活动剧情

まばゆい光のステージで

活动ID:55

第 1 话:いざ、音楽堂へ!

司の部屋
司:『どうして僕達が争わなくちゃいけないんだ!』
司:『父さん……お願いだ、僕は戦いたくないんだ!』
司:……よし、いい感じだな。 動画を再生してみよう
司:……う~む。どうも違うな。 せっかく類に翻訳してもらったというのに……
司:ライリードリームパークで見たショーは、 もっと——心に迫るものだった
王:『Come on, stab me in the heart!』
王子:『Dad...Please don't make me do this!』
司:(——なんという演技力だ……!)
司:これが、世界レベルのショーキャストなのか……
司:(あのショーは、主演の役者のみならず、 他の役者達も素晴らしい演技をしていた)
司:(オレも世界のスターを目指すのであれば、 あのショーの役者に匹敵するような、 さらに高い演技力を身につけていかねば……!)
司:よし、もう一度だ! スマホをセットして……
司:『どうして僕達が争わなくちゃいけないんだ!』
司:『父さん……お願いだ、僕は戦いたくないんだ!』
司:——どうだ!? 今のは名演だっただろう! 再生するぞ!
司:……………………
司:く~! 違うな! あの演技に比べると大雑把というか、そのくせ薄味というか……。 一体どうすればあの演技に近づけるんだ?
司:う~~~む、もう一度やるか!
司:『どーうして僕達が争わなくちゃいけないんだ~!』
咲希の声:もうお兄ちゃん、うるさいよー! リビングまですっごく響いてる!
司:どわっ!? す、すまん……
司:……はぁ。 どうにも思うようにいかんな……
司:こんな時は久々に——
翌日
ワンダーステージ
慶介:——さて、全員集まったところで、 次回の宣伝公演について説明をするとしよう
えむ:は~いっ! 今度はどこに行くのかな~っ♪
寧々:なんか、このやりとりも恒例になってきたな
類:フフ、毎回違う場所へ公演に行けるから、 この発表を聞くのがひとつの楽しみになってきたねぇ
司:それで、次は一体どこへ……?
慶介:セントラルシティ公園の 野外スペシャルステージに——
司:セントラルシティ公園の、スペシャルステージ!?
えむ:すーっごく大きな公園の、すーっごく大きなステージだよね! あたしも知ってるよ!
司:ああ、世に羽ばたいた多くのスターが 無名の時代にショーをしたという歴史ある場所……!
司:まさかあそこに立てるとは——
慶介:——に、しようかと考えたのだが……。 来週から老朽化による改装工事が行われるらしい
司:へ?
晶介:だから今回は、スペシャルステージの近くにある 音楽堂が会場だ
司:な……な……なんと……
寧々:そこまでがっかりしなくてもいいでしょ。 あそこの音楽堂なら結構な広さだし、いい会場なんだから
司:それはそうだが……期待が高まってしまっただけにな……。 くぅ……
類:音楽堂か……。 今までは屋外でばかりショーをやっていたから、 また新しい演出を試せそうだね
晶介:ああ、そういや今回は音楽堂にある物も 申請すれば貸してもらえるみたいだ
晶介:ほら、これがリストだ。 使いたい物があったら、交渉してみるのも手だぞ
類:ありがとうございます。 なるほど……楽器も一部貸し出してもらえるようだね
寧々:ま、場所と設備もわかったことだし、 いつもどおり何やるか考えてこ
えむ:おーっ!!
ワンダーランドのセカイ
司:では早速、次回の宣伝公演の演目を考えるぞ!
ミク:お~っ♪
MEIKO:音楽堂でショーをやるなんておもしろそうね! せっかくだし、ショーの中で演奏してみるのはどうかしら?
寧々:演奏……
えむ:だったらあたし、タンバリンがいいな! あとはマラカスでシャカシャカシャーってしたい!
司:だいたい想像どおりのチョイスだな……
リン:じゃあリンはカスタネット!
レン:ボクはリコーダー!
KAITO:ふふ、劇団というより楽団になりそうだね
寧々:わたし、楽器は学校で触ったやつくらいしかできないんだけど……
類:僕も、ショーのために自作の電子楽器を作ってみたことは あるけど……それくらいかな
寧々:十分すごくない……?
類:ふふ、ありがとう
類:そういえば、司くんはピアノが得意じゃなかったかい?
司:ああ、そうだ。 うちは母がピアノ講師で、小さい頃から習っていたからな
えむ:あっ、そういえば司くんのお母さん、 ピアノの先生なんだっけ!
司:ああ。母の勧めで小さなコンクールに出たこともあるぞ!
司:まあ、スターを目指すという目標を見つけてからは 趣味としてやる程度だったが……。 かつては、かなり打ちこんでいたものだ
寧々:へぇ……じゃあ結構弾けるんだ
寧々:——なら、あの話は? 『ピアノ弾きのトルペ』って話
司:ピアノ弾きの……そのタイトルは聞いたことがあるな
類:有名な短編小説だよ。 朗読劇にもなっているから台本もある。 だけど……
えむ:……だけど?
類:——司くんにトルペの役は難しいかもね
司:何?
えむ:ほえ? 難しいってどういうこと? ピアノを弾く人の役だし、ぴったりなんじゃない?
類:……そうだね。 折角だから説明がてら、一度、やってみるとしようか
ミク:あ! じゃあミク達もやりたいっ! いいかな? 類くん!
類:ああ、もちろんだよ
司:(オレには難しい……だと?)
司:(それは一体、どういう意味だ……?)

