけ違ったのは……)
まふゆ:少し——あたたかかった
まふゆ:…………
まふゆ:どうしてそう感じたんだろう
まふゆ:なんであの曲だけ、あたたかいって感じたんだろう
まふゆ:どうして——笑ったんだろう
まふゆ:………………。 頭、痛い……
誰もいないセカイ
ミク:……あ。瑞希、来た
奏:うん、これであとはまふゆだけだね
ルカ:ふふ。このセカイの静寂はとても好きだけれど、 やっぱりこうやって人が集まるのはいいものね
瑞希:ごめーん、待った?
絵名:待ったし、遅い! 一体何やってたわけ?
瑞希:や~、ごめんごめん。作業に没頭しちゃっててさ。 すーっごくカワイイMV用の素材見つけちゃって……
瑞希:あれ? まふゆはまだ来てないの?
奏:もうすぐ来ると思う。 さっき、学校の宿題が終わったって連絡があったから
瑞希:そっか。じゃ、少し待ってよっと! どうする? 待ってるあいだ、しりとりでもする?
絵名:やるわけないでしょ。子供じゃあるまいし
瑞希:えー! いいじゃん、つれないな~
まふゆ:……おまたせ
瑞希:あ。まふゆ、いらっしゃーい!
まふゆ:ごめん、遅くなった
奏:ううん。忙しいのに、来てくれてありがとう
リン:……今日は、何するの? 話しあいって言ってたけど
奏:この前、新しい曲を作ったでしょ? あの曲を、聴いてくれる人にもっと響くようにしたくて
奏:だから、歌詞やMVを作ってもらう前に、 直接作曲の意図を伝えたほうがいいと思って、 集まってもらったの
ミク:……もっと響くように……
絵名:そういうことなら、私もいつも以上に 気合い入れて描かなきゃね!
瑞希:そうだね。 それにボク、奏が今回は特に力を入れたいって気持ち、 すごくよくわかるな
瑞希:だって、このあいだ奏が作った曲、ホント良かったもん! Kの新境地!って感じでさ
瑞希:それにまさか、まふゆのあんな笑顔が見れるなんて 思わなかったしね
絵名:……たしかにね。 私もあれはちょっと意外だったな
瑞希:だよね~。 だからボク、まふゆの歌詞がどんな風になるのか、 すっごく楽しみなんだ!
瑞希:ねっ、まふゆ
まふゆ:………………
瑞希:……? あれ、まふゆ。どうしたの?
まふゆ:……なんでもない
絵名:いや、明らかにいつもより 反応薄いと思うんだけど……
奏:……何かあったの?
まふゆ:…………
ルカ:……ああ、そう
ルカ:さしずめ、扉の鍵は手にしたけれど、 鍵穴が見つからない、というところかしら?
奏:……鍵穴……? それって、どういうこと?
ルカ:どういうことなのかは、 まふゆが知っているんじゃないかしら
まふゆ:………………
まふゆ:…………どうしても、わからなくて
奏:まふゆ……?
まふゆ:……あれから考えてみたの。 奏の曲を聴いて、どうして自分が笑ったのか
まふゆ:あの時——胸のあたりがあたたかくなった。 多分それが影響して笑ったんだと思う
まふゆ:でも、どうしてあたたかくなったのか、 その理由が……わからない
絵名:どうしてって……奏の曲に感動したから ジーンときて笑ったんじゃないの?
まふゆ:感動……
まふゆ:じゃあ、どうして感動したの?
まふゆ:他の曲じゃこんな風にはならなかったのに、 どうしてあの曲だけ、あたたかいって思えたの?
絵名:そ……そんなの私がわかるわけないじゃない!
奏:……どうして笑ったのかわからない……
瑞希:うーん、わからないならわからないで、 ゆっくり考えればいいんじゃないかな~って思うけど……
瑞希:歌詞を書くってことを考えると、 やっぱ理由はわかってたほうがいいかもね
まふゆ:…………
ミク:——まふゆは、どうしたい?
まふゆ:私は——
まふゆ:……答えを、見つけたいと思う
絵名:見つけたいって、そりゃそうだろうけど……。 どうやって見つけるつもりなの?
まふゆ:……それは……
奏:……じゃあ、一緒に考えよう
まふゆ:一緒に……?
奏:うん。あの曲を聴いてまふゆがどう感じたのか、 わたしも、もっと知りたいから
奏:だから一緒に考えよう。 ……どうかな?
まふゆ:…………
まふゆ:わかった。 やってみる
まふゆ:でも、具体的にどうすれば——
まふゆ:……、っ……
ミク:まふゆ……!?
奏:まふゆ、どうしたの!?
瑞希:あ、もしかして……! まふゆ、おでこいい? 触るよ
瑞希:……やっぱり。熱あるじゃん!
絵名:え、熱!? ちょっと大丈夫なの?
