活动剧情
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活动ID:65
第 1 话:次のステップへ
一歌の部屋
一歌:えっと……ボーカルメロディーを入力したら、 歌詞を入れて……
ミク:……♪ ……♪
一歌:あ……!
一歌:(ミクが、歌ってくれた……!)
一歌:(まだベタ打ちだし、曲もみんなで作ったやつで 私がちゃんと作曲したものじゃないけど……。 やっぱり嬉しいな)
一歌:(よし。次はパラメータをいじって……)
ミク:——♪ ——♪
一歌:……うん、ちょっと自然な歌いかたになった気がする
一歌:ふふ。頑張って調整すれば、 あっちのミクみたいにかっこよく歌ってくれそう
一歌:(あとは……曲だな)
一歌:(私も、一から作曲できるようになってみたいけど——)
一歌:(なんか、イメージしたものが ちゃんと音にならないんだよね……)
一歌:——そう考えると、やっぱり咲希はすごいな
一歌:(いつも私達らしい曲を作ってくれるし、 私が先に歌詞を作った時も、 ぴったりあうメロディーを乗せてくれる)
一歌:……早く私も、咲希みたいに Leo/needの曲を作れるようになりたいな
一歌:ミク、練習……つきあってくれる?
ミク:——♪ ——♪
休日
咲希の部屋
咲希:……それで、サビ前はこれから盛り上がるぞ~っていう 感じをだして……
咲希:うんうんっ! これならサビとのつながりもいいし、イメージどおり! この曲でLeo/needのまた新しい一歩を——
咲希:……ん?
咲希:あーっ! もうこんな時間!? セカイで練習する約束してたのに!
咲希:わわわ……早く行かなくちゃ! えーっと楽譜楽譜……!
教室のセカイ
咲希:ごめーん、みんな! 次の曲のこと考えてたら遅くなっちゃった!
穂波:あ、咲希ちゃん! ふふっ、すごくいいタイミングだね
一歌:うん。まるで狙って来たみたいだったよ
咲希:えっ、何かあったの?
レン:ああ。ちょうど今——
リン:しほっちから、 新しいライブハウスの話を聞こうとしてたとこだったんだ~!
レン:お前なぁ、今オレが話そうとしてただろ
リン:えー! だって早く話したかったんだもん! 誰が言っても同じでしょ~?
KAITO:ふ、ふたりとも落ちついて……
咲希:新しいライブハウス? それって……
咲希:あ! 前に『次は違うライブハウスでやるのもいいかも』って 話してた、あれ!? もう場所決まったの!?
志歩:……まったく、来たと思ったら騒がしいんだから
志歩:昨日、ライブハウスのことを店長に相談したら、 よさそうなところを教えてくれたんだ
志歩:客層とか雰囲気はいつものライブハウスと結構違うけど、 レベルの高いバンドが多く出るから 経験が積みやすいかもって
志歩:——ここなんだけど
ルカ:あら、なんだかオシャレなフライヤーね
咲希:ホントだ~! 場所はシブヤだけど……駅からはちょっと離れてるみたい?
一歌:たしかこの辺りって、暗い路地が多いけど、 小さなライブハウスがたくさんあるから夜は結構賑わってるよね
志歩:うん。路上で音楽かけて踊ってる人もいたりして、 終電を逃しちゃった人とか、 行き場のない人のたまり場にもなってるみたい
MEIKO:へえ……。 眠らない街って感じで、おもしろそうだね
穂波:なんだか、 いつものライブハウスとは結構違いそう……
ミク:『レベルが高い』って言ってたけど…… 出演者もベテランのバンドが多いの?
リン:もしかして、プロの人達も出てきちゃったりとか~?
咲希:ん~。フライヤー見た感じ そんなにおっきくないところみたいだし、それはさすがに……
志歩:いや、リンの言うとおりだよ
穂波:えっ……!?
レン:そうなのか?
志歩:まあ、正確に言うと、 いくつかの事務所に声をかけられてるバンドが よく出てるらしいんだ
志歩:しかもそのバンドの中には、 私達と同い年くらいの子達もいるんだって
穂波:……! わたし達と同い年なのに 事務所に声をかけられてるなんて……すごいね
ミク:うん。 純粋に、その子達の演奏を聴いてみたいな
一歌:そうだね。 聴くだけでもすごく勉強になりそう
穂波:……たしかに、そんなすごい人達も出るところなら、 やってみたいなって思うけど……
穂波:そういう人達と同じステージに立つのは、 ちょっと緊張しちゃうかも……
志歩:そこまで緊張しなくてもいいでしょ。 私達は一番最初のライブで、 STANDOUTの前座をやったんだから
穂波:そ、それはそうだけど……!
穂波:あの時はイオリさん達のことより、 志歩ちゃんのことで頭がいっぱいだったから……
一歌:ふふ、そうだね
志歩:……ま、実際どうするかは、 私ひとりで決めることじゃないからね
志歩:ライブハウスが変われば、 お客さんの求めるものも違ってくるから、 結構な挑戦になるけど……
志歩:私はやってみるのもいいと思う。 みんなはどう?
咲希:——アタシ、やりたいな!
穂波:咲希ちゃん……
咲希:そんなすごい子達と一緒にやれるなんて、すごく楽しそうだし! それに、アタシ達と同じくらいなら 友達になれるかもしれないでしょ?
咲希:いいアドバイスとか、もらえるかもしれないよ!
一歌:……咲希の言うとおりかも。 演奏の勉強になるだろうし、私もやってみたいな
穂波:…………
咲希:あ、でも不安な気持ちもわかるから、 無理しなくても——!
穂波:ううん、大丈夫
穂波:……そうだよね。 プロを目指してるんだから、これからすごい人達と出会ったり 同じ場所で演奏しなきゃいけない時もあるよね
穂波:怖いって考えないで、勉強になるって思って 挑戦しなきゃ……!
一歌:穂波……
志歩:——決まりだね
咲希:やった~! 新しい場所でライブだ~!
咲希:あ、実はね、こういうこともあるかなって思って、 新曲のアイディアもだしてたんだよ!
一歌:そうだったの?
リン:新曲作ってたんだ!? さっすがサッキー☆
咲希:えへへ……。 だから、そのライブハウスでお披露目しようよ!
志歩:新曲は目玉になるし、もちろんいいけど……。 ここでのライブ、2週間後くらいにしようと思ってるけど 間にあうの?
咲希:大丈夫! もう構想は考えてあるし、 あとはアタシの気持ちを乗せるだけだから!
一歌:気持ちを乗せる……
一歌:そっか。 咲希は、いつもそうやって曲を考えてるんだね
咲希:うん! 最初の頃はいろいろ悩んじゃうことも多かったけど……
咲希:今は、アタシの経験とか、今思ってることとか、 そういうのから考えてるんだ!
一歌:そうなんだ……
一歌:(経験とか、今思ってること……。 たしかに、前に歌詞を考えてる時に私もやってたし、 次は、そういう風に曲を作ってみようかな)
咲希:よーし! 気合い入れて、キラキラな曲にしちゃうぞ~!
KAITO:……咲希、楽しそうだね
レン:次のライブ、成功するといいな
咲希:ふんふんふ~ん♪ ここは、こうしてっと……
咲希:……うん、いい感じ! 今回は最初からイメージがスルっとでてきてたから 曲も固めやすいな~!
咲希:……それにしても……
咲希:新しいライブハウス、どんな感じなのかなぁ。 雰囲気がいつもと違うみたいだけど、 お客さんの反応とかも変わったりするのかな?
咲希:でも……どんな場所でも、今回のライブが、 アタシ達の曲をたくさんの人達に届けるための 最初の一歩になるんだよね!
咲希:えへへ、なんだかワクワクしてきちゃった!
咲希:……あ、そうだ! この気持ちも曲に乗せてみようっと! えーっと、サビの音をもっと跳ねさせて……
咲希:——うん、いい感じ! これはもしかしたら、 今までで一番いい曲ができちゃうかも~!?
第 2 话:初めてのライブハウス
ライブ当日
バックステージ
咲希:わあ……! ここから見ると、思ってた以上に広いね~!