第 2 话:トルぺというピアノ弾き

ワンダーランドのセカイ
語り手:『昔々、ある街に、 トルペというピアノ弾きがいました』
語り手:『トルペのピアノの腕はたしかなもので、 彼の住む街はずれの下宿からは、 いつも素晴らしいピアノの音色が流れてきていました』
えむ:わー……! 司くん、ピアノとっても上手!
KAITO:そうだね! 話には聞いていたけど、こんなに弾けるなんて知らなかったよ
リン:類くん、類くんっ! やっぱりトルペって、司くんにぴったりの役なんじゃないかな?
類:うん……。 ピアノの腕だけなら、きっと問題はないと思うんだけどね……
語り手:『しかしトルペには、ひとつ大きな欠点がありました。 ——人前に出ると、緊張して、 本来の力を発揮できなくなってしまうのです』
語り手:『そんなわけで、トルペが街の楽団に入りたいと オーディションを受けても、 本番になると失敗してしまうため、落ち続けていました』
語り手:『仕方がなくトルペは、酒場で細々とピアノを弾いていました。 そこはさびれていてほとんど誰も来ませんし、来たとしても、 誰もトルペのピアノなんか聴いていなかったからです』
トルペ:『……はぁ、僕も大きな楽団に所属して、 協奏曲でも弾いてみたいものだなぁ……』
トルペ:『——そうだ。こんな時は、星を見るとしようか』
トルペ:『綺麗だな……』
司:(……ふむ)
司:(目指す夢に近づけていない状況で、のんびり星を眺める……。 トルペという男はどうも現実逃避気味で、 悠長な性格をしているのだな……)
類:…………
KAITO:(……なるほど。 類くんは、この部分を気にしているのか)
語り手:『こうしてトルペは、よく遠くの星を見上げていました。 しかし、そんな時——』
団長:『やぁ、トルペくんじゃないか。 こんなところでピアノを弾いていたんだね』
トルペ:『あ! 楽団の団長さん……! お久しぶりです。どうしてこんなところに?』
団長:『ただ団員達と飲みに来ただけさ。 しかし……君はよほどピアノが好きなのだね』
トルペ:『はい……。 ただどうしても、本番になると手が震えてしまって……』
団長:『それさえ克服できれば、 うちの楽団にも入ってもらえるんだが……そうだ!』
団長:『今度街で、大きな演奏コンクールがあるんだ。 それにひとりで出てみるのはどうだい?』
トルペ:『え?』
団長:『いっそひとりで、大勢の前で演奏をしてみたら、 度胸もつくんじゃないかな? それに賞をもらえたら、うちの楽団員も入団に納得するだろう』
トルペ:『え……!』
団長:『それじゃあ、期待しているよ』
トルペ:『賞を取れば、楽団に……』
トルペ:『この機会を逃せばもう楽団に入るチャンスはないかもしれない。 ……やるしかない!』
語り手:『一念発起したトルペは必死に練習をしました』
語り手:『しかし、練習ではうまくいっても、 本番を想定して下宿の人々の前で弾こうとすると、 思うように弾くことができません』
語り手:『コンクールまであと10日。 憔悴しきったトルペのもとを、誰かが訪ねてきました』
子リスの姉:『すてきなピアノの音がしますわよ~♪』
子リスの妹:『ほんとですわね~!』
トルペ:『んん? リス……?』
子リスの姉:『ねえねえピアニストさん! あたし達のために1曲弾いてくださらない?』
子リスの妹:『あたし達、今度のパーティーのために、 1曲踊れるようになりたいんですの~』
語り手:『やってきたのは、近くの森に住む子リスの姉妹でした。 かわいらしい子リス達でしたが、 練習をしていたトルペにとっては大迷惑』
トルペ:『パーティーなんて知らないよ! 僕は忙しいんだ。あっちに行っておくれ』
子リスの姉:『1曲でいいんですのよ!』
子リスの妹:『ぜひピアニストさんにお願いしたいわ!』
トルペ:『ああ、もう……わかったわかった! じゃあ1曲弾いたら帰ってくれよ』
子リスの姉:『わあ! すごい曲ね! でもちょっとテンポが速いんじゃないかしら?』
子リスの妹:『そうよそうよ! これじゃクルクル踊らなくちゃ間に合わないわ!』
トルペ:『うるさい! 文句があるなら弾いてやらないぞ!』
語り手:『子リス達は慌ただしくクルクルと踊ると、 今度はテンポを遅くしてねと言って帰っていきました』
語り手:『トルペはほっと一息。 しかし、次の日から、おしゃべりな子リスの話を聞いた 動物達がどんどんやってきたのです』
羊:『こんにちは、ピアニストさん。 牧場の仲間達がゆっくり眠れるような、 素敵な曲を弾いてくださらない?』
渡り鳥:『ピアニストさん! 渡り鳥の友達がはぐれちゃったの! ここにいるってわかるような賑やかな曲をお願い!』
猫の兄:『ピアニストさん、ボクの弟と妹が病気なんだ。 何か元気がでるような曲を弾いてもらえないだろうか!』
猫の弟:『うーん、うーん、お腹が痛いよう……』
猫の妹:『うーん、うーん、頭が痛いよう……』
トルペ:『ああもう……わかった! その代わり、1曲弾いたらすぐ帰るんだぞ!』
トルペ:『……やっと行ってくれたか。これで練習ができる』
トルペ:『もっとも、今から練習を始めたところで、 意味はないだろうけれどね。本番は明日なんだから』
トルペ:『はぁ……。 半日後には本番か……』
トルペ:『……星が……綺麗だな』
語り手:『こうして、ついにコンクールの日がやってきました』
語り手:『結局、一度たりとも人前で曲を弾ききることができなかった トルペは、不安にかられながらも、 死にもの狂いで弾きました。すると——』
トルペ:『……あれ?』
団長:『——素晴らしい演奏だったよ、トルペくん!』
団長:『一体どんな練習をしたんだい? もしかして、誰かいい聴き手がいてくれたのかな?』
トルペ:『あ……!』
語り手:『そう。毎晩動物達がやってきて、曲を聴いてくれたことで、 トルペは人前で曲を弾くことができるようになったのです』
語り手:『アンコールをもらったトルペは、 動物達への感謝の気持ちをこめて、大好きな曲を弾きました』
語り手:『会場の外で聴いていた動物達はその音色を聴いて、 また素敵な曲を弾いてくれてありがとう——と思うのでした。 めでたし、めでたし』
寧々:……っていう話なんだ
ミク:動物さん達がいっぱい出てきて、 とっても楽しいお話だね~っ♪
司:さぁ、どうだ類! 通して演じてみたが、 そこまでおかしなところはなかっただろう!
司:そして肝心のピアノ演奏も、オレならば問題ない! 大船に乗ったつもりで任せるがいい!
えむ:司くんのピアノ、かっこよかったよね! ぽろぽろりん♪ってしてたよ~!
寧々:うん、難しいって言ってたけど、 そこまで悪くなかったし、練習すれば……
類:……いや。 やっぱりもう少し考えたいな
司:何!? なぜだ!?
類:たしかに表面的にはそこまで大きな違和感はなかったよ。 でも——
類:この役と司くんは、相性が悪いんだ
司:……相性?