まふゆ:……大丈夫。少しふらつくだけ
絵名:大丈夫じゃないから、ふらついてるんでしょ? ったく、本当に手のかかるヤツ……
奏:……話しあいは、まふゆの体調が戻ってからにしよう
奏:今日は帰ってゆっくり休んでほしいな
まふゆ:……わかった
瑞希:じゃあ、今日はこれで解散だね。 まふゆ、ちゃんと寝て早くよくなってね
絵名:水分摂って、あったかくして寝なさいよ
ミク:……まふゆ……
まふゆ:……みんな、ありがとう。 ただの風邪だと思うから、すぐ治すよ
まふゆ:………………
まふゆ:(そっか。今朝から頭が重いと思ってたけど 熱があったんだ……)
まふゆ:(体を休めなくちゃ。 でも……)
まふゆ:(どうしてあの曲で笑ったのか——、 早く知りたい……)
第 2 话:私のアルバム
翌日
宮益坂
まふゆのクラスメイト:それじゃまふゆ、また明日ね!
まふゆ:うん、また明日
まふゆ:う……
まふゆ:(頭の痛み、なかなか治まらないな)
まふゆ:(明日の予備校の予習したかったけど、 今日は、本当に休んだほうがよさそう)
まふゆ:……帰ったら、薬だけ飲んで寝よう
朝比奈家 リビング
まふゆ:ただいま
まふゆ:(ええと、薬。たしかキッチンに……)
???:……でね……この時、まふゆったら……
???:……そうか……そんなことも……
まふゆ:……?
まふゆ:あ……お母さん、お父さん
まふゆの母:あら、まふゆ。おかえりなさい
まふゆ:……うん、ただいま。 そういえばお父さん、今日は仕事お休みなんだっけ
まふゆ:ふたりで何見てるの? ……それって、アルバム?
まふゆの母:ふふっ。懐かしいでしょう。 まふゆが小さい頃の写真よ
まふゆの父:お母さんが久しぶりに見たいと言ってな。 ついこんな時間まで話しこんでしまった
まふゆ:……ふふっ。そうなの? なんだか恥ずかしいな
まふゆの母:あっ、お父さん。これ、小学校1年生の頃にまふゆが 全国作文コンクールで優秀賞を取った時の写真じゃない?
まふゆの父:ああ。覚えているよ。 その隣は……学校の演劇で、主役をやった時の写真か
まふゆの母:この白雪姫のドレス、お母さんが縫ったのよね。 まふゆのクラスの子が最初に用意した衣装のデザインが、 あんまり良くなかったから
まふゆ:…………っ
まふゆの母:まふゆ?
まふゆ:……あ、なんでもない。 あの時はありがとう、お母さん
まふゆの母:ふふ。いいのよ。せっかくの主役だったんだもの。 まふゆの気に入らないドレスで 舞台に上がるなんて、かわいそうだわ
まふゆの父:まふゆも来年は受験か……。 どうだ? 準備は進んでいるか?
まふゆの母:医学部受験に備えて、全教科しっかりと勉強しないとね。 予備校が合わなかったら変えてもいいからね、まふゆ
まふゆ:…………
まふゆ:(……医学部、か……)
まふゆ:いろいろありがとう。お父さん、お母さん
まふゆ:勉強も受験も、頑張るね
まふゆの父:ああ。今度の模試も、期待しているぞ
まふゆの部屋
まふゆ:…………
まふゆ:(……なんでだろう)
まふゆ:(小さい頃の、写真……。 あれを見たら、少しだけ、胸が痛くなったような……)
まふゆ:……早く薬飲んで、寝なきゃ。 みんなにも、今日は行けないって連絡入れて……
まふゆ:…………
まふゆ:……少しだけ、奏の曲を聴こうかな
???:……け、ほ。 おかあ、さ……
???:……まふゆ
???:早く、いつもの——
まふゆ:……ん……
まふゆ:(……今のは、夢? なんだったんだろう、あの光景……)
まふゆ:あ……奏の曲、かけっぱなしだった。 あのまま寝ちゃってたんだ……
まふゆ:(……11時半か)
まふゆ:(……薬を飲んだからかな。 頭痛も治まってきた)
まふゆ:…………
まふゆ:(なんでだろう。あのアルバムの、小さい頃の写真。 あれを見たときの気持ち……。やっぱり、気になる)
まふゆ:(胸が苦しい気がするけど……。 奏の曲を聴いた時と、同じような感じもする)
まふゆ:(もうお母さんもお父さんも寝てるだろうし。 今なら、あのアルバムもゆっくり見れるかも)
まふゆ:(ええと、たしか戸棚の奥って言ってたっけ……)
まふゆ:——あ、あった。これだ
まふゆ:(…………。 たしか、あの写真は5歳くらいの頃の……)
まふゆの母:まふゆ? どうしたの?
まふゆ:……っ!
まふゆ:あ、お母さん……
まふゆの母:あら。まふゆもアルバム見たくなったの? ふふっ、こんな時間にわざわざ起きて見にくるなんて、 懐かしくさせすぎちゃったかしら
まふゆ:……うん、そんなところ。 小さい頃のこと、あまり覚えてなかったから もう一度見たくて……
まふゆの母:でも、明日も早いんでしょう?
