活动剧情
Same Dreams,Same Colors
活动ID:44
第 1 话:自由な歌声
ストリートのセカイ
こはね:♪————!!
こはね:……やった! 今度は最後まで声量落とさずにいけたよ!
冬弥:ああ、とてもいい出来だった。 じゃあ次は——
杏:……はい! 次は私が歌う!
冬弥:ああ、始めてくれ
杏:……♪————! ————!!
杏:♪————!!
彰人:へえ、前より勢い出てるじゃねえか
こはね:うん! 杏ちゃん、かっこいい!
杏:ふふ、でしょー? 昨日ストリートで何度も練習したからね!
彰人:それじゃ、次はオレだな。 いくぞ!
彰人:♪————!!
冬弥:(小豆沢が大河さんと練習を始めるようになってから、 白石の様子が少しおかしいように見えたが……)
冬弥:(なんとか調子を取り戻せたようだな。 おかげで全員、いい雰囲気になっている)
冬弥:(この雰囲気を維持するために、 俺も、何かできるといいが——)
冬弥:(……そうだ。先日発声に関する本を買ったことだし、 その内容を共有するのもいいかもしれないな)
冬弥:(俺は、俺の持つ知識でチームに貢献していくとしよう)
杏:ん~、今日もよく歌ったね!
こはね:うん! いっぱい歌ったから、ポカポカするね
杏:だね~。 それにしても、こっちのセカイがあってよかったな。 いつもの公園は雨で使えなかったし
彰人:あんな寒くて雨降ってる中練習したら、 一発で風邪ひくしな
こはね:あ、でも、大河さんは、 雨が降ってても練習してたみたいだよ
彰人:は? マジかよ
こはね:うん。 心頭滅却すれば、雨もまた熱し、って
杏:あはは、雨降っても普段どおりに練習するなんて、 おじさんっぽいなぁ
杏:……っていうか、まさかこはねにまで やらせてないよね!? 体、壊しちゃうよ!?
こはね:あ、そういうのは全然ないよ!
こはね:大河さんは風邪をひいたことがないから 雨でも気にしなかっただけみたいで、 他の人にはすすめないって言ってたし!
こはね:まぁ……大河さんとの練習は、 ちょっと不思議な練習が多いけど
冬弥:不思議な練習?
こはね:えっとね、いろんな曲を聴いて、 感想を言ったりするの
彰人:感想?
こはね:うん。演奏が上手とか、サビが好きとか、 そういう感想じゃなくって……
こはね:ひまわり畑に来てるみたい、とか 海で夕焼けを見てる時みたい、とか。 そういう風に、感じたことを別のものに例えたりするの
杏:んー? それってなんの役に立つんだろ……?
彰人:感性を磨く……ってことか? いまいち考えてることが読めねえな、あの人は
こはね:あはは……。 練習らしい練習じゃないかもだけど……
こはね:でも、きっと何か意味があると思うから。 勉強したことを持って帰れるように頑張るね!
杏:——うん! 期待してるよ、こはね!
冬弥:さて、このあとだが——
冬弥:当初の予定どおり、新しく俺達のレパートリーに入れる曲を 探す流れで問題ないか?
杏:うん! いくつか曲選んできたから、 メイコさんのカフェで聴かせてもらお!
こはね:うんっ! ……あれ?
彰人:どうした?
こはね:あそこでキョロキョロしてる人、もしかして……
彰人:ん? ……あ!
杏:ルカさん!?
ルカ:え? ……あーっ! 杏ちゃん達だ! ひさしぶり~♪
ルカ:会えて嬉しいな!
冬弥:あれから、どちらにいたんですか? カフェでは見かけませんでしたが……
ルカ:あはは、このセカイを見てまわってたら だんだん楽しくなっちゃってさ
ルカ:それでブラブラしてたら、 みんなと入れ違っちゃってたんだよね~
杏:あはは! なんかルカさんらしいなぁ
こはね:ふふっ、これからよろしくお願いします。 また一緒に歌えたら嬉しいです!
ルカ:お、いいね! じゃあ、早速歌っちゃおうよ!
こはね:えっ? いいんですか?
ルカ:もちろんだよ! 久しぶりの再会を祝してね。 彰人くんと冬弥くんもどう?
冬弥:はい。せっかく再会できたことですし、ぜひ
彰人:ま、そうっすね。 挨拶代わりに1曲ってのも悪くねえ
ルカ:ありがとう! それじゃあ、みんなで歌っちゃおう!
彰人:んじゃ、カウントをとるぞ。 ワン、ツー、スリー、フォー……
ルカ:♪————
こはね・杏:『♪————』
冬弥:(……ルカさんの歌は、とても豊かな感じがするな)
冬弥:(自由に歌っているように聴こえて、 相手に合わせる柔軟さがある)
冬弥:(余裕がある、という感じだろうか。 こういった歌を俺も歌えるといいな)
ルカ:んーっ! 思いっきり歌ったー!
杏:はー、気持ちよかった! はい、ルカさん! ハイタッチ!
ルカ:イェイ! ふふ、相変わらずいい歌いっぷりだね
ルカ:っていうか、みんな前よりもずいぶん成長してない? 声がよくとおるようになってたよ!
こはね:本当ですか?
彰人:わかるくらい上達してるってんなら、 練習の成果は出てるみたいだな
冬弥:そうだな。 この調子で、着実に力をつけていこう
杏:——あ、そうだ!
杏:ねえみんな! 私達のレパートリーに入れる新しい曲、 ルカさんにも一緒に選んでもらおうよ!
ルカ:新しい曲?
杏:うん。今までやったことないような曲にも チャレンジしてみたいなって思ってさ。 みんなで、いくつか曲の候補を持ってきたんだよね
杏:だから、ルカさんにも意見をもらえたらって思ったの!
こはね:うん、そうだね。 ルカさん、お願いします……!
ルカ:そういうことなら喜んで! じゃあ、行こうか!
杏・こはね:『はい!』
第 2 话:見えない景色
crase cafe
こはね:——これで、持ってきた曲は全部聴けたね!
