活动剧情
Revival my dream
活动ID:38
第 1 话:洋館とケヤキのステージ
フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
慶介:では——前回の成果を伝えよう
慶介:鳳リゾートでの宣伝公演の結果—— 前売り券の売り上げが10%増加した
慶介:見込んでいた4%を大幅に上回ることとなった。 実に素晴らしい結果だ
えむ:やったー!
寧々:あのショーでそんなに……!
ネネロボ:大成功デス!
慶介:宣伝大使施策の効果は十分出ているようだ。 引き続き、次回の宣伝も君達にお願いできればと思う
司:ああ! もちろんだとも! 我らワンダーランズ×ショウタイムに任せてくれ!
晶介:……兄貴、この報告なんだが、 まさかこれから毎回ここまで来て言うのか?
慶介:もちろんだ。彼らなしではこの施策はあり得ない。 相応の敬意を払うべきだろう
晶介:……ま、そりゃそうかもしれないが……はぁ
類:——おふたりが連れ立って来られたということは、 ただ結果だけを伝えに来たわけではないですよね
類:もしかすると、次回の公演場所が決まったのでは?
慶介:ああ。 次に宣伝公演をしてもらう場所が、つい昨日決定した
司:おお! 新たなステージだな! それで、どこに向かえばいいんだ?
晶介:フン、聞いて驚け。 次の場所は——
晶介:鳳喜一郎邸庭園、だ
寧々:——は?
司:鳳喜一郎邸庭園? よく知らんが、庭園ということは 前回より規模は小さくなるのか?
寧々:ちょ……! アンタ、鳳喜一郎邸庭園知らないの!?
司:んん? なんだ、そんなにすごいところなのか?
類:明治初期に作られた庭園でね。 1万坪以上の敷地に、和洋併置式の素晴らしい庭が 作られているんだ
類:同じ敷地には立派な洋館があって、 庭園とあわせて重要指定文化財レベルに貴重な建築物なんだよ
司:そ、そうだったのか……!!
寧々:っていうかあそこって、もう国のものに なってるのかと思ってたけど……
慶介:今はまだ私有地だ。 祖父の別荘のひとつとして使っていたんだが、 今はもう誰も住んでいないので、一般開放している
慶介:間もなく重要文化財として指定される予定だ
司:鳳喜一郎邸庭園……。 そんなにすごいところだったんだな
えむ:おおとりきいちろうてい……あ! おじいちゃんのおじいちゃんのおうちのことだね!
司:やめろえむ! 文化財クラスの建物に 『おじいちゃんち』のようなほっこりした単語を出されると スケール感がわからなくなる!
えむ:ほえ? そうなの?
寧々:でも、なんでそんなところでショーを……?
晶介:前にも言ったが、この宣伝大使で狙うターゲットは 地方に住んでいて、まだうちに来たことがない人間だ
晶介:んで、鳳邸庭園は、地方から来る観光客がとにかく多い。 高齢の夫婦とか、修学旅行生とかな
慶介:高齢の夫婦が興味を持ってくれれば、 孫を連れて来る可能性が高くなるだろう
慶介:また、修学旅行生の評判が良くなれば、 最近はレジャー施設に行くことを許可する学校も増えているから、 翌年修学旅行で来る可能性も上がる
慶介:即効性はそこまで高くないが、 未来への種まきとしては、いい試みになるだろう
慶介:なので今回は前売りチケットを売るためというより、 当園に良いイメージを持ってもらうための宣伝となる
司:なるほど……。 そう言われると納得できるな
類:……しかし、そうですか……鳳邸を……。 フフ、フフフ……!
寧々:え、どうしたの類。いつもより気持ち悪い顔して
えむ:うん! とーっても嬉しそうだねえ!
類:フフフ……これが喜ばずにいられると思うかい?
類:鳳喜一郎邸といえば、歴史的にも有名な鳥鳴館を作った 建築家のトーマス・ホーク氏が作った歴史的な建築物だよ?
類:しかも間もなく重要指定文化財にもなる場所だ! そんな場所でショーをできるなんて、 そうあることじゃないだろう?
類:それで、ショーに使用していい範囲はどこまでになりますか? 庭園の見取り図は? 大道具と照明はどこまで搬入を——
晶介:わ、わかったわかった! ジワジワ近寄るな!
慶介:見取り図は、ここに用意してある。 大道具については使用したいものを申請してくれ。 搬入できるサイズのものならば用意しよう
類:フフ、ありがとうございます!
類:さてさて、それじゃあ早速見取り図を 見せてもらおうじゃないか! フフフ……フフ……
えむ:えへへっ♪ 類くん、宝の地図を見てる海賊さんみたいだね!
司:たしかに、欲望が隠し切れないという点で共通しているな……
寧々:なんか、禍々しいオーラみたいなのが見えるしね……
ネネロボ:周辺の気温が、1度上ガッテイマス
類:フフフ……どうしようかな……楽しみだなぁ……
晶介:おい、庭園や屋敷を傷つけるような真似するんじゃねえぞ?
類:その点はご安心を! 庭園も邸宅も、しっかり保護して使わせてもらいますよ!
類:……客席にある程度のスペースが必要だから、 舞台として使用できる範囲はワンダーステージより 少し大きいくらいかな
類:鳳邸を背後に置く形にして、 客席はこちら側に……ん?
類:この、洋館の隣に書かれている〇印は、一体なんですか?
えむ:あ、ここにはおーっきな木があるんだよ!
類:木?
慶介:ああ、ケヤキだ。 高祖父が植えたもので、かなりの大木になっている
えむ:すーっごく大きいから、木登りも楽しいんだよ! お兄ちゃん達ともいっぱい登ったよねー!
慶介:そうだな。 昔、晶介が登って下りられなくなっていたな
晶介:余計なこと思いだすなっての!
寧々:ぶ、文化財で木登りって……
類:……ケヤキと、洋館……
類:(もしかしてこの場所は、 あのショーにぴったりの……)
???:類くん、おかしいよ
幼い類:…………!
類:…………
えむ:……類くん? どうしたの?
類:え?
司:ん? 類がどうかしたか?
えむ:今類くん、しゅんって顔してた気がしたの
類:ああいや、少し考えごとをしていただけだよ
えむ:……む~ん……?
類:……えむくん?
えむ:類くん! 心配なことがあるならいつでも言ってね!
類:……急にどうしたんだい?
えむ:あたし、ナイトショーを作る時に、 類くんにいっぱいアイディア出してもらって、 いっぱい助けてもらったから……!
えむ:だから類くんが困ったら、 絶対力になりたいの!
えむ:もし何か困ってたら、あたしに言ってね! あたしにできること、なんでもするよ!
類:えむくん……
司:そうだな。 類、何か気にかかることがあるなら遠慮なく言うといい
司:メンバーの相談に乗るのも、座長の役目だからな!
寧々:うん。ちゃんと頼ってよね、類
寧々:——みんなと一緒なら、できるでしょ?