一歌:うん、それに——
ライブハウスの客達:今日、初めて出るバンドあるんだって
ライブハウスの客達:へえ……。 どんな曲やるんだろ
一歌:……やっぱり、いつものところとは お客さんの雰囲気が違うね
志歩:そうだね。 いつもなら、開演前のお客さんからは高揚感っていうか、 結構楽しみにしてる雰囲気を感じるけど——
志歩:ここは、みんな落ち着いてる感じ。 ちょっと影があるっていうか
穂波:……なんだか少し不安になってきちゃった。 わたし達の演奏で、楽しんでもらえるかな……
咲希:大丈夫だよ、ほなちゃん! 今回のセトリは元気で楽しい曲ばっかりだし!
咲希:アタシ達の曲で、お客さんをいーっぱい盛り上げちゃおう!
穂波:咲希ちゃん……
志歩:ちょっと楽観的すぎる気がしなくもないけど、 その意気ごみはいいんじゃない
志歩:何より今回は初めてのライブハウスだし、 空気が掴めなくてもしょうがないと思う。 でも、全力でやれることはやりきろう
穂波・咲希・一歌:『うん!』
一歌:あ……次、私達の出番だよ
咲希:よーし、がんばろう、みんな!
一歌:——皆さん初めまして、Leo/needです!
一歌:今日は初めてこのライブハウスで歌うことになりました!
一歌:私達のことをまだ知らないお客さんにも、 曲を聴いて元気になってほしいと思います!
一歌:——聴いてください!
一歌:♪————!!
咲希:(あ……! すごい、ほなちゃんのドラムもしほちゃんのベースも いつもより勢いがある……!)
咲希:(アタシもがんばんなくちゃ! ワクワクした感じを音に乗せて……!)
咲希:(うん、いい感じ! これならきっとお客さん達もノって……)
ライブハウスの客達:…………
咲希:(あれ……?)
咲希:(どうして? 演奏はいつもよりすごくいいのに……。 いっちゃんの歌もギターも、すごくかっこいいのに……)
一歌:♪————!
ライブハウスの客達:……どう思う?
ライブハウスの客達:うーん…… あんま、好みではないかも
咲希:(お客さんが、ぜんぜんついてきてない……?)
咲希:(今までだったら、 ちゃんと聴いてくれた人はいたのに……)
咲希:(……ううん! きっとまだ1曲目だからだよね。 次こそは——!)
ライブハウスの客達:……2曲目もこの感じか……
ライブハウスの客達:ちょっとドリンク取ってくるわ
咲希:(え……)
咲希:(……どうして?)
志歩:…………
一歌:……、最後は、今日のために書き下ろした新曲です!
咲希:(っ……今度こそ、きっと大丈夫! だって今日ここでライブできることとか、 お客さんに会えることを楽しみにして作った曲だもん……!)
咲希:(大丈夫……大丈夫だよ。 自信作だし、演奏もたっくさん練習したんだから!)
咲希:(よーし、盛り上げていくぞーっ!)
一歌:♪————!
咲希:(手を振り上げて、会場のみんなも一緒に——)
ライブハウスの客達:……はあ……。 こういうノリはあんま好きじゃないんだよな
咲希:っ……!
志歩:(咲希……)
ライブハウスの客達:次のバンド、どこだっけ?
ライブハウスの客達:また新しいやつみたい。 ……いったん出る?
咲希:(……なんで?)
咲希:(これは、今日のために……。 この曲だったら、絶対盛り上がるって思ったのに……)
一歌:——あ、ありがとうございました
咲希:……ダメ……だったよね
一歌:お客さんの反応、よくなかったね
志歩:でも、演奏は今までのライブの中でも かなり良かったと思う
志歩:ライブハウスが違えば お客さんのニーズも変わって当然だから、 必要以上に落ちこまなくていいよ
志歩:前も言ったけど、全然知らないバンドのオリジナル曲なんて 興味ないって人もいるだろうし
咲希:それはそうだけど……
咲希:でも、好みの曲じゃなくても、 いい曲だったら、聴いてくれるんじゃないかな……
一歌:…………
咲希:今回やった曲は、本当に誰にも届いてないみたいだった
咲希:特に3曲目……新曲は、 ぜんぜんお客さんノってくれなかったよね
志歩:…………
咲希:どこがダメだったんだろう……。 自信作だったのにな……
穂波:わっ……何!?
咲希:すごい歓声……。 アタシ達の時は、あんなに静かだったのに
一歌:どのバンドがやってるのかな……?
咲希:わあっ、かっこいい……!
咲希:あの子達、アタシ達と同じくらい……だよね?
一歌:もしかして、今演奏してるバンドが——
志歩:……うん。 事務所に声をかけられてる『anemone』
咲希:あの人達が……
???:今日も来てくれてありがとう。 次は、一番好きって言ってくれる人も多いあの曲をやるね
???:♪————
咲希:……!
???:♪————
咲希:(……この曲……何……?)
咲希:(胸が、締めつけられる感じがする。 心臓をぎゅってされたみたいな……)
咲希:(歌詞も、メロディーも、悲しい感じ……。 なのに……)
咲希:……すごい……
一歌:……うん。 静かなのに、すごく引きこまれる……
志歩:…………
ライブハウスの客達:やっぱり、朔の作る曲は染みるな
ライブハウスの客達:うん……。 心にスッと入ってくるよ……
咲希:(あ……。あのお客さん達…… アタシ達が演奏してた時は、つまらなそうにしてたのに)
咲希:(すごく真剣に聴いて……泣いてる人までいる)
咲希:……わかる、気がする
咲希:(なんでだろう。 冷たい感じの曲なのに、なんだかちょっとあったかくて、 聴いてるだけで、すごく気持ちが楽になる気がする)
咲希:不思議……
???:——聴いてくれてありがとう。 それじゃ、またね
ライブハウスの客達:朔ー! もっと歌ってくれー!
ライブハウスの客達:次のライブまで待てないよ~!
穂波:お客さんの反応、すごい……
一歌:あんなに静かだった会場を、 ここまで、わかせられるなんて……
咲希:(……朔さん。 曲を作ってるのは、あのボーカルの朔さんって人なんだ)
咲希:(どうやったら、こんな曲が作れるんだろう。 聴いてる人の心を、ぎゅっと掴んじゃうみたいな……)
咲希:(アタシも、そういう曲を作ってみたい。 今みたいに、誰かの心を揺さぶる曲を……!)
志歩:……咲希?
anemoneのメンバー:朔、お疲れ
朔:うん、みんなもね
咲希:あっ……
咲希:あ、あの……朔さん! 少しお話させてもらえないでしょうか!
志歩:咲希……!?
第 3 话:届かないメロディー
ライブハウス
バックステージ
咲希:あの……えっと……!
咲希:anemoneさんのステージ、すっごく、すっごく良かったです! アタシ、とっても感動しちゃって……!
朔:そう。 聴いてくれてありがと
咲希:あっ、はい! ……じゃなくて……!
咲希:演奏もすごく上手だなって思ったんですけど、 曲がホントに心にぐっときて…… えっと、それで、アタシ……
咲希:どうしたらあんな曲が作れるのか教えてほしいんです!
咲希:実はアタシ達もプロを目指してるので……、 アドバイスとかあったら聞かせてもらえないでしょうかっ!?
朔:……へえ、あなた達もメジャーデビューを目指してるんだ
咲希:はい! だからアタシも、今の朔さんの曲みたいに、 聴いてくれる人の心に響くような曲が作りたいんです!
朔:……そう
朔:でも、悪いけど 曲の作りかたはうまく教えられないかな
朔:私はただ、自分の中にあるものをだしてるだけだから
咲希:自分の中にあるものを……
咲希:でも……どんな場所でも、今回のライブが、 アタシ達の曲をたくさんの人達に届けるための 最初の一歩になるんだよね!
咲希:……あ、そうだ! この気持ちも曲に乗せてみようっと! えーっと、サビの音をもっと跳ねさせて……
咲希:(それって、アタシも同じはずなんだけどな。 なのに、朔さんの曲とは、ぜんぜん違う……)
咲希:(どうして同じ作りかたをしてるのに、 アタシの曲はお客さんに届かないのかな……)
咲希:(そもそもテーマが違うから、とか? 朔さんの曲は悲しい曲で、 アタシのは明るい曲だし……)
咲希:(でも……それだけであそこまでお客さんの反応が 変わるかっていうと……違うような気がする……)
朔:聞きたいことはそれだけ?
