活动剧情

交わる旋律 灯るぬくもり

活动ID:42

第 1 话:最後の1枚を前に

放課後
宮益坂女子学園 廊下
教師:朝比奈さん、荷物運び手伝ってくれてありがとう。 ここまでで大丈夫よ。忙しいのにごめんなさいね
まふゆ:いえ、大丈夫です。 また何かあったらいつでも声をかけてください
まふゆ:それでは、また。 失礼します
まふゆ:…………ふう
まふゆ:(次は学級委員の仕事か……。 少し遅れちゃったな、急がないと)
教室
まふゆ:星乃さん、遅れてごめん。待ったよね
一歌:いえ、資料をまとめていたので大丈夫です。 今日はよろしくお願いします
まふゆ:ありがとう、よろしくね
まふゆ:ええと……今までの行事のアンケートの集計だっけ。 1年生のほうはどうだった?
一歌:はい、『行事が楽しかった』という意見が多かったです。 体育祭も合唱祭も、準備期間は少し大変だったけど みんなで協力して仕上げるのが楽しいって
まふゆ:そっか、よかった。 去年は少し否定的な意見が多かったから、 改善できてるってことだね
まふゆ:2、3年生の意見は、 『行事は楽しかったけど受験のことを考えると……』 っていうのが多かったかな
一歌:あ、そうですよね。 受験勉強が近づいてきますもんね
まふゆ:うん。2年になると、進路とか結構言われるしね。 そのあたりは仕方ないかな
まふゆ:でも、できる限り意見を取り入れて、 いろんな人が納得できる行事を作っていきたいよね
一歌:そうですね。 せっかくの行事ですし、思い出に残るような 楽しいものにしたいですよね
まふゆ:うん。そうだね
まふゆ:それじゃあ、アンケートを見ながら 次の行事の案をまとめていこうか
一歌:はい、お願いします!
まふゆ:……うん、いくつか候補は出せたね
まふゆ:あとは、他の委員会の子達や先生に提出するために いろいろと整えなきゃいけないんだけど……。 もう少し時間がかかりそうだな
まふゆ:星乃さん、時間は大丈夫?
一歌:あ……、えっと……
まふゆ:どうしたの? もし急ぎの用事があるなら、無理しなくていいよ?
一歌:すみません……。 急ぎというわけじゃないんですけど、 実は今日、好きなクリエイターさんのCDの発売日で……
まふゆ:CD?
一歌:はい。一度引退して、最近活動を再開した、 バーチャル・シンガーの曲を作ってる人なんです
一歌:有名とまではいかないんですけど、 かなり好きな人が多いみたいで……。 今年のファンフェスタでも曲を披露していたんですよ
まふゆ:…………
瑞希:えっ!? ファンフェスタに行く!?
奏:う、うん……。 だめだったかな
奏:ずっと活動休止してたクリエイターが参加するから、 その人の曲を聴きに行きたいんだ
まふゆ:それってもしかして…… 引退する前の曲がなかなか聴けない人だったりする?
一歌:……! はい、そうなんです! 朝比奈先輩も好きなんですか?
まふゆ:ううん、私は知りあいから聞いたことがあるだけだよ。 前にその子が好きだって言ってたから、覚えてたんだ
一歌:そうだったんですね。 でも、好きな人がいるってわかって嬉しいです
まふゆ:私もちょっとびっくりしちゃった
まふゆ:それで、今日がCD発売日だから 気になってたってこと?
一歌:あ……はい、それもあるんですけど。 実はそのCD、枚数限定で、ネットの配信もないので これを逃したらもう買えないかもしれないんです
一歌:予約もできなかったから、 売り切れてたらどうしようって思っちゃって……。 すみません、委員会があるのに
まふゆ:ううん、気にしないで
まふゆ:でも……そこまで気になるのなら 今日はここまでにしようか
一歌:え? いいんですか?
まふゆ:うん、今のままだと作業にも集中できないと思うしね。 それにだいたいの内容は詰められたから、 残りは明日やれば大丈夫だよ
まふゆ:資料の片づけとかまとめは私がやっておくから。 星乃さんは帰ってもいいよ
一歌:あ、ありがとうございます! すみません、朝比奈先輩。 また明日よろしくお願いします!
まふゆ:うん。気をつけてね
まふゆ:…………ふう
まふゆ:(それにしても、限定のCD、か……)
まふゆ:(……奏も、買いに行くのかな)
音楽ショップ
一歌:はぁ、はぁ……。 えっと、新作のCDコーナーは……
一歌:あ、あった……! 最後の1枚だ……!
奏:えっと、CDは……
奏:あ、最後の1枚、残ってた。 ……よかった
一歌:さっそくこれを買って——
一歌・奏:『——えっ?』
一歌:あっ、えっと……
奏:……ごめんなさい。このCD買いに来たんだよね。 どうぞ
一歌:い、いえ。私のほうが遅かったですし——
奏:ううん、大丈夫。 わたしのことは気にしないで
一歌:でも……
奏:わたしは動画で聴いてた曲も多いから。 それに……
奏:あなたみたいに、この人の曲を好きな人に 聴いてもらえるなら嬉しい
一歌:あ……
奏:じゃあ、わたしはこれで
一歌:あ、待って!
一歌:…………行っちゃった
一歌:(きっとあの人も、このクリエイターが好きなのに……)
一歌:……悪いことしちゃったな……
奏の部屋
奏:『…………』
絵名:『K、なんだか今日元気なくない? どうしたの?』
奏:『あ、別に……』
まふゆ:『…………?』
瑞希:『そういえば今日、CD買うって言ってなかったっけ。 売り切れてて買えなかったとか?』
奏:『う……』
絵名:『え、本当にそうなの?』
奏:『ううん、行った時には1枚だけあったんだ。 でも、他に欲しがってる人がいたから……』
瑞希:『あー、そうだったんだ……。 タイミング悪かったねー』
絵名:『ネット配信とかしてないの? 他のお店は?』
奏:『店頭限定で配信もないんだ。 置かれてるお店も限られてるから、この辺りだと そこ以外にはなくて……多分、もう買えないと思う』
奏:『そのCD、書き下ろし曲もあったから、 作曲の参考に聴きたかったんだけど……』
絵名:『そっかぁ……』
奏:『……でも、少し嬉しかったんだ』
奏:『その人、すごく急いで来てたから。 きっとあのCDが出るのを楽しみにしてたんだと思う』
瑞希:『へえ、じゃあKと同じくらい、 その人の音楽が好きなのかもね』
奏:『……うん。同じ音楽が好きな人に出会えて嬉しかったし、 その人がCDを聴いてくれるなら、よかったと思う』
絵名:『でも、Kだって聴きたかったんでしょ? もしかしたら再販とかあるかもしれないし、 私も調べてみるよ』
瑞希:『だね。ボクもどこかで売ってないか探してみる!』
奏:『……ありがとう』
まふゆ:『…………』