まふゆの母:寝不足だと勉強にも支障が出るし……。 授業に集中できないと、成績も下がっちゃうわよ
まふゆの母:もちろん、お母さんが言わなくても まふゆはわかってると思うけど
まふゆ:……うん。もう寝るよ
まふゆ:おやすみなさい、お母さん。 アルバムは明日、部屋でゆっくり見るね
まふゆの母:ええ。おやすみなさい、まふゆ
まふゆ:(……はぁ。 アルバムは持ってこれたけど……)
まふゆ:(ここにいると、ゆっくり考えるのが難しそう)
まふゆ:(どこか、静かな場所……。 ……セカイに、行こうかな)
第 3 话:いつかの記憶
誰もいないセカイ
瑞希:……あれ、まふゆ? 今日は体調悪いから寝るって ナイトコードに送ってなかったっけ
瑞希:こんな時間に起きてて大丈夫なの?
まふゆ:うん。薬飲んで寝たら、熱は下がったから
まふゆ:ふたりとも、何してるの?
リン:……瑞希が、新しいコサージュを買ったからって、 勝手にわたしのスカートにつけて遊んでる
瑞希:へへっ、ごめんごめん。 お店で見た時、リンに似合いそう!ってビビッときちゃってさ
瑞希:でも、まふゆが風邪って珍しいよね。 絵名だったら、お腹出して寝て熱出したって 聞いても、全然驚かないけどさ~
まふゆ:……そうかもね
瑞希:……あ。ひょっとして、ここでゆっくりしたい感じ? うるさかったら、ボク帰ろうか
まふゆ:ううん、大丈夫
瑞希:ならよかった! こんな時間にまふゆとセカイで会えるなんて めったにないから、嬉しいよ
リン:……瑞希、最近よくセカイにひとりで来てる
まふゆ:そうなんだ。どうして?
瑞希:え? ……あ~……
瑞希:いや、大した理由はないんだけどさ。 ほら、ここって厄介ごとがなくて気楽だし?
瑞希:ちょっと考えごとしたい時とか、 なんとなーく静かな場所にいたい時とか…… つい、ここに来たくなるんだよね
まふゆ:……そっか
瑞希:そんなことより、その手に持ってるやつ、どしたの? なんかすっごい大きい本に見えるけど……
まふゆ:これは……アルバム
瑞希:アルバム? なんで?
まふゆ:……今日、お母さん達と一緒に 昔の写真を見てたら……胸が痛くなったの
まふゆ:でも、どうして痛くなったのかわからなくて
まふゆ:……家で考えるのが難しそうだったから、ここに来た
瑞希:ふうん。昔の写真を見てたら、か……
まふゆ:…………
瑞希:……じゃあさ。 そのアルバム、ボクにも見せてよ!
まふゆ:え?
瑞希:ほら、奏が言ってたじゃん。 一緒に考えようって!
瑞希:そのアルバムの中に、何かまふゆの気持ちがわかるような ヒントがあるかもしれないじゃん? だったら、ボク達も一緒に見て考えるよ
リン:……それ、わたしも入ってる?
瑞希:とーぜん! いいでしょ?
リン:…………少しだけなら
瑞希:ありがと、リン! まふゆはどうかな?
まふゆ:……わかった
瑞希:よし決まり! それじゃ、 さっそく見せてもらお、リン!
瑞希:おおっ、弓道着のまふゆだ!
瑞希:カッコイイ~! そういえば、弓道部だって前に言ってたもんね
リン:この写真、いつの?
まふゆ:それは、弓道部の都大会で準優勝した時の写真
瑞希:都大会準優勝!? 何そのスゴイ成績!
まふゆ:別にすごくない。 頼まれたから出ただけ
瑞希:いや、頼まれたからって……。 はあ。つくづくすごいんだなー、まふゆは
瑞希:……あ! 小さい頃のまふゆ、 めちゃくちゃカワイイ~!
まふゆ:……そうかな
瑞希:そうだよ! この写真とか、 ほっぺ真っ赤にしちゃって……
瑞希:…………ん?
まふゆ:……何?
瑞希:この写真のまふゆ、今と全然違うね
リン:違う?
瑞希:うん。ほら、この5歳の誕生日会で ケーキ食べてる写真とか、すっごい満面の笑顔じゃん?
瑞希:いい子やってる時のまふゆの雰囲気とは ちょっと違う感じがするんだよね
まふゆ:違う、感じ……?
リン:まふゆ、わかる?
まふゆ:……わからない。 そんなこと、考えたこともなかった
リン:どういうことなんだろう
瑞希:うーん。ボクにもよくわかんないけど……
瑞希:ひょっとしたら、この頃のまふゆは 今と違う気持ちで笑えてたのかも?
