活动剧情

迷い子の手を引く、そのさきは

活动ID:61

第 1 话:“いつもどおり”の日常

宮益坂
まふゆ:……今日の予備校、 いつもより授業のスピードが速かったな
まふゆ:(……週末に模試があるからだろうな。 予備校の空気もいつもと違ったし、 みんなも追いこみをかけてるんだ)
まふゆ:——今度の模試も、いい点取らないと
まふゆ:……もうすぐ、門限だ
まふゆ:少し、急がなきゃ
朝比奈家 リビング
まふゆ:ただいま、お母さん
まふゆの母親:おかえりなさい、まふゆ。 今日も予備校お疲れさま。模試の勉強は順調?
まふゆ:うん、順調だよ。 でもA判定取るためには、もっと頑張らないと
まふゆの母親:ふふっ、さすがまふゆね
まふゆの母親:今までの模試も、いい結果を出してきたけど……、 今度は大学別の模試だものね
まふゆの母親:将来のことを考えると、盟応大学か…… 最低でも港都大学のA判定はほしいでしょうし、 まふゆが張り切る気持ちもわかるわ
まふゆの母親:でも、無理はしちゃだめよ?
まふゆ:……うん、そうだね。 周りの子も追いこみかけてるから油断はできないけど、 体調だけは崩さないようにしなきゃ
まふゆの母親:ふふ、まふゆならきっと大丈夫よ
まふゆの母親:お母さん、今度の結果も楽しみにしてるわ
まふゆ:——ありがとう、お母さん。 私、頑張るね
25時
まふゆの部屋
奏:『——この調子だと、 あさってには新曲を投稿できそうかな』
瑞希:『やった~! 今回のMV、すっごくがんばったから 反応が楽しみだな~』
瑞希:『みんな、お疲れさま!』
絵名:『お疲れさまって、まだ終わってないでしょ。 気が早いんだから……』
瑞希:『あはは、そうなんだけどさー。 最近すっごく曲のクオリティ上がってるじゃん? だからMVの反応見るのが楽しみなんだよねー』
絵名:『まあ、それはたしかに。 そういえば次の曲のラフって、まだ来てなかったよね』
奏:『あ……、そのことなんだけど……』
瑞希:『え?』
奏:『——ごめん、曲のコンセプトを考えるのに、 まだ時間がかかりそうなんだ』
奏:『だから、ラフができるのは、 いつもより遅くなるかも……』
まふゆ:『……K。また、行き詰まってるの?』
奏:『う……。空いた時間に少しずつ考えてたんだけど、 あんまりいいアイディアが出てこなくて……』
絵名:『そっか……。 どうしても出てこない時ってあるもんね』
絵名:『でも、少なくともあさってまでは みんな今の曲の微調整してると思うし、 そんなに焦らなくてもいいんじゃない?』
奏:『……うん、ありがとう。 なるべく早くラフを作りたいけど……』
瑞希:『——ふっふっふ。 そういうことなら、ボクにお任せあれ!』
奏:『Amia?』
絵名:『何、その言いかた。 変なこと考えてるんじゃないの?』
まふゆ:『またミステリーツアーに行くとか』
奏:『えっ! ちょ、ちょっと怖いのは……』
瑞希:『だーいじょうぶ! 今回は怖いのじゃないって!』
絵名:『今回はってことは、やっぱりどこか行くの?』
瑞希:『うん! 実はボク、 フェニックスワンダーランドの 1日チケットを持ってるんだ!』
まふゆ:『フェニックスワンダーランド……』
瑞希:『そうそう! サークルの子達と行ってきなよって、 フェニランでショーキャストやってる知りあいから もらったんだ!』
絵名:『へえ、いい人じゃん』
瑞希:『まあね♪ ショーに使うからって等身大のロボット作ったり、 たまに校庭で爆破実験してたりするけど……』
奏:『な、なんだかすごそうな人だね……』
瑞希:『あはは。ショーの演出には、 いつも全力!って感じだからさ』
瑞希:『——というわけで、せっかくチケットもあるし、 みんなでフェニラン行かない?』
瑞希:『日付指定のチケットだから、 今度の日曜限定になっちゃうんだけど……』
絵名:『私は賛成。フェニランのナイトショー、 SNSで話題になってからずっと気になってたんだよね』
奏:『フェニランか……。 あんまり行ったことないな』
瑞希:『お、じゃあ行ってみようよ! いい息抜きになるかもしれないしさ』
奏:『うん……』
まふゆ:『……K、行くの?』
奏:『……そうだね。 人が多いところは苦手だけど、曲作りのためになるなら 行ってみようかな……』
絵名:『いいんじゃない? ミステリーツアーの時とは違うけど、 インスピレーションは湧きそうだし』
瑞希:『ナイトショーだったら、 いい感じの自撮りもできるだろうしね、えななん♪』
絵名:『別にそういうわけじゃないってば!』
まふゆ:『…………』
まふゆ:(……みんなで遊園地、か……)
絵名:『——それで、雪はどうなの? 行けるわけ?』
まふゆ:『え……』
まふゆ:『……私は……』
まふゆの母親:お母さん、今度の結果も楽しみにしてるわ
まふゆ:『……その日は、模試があるから行けない』
瑞希:『あ……模試があるのか……。 なら仕方ないね』
絵名:『模試ねぇ……』
絵名:『雪、模試の会場ってどこなの?』
まふゆ:『……ショッピングモールの近く、だったはず』
絵名:『ならフェニランにも近いじゃん。 終わってから合流すれば?』
瑞希:『そうだね! せっかくならみんなで行きたいしさ!』
まふゆ:『みんなで……』
まふゆ:『…………』
まふゆ:『……模試が終わったあと、少しだけなら——』
まふゆ:『……! ごめん、少しミュートする』
まふゆの母親:まふゆ? まだ起きてるの?
まふゆ:——うん、映画を見てたの。 字幕なしで見れば、英語のリスニング勉強になると思って
まふゆの母親:ああ、だからパソコンがついてるのね。 でも、こんな暗い場所でやらなくてもいいのに
まふゆ:もう夜遅いから、明かりが漏れると迷惑かなって
まふゆの母親:ふふ、まふゆは本当に立派ね。 こんなに遅くまで勉強を頑張ってるなんて
まふゆ:うん、心配させてごめんね。 もうすぐ寝るから大丈夫だよ
まふゆの母親:わかったわ。 それじゃ、おやすみなさい
まふゆ:……おやすみ
まふゆ:『……ごめん、急にミュートして』
奏:『大丈夫だよ。何かあったの?』
まふゆ:『お母さんが、早く寝なさいって言いに来ただけ。 ……それと、さっきの件だけど』
まふゆ:『やっぱり、私は行けない。 ……模試が終わったあとも、自己採点とかあるから。 みんなで、行ってきて』
瑞希:『そっか……。 そういうことなら、仕方ないね』
瑞希:『じゃ、また模試がない日に一緒に行こうよ!』
絵名:『たまにはあんたも息抜きすればいいのに……。 次、行けそうな日があったら教えてよ?』
奏:『……無理はしないでね、雪』
まふゆ:『……うん、ありがとう』
まふゆ:『……お母さんがまた見に来るかもしれないから、 今日は先に落ちるね』
瑞希:『ん、お疲れ、雪! またね!』
まふゆ:…………
まふゆ:……勉強、しないと