咲希:あっ……。 え、えっと、もうひとつ……!
咲希:朔さんはアタシ達の曲を聴いて、どう思いましたか……?
朔:かわいいと思ったよ
咲希:……! ホントですかっ!?
朔:でも——私の胸に響くものはなかった
咲希:え……
anemoneのメンバー:ちょ、ちょっと朔——
朔:2曲目はちょっとだけ良かったけどね
朔:でも、3曲目に関しては、本当に何も感じなかったな。 メロディーラインはかわいいけど、それだけだなって
志歩:ちょっと、そんな言いかた——
朔:もちろん、バンドに方向性はあると思うから、 それでメンバーが納得してるならいいんじゃないかな
朔:実際、今日聴いた感じの曲でも 好きな人は好きだと思うしね
朔:ただ……
朔:——ここに来てるお客さんは、 あなた達みたいな音楽は求めてないと思うよ
朔:だから、求められている場所があるなら、 そこでずっとやっていったほうが、いいんじゃないかなって
anemoneのメンバー:もうっ、やめなって!
anemoneのメンバー:Leo/needの皆さん、ホントにごめんなさい。 ……ほら、行くよ!
朔:あ……うん。 それじゃ、またね
一歌:……、咲希——
咲希:……胸に、響かない……
穂波:そんなことないよ。 咲希ちゃんの曲、わたしは好きだよ
穂波:聴いてるとすごく元気になれるし……!
一歌:私は、今までのライブハウスのお客さんにも 咲希の曲はちゃんと届いてたと思うよ
一歌:じゃないと、ファンだって言ってくれる人も いなかったと思うから
咲希:…………
志歩:——演奏していて思ったんだけど このライブハウスは、私達には合わないかもしれない
穂波:雰囲気もお客さんの感じも、 いつもの場所と違ったもんね
志歩:うん。私達の音楽が求められてない、なんて 言われるのはムカつくけど
志歩:相性が悪いのなら、今無理をして ここで演奏しなくてもいいんじゃないかと思う
咲希:……それでいいのかな
志歩:え……
咲希:あ……ごめんね、しほちゃん!
咲希:志歩ちゃんが言ってることは、そうだなって思うよ。 でも——
咲希:朔さんの言葉を気にしないのは、 ここにいるお客さんのことを無視することにも なっちゃいそうだなって思っちゃって
志歩:咲希……
咲希:アタシは、どんなライブハウスでも、 お客さんに響く曲を作りたい……
咲希:だからやっぱり、ちゃんと考えなきゃって思うの
咲希:なんでアタシの曲は、 ここにいるお客さん達に響かなかったんだろう……って
一歌:それは……
咲希:……でも、今すぐに答えがでそうにないから、 1回家に帰って考えてみる!
咲希:それで次こそ、ここのお客さんの 胸に響くような曲を作ってみせるよ!
穂波:咲希ちゃん……
一歌:それなら、私達も別のところを頑張らないとね
志歩:……そうだね。 今回、Leo/needの課題としてでてきたのは 曲のことだけじゃないから
穂波:anemoneの人達の演奏、本当にすごかったもんね。 わたしも、もっとうまく叩けるようにならなくっちゃ
一歌:私も、もっと勉強するよ。 歌も、演奏も——!
志歩:……うん。 まだまだやれることはたくさんあるはず
志歩:今日のことは、また改めて反省会しよう。 それで、全員でやれることを探して……
志歩:次こそ、このライブハウスのお客さん達の 胸に響かせられるようなライブをしよう
咲希:しほちゃん……!
咲希:うん! みんなでがんばろうね!
咲希の部屋
咲希:胸に響かない、か……
咲希:——今日のライブのためにって、 いろんな気持ちを乗せて作った曲だったのに……
咲希:(今までのライブハウスではみんなノッてくれてたから、 アタシの曲は、ちゃんとお客さんに届いてるんだーって 思ってたけど……)
咲希:(今日、朔さんの曲を聴いた時…… ここまで心を震わせられるような曲は、 今のアタシの中にはないって思っちゃった)
咲希:アタシの作ってきた曲には、 誰かを泣かせちゃうような力はないもんね……
咲希:(でも、ちゃんと考えれば、アタシにも作れるのかな? あんな風に、聴いてくれてる人の心をギュッと掴むような すごい曲が……)
咲希:ダメだよね。 落ちこんでても何も解決しないもん
咲希:Leo/needのためにも、 ちゃんと冷静に考えてみよう!
咲希:……そういえば朔さんは、 2曲目だけはちょっと良かったって言ってくれたっけ
咲希:(あの曲は、花乃ちゃん達に贈るために 一生懸命考えた曲だったよね……)
咲希:あ……もしかして、『誰かのために』っていう気持ちが、 少しだけ響いたのかな……?
咲希:(たしかに今回ダメだった新曲も、 誰かのためじゃなくて、アタシがこのライブにかける想いとか ワクワクした感情を入れてたから……)
咲希:そうなると……やっぱり、曲を聴いてくれる人のことを もっと深く考えながら書かないとダメ……なのかな?
咲希:——よし
咲希:次の曲は、もっと聴いてくれる人のことを意識して作ってみよう
咲希:今、アタシの曲を聴いてほしい人達…… あのライブハウスのお客さんのことを、 もっともっと考えてみなくちゃ!
第 4 话:込められた気持ち
咲希の部屋
咲希:でも、あのライブハウスのお客さんに響くような曲って、 どんな曲なんだろう……?
咲希:んー……。 あそこにいた人達は、いつものお客さんとは ぜんぜん雰囲気が違ったよね
咲希:(しほちゃんも言ってたけど、 開演前もワクワクドキドキっていうより、 しんとして落ち着いた空気だったし)
咲希:……あ、ピクシェアとかで検索したら、 どんなお客さんが来てるのかわかるかな?
咲希:えーっと、検索ボックスに ライブハウスの名前を入れてっと……
咲希:あ、いっぱいでてきた!
咲希:プロフィールから辿っていっても、 ライブとか曲の話をしてる人が多いなぁ
コメント:『東京来て誰も知り合いがいなかったから この数カ月ずっと寂しかったけど、 あのハコ行くと刺さる曲歌うバンド多くて元気でる』
コメント:『今日も家にひとりで虚しかったけど、 ライブのおかげでちょっと楽になれた』
咲希:……もしかして、あのライブハウスのお客さんには、 寂しいって感じてる人が多いのかな?
咲希:そうだとすると、アタシの曲への反応がよくなかったのも なんとなくわかるかも……
咲希:寂しい時に、ワクワクとかキラキラしたものを聴かされても、 今そういう気分じゃないんだよ~!ってなるもんね
咲希:……じゃあ、寂しい時に聴きたい曲ってどんなのかな?
咲希:アタシだったら、なんて声をかけてほしいだろ。 ひとりじゃないよ、とか……? あと、もっと寄り添ってくれるみたいな……
咲希:…………。 寂しさに寄り添う、か……
咲希:そういえば……
咲希:そういえば、あのふたりに曲を作った時も そういう気持ちをこめたよね
咲希:離れ離れになって寂しくなっても、 きっといつかは笑いあえるはずだよって
咲希:だって、アタシ達もそうだったから。 ふたりを応援っていうか…… 見守るような、そんな気持ちをこめて——
咲希:あ……
咲希:朔さんに、あの曲だけは ちょっと良かったって言ってもらえたんだった
咲希:もしかしてそれは、 あの曲が『特定の届けたい人を意識して作った曲』 だったからだけじゃなくて……
咲希:『寂しさに寄り添う曲』にもなってたから……?
咲希:……そうかも。 考えてみたら、朔さんの曲もそういう雰囲気があったよね
咲希:寒い日にひとりぼっちでいた時に、 誰かと手をつないだ時みたいな、あったかい感じ……
咲希:……そっか。だから、朔さんの曲は、 あのライブハウスのお客さんにすごく響いてたんだ
咲希:……ってことは、 今アタシが作るべきなのは、『寂しさに寄り添う曲』……!