類:(……そうだね。 今ならきっと、あのショーもできる)
類:(僕を演出家として信頼してくれる、みんながいるんだ)
類:——フフ、それじゃあ、 このあとみんなに聞いてもらおうかな
類:この庭園にぴったりのショーを思いついたからね
第 2 话:町の民と森の民
ワンダーランドのセカイ
類:——物語の舞台は、大きな館だ
類:その館は、ある大きな町と、ある大きな森の ちょうどあいだに建っていた
類:そして町に住む“町の民”と、森に住む“森の民”は、 ケンカばかり繰り返していたんだ
町の民:『あんな着の身着のままで暮らす野蛮な人達が 町の近くに住んでいるなんて、恐ろしいわ』
町の民:『そうねえ。兵隊さんが森を見張ってくれているとはいえ、 心配よね』
町の民:『みんな危険な連中だって言ってるし、 早く追い出しちゃえばいいのにね』
森の民:『はぁ。あの町の人達ってほんとに、 わたし達のことを毛嫌いしてるよね』
森の民:『森に住んでる人をバカにしてるんだよ! まったく、失礼しちゃう!』
森の民:『そうだ、みんなで追い出しちゃおうよ!』
類:そんなわけで、町の民と森の民は、 いつもピリピリしていたんだ
類:そんな中——館に、新しい将校がやってくる
類:彼が王様から請け負った使命は、 森の人々から町を守るということだ
類:その日も彼は、森の人々が町にやってきて悪さをしないか、 森の見回りをしていた
類:しかし——勝手に森に入られたことを怒った森の人々は、 石を投げつけて彼とその部下達を追い払おうとする
類:そうして、他の兵とバラバラになった将校は、 森の中で道に迷い、途方に暮れていた——が
類:そんな彼の前に、ある少女が現れる
類:森の民であるその少女は、将校が森の人々に見つからないように 彼を助けて館まで帰してくれるんだ
将校:『……どうして私を助けたんだ? 君は、この森の住人じゃ……』
森の少女:『そうだよ! でも、あなた困ってたでしょっ?』
将校:『それはそうだが……』
森の少女:『それにね、森のみんなは“町の連中は悪人ばかりだ”って 言うけど、あたしはそんな人ばっかりじゃないと思うの!』
森の少女:『だからもっとお話してみたいなーって思って!』
森の少女:『あ、でも今日はもうみんなのところに帰らなくっちゃ! それじゃあねー! また会おうね、将校さん!』
将校:『あ、君……!』
類:それ以来、少女は将校のもとへやって来るようになる
類:ただ、お互いが敵である以上、 話しているところを見られるのは危険だ。 そこで——
類:少女は、館のすぐ脇に立っている木によじのぼって、 2階にある将校の部屋を訪ねるんだ
森の少女:『こんにちわーっ♪』
将校:『うわっ!! ど、どうして君がここに!?』
森の少女:『将校さんのお部屋だったらいっぱいお話できると思って、 来ちゃった!』
将校:『た、たしかにここなら周りの目は気にしなくて済むが……』
将校:『というか、君はそこの木をよじ登って来たのか?』
森の少女:『うん! ちょうど枝が橋みたいに伸びてたから!』
将校:『な……! 森の住人というのはまったく野蛮な——』
将校:『……まあ、しょうがない。 助けてくれた相手を無下に追い返すのも失礼だからな。 入りたまえ』
将校:『ただし、一度だけだからな!』
森の少女:『はーいっ!』
類:こうして少女と将校は仲を深めていった。 将校は少女と話すうちに、森の人々も 自分達と同じ、平和を望む人間だと気づいていく
類:どうにかお互い憎みあわず、手を取りあって生きる方法は ないか——。将校はそう考えて、少しずつ町の人間にも 働きかけていくようになる
類:その結果、森の人々と町の人々は、 お互いを信じられるようになっていったんだ
類:さらに、彼らは本当にお互いを信頼している証として、 それぞれが大事にしている宝物を交換することで、 より一層仲を深めようとした
類:しかし、そんな将校をうとましく思う男がいた。 それは、王様の下につく大臣だ
大臣の部下:『まったく……。あの男のせいで計画が台無しだ』
大臣の部下:『森に眠る“黒い油”を奪う口実を作るためにも、 町の人間と森の連中はいがみあっているべきだ。 そのために悪いうわさまで流したというのに……』
大臣の部下:『……そうだ! あの男を追い出してしまえばいい』
大臣の部下:『たしかあの男は、森と町、互いの宝を交換する約束の 見届け人として、双方の宝をいったん預かると聞く』
大臣の部下:『ならば交換する前にあの男を捕まえて、 町の民、森の民、それぞれには、 相手が約束を破って宝を奪ったと伝えれば——』
類:こうして将校は大臣の部下に捕まり、 館の自室に軟禁されてしまう
将校:『く……! やっと町の人々と森の人々が 仲良くなれそうだったのに、こんなところで……!』
類:そして大臣のせいで、森の人々と町の人々は、 大きな戦いをおこそうとしてしまう
類:そこへ少女がやってくる
類:少女は将校と、彼が持っている宝物さえ戻れば、 みんなが再びわかりあえると信じて、 将校を助けようとするんだ
類:そうして将校の部屋に行くべく木に登るものの、 窓まで伸びていた木の枝は切られてしまっている
森の少女:『どうしよう……! やっとみんな仲直りできそうだったのに、 将校さんが捕まったままじゃ……!』
森の少女:『——あたしが将校さんを、助けなきゃ!』
類:そこで少女は——跳ぶんだ。 木から窓への大跳躍さ
類:落ちたら大けがだ。 それに兵隊に見つかってひどい目にあわされるかもしれない。 そんな中、彼女は跳ぶんだ
類:人々によって作られた、大きな垣根を超えるためにね
類:その後、少女が将校を助けたことで、 森の民は兵隊の攻撃から逃れることができる
類:そして最後は、少女と将校の説得によって、 町の民と森の民は手を取りあえるようになるんだよ
リン:——めでたしめでたし!だねっ♪
寧々:…………
寧々:(これって、類が昔考えた……)
寧々:(——そっか。 ちゃんと吹っ切れたんだね、類)
リン:ねえねえ、今のショー、 おっきな家のあるところでやるんだよね?
リン:いいなぁ、楽しそう~! リンも見てみたいなぁ~
ミク:ミクもミクも~!
類:それじゃあ、一番近くで見られるように、 スマホを特等席に置いておくよ
類:もし興味があるならリハーサルも見ていくといい。 ふたりとも、どうかな?
リン:わーい☆ ミク、楽しみだね~♪
類:フフ。観客は多ければ多いほどいいからね。 助かるよ
類:それで——みんな、どうだい? 軽くとおしてやってみたけれど
司:うむ! 申し分ないと思うぞ! シチュエーションも場所に合っているしな
寧々:配役も、今やったので良かったと思う
えむ:じゃあ、あたし森の女の子!? やったー!!
えむ:バッチリ跳ぶから、まかせてね! 類くん!
類:——ああ。 まかせたよ、えむくん
類:万一落ちた時のための安全策も考えてあるから、 思いっきり跳んでくれたまえ!
えむ:うんっ!!