彰人:それじゃ、今聴いたものの中から候補絞っていくか。 つっても——
ルカ:4人の中では、もうどれがいいのか決まってるみたいだね
ミク:聴いてる時から、みんな顔つきが違ったしね
冬弥:そうだな。 やはり、白石が持ってきてくれた曲がいいだろう
こはね:うん、私もあの曲を歌ってみたい。 いつもの雰囲気とは違うけど、 オシャレでかっこいい曲だよね!
杏:本当!? やったー!!
彰人:全員異議なしだな。 それじゃ早速パート分けして歌ってみるか
冬弥:ああ。 何回か聴いたら頭からやってみるとしよう
こはね・杏:『うん!』
MEIKO:にしても……カイト並みにフラフラしてるルカが うちに顔を出すなんて思わなかったわ
ルカ:みんな私がいなかったから、寂しかったでしょ?
ミク:いや、別に?
ルカ:またまた~! 寂しかったくせに~♪
MEIKO:そういうところ、ルカらしいわねえ
ルカ:でも、みんなが新しい曲を決める日に来られてよかったな。 どんな風に練習してるのか、頭から見られるし
冬弥:……俺のパートだと、 このあたりが難所になりそうだな
冬弥:♪————……
杏:お! いい感じじゃん! 音程難しいところなのに、バッチリだね!
冬弥:そうか、よかった
こはね:あ、でも——
こはね:このパートは、もっとクリアな雰囲気が出たら すごく良くなりそうだなって思ったよ
冬弥:クリアな雰囲気……?
こはね:あ。大河さんと練習してる時に、 似たような曲があって——
こはね:その歌いかたが透きとおってて、とっても綺麗だったんだ
彰人:それって、どんな感じなんだ?
こはね:うーんと……あの感じ、どう言えばいいんだろう……
こはね:あ! そうだ!
こはね:静かな森の中にいるみたいな感じ——かな
冬弥:森……
こはね:うん。森って、鳥の鳴き声とか葉っぱが擦れあう音とか、 いろいろな音がしてるけど、 落ち着いてて、静かだって感じるでしょ?
こはね:ああいう感じが出せたら、 素敵なんじゃないかな……って
杏:うん、その感じならわかるな! あのシーンとしてるけど綺麗な雰囲気だよね
彰人:ああ、言いたいことはなんとなくわかった
こはね:……! よかった、わかってもらえて
冬弥:…………
杏:でも、こはねがこういうことを言い出すなんて思わなかった。 なんか、すっごく成長してるって感じする!
彰人:ああ、大河さんはこういう感覚的なもんを養うために こはねにいろんな曲を聴く練習をさせたのかもしれねえな
彰人:つっても、イメージがわかったところで、 歌に反映するのはかなり難しいだろうが……
こはね:あ、そうだよね。 どうやって歌えば、ああいう感じになるのかな……
冬弥:…………すまない、みんな。 話の腰を折ってしまうことになるんだが……
こはね:……青柳くん?
冬弥:森の雰囲気がどんなものなのか、 実は、よくわからない
杏:へっ?
冬弥:テレビなどで見たことはあるんだが、 その空気感までは……
杏:あーそういうこと? ほら、遠足でちょっと遠くの山とか行くじゃん? あの時の、自然に囲まれて静かだなーって思う感じみたいな……
彰人:おい、杏
杏:え?
冬弥:……すまない。俺はピアノとバイオリンのこともあって、 手に怪我をする危険性があることは止められていたんだ
冬弥:学校行事も同じで、運動会や遠足も、 参加させてもらえなかった
杏:あ……! そういえば前にも 少し話してくれてたよね……
こはね:ご、ごめんなさい青柳くん! 私全然気がつかなくって……
冬弥:いや、気にしないでくれ。 昔のことだ
冬弥:……しかし、申し訳ないな。 俺の経験不足のせいで、支障が出てしまった
冬弥:俺が森に行ったことがあれば、小豆沢の言っている 『静かな森の雰囲気』がわかって、 ちゃんとイメージの共有もできたんだろうが……
ルカ:…………
彰人:ま、経験してないもんはしょうがねえだろ。 想像でカバーしていけばいい
冬弥:それはそうかもしれないが……
ルカ:んー、いっそ森に行っちゃえばいいんじゃない?
冬弥:え?
ルカ:体験したことないなら、しちゃえばいいってことだよ! それが一番早いでしょ?
ルカ:もちろん想像するのもアリだけど、雪を見たことがない人に、 『雪は冷たくて白いです。想像してみて』って言っても、 あんまりピンとこないしね~
ルカ:それに、いろんな経験してると、 その分歌もいい感じになるし!
MEIKO:いい感じって……ざっくりしてるわねえ
杏:んー……でも、それはたしかにあるかも
杏:人生経験って、結構歌に出るよね。 父さん見てるとそう思うな
冬弥:(……そういえば……)
ルカ:♪————
冬弥:(……ルカさんの歌が豊かに聴こえたのは、 ルカさん自身が、いろいろな場所を 巡っているからかもしれないな)
ミク:うん、私もルカに賛成かな
MEIKO:そうね。経験できることなら、なんでも経験しておいたほうが いいかもしれないわね
彰人:まあ、それはそうかもしれないっすけど……
杏:でもこはねの言う森って、この辺りにあるような森じゃなくて 本当に静かで誰もいないようなところでしょ? そんな場所、急に行けるかっていうと……
冬弥:(……たしかに、ルカさんの言うことは正しい)
冬弥:(俺は、自分の知識でチームに貢献できればいいと思っていたが、 知識だけではどうにもできないことはたくさんある)
冬弥:(今が、新しい挑戦をするべき時なのかもしれないな)
冬弥:……ありがとうございます。 ルカさんの言うとおりだと思います
冬弥:俺は、音楽以外の経験がとても少ない。 その分音楽知識でカバーを……と思っていましたが、 今回のようなことは、そうもいきません
冬弥:なのでそういった部分を補って、 チームとして成長していくためにも——
冬弥:近々、森に行ってみようと思います
彰人:————は?