第 2 话:意外な共通点

翌日 放課後
宮益坂女子学園 教室
まふゆ:それじゃあ、部活や予備校に通っている人の意見も 取り入れて、と……
まふゆ:うん。次の行事の案はこんな感じでいいんじゃないかな。 今日の委員会はこれで終わりだね、お疲れさま
一歌:お疲れさまです、朝比奈先輩
一歌:あの……。昨日はありがとうございました
まふゆ:ふふ、気にしないで。 これくらいなら、いつでも協力するから
まふゆ:それで、どうだった? CDは買えた?
一歌:あ……。えっと……
まふゆ:……あ、ごめん。 もしかして買えなかった?
一歌:あ、いえ。買えたには買えたんですけど、 その、譲ってもらう形だったので……
まふゆ:譲ってもらう?
一歌:はい。 私が行った時、最後の1枚だったんです
一歌:ただ、たまたまその時にもうひとり、 そのCDを買おうとしていた人がいて……。 その人から譲ってもらったんです
まふゆ:え……
一歌:その人も、きっとすごく楽しみにしてたんだと思いますし、 なんだか悪いことしちゃったな、って思って……
一歌:そのCD、すごく良かったので……。 その人にも聴いてほしかったな、って思ったんです
まふゆ:……それって……
瑞希:『そういえば今日、CD買うって言ってなかったっけ。 売り切れてて買えなかったとか?』
奏:『ううん、行った時には1枚だけあったんだ。 でも、他に欲しがってる人がいたから……』
まふゆ:もしかして……
一歌:朝比奈先輩?
まふゆ:あ、ごめん。 星乃さんが譲ってもらったって人、 もしかして知ってるかも、って思ったんだ
一歌:え!? ほ、本当ですか!?
まふゆ:うん。昨日、似たような話を聞いたから……
一歌:よ、よかったらその人の話、 聞かせてください!
まふゆ:うん、いいよ
まふゆ:その子は私達と同じくらいの年の女の子で、 特徴は……うーん、華奢で、髪が長いかな
まふゆ:あ、あと服装はいつもジャージでね、 多分、そのCDを買いに行った時も ジャージを着てたんじゃないかな
一歌:……! そ、その人かもしれません!
まふゆ:ああ、やっぱりそうだったんだ。 ふふ、珍しい話だから印象に残ってたんだ
一歌:たしかに、あまりない話ですよね。 最後の1枚を譲ってもらう話なんて
一歌:……それで、あの、ひとつお願いをしてもいいですか?
まふゆ:ん? 何かな?
一歌:私、その人にどうしてもCDを聴いてほしくて……。 よかったら朝比奈先輩から渡してもらってもいいですか?
まふゆ:ふふ、それくらい大丈夫だよ
一歌:あ、ありがとうございます!
まふゆ:こちらこそ。 その子も曲を作る参考にしたいって言ってたし、喜ぶと思うな
一歌:え? その人って曲を作っているんですか?
まふゆ:うん。中学にあがる前から作ってる、って言ってたな
一歌:そんな前から……すごいですね。 どんな曲を作ってるんだろう
まふゆ:ふふ、星乃さん、作曲に興味があるの?
一歌:あ……はい。 実は、幼馴染みの友達と バンドを組んで演奏してるんです
まふゆ:え、バンド? そうだったんだ……
一歌:は、はい。みんなでプロになろうって頑張ってます
一歌:それで、プロを目指すために 自分達のオリジナル曲を作ってるんですけど、 なかなか難しくて……
まふゆ:そっか……。 私はバンドにはそこまで詳しくないけど、 たしかにプロデビューする人の曲ってすごいよね
まふゆ:ちょっと星乃さん達の曲、 聴いてみたくなっちゃったな
一歌:ありがとうございます。 まだプロの人達に比べたら、全然だと思うんですけど
一歌:でも——
一歌:聴いてる人の心に響くような曲にしたいって思ってます
まふゆ:心に、響く……
一歌:はい。今はまだ、全然ですけど……
一歌:でも、いつか私達の想いが届くような曲を作って、 その演奏で誰かの心を揺さぶることができる――
一歌:そんなバンドになりたいんです
まふゆ:……そっか。 ふふ、素敵な夢だね
一歌:ありがとうございます
一歌:あの……。 朝比奈先輩の知りあいの人は どんな曲を作っているんですか?
まふゆ:どんな……。うーん、難しい質問だね。 もし興味があるのなら、動画のURLを教えようか
一歌:えっ、本当ですか!? お願いします!
まふゆ:うん、じゃああとで送っておくね
一歌:ありがとうございます! 楽しみだなぁ……
まふゆ:……っと、もうこんな時間か。 つきあわせちゃってごめんね、星乃さん
一歌:あ、いえ! こちらこそ、 教えてくれてありがとうございました!
一歌:それじゃあ、明日CD持ってきますね
まふゆ:うん。その人にも伝えておくよ
一歌:はい、よろしくお願いします!