まふゆ:……違う気持ちで……
まふゆ:(……ひょっとして、この頃の私の思い出に、 奏の曲を聴いた時の、気持ちの答えがある……?)
まふゆ:……っ……!
瑞希:あっ! まふゆ、大丈夫!?
リン:……まふゆ、またふらついてる
瑞希:そうだよね。薬飲んだからって、 すぐによくなるわけじゃないしね……
まふゆ:……大丈夫。もう少しで、何か掴めそうな気が……
瑞希:焦らないで、今日は帰って休もう? まふゆが元気になったらまた、ボクも一緒に考えるからさ!
まふゆ:でも……
瑞希:ほら、無理して熱がひどくなったら 元も子もないじゃん?
まふゆ:……、わかった
瑞希:うん、お大事にね。 元気になったら、また考えよ!
まふゆ:……うん。おやすみ
瑞希:まふゆ、大丈夫かな……
リン:……まふゆ、奏と同じくらい無理するから
瑞希:……そうだね
リン:……そういえば、瑞希はどうして気づいたの? まふゆの子供の頃の笑顔が、最近のと違うって
瑞希:……ああ、あれね
瑞希:ボクね、昔っから、その人が何考えてんのかとか なんとなーく気づけちゃうんだよね
瑞希:……ま、やりすぎちゃう時もあるから。 本当はあんまりそういうの、考えたくないんだけどさ
リン:やりすぎちゃう時?
瑞希:うーん、例えば……
瑞希:口で言ってることと思ってることが違うってことは、 その人には隠したい本心があるってことでしょ?
瑞希:でも表情見てると『この人本当はこんなこと考えてるのかも』 って、なんとなくわかっちゃうから
瑞希:それで結局ギクシャクして、人間関係で失敗しちゃう—— みたいなことがあるんだよね
リン:……そう
リン:瑞希も、つらいの?
瑞希:へっ?
瑞希:……ははーん。 リンってば、ボクのこと心配してくれてるのー?
リン:別に、そういうわけじゃない。 瑞希が落ちこんでると……調子が狂うだけ
瑞希:あははっ! そっかそっか
瑞希:ボクは全然だいじょーぶだよ。 ありがと、リン!
瑞希:……でも、そうだね
瑞希:『本当の自分』はあるのに、それをうまく見せられない人もいれば 『本当の自分』を見つけられなくて、苦しんでいる人もいる
瑞希:……まふゆは早く、『本当の自分』を 見つけられるといいね
第 4 话:忙しさの中で
翌朝
朝比奈家 リビング
まふゆ:おはよう、お母さん
まふゆの母:あら、今日は早いのね。朝から何か用事?
まふゆ:うん。委員会の仕事があるんだ
まふゆの母:そう……。大変ね
まふゆの母:まふゆが信頼されてる証拠だとは思うけど、 嫌だったら先生に言うのよ。 委員会の仕事よりも、勉強に集中させてくださいって
まふゆ:……うん。わかった。 負担になりそうだったら相談してみるね
まふゆ:じゃあ、いってくる。 今日は帰り、予備校で少し遅くなると思うから
まふゆの母:ああ、そういえば、今日は新しい授業の初日だったわね
まふゆの母:お母さん、今日は町内会の仕事があって遅くなると思うわ。 だから悪いけど、お夕飯はひとりで済ませてちょうだいね
まふゆ:うん、わかった。 ……あ。晩御飯、帰ってからすぐ食べれるように お母さんの分も作って冷蔵庫に入れておこうか?
まふゆの母:ふふっ、ありがとう。 でも、皆さんと一緒にディナーをいただくことに なると思うから、大丈夫よ
まふゆの母:今日はお父さんも遅くなるみたいだから、 まふゆはまふゆで食べてちょうだいね
まふゆ:わかった。お仕事頑張ってね、お母さん。 ……いってきます
まふゆの母:いってらっしゃい
宮益坂
まふゆ:……朝礼前の作業、1時間あれば終わるかな
まふゆ:(放課後までに予備校の予習をしておかないと。 昨日は、結局できなかったし……)
まふゆ:(それから、弓道部1年生の指導計画を先生に提出して……。 放課後は学級委員会の定例会議と、部活もあるんだっけ)
まふゆ:今日、すごく忙しくなりそうだな
まふゆ:…………。頭、痛い……
宮益坂女子学園 廊下
教師:ごめんなさいね、朝比奈さん。 委員会の仕事ついでに、荷物運びまで手伝ってもらって
まふゆ:そんな……。先生ひとりで運ぶのには量も多いですし。 お役に立てたのならよかったです
教師:ありがとう。朝比奈さんは本当に優しいのね。 先生、助かっちゃったわ
まふゆ:ふふっ。当たり前のことをしているだけですから
2年B組
まふゆ:(……思ったより手間取ったな)
まふゆ:(朝の時間に勉強するのは諦めて、お昼休みを半分使おう。 あとは休み時間に少しずつ進めれば……)
まふゆのクラスメイト:まふゆー。なんか部活の後輩だって子が、 まふゆに用事だってー
まふゆ:あ。うん、今行く。 ……どうしたの? 何かあった?