第 3 话:成長のために
翌日
神山高校 1年B組
冬弥:(チームでのイメージ共有を円滑にするために、 森に行こうと決めたのはよかったが——)
冬弥:(日本の国土は約7割が森林に覆われている。 果たしてどこの森に行ったものか……)
冬弥:(よし。昼休みに図書室で調べてみよう)
昼休み
彰人:おーい冬弥。 昼飯食うぞ……って
彰人:おい、弁当も持たずにどこ行くつもりだ?
冬弥:図書室だ。 どこの森ならばちょうどいい森らしさを感じられるか、 調べてみようと思う
冬弥:なのですまないが、 今日の昼は別々ということにさせてくれ
彰人:お、おう……
彰人:それなんだが……。 別に無理に行かなくてもいいんだぞ?
彰人:絶対に行かなきゃいけないってわけでもねえだろ。 なんなら大河さんに言って、こはねが聴いたって曲を 教えてもらうだけでも——
冬弥:いや、せっかくの機会だ。 チームのためにできることは、すべてしておきたい
冬弥:それに、今回はそれで解決したとしても 今後同じようなことがないとも限らないからな。 なんらかの解決方法は模索しておきたい
冬弥:だから練習に支障のない範囲で行こうと思う。 ……駄目だろうか?
彰人:別に止めはしねえけどよ。 つーかお前、そもそも一人旅したことあるのか?
冬弥:いや、ない。 中学までは家族で毎年ウィーン音楽祭に行っていたが、 単独行動は許されていなかった
冬弥:できることといえば……ホテルの窓から街や 星空を眺めることぐらいだったな
冬弥:コンクールで遠出をする時も 母さんの車で送り迎えをしてもらっていたものだ
彰人:改めて聞くとすげえ家だな……
冬弥:ああ……。 周囲に比べると特殊な環境で生活していた ということは理解している
冬弥:俺は……普通に生きていれば経験できることを、 まるで経験できていない
冬弥:だからこそ今、しっかり経験を積んでおきたいんだ
彰人:……そういうことなら好きにしたらいいんじゃねえか
冬弥:ありがとう、彰人。 それじゃあ、図書室に行ってくる
彰人:(こうなったらテコでも動かねえだろうな。 やると決めたら、とことんやるヤツだし)
杏:あ、彰人じゃん! 今日も冬弥とお昼?
彰人:そうしようかと思ったんだが、 冬弥は森を調べるっつって図書室に行った
杏:え? あれ、やっぱ本当に行く気なんだ!
杏:まあ、本人が行きたいって言ってるなら 別にいいと思うけど……
杏:森って場所によっては結構危ないし、 今の時期雪が降ったりするから、ちょっと心配だよね
彰人:冬弥のことだから、そこは下調べしてから 行くとは思うが——
彰人:場所によっちゃ、行ってみないと 危ないかどうかわからねえ場所もあるからな
杏:んー……
杏:あ、それなら、こういうのはどう?
彰人:——ん?
翌日
冬弥:(く……悩むな)
冬弥:(世界自然遺産にも登録されている白神山地や屋久島は、 人の手があまり入っていないこともあって実に森らしい。 理想的な森と言ってもいい)
冬弥:(だが……どちらも遠すぎる。 行って帰るだけで相当な時間がかかってしまいそうだ)
冬弥:(かといって、近郊の山や森は観光地化していて人が多い。 静かな森を体験するなら、もう少し別の……)
杏:あ、冬弥ー! ちょっとお邪魔するよ!
彰人:中休みに悪いな
冬弥:白石、彰人。 そろってどうしたんだ?
杏:ねえ、森に行くって言ってたけど、 どこの森に行くか決めた?
冬弥:いや、まだだ。 適切な場所が見つからなくてな
杏:よかったー! それじゃ提案なんだけどさ
杏:せっかくだし、みんなで森に行かない?
冬弥:みんなで?
彰人:お前、チームとして成長したいから、 森に行きたいって言ってただろ
彰人:だけどな、オレ達が知ってる森だって、 全員同じ場所を想像してるってわけじゃないかもしれねえ
彰人:チームでイメージを合わせんなら、 オレ達全員で行ったほうが効率いいだろ
冬弥:それは……そうかもしれないが
冬弥:しかし、俺のために、 みんなの練習時間を奪うことになるんじゃ……
杏:そんなことないって! みんなで行ったほうがいい勉強になるよ!
杏:それに、みんなで行ったら、冬弥ひとりで行くより いろーんな経験できちゃうかもよ?
冬弥:いろんな経験?
杏:そ! キャンプとかね!
冬弥:キャンプか……たしかにやったことはないな
冬弥:テントを張ったり、飯ごうで米を炊いたりといったことを するというのは知っているが……
杏:じゃあ森に行くついでに、キャンプも経験しちゃおうよ!
杏:場所は、彰人がいいところ知ってるんだってさ
冬弥:彰人が?
彰人:昔、うちの親父が静かなところで絵が描きてえっつって、 家族でキャンプ場に行ったんだが、 その近くにそこそこ大きな森があったんだ
彰人:そこなら、電車とバスを乗り継いだら2時間ぐらいで 行けるんじゃねえか
冬弥:そんな場所があるのか……!
杏:それに、うちは昔よくキャンプ行ってたから、 テントとかアウトドアグッズもいっぱいあるんだ
杏:せっかくだからみんなでキャンプ場に1泊して、 森とキャンプを楽しんじゃおうよ! その経験も、きっと歌に活かせると思うしさ
冬弥:1泊……泊まりがけで行くのか?
杏:うん! 行って帰ってじゃのんびりできないしね。 昨日こはねにも行けないか聞いてみたら、オッケーだって!
冬弥:小豆沢もいいと言ってくれたのか
彰人:らしいぞ。あの過保護そうな親父じゃ難しいかと思ったが、 こはねが頭を下げたらOK出したらしい
杏:うん、歌のための合宿だって説得したら、 あの子達と一緒なら~って言ってくれたんだって!
杏:ちゃんと挨拶しといてよかったね!
