活动剧情
好きを描いて♪レインボーキャンバス
活动ID:70
第 1 话:ふたつの悩み
絵画教室
絵名:…………
絵名:(ここは色を重ねて、質感を表現……)
絵名:(……うん、こんな感じかな。 これでだいたいできたから、あとは……)
雪平:残り5分です
絵名:(——よし。 全体を確認して、細かいところを整えていこう)
絵名:(前に雪平先生から指摘を受けたところは 意識して直したし、今回こそ——)
雪平:——時間です。 画材を置いてください
雪平:それでは、講評に移ります。 まずは東雲さん
絵名:はい……!
雪平:ふむ……
雪平:……質感をよく出せています。 構図も及第点でしょう
絵名:…………!
雪平:ですが——消失点を意識しきれていません
雪平:また、床とモチーフの接地しているラインが黒すぎます。 もっとよく観察して表現の仕方を考えてください
絵名:……はい
絵名:(やっぱり雪平先生、厳しいな……)
絵名:(でも……言ってることは納得できる。 今回の講評をちゃんと活かしていかないと)
雪平:……最後に、一番大きな問題ですが——
雪平:この絵からは魅力を感じません
絵名:え……?
宮益坂
二葉:絵名ちゃん……。 もしかして、今日の講評のことで悩んでたりする?
絵名:あ……うん。 技術的なところはわかるし、直せると思うんだけど
絵名:——魅力がないって、どういうことなんだろ
二葉:…………
二葉:……たしかに、今日の絵は、 ちょっと生き生きしてない感じがしちゃったかも
二葉:なんていうか……絵名ちゃんの絵はいつも 私を見て!って言ってるような感じがするんだけど、 今日はそういうのがなくて……
絵名:んー……、構図がいまいちなのかな? でも、そこは褒められたはずなんだけど……
子供達:『先生、さようならー! また今度ね!』
絵名:あ、あれって初心者向けの絵画教室だっけ? 最近できたっていう……
二葉:うん。 先生が明るくて優しいから子供に人気なんだって
絵名:へえ……。 私達のところとはずいぶん雰囲気違うね
子供:なあなあ、今日描いた絵、見せてよ!
子供:いいよー! じゃあ、いっせーので見せあいっこね!
二葉:みんな、楽しそうだね
絵名:本当にね。 必死にデッサンとかやってるこっちとは大違いっていうか……
絵名:……あれ?
絵名:ねえ二葉。あの子、先週も絵画教室の前にいなかった?
二葉:あ、そういえば……。 前に見かけた時も、なんだか深刻そうな顔してたね
二葉:あそこにいるってことは、 絵画教室に興味があるのかな?
絵名:…………
絵名:……入るの、迷ってるのかな
絵名:(まあ、たしかに……。 絵を描くのって、結構気力いるしね)
穂波:(『初心者向け絵画教室。 お子さまからご年配のかたまでどうぞ』……)
穂波:(こういうところに通えば、 わたしでも、ちょっとはうまくなれるのかな)
穂波:(でも……)
穂波:……どうしよう
2週間前
宮益坂女子学園 1年B組
教師:——以上が職場体験の概要です。 皆さん、頑張ってきてくださいね
生徒達:職場体験、楽しみだね~!
生徒達:ね! 私は老人ホームに行くけど、 みんなはどこ行くの?
えむ:ほ~な~み~ちゃんっ! 職場体験、一緒にがんばろうねーっ☆
穂波:うん! 幼稚園の先生になるの、楽しみだね
えむ:あたしも! 一緒にいっぱいわんだほいしたいよ~♪
教師:あ、望月さん、鳳さん。 今ちょっといいかしら
穂波:あ、はい
教師:さっき幼稚園のほうから連絡があってね。 なんでも当日は、幼稚園の壁にみんなで絵を描くらしいわ。 壁いっぱいに動物を描いて、動物園みたいにするんですって
教師:望月さんと鳳さんは、そこで子供達に 絵を教えてあげてほしいということよ
えむ:わ~! 楽しそう~! 穂波ちゃん、動物園だって!
穂波:絵……絵を……!?
えむ:穂波ちゃん?
穂波:ど、どど、どうしよう……!!