部活の後輩:せ、先輩っ!
部活の後輩:あの、備品の整理してたんですけど、 ゴム弓が記録よりも1本足りてなくて……!
まふゆ:足りない? そんなはずないと思うけど……。 確認はちゃんとした?
部活の後輩:しました! でも何回数えても、 やっぱり数が合わなくて……
まふゆ:……そう
まふゆ:ひょっとしたら、誰かが練習のために持ち帰って、 そのまま返し忘れちゃってるのかもね
まふゆ:お昼休みに体育倉庫まで確認しに行くよ。 一応、先生にもそう報告しておいてくれる?
部活の後輩:はいっ! ありがとうございます!
まふゆ:…………
まふゆ:……今日、お昼ご飯食べる時間なさそう……
放課後
シブヤの公園
まふゆ:……ようやく、部活終わった
まふゆ:(このあとは……予備校か。 どうにか、休憩時間に隙間を見つけて 予習は終えてるけど……)
まふゆ:…………、は、ぁ……
まふゆ:(頭痛……だんだん酷くなってる気がする)
まふゆ:(予備校、遅れちゃうな……。 そうだ。公園のベンチで、少し、休めば……)
まふゆ:…………あれ……
まふゆ:前が…………よく、見えない…………
まふゆ:…………っ!
奏:(お父さん、今日は調子よさそうだったな)
奏:(次に行った時お父さんが起きてたら、先生に許可もらって、 お父さんの好きなおやつを一緒に食べようかな)
奏:……? あれ……
奏:あそこの公園のベンチにうずくまってるのって……
奏:……っ! ま、まふゆ!
奏:まふゆ、どうしたの!? 大丈夫……!?
まふゆ:…………ぅ……
奏:あ、そうか。 まふゆ風邪ひいて……!
奏:大丈夫? わたしがわかる?
まふゆ:…………、か、なで……?
奏:……っ、すごい熱
奏:まふゆ、家はどこ? お母さんとかお父さんとか、 迎えに来てくれそうな人に連絡できる?
まふゆ:おかあさん……、 今……家、いな……
奏:そっか……
奏:(……どうしよう)
奏:(わたしがまふゆの家まで送るにしても、 この様子じゃ、道案内もできないだろうし……。 でも、放っておくわけにも……)
まふゆ:…………
奏:(そうだ、ここからうちまでなら……!)
奏:まふゆ。立てる?
奏:肩貸すから、もう少しだけ頑張って
第 5 话:りんごの夢
奏の部屋
奏:……よいしょっと
奏:……場所がないから、ひとまず わたしのベッドに寝かせたけど……
奏:ええと……。こういう時って、どうしたらいいんだっけ
奏:…………
まふゆ:う……
奏:……まふゆ……
奏:……とりあえず毛布と……あと、何が必要だろう
奏:そうだ。 頭を冷やすんだった
奏:お母さん、昔どうしてたっけ。 ……ええと、水……いや、氷か……
奏:氷……冷凍庫で、作ってたっけ……?
奏:…………
奏:う。濡れたタオルを絞るのって、意外と難しい……。 結構力入れないと……っ!
奏:ええと、これくらいで大丈夫かな。 まふゆのおでこに乗せて、と……
まふゆ:う……ん……
奏:——ふう
奏:……ええ、と、あとは……ええと……
奏:そうだ。食べ物。 風邪を引いた時は、りんごとか消化にいいものを 食べるといいって、望月さんが言ってた
奏:……りんご。近くのスーパーで買ってこようかな……
宵崎家 キッチン
奏:……よかった、ちゃんと売ってて
奏:あ、でも、今のまふゆには食べづらいかな。 どうやって食べさせればいいんだろう
奏:……そうだ。たしか昔、わたしが風邪を引いた時に お母さんがりんごをすりおろしてくれたっけ
奏:すりおろし……ええと、包丁……? いや、大根おろし器かな……
奏:…………
奏:……痛っ! すりむいちゃった
奏:やっぱり……お母さんみたいには、うまくいかないな
まふゆ:……う、ん……
まふゆ:……ここは……? わ、たし……
奏:あ。まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……か、なで……
奏:まだ無理しないほうがいいよ。 すごい熱だから
奏:りんご……すりおろしてみたんだけど、食べられる?
まふゆ:……ん…………
奏:うん。少し食べられたね。よかった
奏:……でも、汗止まらないね。タオルも、もうぬるくなってる
奏:まふゆは、そのまま寝てて。 わたしは氷水を替えに——
まふゆ:……ない、で
奏:え?
まふゆ:…………。 いか、ないで
まふゆ:……ひとりに、……しないで……
奏:……まふゆ……
奏:……わかった
奏:大丈夫。わたしはずっとここにいる
奏:……手、握ってるね。 ひとりになんてしないから
まふゆ:…………。 ありが、とう……
まふゆ:…………——
奏:……ずっと、そばにいるよ
幼いまふゆ:けほ、けほ……
まふゆの母:まふゆ、具合はどう?