第 3 话:話してみたい

教室のセカイ
一歌:♪————! ♪————!
一歌:……ふう
ミク:今日の一歌、なんだかすごく嬉しそうだね
リン:わかる~! 歌声がニコニコしてたっていうか! なんかあったの?
一歌:あ……うん。実は、例の人が見つかったんだ
咲希:例の人って……もしかしてCDを譲ってくれた人!?
一歌:そう。だから、その人にCD貸せるかもしれなくて
穂波:よかったね、一歌ちゃん!
志歩:でも、知らない人って言ってなかった? よく見つかったね
一歌:その人、学級委員の朝比奈先輩の 知りあいみたいなんだ
穂波:朝比奈先輩?
一歌:うん。委員会でCDを譲ってもらった話をしたら、 その人から同じ話を聞いてたみたいで……
一歌:朝比奈先輩にお願いして、 明日、CDをその人に渡してもらうことになったの
ルカ:ふふ、よかったわね
MEIKO:それで、その譲ってくれた人ってどんな人なの?
一歌:あ、そこまでは聞いてなかったな……。 年は私達と同じくらいって言ってたけど
一歌:それと……曲を作る人だって言ってた
KAITO:……曲?
一歌:うん。作曲をしてるって
リン:そうなんだ! じゃあ、いっちー達と一緒だね!
一歌:同じっていうか、作曲に関しては先輩じゃないかな。 中学にあがる前からやってるらしいし
ミク:作曲の先輩、か……
ミク:じゃあ、その人に何か聞ければ 作曲のヒントになるんじゃない?
志歩:あ、たしかに
咲希:アタシも気になる! ねえねえ、その人ってどんな曲作ってるの?
一歌:えっと、動画のURL教えてもらったんだ。 みんなで聴いてみようか
咲希:うんっ!
咲希:なんていうか、すごいね……!
志歩:うん。ひとつひとつの音が、すごくよく作り込まれてる。 メロディーや歌詞からも訴えるような想いが伝わってくる
穂波:……この曲って、もしかして……
咲希:ほなちゃん、聴いたことあるの?
穂波:うーん……。いつもお掃除しに行ってるおうちの人が作ってる 曲の感じに似てるなって思ったんだけど……
一歌:え、そうなの!?
穂波:あ、でも気のせいかも……! わたしも、その人の曲はちょっと聴いたくらいだから
志歩:まあ、そんな偶然ってあんまりないよね
穂波:そうだよね。 でも、次にお掃除に行く時にまた曲を聴かせてもらおうかな。 もしかしたらってこともあるし
一歌:ありがとう、穂波
咲希:でも、ホントにすごいよね~! アタシ達と同じくらいの子が作ったなんてびっくりだよ~
志歩:うん、高校生ってことを抜きにしても、 ここまでクオリティーが高い曲はなかなかないと思う
志歩:……だけど、この曲、 私達が目指す音楽とはちょっと違うかもね
咲希:たしかにLeo/needとは全然違うよね。 作曲のコツとか聞きたいな~って思ったんだけど……
一歌:うん、そうだね
一歌:……でも……
一歌:(あの人も、同じCDが欲しかったってことは……。 ミクの曲が好きなのかな?)
一歌:(もしそうなら……友達になりたいな)
ミク:一歌、気になってるみたいだね
一歌:えっ? あ、うん。 ミクの曲が好きなら、話してみたいなって
咲希:それなら、朝比奈先輩に頼んでみたら?
一歌:えっ?
穂波:うん。事情を説明してお願いしたら 紹介してくれるかもしれないね
一歌:でも、いきなり頼むのは……。 朝比奈先輩にも迷惑かけちゃうんじゃないかな
志歩:気になってるなら頼むだけ頼んでみたら? この機会を逃したら、もう話せなくなるかもよ
穂波:うん、ミクちゃんの話をできるお友達が増えたら きっと楽しいもんね
一歌:……そうだね
一歌:みんな、ありがとう。 やっぱりその人のこと少し気になるし……。 頼めそうだったら、朝比奈先輩に言ってみるよ
咲希:わあ、がんばってね! いっちゃん!
翌日
宮益坂女子学園 廊下
一歌:朝比奈先輩、これ昨日話したCDです。 お願いします!
まふゆ:ありがとう、星乃さん。 きっと喜んでくれると思うよ
一歌:あ、それと——
まふゆ:うん?
教師:朝比奈さーん!
一歌:あっ……
教師:朝比奈さん、次の授業の準備手伝ってくれない? クラスまで持っていくものが多くて……
まふゆ:わかりました! 今行くので、ちょっと待っててください
まふゆ:ごめんね、星乃さん。 さっき言いかけたことって、なんだった?
一歌:……あ、いえ。 やっぱり、なんでもないです
まふゆ:そう……?
まふゆ:もし、何か相談があるなら言ってね。 いつでも聞くよ
一歌:はい、ありがとうございます
まふゆ:うん。じゃあ、またね
一歌:……はあ、タイミング悪いな……
一歌:(こんなチャンス、滅多にないってわかってたのに……)
一歌:…………