穂波:(絵画教室に入ったら、なんとかなるかもしれないって 思ったけど……)
穂波:(きっと3歳の子より、わたしの絵のほうが下手だし……。 みんなに笑われちゃうだろうな……)
穂波:…………
穂波:……もう時間だし、宵崎さんの家に行かなくちゃ……
宵崎家 キッチン
穂波:……うん。あとは煮込めばできあがりだね
穂波:(今日依頼されてるのは作り置きだけだけど……。 宵崎さんはまだ作業中みたいだし、軽くお掃除してようかな)
穂波:(冷蔵庫の中はこの前したから、今日は……)
穂波:…………はぁ
穂波:(動いてれば気がまぎれるかもって思ったけど、 ダメみたい……)
穂波:(幼稚園の絵、どうしよう。 うまく描けなかったら、小さい子達を がっかりさせちゃうかも……)
奏:——望月さん?
穂波:きゃっ! あ……宵崎さん、作業してたんじゃ……
奏:今一段落したんだ。それより……
奏:なんだか元気ないね。 何かあったの?
穂波:あ……。 すみません、心配かけてしまって……
奏:全然大丈夫だよ。 望月さんにはいつもお世話になってるし、 わたしにできることがあれば、なんでも言ってほしいな
穂波:宵崎さん……。 ありがとうございます
穂波:……じゃあ、その…… 聞いてもらっても、いいですか?
第 2 话:教えてください!
25時
絵名の部屋
絵名:『K、Amia。イラストができたから確認してもらっていい?』
奏:『わかった。それじゃあファイル送って』
奏:『……うん。全体的なイメージは問題ないと思う』
瑞希:『ボクも確認したよ! 気になったところ、まとめて送ったからよろしく〜♪』
絵名:『……ふたりとも、ありがと。 調整してみるね』
絵名:『……はぁ』
奏:『……? えななん、どうしたの? 何か悩みごと?』
絵名:『あ……まぁちょっと、絵のことでね』
瑞希:『絵のことって?』
絵名:『んー、なんていうか……』
絵名:『……先生に、“絵に魅力がない”って言われたんだよね。 今回は手応えあったのに、どうしてかなって思って』
絵名:『先生の言いかた的に技術的なことじゃないと思うんだけど、 何が足りないのかよくわからなくてさ』
奏:『魅力、か……。難しい話だね』
瑞希:『ん~……ボク達はえななんの絵が好きだし、 どの絵も魅力があると思うけど……。 画家の人って、やっぱり見かたとか違うんだろうねー』
絵名:『うん……。 こっちが描けたって思っても、 駄目なところズバズバ言われちゃうしね』
絵名:『けど……通い直してよかったな』
絵名:『少しずつだけど、ちゃんと勉強してた頃のカンが 取り戻せてる気がするし。 自分でも良くなっていってるなって感じるから』
奏:『……そっか。頑張ってるんだね』
瑞希:『そういうのいいね! ボク達も応援してるよ』
絵名:『ありがと。 時間はかかるかもしれないけど、もっとうまくなって、 K達の曲にもっと合う絵を描くから、待っててよね』
奏:『うん。楽しみにしてる』
奏:『……あ、絵っていえば……』
絵名:『どうしたの?』
奏:『ごめんえななん。 ちょっと相談に乗ってもらってもいいかな?』
絵名:『え? うん、もちろんいいけど……どうしたの?』
奏:『実は、わたしの家に来てくれてるお手伝いさんが、 絵のことで困ってるんだ』
奏:『学校の行事で職場体験があって、 そこで幼稚園の子に絵を教えなきゃいけないらしいんだけど、 その人は絵が苦手みたいで……』
奏:『上手に描くコツが知りたいって言ってたんだけど、 わたしはあまり絵に詳しくないから、力になれなくて』
絵名:『そうだったんだ……』
瑞希:『絵が苦手なのに、教えろって言うのは無茶だよねー。 それに子どもって結構容赦なく言うこともあるし』