寧々:……ふふ
類:しかし嬉しいな。 昔考えてた演出を、ここでできるなんてね
リン:昔? 類くん、どれくらい前から考えてたの?
類:ああ。小学2年生の頃だから——、 だいたい10年前くらいかな
えむ:ええっ!? 10年前!?
レン:そんなにちっちゃい頃から考えてたなんて、すごいね~!! どうやって思いついたの? 気になる~!
えむ:気になる気になる~!!
司:ええい、交互にやかましい! 幼稚園かここは!
司:だが……どうやって考えついたのかは オレも興味があるな
寧々:あ、それは……
司:む? 何かまずいのか?
類:フフ。大丈夫だよ寧々。司くん
類:じゃあこのショーを思いついた時の 話をしようか
類:——昔々のお話さ
第 3 话:ひとりぼっちのガレージで
10年前
幼い類:ふふふ……。 すごいなあ
女の子:類くーん! そんなすみっこで何してるの?
男の子:あっちでドッジボールしようよー!
幼い類:ふふ、そっちもいいけど、 ここにもっと面白いものがあるよ
女の子:おもしろいもの?
幼い類:うん。これだよ!
女の子:きゃーっ! おっきなガだー!
男の子:る、類くん! なんでガなんて掴んでるの!?
幼い類:なんで? 観察するためだよ?
幼い類:ガの眼ってね、蝶と同じで、 六角形の小さな眼がたくさん集まってできてるんだ。 けど、ガは夜行性だから蝶よりもっと変わってるんだよ!
幼い類:モスアイ構造——すごく細かい突起がたくさん並んでる目に なってて、この突起が光の屈折率を変化させるから、 取りこんだ光が反射しなくて、敵に見つかりにくいんだ
女の子:モス……?
幼い類:その構造をもとにして、光を反射しないフィルムも 作られてて——あ
男の子:うわーっ! 飛んだーっ!
女の子:きゃー! こっちこないでーっ!
幼い類:あ……行っちゃった
幼い類:……つまんないの
教師:はーい、みんな! 今日は嬉しいおしらせがあります!
女の子:おしらせー?
男の子:なんだろう? 給食にデザートつくのかな?
教師:なんと——全国夏休みコンクールで、 神代くんのロボットが最優秀賞をとりました!
幼い類:えっ?
男の子:コンクールに類くんが出したロボットって、 あの自分で動くやつだよね! 類くん、すごいな~!
女の子:さすが類くんだねー!
教師:神代くん、おめでとう! 前に出て、何か一言いってもらおうかな?
幼い類:——はい!
幼い類:僕が夏休みに作ったのは、 一緒に遊べるヒューマノイドロボットです
幼い類:どこでも一緒に行けたらいいなと思って、 不整地でも歩きやすい膝関節伸展歩行が できるようになってます
男の子:ひざ……?
幼い類:あ、人間みたいに膝を伸び縮みさせて歩くってことだよ
幼い類:今はまだ歩けるだけだけど、いつかもっと大きくして、 走ったり踊ったりしゃべったりするような ロボットにしたいんだ!
男の子:ふーん……。 よくわかんないけど、すごいね
幼い類:あ……
教師:はい、ありがとう! 審査員の人達も『小学生でこんなものを作るなんて天才だ!』って すごく驚いていたそうよ
うしろの席の男の子A:あーあ、また先生が類くんばっかりほめてる
うしろの席の男の子B:しょうがないよ。類くんは天才だもん。 うちのお母さんも言ってたよ
うしろの席の女の子A:わたしも類くんみたいに頭がよかったらな~
幼い類:…………
神代家 ガレージ
幼い類:…………
類の母:類ー! ご飯だよ! 今日こそちゃんと野菜を……ん?
類の母:今日は元気がないみたいじゃない。どうしたの? ロボット触ってる時はいつもご機嫌なのに
幼い類:…………
幼い類:……ねえお母さん。 僕って、みんなと違うのかな?
類の母:……学校で何かあったの?
幼い類:頑張って話しても、僕が楽しいって思うこと、 みんなに全然伝わらなくて……
幼い類:先生もクラスの子も、僕はみんなと違うって言うんだ
類の母:……そうだね。 類は、周りのお友達とはちょっと違うかもしれないね
幼い類:…………
類の母:でも、違ってても大丈夫だよ
幼い類:え? どうして?
類の母:お母さんもね、小さい頃から生物学の研究一筋だったせいで、 よく奇人とか変人とか言われてたの
類の母:でもロボット工学を研究してるお父さんと出会って、 初めて仲間がいた!って思えたんだよ
類の母:みんなにわかってもらえなくても、類には好きなものがあるし、 ちゃんとそれに熱中もできる
類の母:だからそんなに気にすることないよ。 人は人、自分は自分!
類の母:そうやって自分の好きなことを大事にしていけば、 いつか類にも、ちゃんと仲間ができるよ。 お母さんがお父さんに出会ったみたいにね
幼い類:……うん!
類の母:あ、誰か来たみたい。 ちょっと行ってくるね
幼い類:うん。いってらっしゃい!
幼い類:(人は人、自分は自分——)
幼い類:(そうだよね。 そう思ってれば、いつか——)
類の母:類~!
幼い類:……? どうしたの、お母さん。 そんなにニコニコして
類の母:お隣にね、新しいご家族が越してきたの
類の母:そこに類と同じくらいの歳の子がいてね。 むこうにもその話をしたら、ぜひ仲良くしてほしいって
幼い類:え……?
類の母:寧々ちゃん! こっちに来てちょうだい
幼い類:はじめまして、寧々ちゃん。 よろしくね
幼い寧々:…………。 よ、よろしく……
寧々の母:あ、寧々! あいさつなんだからお母さんの陰に隠れちゃダメでしょ?
類の母:学校も一緒になるみたいだから、 たまに面倒見てあげてね、類
幼い類:うん
幼い類:(ずいぶん人見知りな子みたいだな……)
数週間後
寧々の母:寧々、お母さん達ちょっと用事があるから、 今日は類くんに遊んでもらおうね
幼い寧々:…………うん
類の母:ごめんね、類。 寧々ちゃんのことよろしくね
幼い類:大丈夫だよ。 ふたりとも、いってらっしゃい
類の母:うん。お願いね、類
寧々の母:ありがとう、類くん! それじゃあ寧々、行ってくるわね
幼い寧々:あ……
幼い類:ねえ寧々ちゃん、何して遊ぶ?
幼い寧々:えっと……その……
幼い類:あ、このロボットで遊ばない? バッタのジャンプの動きを参考にして作ったロボットなんだけど バネの素材を変えてみたらすっごく跳ぶようになって——
幼い寧々:え、えっと……!
幼い寧々:え、絵本……読む……
幼い類:絵本? それならこの『宇宙のひみつ』が面白いよ! 一緒に読む?
幼い寧々:ひ……ひとりで読めるから……
幼い類:あ……
幼い類:(……あんまり話したくないのかな)
幼い類:(……でも、仕方ないよね。 人は人、自分は自分、だもんね)
寧々の母:面倒見てくれてありがとう、類くん! 寧々、お礼は?