第 4 话:自分とは違う言葉

誰もいないセカイ
まふゆ:はい、奏。 このあいだ話してたCD
奏:ありがとう、まふゆ
まふゆ:別に。頼まれたから渡しただけ
奏:でも、まふゆがわたしのことを話してくれたおかげで このCDを聴けるから
奏:だから、ありがとう
まふゆ:…………うん
ミク:奏、まふゆ、来てたんだね
奏:うん。まふゆからCDを貸してもらってたんだ
ミク:……CD?
奏:バーチャル・シンガーの曲を作ってる人のCDだよ。 まふゆの後輩の子が貸してくれたの
奏:もう聴けないかもしれないって思ってたから、 すごく嬉しい
ミク:そうなんだ……。 奏、よかったね
奏:うん……
まふゆ:…………
ミク:まふゆ?
奏:え、どうしたの?
まふゆ:なんでもない
まふゆ:……ただ、奏を見てたら少し……
奏:少し?
まふゆ:……胸が、あたたかくなった気がした
奏:え……
ミク:ねえ、奏。 わたしもその曲、聴きたい
奏:うん、いいよ。 じゃあ今度、プレイヤーに入れて持ってくるね
奏:まふゆもありがとう。 聴かせてもらったらすぐに返すね——あれ?
まふゆ:……どうしたの?
奏:CDが入ってた袋にルーズリーフが入ってる。 これ、まふゆの?
まふゆ:……ううん、違う
奏:それじゃあ、貸してくれた人のかな。 CDを返す時に一緒に返さないと
まふゆ:そうだね
まふゆ:——あ、それ……
奏:どうしたの?
まふゆ:書いてあるの、歌詞じゃない?
ミク:歌詞?
奏:あ……本当だ。 この人も曲を作ってるのかな
まふゆ:……最近、作り始めたって言ってた。 バンドでプロを目指すから、って
奏:プロ……。 すごいね
まふゆ:作曲も勉強してるって言ってた。 奏にも興味を持ってるみたいだった
奏:え、わたし?
まふゆ:うん、どんな曲を作ってるのかって聞かれたから、 動画のURLを教えておいたよ
奏:そっか……
奏:その人がどんな気持ちで聴いてくれるのか、 ……わたしも少し、興味あるな
まふゆ:…………
ミク:この人……どんな人かはわからないけど、 すごく真面目に音楽を作ってるんだね
奏:うん。何度も消した跡が見える。 いろいろ悩みながら書いてる感じだね
奏:粗削りだし、もしかしたら曲のイメージも まだ掴めてないのかもしれない
奏:……でも……
奏:すごく、まっすぐだね
まふゆ:…………
奏:まふゆの書くものとは違うけど、 言葉のひとつひとつが力強く感じる
奏:……わたしはこの詞、いいと思うな
まふゆ:……そうだね
ミク:……まふゆも、そう思う?
まふゆ:……少し。 こういうのは、私には書けないから
まふゆ:それにあの子、こういう詞を書くんだなって
まふゆ:……だから、少し興味がある
奏:……そっか
まふゆ:うん
まふゆ:…………
まふゆ:(……まっすぐ、か)
まふゆ:(きっと星乃さんには、伝えたいことがあるんだろうな)
まふゆ:(私と違って——)