幼いまふゆ:あ……おかあさ……
幼いまふゆ:だいじょう……けほ、けほっ
まふゆの母:ああ、ほら。無理しないの
まふゆの母:……んー。少し熱が上がってるみたいね
まふゆの母:まふゆ、1回パジャマ脱いでちょうだい。 汗を拭いて、それから新しい服に着替えましょう
幼いまふゆ:……おかあさん
幼いまふゆ:きょう、ごめんなさい。 町内会、いそがしいのに、わたしのせいで……
まふゆの母:ふふっ、何言ってるの。 まふゆが風邪じゃしょうがないわ
まふゆの母:今日はゆっくり寝て。 早くいつもの元気なまふゆの笑顔を見せてちょうだい
幼いまふゆ:うん……
まふゆの母:そういえば、お隣さんからりんごをもらったの。 風邪をひいている時でも、とってもおいしく食べられるわよ
まふゆの母:すりおろしたほうが食べやすいかしら。 それとも普通に食べたい?
幼いまふゆ:……うさぎさん
まふゆの母:え?
幼いまふゆ:うさぎさんの形に…… むいて、ほしいな
まふゆの母:ふふっ。まふゆは、うさぎさん大好きだものね
まふゆの母:ちょっと待っててね。 …………はい、できたわ
幼いまふゆ:ありがとう……
まふゆの母:ちゃんと食べられる? まだ、起きるのはつらいかしら
幼いまふゆ:ん……ちょっと、つらい
まふゆの母:……しょうがないわね。 はいまふゆ、あーんして
幼いまふゆ:あーん
幼いまふゆ:……おいしい。 ありがとう、おかあさん
まふゆの母:ふふっ、どういたしまして
まふゆの母:お母さん、ちょっとベランダでお洗濯物干してくるわね。 おとなしく寝てるのよ
幼いまふゆ:…………、ねえ。おかあさん
まふゆの母:なあに?
幼いまふゆ:ねるまで、そばにいて……。 おてて、ぎゅってしてて
まふゆの母:……ふふっ。今日のまふゆは甘えん坊さんね
まふゆの母:いいわよ。ほら、ねーんね……。 まふゆは、いいこ……
幼いまふゆ:えへへ……
まふゆ:…………、ん……
まふゆ:(……今のは……私の子供の頃の……?)
まふゆ:——そうか
まふゆ:(どうして、小さい頃の写真を見たら 胸が痛くなったのか……わかった気がする)
まふゆ:(奏の曲を聴いた時に感じた、あたたかい気持ち……)
まふゆ:(あれは……あの時の気持ちに、似てたんだ)
まふゆ:(あの時、りんごを食べた時の……気持ちに)
第 6 话:笑ってほしいから
奏の部屋
まふゆ:……ん、
まふゆ:……あれ、私……。 ここは……?
まふゆ:……奏……?
まふゆ:(そっか。私、公園で動けなくなって……。 奏がここまでつれてきて、看病してくれたんだ)
奏:……ん……
奏:……あ。おはよう、まふゆ。 具合は大丈夫?
まふゆ:……うん。だいぶよくなった
まふゆ:奏が看病してくれたんだね。 ありがとう
奏:ううん。むしろ勝手に家までつれてきて、ごめん。 見ていられなかったから、つい……
奏:あ……りんご、まだ余ってるけど、食べる?
まふゆ:……りんご?
奏:え? うん。 風邪にはりんごがいいって聞いたから すりおろしたんだ
奏:覚えてないかもしれないけど、少しは食べられたんだよ。 もし、今もう少し食べられそうなら、またすりおろしてくる
まふゆ:……そうだったんだ。 ありがとう、今は大丈夫
奏:……そっか
まふゆ:(奏が、私にりんごを食べさせてくれた……。 あの夢を見たのは、そのせい……?)
まふゆ:(それに……)
奏:あ……まふゆ、薬持ってきてたりする? 飲むなら、お水取ってくるけど
まふゆ:……ありがとう。 鞄の中にあるけど、水なしで飲める錠剤だから大丈夫
奏:そっか。わかった。 他にも欲しいものがあったら、言ってね
まふゆ:欲しいもの……
まふゆ:欲しいものはない、けど。 ひとつだけ、奏に聞きたいことがある
奏:ん? なあに?
まふゆ:このあいだ作ってくれた、あの曲……
まふゆ:奏は、どんな気持ちで作ったの?
奏:え、あの曲……?
奏:……あれは、昔のわたしの……、 お父さんとお母さんとの思い出を考えながら、作ったの
まふゆ:思い出?
奏:うん
奏:お父さんが、昔言ってたんだ。 わたしとお母さんに、自分の作った曲で 笑ってほしいんだって
奏:そんなお父さんの曲を聴いて……、 わたしもお母さんも、あの頃、心から笑顔になれてた
まふゆ:笑顔に……
奏:うん。だからわたしは……
奏:あの時のわたし達みたいに、 まふゆにも笑ってほしいって思ったの
まふゆ:…………
奏:まふゆ? どうしたの?