第 2 话:その糸は、とても緩やかに

翌日
朝比奈家 リビング
まふゆ:——それじゃあ、お母さん。 学校、行ってくるね
まふゆの母親:いってらっしゃい。 たしか今日は予備校はなかったわよね。 帰りは早いの?
まふゆ:予備校はないけど、教室で自習してくるつもり。 だから帰りはいつもと同じ時間になるかな
まふゆの母親:ふふ、今日もやる気十分ね
まふゆの母親:でも……勉強に夢中になりすぎて、 門限に遅れないようにするのよ?
まふゆ:ありがとう、お母さん。 じゃあ、行ってきます!
まふゆの母親:(……本当、まふゆはいい子ね)
まふゆの母親:——そうだわ、まふゆの部屋を掃除しておこうかしら
まふゆの母親:綺麗にしておけば、あの子も 気持ちよく勉強できるでしょうし……
宮益坂女子学園 2年B組
まふゆ:えっと、数学の参考書は……
クラスメイト:あれ? まふゆ、帰らないの? 今日は部活も休みじゃなかったっけ?
まふゆ:そうだけど、自習して帰ろうと思ってるの。 模試も近いから、勉強したくて
クラスメイト:まふゆってば、やっぱり真面目だね。 たまにはちゃんと息抜きしなきゃだめだよー?
クラスメイト:まぁ、まふゆはちゃんとしてるし、 きっと大丈夫なんだろうけどさ
まふゆ:ふふっ、心配してくれてありがとう
クラスメイト:あ、そろそろ部活行かなきゃ。 ばいばい、まふゆ!
まふゆ:うん。また明日
まふゆ:…………勉強しよう
数時間後
まふゆ:——もう、こんな時間か
まふゆ:(……模試対策用の問題集は終わった。 3周解き終わったし、もう大丈夫かな)
まふゆ:(ちゃんとやれば、結果は出せるはず——)
まふゆ:……そろそろ帰らないと。 お母さんが待ってる
まふゆ:ただいま
まふゆ:……あれ?
まふゆ:(……いつもなら、お母さんが出迎えてくれるのに)
まふゆ:お母さん、どうしたの? 何かあった?
まふゆの母親:……ねえ、まふゆ。 お母さんに、何か隠してることない?
まふゆ:え……? ううん、ないよ。 私がお母さんに隠しごとなんて——
まふゆの母親:——本当に?
まふゆの母親:お母さんの目を見て、 何もないって、ちゃんと言える?
まふゆ:え……
まふゆ:(隠しごと……。 お母さんに、言えないようなことって……)
まふゆ:(——もしかして……)
まふゆ:……隠してることなんてないよ。 お母さんに、そんなことするわけないし
まふゆの母親:じゃあ、“これ”は、なに?
まふゆ:……!
まふゆ:(……私の、シンセサイザー……)
まふゆの母親:さっきまふゆの部屋を掃除してたら見つけたの。 使わないのに部屋にあっても邪魔でしょう?
まふゆの母親:お父さんが買って、それっきりになってたのかしらね。 明日、回収してもらうから……
まふゆ:…………なんで?
まふゆの母親:え? だって、いらないでしょう?
まふゆ:これは……私にとって……
翌日
まふゆの母親:ああ、業者さん。 粗大ゴミは玄関前にまとめて置いてますので、 よろしくお願いしますね
まふゆの母親:まふゆもわざわざ見てなくても大丈夫よ。 そろそろ塾に行く時間でしょう?
まふゆ:……うん、わかった
まふゆの母親:それじゃ、お母さんはお隣さんに回覧板を回してくるわね
まふゆ:…………
回収業者:——ふう、あとはこのシンセサイザーで最後かな
まふゆ:あ……
回収業者:ん? どうしました?
まふゆ:——ごめんなさい、 間違ってゴミに出しちゃったみたいで……。 このシンセサイザーはまだ使うので、回収しなくても大丈夫です
まふゆ:母には私から伝えておきますから
回収業者:ああ、わかりました。 じゃあ他のものを回収しておきますね
まふゆ:はい、お願いします
まふゆの母親:これは前に捨てたはずよ。 どうしてまふゆの部屋にあるのかしら
まふゆ:…………え、っと
まふゆ:その—— 将来のために、勉強しておこうかなって
まふゆの母親:……どういうこと?
まふゆ:音楽をやってる友達がいるんだけど、 その子を見てたら興味が出てきて、 私も勉強をしてみたいなって思ったの
まふゆ:ほら、世の中には音楽療法とかもあるし。 将来に役立つかもしれないなって……
まふゆの母親:……そうだったの
まふゆの母親:——さすがまふゆね。 新しいことも、意欲的に勉強できて偉いわ
まふゆ:……!
まふゆ:ありがとう、お母さん。 だから、このシンセは——
まふゆの母親:——でもね
まふゆの母親:それって、本当に今、必要なことかしら?
まふゆ:え……?
まふゆの母親:音楽はたしかに素敵なものよ。 まふゆが言ったとおり、音楽療法もあるわけだし、 お医者さんになったら役に立つかもしれない
まふゆの母親:だけどお母さん、心配なの