第 5 话:理由が知りたくて

宵崎家 キッチン
穂波:宵崎さん、おじゃまします。 今日もよろしくお願いします
奏:うん、こちらこそ
穂波:家のお掃除と、お惣菜を何日か分作っておきますね。 今夜は何か食べたいものはありますか?
奏:食べたいもの……。 うーん、特にないかな。 いつもどおり、望月さんにおまかせで
穂波:わかりました。 それじゃあ、少し寒くなってきましたし、 温かいものにしましょうか
奏:たしかに、最近寒くなったね。 このあいだ用事で外に出たんだけど、すごく寒かった
穂波:ふふ、この時期は温度の変化が激しいですからね。 体調に気をつけて、暖かくしてくださいね
奏:うん、ありがとう。 望月さんも気をつけて
穂波:はい。それじゃ、さっそくお掃除から——
奏の部屋
穂波:……あれ?
奏:どうしたの?
穂波:あ、いえ。 このCD、友達も持ってたなぁって思って
奏:そうだったんだ。 望月さんの友達もこの人が好きなんだね
奏:でも、このCDはわたしのじゃないんだ
穂波:あ、そうなんですか?
奏:うん。実はCDショップに買いに行った時、 最後の1枚になってたんだけど、他にも欲しい人がいて。 わたしはその人に譲ったんだ
奏:でも、知りあいがその人のことを知ってて、 CDを借りてくれたの
穂波:え……
穂波:あの、すみません。 もしかして、そのお知りあいの方って、 朝比奈さんっていうお名前じゃないですか?
奏:そうだけど、どうして……
穂波:実は数日前、私の友達が 『朝比奈先輩の知りあいにCDを貸す』 って話をしていたんです
穂波:その子、最後の1枚を譲ってもらったって言っていて。 それに——
奏:……?
穂波:その人が作ったっていう曲の動画を見たんですけど、 なんだか宵崎さんが作ってる曲の雰囲気に似てるなと思って。 ちょっと気になってたんですよ
奏:そうだったんだ……。 曲も聴いてくれてたんだね。ありがとう
奏:あ……そうだ。 このCD、返しておいてもらえると嬉しい
奏:ごめん、本当は望月さんじゃなくて、 まふゆから返してもらったほうがいいと思うんだけど
奏:……多分、その人にとって大事なものが入ってると思うから、 早く返してあげたくて
穂波:大事なもの……
穂波:わかりました、大丈夫ですよ。 その子には渡しておきますね
奏:うん、ありがとう
奏:だけど……その子がまふゆの知りあいってことにも驚いたけど、 まさか望月さんの友達だったなんて思わなかったな
穂波:わたしも……! 朝比奈先輩と宵崎さんがお友達だったなんて びっくりしました
奏:友達、か……
穂波:でも……そっか。 宵崎さんだったんですね
穂波:ふふっ、なんだか嬉しいな
奏:嬉しい……?
穂波:あ、ごめんなさい。 わたしの友達と宵崎さんの接点が 意外なところにあったなぁって思って
奏:ああ、同じクリエイターの曲が好きなのは たしかに驚いたかも。そこまでメジャーな人じゃないし
奏:わたしも、その人のことを知れて嬉しかった
穂波:……あの、宵崎さん……
穂波:もしよろしければ、なんですけど……。 その子に会ってもらえませんか?
奏:え、わたしが?
穂波:はい。実はその子、 宵崎さんと話してみたいって言ってるんです
穂波:曲を作ってるっていうことと、 ミクちゃんの曲が好きな人同士で 仲良くなりたいみたいで
奏:そうなんだ……
奏:(わたしは別に、特別ミクの曲に 思い入れがあるわけじゃないけど——)
奏:…………
穂波:あ、もちろん宵崎さんがよかったらなんですけど……
奏:わかった。 わたしもCDのお礼が言いたいし、お願いできるかな
穂波:え……本当ですか?
奏:うん。わたしも、サークルの子以外では 曲作りをしてる子と会ったことないし。 話をしてみたい
穂波:わあ……ありがとうございます! ふふ、その子すっごく喜ぶと思います!
奏:こちらこそ
奏:あ……それで、もうひとつお願いなんだけど
穂波:なんですか?
奏:望月さんも同席してくれないかな。 わたし、あまり人と話すことってないから、 何を話せばいいのかわからなくなりそうで
穂波:ふふ、そういうことなら喜んで。 じゃあ予定を調整しておきますね
奏:うん。お願い
誰もいないセカイ
まふゆ:…………
ミク:まふゆ、どうしたの? なんだか悩んでる?
まふゆ:……悩んでる、のかな。 ちょっとわからないことがあって
ミク:わからない?
まふゆ:……うん、この前セカイで奏にCDを渡した時——
奏:もう聴けないかもしれないって思ってたから、 すごく嬉しい
ミク:そうなんだ……。 奏、よかったね
奏:うん……
まふゆ:あの時……、奏の笑顔を見たら なんだか胸があたたかくなった気がした
まふゆ:曲を聴いたわけでもないのに、どうしてだろう……
まふゆ:…………
ミク:まふゆ……
奏:まふゆ、やっぱりここにいたんだ
まふゆ:奏……どうしたの?
奏:うん、ちょっと報告したいことがあって。 ミクにも例の曲、聴かせたかったし
ミク:報告……?
ミク:……じゃあ、このCDを貸してくれた子と会うんだね
奏:うん。わたしの家で家事代行をしてくれてる望月さんが その人の友達だったんだ
奏:わたし達と同じように、 曲を作ってる人と会う機会ってなかなかないし……。 何かいい刺激になるかな、って思って
まふゆ:そうなんだ
奏:うん。 それで、なんだけど……。 よかったら、まふゆもどうかな
まふゆ:……どうして? 会いに行くなら奏だけで行けばいい
まふゆ:私は学校で星乃さんと顔を合わせるし、 わざわざ学校の外で話そうとは思わない
奏:そっか……、ごめん
奏:同じように曲作りをしてる子だから、 まふゆも興味あるかもしれないって思ったんだ
まふゆ:…………
奏:それに、わたしとその子をつなげてくれたのはまふゆだから。 まふゆにも、その場にいてほしいと思って
まふゆ:私はただCDを渡しただけだし、別に……
ミク:まふゆ、行かなくていいの?
まふゆ:……え?
ミク:さっき、悩んでるみたいだったから
ミク:もしかしたら、奏と一緒に行けば その答えが見つかるかもしれない
まふゆ:…………
まふゆ:そうなの、かな……
奏:まふゆ、何か悩んでるの? 大丈夫……?
まふゆ:うん、心配するようなことじゃないから
まふゆ:(でも……ミクの言うとおり、 奏と一緒にいることで答えがわかるのなら——)
まふゆ:…………
まふゆ:——わかった、行く
ミク:まふゆ……
まふゆ:奏、日程が決まったら教えてくれる?
奏:う、うん。わかった……! じゃああとで連絡するよ
奏:ありがとう、まふゆ
まふゆ:……うん