まふゆ:ううん。なんでもない。 ただ……
まふゆ:なんだか、また…… 胸があたたかくなったような気がする
奏:——そっか
宮益坂
まふゆ:もう、ここでいいよ。 私の家、すぐそこだから
奏:本当に大丈夫?
まふゆ:うん。ちゃんと歩けるくらいにはよくなったから大丈夫
奏:……そっか、わかった。 気をつけて帰ってね
まふゆ:…………
まふゆ:……じゃあね、奏。 また、ナイトコードで
奏:うん。また——ナイトコードで
第 7 话:辿り着きたい場所
まふゆの部屋
まふゆ:…………
まふゆ:(熱、下がったみたい。 頭痛もおさまってきた)
まふゆ:(これなら、明日には治りそう)
まふゆ:(——奏のおかげだな)
奏:お父さんが、昔言ってたんだ。 わたしとお母さんに、自分の作った曲で 笑ってほしいんだって
奏:そんなお父さんの曲を聴いて……、 わたしもお母さんも、あの頃、心から笑顔になれてた
奏:だからわたしは……
奏:あの時のわたし達みたいに、 まふゆにも笑ってほしいって思ったの
まふゆ:(……あの時、また、あたたかくなった)
まふゆ:(あの気持ちがなんなのか、まだ、 よくわからないけど——)
まふゆ:(形にしてみたい。 忘れないうちに、ちゃんと言葉に残したい)
まふゆ:(……自分のために、残さなきゃいけない気がする)
まふゆ:あの曲を再生して……
スピーカー:♪———……
まふゆ:(…………やっぱりあたたかい)
まふゆ:(でも、書こうとすると、言葉がうまく出てこない。 どうして……?)
???:——いい子ね
まふゆ:う……
まふゆ:何……? 何かが、引っかかってるみたい……
深夜4時
まふゆ:…………
まふゆ:……もう4時? いつの間にこんな時間……
まふゆ:……ナイトコード。みんなから通知、たくさん来てる
奏:『雪、ちゃんと帰れた?』
瑞希:『やっほー。調子大丈夫? えななんがうるさいから、もし見てたら返事ちょうだい! 寝てたらスルーして大丈夫だよ~』
絵名:『ちょっと雪! Kが心配してるんだから メッセージのひとつくらい送りなさいってば!』
まふゆ:……心配……
???:『——まふゆ』
まふゆ:……? この、声……
まふゆ:リン。どうして私のパソコンに……?
リン:『……みんなセカイに来てるんだけど、 ずっとまふゆのことを気にして、ソワソワしてる』
リン:『それが鬱陶しかったから、見に来た。 大丈夫だったって言えば落ち着くと思って』
まふゆ:……リンも、私を心配してくれたの?
リン:『——わたしは、みんながソワソワしてて 落ち着かないから来ただけ』
リン:『本当は、ミクに様子見に行けばって言ったんだけど』
リン:『ミク、まふゆが体調悪いなら休ませたいし、 歌詞作りをがんばってるなら邪魔したくないって……』
まふゆ:……そう
リン:『……でも、その感じなら大丈夫かな』
まふゆ:え?
リン:『まふゆの顔、もう苦しそうじゃないって みんなに伝えておくから』
まふゆ:顔……
まふゆ:(……そういえば。 奏、私に笑ってほしいって言ってた)
まふゆ:(もしかしてリン達も、同じように思ってくれたのかな)
まふゆ:……ねえ、リン
リン:『……ん?』
まふゆ:ありがとう。来てくれて
リン:『……!』
まふゆ:……さっきまでずっと、悩んでたの。 歌詞が思い浮かばなくて
まふゆ:でも、リンが来てくれたおかげで、 大事なことを思い出せた気がする
まふゆ:だから……今なら、いい言葉が浮かびそう
リン:『……そっか』
リン:『まふゆ、もう大丈夫そうだね』
まふゆ:……うん
リン:『じゃあ、みんなにも伝えておく』
リン:『……がんばって』
まふゆ:……ありがとう
まふゆ:(……まだ、あのあたたかい気持ちを なんて呼べばいいのか……わからない)
まふゆ:(——でも……)
まふゆ:……歌詞にしてみよう。私の言葉で
第 8 话:ほんの少しの灯
数日後
誰もいないセカイ
ミク:あ……まふゆ……!
奏:まふゆ。体調はもう大丈夫なの?
ミク:苦しくない?
まふゆ:……うん、大丈夫。 心配かけてごめん
絵名:ほんとにね
絵名:『私は大丈夫』ってメッセージひとつ送ったまんま 何日も音沙汰なかったと思ったら、 急に『歌詞を見てほしい』だなんて……
まふゆ:……うん
まふゆ:連絡、遅くなってごめん
絵名:……二度目はないからね
瑞希:まあまあ。こうして元気になって戻ってきたんだし、 結果オーライじゃない?