幼い寧々:…………ありがと
寧々の母:あ、こら寧々! ごめんね類くん、うちの子、すごく人見知りで……
幼い類:大丈夫だよ。 またね、寧々ちゃん
幼い寧々:…………
第 4 话:ふたり一緒のステージで
神代家 ガレージ
幼い類:ショー?
類の母:そう! 寧々ちゃんのお母さんが、 チケットをもらったから一緒に見に行かないかって
類の母:類、そういうの見たことないでしょう?
幼い類:うん。 でも、お芝居ってどんな?
幼い類:テレビでやってるドラマみたいなのなら、 僕はそんなに……
類の母:なんでも見てみて損はないんじゃない? 動物や虫だって、写真で見るのと実際に見るのとじゃ、 全然違うでしょ?
幼い類:それはそうだけど……
類の母:あ! 電話がかかってきちゃった。 とにかく今度、見に行こうね
幼い類:もう、お母さんってば……
幼い類:ショーか……。 面白いのかな?
幼い寧々:わぁ……! おっきい……!
幼い類:うん、すごい会場だね。 この規模だと、どれくらい人が入るのかな
幼い寧々:わ、わかんない……
幼い類・寧々:『…………』
幼い類:(……やっぱりうまく話せないな)
幼い類:(でも、気にし過ぎちゃダメだよね)
幼い類:——今日やるのは『人魚姫』のショーなんだ
幼い類:(話は知ってるし、 あんまり期待できないな)
幼い類:あ。雨の音……
幼い類:(人魚姫が、嵐の中で王子を助けるシーンから始まるのかな)
幼い寧々:わぁ! いっぱい人が出てきたよ!
幼い類:……!?
幼い類:(なんだ? このダンス——)
幼い類:(ただ踊ってるだけなのに、嵐に見える……)
幼い類:(まるで、高い波が次から次に やってくるみたいに見えて……!)
船員:『駄目です! 舵がいうことをききません!』
王子:『どうにか持ちこたえてくれ! このままでは転覆してしまう!』
王子:『うわあっ!!』
幼い類:……っ!
幼い寧々:ぴゃっ!
船員:『お、王子が海に! 誰か! 誰か王子を助けてくれー!』
幼い類:(びっくりした……。 なんだか本当に嵐の中にいるみたいだった……)
幼い類:(——魔法みたいだな)
幼い類:(ここじゃ、ダンスが嵐になるし、 照明が本物の雷になる)
幼い類:(絶対にこれが正解、 なんてものがなくて……)
幼い類:(とっても——自由なんだ)
幼い寧々:ほあ……
類の母:類、お母さん達はお手洗いに行ってくるから、 寧々ちゃんとここで待っててね
幼い類:うん。いってらっしゃい
幼い類:(——今日のショー、すっごく面白かったな)
幼い類:(……でも、最後の人魚姫が泡になるシーンは、 もっともっとドラマチックにしていいんじゃないかな?)
幼い類:(そうだ! シャボン玉を使うのはどうだろう。 舞台の真ん中にシャボン玉が出るマシンを置いて、 人魚姫が泡につつまれていくみたいにしたら——)
幼い類:(うん! 面白そう! でもシャボン玉だけじゃちょっとつまらないから、 照明の光を段々細くしていって、消えていく感じを……)
幼い寧々:あ……あの……
幼い類:ん? どうしたの、寧々ちゃん
幼い寧々:お、おもしろかったね……!
幼い類:……え?
幼い寧々:に、人魚姫が歌うところ、 すっごく、ジーンとした……!
幼い類:……うん! 綺麗だったね!
幼い類:人魚姫が歌いだすと少しずつ空が晴れていったところも、 すごく素敵だったよね!
幼い寧々:うん! 人魚姫、すごかった!
幼い類:僕は、声をとられちゃうシーンも好きだな。 寧々ちゃんは他に気に入ったところ、ある?
幼い寧々:……! わたしは、声をとられちゃうところは怖かったけど——
数日後
幼い寧々:るーいー! 準備できたよー!
幼い類:うん。じゃあ僕が手を叩いたらスタートだよ! ——はい!
幼い寧々:『わたしは、りくへ行くわ! あの人に会いに——!』
幼い寧々:『♪ ————!』
幼い類:うん! すごくいいね! じゃあ次は魔女の洞窟へと泳ぎ出すシーンだよ!
幼い寧々:わかった! えーい!
幼い寧々:『まってて王子さま! わたし、人間になって会いに行くわ!』
幼い類:いいねいいね! その調子だよ寧々!
寧々の母:ちょ……ちょっとふたりとも何をやってるの!? ビショビショじゃない!
類の母:ビニールプールなんてひっぱりだして何するのかと思ったら……。 こら、類! 寧々ちゃんに危ないことさせないの!
幼い類:でも……王子を必死に求める人魚姫の演技のためには、 本当に泳いでみるのが一番いいと思ったんだ!
類の母:だからって……
幼い寧々:いいのおばさん! わたし、やりたいの!
幼い寧々:わたし人魚姫だから、泳いで王子さまに会いに行かなきゃ!
幼い類:寧々……
寧々の母:……ふふ。 寧々がこんなに大きな声を出すなんて
寧々の母:仕方ないわね。でもふたりとも、 ちゃんと濡れてもいい服を着てから遊びなさいね?
幼い類・寧々:『はーい!』
幼い類・寧々:『……あはは!』
幼い類:——はぁ。この劇団のショー、すっごく面白いな! 海外の演劇作品も見てみてよかった
幼い類:もう1回、映像再生してみよう!
幼い類:……あれ? これ、最後に演出家のインタビューもついてるんだ
幼い類:見てみようかな
インタビュアー:『それでは次に——演出をするうえで 心がけていることを教えてもらえますか?』
演出家:『僕はできるだけ、形式に囚われないで、 常に新しいチャレンジをするようにしているけれど……』
演出家:『その中でもひとつ、必ず心がけていることがある』
演出家:『それは——垣根を超えるということだ』
幼い類:垣根……?
演出家:『富める人、貧しい人、賢い人、愚かな人、 マジョリティ、マイノリティ——すべて関係ない』
演出家:『すべての人が、 共に笑い、泣き、怒り——』
演出家:『そうして見終わった瞬間には、 同じ感情でつながれる』
演出家:『そんなショーを作り続けていきたいと思っているんだ』
演出家:『すべての人がつながった先にはきっと——、 僕達のまだ見たことのない、素晴らしい世界が 広がっているだろうからね!』
幼い類:…………
幼い類:垣根を超えて、つながれる……
???:類くんは、ぼく達と違うから
幼い寧々:お、おもしろかったね……!
幼い類:(……僕も)
幼い類:(僕も、そんなショーを作ってみたいな)
幼い類:——あ、そういえば
幼い類:寧々が置き忘れていった絵本に、 そんなお話があったような……
幼い類:あった! 『森のひとと町のひと』
幼い類:……そうだ。 このお話をアレンジして、ショーにしたらどうかな?
幼い類:そうしたら、僕もみんなともっと——
幼い類:よし! 考えてみよう!