第 6 话:音楽でつながる縁

当日
シブヤ駅前
一歌:…………
穂波:一歌ちゃん、おまたせ!
一歌:あ、穂波……! 今日はありがとう
穂波:ううん、わたしも宵崎さんに 一歌ちゃんを紹介できて嬉しいな
一歌:う、うん、そうだね……。 CDも聴いてもらえたみたいだし
一歌:(よかった、けど……。 CDの袋に入ってたルーズリーフ……見られてないといいな)
穂波:……? 一歌ちゃん、どうかしたの?
一歌:あ……ううん。なんでもない。 穂波、朝比奈先輩達と合流しようか
穂波:うん、そうだね。行こう!
まふゆ:——あ、いたいた。 星乃さん、望月さん!
穂波:宵崎さん、朝比奈先輩!
奏:望月さん、こんにちは。 こういうところで会うと、なんだか不思議な感じだね
穂波:ふふ、そうですね。 今日はよろしくお願いします
穂波:朝比奈先輩も、お時間を作っていただいて ありがとうございます
一歌:あ、あの……! よろしくお願いします
まふゆ:ふふ、気にしないで。 もっと気軽に話そう?
まふゆ:奏、こっちの子が星乃さん。 CDを貸してくれた子だよ
奏:……どうも、宵崎奏です。 今日はよろしく
一歌:えっと、星乃一歌です。 よろしくお願いします……!
一歌:あの、この前はCDを譲っていただいて ありがとうございました!
奏:ううん、わたしも星乃さんのおかげで 曲が聴けたから
奏:こちらこそ、ありがとう
まふゆ:それじゃ、どうしよっか。 話をするなら、カフェにでも入って——
一歌:え……?
奏:あ……
奏:そういえば、ごはん食べてなかった……
まふゆ:もう、また朝まで作業してたの? ちゃんと寝て、朝ごはんも食べなきゃだめだよ?
奏:えっ……? あ、ご、ごめん。いいメロディーが浮かんできたから、 作業してたら朝になってて……
一歌:朝まで作業……?
穂波:もしかして、今日も寝てないんですか?
奏:ううん、ちゃんと仮眠はしたから大丈夫
奏:でも……まふゆに、そういう風に心配されるの、 なんだか新鮮だな
一歌:そうなんですか? 朝比奈先輩、いつもすごく気づかってくれる イメージだったんですけど……
奏:あ……そ、そっか。えっと……
まふゆ:奏は曲作りに集中すると、いつもこうだからね。 それより、どこかごはんが食べられそうな場所に行こうか
穂波:そうですね。何か食べながらお話しましょう
ファミリーレストラン
一歌:宵崎さんは通信制の学校に通ってるんですね
奏:……うん。 勉強よりも曲作りに集中したかったから。 音楽以外に時間をさくのは嫌だったんだ
一歌:へえ……。すごいですね
奏:そうかな。 わたしは学校に通いながらバンド活動してる 星乃さん達もすごいと思うけど……あ
店員:おまたせいたしました。 こちら、ワンタンメンです
奏:あ、はい。 わたしです
穂波:わあ……美味しそうですね
一歌:宵崎さん、ラーメンが好きなんですか?
奏:うん、手軽に食べられて美味しいし
穂波:おうちにもカップラーメンがありますもんね。 でも、ラーメンばかり食べていると 栄養が偏っちゃいますよ?
奏:大丈夫。望月さんが作ってくれたお惣菜がある時は そっちを優先して食べてるから
穂波:それならいいですけど……
まふゆ:ふふ、奏は曲作りに熱中しすぎて 不規則な生活をしてるんじゃないかって思ってたけど
まふゆ:望月さんがいるなら、大丈夫そうだね
一歌:穂波は面倒見がいいですから
一歌:そういえば、おふたりは このお店によく来るんですか?
まふゆ:奏と一緒にやってる音楽サークルでの打ち上げで、たまにね
一歌:音楽サークル……
穂波:宵崎さんと一緒にってことは…… もしかして、朝比奈先輩も曲を作ってるんですか?
まふゆ:うん、言ってなかったっけ
一歌:初めて知りました。 そうだったんだ、すごい……!
一歌:あの! 朝比奈先輩から教えてもらった動画、見ました。 マリオネットの……!
一歌:曲も歌詞も、心の奥にある想いを訴えるような感じで、 すごく胸にグッときました
一歌:イラストとMVも、世界観がすごくて……。 あの動画、おふたりが作ってるんですよね?
奏:わたし達と、イラスト担当の子と動画担当の子。 4人で作ってるよ
穂波:そうだったんですね。 わたしも見たんですけど、すごく素敵でした
まふゆ:ふふ、ありがとう
奏:星乃さん達もバンドやってるんだよね
一歌:あ、はい……! まだ数回、ライブをやっただけなんですけど
穂波:でも一歌ちゃん、すごくうまくなってるよね
穂波:このあいだ、バーチャル・シンガーの ファンフェスタがあったんですけど、 それにソロで出ていたんですよ
奏:え……そうなの?
まふゆ:ファンフェスタなら、私達もサークルのみんなと 見に行ったよね
一歌:ほ、本当ですか?
穂波:じゃあ、一歌ちゃんの歌も 聴いていたのかもしれませんね
一歌:う、うん。ちょっと恥ずかしいな……
奏:ちなみに、どんな歌を歌ったの?
一歌:ええと、バンドサウンドなんですけど…… あっ、この曲です
奏:——ああ、わかった。 あの曲を歌ったのが星乃さんだったんだ
一歌:えっ、曲を聴いただけでわかるんですか!?
奏:うん、いい歌だなって印象に残ってたから
奏:でも……あれ? もしかして……
一歌:どうしたんですか?
奏:もしかして星乃さん、春に乃々木公園で歌ってた?
一歌:え? たしかに歌ってましたけど、どうしてそれを……
奏:実は、春に乃々木公園の前を通りかかった時に ミクの曲を歌ってる女の子の声を聴いたんだ
奏:すごくいい歌声だったから耳に残ってたの。 ……そっか、星乃さんだったんだ
一歌:あ、もしかして——
一歌:——! ————!
奏:…………
一歌:あの時、聴いてくれていたのって宵崎さんだったんですね!
奏:うん、多分そう
奏:星乃さんの歌、すごく素敵だったよ
一歌:あ、ありがとうございます……。 ちょっと照れるな
奏:でも春に聴いた時と、ファンフェスタで聴いた歌声は 少し歌いかたが違ったような気がしたんだよね
一歌:え? そうですか?
穂波:一歌ちゃん、すごく練習頑張ってたから。 それで歌いかたが少し変わってたんだと思います
奏:そうなんだ。 星乃さんは頑張り屋さんなんだね
一歌:いえ、そんな……。 私は自分にできることをやってるだけです
一歌:あ、でも……。 誰かの心に響く歌を歌いたいなとは思ってます
奏:心に、響く歌を……
一歌:はい。 もちろん、今はまだまだですけれど……
一歌:でも、いつかたくさんの人の心を動かすような演奏と 歌を歌いたいと思っているんです
奏:——そっか。 素敵な夢だね
奏:わたしも、そんな曲を作りたいって思ってるんだ
まふゆ:…………