奏:『うん。だから何かアドバイスできたらいいなと 思ったんだけど……』
奏:『えななんだったら、その人にどんなアドバイスをする?』
絵名:『アドバイス、か……』
絵名:『んー、実際に絵を見てみないとなんとも言えないかな。 じゃないと、なんで悩んでるのかもわからないし』
瑞希:『でも、そこまで悩むってことは相当なんだろうね』
奏:『わたしも、その人の絵は見たことはないんだけど……。 子供に教えるなんて絶対できない、って言ってるんだ』
奏:『いつもお世話になっているから、 なんとかしてあげられたらって思ったんだけど……』
絵名:『…………』
絵名:『……ねえ、K』
奏:『ん?』
絵名:『……ちゃんとアドバイスができるかどうかはわからないけど、 私、その子の相談に乗ろうか?』
奏:『え? いいの?』
絵名:『うん。Kにはいつも助けてもらってるし、 私にできることだったら協力したいから』
奏:『えななん……』
奏:『ありがとう。すごく助かるよ』
奏:『でも、どうしようかな。 わたしがお手伝いさんから写真とかで絵のデータを預かって、 それをえななんに送る感じでいい?』
絵名:『あー、Kも曲作りで忙しいんだし、 その子から私に直接送ってもらっていいよ。 連絡先も教えていいからさ』
奏:『そっか……、わかった。 じゃあ連絡しておくね』
奏:『えななん、本当にありがとう。 きっと喜んでくれると思う』
絵名:(……ふふ、奏も嬉しそうでよかったな)
絵名:(まぁ、私も何かを教えてあげられるほど 描けるわけじゃないけど…… でも、できるだけのことはやってみようかな)
翌日
絵名:さて、今日も早速作業に—— ……ん? メッセージ?
穂波:『はじめまして、望月穂波といいます』
穂波:『突然メッセージを送ってしまいごめんなさい。 宵崎さんから紹介してもらい、連絡をさせていただきました』
穂波:『東雲さんのお時間をとってしまうことになり 大変申し訳ないのですが、今、とても困っていまして……。 ご迷惑をおかけしてしまうのですが、よろしくお願いします』
絵名:なるほどね、この子が奏が言ってた子か
絵名:奏の言ってたとおり、丁寧ないい子って感じだな
絵名:『はじめまして。東雲絵名です。 そんなに絵に詳しいってわけじゃないけど、 わかることなら答えていくから、気軽に聞いてね』……っと
穂波:『ありがとうございます。 そう言っていただけるととてもありがたいです』
穂波:『絵について悩んでいることはたくさんあるんですが……』
穂波:『一番大きい悩みは、 絵を描いても、それが何かわかってもらえないことです』
絵名:描いても、何かわかってもらえない……?
絵名:んー……そこまでいくと、結構描けなさそうだな……
絵名:やっぱり1回絵を見てみないと ちゃんとしたアドバイスするのも難しそうだから——
絵名:『よければ描いた絵の写真を送ってもらってもいいかな? 実際見たほうがアドバイスしやすいし』
絵名:…………
絵名:…………。 ……あれ? 返事がこない……?
絵名:今、絵の写真撮ってるのかな。 ちょっと待ってみよっと
絵名:……来ない。もう30分もたつのに……
絵名:ん~結構遅い時間だし、もしかしたら寝ちゃったのかな。 それなら仕方ないけど……
絵名:——あ、来た! なになに……
穂波:『遅くなってしまってすみません……。 絵の用意に手間取ってしまいました』
絵名:(もしかして、一から絵を描いてたのかな? ……ふふ、やっぱり丁寧な子だな)
穂波:『犬の絵なんですけど……どうでしょうか』
絵名:(犬か。正確に描くのは難しいけど、 デフォルメしていいならアドバイスもできそう——)
絵名:……えっ!?
絵名:な……何これ!? この黒いのいったい……ナマコ!?