瑞希:それで? 新曲の歌詞、完成したんだって?
まふゆ:うん
まふゆ:……多分、書きたい気持ちは書けてると思う
絵名:……『書きたい気持ちが書けた』なんてセリフ、 まふゆが言ってるの初めて聞いた
ルカ:……ふふ。いいわね。 まふゆの詞、早く読ませてほしいわ
瑞希:うん! 早く見たい、見たーい!
奏:わたしも……。 まふゆがあの曲を聴いて感じた、ありのままを知りたい
まふゆ:……今、みんなの端末に送るね
瑞希:……これ……!
絵名:いつもと全然違う……!
奏:うん。それに——
奏:いつもの悲痛な、叫んでるみたいな言葉もあるけど——、 その底に、誰かを想うような、あたたかい感じがある気がする
リン:……悪くないんじゃない?
瑞希:ていうかこれ、今回の奏の曲にものすごくぴったりだよ! ボク、今までで一番好きかも!
絵名:うん……! 今までの歌詞よりもっと深くなってるっていうか……
絵名:まふゆ、一体何があったの?
まふゆ:……思いだしたの
まふゆ:奏の曲を聴いた時に感じた気持ちのこと。 昔の……思い出の中にあったの
瑞希:……それって、どんな?
まふゆ:……りんご
まふゆ:りんごを食べた時に感じた気持ちと、似てた
奏:……りんご……?
瑞希:ん~、それってつまり、まふゆはりんごが好きってこと? じゃ、今度りんごスイーツパーティーでもしようよ!
絵名:いや、そういうことじゃないでしょ
瑞希:ちょ、真に受けないでよ~! 冗談だよ、じょーだん!
瑞希:たぶん、昔あった、よかったって思えた出来事—— その記憶を、気持ちごと取り戻せた……ってこと、なんだよね?
まふゆ:……わからない。それ以上は、 何を考えてもわからなかった
まふゆ:ただ、この気持ちは……
まふゆ:この言葉は、形にして残しておかなきゃ、って。 そう思ったの
絵名:……まふゆ……
瑞希:……よかった。すごく悩んでたけど、 先に進めてよかったね、まふゆ!
奏:……本当、よかった
まふゆ:………………
ルカ:奏
奏:あ……ルカ
ルカ:……まふゆはどうやら、 また少し新しい場所に辿り着けたみたいね
奏:うん。 ……ルカ、ありがとう
奏:わたしが曲を作れなくて悩んでいた時に、 ルカが道を示してくれなかったら、 まふゆはこの詞を書いてなかったかもしれない
ルカ:……ふふ。私は、大したことはしてないわ。 停滞していたあなたに、少し、刺激を与えただけ
ルカ:自分で答えを見つけたのは、あなた。 そしてあなたの答えを受けて、 自分の足で辿り着いたのは——あの子よ
奏:……そっか
ルカ:……いい刺激を与えられたみたいでよかったわ。 まあ、あまり刺激を与えてしまうと、 悪い方向にいってしまうこともあるのだけれど……
ルカ:ふふ、あなたはどう思う?
MEIKO:…………
奏:あ、メイコ。 いつの間に……
ルカ:ねえ、メイコ。 やっぱり私は、時には今の在りかたを揺さぶって、 壊すことが大切だと思うの
ルカ:あなたは、今もその関わりかたには反対かしら?
MEIKO:……反対はしないわ。それもまた、方法のひとつよ
MEIKO:ただ私は、俯瞰することで、 見えてくるものがあると考えているだけ
MEIKO:だから互いに、自分のやりかたを貫けばいいわ
ルカ:ふふ。……ぶつかりあう、違った形の“想い”。 これも変化のひとつかしらね
奏:メイコ、ルカ……
奏:(……そっか。正しいやりかたは、 ふたりにだってわからない)
奏:(それでもわたし達は、手探りで、 一歩ずつ進んでいくんだ——)
翌朝
朝比奈家 リビング
まふゆ:おはよう、お母さん
まふゆの母:おはよう、まふゆ。 朝ごはんできてるわよ
まふゆ:うん、ありがとう
まふゆの母:そういえば、昨日お隣からりんごをもらったのよ。 デザートに食べていくといいわ
まふゆ:え……りんご?
まふゆの母:ええ。今切るから——
まふゆ:……うさぎ……
まふゆの母:どうしたのまふゆ? 何か言った?
まふゆ:……ううん。 いただきます
まふゆの母:はい、まふゆ。りんごよ
まふゆ:ありがとう、お母さん。 …………
まふゆ:(……。やっぱり、味は、しない)
まふゆ:(でも——)
奏:わたしが作り続ける
奏:雪が自分を見つけられるまで——ずっと作る
まふゆ:(まだ、あの気持ちの名前もわからないけど……)
まふゆ:私、もう少し……前に進めるかな。奏