第 3 话:役の相性

ワンダーランドのセカイ
類:じゃあ、役との相性について、 詳しく説明しようか
類:僕はね、いつも、役者の長所が活きるような 配役をしようと思っているんだ
えむ:役者の長所?
類:うん。役者にもいろんなタイプがいるからね
類:例えば、役と自分を徐々に近づけていくタイプや、 役を分析してから細かく真似していく理論的なタイプ……。 役を憑依させる天才型もいるけど、いったんそれはおいておこうか
類:僕の見立てだと司くんは、役者としては一番ポピュラーな、 役と自分を徐々に近づけていくタイプなんだ
司:役と自分を……?
類:——感覚的にとらえていくタイプっていうとわかりやすいかな。 理屈で考えてもらおうとすると、混乱することが多かったしね
類:だから僕はいつも、司くんが合わせやすい、 司くんに似たタイプの役をお願いするようにしていたんだよ
司:お前、毎度そんなことを考えて配役していたのか……!
えむ:すごーい!
類:そりゃあ、演出家だからねえ
ミク:類くんって、司くんを空に飛ばすだけじゃなかったんだねー♪
KAITO:こらこら、ミク。 その言いかたはちょっと失礼だよ?
ミク:あっ、ごめんね~! すごいって言いたかったの!
類:フフ、問題ないよ
類:それで話は戻るけど——
類:この話の主人公トルペは、繊細で悩みやすい性格なんだ。 さて……司くんと似てると思うかい?
えむ:全然逆だと思いますっ!!
寧々:たしかに……。荒っぽいし、そうそう悩まないし……
司:言っておくが人並みには悩んでいるからな!?
類:みんなが言うとおり、司くんと役の性格が真逆なこともあって 司くんが役と自分とを結びつけづらいから、 演じるのに苦労すると思うんだ
類:司くんは役の内面を繊細に表現するより、 体を使ってダイナミックな表現をするほうが得意だしね
類:宣伝公演までの時間も考えると、 もっとやりやすいものにしたほうが全体のクオリティが——
司:……いや。 苦労するならばこそ、やってみたい!
類:え?
司:——全員、ライリードリームパークで見たショーのことを 覚えているだろう
司:あの時見たショーは、とても素晴らしいショーだった。 大胆さと繊細さを兼ね備え、グイグイと引き寄せられていく……
司:あれを見て、オレは痛感した! オレにはまだまだ見る者を惹きつける、演技力が足りないと!
類:司くん……
KAITO:——あの時司くんは、 すごく真剣に考えていたよね
司:ああ、カイトが一歩ずつ進めばいいと言ってくれたように、 オレも前進したいと思っている
司:だからこそ、新しい役に挑戦したいのだ!
司:それに、いつまでもオレに合う役ばかりをあてる わけにはいかんだろう
司:ショーは無限にあるのだ。 オレに向いた役がないからそのショーに挑戦することを諦める、 なんてことがあってはなるまい!
司:オレが成長することで、やれるショーも増えるし、 ショー自体が一段進化するかもしれん
司:——だから、やらせてくれ!
類:…………
類:——僕は演出家として、このメンバーでできる、 最も面白いショーを提供するのが役目だと考えてる
類:そういった観点で言えば、今回の演目には 賛成できない。だけど……
類:——そうだね。 司くんの言うとおり、面白いショーを作ろうと思うならば、 役者が役者として成長するための手助けをすることも大切だ
類:演出家ならば、未来のスターの可能性を閉ざすような 真似をしてはいけないしね?
司:……!
えむ:じゃあじゃあ、このお話に決定!?
類:ああ、そうしよう
司:感謝するぞ、類! 必ずやこの役を、オレのものにしてみせよう!
類:ああ、頑張ろうね、司くん
えむ:ミクちゃん達、バイバーイっ♪
ミク:ばいばーいっ☆ あ……司くんっ!!
司:ん? なんだ、ミク
ミク:トルペの役、がんばってね!
ミク:司くんのピアノ、すっごくキラキラ~ってしてたから、 きっとぴったりの役になると思うの!
司:……ああ! もちろんだ! 未来のスターとして恥ずかしくない演技をするから、 期待していてくれ!
翌日
ワンダーステージ
司:それでは早速『ピアノ弾きのトルペ』の 練習をしようではないか!!
寧々:なんか今日、一段と声大きくない?
えむ:やる気まんまんマンモスさんだね!!
類:じゃあ、読みあわせからしていこうか。 掴みづらいところもあるだろうから、 いつも以上に丁寧にやろうね
司・えむ:『おーっ!』
類:『——それではオーディションを始めよう。 1番、トルペくん。弾いてみてくれたまえ』
司:『は、はい……!!』
寧々:トルペ、演奏する。 しかしトルペは緊張してかたい演奏しかできない
類:『……ありがとう。 では、次の人』
司:『あ……。 この反応は……きっとまた不合格だ……』
司:『どうして僕は失敗をしてしまうんだ……。 あれだけ練習をして臨んでいるというのに、 本番になるといつもいつも……』
司:『いや……それならば慣れるまでやるべきだ! よし、人前でピアノの練習を——』
司:『練習を……はぁ』
司:『……今日も星が綺麗だな。 あれはアンタレスだろうか』
司:(……どうも星を見上げるシーンがしっくりこないな)
司:(この感覚は、一体なんだ……?)
類:…………