絵名:というか、もっと複雑な…… 言っちゃえばなんかの内臓っぽいっていうか……
絵名:抽象画として見れば、センスあるのかも……? もしかして、メタファーとして表現してるとか——
絵名:………………
絵名:——いや、冷静に考えて 絵が描けないって言ってる子がそんな高度なこと できるわけないか
絵名:…………。 これ、なんてコメントしよう……
絵名:と、とにかく……何か返信しないと……
絵名:『ありがとう。送ってもらった絵、確認したよ』
絵名:『すごく印象深い絵だなって思ったよ』
絵名:……これが限界かな……
穂波:『すみません……。 驚かせてしまいましたよね……』
絵名:まぁ、かなりね……
穂波:『……見てもらったとおり、全然絵が描けないんです』
穂波:『何回か自分でも練習したんですけど、 でも、どうしてもうまくできなくて……』
穂波:『東雲さん、お願いします。 この絵をなんとかする方法を、教えていただけないでしょうか』
絵名:う……なんとかって言われてもな……
穂波:『難しいとは思うんですけど…… 幼稚園の子達に、ちゃんと絵を教えてあげられるように なりたいんです!』
絵名:…………
絵名:(……なんか、一生懸命な子だな)
絵名:(1回きりの職場体験なんて、 適当にやればいいのに)
絵名:(誰かのために、頑張っちゃう人なんだろうな……)
絵名:……ふふ
絵名:『もしよかったら、直接教えようか?』
絵名:『メッセージだと、1回1回写真送ったり 文字を打ったりしないといけないしさ』
穂波:『そこまでしてもらっていいんですか……!? 今でもかなりお時間をとっていただいているのに……』
絵名:『気にしなくていいって。 教えることも絵の勉強になるって言うしね』
絵名:『もちろん、望月さんが迷惑じゃなかったらだけど、 どうかな?』
穂波:『いえ! 全然、迷惑じゃないです! 東雲さんがいいなら、ぜひお願いします!』
絵名:『それじゃあ、決まりだね』
絵名:『今日はもう遅いし、 場所とか日にちはまた今度決めようか』
穂波:『はい! 本当にありがとうございます!!』
第 3 话:練習場所は?
翌日
宮益坂女子学園
穂波:(職場体験のことがあって、最近は少し憂鬱だったけど……。 東雲さんが教えてくれることになってよかった……)
穂波:(これで、ほんの少しでも……せめて、何を描いてるのか わかってもらえるくらいうまくなれれば、きっと大丈夫だよね)
穂波:結局、教えてもらう場所はまだ決められてないけど…… どこかいいところあるかな……?
1年B組
穂波:みんな、おはよう。 ……あれ?
えむ:たったったこたこきゅーばんぷにぷに~♪ まるまる太陽さんさんさーん☆
穂波:えむちゃん、楽しそうだね。 何描いてるの?
えむ:あっ、穂波ちゃん! たこさん描いてたんだ~☆
穂波:たこさん……?
穂波:わっ、えむちゃんすごく上手! 可愛くて明るい雰囲気もあって、 小さい子も好きそう……!
穂波:(いいな……。 わたしも、これくらい描けたらいいのに……)
えむ:今度の職場体験でちっちゃい子に絵を教えるでしょ?
えむ:でもあたし、誰かに絵を教えるの初めてだから うまくできるかちょっと不安なんだー
えむ:だから、今から練習して ちょっとでもうまくなりたいなって☆
穂波:えむちゃん……
穂波:(こんなに可愛い絵が描けるのに、 えむちゃんも不安なんだ)
えむ:あ、そうだ! 穂波ちゃん、一緒にお絵描き練習しようよ!
えむ:先生役とちっちゃい子の役を交互にやってくの! そしたら教えるほうも、描くほうも練習できるでしょ?
穂波:あ……う、うん。いい案だと思う。 思うんだけど……
穂波:(でも、それってえむちゃんに わたしの絵を見せることになるよね。それは……)
えむ:穂波ちゃん?
穂波:あ、ご、ごめんね。 えっと、実は——
えむ:え~! 穂波ちゃん、絵を描くの苦手だったの?
穂波:うん……。何を描いても、うまく表現できなくて……。 絵を見て笑われることもあるんだ
穂波:だから、幼稚園で絵を教えるって知った時、 どうしようって不安だったの
えむ:そうだったんだ……。 だから穂波ちゃん、最近元気なかったんだね
穂波:ごめんね。えむちゃんに見せたくないわけじゃないんだけど、 人前で描くのは少し抵抗があって……
穂波:でも、絵がうまい人に教えてもらえることになったから、 上手に描くコツとかを聞いて、本番までには なんとか描けるように頑張ろうって思う
えむ:えっ、いいなあ! いつ教えてもらうの?