咲希:うん、見えてきた気がする! やってみよう!
咲希:……花乃ちゃん達への曲には、 大切な人と離れ離れになることへの寂しさをこめた……
咲希:じゃあ、今回は違う形で寂しさを表現してみよう。 例えば、本当にひとりぼっちの時の寂しさ……
咲希:……ひとりぼっち、か
看護師:それじゃあ、咲希ちゃん。 明日は一緒に頑張りましょうね
中学生の咲希:はい……
中学生の咲希:(……明日、またあの検査かぁ……)
中学生の咲希:(月に何回かあるけど……痛いから嫌だな……)
女子中学生A:あはは! 本当にあの時の先生、おもしろかったよね!
中学生の咲希:あ……
中学生の咲希:(近くの学校の子達だ……)
女子中学生A:そういえば、修学旅行楽しみだよね。 夜とか、みんなで抜けだしちゃおうよっ!
女子中学生B:もう、そんなことしたらまた先生に怒られちゃうよ~?
女子中学生C:こっそり行けばバレないって。 それでアイスとか買ってダラダラしよう!
中学生の咲希:……あの子達、アタシと同じくらいの年かな
中学生の咲希:修学旅行か。 いいなあ。アタシもいっちゃん達と行きたいな——
中学生の咲希:(……最後にいっちゃん達と遊んだの、いつだっけ)
中学生の咲希:(もっともっといっぱい話したり、遊びに行けたらいいのに)
女子中学生A:みんなでいーっぱい、楽しい思い出作っちゃおう!
女子中学生B・C:『お~!』
中学生の咲希:……いいなあ。 すっごく楽しそうで……
咲希:あの時は……そうだったな……
咲希:みんなと一緒にいたいのに、 会いに行くこともできなくて——
咲希:……よしっ、あの時のアタシに届けるつもりで、 この寂しさを曲にしてみよう!
咲希:——よーし! やるぞ~!
咲希:Aメロで孤独を描いて…… サビの部分で励ますような気持ちを音に乗せて、 Cメロは、こう……
咲希:…………
咲希:……あれ?
咲希:イメージは見えた気がしたんだけど……。なんだろう。 このまま作っても、あんまり良くならない気がする……
咲希:なんていうか、ちょっと……薄い? なんでだろう?
咲希:……もうちょっとだけ、がんばってみよう!
翌日
レッスンスタジオ
咲希:(はあ……いろいろ考えてみたけど、 やっぱり『これだ!』って曲は作れなかったな……)
穂波:……咲希ちゃん、大丈夫? あんまり元気がないみたいだけど……昨日ちゃんと寝られた?
咲希:あ、う、うん! 大丈夫だよ、ほなちゃん!
一歌:——ごめん、おまたせ!
咲希:あ、いっちゃん! 学級委員会お疲れさま~♪
志歩:それじゃ、みんな集まったことだし 昨日のライブの反省会しようか
穂波:うん!
志歩:昨日も言ったけど、 私達の課題は、曲と演奏のどっちにもあると思う
志歩:だから、次のライブに向けては、 そこを強化していくしかないと思うんだ
咲希:……そうだよね。 曲については、昨日いろいろ考えてみたんだけど……
咲希:あのライブハウスのお客さん達の胸に響くのは、 『寂しさに寄り添う曲』なんじゃないかなって思ったんだ
一歌:寂しさに寄り添う……
志歩:言いたいことはなんとなくわかるけど…… なんでそう思ったの?
咲希:えっと……昨日のお客さん達の顔を思いだしたり、 ピクシェアで調べた感想とか見てたら、 結構『寂しい』って感じてるお客さんが多いなって
咲希:で、そんな人に刺さる曲ってどんなのだろ?って考えて、 『寂しさに寄り添う曲』なんじゃないかなって思ったんだ
一歌:……なるほどね。 お客さんの雰囲気から考えたんだ
志歩:たしかに、咲希の言ってることは当たってるかも
志歩:anemoneがお客さんの心を掴んでたのも、 そういう曲をやってたからだと思うし
咲希:やっぱり、しほちゃんもそう思う!?
咲希:だからアタシも、 次はそういう曲に挑戦してみようと思ったんだ!
咲希:でも……なんか、あんまりうまくいかないんだよね……
一歌:ふふ。咲希はあんまり寂しい感じの曲作らないもんね
咲希:えへへ、だって元気な曲作ってると アタシも元気がでてくるんだもん!
穂波:でも、花乃ちゃん達のために作った曲には そういう雰囲気があったし、きっとできるんじゃないかな
咲希:……! ありがと、ほなちゃんっ!
咲希:アタシもね、 花乃ちゃん達のために作った曲のことを考えてたの。 どうしてあの時はああいう曲が作れたのかなって
咲希:それで、それはたぶん—— アタシがふたりのことを昔の自分みたいだなって思って、 応援してあげたいなって思ったからだ、って気づいたの
穂波:昔の自分?
咲希:……うん。 アタシ、みんなに会えなかった時……ずっと、寂しかったから
咲希:その時の気持ちをこめて、『大丈夫だよ!』って 届けてあげたいなって……
一歌:咲希……
志歩:…………
咲希:あ、あれ? みんな、どうしたの?
志歩:——ごめん。 あの頃、あんまり会いに行けなくて
穂波:寂しい思い、させちゃってたよね……
咲希:(あっ……!)
咲希:で、でも、今はみんながいてくれるから大丈夫だよ! こうやって一緒にバンドもできて、 ホントのホントに幸せだから!
一歌:……それは、そうかもしれないけど
咲希:謝らないで! ホントに何も気にしてないから!
穂波:そっか……
志歩:それならいいけど……
咲希:も~、みんなそんな顔しないでってば~!
咲希:今はみんなといつでもこーんなに近くで話せて、 ぎゅ~ってできちゃうから、大丈夫だよっ!
穂波:ふふっ、咲希ちゃんあったかいね
志歩:ちょ、苦しいってば
咲希:えへへ! いっちゃんも、ぎゅー!
咲希:(……よかった。みんなが笑顔になってくれて)
咲希:(それに……ホントに、よかったな。 こうやってみんなと一緒にいられるようになって……)
咲希:——あっ!
穂波:ど、どうしたの?
咲希:『今はみんながいるから大丈夫だよ』……
咲希:もしかしたら、こういう気持ちも、 曲に乗せられるんじゃないかなって思って!
志歩:あ……なるほど
一歌:うん。 咲希らしさもでて、すごくいいと思う
穂波:そうだね。昔の咲希ちゃんに寄り添ってるって思ったら、 わたし達も心をこめて演奏できる気がするな
咲希:うん……! なんだか、今ならいい曲が出る気がする……!
咲希:みんな、話聞いてくれてありがと! 今日帰ったら早速作ってみるね!
志歩:話聞いたっていうか、 ほぼ咲希が一方的に話してただけだけどね
一歌:でも、何かのヒントになったならよかった
穂波:ふふっ、咲希ちゃんの新曲、楽しみにしてるね!
咲希:うん! ありがとう、みんな!
第 5 话:感情の不協和音
その夜
咲希の部屋
咲希:『今はみんながいるから大丈夫だよ』……
咲希:『今はつらいかもしれないけど、 未来に楽しいことが待ってるから大丈夫』…… うん、そうだ、こういう気持ち……!
咲希:昨日よりぜんぜん手応えある気がする! よーし……!
咲希:……あれ?
咲希:どうしてだろう。やっぱりイメージと違う……
咲希:あの頃のアタシの『寂しい』って気持ちも、 今のアタシの『大丈夫だよ』っていう気持ちも ちゃんとこめてるつもりなのに……
咲希:……どうしよう。このままじゃ……
咲希:……はあ。やっぱりアタシには、 あのライブハウスのお客さん達に響く曲は作れないのかな……
咲希:……ダメだ。 諦めたら……絶対にできなくなっちゃう!
咲希:作らなきゃ。作るんだ。 みんなの胸に響かせられるような曲を……
咲希:もう1回……!