第 4 话:スターになるために

フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
類:——さて、みんなでひととおり読みあわせをしてみたけど……。 どうだったかな?
えむ:はいはい! 最後、トルペくんがしっかり弾けるようになって よかったなって思いました!
寧々:そういうことじゃなくて、 お互いの演技についてとかでしょ
寧々:わたしは……思ったより悪くないって思った。 けど……
寧々:類に言われてから、司の演技をよく見るようにしてたんだけど、 ……いつもとはちょっと違うかもって思った。 硬くなってる感じがしたし
類:そうだね。 その点は僕も同意だ
類:司くんはどうだったかな?
司:……ああ。オレもそう感じた。 小さな違和感が生まれるというか……
司:なんと言うのだろうな……。 表面的にしか掴みきれない、というのか?
えむ:むー? 表面的って、どんな感じ?
司:うーむ、うまく言えんが、 役の核心を掴めていないというか……
類:…………
類:『トルペくん。練習の調子はどうだい?』
寧々:え? アドリブ?
類:『酒場での演奏だけで稼いでいるなら、 きっと下宿代を払うのも大変だろうね。 何か力になれればいいんだけれど……』
司:『……あ、ありがとうございます! そう言っていただけて嬉しいです!』
司:……いいや、違うな。 こいつは自信がないはずだから、 こういう時は口ごもってしまうような気も……
類:——表面的、というのはこういうことだね。 台本の外側で人物が動いている様を想像できないのさ
えむ:なるほど~!!
類:今までの役はそれを直感的に掴むことができていたけれど、 今回の役は、やはり難しいようだね
類:というわけで、行き詰まっている部分を 教えてもらってもいいかい? 司くん
司:……ああ! 助かる! まず、この星を眺めるシーンの心情が掴みづらくてな……
類:ふむ。自信がないけれど、同じくらい自負心もある性格のトルペは 僕も少々掴みづらいね……
類:そうだ、寧々だったらわかるんじゃないかな。 意見を聞かせてもらってもいいかい?
寧々:ちょっと、それ遠回しに人のこと 自信がなくてプライドが高いって言ってない?
類:おや、自信がないことも自負心があることも悪いことではないよ? 慎重に行動ができるうえ、自分に誇りを持っているわけだしね
えむ:うんうん! どんな寧々ちゃんも花丸わんだほいだよ!
寧々:なんかうまいこと誤魔化されてる気がしなくもないけど……
司:……頼む寧々! 一緒にトルペの気持ちを考えてくれ!
寧々:……はぁ。 ま、いいか
寧々:多分、ここはやらなくちゃって焦る気持ちもあるんだけど、 それより、ふがいない自分に落ちこんでるんじゃないかって思う
司:なるほど……。しかし目標があるならば、 落ちこんでいる時間がもったいないんじゃないか?
寧々:そ、それはそうなんだけど! こう、すごく苦しいと動く気力もなくなっちゃうっていうか……
司:むう……。 もう少し考えていく必要がありそうだな……
類:では、役について考えながら立稽古をしていこうか
えむ:『すてきなピアノの音がしますわよ~♪』
えむ:『ねえねえピアニストさん! あたし達のために1曲弾いてくださらない?』
司:(よし。臆病なところもあるトルペだから、ここは——)
司:『わあっ! そこにいるのは誰だ!?』
類:ストップ! 普段の司くんになってしまっているよ!
類:トルペならどう驚くのか、もっとイメージしてやってみてくれ
司:わ、わかった! もう1回頼む!
司:(臆病さを出そうとして、オーバーになってしまったな……。 ……いや、もう一度やってみるぞ!)
類:『ありがとう、ピアニストさん。 これでボクの妹と弟の病気も治るよ』
えむ・寧々:『ありがとう!』
司:『……ああ、そうかい。 用が済んだなら、さっさと行ってくれ』
司:……すまない! 止めてくれ!
えむ:ほえ?
司:今の返答はトルペではない気がしてな……。 『……ああ、そうかい』いや、『ああ、そうかい?』
司:わからん……。 トルペはどんな返事をするんだ……?
えむ:司くん……
類:…………
1週間後
司:…………
類:……今日はここまでかな
司:ん? ……ああ、そうだな。 そろそろ解散とするか
寧々:うん……
司:(……困った。 役の性格や考えかたについて、この1週間考えに考えたが……、 未だに掴みきれん)
司:(このままでは……)
類:司くん——
司:もっと原作を読みこんだほうがよさそうだな……。 今のままでは……
類:…………
スクランブル交差点
寧々:……はぁ。司、大丈夫かな。 結構行き詰まっちゃってるから、何か手伝えるといいんだけど
寧々:でも、わたしがわかりそうなことは大体伝えちゃったし
寧々:……ん?
類:…………
寧々:ちょっと類、どうしたの? 落ちこんだ顔して
類:え? ああ……司くんの演出のことでね
類:——僕がもう少し、考えられていたらと思ったんだ
寧々:考えられてたらって……どういうこと?
類:今までは、ショーのクオリティを出すために、 司くんがポテンシャルを発揮しやすい役ばかりを 選んできたけど——
類:司くんは“世界のスターになりたい”っていう夢を追ってるんだ。 役者として成長できるように、もっと日頃からいろいろな役に 挑戦してもらえばよかったなと思ってね
類:……そこまで考えが至らなかったことを、 少し、後悔していて
寧々:…………
寧々:(……驚いた。 そんな風に考えてたなんて)
寧々:(いっつも、自分の考えるおもしろいショーができればいいって 言ってたのに)
寧々:(いつの間にか——ショーと同じくらい、 司やわたし達の夢のことも、考えるようになってたんだ)
寧々:……もう。あれこれ後悔したって、仕方ないでしょ?
類:え?
寧々:類、昔わたしが劇団で失敗した時に言ってくれたじゃん。 “過去を振り返っても、何も取り戻すことはできない”って
類:あ……
寧々:あれ、結構嬉しかったんだよね。 『過去に何があっても、今を頑張るしかないんだ』 って思えてさ
寧々:だから、類も同じだよ。 過去は過去。今は、司を信じて できることをやっていけばいいでしょ
類:……ああ、そうだね
類:もっと、今の司くんにとって ヒントになるものを探してみようと思う
類:ありがとう、寧々
天馬家 リビング
司:『……ああ、そうかい。 用が済んだなら、さっさと行ってくれ』
司:『……やっと行ってくれたか。これで練習ができる。 もっとも、今から練習を始めたところで、 意味はないだろうけれどね。本番は明日なんだから』
司:『はぁ……。 半日後には本番か……』
司:『……星が……綺麗だな』
司:……いや、やはり違う気がする
司:ここでトルペが星を見るのは、本番を前に まるで問題を克服できていないから、 現実逃避をしているためだと思っていたが……
司:……そうではないのか?
司:……わからん。 こんなことでは……世界のスターにはほど遠いな……
司:——いいや。 へこたれている場合ではない!
司:よし、こんな時こそ——あれをやるぞ!
司:(……うむ。 やはりこの椅子に座ると、心が落ち着くな)
司:——よし
咲希:ただいまー! お兄ちゃん、帰ってるのー?
咲希:——あ
咲希:ふふっ。 やっぱり、いつ聴いてもきれいだな。 お兄ちゃんのピアノ
類の部屋
類:……本番まで、あまり時間がないな
類:(……今一度、司くんが役を掴みきれていない理由を 考えてみよう)
類:(司くんは、役の分析を十分にしている。 頭ではトルペのことを理解できているはずだ)
類:(しかしまだ、役を落としこめていない。 どこか……“他人”だと思っている節がある)
類:(いつもの司くんならもっと、 役をまるで自分自身のように感じて 演じているはずだ)
類:(もっとトルペを近くに感じることができれば、 あるいは——)
類:……そうだ、それなら……!