まふゆ:心配……?
まふゆの母親:もしまふゆが、その楽器のせいで勉強が疎かになったら 受験で失敗するかもしれないでしょう?
まふゆの母親:もちろん、まふゆは賢いし、とってもいい子だから そんなことはないってわかってるけど……
まふゆの母親:もしそれでまふゆの将来が狭まったらと思うと、 お母さん、とても心配なのよ
まふゆ:お母さん……
まふゆの母親:音楽療法の勉強は、大学に行ってからでも遅くないと思うし—— それに、息抜きの方法だったら 他にもいろいろあるんじゃないかしら
まふゆの母親:そうだわ。昨日の夜やっていたように、映画を見るのはどう? 字幕をつけずに見たらリスニングの勉強になるって 言ってたじゃない?
まふゆの母親:今度、お母さんが知り合いの先生に頼んで、 勉強に向いてる映画を教えてもらいましょう
まふゆ:……ありがとう、お母さん。 心配かけちゃってごめんなさい
まふゆ:……でも——
まふゆ:(……私にとって、音楽は……)
中学生のまふゆ:(…………このまま、ずっと変わらないの?)
中学生のまふゆ:(何がおもしろいのか、何がほしいのか、 わからないままなの?)
中学生のまふゆ:(高校生になっても、大学にいっても。 このまま、ずっと——)
まふゆ:(……やっぱり知りたい)
まふゆ:(この曲の何が——私を揺り動かすのか)
まふゆ:……メロディーから真似して、作ってみよう
まふゆ:…………お母さんが、 私のことを心配してくれるのはすごく嬉しいけど
まふゆ:私は……やってみたいの。音楽を
まふゆの母親:まふゆ……
まふゆ:もちろん、受験勉強に問題ない範囲でやるよ? 教えてくれる友達にも、迷惑かけないように……
まふゆの母親:……そのお友達は、同い年の子なの?
まふゆ:えっ? うん、同い年だけど……
まふゆの母親:…………そう
まふゆの母親:すごいわね。芸術は心を豊かにしてくれるものだし、 まふゆが興味を持つのもわかるわ
まふゆ:! それじゃあ……
まふゆの母親:でも……その子は、ちゃんと受験勉強を しているのかしら?
まふゆ:え……?
まふゆの母親:まふゆと同じくらい高い目標をもって 受験勉強を頑張ってる子なら、 息抜きの趣味として、お母さんも応援できるんだけど……
まふゆ:勉強、は……
まふゆの母親:…………そうなのね
まふゆの母親:——ねえ、まふゆ。いろいろな子とつきあうのは大事だと思うわ。 感性も磨かれるし、将来のために人脈を作るのもいいことよ
まふゆの母親:でも……まふゆが今、大事にしなきゃいけないのは 同じように受験勉強を頑張っているお友達じゃないかしら?
まふゆの母親:きっと、同じ目標を持ってる子のほうが 実りのあるおつきあいができると思うの
まふゆ:そう、かもしれないけど……
まふゆ:私は——
まふゆの母親:まふゆ……
まふゆの母親:今日は一体どうしたの? お母さん、まふゆに何かしてしまったかしら……
まふゆの母親:お母さんはただ、まふゆの将来のためにと 思っているだけなのに……
まふゆ:あ——
まふゆ:……ご、ごめんなさい。 私、そんなつもりじゃなくて……!
まふゆ:お母さんは、私のことをいつでも真剣に考えていてくれるのに—— 困らせちゃってごめんね
まふゆの母親:——ううん、いいのよ。 お母さんも、まふゆが本当にやりたいことなら応援するつもりよ
まふゆの母親:心配だから、つい口うるさくなっちゃったけれど、 これはまふゆの人生だもの
まふゆの母親:だから——まふゆがしたいようにしていいわ
まふゆ:え……?
まふゆの母親:まふゆが、本当にやりたいことをしなさい。 でも——
まふゆの母親:……後悔、しないようにね?
まふゆ:…………っ
まふゆ:……私……私が、したいことは……
まふゆ:——ごめんね、お母さん
まふゆ:…………私、音楽は、もうやめるよ
まふゆ:それで、将来のために受験勉強する。 だから安心して、お母さん
まふゆの母親:……本当に、それでいいのね?
まふゆ:うん、今は勉強が一番だもん
まふゆの母親:そう……。 お母さん、安心したわ
まふゆの母親:じゃあ、このシンセはもういらないわね。 お母さんが預かっておくわ
まふゆ:うん、わかった。 わがまま言ってごめんなさい
まふゆ:——私、夕飯まで勉強してくるね
まふゆの部屋
まふゆ:……はあ、はぁ……っ
まふゆ:(……胸の奥が、冷たい。 苦しくて、何も考えられない……)
まふゆ:(さっきのお母さんの姿が——頭から、離れない)
まふゆの母親:……後悔、しないようにね?
まふゆ:……通、知……? 瑞希から……
瑞希:『今からセカイに来れる? みんなに話したいことがあるんだ!』
まふゆ:……セカイ……
まふゆ:…………セカイに、行こう