穂波:週末なんだけど……まだ場所は決まってないんだ。 わたしの部屋、エアコンの工事が入ることになってて 使えないし……
穂波:でも、相手のかたのお家に お邪魔するのも申し訳ないなって思って、 いい場所がないか探してるところなの
えむ:そっかあ……。 うーん……
えむ:あっ! それなら、あたしもその練習、 一緒に参加してもいいかな?
穂波:え? えむちゃんも?
えむ:うん! あたしも絵の練習したいし、 穂波ちゃんと教えてもらえるなら嬉しいなと思って!
えむ:それに、あたしの家だったら全然大丈夫だし! 思いっきり絵が描けると思うんだ☆
えむ:あっ! えっと、穂波ちゃんと 教えてくれる先生がよければ、だけど……
穂波:ありがとう、えむちゃん
穂波:わたしは大丈夫だから、 教えてくれる人——東雲さんに聞いてみるね
えむ:うんっ!
週末
絵名:ん~……変だな……
絵名:望月さんに送ってもらった地図からすると 鳳さんの家はこの辺のはずなんだけど……。 それっぽい家、全然見つからないし……
絵名:……ん?
絵名:あの子、どこかで見たことがあるような……?
絵名:あ、あの時の——
穂波:え?
絵名:(ヤバ……! 聞こえちゃった!?)
穂波:あ……もしかして東雲さん……でしょうか?
絵名:えっ? ってことはもしかして、あなたが——
穂波:はい、望月です。 今日、絵を習う予定の……
絵名:……! 望月さんって、あなただったんだ!
穂波:え?
絵名:最近、何度か絵画教室の前にいたでしょ? 実は私、その時見かけてたんだ
穂波:……! み、見られてたんですね、恥ずかしい……
絵名:(すごく真剣な顔してるな~って思ってたけど、 やっぱり悩んでたんだ……)
絵名:(それなら、ちょっとでも力になってあげないと)
絵名:じゃあ、改めて——私は東雲絵名。 絵名って呼んでくれていいよ
穂波:あ……はい、望月穂波です。 今日はよろしくお願いします
穂波:えっと……絵名さん
絵名:うん、よろしくね
絵名:ていうか、鳳さんって子の家、どこにあるの? ずっと探してたんだけど、全然見つからないんだよね
穂波:あ、えっと……。 ここが鳳さんの家だと思います
絵名:……え? ここって、美術館とかの敷地じゃないの? 大きい門と柵しかないし……
穂波:ええと、その門に『鳳』って表札があるので……
絵名:……えっ!? ほ……本当だ。『鳳』って書いてある
絵名:嘘でしょ……!? こんな家に住んでる人、実在するの……!?
絵名:たしかに、こんなところに美術館あったっけって 思ってたけど……
穂波:あはは……。えむちゃ——鳳さん、お嬢様なので……
絵名:いやいやいやお嬢様にも程があるでしょ……。 こんな家に住めるなんて、相当大きな会社の 社長令嬢としか——
絵名:ん? 『鳳』……?
絵名:いや、まさかね。 フェニラン経営してる、あの鳳グループの人とかそんなわけ……
穂波:えっと……多分、その鳳さんで合ってると思います。 わたしもお家には初めて来たのでびっくりしましたけど……
絵名:えっ!? 鳳グループのお嬢様に絵を教えるってこと!?
穂波:はい……その、事前にお話してなくてすみません……。 絵を描くことで頭がいっぱいになってしまっていて……
絵名:い、いや、報告されるほどのことでもないし、 別にいいんだけど……ちょっとびっくりしちゃった
絵名:じゃあ、ひとまず……は、入ろうか?
穂波:あ……はい!
鳳家 リビング
絵名:何これ、ヤバ……
絵名:リビングから庭園が見えてる家とかある……? お高いホテルレベルじゃん……
絵名:——っていうか、あそこに飾られてるのって レミドールの『パレード』!? まさか、本物じゃないよね……!?