第 7 话:曲にこめる想い

ファミリーレストラン
一歌:あの、宵崎さんの作ってる曲の話も聞かせてほしいです!
奏:わたしの……。 いいけど、何が聞きたいの?
一歌:ええと、どんな感じで作曲してるのか、とか……
奏:どんな感じ……。難しいな
奏:基本的には、浮かんできたメロディーを 楽譜に書き起こしてることが多いかな
奏:ひととおりメロディーができたら、実際に打ちこんで 合う楽器を入れて、あとは調整……って流れで作ってるよ
一歌:なるほど……
穂波:あの、もっと具体的に、作るコツとかは……?
奏:え……? えっと……
まふゆ:ごめんね、多分奏はそういうの意識して 作ってないんだと思う
奏:う、うん……。 ごめん、どう説明すればいいのかわからない
穂波:そうなんですね……
一歌:あ、じゃあ……メロディーって、 どういうきっかけで思い浮かぶんですか?
奏:きっかけは特にないかな。 もちろん、インスピレーションがないと作れないけど……
奏:——あ、でも……
奏:昔の思い出だったり、誰かの言葉だったり……。 そういうものがあるといい曲ができるかも
奏:わたしだったら、そうだな。 例えば——誰かに笑顔になってほしい、って想いとか
まふゆ:……奏……
一歌:誰かに、笑顔になってほしい……?
奏:うん。さっき星乃さんも言ってたでしょ。 誰かの心に響く歌を、って
奏:そんな感じに近いのかな
一歌:あ……
一歌:そっか、それでいいんですよね……
一歌:なんだか、ちょっとだけわかった気がします
奏:……そっか
穂波:でも、ちょっとびっくりしました。 宵崎さんが曲を作っているのは知ってましたけど、 改めてすごいなというか……
一歌:あと歌詞も……! すごく、ぐっときました。 詞も宵崎さんが作ってるんですか?
奏:あ、詞は……
まふゆ:私が書いてるよ
一歌:えっ!? そうなんですか!?
穂波:朝比奈先輩が歌詞を書いてたんですね……!
奏:うん。 まふゆの詞はいいなって思ってたから。 作詞はまふゆに頼んでる
まふゆ:ふふ、奏にそう言われると照れるな
まふゆ:でも、いい詞が書けるのは奏の曲がいいからだよ。 私は奏の曲の世界観に合わせて作ってるだけだから
まふゆ:だから、そこまで大したものは書いてないと思う
穂波:でも……この歌詞からは朝比奈先輩の想いが 伝わってきます
まふゆ:え?
一歌:私もそう思います!
一歌:宵崎さんの曲に合ってるのはもちろんなんですけど、 朝比奈先輩の想いも伝わってきます
一歌:言葉にするのは難しいんですけれど……。 でも、すごく響く詞だと思います!
まふゆ:私の想いが……?
まふゆ:……そっか。そんなこと言われたの、初めてだな。 ふふ、ありがとう
まふゆ:(……私の想い、か)
まふゆ:(昔、OWNとして作ってた時は違った)
コメント:『OWNの曲聴くと、どこかに引きずりこまれそうな気分になる』
コメント:『この曲作ったヤツ、どうかしてるだろ。 どこの誰なんだ?』
コメント:『聴いてると、このまま消えたくなる。 でも、何度も聴きたくなるから不思議』
まふゆ:(あの時は、届けたい想いも、 聴いてほしい気持ちもなかった)
まふゆ:(ただ、自分を見つけたくて ひたすら自分の感情を吐きだすだけだった)
まふゆ:(今だって、自分の想いなんてない。 奏の曲を聴いて、それに合う歌詞を作っているだけ。 ……そう思ってた)
まふゆ:(でも……奏の曲を聴いて笑えた時、 自分の想いを詞に残したいって思えた)
まふゆ:(誰にも聴いてもらえないよりは、 誰かに聴いてもらえたらいいって——)
まふゆ:…………
まふゆ:(まだ、はっきりとはわからないけれど……)
まふゆ:(……私は、歌詞に何かをこめられているのかな)