第 3 话:セカイの新たな一員

誰もいないセカイ
まふゆ:(頭が、ぼーっとする……。 みんなを探さなきゃ——)
まふゆ:みんな、は……
まふゆ:(……いた)
まふゆ:(あれは……なんだろう。 みんな、いつもと様子が——)
瑞希:よしよーし。 ボク達は怖くないよ~。仲良くしようね~
絵名:そんなグイグイいったら余計怖がるでしょ
まふゆ:……みんな、どうしたの?
奏:あ、まふゆ
ルカ:ふふ。——まぁ、見たほうが早いかしらね
MEIKO:…………
ミク:えっと……。 挨拶、できる?
???:……うん
まふゆ:え……?
レン:あ……。 えっと、その……
レン:……は、はじめ、まして
瑞希:よろしくね、レン!
レン:う、うん……
瑞希:うーん、なかなかミクの後ろから 出てきてくれないな~
奏:人見知り……いや、恥ずかしがりやなのかな
絵名:見た感じ、どっちもっぽいけど
まふゆ:……また、増えたんだね
瑞希:そうそう! 作業の息抜きにセカイに来たら、レンがいるんだもん! ボク、びっくりしちゃってさ
瑞希:みんなに伝えなきゃーって思って、 急いで連絡したんだよね
絵名:まったく……それならそう書いてよね。 『話したいことがある』ってだけじゃ、 わかんないじゃん
瑞希:ごめんってば~!
瑞希:でも、セカイが賑やかになるのは嬉しいよね!
奏:……そうだね。 まだ、レンは慣れないみたいだけど……
ミク:みんなが来る前に、少し話したんだけど……。 ちょっと緊張してるみたい
絵名:……でも、ミクにはなついてるんだよね
MEIKO:——レンを見つけて、私達のところまで 連れてきたのが、ミクだったからでしょうね
まふゆ:……そうだったんだ
ルカ:ふふ。もう少し、 私達に心を開いてくれてもいいのにね?
レン:え、えと……
リン:ルカ。 レンが、怖がってる
ルカ:あら。リンのことも怖がってるかもしれないわよ?
リン:えっ……
リン:そんなことない……よね?
絵名:言わせようとしてるじゃん、それは……
瑞希:あはは……。 レンとは、ゆっくり仲良くなるしかないね
奏:そうだね……
まふゆ:…………
まふゆ:(……少しだけ、楽になってきた気がする)
まふゆ:(でも——)
まふゆの母親:……後悔、しないようにね?
まふゆ:…………っ
奏:まふゆ?
ミク:……どうしたの? なんだか、苦しそう
奏:……何かあったの?
まふゆ:……別に、何も……
絵名:——何もないって顔してないから、 みんな心配してるんでしょ?
絵名:なんでもいいから、言葉にしてみたら?
まふゆ:言葉に……
まふゆ:…………模試の
まふゆ:模試の、勉強をしなくちゃいけなくて。 でも……
まふゆ:……私のシンセが、お母さんに見つかって
奏:シンセ……?
瑞希:えっ——。 まふゆ、それ本当?
まふゆ:……うん
瑞希:……そっか。 あのお母さんに……
絵名:ちょっと、ふたりで話進めないでよ。 まふゆのお母さんにシンセが見つかったら、なんかまずいの?
瑞希:あー……まずいっていうか、 まずくなりそうだなっていうか……
奏:もしかして…… まふゆ、音楽やってること話してないの?
まふゆ:……うん。 お母さんは、私に勉強してほしいって思ってるから
まふゆ:……それで昔、部屋に置いてたシンセを 捨てられそうになったの
奏・絵名:『えっ……!?』
絵名:何それ、いくら勉強してほしいからって、 そこまでする!?
まふゆ:……その時は、捨てられそうになったけど、 回収される前に取り戻せたから
奏:じゃあ、さっきシンセがお母さんに見つかったって 言ってたけど、もしかして……
まふゆ:——うん
まふゆ:……預かるって言われた。 でも、そのうち捨てられると……思う
ミク:まふゆ……
絵名:信じられない。別に悪いことしてるわけじゃないのに、 人の物を勝手に捨てるなんて……
レン:…………
瑞希:……ねえまふゆ、よかったら お母さんのことを話してくれない?
まふゆ:…………
まふゆ:……そんなに、おもしろい話じゃないよ
瑞希:そうだよね。 家の話だし、話しづらいことだっていうのもわかってる
瑞希:だから、嫌なら無理して話さなくてもいいよ
瑞希:でも——話して楽になることなら、 聞かせてくれたら嬉しいなってさ
まふゆ:話せば……
まふゆ:…………わかった

第 4 话:揺れる心

誰もいないセカイ
瑞希:それで——まふゆのお母さんって、どんな人なの?
まふゆ:……普通の人だよ
絵名:勝手に人の物を捨てようとするなんて、 全然普通じゃないでしょ
絵名:さっき、昔シンセを捨てられそうになったって 言ってたけどさ、あんたは何も思わなかったの?
まふゆ:何も……
まふゆ:…………
まふゆ:……でも、お母さんは、 私の将来を考えて言ってくれてる……と、思う
まふゆ:音楽に時間を使うより……、 受験勉強につながることをしたほうが、いいはずだって。 それが……将来のためになるから……
まふゆ:だから、……私は、……音楽を……
まふゆ:音楽を……
まふゆ:…………っ
奏:まふゆ……
絵名:…………
絵名:でも、あんたには必要なんでしょ? だったら親に話さなきゃダメじゃん
絵名:……黙って親の言いなりになることなんて、ないんだから
まふゆ:……別に、そんなつもりない
まふゆ:お母さんが私のことを考えてくれてるのは…… 本当のことだと、思うから
絵名:だから、それが親の押しつけだって言って——
瑞希:絵名。まふゆのことが心配なのはわかるけど、 いったん落ち着こう?
瑞希:……まふゆにとっては、大切なお母さんなんだからさ
絵名:それは、わかってるけど……
絵名:……まふゆは、お母さんの言ってること、 正しいって思ってるわけ?
まふゆ:…………うん
まふゆ:正しい、と思う
絵名:……そう
絵名:でも——、 本当にそう思ってるのなら、ここには来てないんじゃないの?
まふゆ:え……?
絵名:だって、あんたの母親は 音楽よりも勉強しろって言ってるんでしょ?
絵名:それが正しいって思ってるなら、 あんただって部屋で勉強してるはずじゃない
まふゆ:…………それ、は……
まふゆ:…………私、音楽は、もうやめるよ
まふゆ:それで、将来のために受験勉強する。 だから安心して、お母さん
まふゆ:…………セカイに、行こう
まふゆ:私は——
まふゆ:…………わからない……
瑞希:——まぁまぁ! まふゆも疲れてるみたいだし、 この話はまた今度にしない?
瑞希:そうだ、レンの歓迎会とかやろうよ! 早くみんなと仲良くなれるようにさ
レン:え、ぼくの……?
リン:いいけど、急だね
ルカ:ふふ、いいんじゃないかしら。 メイコも、もちろん参加するわよね?
MEIKO:……歓迎はするけど、 騒ぐのは勝手にやってちょうだい
瑞希:みんなもいいかな?
絵名:断る理由もないしね。別にいいよ
奏:わたしも大丈夫だけど……
まふゆ:……模試が終わるまでは、無理
瑞希:あ……。そうだよね
まふゆ:……ごめん。 今日は、先に帰るね
まふゆ:勉強しないといけないから
奏:まふゆ……!
まふゆ:……何?
奏:わたしが、言えることじゃないと思う、けど……
奏:家族を——お母さんを大切にしたい気持ち、わかるよ。 でも、無理はしないでほしい
奏:まふゆが苦しんでるのは……嫌だから
瑞希:……ねぇ、まふゆ
瑞希:ボクは、まふゆが好きなようにしていいと思うよ。 親の言うことを、全部聞く必要なんてないんだからさ!
瑞希:勉強に疲れちゃったら、 フェニランにだって遊びに行ってもいいんだし!
まふゆ:(……フェニラン……)
まふゆ:…………そうだね、ありがとう
まふゆ:じゃあ、また
レン:……あ……
奏:まふゆ……
奏:……まふゆのために、 何かできることはないのかな
瑞希:そうだね。 でも、奏は今も十分、まふゆの力になってると思うよ
リン:うん。いつもまふゆのために、曲作ってるし
リン:……心配になる気持ちは、わかるけど
ルカ:ふふ、リンも心配だものね
リン:うるさい
奏:…………
ミク:ねえ、奏
ミク:もし、まふゆのために悩んでるのなら—— まふゆと一緒に、曲を作ってほしい
奏:え……?
ミク:まふゆは、奏達と曲を作ってる時は 安心した顔をしてるから
ミク:だから……
絵名:——たしかに、それが一番いいかもね
絵名:まふゆはわかってなさそうだけど、 こっちの活動も大事だって思ってるみたいだしね
奏:……そっか……
瑞希:となると、奏に早く曲を作ってもらうためにも、 フェニランに行ってリフレッシュしなきゃね!
瑞希:本当は4人で行ければよかったんだけど……、 無理強いするのは、よくないと思うし
絵名:ま、結果的にそれがまふゆのためになるなら いいんじゃない?
奏:……そうだね
奏:みんな、ありがとう。 まふゆのために早くラフを作れるように頑張るよ
ミク:うん、頑張って。奏
レン:……まふゆちゃん……
レン:大丈夫、かな……
まふゆの部屋
まふゆ:…………
絵名:……まふゆは、お母さんの言ってること、 正しいって思ってるわけ?
絵名:でも——、 本当にそう思ってるのなら、ここには来てないんじゃないの?
まふゆ:…………っ
まふゆ:…………私は、どうして——……