穂波:こ、これがお家……なんですね……
えむ:穂波ちゃん! しのののめさん! いらっしゃ~い☆
えむ:はじめまして! あたし、鳳えむです! 今日はよろしくお願いします☆
えむ:……って、あれ?
えむ:もしかして……このあいだ、朝比奈センパイと一緒に フェニックスワンダーランドに来てくれた人ですか!?
絵名:え? あ……
えむ:——朝比奈センパイ! フェニックスワンダーランド、楽しんでください!
えむ:ここは、みーんなを笑顔にしてくれる場所なのでっ!
絵名:えっと、フェニランでショーキャストやってるっていう まふゆの後輩ちゃん?
えむ:はいっ! あたし、鳳えむです! まさか朝比奈センパイのお友達なんて、びっくりです!
えむ:今日はよろしくお願いします! しのののめさん!
絵名:うん、よろしく
絵名:ていうか、東雲ね。 しのののめじゃなくて
えむ:あ! ごめんなさーい! し、の、の、の……? じゃなくて、しののめめですね!
絵名:あはは……でも絵名で大丈夫だから
絵名:(なんか、結構ぶっ飛んでる感じの子だな……。 やっぱお嬢様だから?)
絵名:(まふゆが普段、どんな感じでこの子と話してるのか、 ちょっと気になるかも……)
ひなた:——あ、いらっしゃい。 えむのお友達だよね、今日は遊びに来てくれてありがとう
穂波:あっ、こんにちは。 お邪魔しています……!
ひなた:ふふ、そんなにかしこまらなくても大丈夫だよ
ひなた:あとでお菓子を持っていくから、 ゆっくりしていってね
絵名:あ、ありがとうございます……
えむ:えへへ、それじゃあさっそくあたしの部屋に行こ~!
第 4 话:絵名先生のお絵描き教室!
えむの部屋
絵名:それじゃあ、さっそく絵を描いていこうか。 でも、その前に——
絵名:ええと、念のため確認なんだけど、 穂波ちゃんとえむちゃんは幼稚園の子達に 絵を教えられるようになりたいんだよね?
穂波:はい! そのためにまずは、なんの動物を描いたのか わかってもらえるようになりたいです……!
絵名:なるほどね。 じゃあ、穂波ちゃんの目標はそれにしよっか
えむ:はいはい! あたしは幼稚園の子にどう教えたらいいのか 知りたいですっ!
絵名:どう教えたら……か。 んー、ならえむちゃんがどれくらい描けるのかも 知りたいから……
絵名:まず最初はふたりで一緒に描いてみて、 そのあと穂波ちゃんは動物を一種類描けるように練習。 えむちゃんは、どう子供達に教えるか考えていこうか
絵名:えっと、画材は私もいくつか持ってきたし、 好きなもの使ってもらっていいけど——
えむ:あたしも、今日のために鉛筆も絵の具もいーっぱい準備しました! 一緒に使いましょー!
えむ:この絵の具とかすーっごくピカピカしてきれいだから、 いっぱい使いたいです!
絵名:へぇ、たしかにいい色——って
絵名:ちょ……! それ、ラピスラズリの絵の具じゃない!?
絵名:普通のチューブの半分以下しか入ってないのに、 5万はするっていう……!
穂波:えぇっ!? えむちゃん、どうしてそんなすごいもの……
えむ:えっとね、大きな画材屋さんに置いてあって、 きれいな色だからお小遣いで買ったんだよ
えむ:だからみんなで使おうよ! きっときれいな絵が描けると思うんだ☆
絵名:つ、使えるわけないでしょ!? そんな貴重なもの……!
えむ:え? でも、せっかく買ったし、 使わないともったいないかなーって……
絵名:それはそうだけど……じゃなくて!
絵名:これは固形水彩絵の具だからかなり使いにくいの。 うまく塗るには、結構技術がいると思うよ
えむ:そうなんだ……。 じゃあ今日は使えないの?
絵名:あ……まぁ、今度使いかたのサイトとか教えてあげるから。 それで試してみたらいいんじゃない?
えむ:……! はいっ!