冬弥:……そうか。 すまない。俺につきあわせるような 真似をさせてしまって
彰人:……おい、さっきも言ったが、 これはお前のためだけじゃねえぞ
彰人:チームでいいパフォーマンスするために できる限りのことがしたいってのは オレ達も同じだからな
冬弥:……そうか
冬弥:全員で行くことでチームとして成長できるのなら—— それが一番かもしれないな
冬弥:ありがとう。白石、彰人。 よろしく頼む
第 4 话:胸の高鳴る夜
翌日 放課後
アウトドアショップ
冬弥:……大きなアウトドアショップだな
彰人:専門店だからな。 お、川下り用のカヤックまで置いてあるぞ
冬弥:川下りか。 それもおもしろそうだ
彰人:……さすがにカヤックは買わねえからな?
杏:えーっと、中央エスカレーターの前に来てって言ったから、 この辺に来てるはずだけど……
こはね:杏ちゃーん! こっちだよー!
杏:あ、こはね、おまたせー! 結構待たせちゃったね、ごめん
こはね:ううん、大丈夫! みんなでお買い物するなんてあんまりないから、楽しみだな
彰人:そんじゃ、早速必要な物見ていくぞ。 まずは冬弥の寝袋だったか?
冬弥:ああ。 できれば機能性の高いものを——ん?
冬弥:ここにあるマットはなんのためのものなんだ?
杏:ああ、それは寝袋用のマットだよ。 父さんが買ってきてたから、うちにもあるんだ
冬弥:寝袋用のマット? テントと寝袋があればいいんじゃないのか?
杏:テントの中で寝るにしても、地面が冷たいと結構寒いでしょ? だから寝袋の下に敷くんだよ
冬弥:なるほど。 たしかにこの季節なら、あったほうがいいな
冬弥:ん? こっちの缶のようなものは……?
こはね:えっと……たしか、ガスカートリッジっていうんだっけ?
彰人:ああ、上にコンロつけるやつだろ。 山でもコーヒー飲んだりできるらしいな
冬弥:いれたてのコーヒーを飲めるのか……それはいいな。 自然の中で飲むコーヒーはまた一味違いそうだ
冬弥:しかし、買うつもりがないものも、見ていると欲しくなるな。 予算をオーバーしない範囲なら……
冬弥:ん? これは……説明書きがあるな。 なるほど、濡れた食器を干したり、 小物を仕分けたりするのに使えるのか
冬弥:こっちは、材料を入れてから転がすとアイスができるボール!? そんなものまであるのか……!
彰人:別にいいけど……。 全部見てるとキリがねえぞ
こはね:ふふっ、青柳くん興味津々だね
杏:こういうの見るのって結構楽しいもんね!
杏:あ、こはね! このランタン可愛くない? 私買っちゃおうかな~
こはね:こっちのクッションも可愛いよ! 本物の丸太そっくり!
彰人:おいお前ら、電車とバスで行くの忘れんじゃねえぞ。 持ってけるもんは限られてるからな
杏:はーい! お母さん!
彰人:誰がお母さんだ誰が……
彰人:お。このチェア、いいデザインだな
冬弥:この音叉のようなものは……バーベキューフォークか。 こっちは調理器具にもなるコップ……
冬弥:キャンプ用品には、こんなにもおもしろいものがあるんだな……!
冬弥の部屋
冬弥:……ふぅ
冬弥:(ついに明日はキャンプに行く日か。 朝も早いから、そろそろ寝なくてはな)
冬弥:(必要なものはすべてバックパックに入れたし、 目覚まし時計もかけた。あとは寝るだけだ)
冬弥:……………………
冬弥:(……眠れないな)
冬弥:(妙だな。 こんなにソワソワするのは初めてかもしれない)
冬弥:(大きなコンクールの前日も、 集中すれば眠れたんだが……)
冬弥:(今回は、いつもとは違う感覚だ)
冬弥:……ああ、そうか
冬弥:これが『遠足前に眠れない』という現象か
冬弥:……ふふ。 これも、いい経験だな
キャンプ当日
キャンプ場
冬弥:ここが——
冬弥:ここが、キャンプ場か……!
杏:到着ーっ!
こはね:わぁ……綺麗なところだね!
杏:うん! 他のお客さんもあんまりいないし、 本当に穴場のキャンプ場って感じだね
杏:いいところ教えてくれてありがと! 彰人!
彰人:おう。 ま、見つけたのは親父だけどな
こはね:時間が読めないバスに乗るからちょっと心配だったけど、 ちゃんと予定どおりの時間に着けてよかったね
彰人:だな。どっかの誰かみたいに、 寝坊で遅刻するヤツがいなかったのは何よりだ
杏:ふふっ! それじゃあ早速、テント張れる場所探そうか!
冬弥:ああ、行こう!
第 5 话:テントを張ろう!
キャンプ場
杏:あ、見て見て! あっちのほうに森があるよ!
冬弥:奥に広がっているのか。 なかなか深そうな森だな
こはね:どうしようか? 荷物を下ろして、先に森に行く?
杏:んー、まだお昼になったばっかりだし いろいろ準備して、落ち着いてから行くのがいいんじゃない?
杏:テント張って、火をおこして——。 ついでに夕飯の下ごしらえもしておいたら、 のんびり森をお散歩できそうだし!
こはね:うん、そうだね! いいと思うな
彰人:ま、そっちのほうがあとで楽そうだな
冬弥:では、テントを張るとするか
杏:じゃあ、この林のそばはどうかな? 冬だけど緑も多いし、いい感じだよ
彰人:そうだな。 んじゃ、その辺りにするか
冬弥:では、俺達用のテントはここに。 小豆沢達用のテントはその隣にするか
杏:オッケー! それじゃ、テントを張ろーう!
こはね:ええと……まずはテントを広げるんだよね
杏:……ポールって、こんなにたくさんあったっけ? とりあえず1本ずつとおしていけば大丈夫かな
こはね:あれ? 杏ちゃんの家のテントだから、 杏ちゃんは張ったことがあるのかと思ってたけど……
杏:あはは、うちの父さんこういうの得意で、 ひとりでちゃちゃっと張るから、 ちゃんとやったの小さい頃だけなんだよねー
杏:こはねはやったことあるの?
こはね:うん。小さい頃、地域のサマーキャンプっていうのに 行かせてもらったことがあって。 テント張りと火おこしなら、ちょっとだけできるよ
こはね:でも杏ちゃんちのテントは、その時のテントとは ちょっと違うから難しいかも……
杏:ん~。ま、とりあえずチャレンジしてみよう! やってみたらきっとなんとかなるよ!