第 5 话:心、迷子

模試 当日
朝比奈家 リビング
まふゆ:……それじゃあ、お母さん。 模試、行ってくるね
まふゆの母親:いってらっしゃい、まふゆ。 帰りはそんなに遅くならないわよね?
まふゆ:あ、終わったら自己採点して帰ってくるから、 少し遅くなるかも。 帰る時にまた連絡するね
まふゆの母親:わかったわ、気をつけて行ってくるのよ。 頑張ってね
まふゆ:——ありがとう。いってきます
スクランブル交差点
まふゆ:模試会場は……あっち、だっけ
まふゆ:……。 …………行かなきゃ
宮益坂
まふゆ:(…………足が、重い)
まふゆ:(駅からそんなに遠くないはずなのに、 会場まで、やけに長く感じる)
まふゆ:……A判定を取らないと。 お母さんが、期待してるから……
まふゆ:(——でも……)
まふゆ:(……胸が、冷たい……)
まふゆ:(お母さんが喜んでくれるのに、どうして……)
まふゆの母親:お母さん、今度の結果も楽しみにしてるわ
まふゆ:(——期待に、応えないと)
絵名:でも——、 本当にそう思ってるのなら、ここには来てないんじゃないの?
まふゆ:(…………期待に——……)
まふゆ:……メッセージ。誰から……
まふゆ:っ……!
まふゆの母親:『そろそろ会場に着いた? 模試、頑張ってね』
まふゆの母親:『お母さん、楽しみに待ってるわ』
まふゆ:…………っ
まふゆ:はぁ……、はあ……っ
まふゆ:(……体の内側がぐるぐるしてるみたいで、 すごく気持ち悪い。それに息苦しい……)
まふゆ:(でも……早く、行かないと)
まふゆ:(模試を受けないと、お母さんが——)
まふゆの母親:まふゆが、本当にやりたいことをしなさい。 でも——
まふゆの母親:……後悔、しないようにね?
まふゆ:っ…………
まふゆ:——私、は……
まふゆ:あ……、誰……?
瑞希:『やっほー! まふゆ、もうすぐ模試かな? ボク達は今フェニランに集合したところ!』
瑞希:『行けないって言ってたけど、自己採点とか全部済んで、 早く終わったら、いつでも来ていいからね!』
まふゆ:………………行かなきゃ
スタッフ:学生1枚ですね
まふゆ:…………はい
スタッフ:ありがとうございます。 では、フェニックスワンダーランドをお楽しみください!
フェニックスワンダーランド
まふゆ:……どうして、来ちゃったんだろう
まふゆ:(今ならまだ間に合う。 戻らないと——)
まふゆ:(戻らないと、いけないのに……)
まふゆ:…………
???:『——まふゆ』
まふゆ:……ミク? それに、レンも……
レン:『……え、と……』
ミク:『この前、セカイに来た時、 まふゆが苦しそうだったから』
ミク:『レンが、様子を見に行きたいって』
まふゆ:……そうだったんだ
ミク:『……でもまふゆ、ここは……?』
???:まふゆ!
まふゆ:みんな……
奏:あれ、ミクとレン……? ふたりとも、こっちに来てたんだ
レン:『う、うん』
瑞希:ていうかまふゆ、模試だったんじゃないの? もしかして、予定変わった?
絵名:それならそうと、来るなら連絡くらいしてよね。 たまたま見つけたからよかったけど……
絵名:あ。もしかして、サボったりでもした? ……なんて、まふゆがそんなことするわけないか
まふゆ:…………
絵名:まふゆ?
奏:……まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……わからない
絵名:わからないって……
まふゆ:…………わからないの
レン:『…………』
瑞希:——じゃあさ、ちょっと歩かない?
瑞希:何があったかはわかんないし、 言いたくないならボクも聞かないよ
瑞希:でも、せっかく来たんだしさ。 遊ぶ気分にはなれないかもしれないけど、 雰囲気だけでも楽しんだほうがいいかな~って!
瑞希:もちろん、帰りたくなったら いつでも帰って大丈夫だよ
まふゆ:…………
まふゆ:…………うん
瑞希:よっし、決まり! じゃあみんな、行こっか!
瑞希:ミク達も、フェニランって初めてでしょ? 一緒に回ろうよ
ミク:『うん』