第 5 话:越えられなかった垣根
放課後
教師:それじゃあ皆さん、気をつけて帰ってくださいね!
子供達:はーい!
幼い類:ねえねえみんな! ちょっといい?
男の子A:どうしたの、類くん?
幼い類:僕ね、ちょっと面白い遊びを考えたんだ。 みんなでやってみない?
女の子A:おもしろい遊び?
幼い類:うん。僕、最近ショーが好きになって——。 みんなとお芝居をやってみたいなって思ったんだ!
男の子A:お芝居? それってテレビでやってるみたいなの?
女の子B:なになに? みんなで何やるの?
男の子B:類くんが考えた新しい遊びだって~!
女の子B:えー、でも類くんの遊びって、 なんだか難しそう
幼い類:ううん! とっても簡単だよ! ここを舞台にして、みんなで役になりきるんだ
幼い類:それで、お話の内容なんだけど——
幼い類:っていう感じで、森の人と町の人がケンカして、 最後は仲直りするっていうお話なんだ
男の子A:へー! すっごくおもしろそう!
女の子A:うんうん! やってみたーい!
幼い類:……! 本当?
女の子B:わたし、森の女の子の役やりたーい! かっこいいもん!
女の子A:えー! わたしもやりたい!
男の子A:この悪者の役もおもしろそう!
男の子B:え~。ぼくはやっぱり将校さんがいいな~
幼い類:ふふふっ
幼い類:(よかった! みんなも気に入ってくれたみたいだ!)
幼い類:それじゃあ、将校の役から決めていこう!
幼い類:——うん。将校の役は決まったから、次は森の女の子の役だね。 この役は……高いところが大丈夫な子がいいな
女の子A:木からおうちにジャンプするんだもんね!
女の子B:でも……それってお芝居ではどうやるの?
幼い類:うん。 ——同じように、木からジャンプしてもらおうと思うんだ
子供達:『えっ?』
幼い類:ほら、そこの窓に木があるでしょ? あそこから教室のベランダにジャンプできると思うんだ
女の子B:あ……あそこの木から!?
男の子A:無理だよ! ここ2階だし、もし落ちちゃったら……
幼い類:大丈夫! 危なくないように、いろいろ調べてみたんだ
女の子B:いろいろって?
幼い類:あの木の枝からベランダまでは30センチしかないんだ。 だからジャンプっていうより、大股1歩で跳ぶくらいだよ
幼い類:それから、僕が木に登って命綱をつけるし、 下にマットも敷いておくから、もし落ちても大丈夫!
女の子B:でもそれ、やっぱり落ちるかもしれないんだよね? だったらやだよ!
男の子A:類くん、本当に木からジャンプしなくってもいいんじゃない? ジャンプしたふりするだけでも……
幼い類:でも、実際にジャンプしたほうが絶対面白くなるんだ!
幼い類:たしかに危ないかもしれないよ。 けど、それが臨場感につながって 見てるほうもドキドキして目が離せなくなるでしょ?
幼い類:それに成功したら、見てる人達も一緒に喜んで感動できる! ジャンプするふりをするんじゃなくて、 本当にジャンプするところを見せることに意味があるんだ!
男の子B:でも……
女の子A:……わたし、やってみる!
女の子B:えっ!? ほ、本当に!?
女の子A:わたし、クラスで一番運動できるし!
幼い類:——ありがとう! じゃあ、早速準備するね!
幼い類:よい……しょっと。 ここにロープをかけて……うん、カラビナもちゃんとついてるね
幼い類:それじゃあ、跳んで! 落ちそうになったら、僕がこっちでキャッチするから!
女の子A:う、うん……!
女の子B:だ、大丈夫? 気をつけてね……!
女の子A:…………
幼い類:僕のほうだけ見れば怖くないよ!
女の子A:う、うん! ちょっとジャンプするだけだし……大丈夫……!
女の子A:で、でも……もし足がすべっちゃったら……
女の子A:……っ
女の子A:やっぱり……こ、こわいよ……。 足が……
幼い類:あ……
幼い類:……大丈夫! 平気だよ! もし落ちちゃっても……ほら!
幼い類:えいっ!
男の子A:あ——類くんが落ちた!?
女の子A:え!?
男の子A:類くん!!
幼い類:——ほらね! 大丈夫でしょ?
幼い類:体育で使ってるみたいな薄いマットじゃなくて、 ちゃんと安全マットを使ってるんだよ!
幼い類:だからどれだけ落ちても——
男の子達:…………
女の子達:…………
幼い類:みんな、どうしたの?
男の子A:類くん、急にこんな危ないことしようとするなんて ヘンだよ……
幼い類:え?
男の子B:そうだよ! そんなことみんなできないよ!
幼い類:で、でも……!
寧々の母:ちょ……ちょっとふたりとも何をやってるの!? ビショビショじゃない!
類の母:ビニールプールなんてひっぱりだして何するのかと思ったら……。 こら、類! 寧々ちゃんに危ないことさせないの!
幼い類:(たしかに、危ないことかもしれないけど、 でも……!)
幼い寧々:いいの! わたし、やりたいの!
幼い寧々:わたし人魚姫だから、泳いで王子さまに会いにいかなきゃ!
幼い類:(あの時できたシーンは、本当によくなって……。 寧々もすごく喜んでくれたんだ)
幼い類:(みんなともあんな風に——)
男の子A:類くん、なんでそんな危ないことまでしてやりたいの?
幼い類:——面白いショーを作りたいんだ!
幼い類:一緒に面白いショーが作れたら、 みんなもきっと——!
男の子A:こんなのおもしろそうってだけでやれないよ!
男の子B:そうだよ! 類くん、おかしいよ!
女の子達:うん……
幼い類:あ…………
シブヤの公園
幼い寧々:あ、類ー! おかえりなさい!
幼い寧々:今日は何のショー……あれ?
幼い類:…………
幼い寧々:類、どうしたの? なにか、悲しいことあったの?
幼い類:寧々……
幼い類:ううん。違うよ。 僕が、僕のショーを押しつけて、 みんなを困らせちゃったんだ
幼い寧々:そうなの?
幼い類:……うん
幼い寧々:そう、なんだ……
幼い寧々:……でも……
幼い寧々:わたしは……類のショー、好きだよ?
幼い類:……ありがとう、寧々
幼い類:……そうだね。 寧々みたいに、僕のショーを好きだって 言ってくれる人もきっといるよね
幼い類:僕は、僕のショーを作ろうと思うよ。 今はまだ——難しいかもしれないけど
幼い寧々:類……
ワンダーランドのセカイ
類:——とまあ、こういったことがあったのさ
リン:そうだったんだ……
司:それは……苦しかったろうな
類:ずっと昔のことだから、 今はもう気にしていないけれどね
類:ただ——自分がやりたいことは、 多くの人の嫌がる、理解されないものだということは、 その時強く実感したよ
類:だから今まで、このショーは封印していたんだよ
寧々:類……
類:でも今は、あの日夢見たショーをもっといい形にすることが できると思うんだ
類:ここにいるのはみんな、面白いショーのためなら どんなことでもやってやろうと思っているメンバーだからね
えむ:……うんっ! あたし達ならきっとできるよ! 類くん!