こはね:うん!
彰人:よし。ポールはこれで全部だな。 冬弥、こいつを差しこんでくれ
冬弥:ああ。……ええと、こうやって……
冬弥:……! テントが立ち上がった
冬弥:すごいな……!
彰人:つっても、このままじゃ風が吹いたら飛んでいくからな。 次はペグで端を止めるぞ
冬弥:わかった。 この釘のようなものを打ちこめばいいんだな
彰人:おう。 ……隣のテントは手間取ってるみたいだから、 これが終わったら手伝いにいくか
冬弥:ああ。 ……ん? 急に風が強くなってきたな
彰人:……あ、やべえ!
冬弥:あ……! テントが浮いて……!
冬弥:まずい、このままでは彰人のお宅のテントが……!
冬弥:……うわっ!?
彰人:と、冬弥!? どうした!
冬弥:すまない、つまずいてしまった。 こういう場所は石が多いものなんだな……
彰人:おう、気をつけろよ
冬弥:はっ。それより、テントは!?
彰人:ああ、あっちの茂みに引っかかったみたいだな。 どうやら野宿しなくてすみそうだぞ
冬弥:そうか……よかった……
杏:ふたりとも、大丈夫!?
彰人:なんとかな。 つーか、お前らのほうこそ大丈夫か? 組み立てるのにめちゃくちゃ手間取ってるだろ
杏:う……えっと……
こはね:その、杏ちゃんの家のテント、ポールを差す順番が 決まってるらしいんだけど……
こはね:杏ちゃん、説明書を忘れてきちゃったみたいで、 今思い出してもらってるの
冬弥:記憶を頼りに組み立てるのか……難しそうだな
彰人:つーか、こいつがそんなの覚えてるわけねえだろ
杏:覚えてるってば! ちょっと今は忘れてるだけで……
彰人:だいたいこういうテントはタグに型番がついてるだろ。 そっからスマホで検索すりゃ、説明書が出てくるんじゃねえか
杏:あ、そっか! えーっと、タグは……
彰人:このタイプのテントならこの辺にタグがあるはずだ。 ……ほら、見てみろ
杏:お、見つけるの早いじゃん! 彰人、こういうの慣れてるタイプ?
彰人:お前らよりは慣れてるかもな。 つーか、このままやってると日が暮れるぞ
杏:わかってるんだけど、意外とテント張るの難しいんだよね。 料理なら絶対彰人よりできるのに!
彰人:お前なあ……
彰人:あ……そうだ。 んじゃ、担当を決めるか?
冬弥:担当?
彰人:リーダーみたいなもんを作って、 そいつ中心で動くんだよ
彰人:テント張るんだったらオレで、 料理なら料理が得意な杏、とかな
杏:じゃあこはねはさっき火をおこせるって言ってたから、 火おこし担当だね!
冬弥:なるほど。各々バラバラにやるよりは、 リーダーに指示を出してもらったほうが効率的だな
冬弥:しかし…………俺は、何の担当になれるだろうか
彰人:お前は今回見て習うほうだろ。 経験しに来たんだからな
冬弥:たしかにそうだな……
杏:落ちこむことないって! 一緒に頑張ろ!
彰人:それじゃ早速やるか。 冬弥、そっちのポールを今から言う順に並べてくれ
冬弥:わかった
彰人:杏とこはねはポールをとおす係だ。 終わったら全員で立ち上げるぞ
杏:オッケー!
こはね:うん!
杏:……できたー! っていうか、4人でやるとめちゃめちゃ早いね!
彰人:これならオレ達のテントもすぐにできるな。 よし、この調子でどんどんやるぞ
冬弥:ああ!
ストリートのセカイ
crase cafe
ルカ:ふわ~
ルカ:今日はヒマだなー。 せっかく来たのに、みんな外に歌いに行ってるなんて
MEIKO:あら。そんなにヒマなら、 食器洗いを手伝ってくれてもいいのよ?
ルカ:……んー、なんだか用事がある気がしてきたなー
MEIKO:はいはい。 もう、いつもこうなんだから
ルカ:あ……そうだ。 そういえば今日、冬弥くん達が キャンプに行く日だって言ってたっけ
ルカ:様子を見に行ってみようっと!
第 6 话:それぞれのできること
キャンプ場
こはね:じゃあ次は、夜ごはんのために 焚き火の火おこしの練習をしておこうか
こはね:本当はライターのほうが早いんだけど…… せっかくだし、マッチでやるね
彰人:おう。じゃ、薪になりそうな木を集めるか?
冬弥:たしか、よく乾いた木を選べばいいんだったな
杏:そうそう! さっそく探しに行こー!
冬弥:よし、大分集まったな。 次はどうすればいいんだ?
こはね:枝をサイズごとにわけていくんだよ。 それから、こうやって薪を組んでいって……
こはね:はい、できた。 青柳くん、火をつけてみる?
冬弥:いいのか?
こはね:うん。自分でやってみたほうが楽しいと思うから
こはね:燃えやすくて小さい枝のほうから火をつけて、 段々大きな枝にうつしていくんだよ
冬弥:……よし、小枝に火がついた。 次はこの枝にうつせばいいんだな
彰人:すぐ燃え終わるから気をつけろよ
冬弥:ああ。慎重に……ん?
冬弥:……火をうつそうとしたら消えてしまった。 なぜだろうか……
こはね:あ、ちょっと風が強いからかもしれないね
こはね:じゃあ、みんな、これくらいの—— グーくらいの大きさの石を集めてもらってもいい?
彰人:石?
杏:あ、そっか!
こはね:石でぐるっと囲んで……。 青柳くん、もう1回やってみて
冬弥:うまくできるだろうか。 ……小枝に火をつけて……
冬弥:……! 今度は火がうつっていった
こはね:石があると、強風を防げるんだよ
こはね:あとは、ふーふーって、 息を吹きかけると……
彰人:お、火が大きくなった。 うまいもんだな
こはね:えへへ……
冬弥:(なるほど。状況に合わせて臨機応変に 対応できるのは、経験者ならではだな。参考になる)
杏:それじゃ、次は私の番だね!