第 6 话:楽しげな騒がしさ

フェニックスワンダーランド
レン:『わあ……!』
ミク:『みんな、楽しそうだね』
レン:『うん、ニコニコしてる』
絵名:やっぱり人多いねー。 前に来た時は、もう少しゆっくり歩ける感じだったのに
瑞希:例のナイトショーでバズったみたいだしね。 それに今、あちこちで宣伝公演もやってるみたいだし 地方から遊びに来てる人も多いみたい
奏:そうなんだ……。 瑞希、詳しいね
瑞希:ま、ショーキャストやってる知りあいがいるからねー。 ナイトショーの演出も担当したみたいだし、 時間があればみんなで見たいけど——
まふゆ:…………
奏:まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……うん
まふゆ:(……もう、模試が始まった時間だ)
まふゆ:(……お母さんになんて言われるかな。 せっかく、応援してくれてたのに)
まふゆ:(今からでも、戻ったほうが——……)
???:——あれ、朝比奈センパイ?
まふゆ:え……
瑞希:ごめん、ミク達隠れて!
ミク:『わ、わかった……!』
まふゆ:——鳳さん?
えむ:ひゃっ!?
えむ:だ、大丈夫ですか? なんだか、いつもより元気がないような——じゃなくて! いつもと雰囲気が違う気が……
まふゆ:……うん、ごめんね。大丈夫だよ
まふゆ:でも、こんなところで会うなんて偶然だね。 遊びに来たの?
えむ:あっ、あたしはこれからショーをやるんです! 実はここでショーキャストしてて!
まふゆ:あ……そうだったね。 そっか、ごめん。前に教えてもらってたね
えむ:ううん、大丈夫です! 朝比奈センパイはお友達と遊びに来たんですか?
まふゆ:……うん、そうだよ
絵名:ショーキャストって……、 もしかして、ナイトショーにも出るの?
えむ:はいっ! ナイトショーの前に、ワンダーステージでもショーをやるので 皆さんもよかったら見に来てください!
瑞希:ありがと! ちょうど見たいね~って話してたんだ!
えむ:えへへ……! わんだほいな気持ちになれるように、がんばります!
奏:わんだほい……?
えむ:じゃあ、えっと、朝比奈センパ——
まふゆ:……ん?
えむ:いひゃっ!
まふゆ:どうしたの?
えむ:えと、えと……!
えむ:——朝比奈センパイ! フェニックスワンダーランド、楽しんでください!
えむ:ここは、みーんなを笑顔にしてくれる場所なのでっ!
まふゆ:え……
まふゆ:——うん、ありがとう
えむ:じゃあ、あたしはこれで!
瑞希:ばいばーい! ショー、がんばってね!
まふゆ:……笑顔にしてくれる、場所……
瑞希:あの子、まふゆの後輩? すごく明るい子だったね
まふゆ:……うん
ミク:『でも、まふゆのこと怖がってるみたいだった』
レン:『まふゆちゃん、怖くないのにね……』
絵名:いや、さっきのまふゆは十分怖かったと思うけど
まふゆ:……そうだったかな
絵名:ま、今日は仕方ないんじゃない? 遊びに来てるんだから、無理する必要もないでしょ
まふゆ:…………うん
奏:まふゆ、大丈夫? もし調子が悪いなら、少し休んでも——
まふゆ:別に、平気。 何か乗るのなら、つきあうよ
瑞希:ホント!? じゃあ、ちょうど乗りたいのがあるんだよね! みんなで行こうよ!
ミク:『乗るって、何?』
瑞希:あー、アトラクションって言ってね、 みんなで乗り物に乗ったりして遊ぶんだ
瑞希:ちなみにボクが乗りたいのは、フェニックスコースター!
絵名:それって、結構本格的なやつじゃなかった? レン達もいるし、もう少し子供向けのやつにすれば?
瑞希:とかいって、絵名が怖いんじゃない?
絵名:は? そんなわけないでしょ!
レン:『こ、怖いの?』
瑞希:あー、大丈夫だとは思うけど……。 子供向けのほうに乗ってみて、いけそうなら ちょっと速いやつに乗ろうか!
絵名:ま、それならいいんじゃない?
ミク:『わかった』
奏:そういえば、まふゆはここに来たことあるの?
まふゆ:……あるよ
絵名:えっ!? あるの!?
まふゆ:……そんなに驚くこと?
絵名:いや、まあ不思議じゃないけど。 今のあんたとフェニランが結びつかなくて……
まふゆ:……来たのは、子供の頃にお母さんと一度だけ
奏:そっか……
まふゆ:(お母さんと来た時は、どんな感じだったっけ……)
まふゆ:(……思い出せない)
まふゆ:(……お母さん——)
瑞希:とうちゃーく! じゃ、さっそく乗ってみよーう!
まふゆ:…………
瑞希:あー、楽しかった~!
レン:『ぼくも……! びゅーんってなる乗り物、すごかったね』
ミク:『うん、びっくりしたけど景色が綺麗だった』
絵名:気に入ったならいいけど、 ……私はちょっと休みたいかも
奏:わたしも……
まふゆ:……飲み物買ってくる
まふゆ:……結局、この時間までいちゃったな。 今から行っても……意味ない、か
まふゆ:(お母さん、悲しむだろうな……)
ミク:『まふゆ。大丈夫?』
まふゆ:……わからない。 どうしてここに来たのかも、よくわかってないから
まふゆ:……本当に、なんで来ちゃったんだろう
レン:『……。 ま、まふゆちゃんは——……』
レン:『……みんなといるより、 模試っていうのに、行きたいの……?』
まふゆ:それは……
まふゆ:(……模試のほうが大事なのは、わかってる。 お母さんだって、それを望んでる)
まふゆ:(でも——)
まふゆ:…………やっぱり、わからない
ミク:『……あれ?』
ミク:『まふゆ。奏達、いないよ』
まふゆ:え……? あれ——
まふゆ:私、どこから来たんだっけ……