咲希:…………
咲希:(……全然ダメ……)
咲希:(何個も作ってみたけど……。 どれも、誰の胸にも響かないってわかる)
咲希:(だって、アタシがいいって思えないんだもん……)
咲希:(やっぱり、まだ上辺をなぞってるだけって 感じがするんだよね)
咲希:(なんでだろ。 イメージはアタシの中にちゃんとあるのに……)
咲希:……どうすればいいのかな……
教室のセカイ
レン:はあー、練習後の牛乳は最高だな!
KAITO:……うん。咲希が持ってきてくれた コッペパンも美味しい
レン:へえ、今度オレも食べてみよっかな。 また違うのを持ってきてくれるって言ってたし
レン:——そういえば、あれから結構経ったけど 咲希達のライブってどうだったんだろ
KAITO:どうだろう。 話、聞いてないけど……
レン:まあ、話がないってことは、成功したのかもな。 咲希の新曲ってのも気になるし、今度会ったら聞いてみるか
KAITO:……そうだね
レン:——よし、それじゃ休憩終わり! オレ達もみんなに負けないように練習しようぜ!
KAITO:ん、待って。まだ食べ終わってない……
咲希の声:あ、ふたりとも——
KAITO:ん?
レン:お、咲希来てたのか!
KAITO:全然気づかなかったよ
咲希:あ、ごめん……ご飯中だった?
KAITO:……大丈夫。 もう食べ終わるところだから
レン:そうだ、咲希達がやるって言ってたライブの話を 聞きたいって話してたんだよ
咲希:そっか……
レン:……ん? 咲希、なんか妙に疲れてないか?
咲希:うん……。 その、いろいろあって……
レン:……んー、なるほど
レン:ちゃんとイメージはできてるのに、 いざ作ると曲がイマイチになる……か
咲希:うん……。 頭の中ではいける!って感じがするのに 形にならないのがすごく不思議で……
KAITO:それは……なんでなんだろう。 難しいな
レン:んー……
レン:ちょっと聞きたいんだけどさ。 その、咲希が考えてるイメージっていうのは、 どんなものなんだ?
咲希:えっと……寂しいって感じてる人に、 大丈夫だよっていう気持ちを届けるための曲で…… 昔のアタシにも届いてほしいって想いをこめて作ってるんだ
咲希:だから昔のことを思いだしながら作ってるんだけど……
KAITO:……昔のこと?
咲希:えっとね、アタシが——
咲希:あ……
レン:話したくないことなら別にいいよ。 オレ達も、無理に聞きたいってわけじゃないからさ
咲希:あっ、そういうわけじゃないんだけど……! ……あんまり、楽しい話でもないからなーって思って
咲希:……アタシが入院してた時のことなんだ。 みんなに会えなくて寂しいなって思ってた時の……
KAITO:入院してた時……
レン:そこまで具体的なイメージがあるなら、 気持ちが乗ったいい曲になりそうな気がするけど……
レン:……なぁ、咲希が作った曲を聴かせてくれないか? 何かヒントがあるかもしれないし
咲希:あ、そうだね……! それじゃあ、今から弾いてみるね
咲希:……ど、どうだった?
レン:オレはこの曲でも、 咲希の言ってたことは表現できてると思うよ
KAITO:……うん、俺もそう思う
KAITO:ただ……なんていうのかな。 気持ちが乗りきってないような気は、した
咲希:……気持ちが、乗りきってない……?
レン:さっき、咲希の入院してた時のことをもとにって話してたけど、 それにしてはこう、何か足りないっていうか……
レン:多分だけど——、 咲希が感じたことを、もっとだしていいんじゃないか?
レン:例えば……昔の咲希が感じたこととか
咲希:昔のアタシが感じたこと……
レン:うん。気持ちが乗りきってないって感じたってことは、 咲希の中にまだ、だせてない答えが あるんじゃないかってオレは思うんだよな
レン:例えば、まだ思いだせてないことがあるとか
咲希:思いだせてないこと……
咲希:うーん……何かあるかな……
咲希:検査で痛いのが嫌だった時の気持ちでしょ、 同い年くらいの女の子達が話してる時に 羨ましいって思ったこと……
咲希:それから……
咲希:(……あれ? それから、どうしたっけ?)
咲希:(……なんだろう。 何かあった気がするけど……)
レン:何か思い当たることがあったのか?
咲希:思い当たる、ってほどじゃないんだけど、 なんかちょっとモヤモヤして……
咲希:やっぱり、レンくんの言うように まだ思いだせてないことがあるのかも……?
レン:じゃあ、そこを掘っていくのがいいかもな
レン:そうすれば、 咲希が曲を届けたいって言ってる人達にも響く曲が 作れるようになるんじゃないか?
咲希:……そっか
咲希:そうだよね。 うん、もうちょっと考えてみる!
KAITO:何かヒントが見つかるといいね
咲希:はい! カイトさんもありがとうございます!
咲希:それじゃあまたね、ふたりとも!
レン:ああ、頑張れよ!
レン:…………
第 6 话:暗闇に差す光
咲希の部屋
咲希:思いだせてないこと、かぁ……
咲希:んー、なんだろう……。 何か思いだせそうなものが残ってればいいんだけど
咲希:学校の連絡帳……は、 本当に必要なことしか書いてなかった気がするし、 メッセージのデータとかも、もう消えちゃってそうだし……
咲希:なんか残るものとか書いてたっけ? メモ、みたいな……
咲希:——あっ、そうだ、思いだした! そういえばあの時、日記つけてたよね!
咲希:……元々は、毎日の症状の経過を見るために お医者さんからつけなさい、って言われて書いてたやつだけど
咲希:えーっと、たしかこの辺に……
咲希:あ、あった!
咲希:……すっかり忘れてたけど、懐かしいな。 結構恥ずかしいことも書いてたような気がする
咲希:で、あの思い出の時期は…… たしか、中3の5月くらいだったっけ……
咲希:(遠くの病院に入ることになって、 周りから本当に誰も知ってる人がいなくなって…… すごく寂しかったんだよね)
咲希:(ひとりでいると病室が静かすぎて落ち着かなかったから、 テレビをつけたんだ)
咲希:(そしたら、ハッピーエブリデイが出てて…… いつもどおりすっごく楽しくて、大笑いして)
咲希:(……でも、番組が終わっちゃってテレビを消したら、 アタシがひとりだったことを思いだして……)
咲希:(テレビを見る前よりずっと寂しい気持ちになった時、 看護師さんが来たんだよね)
咲希:(……それで、そのあとに…… あの女の子達の声が聞こえた)
女子中学生A:あはは! 本当にあの時の先生、おもしろかったよね!
女子中学生A:そういえば、修学旅行楽しみだよね。 夜とか、みんなで抜けだしちゃおうよっ!
女子中学生B:もう、そんなことしたらまた先生に怒られちゃうよ~?
中学生の咲希:……いいなあ。 すっごく楽しそうで……
中学生の咲希:……いっちゃんも、 もうすぐ修学旅行だって電話で言ってたな
中学生の咲希:アタシも、行きたかったな……
中学生の咲希:…………
中学生の咲希:……置いてかないで……
中学生の咲希:みんな……アタシのこと置いてっちゃう……
中学生の咲希:アタシの体が弱いせいで……
中学生の咲希:……みんなとの大切な思い出の場所に、 いつも、アタシだけいない……
中学生の咲希:——っ……
中学生の咲希:アタシ……どうしてこうなんだろ?
中学生の咲希:小さい頃からずっと—— 小学校も中学校も、何度も何度も入院して……
中学生の咲希:たまに遊びに行けても、 無理はできないから、旅行とかにも絶対に行けなくて……
中学生の咲希:勉強も……がんばってるけど、 アタシはいつも病室で、みんなにぜんぜん追いつけない
中学生の咲希:それでもがんばって勉強して、 やっとみんなと宮女に入れたのに……
中学生の咲希:やっと、みんなと一緒にいろんなことができるって、 思ったのに……!
中学生の咲希:……っ
中学生の咲希:……なんで? なんでアタシは、みんなと違うの?
中学生の咲希:アタシだって修学旅行、行きたかった
中学生の咲希:部活にも入って……みんなで疲れたねって言いながら、 帰りに寄り道したりしたかった……!