司:そうとも! 何も出し惜しむことはないぞ、類!
ネネロボ:ドーンとヤリマショウ!
リン:そうだよー! みんなでがんばろーっ♪
類:ふふ。ありがとう、みんな
類:それじゃあもう少しアクロバティックな演出も 考えてみようかなあ?
えむ:わーい! あたしも司くんも、シュパシュパーって 忍者さんみたいに動くよ!
司:……オレにも限度はあるからな!?
寧々:スターになるなら、忍者くらいは動けないとじゃない? ファイトファイト
司:くっ……! 雑な応援をしおって……!
類:……ふふっ
第 6 话:信じてくれるから
ワンダーステージ
類:それじゃあ、もう一度ジャンプシーンをやるよ! ステージからステージ下まで、跳んでくれるかい?
えむ:うん! いくよー! 司くーん!
司:よし来い! 息を合わせるぞ!
寧々:…………
えむ:いちにの……!
えむ:ジャジャジャジャーンプっ!!
司:キャキャキャキャーッチっ!!
えむ:できた! できたよ類くん~!!
司:ハッハッハ!! スターの力をもってすればキャッチなど容易いものよ!
類:ああ、バッチリだったよふたりとも!
類:ただ、実際に木の上から跳ぶ時は足場がかなり悪くなるから、 それも想定してリハーサルをやっていきたいね
司:しかし……いつもえむにジャンピング突撃されていたのが、 こんなところで役に立つとはな……
寧々:おかげで、できるようになったんだし、 結果オーライじゃない?
類:——さて、いよいよ本番の日が近づいてきた
類:今回も、僕達の最高のショーで お客さんを笑顔にしていこうじゃないか!
えむ:うんっ!
鳳邸庭園
寧々:わぁ……! 大きな洋館……!
司:庭も立派だな……! ここだけまるで海外のようだ
えむ:久しぶりだな~! ちっちゃい頃はいっぱい来てたけど、 最近は全然来れてなかったから、嬉しいなっ!
類:よし、それじゃあ早速、 あのシーンに必要な木と洋館の窓を確認していこう
類:(……うん。枝は問題ないね。 折れそうだったり、腐っていそうなところもない)
類:(傷つけないよう前もって養生してもらったから、 ジャンプくらいでは傷もつかなそうだしね)
類:(——窓への距離はもらった図と誤差なく、約1.5メートル。 えむくんのジャンプ力なら、問題なく跳べる距離だ)
類:あとは……命綱をつけるならポールが必要だね。 屋根に取り付けるポイントを探さないと……
寧々:類! 熱中しすぎて落ちないでよ!
ネネロボ:落チナイデ下サイヨ!
類:ああ、わかってるよ!
寧々:……ならいいけど。 熱中してると、すぐに周り見えなくなるから
寧々:……あれ? えむ
えむ:なーにー? 寧々ちゃんっ
寧々:今、えむのポケットが光ったみたいなんだけど……
リン:『えーむーちゃーん! ねーねーちゃーん!』
えむ:うわわっ! リンちゃん!
リン:『やっほー♪ 遊びにきちゃった☆』
司:ああ、そういえば、 リンはリハーサルを見に来ると言っていたな
寧々:始まったら呼ぼうと思ってたけど、 待ちきれなくて来ちゃったんだね
リン:『わー、おっきなお庭☆ みんな、今は何をしてるの?』
えむ:今はね、木からジャンプするシーンの練習をするから、 類くんが命綱をつけてくれてるんだよ!
リン:『あ、あのシーンだね! ぴょぴょん♪ってするところ見れるんだ~』
リン:『……わ! 類くん、とっても高いところにいるんだね! 怖くないのかなぁ?』
寧々:類なら、全然怖くないと思うよ
司:そうだな。 あれくらいでは屁でもないだろう
司:……多少は危ないことに危機感を持ってほしいというか、 あの無謀さは少々どうかと思う時もあるが——
司:だが、たのもしくもあるな
リン:『え?』
司:あいつにとって最も大事なのはショーだ。 面白いショーを作ることが最優先だからこそ、 普通は考えられないようなおかしなこともするが——
司:演出家としては、抜群に頼りになる
えむ:うん! あたしもそう思う!
えむ:おもしろいけどできないかもな~とか あぶないかもな~って思っちゃうようなことも、 やろうって言って、本当にできるようにしてくれるんだよね!
えむ:類くん、魔法使いみたい☆
寧々:うん、本当にね
寧々:類とやるショーは、いつもとんでもないけど……。 でも、おもしろいから
リン:『……そっか! えへへっ♪ 類くん、すごいね!』
類:——みんな、命綱とマットの準備ができたよ!
類:さっそくクライマックスのジャンプシーンを 練習したいんだけど、できそうかい?
えむ:うんっ! 準備運動できてるよー!!
司:オレもだ! 屋敷の中に入ってスタンバイすればいいか?
類:ああ。司くんは屋敷の中からキャッチできるようにしてくれ。 えむくんは、ここまで登ってきてくれるかい?
えむ:あいあいさーっ!
寧々:じゃあリン、ネネロボ。 わたし達は客席のほうで見てようか
リン:『うんっ!』
ネネロボ:楽シミデスね!
類:……よし。しっかり取りつけられているね。 用意はいいかい?
えむ:うん! それじゃあ……いくよー! 司くーん!
司の声:よし来い! まずは声でタイミングを合わせるぞ!
えむ:わかったー! ……よしっ!
えむ:いちにの——ジャジャジャジャーンプっ!!
類:……!
司:——よし! 掴んだ!
えむ:……できた! ちゃんとできたよ類くん!
類:……ああ。 素晴らしいジャンプだったよ、えむくん!
司:ふぅ……。 練習の甲斐があったな
司:とはいえ、やはり高さがあると緊張感が違うな。 えむさえいけそうなら、本番でも無理なくできるように、 何度か挑戦しておいたほうがよさそうだが……
えむ:あたしは大丈夫だよ☆ もう1回やってみよー!
類:ああ! それじゃあ今度は、本番を想定して セリフを言いながら跳んでみよう
えむ:じゃあもう1回いくよー! 司くんは、大丈夫?
司の声:ああ!
類:えむくん、2回目だけど油断せずにね
えむ:うん! いくよー!
えむ:『——あたしが将校さんを、助けなきゃ!』
えむ:いち、にの……!
えむ:わっ! 小鳥さんが急に……!
えむ:わ、わわわ……!
リン:『あっ! えむちゃん、あぶなーい!!』
司:えむ!
えむ:きゃ…………!
類:————!
えむ:……………………ほえ?
リン:『あー! えむちゃんが、ゆっくり地面に下りてきた!』
寧々:え? 命綱が伸びて……? あれってどうなってるの?
類:……よし。 ちゃんと機能したようだね
類:この命綱は——その名も衝撃吸収命綱! 落ちた時もバランスを取り戻させつつ、落下時の衝撃を 分散しながら下ろしてくれるから、ダメージも少なくてすむんだ
えむ:……すごーい! 全然痛くなかったよ! ありがとう、類くんっ!