第 7 话:在りし日の記憶

フェニックスワンダーランド
レン:『どうしよう。ま、迷子ってこと……?』
ミク:『落ち着いて、レン。 えっと……。どうしよう……』
まふゆ:……奏達に連絡する。スマホ、使うね
まふゆ:…………。 連絡とれた。動かないで待ってて、だって
ミク:『……よかった。 もう大丈夫だね、レン』
レン:『うん……!』
まふゆ:……奏達がわかりやすい場所で、座って待ってようか
レン:『……』
レン:『……ひとりになるの、怖くないの?』
まふゆ:別に……
レン:『そ、そうなんだ……。 すごいね……。ぼくは、ちょっと怖いな……』
まふゆ:……どうして、レンが怖がるの。 今ひとりなわけでもないのに
レン:『そうだけど、えっと……』
レン:『……セカイに来た時のことを、思い出しちゃうんだ』
まふゆ:セカイに?
レン:『……うん。すごく広くて、なんにもなかったから……。 ミクが見つけてくれるまで迷子になっちゃってたんだ』
レン:『その時のことを思い出すと、怖くなっちゃって……』
まふゆ:…………
まふゆ:……そういえば、昔——
幼いまふゆ:わあ……!
まふゆの母親:——まふゆ。遊園地は人が多いからね、 お母さんからはぐれないようにしなきゃだめよ
幼いまふゆ:うん! おかあさん、連れてきてくれてありがとう!
幼いまふゆ:(きらきらしてるのがたくさんある……! それに、みんなニコニコしてて楽しそう)
まふゆの母親:あ、見てまふゆ。 あのお店のチュロス、美味しいって評判らしいの。 食べてみましょうか
幼いまふゆ:うん!
まふゆの母親:結構人が並んでるわね……。 ちょっと待つことになるけど大丈夫?
幼いまふゆ:大丈夫だよ! 遊園地きらきらしてるから、見てるだけで楽しいもん!
まふゆの母親:ふふ。まふゆはいい子ね。 でも、お母さんのそばから離れないようにね?
幼いまふゆ:はーい!
幼いまふゆ:(チュロス買ったら、何に乗ろうかなぁ……! メリーゴーランドもかわいいし、おさかなコースターもいいな)
幼いまふゆ:(そういえば、たまにフェニーくんが 遊園地の中をお散歩してるんだっけ)
幼いまふゆ:(いないかなぁ……)
幼いまふゆ:…………あっ!
幼いまふゆ:(フェニーくんいた! 握手してもらいたいなぁ……!)
まふゆの母親:はい、まふゆ。チュロスよ。 プレーンでいいわよね
幼いまふゆ:あ、うん! ねえおかあさん、あっちにフェニーくんが……
まふゆの母親:ちょっと待ってね。 お父さんから電話だわ、何かしら
幼いまふゆ:う、うん……
幼いまふゆ:(……あ、フェニーくん、行っちゃう。 今行かないと、握手できないかも)
幼いまふゆ:(でも、おかあさんと一緒じゃないと……)
幼いまふゆ:あのね、おかあさん……
まふゆの母親:まふゆ、もうちょっとだけ待ってくれる?
まふゆの母親:あら、お仕事早く終わりそうなの? じゃあお夕飯、早く作らなきゃいけないわね
幼いまふゆ:…………
幼いまふゆ:(おかあさん、まだ電話終わらなそう)
幼いまふゆ:(…………本当は、だめだけど)
幼いまふゆ:(フェニーくん、すぐ近くにいるし ちょっとだけなら……)
幼いまふゆ:……えへへ
幼いまふゆ:(フェニーくんと握手できてよかった……。 早くおかあさんのところに戻らないと!)
幼いまふゆ:——あれ?
幼いまふゆ:おかあさん、ここにいたはずなのに…… なんで?
幼いまふゆ:(どこにもいない……あれ……?)
幼いまふゆ:…………おかあさん?
幼いまふゆ:……ど、どうしよう……。 迷子に、なっちゃった……おかあさん、探さないと……
通行人の女性:——ねえ、どうしたの? もしかして、パパやママとはぐれちゃった?
幼いまふゆ:っ……!
通行人の女性:迷子みたいね……。 お名前言えるかな?
幼いまふゆ:えっと、朝比奈——
幼いまふゆ:(あ……でも、知らない人に名前を言っちゃダメだって おかあさんが……)
幼いまふゆ:その……うう……
幼いまふゆ:ご、ごめんなさい……っ!
通行人の女性:あ、ちょっと……!
幼いまふゆ:(知らない人に、声かけられた……。 周りの人も、ずっとこっち見てる……)
幼いまふゆ:(メリーゴーランドも、あんなに大きかったっけ……? お馬さん、かわいいと思ってたのに……)
幼いまふゆ:(なんでだろう、こわい……)
幼いまふゆ:(——遊園地、全然きらきらしてないよ……。 なんで……?)
幼いまふゆ:(……こわい。こわいよ。 おかあさん、どこ……?)
幼いまふゆ:おかあさん……、おかあさん……っ!
まふゆの母親:——まふゆ!! よかった、探したのよ……!
幼いまふゆ:あ……。 おかあ、さん……!
幼いまふゆ:おかあさん……
まふゆの母親:もう、心配したのよ。 見つかって安心したわ……
まふゆの母親:まふゆ、大丈夫だった? どこもケガしてない?
幼いまふゆ:うん……っ
まふゆの母親:そう、よかった……
幼いまふゆ:おかあさん、ごめんね……?
まふゆの母親:ううん、いいのよ。 まふゆが無事でいてくれたことが一番だもの
幼いまふゆ:おかあさん……
まふゆの母親:ねえ、まふゆ。 ひとつだけ聞いてもいい?
幼いまふゆ:うん、なあに?
まふゆの母親:どうして、お母さんの言うことを聞かなかったの?
幼いまふゆ:え……
まふゆの母親:お母さんのそばから離れちゃだめよって、言ったわよね。 それなのに、どうしていなくなっちゃったの?
幼いまふゆ:あ……。 え、えっと……
まふゆの母親:お母さんね、まふゆがいなくなって、 すごく怖かったのよ
まふゆの母親:まふゆが、お母さんを心配させるような “悪い子”になっちゃったと思って——
幼いまふゆ:……!
幼いまふゆ:悪い、子……
まふゆの母親:ええ、もしまふゆがいなくなってしまったらって思ったら、 お母さん、とても悲しい気持ちになって……
まふゆの母親:胸がぎゅっとして……とっても、怖かった……
まふゆの母親:本当に……っ
幼いまふゆ:あ……
幼いまふゆ:ご、ごめんなさい。おかあさん……! 泣かないで、わたし、わたし……
幼いまふゆ:……おかあさんが泣くの、やだ……っ
まふゆの母親:……まふゆは、優しい子ね……
まふゆの母親:まふゆが、お母さんの言うことをちゃんと聞く“いい子”だったら お母さんも悲しくないのに……
幼いまふゆ:おかあさん……
幼いまふゆ:ごめんなさい……っ。 いい子に、する……! ちゃんとおかあさんの言うこと、聞くから……!
まふゆの母親:まふゆ……
まふゆの母親:——ふふ、大丈夫よ。 まふゆがいい子になってくれたから、 お母さんも悲しくなくなったわ
まふゆの母親:さあ、今日はもう帰りましょうか。 お父さんがいつ帰ってきてもいいように お夕飯の準備をしなきゃ
幼いまふゆ:うん……っ、あ……!
幼いまふゆ:お、おかあさん……。 手、痛いよ……引っ張らないで……
幼いまふゆ:——おかあさん……っ
まふゆ:——あの時、お母さんの手が、すごく冷たかった
まふゆ:ううん、あの時だけじゃない。 今もずっと……冷たい気がする
まふゆ:(でも、どうして……?)
レン:『まふゆちゃん……』
迷子の女の子:うっ、ううっ、ぐすん……。 お母さん、どこぉ……
ミク:『あ……迷子……』
レン:『た、大変……助けてあげないと……!』
まふゆ:そうだね。あ、でも……
女の子の母:——あっ、いた! よかった……どこも怪我してない?
迷子の女の子:お母さん……っ! うんっ、大丈夫だよ!
女の子の母:怖かったね、もう大丈夫よ。 はぐれないように手をつなごうか
迷子の女の子:うん!
まふゆ:…………。 大丈夫みたい
レン:『よかったぁ……』
ミク:『レン、嬉しそう』
レン:『……あの子が、あったかそうでよかったなって』
まふゆ:……あったかい?
レン:『う、うん。ひとりだと寂しいし、 なんだか心が冷たい感じがするから……』
まふゆ:……レンも、冷たいって感じるの?
レン:『……ぼくは……』
レン:『……ぼくも、そうだったから。 ひとりでセカイに来た時、誰もいなくて……』
レン:『みんなを探そうって歩いてたけど、誰も見つからなくて……』
レン:『すごく……心細かった』
ミク:『……レン』
レン:『——でも、ミクがぼくを見つけてくれて、 手を握ってくれた時、あったかいって思ったんだ』
まふゆ:……どうして?
レン:『……“ひとりじゃないよ”って、言ってくれた気がしたから』
レン:『だから、あの女の子も、 同じなのかなって……』
まふゆ:ひとりじゃ、ない……
奏:……ずっと、そばにいるよ
まふゆ:(私は——、 そのあたたかさを、知っているような——)
???:——まふゆ!
まふゆ:……っ!