中学生の咲希:そのために注射も、痛い検査も、 たくさん……たくさん我慢してるのに
中学生の咲希:なのに、ぜんぜん良くならなくて…… お兄ちゃんにも、お母さん達にも、いっつも迷惑かけて……!
中学生の咲希:もう、やだ……。 こんなの、やだよ……
中学生の咲希:……どうしてアタシ、こんななの?
中学生の咲希:どうして……なんで……? ぜんぜん、わかんない……
中学生の咲希:……アタシ、ずっとこうなのかな……
中学生の咲希:ずっと病院の中で……ひとりで…… 高校にもいけなくて……
中学生の咲希:やだ……そんなの、やだよ……
中学生の咲希:ひとりぼっちにしないでよ……!
咲希:……やっとわかった。 どうして、曲をうまく作れなかったのか……
咲希:アタシ……一番寂しくて、一番つらかったことは、 思いださないようにしてたんだ
咲希:だって、思いだすとすごく苦しくて、 それに——
咲希:……口にだしたら、みんなのこと悲しませちゃうから
咲希:そんな気持ちを曲にしても、 聴いてくれた人を悲しくさせちゃうし、って 知らないうちに思っちゃってたんだろうな
咲希:(でも……)
咲希:(朔さんの曲は、もっと深いところを描いてた)
咲希:(アタシがつらくて悲しくて、 向きあうのが怖いって思ったことを ちゃんと曲に乗せてた……そんな気がする)
ライブハウスの客達:やっぱり、朔の曲は染みるな
ライブハウスの客達:うん……。 心にスッと入ってくるよ……
咲希:……わかる、気がする
咲希:書かなくちゃ…… この気持ちを、音にしなくちゃ……!
咲希:……そう、Aメロはこんな音。 連休でみんなが楽しんでる季節。 でも、アタシはそうじゃなかった……
咲希:そうじゃ、なくて……
中学生の咲希:っ……うっ……お願い……
中学生の咲希:置いて、いかないでよ……
中学生の咲希:……?
中学生の咲希:(っ……何……、メッセージ……? いっちゃんから……?)
一歌:『咲希、調子はどう?』
一歌:『おもしろい形の雲があったから送るね。 これ、ちょっと美味しそうじゃない?』
中学生の咲希:(雲……? あ、写真が来た……)
中学生の咲希:っ……ホントだ。 なんだか、ソフトクリームみたい
一歌:『まぁ……これだとコーンの部分まで白いから、 持ったらベタベタになっちゃうんだけど……』
中学生の咲希:……あはは……。 いっちゃんってば、相変わらず変なトコでマジメだなぁ
一歌:『そっちはどう? 晴れてる?』
中学生の咲希:…………。 『こっちは晴れてるよ。雲はちょっとあるけど』……あれ?
中学生の咲希:あ——
中学生の咲希:『いっちゃん。 こっちにも、ちっちゃいソフトクリームがあったよ』
一歌:『本当!? すごい偶然だね……!』
中学生の咲希:えへへ……
中学生の咲希:『これは、一緒にいただきますできちゃいますよ~♪ いただきま~す!』
一歌:『冷たいから、咲希はゆっくり食べるように!笑』
中学生の咲希:ふふっ……
中学生の咲希:……いっちゃんも、今一緒に、空を見てるのかな……
中学生の咲希:なんだか……同じ場所にいるみたい
咲希:…………そうだ
咲希:あの時、いっちゃんが アタシを助けてくれたんだ
咲希:(……ううん。いっちゃんだけじゃない。 お兄ちゃんも、お母さんも、お父さんも——)
咲希:アタシがつらくて苦しかった時は、 ほなちゃんや、しほちゃんだって、 ずっとずっと……いつも寄り添ってくれてた
咲希:『私がいるよ、置いてかないよ』って……
咲希:それが、とってもあったかくて…… 本当に嬉しくて
咲希:だから—— アタシは大丈夫だって思えたんだ
咲希:アタシが体験した苦しさも、嬉しさも、 みんなに届くように、全部音に乗せよう
咲希:ここは……こんな簡単な気持ちじゃない。 もっと、深いところまで考えなくちゃ……
咲希:もっと思いださなきゃ……。 あの時の……寂しさの奥にある、もっと暗い気持ち——
咲希:きっと、音にできる……!
咲希:……はぁっ。 ちょっとずつ形になってきた……
咲希:……って、もう5時……!? 学校あるし、ちょっとだけでも寝なきゃ……!
咲希:……でも……
咲希:そうすると次作曲できるのは、 学校が終わって、みんなと練習したあとになっちゃう……
咲希:——ううん。やろう
咲希:今休んじゃったら、この熱が冷めちゃう気がする。 学校に行くギリギリまで、思いついたことを書き留めてみよう
咲希:それで、アタシの気持ちの全部を、思いっきりこめよう……!
レッスンスタジオ
咲希:みんな~お疲れ~っ!
穂波:あ、咲希ちゃんお疲れさま……
穂波:って、どうしたの、そのクマ……!
一歌:なんか……夜に曲が思いついたみたいで、 ほぼ徹夜で学校来たんだって
咲希:えへへ……
穂波:咲希ちゃん、大丈夫なの?
志歩:一生懸命曲を作ろうとしてくれてるのは、 私達としてもすごくありがたいけど…… 徹夜はやめたほうがいいんじゃない?
咲希:大丈夫、大丈夫! 明日はお休みだし、お昼までゆっくりできるから♪
咲希:それにアタシ、次のライブでは 絶対この新曲をやりたいって思ってるんだ!
一歌:次のライブで……
穂波:でも、まだいつやるかも決めてないよね?
志歩:……今日提案しようと思ってたけど、 私は1カ月後くらいがいいんじゃないかって思ってる
咲希:おおっ、いいね~! 1カ月後なら、新曲いっぱい練習できるよ!
志歩:……その曲、今どれくらいできてるの?
咲希:実際に曲になってるのは半分とちょっと……って感じだけど、 頭の中で全体のイメージはできてるよ!
咲希:それを曲に流しこんでいくだけだから、 たぶん今日中に終わると思う!
一歌:今日中……!? でも咲希、全然寝てないんでしょ?
穂波:そんなに焦らなくてもいいんじゃないかな……?
志歩:……でも実際、練習のことを考えると それくらいのスケジュールで動かないと厳しいとは思う
志歩:いつもの曲ならまだいけてたかもしれないけど、 今回咲希が作る曲はいつものLeo/needのイメージとは ちょっと違ってきそうだし
志歩:ステージでやるレベルに持っていくには、 それなりに弾きこみが必要だと思うから
穂波:志歩ちゃん……
一歌:そ……それは、わかるけど……
志歩:…………
咲希:あ……アタシなら大丈夫だよ! ライブが1カ月後でも2カ月後でも、 新曲を今日作るのは変わらないと思うし
一歌:どういうこと?
咲希:……アタシは今の、 この瞬間の気持ちを曲に乗せたいなって思ってるの
咲希:時間をかけちゃうと、 イメージが薄れてきちゃいそうでちょっと怖いから……
咲希:だから、明日までがんばるよ! それで曲ができたらいっぱい練習して、 今度こそあのライブハウスのお客さんの心に響かせちゃおう!
咲希:み、みんなも、そのほうがいいって思うでしょ!?
穂波:咲希ちゃんが頑張るなら、わたし……応援するよ
志歩:穂波……
穂波:あんまり無理してほしくはないけど、 こうなったら咲希ちゃんは止められないもんね
穂波:……それにきっと、そのほうが Leo/needにとっていいと思うから
咲希:……! ほなちゃん……!
一歌:……志歩、どうかな
志歩:……そうだね。やろう
志歩:その代わり、咲希は少しでも体調が悪くなったら絶対に休んで。 あと、何かつまったらすぐに私達を頼ること
志歩:……それが約束できるなら、何も言わない
咲希:うん……うんっ! 約束するよ!
咲希:ありがとう、みんな……! アタシ、がんばるね!