杏:キャンプといえばやっぱりバーベキュー! ってことで、食材を切って串をうっていこーう!
冬弥:ではまずは、野菜を洗って切っていけばいいんだな
彰人:……おい冬弥、包丁持ったことはあるのか?
冬弥:ない。調理実習でも主に玉ねぎの皮をむいたり、 何かをこねる係になっていた。 だから、今日が初の包丁になる
杏:ま、緊張しないでリラックスしてやれば大丈夫だよ。 見たところ、握りかたも間違ってないみたいだしね
杏:じゃあまずは、パプリカをお願いしようかな
冬弥:わかった。 どのくらいの大きさに切ればいい?
杏:んー、いつも適当に切ってるけど……。 串を打つから4等分くらいかな? 半分に切って、もう1回半分にすればいいから
冬弥:4等分……
彰人:いや、力入りすぎだろ
こはね:青柳くん、リラックスだよ……! 左手は猫の手にすれば、指を切らないからね
冬弥:く……この猫の手というものが難しいな……。 このまま食材をおさえるのは、なかなか……
冬弥:……切れた! 切れたぞ、白石!
杏:おー、バッチリじゃん! 冬弥、結構センスあるんじゃない?
杏:それじゃその調子でどんどん切っていこっか!
杏:あ、彰人、アルミホイルで器作ってくれる? 野菜の切れ端でアヒージョ作ろうと思うんだ
彰人:お、いいな。 ちょっと待ってろ
彰人:そういや、誰かチーズ持ってきてただろ。 あれもアルミホイルに突っこむとチーズフォンデュになるぞ
杏:お、ナイスアイディア! それやってみよーう!
杏:こはねは冬弥が切った野菜と肉を、 どんどん串で打ってくれる?
こはね:うん! あ……!
冬弥:……4等分に切る……4等分に切る……
こはね:青柳くん! 玉ねぎはそのまま切るとバラバラになっちゃうよ~!
冬弥:はぁ……なんとか夕飯の下ごしらえも終わったな
杏:うん! あとは火にかければオッケーだから、 夕飯の時間までのんびりできるよ!
杏:テント組み立ててる時は、全部終わるの夕方になっちゃうかも って思ってたけど、ちゃんと日の高いうちに 終わってよかったー!
こはね:これなら、ご飯の前にみんなで森に行けるね
彰人:だな。 じゃ行ってみるか
杏:——そういえば、もし迷ったら大変じゃない? 森ってスマホのGPS使えるんだっけ?
彰人:前に姉貴が山で大変な目に遭ったって聞いたから、 一応調べておいた
彰人:この辺りは電波も入るし、GPSもちゃんと使えるから 心配ねえよ
こはね:そっか! じゃあ安心だね! 火もいったん消して……っと。 ……よし、行こうか
冬弥:(……不思議な感覚だ)
冬弥:(俺は、小学校も中学校も、ろくに行事に参加できず、 いつも楽しそうなクラスメイト達を見ることしかできなかった)
冬弥:(だが今、こうやって、あの時できなかったことを 経験することができている)
冬弥:(とても——ありがたいことだな)
冬弥:(だが……)
???:『冬弥くーん!』
冬弥:……ん? 今の声は……
ルカ:『私、私。ルカさんだよ♪ どう? 森は満喫できてる?』
冬弥:ちょうど今から行くところです。 ですが……既にとても満喫しています
冬弥:みんなでテントを張ったり、火をおこしたり……。 今まで体験したことのないことを、たくさんできています
ルカ:『そっか! よかったね~!』
冬弥:はい。 …………
ルカ:『どうしたの?』
冬弥:あ、その……とても楽しいんですが
冬弥:本当に、俺は経験がなくて——、 何もできないんだと改めて思い知りました
冬弥:テントも張れないですし、火おこしも、 料理も十分にできなくて……
ルカ:『ふふ、何もできないなんてことはないと思うよ?』
ルカ:『どんな人にも、“その人だからできること”が あるものだからね』
冬弥:……そうなんでしょうか?
ルカ:『うん。歌ってる時も、横で見ててわかった』
ルカ:『音楽の知識と耳の良さを持ってる冬弥くんがいるから、 みんな安心して歌えてる』
ルカ:『今もきっと同じだよ。 まだ役に立つ方法がわからないだけで、 きっと冬弥くんにできることはあると思うんだ』
冬弥:……ありがとうございます、ルカさん
彰人の声:おい冬弥! 何ボーっとしてんだ?
冬弥:あ……すまない! 今ルカさんが……
ルカ:『ああ、私のことは気にしないで。 みんなで楽しんでおいでよ』
ルカ:『せっかくの初体験なんだからさ!』
冬弥:……はい。 ありがとうございます
第 7 话:俺だからできること
森の中
冬弥:……これが、森か
杏:実際に来てみて、どう?
冬弥:……そうだな
冬弥:小豆沢が『透きとおっている』と言った意味が よくわかった
冬弥:鳥の声や、近くにある小川のせせらぎや、 風の音がよく聴こえて
冬弥:とても——心が落ち着く
冬弥:……そうだな、この雰囲気を あのパートで表現するとすれば……
冬弥:♪——————……
冬弥:……こんな感じだろうか?
こはね:……すごい! 私の思ってた雰囲気とぴったりだよ、青柳くん!
冬弥:本当か? ならよかった
彰人:……たく、すぐに吸収しやがって
杏:私達も負けてられないね
冬弥:しかし、気持ちがいいな。 冬だからそこまで草木は生えていないと思ったが、 思いのほか緑が多い
杏:そうだね。 ——あ、これ、食べられる野草だよ
こはね:え? そうなの?
杏:うん。キクイモっていって根っこが美味しいんだ。 天ぷらにしたり茹でたりできるんだよ
こはね:そうなんだ……! 杏ちゃん、よく知ってるね
彰人:変な物食って腹壊すなよ
杏:もー、ちゃんと食べられるってば! あ、あっちのほうにもあるみたい。 ちょっと採っていってもいい?