類:どういたしまして、えむくん
類:でも、もし今のショックで気分が悪かったりしたら——
えむ:いよーっし! それじゃあもう1回、だね!
えむ:類くんの命綱もあるから、もし失敗しても大丈夫だもんね! がんばるぞー!
司:よし! じゃあもう一度木に登って最初からだ!
えむ:はーい!
えむ:よいしょ、よいしょ! 今度は小鳥さんに気をつけなくっちゃ!
えむ:……あれ? 類くん、どうしたの?
類:——いいや。なんでもないよ
えむ:む?
司の声:えむ! こっちは準備ができたぞー!
えむ:あ、は~い! 次はちゃーんとジャンプするね~!
類:(……お礼を言わなきゃいけないのは、こっちのほうだ)
類:(どんな道具があっても、信じてもらえなければ、 それは意味のないものだからね)
類:よし、それじゃあ——やろう!
第 7 话:跳び越えろ!
鳳邸庭園
えむ:わ! お庭にお客さんたくさん来てるね~!
寧々:……あ。 落ち着いた雰囲気の人と、中学生っぽい子達が多いね
ネネロボ:オ兄サン達が言ッタトオリデスネ!
司:なーに、どんな客だろうと関係ない! オレ達はみんなが笑顔になるショーをするのみだ!
類:ああ、そのとおりだ
類:さてみんな——開演の準備はできたかい?
えむ:うん! みーんな笑顔になれるショーにしようねっ!
将校:『……まったく、どうしたものか』
将校:『まさか部隊の隊長に就任して早々、 森の連中に襲われてしまうとは……。 やはり、やつらは野蛮で攻撃的だな』
将校:『早く館にもどらねば。 もしひとりでいるところを見つかったらどんな目にあうか——』
???:『あれー? こんなところでどうしたのー? 迷子?』
将校:『うわっ!! 木の上から声が……!?』
???:『む? おじさん、見かけない人だね! もしかして、町の人?』
将校:『だ、誰がおじさんだ! 私は国よりこの森の監督を任された、将校だぞ!』
将校:『は……! つい言ってしまったが、この少女は 森の人間では!?』
森の少女:『ふーん……』
森の少女:『しょーこーさんっていうんだね! よろしくね!』
森の少女:『迷ってるなら、あたしが道を教えてあげる! こっちだよー!』
将校:『……何? あ、ま、待て!』
観客達:こんなところでお芝居なんて 何をするのかしらって思ったら、 良くできてるわね
観客達:うん。普段は遊園地でショーをやっている子達らしいね
類:(……いい感触だ。 えむくんと司くんの調子もいい)
類:(あとは、あのシーンさえやり切ることができれば——)
少女の友達:『ええ!? 町の人間と話をしたの!?』
森の少女:『うん! みんな町の人は悪い人っていうけど、 全然そんなことなかったよ!』
少女の友達:『それはそういうフリをしてるだけ。 わたし達を騙そうとしてるの!』
少女の友達:『あいつらに捕まったら、売られて違う国に 連れていかれちゃうから、もう近寄っちゃだめ!』
森の少女:『ええ~。 そんなひどい人には見えなかったんだけどなぁ……』
将校:『……まったく、また来たのか。 一度だけだと言っただろう』
森の少女:『ごめんなさい! でもあたし、将校さんが悪い人だって思えないから、 どーしてもまた会いたくて』
森の少女:『それに、あたし達だって、 将校さんが言うような悪い人じゃないの。 だから、将校さんにわかってほしくて……』
将校:『……そうか……』
将校:『そうだな。私も、君達森の民が、 噂のような悪い人間には思えない』
将校:『——私にも、もっと教えてくれないか? 君達のことを』
将校:『もしかすると私達は、 ただ酷い誤解をしているだけなのかもしれない』
森の少女:『……うん! いっぱいお話しよう! 将校さん!』
大臣の部下:『——将校、お初にお目にかかります。 この度は大臣の命令でこちらに参りました』
将校:『ああ。君が新しく派遣されてきた参謀役か。 よろしく頼む』
大臣の部下:『……さて、大臣の命令どおり森の黒い油を奪うためには、 まずは彼をどうにかしなければいけませんね』
大臣の部下:『最近、彼の働きで森の人々と町の人々は、 急速に関係をよくしていっています。 このままでは森から黒い油を奪うのは難しいですが——』
将校:『そうか! では森の宝と、町の宝を交換することで、 新たな和平の条約が結べるようになるのか!』
森の少女:『うん! 将校さんが長老と町長から宝を受け取って、 交換してくれれば大丈夫だって!』
将校:『そうか……! これでもう、おたがいに憎しみあわなくて済むな!』
大臣の部下:『和平条約を……? なるほど、考えましたね』
大臣の部下:『——そういうことであれば、作戦を変えましょうか』
将校:『よし! 森の宝と町の宝。 両方を預かることができた』
将校:『あとは、これをそれぞれのところに持っていけば……。 うわっ!!』
大臣の部下:『——お気の毒ですが、 あなたにはここで大人しくしていてもらいましょう』
将校:『お前は……! どうして邪魔をする!』
大臣の部下:『申し訳ありませんが、森の人々と町の人々には、 いがみあっていてもらわないと不都合でして』
大臣の部下:『さて、将校どのにはしばらく部屋で 大人しくしていただきましょうか』
将校:『やめろ……! はなせ!!』
大臣の部下:『……フフ。 あとは皆が寝静まる夜を待って、 宝ともども消えてもらいましょう』
大臣の部下:『そして双方には、宝が消えたことだけを伝えればいい。 勝手に互いを疑って、ぶつかりあうことでしょう』
大臣の部下:『そうなれば、堂々と我々の武力で 森の民を皆殺しにできるというものです』
大臣の部下:『これで黒い油は、私達のもの。 ……フフ、これで我が主も王の座に一歩近づきますね』
少女の友達:『はぁ……はぁ……みんな、大変よ!』
森の少女:『ええっ!? 将校さんが宝を奪っていなくなった!?』
少女の友達:『そうなの! それで怒った森のみんなが、町を焼き討ちにするって……!』
少女の友達:『そんなことしたら、町の連中だけじゃなくて、 軍隊が森にやってきて、めちゃくちゃにされちゃう……! 早く逃げないと!』
森の少女:『……ううん! 将校さんを助けに行かないと!』
少女の友達:『え!?』
少女の友達:『まだそんなこと言ってるの!? あいつは、裏切り者なんだよ!』
森の少女:『違う! 将校さんはきっと何か事情があって、 宝を届けられないだけだよ!』
森の少女:『あたし、会って確かめてくる。 そうしたら、きっとみんなも誤解だってわかってくれる!』
森の少女:『あたしは将校さんがどんな人かわかってる。 だから——あたしが行かなくちゃ!』
森の少女:『——よし! 木に登って将校さんを助け出そう! いつもより見回りの人が多いから、そーっと登って……』
森の少女:『あ! ここから先の枝が切られちゃってる! もしかして、あたしが登ってこれないように……?』
将校:『く……! 誰か! 誰かここから出してくれ!』
森の少女:『あ、将校さんだ! 将校さん!』
将校:『え? あれは……! ……よし、後ろ手でも、窓の鍵くらいは開けられる!』
将校:『——お前! どうしてここに来たんだ! 殺されるぞ!』
森の少女:『あたし、森も、町も、守りたいの! みんなでちゃんと仲直りしたい!』
森の少女:『だからあたしが、今からそっちに行って 将校さんを助けるよ!』
将校:『こっちに——? まさか、跳びうつる気か!? 落ちたら大ケガをするうえに、見回りの兵士につかまるぞ!』
森の少女:『絶対落ちない! あたしを信じて!』
森の少女:『あたしは絶対——跳び越えてみせる!』
将校:『…………!』
将校:『わかった! 一緒にすべてを明らかにして、 この無益な戦いを終わらせよう!』
将校:『跳んでくれ!』
森の少女:『——うん!!』
観客達:…………!