第 8 话:私にとって、この場所は

フェニックスワンダーランド
奏:まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……奏……
瑞希:よかった、まふゆいた!
絵名:もう、探したんだからね! 本当いつも世話が焼けるんだから……
絵名:『道がわからなくなった』ってだけじゃ、 どこにいるのかわかんないでしょ?
まふゆ:……ごめん
瑞希:でも、すぐに見つかってよかったよ!
奏:うん。すぐに合流できたし、 まふゆに何もなくて安心した
絵名:ま、子供じゃないんだし、 そこまで心配する必要はないんだけど、まふゆだしね
奏:——まふゆ、ひとりにしてごめん。 はぐれて不安だったよね
まふゆ:……え……
奏:でも、もう大丈夫だよ
まふゆ:…………
ミク:『よかったね、まふゆ』
まふゆ:……うん……
まふゆ:(……なんだろう、この感覚)
まふゆ:(さっきまで、すごく冷たかったのに……)
奏:……そういえば、なんだか人が増えてきた?
絵名:もうすぐナイトショーだからじゃない? それで人が移動してるんだと思う
瑞希:そっか、もうそんな時間なんだ。 またはぐれないようにしないとねー
絵名:だね……って、まふゆ! ぼーっとしてると人にぶつかっちゃうでしょ!
まふゆ:えっ……?
まふゆ:っあ……
奏:……っ、まふゆ!
奏:大丈夫? ケガしてない?
まふゆ:……うん、軽くぶつかっただけ。 でも……
奏:どうしたの?
まふゆ:……奏の、手……
奏:あ——ごめん。 転びそうだったから、つい握っちゃって……
まふゆ:……別に、嫌じゃない
まふゆ:…………
まふゆ:(……奏の手、少し冷たい)
まふゆ:(でも……どうしてだろう。あたたかい気がする)
まふゆ:(奏だけじゃない。 絵名も、瑞希も……みんながくれるものが、心地いい)
まふゆ:(これは……なに?)
瑞希:ふたりとも、大丈夫?
奏:うん、なんとか
まふゆ:……大丈夫
まふゆ:(……まだ、胸の奥があたたかい)
まふゆ:(どうして、こう感じるんだろう——)
レン:『……ねえ、まふゆちゃん』
まふゆ:……何?
レン:『その……。まだ、冷たい?』
まふゆ:今は……冷たくない
まふゆ:……理由は、わからないけど
レン:『……そっか』
レン:『まふゆちゃんがそう感じるなら、 ぼくも嬉しいな』
レン:『きっと、みんなと一緒にいるからだね』
まふゆ:え——
レン:『だってぼくも、みんなといるとあったかいもん』
まふゆ:みんなと、いると——
まふゆ:(…………そっか)
まふゆ:“ここ”は……あったかいんだ
絵名:——それで、このあとのナイトショーだけど……。 どうする、見ていく?
瑞希:見たい見たい! ……あ、でも、 そろそろまふゆは、帰らなきゃいけない時間か……
まふゆ:時間……
まふゆ:(……もうすぐ、門限だ)
まふゆ:(ナイトショーを見てたら、門限には間に合わない。 帰らないと……)
まふゆ:(……でも——)
レン:『きっと、みんなと一緒にいるからだね』
まふゆ:……。 ……せっかく、来たから
まふゆ:少しだけ見て、帰ろうと思う
奏・絵名:『……!』
瑞希:……よーし! じゃあ急がないと! 早く行かないと遠くから見ることになっちゃうよ!
絵名:せっかくだからいい場所で見ないとね
奏:行こうか、まふゆ
まふゆ:……うん
ミク:『まふゆ、元気になれたみたいだね』
レン:『……うん!』
まふゆ:(……ここは、あったかい)
まふゆ:(……“みんながくれるもの”が、あたたかい?)
まふゆ:(わからないけど、この感覚は——)
まふゆ:……なんだか、ほっとする
まふゆ:(——じゃあ)
まふゆ:(お母さんと、奏達は……何が違うの?)
まふゆ:(どうして、お母さんといると—— 冷たく感じるんだろう)
まふゆ:(…………苦しい。考えるのはやめよう)
まふゆ:(今は——)
まふゆ:(この“あたたかい”に、もう少しだけ——)
朝比奈家 リビング
まふゆの母親:——体調が悪くなって模試を……? そう……今は平気なのね
まふゆの母親:それで、ひとりで帰ってこれそうなの? お母さん迎えに行きましょうか
まふゆの母親:……あら、お友達の家に? わかったわ。気をつけて帰ってくるのよ
まふゆの母親:帰ったらその子のお宅にお礼がしたいから、 話を聞かせてちょうだいね
まふゆの母親:ふふ、まふゆがお世話になったんだもの。 何もしないわけにはいかないでしょう?
まふゆの母親:ええ、じゃあ体調が落ち着いたらまた連絡するのよ。 お母さん、待ってるから
まふゆ:『ありがとう、お母さん。 それと……ごめんなさい』
まふゆの母親:(あの子……頑張りすぎたのかしら。 まふゆは昔から努力家だものね)
まふゆの母親:(でも——連絡してくるのが随分遅かったわね。 休んでいたからってことなんでしょうけど……)
まふゆの母親:(まふゆが門限を破るなんてこと、 今までなかったのに)
まふゆ:音楽をやってる友達がいるんだけど、 その子を見てたら興味が出てきて、 私も勉強をしてみたいなって思ったの
まふゆの母親:…………まさか、ね
まふゆの母親:…………
教師:『——はい、宮益坂女子学園です』
まふゆの母親:もしもし、2年B組の朝比奈まふゆの母です。 お尋ねしたいことがあるので、 まふゆの担任に代わってもらいたいのですが——……