第 7 话:この想い、出しきるまで
その夜
咲希の部屋
咲希:……がんばらなくちゃ。 アタシを信じて任せてくれたみんなのためにも
咲希:お客さんに響く曲を作って…… 次のライブは絶対に成功させるんだ
咲希:よーし、やるぞ~!
咲希:……よし、Aメロのラフはここまでにして いったんこの先を詰めてから戻ってこよう
咲希:ん~、ずっと同じ体勢だったから肩がバキバキだ~!
咲希:って、もう2時間も経ってる!? 集中してると、あっという間だなあ……
咲希:ん? だ~れ~?
母親:咲希、頑張ってるみたいね
咲希:お母さん!
咲希:どうしたの? その手に持ってるのって……
母親:さっき穂波ちゃんが来てね、これを咲希にって。 手作りのお夜食らしいわ
咲希:えっ!? わざわざ届けに来てくれたの?
母親:ええ。 『咲希ちゃんが頑張ってるから、 わたしにできることで手助けしたくて』って言ってたわよ
母親:ふふ、いいお友達ね
咲希:ほなちゃん……
咲希:も、もう帰っちゃったんだよね? 声かけてくれればよかったのに……
母親:私も引き留めたんだけど、 あなたの作業を邪魔したくないからって言ってたわ
咲希:そっか……
母親:お母さんも応援してるから、頑張ってね。 穂波ちゃんのお夜食は、ここに置いておくから
咲希:……うん。 ありがとう、お母さん!
咲希:……えへへ、ほなちゃん、優しいなあ。 どんなの作ってきてくれたのかな……
咲希:わっ……すごい! 果物がいっぱいのサンドイッチだ!
咲希:あ、ほなちゃんのメッセージもついてる。 『頭を使うと甘い物がほしくなると思うから、 よかったら食べてね』
咲希:えへへ、優しいなあ。 写真撮ってみんなに自慢しちゃお~っと! あとでありがとうってメッセも送らなきゃね!
咲希:よーし、ほなちゃんに元気もらったし、 このあともガッツリがんばるぞ~!
咲希:ん……。 あ、もうこんな時間……
咲希:(……形は8割くらいはできてるけど、 まだアタシの中にあるイメージが再現できてない気がする)
咲希:(もっと、音を考えなきゃ。 あの時の気持ちにピッタリくる音を……)
咲希:…………
咲希:ここは、こういうフレーズ……? ううん、もっと暗く半音下げて……
咲希:……ちょっと近づいたけど、まだ違うな……。 もっといいコードがありそう……
咲希:ここだけ長調にしたらどうかな? ……これはこれで浮いちゃうんだよねぇ
咲希:……っ
咲希:あれ……もうこんな時間? 30分だけ寝る予定だったのに、3時間も寝ちゃった……!
咲希:……大丈夫、落ち着かなくちゃ。 焦ったって、いいことないよね
咲希:まだ時間はあるから、丁寧に音を探って……
咲希:うん、大丈夫。……進めよう
咲希:…………
咲希:…………やっぱり、違う。 昨日も引っかかったところだけど、こうじゃないよね……
咲希:ここはもっと、寂しさ……。 ううん、それのもっと先にある絶望感……かな、 みんないなくなっちゃえばいいのに、ってそんな気持ち……
咲希:……うーん、あと一歩なんだけどな。 もうちょっとで、すごく良くなる気がするのに……!
咲希:……あっ……
咲希:なんか今、ちょっとくらっとしたかも……
咲希:……もう、今日は休んだほうがいいのかな。 無理するなって、しほちゃん達も言ってたし
咲希:でも、今仕上げないと……。 今じゃないと、音にできない気がする——
咲希:あれ? こんな時間にメッセ?
咲希:……あっ! しほちゃんといっちゃんだ!
咲希:ふふ、同じタイミングで送ってくるなんて、すごい偶然! 運命感じちゃうな~
咲希:えーっと、しほちゃんのメッセージは……
志歩:『咲希、まだ作業してる? そろそろ悩んでる頃かと思って連絡してみた。 必要だったら、いつでも相談してね』
咲希:あはは、しほちゃんはなんでもお見とおしだなあ
咲希:『今ちょうど思いついたことがあるからやってみるとこ。 これでも無理そうだったら、相談させてもらうね。 ありがと♪』っと……
咲希:こんな時間まで起きてるなんて…… きっと心配させちゃってるよね
咲希:きっと、いっちゃんも——
咲希:……あれ、写真……? なんだろ……
一歌:『曲作りの進捗どう? 気分転換に窓を開けてみるといいかもよ。 綺麗な星が見えるから』
一歌:『咲希のところはどうかな? 写真と同じ星、見える?』
咲希:あ——
中学生の咲希:『いっちゃん。 こっちにも、ちっちゃいソフトクリームがあったよ』
一歌のメッセージ:『本当!? すごい偶然だね……!』
中学生の咲希:……いっちゃんも、今一緒に、空を見てるのかな……
中学生の咲希:なんだか……同じ場所にいるみたい
咲希:……あの頃と同じだ
咲希:体調が悪くなっても、 みんなからのメッセージをもらったら そのつらさがスーッて、なくなってって……
咲希:(……昔から、 こんな風に言うことを聞いてくれない体のことが すっごく嫌いだった)
咲希:(だけど——)
咲希:(みんなが、『ひとりじゃないよ』って、 励ましてくれた)
咲希:(『きっと楽しいことが待ってるよ』って教えてくれた)
咲希:(だからアタシは、全部嫌になっても、 憧れ続けたんだ)
咲希:(キラキラした……毎日に)
咲希:……これが、アタシの気持ち。 当たり前になれなくて、ずっと寂しかった人の気持ち
咲希:それを、精一杯届けよう
咲希:『ひとりじゃないよ』 『きっと楽しいことが待ってるよ』って
咲希:そうやって——寂しさに寄り添うんだ
咲希:——うん。大丈夫
咲希:もっと、もっと……この曲は、良く、できる
咲希:アタシはまだ——できる!!
レン:『咲希……。 すごく集中してるな』
KAITO:『でも……。 このメロディー、なんかいいね』
レン:『ああ、答えが見つかったみたいだな』
レン:『完成が楽しみだ』
咲希:はあ……はあ……
咲希:で、できた……! アタシの、曲……!
咲希:……よかった
咲希:みんなにも早く聴かせたいな……
咲希:……って、あれ? もう朝……?
咲希:あ、そうだ! 今日はみんなと、うちでライブの打ちあわせやるって約束……
咲希:あっ、みんな……
咲希:……よかった。 みんなが来るまでに間にあって
咲希:この曲……、 早く、この曲を聴いてもらわなきゃ
咲希:待ってて! 今行くよー!
第 8 话:最高の一曲を
天馬家 リビング
咲希:いらっしゃい、みんな……!
一歌:うん。お邪魔しま——
一歌:って、パジャマ?
咲希:あっ、そうだった!
咲希:恥ずかしい~! 今まで曲作ってたから……
志歩:……メッセージ送ったあとも、ずっとやってたんだ
穂波:ってことは、やっぱり徹夜したんだよね? ……大丈夫?
咲希:大丈夫だよ! このとおり、ピンピンだから!
咲希:あ、そういえば、いっちゃんとしほちゃん 一緒のタイミングでメッセ送ってくれたんだよ! びっくりしちゃった!
咲希:それにほなちゃんも、 かわいくておいしいサンドイッチを差し入れてくれて、 ホントに嬉しかったよ! ありがとう!
穂波:喜んでくれたならよかった。 ……口にあったかな?
咲希:あったあった! あいすぎて、ずっとほなちゃんに 夜食作ってほしいって思ったくらいだよ~!
穂波:ふふっ、それならよかった
咲希:でも、みんなには心配かけちゃったよね。 ……本当にごめんね
一歌:咲希……
咲希:けどね! みんながアタシを信じてくれたおかげで……
咲希:新曲、無事できあがりました~!
一歌:本当!?
志歩:予告どおりだね。 やるじゃん、咲希
咲希:ふっふっふ。 褒めるのは曲を聴いたあとにしてほしいな~
咲希:きっとみんなビックリしちゃうと思うから!
志歩:すごいハードル上げてるけど、大丈夫?
咲希:だーいじょーぶだよ! それくらい自信あるんだから!