寧々:…………
類:(——さあ、クライマックスだ)
類:(頼んだよ、ふたりとも!)
森の少女:『いくよ——!』
第 8 话:在りし日の夢に喝采を
森の少女:『えーいっ!』
将校:『よし……!!』
森の少女:『で、できた~! できたよ将校さん! あたし跳んじゃった!』
森の少女:『あ、喜んでる場合じゃないね! 今、縄を解いて……』
将校:『——ありがとう』
森の少女:『へ?』
将校:『君は、私達に偏見を持たず、恐怖することもなく、 勇気をもって、私の心の中にある垣根を跳び越えてくれた』
将校:『そうして今、私達のあいだにあるとてつもなく大きな垣根を 跳び越えるために、手を差し伸べてくれている』
将校:『……本当に、ありがとう』
森の少女:『……えへへっ! 将校さんに褒められると、なんだか照れちゃうな~!』
森の少女:『でも、あたしだけじゃなくて、 将校さんも——みんなも、きっと跳べるよ!』
将校:『……ああ、そうだな。 森の民と町の民、双方に宝を届け、そして伝えるとしよう』
将校:『約束はしっかりと果たされたこと。 そして、どんな垣根であろうと、 我々は必ず越えられるということを——!』
森の少女:『うんっ!!』
観客達:本当にジャンプするなんて思わなかったわ!
観客達:こっちまでドキドキしたね
類:(……ああ。 僕達のショーで、客席が笑顔に染まっていく)
類:(僕は、なんて——)
大臣の部下:『……なぜ、森の人間と町の人間が、手を取り合って……?』
森の少女:『あたし達はもう、ケンカするのはやめたの!』
将校:『本当の敵は誰なのか、私達は知った。 それは——私達を憎みあわせようとする、お前だ!』
大臣の部下:『く……うわあ!』
司:本日はご来場いただき、 まことにありがとうございました!
えむ・寧々・類:『ありがとうございました!』
観客達:楽しかったわね!
観客達:あのジャンプのシーンは本当にドキドキしたね
観客達:ああいうお芝居を見たのって初めてだけど、 遊園地でもやってるんだね。 今度見に行ってみようかな
寧々:……ふふっ。 みんな興味持ってくれてるみたい
司:今回の観客は普段テーマパークに行くような層ではないが、 この様子ならば期待できそうだな!
えむ:やった~!! 今回も大成功だねっ!!
類:——ああ、そうだね
類:さて、お客さん達もほとんど席を立ったことだし、 あと片づけを始めようか
類:僕は、命綱を外してくるよ。 少し外しかたが難しいからね
司:あ、おい! 類!
司:……どうしたんだ? さっさと片づけに行ってしまって
えむ:うん。 類くん、なんだかいつもとちょっと違うね
寧々:たしかに、いつもならショーが終わったら、 もっと嬉しそうにしてるのに……
えむ:あっ! もしかして、あたしどこか間違えちゃったかな!?
えむ:それで怒ってたらどうしよう……! 類くんに聞いてくるー!
寧々:あ、えむ!
類:よし。この金具を外して……
えむ:類く~ん!!
類:ん? どうしたんだい、えむくん
えむ:えと、えと……! あたし、セリフがスポーンてしちゃったかな!?
類:うん? なんだか話がつかめないんだけれど……
司:お前の様子がいつもと違うから、 気になっているんだ!
類:え?
司:いつもの類ならば、公演後はニヤニヤして、 次はどうしようかな~、司くんを土に埋めてみようかな~、 などと言っているだろう!
司:それが今日に限って妙に淡泊だからな。 どうしたんだ?
寧々:何考えてるか知らないけど、 別に怒ってるわけじゃないんでしょ?
えむ:ほんとー? あたし、どこも間違えてなかったー?
類:…………ふふ。 間違えてなんていないさ
類:むしろ、全員完璧だったよ
司:じゃあなぜ今日は妙に落ち着いているんだ? いつもなら、もう少し嬉しそうにしてるだろう
類:…………ああ
類:うまく言い表せなくてね
えむ:え?
類:いや——この感情を表現してしまうのはもったいないと 思ったのかもしれない
類:……ちゃんと僕の中にしまっておきたい、のかな
えむ:うーんと……?
司:どういう意味だ?
寧々:あ——
寧々:もしかしたら、類が言いたいこと、 なんとなくわかるかも
えむ:ほんと!? 寧々ちゃん、すごーいっ!
類:おや、さすがだね。寧々
寧々:長いつきあいだからね。 ——でもさ、類
寧々:せっかく嬉しいことがあったんなら、 みんなに話してみるのもいいんじゃない?
寧々:ここにはみんないるんだしさ
類:…………
類:……ふふ。そうだね。 この感動を独りじめをすることこそ、もったいないしね
類:じゃあ、そっちに下りて話そうか
司:それで? 一体どうしたんだ?
類:うん。 つまり僕は今日のショーを見て……
類:僕はなんて幸せ者なんだろう、って思ったんだよ
えむ:えーっと……じゃあ類くん、 ショーが成功したから喜んでたの?
類:ああ。そうだよ
類:今までにないくらい嬉しくて、 どうしたらいいのかわからなかったのさ
えむ:そうだったんだ……。 よかった~!!
司:そういうことなら安心したが……。 しかし、わかりづらいな
類:あんまり素敵なことがあると、 逆に冷静になってしまうのかもしれないねえ
類:——僕の夢はね、誰が見ても笑顔になれる、 どんな垣根も越えられるような、そんなショーを作ることなんだ
類:昔は、それができなかった。 僕自身が歩み寄れなくてね
類:でも、今は違う。 僕はここで、僕の夢を叶えられている
類:だから——
類:ありがとう
えむ:ねえねえ類くん! 次はどんなショーやろっか!?
類:え?
えむ:あたし、類くんの演出で、 もっともっとショーやりたいんだ~~!!
司:そうだな! さらにオレを輝かせる演出を頼むぞ! ……事故のない範囲でな!
寧々:わたしが歌うシーンも、いい演出つけてよね?
類:……フフフ。 そうだねえ。それじゃあ次は——
類:——こんな演出はどうだい?