絵名:……ふふっ
絵名:(しょんぼりしたと思ったらすっごい笑顔になってる。 ちょっと型破りだけど……素直な子だな)
絵名:さて——じゃあまずはふたりとも、 この紙に好きな絵を描いてみてくれる?
穂波・えむ:『はい!』
えむ:ふんふふんふふーん♪
絵名:(どれどれ、えむちゃんは…… わ、紙からはみ出しそう。大胆だな)
絵名:(描いてるのは——リスみたい。 ……うん、尻尾のフワフワした感じとかよく描けてる)
絵名:(デフォルメもうまいし、 幼稚園くらいの子なら、こういう絵好きそうだな)
絵名:(これならえむちゃんのほうは問題なさそうだけど——)
絵名:(す、すごい険しい顔で固まってる……)
絵名:穂波ちゃん、調子は——
穂波:え、は、はい……! えっと、あの……
絵名:あーごめん、驚かせちゃったかな。 穂波ちゃんは描けてるかな、って思ったんだけど……
穂波:あ、えっと……。 すみません、まだできてなくて……
絵名:何を描くかで悩んでるとか?
穂波:あ、いえ……。 その……指導をお願いしておいて、 こんなこと言うのはおかしいんですけど……
穂波:描いてるのを見られるのが、恥ずかしくて……
絵名:え?
穂波:その……わたし、あんな絵しか描けなかったので、 小学校の図工の時間とかも クラスメイトの男子に笑われていて……
穂波:幼馴染みの子達は、からかう子を怒ってくれたり、 気にしないでいいよって言ってくれたんですけど
穂波:でも、それから人前で絵を描く時は、 また笑われるんじゃないかって不安になっちゃって……
えむ:穂波ちゃん……
絵名:(トラウマになっちゃってる……ってことかな)
絵名:(……なんか、ちょっとわかるな。 人前で自分の絵をけちょんけちょんに言われた時って、 本当にショックだし)
絵名:(他の人と比べられて酷評されるのは、私だって……)
絵名:(でも——)
絵名:大丈夫だよ、穂波ちゃん
穂波:え……?
絵名:最初から描ける人なんて、めったにいないから。 みんな、人に見てもらったり教えてもらったりしながら うまくなっていくんだと思う
絵名:だから怖いのはわかるけど、ちょっとずつ見せていこ? 穂波ちゃんの絵を見て笑う人はここにいないからさ
えむ:そうだよ! あたしも見せるから、一緒にがんばろ!
穂波:あ……
穂波:(そうだよね……。 ここで恥ずかしがってたってしょうがないよね、 今日は練習しにきたんだし……!)
穂波:……そう、ですね。少し怖いですけど、描いてみます。 よろしくお願いします、絵名さん
絵名:うん、頑張ろうね
穂波:はい!
絵名:(よかった。ちょっと前向きになってくれたみたい)
絵名:(私に絵の先生なんてできるかな~って思ったけど、 この調子ならうまくいきそう——)
絵名:うっ……!!
穂波:ええと……ここはこうして……!
絵名:(また、内臓みたいなもの描いてる……!)
絵名:(いや……内臓は例えがよくないかも。 せめてえーと……横長のおはぎ?)
絵名:(ん……んんん、なんだかよく見たら センスがあるような気もしてきたな……)
絵名:(何を描いてるのかはわかんないけど、 構図切って、色を塗れば独特の雰囲気が出てよさそう——)
絵名:(いやいやいや、小さい子にわかるような絵をって 言ってるのにそれじゃ駄目でしょ)
絵名:(ちゃんと、誰が見てもわかるような絵に なるように教えないと……!)
穂波:で……できました! どう、でしょうか……
絵名:んーーーーーと……
絵名:(まずこれはなんなのか聞かないといけないけど、 傷つけないような言いかたにしなくっちゃ……えーと……)
えむ:わぁ! 穂波ちゃんナマコ描いたんだね! すっごく上手だよ~♪
絵名:あっ……! ちょ、えむちゃん!
穂波:えっと……ゾウを描いたんだけど……
絵名:(あ……これ、ゾウだったんだ……)
穂波:や、やっぱり見えないよね。 描き直して……
えむ:あ~、だめだよ! あたしそのゾウさん好きだよ! だから消さないで~!