こはね:じゃあ、私も手伝うよ
冬弥:俺も、やってみていいだろうか
彰人:……はぁ。 ま、いいか
杏:……よーし、いっぱい採れたね!
彰人:まさかこんなに採れるとはな。 食いきれるか?
杏:大丈夫、大丈夫! 4人いるし、火をとおせばちょうどいい量になると思うよ
杏:それじゃ、そろそろ帰ろっか。 えっと……あっちのほうから来たよね?
彰人:お前、あてずっぽうで進むんじゃねえぞ。 ちゃんとスマホのGPS見て……ん?
彰人:……圏外?
こはね:えっ?
彰人:マジかよ。 さっきまで電波入ってただろ
こはね:う、うん! さっきまでは弱いけど電波入ってたし、 大丈夫だったと思うけど……どうしたんだろう?
こはね:あ、GPSも動いてない……!
杏:え!? な、なんで!?
冬弥:……もしかすると、この天候か?
冬弥:聞きかじっただけだが、天候によっては、 電波もGPSも受信しづらくなると聞いたことがある
杏:あ! たしかにさっきから霧っぽいのが出始めてる!
こはね:ど、どうしよう……!
彰人:いったん落ち着け。 こういう時は慌てるのが一番よくないだろ
彰人:どうにかして、今の場所がわかればいいんだが……
冬弥:あ……! ポケット地図ならここにある。 念のために持ってきた
杏:本当!? えらい冬弥!
冬弥:だがこれだけでは、現在地まではわからないな……
冬弥:キャンプ場の場所がわかったら、 あとは方角を掴めれば戻れるんだが……。 コンパスを準備していなかった、すまない
こはね:ううん! 地図があるだけでも助かるよ!
冬弥:読んだ本では、来た方向の目処がついているならば 引き返して様子を見るのも手だと書いてあったが……。 どうする、彰人
彰人:……そうだな。 もしかしたら見覚えのある場所に出られるかもしれねえ
彰人:よし、少し戻って、知った景色がないか見て回るぞ
杏・こはね:『うん!』
こはね:あ……だんだん暗くなってきてる……
彰人:……まずいな。 暗くなると余計に、来た道がわからなくなる
彰人:これじゃいよいよ遭難だぞ
杏:えええ……!
杏:——ってダメダメ。 冷静にならなきゃ!
こはね:このままじゃ、野宿することになるのかな……
杏:野宿するにしても、一番心配なのは寒さだよね。 全員防寒はしてるけど、さすがにこのまま 夜を明かすのはキツそうだし
彰人:火はおこしておきたいが……。 さすがにマッチは置いてきてるよな
こはね:うん……。それに霧が出てるから、 枝が濡れちゃって多分つかないと思うの
杏:ん~……
冬弥:…………
冬弥:(……何か、この状況を打開できる方法はないだろうか)
ルカ:『どんな人にも、“その人だからできること”が あるものだからね』
冬弥:(今、俺にできることは——)
杏:あ——。 みんな、上見て!
こはね:あ、星が…………!
彰人:……すげえな。一面じゃねえか
冬弥:まさか、こんなに星が見えるとは……
冬弥:——とても、綺麗だな
こはね:……道に迷ってなかったら、 もっとちゃんと感動できたのにね……
杏:それは仕方ないよ。 今は、できることをしていこう、こはね
こはね:うん……
冬弥:…………。 ん……?
冬弥:(——そうだ! 星が見えるなら……!)
彰人:ん? どうした?
冬弥:(……見当たらない? なぜだ?)
冬弥:(そうか、今は冬だから木に邪魔をされて……。 なら——!)
こはね:えっ? 青柳くん?
杏:ちょ……どうしたの冬弥! 急に木に登って!
冬弥:すまない! 少し確認したいことがある!
彰人:木に登って何があるんだ!?
冬弥:つっ……!
冬弥:(木の皮が指に刺さる……!)
冬弥:(そのうえ霧で濡れているせいで、足も滑る……)
冬弥:(……木に登るのは、思った以上に難しいな)
冬弥:(本当に、俺は……何もしたことがない)
冬弥:(だが、今はそんなことはどうでもいい! これを登り切ればきっと——!)
冬弥:く……!
冬弥:……きっと、見えるはずだ!
冬弥:——みつけた。カシオペヤ座だ
冬弥:5つの星を2本の線で結んで、 そこから真ん中の星へまっすぐ線を伸ばす。 その線をさらに5つ分伸ばせば——
冬弥:あった! 北極星だ!
杏:え?
こはね:あ……そっか! 北極星が見えれば、北がわかるね!
冬弥:これで俺の持っている地図と照らしあわせれば、 キャンプ場に戻れるはずだ
杏:や……やったー! 冬弥、ありがとう!
彰人:……さすがだな。 助かった、冬弥
彰人:ところで冬弥、お前…… そんな高いとこまで登って大丈夫なのか?
冬弥:……何?
彰人:お前——高所恐怖症だろ
冬弥:……………………
こはね:あ……! 青柳くんが固まっちゃった!!
杏:ちょ……彰人! なんで気づかせちゃうわけ!?
彰人:は? オレのせいかよ!?
冬弥:……だ、大丈夫……だ……。 登れたなら……下りられる……はずだ……
こはね:あ、青柳くん、頑張って……!
杏:が、頑張れ冬弥~!
彰人:しっかりしろ冬弥! 一緒に帰るぞ!
冬弥:大丈夫だ……俺は……お、下りられる……
第 8 话:みんなで、同じ景色を
キャンプ場
杏:……よし! バーベキューとアヒージョ、できたよ~! チーズフォンデュもやってみてね!
こはね:わあ……! いい匂い!
杏:森に行く前に下ごしらえしててよかった! 温めるくらいですぐ食べられるし
杏:冬弥はもう大丈夫そう? 木から下りた途端、膝ガクガクになっちゃってたけど
冬弥:……すまない。迷惑をかけたな
彰人:気にすんな。 だいたい、お前がいなかったら戻ってこれなかったんだしな。 迷惑どころか大助かりだ
こはね:うん! ありがとう、青柳くん!