第 5 话:共通点

フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
司:共通点を見つける?
類:ああ。ひとつでもいい。 トルペに対して、深く共感できる部分を探してほしいんだ
えむ:似てるところを見つければ、 もっと上手になるの?
類:ああ。 昔、司くんに黒騎士という役を演じてもらった時のことを 覚えているかい?
寧々:黒騎士……。あ、たしか——
司:『ううっ!』
司:『こ、この光は一体……!?』
寧々:『——思い出したのね、黒騎士。 平和を愛し、みんなのために剣を握っていたあの頃を』
えむ:『じゃあこのキラキラした光は、心なの? とってもキレイ!』
司:『そうか……オレは大切なことを忘れていたようだな』
司:『約束しよう。これからは昔のように、 平和のために剣を振るうことを!』
類:『こうして黒騎士は正しい心を思い出し、 世界の平和は守られたのでした——』
えむ:あっ、おぼえてるよ! ハロウィンショーの前にやってたショーだよね!
司:ああ。あの時はたしかに役作りに苦労したな
寧々:そうだったの? 全然知らなかった
司:あの時は、悪役をあまりやったことがなかったから、 どう演じたものか悩んでいたんだが……
司:たしか類から、黒騎士には黒騎士なりの主義主張があり、 それを貫きとおそうとしているから、自分の意志を強く持つ オレと似ているんじゃないかと言われてな
司:それからぐっと演じやすくなったように思うぞ
類:共通点を探してほしいというのは、それと同じなんだ
類:司くんは理屈で役を演じることは少々苦手だけれど、 一方で、直感的に把握することには長けている
類:一度、役との共通点さえ見つけてしまえば それをきっかけに、もっと役への想像力を膨らませることが できると思うんだ
類:だから何かひとつでもいいから、 この役と似ているところを見つけてほしい
類:——それまでは立ち稽古もやらなくていい。 いや、やらないでくれ
司:何ぃっ!? 立ち稽古をやるなだと!?
寧々:司抜きで練習していくの?
えむ:でも、司くんのいないシーンってほとんどないから、 練習できないんじゃないのかな?
類:トルペの代役については、カイトさん達に相談してみよう。 事情を話せばきっと手伝ってくれると思うからね
類:僕は——主役が万全に役作りできていない状態で、 本番を迎えることはできないと考えているんだ
類:それに、役を掴みきれていない中で練習をすると、 他の演者にも影響を与えてしまうからね
類:だから、なんとしても、司くんには共通点を探してもらって、 完璧に役作りをしてもらいたい。 ……できるかい?
司:ああ! 未来のスターとして、必ずやりとげてみせよう! 全員期待して待っているがいい!
類:……さすが、12000%で応えてくれるスターだね。 期待しているよ
えむ:きっと司くんならできるよ! ファイトだよ、司くーん!
寧々:……うん。 アンタなら、きっとなんとかできるでしょ
司:ああ。……成し遂げるのがスターの役目だからな!
類:それじゃあ、僕達は役作りの邪魔にならないように、 カイトさんのステージで練習させてもらうことにするよ
類:——もし何かあったら、すぐに呼んでほしいな
司:わかった! ではまた、役作りができたら合流するとしよう!
司:……うーむ……共通点……共通点……
司:台本を読めば読むほど、オレとは真逆の性格をしているな……。 まったく掴みにくい
司:何かと小さなことを気に病むし、 うまく弾けないという自覚があるくせに星ばかり見ているし……
司:オレならばその時間こそ、弱点克服の練習にあてるぞ!! 今のようにな!!
司:——いやいや! そんなグチを言っても始まらん! まずは共通点探しだ!
司:もう一度、頭から台本を読み直すぞ! 原作の小説も、読み直しだ!
数日後
司の部屋
司:まったくわからん……
司:うう……本当に共通点などあるのか……? いくら考えてもわからんぞ……
司:……いいや、きっとあるはずだ。 類も、あると思ったからこそ、 共通点を探せと言ったに違いないからな
司:しかし、何かヒントだけでもないものか。 客観的な視点というか……
司:……そうだ! それならば——
ワンダーランドのセカイ
司:……ああ、そこにいたか!
ミク:あっ! 司くんだ! 司く~ん!
KAITO:やあ、司くんこんばんは。 こんな遅くに来るなんて珍しいね
司:すまんな。 少し相談したいことがあって……
KAITO:相談? ああ、もしかして、トルペの役のことかい?
司:ああ。 やはりもう類達から話はいっていたか
司:どうしてもトルペとの共通点が見つけられなくてな。 すまないが、何かヒントだけでももらえないかと思ったんだ
司:類に聞いたんだが……代役を引き受けてくれたのだろう? やってみて感じたことなどを聞きたいんだが……
KAITO:ああ、もちろんいいよ。 ただ——トルペの代役は、僕じゃなくて、ミクなんだ
ミク:うんっ! ミクだよーっ♪
司:……なにーっ!? ミクがトルペをやっているのか!? この、トルペとは真逆どころか360度違うミクがか!?
KAITO:それは一周してしまってる気もするけど……そうだよ。 ミクがやりたいって言いだしてくれたんだ
司:なんでまたミクが……
ミク:だってだって、司くんががんばってるなら、 ミクも一緒にがんばりたいんだもんっ!
司:……そういうことか。 なら、ミクの話を聞かせてもらうとしよう! ミクはトルペの役をどんな風に演じたんだ?
ミク:えっと、ミクはね——
ミク:『はー! 半日後には本番かー!』
ミク:『星が、綺麗だなー!』
司:ぜ…… 全然できていないではないかー!!
ミク:ん~、やっぱりトルペくんは難しいよね~!
司:それ以前の問題のような気がするが……。 そもそもこのシーンは本番を前に 弱点を克服できていないというシーンだろう
司:トルペはここで、絶望しているんだぞ?
ミク:えー! でもミクは、お星さま見たら元気になるよ!
司:そういう問題じゃ…………ん?
司:(お星さまを見たら、元気に……。 その言葉、どこかで聞いたことがあるような……)
KAITO:……司くん? どうしたんだい?
司:あ、いや……。 今一瞬、何か掴めそうな気がしてだな……
ミク:え!? なになに? 何が掴めそうなの!?
司:ええい、ウロチョロするな! 頑張って思いだしているところだ……
KAITO:…………
KAITO:頑張れ、司くん
1週間後
えむ:『ねえねえピアニストさん! あたし達のために1曲弾いてくださらない?』
寧々:『あたし達、今度のパーティーのために、 1曲踊れるようになりたいんですの!』
類:『パーティーなんて知らないよ! 僕は忙しいんだ。あっちに行っておくれ』
類:……うん。このシーンはいい感じだね
寧々:でも……司は、大丈夫かな……。 結局あれからずっと悩んでるみたいだし
類:…………
えむ:——大丈夫だよふたりともっ!!
寧々:え?
えむ:司くんは、あたし達のスーパーキラキラお星さまなんだよ! 絶対絶対、ちゃんと見つけられるよ!!
類:……ああ、そうだね。 ありがとう、えむくん
ミク:みんな~☆
えむ:あっ、ミクちゃん、カイトお兄さん! こんにちわんだほーい!
KAITO:やあ。 ……司くんは、こっちの練習にはまだ合流していないんだね
類:……はい。 まだ連絡はなくて
KAITO:でも、この前ここに来た時は、 何かを掴みかけていたようだったよ
寧々:え? こっちに来てたの?
ミク:うん! それで、ウンウン言いながらがんばってたよ!
類:……ふふ。 さすがは僕達のスターだね
類:——司くんなら、きっとできる。 だから信じて待とう。 それが今、僕達にできることだからね
えむ・寧々:『うん!』