第 8 话:冷たい雪はあたたかく溶けて

スクランブル交差点
一歌:あの、今日は本当にありがとうございました!
穂波:わたしからもお礼を言わせてください。 すごく勉強になりましたし、とても楽しかったです
奏:わたしも。こうやって話すことってなかったから すごく新鮮だった
まふゆ:ふふ、私も学校ではできない話ができて楽しかったよ。 奏がサークル以外の人と音楽の話をしてるのを見るのは ちょっとおもしろかったしね
奏:そうかな……
一歌:あ……えっと、宵崎さん
奏:どうしたの?
一歌:もし、宵崎さんがよかったらなんですけど…… またこうやって会ってもらえませんか?
奏:え……
一歌:曲の話とか、すごく楽しかったです。 私は作曲も作詞もまだまだですけど……、 またいろいろと聞かせてもらいたいなって
奏:……うん、いいよ
奏:むしろ、わたしからもお願いしたいな。 サークル以外でこうして話すことってあまりないから。 これからもいろいろ話せたら嬉しい
一歌:あ……ありがとうございます!
奏:そうだ。貸してくれたCD、どれもいい曲だった。 ……ありがとう
一歌:よかったです……!
一歌:あ、でも、えっと……
奏:どうしたの?
一歌:中に入ってたルーズリーフ、なんですけど……
奏:ああ、うん。星乃さんの書いた詞だよね。 それも良かったよ
一歌:あっ……! や、やっぱり見られてたんですね……
奏:え? あ……
まふゆ:ごめんね、星乃さん! 私達と同じく曲作りしてる人って周りにいないから、 つい見ちゃって……
穂波:あ……。宵崎さんが言ってた、 一歌ちゃんにとって大切なものって……
奏:う、うん……
奏:勝手に見ちゃって本当にごめん。 でも、すごくまっすぐな歌詞だったよ。 星乃さんの想いが伝わってきた
まふゆ:うん、私もそう思う
まふゆ:私は星乃さんみたいな、まっすぐな詞は書けないから
一歌:朝比奈先輩……
まふゆ:よかったら、また見せてほしいな
一歌:は、はい……! ありがとうございます
奏:うん
奏:…………あれ?
穂波:わあ、雪が……
一歌:綺麗だね……
まふゆ:ふふ、今年初めての雪だね
穂波:今日、一段と寒いですもんね。 風邪をひく前に帰りましょうか
一歌:そうだね。 それじゃあ、宵崎さん、朝比奈先輩。 今日はありがとうございました
奏:うん。またね
奏:(……楽しかったな……)
奏:(なんだかこの感じ……懐かしい)
奏:わたし達も帰ろうか
まふゆ:そうだね
センター街
まふゆ:(……結局、“答え”は見つからなかったな。 奏と一緒にいれば、何かわかるかもしれないと思ったのに)
奏:……まふゆ
まふゆ:……何?
奏:わたし……今日、星乃さん達に会えてよかったと思う
奏:だから、まふゆにお礼を言いたいんだ
まふゆ:……? どうして私にお礼を言うの?
まふゆ:星乃さんと会えたのは望月さんが約束してくれたからで、 私は何もしてない
奏:たしかに、今日の約束は望月さんのおかげだと思う
奏:でも、まふゆがわたしのことを星乃さんに話してくれたから、 きっと今日、星乃さんと出会えたんだと思う
奏:だから、星乃さんと出会うきっかけをくれたのは まふゆなんだよ
まふゆ:…………
奏:それに……今日、星乃さんと話してて、 小さい時のことを思いだしたんだ
まふゆ:小さい時のこと?
奏:友達と遊ぶのが、すごく楽しかった思い出
奏:……ずっと、忘れてた
奏:たくさんの人を救えるような曲を作らないといけないって、 そればかり考えてた
奏:でも、今日、星乃さん達と話して、 純粋に楽しいって思えた
奏:……そう思えたのは、星乃さんと会わせてくれた まふゆのおかげだよ
奏:……だから、ありがとう
まふゆ:…………
まふゆ:(また、胸が——)
奏:まふゆ?
まふゆ:…………奏が……
まふゆ:奏が、嬉しいのなら——よかった
奏:……うん。ありがとう
奏:それじゃあ、わたしはこっちだから。 まふゆ、風邪をひかないように気をつけてね
まふゆ:わかった。 それじゃあ、また夜に
奏:うん。また、ナイトコードで
まふゆ:……ありがとう、か
まふゆ:(私はただ、星乃さんに奏の話をして、 奏に星乃さんのCDを渡しただけ)
まふゆ:(……たったそれだけ。 だけど、奏の助けになれた)
まふゆ:…………
まふゆ:(それだけで、胸があたたかくなる)
まふゆ:(……どうしてだろう。 よくわからないけど、でも、この感覚は……)
まふゆ:——悪い感覚ではない、かな