咲希:じゃあ部屋に行こう! みんな、ついてきて~!
穂波:咲希ちゃん!?
一歌:大丈夫!?
咲希:……えへへ、ごめん。 急に動いたから、ふらふらしちゃったみたい
志歩:……本当に気をつけなよ。 せっかく新曲できたのに、倒れたら意味ないでしょ?
穂波:今日はこのあと、ゆっくり休んでね。 咲希ちゃん、すごく頑張ったと思うから
咲希:……うん。 ありがとう、みんな!
咲希:でも、みんなの感想を聞くまでは寝れないよ! 早く聴いてもらわなくちゃ~!
咲希の部屋
咲希:じゃあ……弾くね!
穂波:うん……!
一歌:(……一体、どんな曲になったんだろう)
一歌:(咲希の、寂しさに寄り添う曲——)
一歌:…………!
志歩:(入りから、今までと全然違う……)
穂波:(すごい……。 本当に、咲希ちゃんが作った曲なの……?)
一歌:(なんだろう……。 苦しそうで、悲しそうな音なのに……)
一歌:(——すごくあったかい)
一歌:(咲希、こんな曲も作れるんだ——)
一歌:……すごいな
穂波:なんだか、咲希ちゃんに励まされてるみたい
一歌:うん……聞こえてくるみたいだね
一歌:『ひとりじゃない、私達がいるよ』って
咲希:……ふう
咲希:これで終わりなんだけど……。 ど、どうだった?
志歩:…………。 すごいと思った
咲希:ほ……ホント!?
志歩:『寂しい気持ちに寄り添う曲』……。 それを、こういう風に表現するとは思わなかった
志歩:anemoneの曲で感じたものとは違う。 これは咲希にしか作れない—— すごくLeo/needらしい曲だと思うよ
咲希:しほちゃん……
志歩:本当に頑張ったんだね、咲希。 ……ありがとう
咲希:……ううん、アタシのほうこそ、ありがとう。 アタシのことを信じてくれて、本当に嬉しかった
咲希:……今回、曲を作ってみてわかったんだ。 どうして朔さんに、胸に響かない曲だって言われちゃったのか
咲希:アタシ、まだ、自分の気持ちとか感じてたことを、 深く考えられてなかったんだよね
一歌:深く……?
咲希:うん。曲を作る時って、本当はもっと気持ちを深く……、 深く考えなきゃいけないんだと思う
咲希:——ほら、朔さん、2曲目はちょっと良かったって 言ってくれてたでしょ?
穂波:あ……。花乃ちゃん達のために作った曲だよね
咲希:うん
咲希:あの曲を作った時は、ふたりのことや みんなと離れ離れになったこと……
咲希:それと、今一緒にいられることの幸せとか、 そういうアタシが届けたい気持ちを いっぱい音に乗せてたんだ
咲希:だから、他の曲よりもしっかり表現できてたんだと思う
一歌:なるほど……
咲希:でもそれ以外は……まだちょっと足りてなかったんだよね
咲希:最初は、『寂しい』って気持ちを、 昔のことをちょっと思いだしただけで わかった気になっちゃってたけど……
咲希:でも、それじゃまだ、ぜんぜん浅くて——薄かったんだ
志歩:……なんとなくだけど、言ってることはわかるよ
志歩:この曲からは、咲希の……いろんな想いを感じるから
咲希:えへへ……そう感じてもらえたなら、嬉しいな!
咲希:悲しかったことも、つらかったことも、いやだったことも—— ちゃんと全部向き合ってよかった!
一歌:咲希……
志歩:……でも、私は今まで咲希が作ってくれた曲も好きだよ
志歩:私達のことを考えて、一生懸命作ってくれた曲だから
咲希:しほちゃん……
志歩:だから、これからは…… 今までの咲希の曲も、これからの咲希の曲も大事にしながら、 活動を続けていこう
咲希:……うん! ありがとう、しほちゃん!
咲希:アタシ、今回のことでわかったんだ。 曲作りに大事なのは、気持ちにちゃんと向き合うことだって
咲希:だから、これからは、 もっともっと自分に向き合おうと思う
咲希:そしたらきっと…… ううん、絶対に、お客さんに響く曲ができるはずだから!
一歌:…………
一歌:……すごいな、咲希は。 つらくても、たくさん考えて、向き合って——
一歌:——かっこいいよ。 私も見習わないとな
穂波:うん……。本当にかっこいいよ、咲希ちゃん
咲希:えへへ、そうかな~? いざ褒められるとなんか照れちゃうな~!
志歩:……咲希のこの曲、次のライブのトリにやろう
咲希:えっ、ホント!?
志歩:うん。この曲なら絶対に あのライブハウスのお客さんにも響くと思うから
咲希:わあっ……
咲希:やぁった~、楽しみ~!
一歌:……それじゃ、早速この曲を練習しなくちゃね
咲希:あっ、待って! その前にみんなで曲を詰めていかないと——
穂波:それはわたし達でアイディアだしておくから、 咲希ちゃんは今日はもう休んで
咲希:えっ!? でも……
志歩:咲希は十分頑張ってくれた。 だからここからは——私達の番だよ
咲希:しほちゃん……
咲希:うん、わかった!
咲希:じゃあみんな、あとはよろしくお願いします! それから……ふぁぁ……
咲希:おやしゅみなさ~い……
翌日
ライブハウス
ライブハウススタッフ:じゃ、ここに記入してね
志歩:はい
一歌:——次のライブ、楽しみだね。 咲希のおかげでいい曲ができたし
志歩:うん、咲希の頑張りを無駄にしたくない。 絶対に成功させよう
朔の声:——やっぱり、その話は遠慮させてください
一歌:……あれ? この声……
スカウトマン:どうしても駄目かな?
朔:さっきの話ってつまり、 女子高生バンドって感じで売りたいってことですよね。 私達は別に、そういうの興味ないんで
一歌:……事務所の人にスカウトされてるのかな
志歩:みたいだね
スカウトマン:そういうわけじゃないよ! anemoneにしか出せない音楽性や世界観が、 ちゃんとあると思ってる
スカウトマン:ただ、やっぱり売り出しかたとして キャッチーな要素があるほうがいいと思って……
朔:それなら、別に私達のバンドじゃなくても——
朔:そうだ、あのバンドはどうかな。 バンド名は……あー、ちょっと忘れちゃったんですけど、 デビューしたいって言ってましたよ
志歩:え……
朔:演奏も聴けないわけじゃないし、 曲はかわいいっていうか王道ポップスで、 いかにも女子高生バンドって感じだったし
朔:そういう路線で売り出したいなら、 私達よりもいい線いくんじゃないかなって
朔:あ、思い出した。 Leo/needって名前のバンド
朔:あの子達なら、そういう話も受けてくれるんじゃないですか
一歌:……っ!
一歌:あ、志歩……!
志歩:——ねえ、今のどういう意味?
朔:え? ああ、ちょうどよかった。 この子達がその——
志歩:質問に答えて!
朔:……なんでそんなに怒ってるの? 今ちょうど、あなた達のこと紹介してたんだけど
朔:あなた達、デビューしたいって言ってたよね? だから——
志歩:……たしかにプロになりたいと思ってるけど、 なんでもいいってわけじゃない!
志歩:私は——私達は、私達の音楽で評価されて、プロになりたい! それはあなたと同じなの
朔:……? 音楽で……。 ほんとに?
朔:前みたいな、かわいい感じの曲なら どこのガールズバンドもやってるし
朔:それなら、そういうバンドとして 売ったほうがいいんじゃない?
志歩:……っ!
志歩:——あなたに勝手に決められる筋合いはない。 それに……
志歩:これ以上、ここで話をするつもりもない
朔:…………
志歩:1カ月後、またここでライブする
志歩:——私達の音楽を軽く見てるのなら、音楽で証明してみせる
志歩:さっきの言葉、絶対に撤回してもらうから
朔:……へえ
志歩:行こう、一歌
一歌:あ、う、うん……!
朔:ふーん……
朔:……なんか、いいね
朔:ふふ、あそこまで言うんだから、 本当にいい曲ができたんだろうなあ
朔:——楽しみだね