第 6 话:見上げた夜空

神山高校 2年A組
司:トルペとの共通点……。 星を見る……
司:くぅー! 考えれば考えるほどわからなくなってきたぞ!
教師:天馬~。毎度のことだがひとりごとが大きいぞ~!
司:はっ! す、すみませんっ!!
司:……はぁ
宮益坂
司:……本番まであと数日しかない……。 オレのせいでショーのクオリティを 落とすわけにはいかんというのに……
司:何より、すべての者の規範となるのがスター! オレの背中が全てを物語る! それくらいでなくてはならん!
司:だというのにオレは、練習に参加もできず、迷惑をかけ……! くぅ……情けないぞ天馬司! しっかりしろぉ!
???:——司先輩?
司:ん? その声は……
司:冬弥! ひとりとは珍しいな。 今日は彰人と一緒ではないのか?
冬弥:彰人は今日、補習になってしまって……。 チームの練習もないので、俺だけ先に帰ることになったんです
冬弥:それで……どうされたんですか? 何か悩んでいるようでしたが
司:……実は、次のショーでの役作りが なかなか進まなくてな……
冬弥:役作り、ですか
司:ああ。『ピアノ弾きのトルペ』という作品をやるんだが、 オレが主人公の性格を掴みきれんせいで練習が進まんのだ……
冬弥:『ピアノ弾きのトルペ』——。 有名な作品ですよね。自分も好きで繰り返しよく読んでいました
司:何? そうだったのか? む、ならば……!
司:(冬弥はこういった物語について理解が深い。 そのうえ、オレのことを昔からよく知っている)
司:(となると、何かヒントを得られるかもしれないぞ……!)
司:すまん冬弥! よければ、役作りを手伝ってくれないか!?
冬弥:え?
司:今、役作りのためにトルペとオレの共通点を探しているんだが、 自分ではそれを見つけられんのだ……
司:だが、原作とオレの両方を知る冬弥ならば、 見つけられるやもしれん!
冬弥:……共通点を探す、ですか。 そういうことであれば、少しはお手伝いできるかもしれませんね
冬弥:それに、司先輩がトルペを演じたらどうなるのか 興味もありますし……
冬弥:わかりました。 どこかで座って、相談しましょうか
司:冬弥……! なんとできた男なんだ……! この礼は必ずするからな!
カフェ
冬弥:可愛らしいカフェですね。 お客さんも、女性が多いみたいです
咲希:いらっしゃいませ! ……あれ? お兄ちゃんに、とーやくん?
冬弥:咲希さん?
司:ああ、ここは咲希がアルバイトしているカフェなのだ!
咲希:わ~、ふたりとも来てくれてありがとう! 今案内するね! こちらの席にどうぞ!
冬弥:じゃあ、俺はホットコーヒーをお願いします。 砂糖とミルクはいりません
司:オレはアイスティーを頼む! レモンをつけてもらえるか?
咲希:ホットコーヒーとアイスティーですね! かしこまりました♪
司:……よし。 それでは、さっそくなんだが——
司:オレとトルペの共通点がないか、 一緒に考えてはもらえないだろうか?
冬弥:わかりました。 では、台本を見せていただけないでしょうか
司:ああ!!
冬弥:……これはなかなか、難しいですね
冬弥:元より似た点が少ないとはわかっていましたが、 読む限り挙動にも接点がないようですし……
司:やはり冬弥もそう思うか……。 うーむ、何かひとつでもあればいいんだが……
冬弥:逆に、まったく違う点を挙げていくのはどうでしょう? 合致するところは無くても、“比較的似ている”点を 見つけることができるかもしれません
司:おお! それはそうだな! 違う点を挙げてみるとしよう!
司:ではまず……困難にぶつかった時の態度が違うな!
冬弥:そうですね。司先輩ならば 何がなんでも乗り越えようとするでしょうし
冬弥:あとは——実力が足りないことへの苛立ちを、 動物にぶつけるところも違いますね。司先輩は、自分の実力が 足りないと思えば、ひたすら努力を重ねる人ですから
司:そ、そうか……? そう言われてみるとそうかもしれんな……
冬弥:あとは、病気の動物を追い返そうとはしません。 司先輩は病気で苦しむ人に厳しく当たることはしませんし
冬弥:それから司先輩は——
咲希:おまたせしました! コーヒーとアイスティーを……
冬弥:人前に出るほどに生き生きとしますし、何事にも積極的です。 いつでも正直ですし、悪いと思ったことは すぐに謝罪をしてくれますし——
司:そうだろうそうだろう! ハッハッハッハ!!
咲希:お客様~? ……もう、大声出して恥ずかしいなあ
司:……結局、違う場所ばかり見つかってしまったな
冬弥:そうですね……。 まさか50個も見つかってしまうとは……
司:はぁ……。本当に、トルペとオレは真逆の人間なのだな
司:——本番前夜に星を見るシーンは、特にそう思ってしまった
冬弥:星、ですか
司:ああ。本番も近づいているのに、ぼんやり星を見るなど……。 オレには考えられんことだ……
冬弥:…………
冬弥:ただ、ぼんやりしているわけではないんじゃないでしょうか
司:ん? どういう意味だ?
冬弥:トルペはこの話で、 挫折を経験している時に星を見上げるので……
冬弥:星を見ることは、トルペにとって もっと意味があるもののような気がするんです
司:意味がある……どんな意味だ?
冬弥:どんな意味かと言われると難しいんですが……
冬弥:挫折……。 本当に大きな壁にぶつかった時に……
司:あ——
10年前
天馬家 リビング
幼い咲希:わぁ……!
幼い司:どうだ! スターにふさわしい、見事なえんそうだっただろう! 母さんに教えてもらったんだぞ!
幼い咲希:お兄ちゃん、すごーい! わたしもきらきら星、ひいてみたい!
幼い司:そうか! ならオレが教えてやろう! 共にみごとなきらきら星をひこうではないか!
幼い咲希:やったー! ありがとう、お兄ちゃん!
母親:ふふっ。それじゃあ連弾できるように、 咲希もちょっとずつ覚えていきましょうね
幼い咲希:うん! ……けほっ、けほっ
母親:今日は、あまり無茶をしないようにしましょう? 退院したばかりなんだから
幼い咲希:ええ~! やだやだ! わたしもきらきら星ひく~!
幼い司:あ……
幼い司:……よし! ならばオレがベッドで教えてやろう!
幼い司:指の動きを練習できる紙があるから、 それで一緒にやるぞ!
幼い咲希:ほんとっ?
幼い司:ただし、明日からな。 今日はゆっくり休むように!
幼い咲希:うう……わかった~。 早く明日にならないかな~
母親:それじゃあ、ベッドに戻りましょうね
幼い司:…………よし!
幼い司:(咲希に教えるためにも、 いっぱい練習をしておかなければな!)
幼い咲希:う……。 苦しいよう……
母親:……咲希!? 大丈夫、咲希?
父親:車を回してくる! 咲希を見ていてやってくれ
母親:ええ……!
幼い司:おはよう! 咲希、一緒に練習を…………あれ? 母さん、咲希は?
母親:実は……昨日の夜調子が悪くなっちゃって、 また病院にお泊りしてるの
幼い司:えっ!? また病院!? 大丈夫なの?
母親:ええ。朝、お父さんから連絡があったんだけど、 大したことはなかったって
幼い司:そっか……よかった……
幼い司:(でも、それならきっと咲希は またしょんぼりしてるよな……)
幼い司:早く、一緒にピアノをひけるようになるといいな……
幼い司:ここでくるっとして……、 『やあやあ! 我こそが英雄ペガサス! 悪者は退治してやろうではないか!』
幼い司:誰だろう? ——もしもし、天馬です!
母親:『あ、司? ごめんね。 咲希の調子が悪いから、もう少しついていようと思うの』
母親:『もう少ししたらお父さんが帰ってくるから、 ちょっとだけ待っててね』
幼い司:……うん! わかった! ちゃんと留守番するよ!
母親:『ふふ、頼りになるお兄ちゃんね。ありがとう。 それじゃあ、電話切るわね』
幼い司:…………。 母さん達、また遅くなっちゃうんだ……
幼い司:……いや! オレはスターだから、平気だ! 家にいられない咲希のほうが寂しいしな!
幼い司:だから……。 …………
幼い司:このままではオレのほうがずっとうまくなってしまうぞ……。 早く戻ってこい、咲希……