冬弥:……そうか
ルカ:『どんな人にも、“その人だからできること”が あるものだからね』
冬弥:……ルカさんの言うとおりだったようだな
ルカ:『——ん~? 私がどうかした~?』
冬弥:わっ……! ルカさん!?
杏:あっ、ルカさん! どうかしたんですか? 急に冬弥のスマホから出てきて
ルカ:『お邪魔してごめんねー! みんな、冬弥くん達がどんな様子かって 気になっちゃったみたいで』
こはね:みんなって—— あ、私のスマホ、光ってる
杏:あ、私達のも——
レン:『うわーすごい! これ全部冬弥達で作ったの!?』
リン:『いいないいな~!! わたしもバーベキューしたーい!』
KAITO:『わ! テントも張ってあるんだね! ここでゴロゴロできたら楽しいだろうな~!』
MEIKO:『ちょっと。みんなは歌のイメージを合わせるために 来てるんだから、あんまり邪魔しちゃダメよ?』
彰人:また突然出てきたな
ミク:『ごめんね。ルカが、“みんな楽しそうにキャンプしてる” って話をしたら、見に行きたいって言い出してさ』
杏:あはは! 私達は全然かまわないよ! せっかくだし、一緒に楽しんじゃお!
リン:『やった~!』
レン:『それにしても、バーベキューおいしそうだなぁ。 オレ達も食べたいなー……なんて』
MEIKO:『そうねえ。ここで一緒には食べられないけれど……。 お店に戻ったらテラスでバーベキューしてみる?』
レン:『本当!? やりたいやりたーい!』
KAITO:『やった~! ありがとうメイコ! いっぱい焼いちゃうぞー♪』
ルカ:『あはは! カイトってばはしゃぎすぎ~』
杏:じゃ、さっそく食べよっか! 最初の串は頑張った冬弥にあげる。 ガブっといっちゃって!
冬弥:……ガブっと? 串から外さないのか?
杏:それもいいけど、やっぱり外なら ガブっといくのが美味しいよ!
レン:『そうそう! ガブっとガブっと!』
冬弥:そうか、なら——
冬弥:……ああ。たしかに美味しい
冬弥:今まで食べたどんなものよりも美味しいかもしれない
杏:本当!? よかった~!
彰人:お、このアヒージョもうまいな
杏:あ、ちょっと勝手に食べないでよねー。 はい、こはねもどうぞ!
こはね:ありがとう、杏ちゃん! ……はふはふ……美味しい!
彰人:げ、この串、にんじん刺さってんじゃねえか
杏:ピーマンと並んでると彩りいいでしょ? ちゃんと食べてよねー
ミク:『ふふ。頑張れ、彰人』
彰人:う……クソ……
冬弥:…………
冬弥:——みんな、少しいいか?
杏:ん? 何?
冬弥:今ならいい歌を歌えそうな気がするんだ
冬弥:一緒に歌ってもらえないだろうか
こはね:もちろん、いいよ!
彰人:じゃ……あの新しい曲だな
杏:だね! あの曲のために来たんだし
ルカ:『おっ、それじゃ私達は、 成果を見せてもらおうかな?』
MEIKO:『そうね!』
冬弥:はい、ぜひ聴いていてください
冬弥:それじゃあ、いくぞ。 ワン、ツー、スリー、フォー——
冬弥:♪————
彰人:♪————
こはね・杏:『♪————』
リン:『わぁ……!!』
KAITO:『これは……いい歌だねぇ……』
杏:今……なんかいつもより合ってた気がしない?
こはね:うん、なんでだろう?
彰人:そこまで合わせ練習したわけでもねえのにな
冬弥:……ふふ。 予想が当たったな
彰人:予想?
冬弥:なんとなくだが……今日はいつも以上に、 全員の息が合っているような気がしたんだ
冬弥:いつもと違う形で力を合わせたからかもしれないな
こはね:いつもと違う……っていうと、 テントを張ったり、料理を作ったりしたから……?
彰人:本当に、そんなのが歌に関係するのか?
冬弥:わからない。 だが、実際にいつもよりも合っていただろう?
彰人:それは……たしかに、そうだな
杏:ふふっ、冬弥のおかげで、 私達もいい勉強になったね!
こはね:うん! 来てよかったね!
杏:そういえば、デザートにマシュマロ持ってきたんだ。 みんなで焼こう!
KAITO:『いいね! チョコソースもかけちゃおう!』
ルカ:『クッキーに挟んで食べるのもいいよねー』
ミク:『ふたりとも、食べる気満々だね』
こはね:ふふっ……
彰人:そういや、こはねはちょいちょい写真撮ってただろ。 どんなのが撮れたんだ?
MEIKO:『あら、写真も撮ってたのね! 私も見たいわ』
こはね:ええっと……はい! これはパプリカを切ってる青柳くんだよ
ミク:『これは……』
冬弥:……とても険しい顔だな
彰人:だな。眉間のシワがやべえ
杏:あ、ねえねえ、あとで集合写真撮ろうよ! こはねも映ってないと寂しいし!
冬弥:そうだな。 それから……小豆沢
冬弥:あとでそのデータをもらってもいいか? 写真を部屋に飾ろうと思う
彰人:わざわざ印刷すんのかよ。 マメだな
杏:じゃあ私はホーム画面にしよっかなー。 縦向きでも撮ってもらおうっと♪
こはね:ふふっ、じゃあ横向きと縦向きで撮っておくね
彰人:おい、そんなことよりマシュマロ焦げるぞ
杏:え? あ、焦げちゃう焦げちゃう!
レン:『わーっ! 燃え上がっちゃってるよ!』
KAITO:『ひぇ~っ!』
冬弥:……ははっ
冬弥:(テントを張って、火をおこして、料理をして、 森に行って、遭難をして、星を見て、木に登って——)
冬弥:(今日は、初めての体験ばかりだったな)
冬弥:(……昔は、どこにも行けないように感じていた)
冬弥:(部屋の中で、ひたすらに楽譜と向きあうことだけが、 俺のすべてなんだろうと感じていた)
冬弥:(だが——今は違う)
冬弥:(きっとこれからも俺は、 想像したこともないたくさんの経験をしていける)
冬弥:(——今日のことはきっと、生涯忘れないだろう)
冬弥:……ありがとう