第 7 话:星を見つけて

数年後
天馬家 リビング
中学生の司:……おお! つ、ついに来たか!?
中学生の司:はいっ!! 天馬ですっ!!
小学生の咲希:『お兄ちゃーん! わたし宮女中等部に受かったよー! いっちゃん達もみんな合格っ!』
中学生の司:ほっ、本当か!? やったな、咲希ぃ~!!
小学生の咲希:『ありがとう! これでみんなと青春できるよ~! 体の調子もすっごくいいしっ!!』
中学生の司:そうかそうか!! 本当によかったな……!!
中学生の司:ならば、今日はパーティーだ! 一歌達もうちに呼ぶといい!
小学生の咲希:『うん、みんな誘ってみる! じゃあまたあとでね!』
中学生の司:ああ、またな!
中学生の司:そうか……また一歌達といられるのか……。 よかったな、咲希……!
中学生の司:ハッハッハ! 今日は気持ちよく弾けそうだ!
母親:——はい。天馬です。 ……え? 咲希が……!?
病院
医者:そういったわけで——容態を考えると、 遠くになってしまいますが、他県の病院をおすすめします。 専門の先生がたくさんいますので
父親:そうですか……。 ……わかりました
母親:ありがとうございます……
中学生の司:咲希…………
咲希の声:…………
中学生の司:せっかく宮女に通えるようになったんだぞ……。 わざわざ遠ざかってどうする……
咲希の声:…………
中学生の司:…………
中学生の司:(……きっと、大丈夫だ。 咲希はまた、戻ってくる)
中学生の司:(オレは……ここで待っているぞ)
司:……『そうだ。こんな時は、星を見るとしようか』
司:よし、こんな時こそ——あれをやるぞ!
司:……そういうことだったのか
冬弥:司先輩……
咲希:おまたせしました! お兄ちゃん、大丈夫?
咲希:はい、これ飲んで!
司:うわ、咲希!? これは……水か?
咲希:お兄ちゃんが急にボーっとしだしたから、 とーやくんが心配して頼んでくれたんだよ?
司:そうか……ありがとう、冬弥
冬弥:いえ。それより……大丈夫ですか?
司:……ああ。 トルペにとっての星がなんなのか、わかった気がする
冬弥:……!
咲希:星? 星がどうかしたの?
司:ああ、それは——
司:あ……そういえば、あれは……。 咲希が言っていたのか?
咲希:ん? 何の話?
司:——『お星さまを見たら元気になる』。 昔、病室でそう言っていなかったか?
咲希:え? あ、そう言われてみると……。 昔よく言ってたかも!
咲希:嫌な検査とか手術とか、そういう怖いことがある時は、 星を見たくなって……。 よく夜更かしして怒られてたんだよね
咲希:でも——
咲希:星を見てると、いっちゃん達と遊んだこととか、 お兄ちゃんのショーのこととか、 楽しいこといーっぱい思いだせるから、こっそり見てたんだ
司:……そうか。 答えは、一番近くにあったのか
司:まったく……オレはまだまだだな! ——しかし、ふがいない自分を受け入れることから 成長は始まるのだ!
司:——冬弥、咲希、感謝する! おかげで活路を見出すことができた
冬弥:本当ですか?
司:本当だとも! 話を聞いてもらえてとても助かった
司:……大切なことを思いださせてもらったからな。 これならきっと、いいショーができる
冬弥:そうですか……! お力になれて何よりです
司:ああ、ありがとう!
司:よければふたりとも、友人を呼んでショーを見に来てくれ! 最高のショーを披露するぞ!!
咲希・冬弥:『うんっ!』 『はい!』
数日後
ワンダーランドのセカイ
えむ:『おめでとう! ピアニストさんっ!』
寧々:『こうして動物達はトルペを祝福し、 トルペは楽団のピアニストになることができたのでした。 めでたしめでたし』
ミク:やった~! バッチリだねっ♪
えむ:ありがとう、ミクちゃんっ!
寧々:だけど、肝心の司はまだ……
類:(…………もう、本番まで時間がない)
類:(これ以上待つと、ショーとしての完成度を 上げることが難しくなる)
類:(だけど僕は——)
ミク:司くんなら、きーっと大丈夫だよ!
寧々:ミク……
司:——待たせたな!
類:……! 司くん!
司:……だいぶ時間がかかってしまってすまない。 心配をかけたな
司:だが、ようやくあいつとの共通点を見つけて、 役作りをすることができた!
寧々・えむ:『……!』
ミク:ほらね~っ♪
類:……まったく、随分ハラハラさせてくれるじゃないか。 僕達の座長は
類:それじゃあ——準備はいいかい?
司:ああ! いつでもいけるぞ!
類:では、頭から通しでいくよ
類:……司くん。僕達はもう完璧にやれる。 だから司くんが止まったら、そこで切ることになるからね?
司:かまわん! 失敗なぞする気がせんからな!
類:フフ、万全のようだね!
司:そういえば演奏のシーンなんだが、 ひとつ提案があってな——
類:提案? ぜひ聞かせてもらいたいな
ミク:司くん、トルペくんができるようになって よかったな~!!
KAITO:うん。 これでまた一歩、夢に近づいたような気がするね

第 8 话:光り輝くステージを

音楽堂
冬弥:なるほど……通常は指定席のようだが、 今回は宣伝公演ということで自由に座っていいのか。 さて彰人、どこに座る?
彰人:オレはどこでもいい。 にしても……わざわざ電車で2時間近くかかるような 場所に来るとは思わなかったな
冬弥:せっかくの休みにすまない。 彰人にもぜひ、司先輩が苦心して作り上げたショーを 見てもらいたくてな
彰人:まあ、それはいいけどよ
彰人:とりあえず、文化祭みたいな内容じゃないことを 祈るしかねえな……
彰人:お、この席でいいんじゃねえか
冬弥:たしかに、ステージからちょうどいい距離だな。 ここに座るとするか
咲希:ついたー! よかったぁ、間にあって……
一歌:こんなに遠いとは思わなかったね。 宣伝公演って、こんなところでもやるんだ
志歩:フェニラン以外で司さん達のショー見るのって、 初めてかもね
穂波:今日はピアノを弾く司さんも見られるみたいだし、 楽しみだな
一歌:司さん、咲希の家に行くとよくショーを見せてくれたけど、 ピアノを弾いてるところはほとんど見たことなかったしね
咲希:ふっふっふ! 今日はみんなに、カッコイイお兄ちゃんを 見てもらうぞー!
穂波:ふふ、咲希ちゃんってば
志歩:あ、そろそろ始まりそう
ナレーション:『只今より、ワンダーランズ×ショウタイムによる宣伝公演、 “ピアノ弾きのトルペ”を上演いたします』
咲希:ふふっ、どんなショーなんだろう?
トルペ:『はぁ……。 やっとオーディションの最終選考まで来られた』
トルペ:『……きっとできる。今度こそ、合格して入団できる。 いつものようなことにはならないはずだ……』
団長:『それでは——次、トルペくん。 演奏を始めてください』
トルペ:『は、はいっ!』
トルペ:『きっと弾ける……大丈夫だ。 これまでの練習を信じるんだ……!』
トルペ:『よし、弾くぞ……!』
団長:『ふむ……。 これではねぇ……』
トルペ:『……あ……ありがとうございました……』
トルペ:『……駄目だ! どうしていつも本番になるとこうなってしまうんだ……! これじゃ僕は、どこの楽団にも入れないじゃないか……!』
冬弥:…………
彰人:へぇ……。 あいつ、こんな演技もできるんだな
トルペ:『……はぁ……』
トルペ:『団長さんに、度胸をつけるためにコンクールに 出てはどうかって言われたけれど、 2、3人の前でも緊張してしまう僕に、コンクールなんて……』
トルペ:『……いいや。それでもやるしかない。 僕は……僕は、ピアノを弾き続けていきたいんだ……』
志歩:……なんだか司さん、いつもと雰囲気が違うね
穂波:うん……。 なんだか、別人みたい……
子リスの姉:『とっても素敵な演奏をありがとう、ピアニストさん! それではごきげんようですの!』
トルペ:『……やっと行ってくれたか。これで練習ができる。 もっとも、今から練習を始めたところで、 意味はないだろうけれどね。本番は明日なんだから』
トルペ:『はぁ……。 半日後には本番か……』
トルペ:『……星が……綺麗だな』
司:(……この時、トルペはまだ——諦めていない)
司:(これだけ絶望的な状況でもまだ、 心の奥底では、ピアノを弾くことをやめようと思っていない)
司:(だから上を——星を見るんだ)
司:(……悠長なヤツだなんて思って、悪かったな)
司:(お前はいつだって、どんなつらい時でも諦めず ——顔を上げていたんだな)
トルペ:『ついに、コンクールの日になってしまった。 結局あいつらのせいで、ほとんど練習ができなかったな……』
トルペ:『客席は……ああ、なんて観客の数だ。 あの人数がこちらを見ていると思うと恐ろしくて目まいがする』
トルペ:『それでも、僕は——』
司会:『エントリーナンバー20番! トルペさん、どうぞ!』
トルペ:『僕は——弾くより他にないんだ』
司:(トルペにとって、ピアノは、 生きるためにどうしたって必要なものだ)
司:(そして、オレにとってそれは——)
咲希:この曲って……
咲希:お兄ちゃん……
彰人:へえ、悪くねえな
冬弥:ああ……。 音が、光を帯びているようだ
司:(——まるで星みたいだな。 これが、ずっとトルペが見上げていた星なのか)
トルペ:『あ……! いつの間にか終わって……』
団長:『——素晴らしい演奏だったよ、トルペくん!』
トルペ:『だ、団長さん! そんな、僕はただ、一生懸命弾いただけで……』
団長:『それが素晴らしかったんだよ。 今までの君は、大勢の前だと緊張しっぱなしで、 指もろくすっぽ動かなかった』
団長:『それがどうだい。 このたくさんのお客さんたちの前で、 君は最後まで集中を切らすことがなかった』
団長:『一体どんな練習をしたんだい? もしかして、誰かいい聴き手がいてくれたのかな?』
トルペ:『あ……! そうか、あの動物達が訪ねてくれたから……!』
トルペ:『あ、いいえ。なんでもありません!』
団長:『そうかい? それなら——この聴衆のアンコールに 応えてみるのはどうかな?』
トルペ:『あ……! はい!』
トルペ:『それでは皆さま——そして、小さな友たちへ。 もう一度弾かせていただきます』
トルペ:『——思えばあの動物達は、僕のピアノで ずいぶん喜んでくれたな。くるくると踊ったり、 すやすやと寝てしまったり、かと思えば病気が和らいだり……』
トルペ:『あんな風に聴いてもらえたのは、初めてだったかもしれない』
トルペ:『——ありがとう』
司:(……ああ、そうだなトルペ。 お前はピアノで、オレはショーで見せようではないか)
司:(支えてくれたすべての者達への——感謝をこめた、光をな)
咲希:お兄ちゃん……すっごく、キラキラしてる……
バックステージ
えむ:やった~! お客さん、みんなニコニコだよ~!
寧々:うん。反応、すごく良かったね。 これなら次の回もバッチリじゃない?
司:ああ……。 ……はぁ。落ち着いたらどっと疲れがでたな
類:今回はお疲れさま、司くん。 ……君がまた一歩夢に近づいたことを、 演出家としても、友人としても、心から嬉しく思うよ
司:……ああ! お前達のおかげだ、類!
えむ:あ、そういえば咲希ちゃん達に 挨拶しに行かなくちゃ!
司:おおっとそうだったな!! オレ達も行くぞー!!
寧々:……どうなることかと思ったけど、 最後はちゃんとやってくれたね
類:ああ。 さすがは、僕達の座長だね!
司:ではここで観客を待つとするか! ……ん?
おばあさん:あの……あなた、主役の子よね? 少しいいかしら?
司:ああ、はい! もちろんですとも!
おばあさん:私、この近くに住んでいるの。 それで今日はたまたまこの舞台を拝見したんだけれど……
おばあさん:とても素敵だったわ。 まるで舞台が——キラキラ光ってるみたいに見えたもの
司:……!
おばあさん:これからも応援しているわ。 頑張ってくださいね
司:……はい! ありがとうございます!
司:(……とてもありがたいな)
司:(みんなの力を借りてようやくできたこの舞台を 評価してもらえるというのは)
司:(それに——この役を演じるために、 オレが幼い頃感じていた苦しみや悲しみまでもが 糧となってくれたことも……嬉しく思う)
司:(役者としてさらに成長していくためにも、 これからたくさんの経験を重ねていきたいものだ)
司:……いよ~し!! オレはさらなる研鑽を積み、必ずやスターになるぞ~!!
咲希の声:あっ! 今の声……お兄ちゃんだ!
司:おお! あちらから咲希の声が……! 咲希~!!
ミク:『……よいよいよいしょーっと! あ、司くん友達とお話してる!』
KAITO:『こらこら、ミク。 スマホから顔を出すと見つかってしまうよ?』
ミク:『だってだって、ミクも司くんにおめでとーって 言いたいんだもーん!』
KAITO:『ふふ、それは僕もそうだよ。 でもそれは……もうちょっとあとにしようか』
司の声:よく来てくれたな!! 未来のスターとして、心から感謝するぞ!!
ミク:『——ふふっ! よかったね、司くんっ☆』