穂波:え……? でも……
えむ:消すくらいならあたしがもらっていい? この部屋に貼っちゃお~☆
穂波:あ……。 ありがとうえむちゃん……
絵名:(……ふふ、結果的にはいいアシストしてもらえたな)
絵名:えーと……
絵名:見た限り、穂波ちゃんは、 描くものがどんな形をしてるのか しっかりとらえきれてないのかもね
穂波:とらえきれてない……?
絵名:うん。頭の中のイメージだけで描いちゃうと 本物と違う形になっちゃうことが多いんだ
絵名:絵がうまい人でもあるんだよ。 ここには影ができるはずだからって思いこみで、 実際の影より濃く描いちゃったりね
えむ:へ~! そうなんですね!
絵名:だからまずは、しっかり見て模写するところから 始めていこう!
穂波:しっかり見て、模写する……
穂波:でも……昔、写生の授業で同じことを言われた時、 全然うまくできなかったので、できるかどうか……
絵名:じゃあ最初はもうちょっと簡単にしてみる?
絵名:スマホで写真を検索して、 印刷した写真の上にトレーシングペーパーを置いて、 輪郭をなぞってみるの。それならどう?
穂波:……! それなら、できるような気がします!
絵名:じゃあ決まり! それでやってみよう!
穂波:はいっ!
絵名:(……タイムリミットは、あと半日ってところかな)
絵名:(正直、どう教えたらいいのかわかんないけど——)
絵名:(……こんなに頑張ってるんだもん。 なんとかしてあげたいよね)
第 5 话:うまく描くためには
絵名:(……うん。 トレースはできてるみたい)
絵名:(穂波ちゃんは自由に描くってなると緊張しちゃうのかもな。 それにくらべて——)
えむ:んっんっん~♪ ニコニコいっぱい~♪
えむ:できた~! 絵名さん、見てくださいっ!
絵名:どれどれ? えーと、これって……フェニーくん?
穂波:わあ、可愛いね。 手に持ってるのは風船かな
えむ:うんっ! フェニックスワンダーランドの中をお散歩してるんだ☆ それで、来てくれたみんなに風船をプレゼントしてるの!
えむ:絵名さん! あたしの絵、どうですか! ちっちゃい子をニコニコさせられますかっ!?
絵名:ふふっ。 この元気いっぱいな絵なら大丈夫じゃない?
えむ:やった~! ありがとうございます!
えむ:でも、描くだけじゃなくて 教えるのもやらなきゃいけないんだよね。 うまくできるかなぁ……?
絵名:あ、そっか。 えむちゃんはそっちも知りたかったんだよね
絵名:うーん、そうだな……。小さい子が相手なら、 まずは思いっきり褒めることが大事かな
えむ:褒める?
絵名:そう。だから、まずはいいところを見つけて 『ここが素敵だね』とか『よく描けてるね』とかって 言ってあげるの
絵名:それから、直したほうがいいところを見つけて 優しくアドバイスしてあげるといいんじゃないかな
えむ:優しくアドバイス……
えむ:あのあの、あたし、誰かにアドバイスするの苦手で……! どうしたらうまくできますかっ?
絵名:んー、そうだね……。 じゃあ一緒に練習してみよっか
絵名:私が絵を描いてみるから、アドバイスしてみてくれる?
えむ:はーい!
穂波:——絵名さん、なぞるのできました!
絵名:お疲れさま。 ……うん! トレースはいい感じだね!
穂波:はい! わたしがこんな風に描けるなんて……! すごく感動しました……!
絵名:ふふ、良かったね
絵名:これだけできるなら、 次は写真を横に置いて真似して描けそうだね。頑張ろ!
穂波:はいっ!
絵名:(一時はどうなることかと思ったけど、 なんとかなりそうでよかった)
絵名:(結構、時間経ったけど……。 穂波ちゃん、どうかな?)
絵名:(うわっ……!)
絵名:(ま……また暗黒物質になっちゃってる!! なんで!?)
穂波:え、絵名さん……
穂波:ど、どうしてこうなってしまうんでしょう……。 なぞるのは上手にできたのに……
絵名:(それはこっちが知りたいんですけどー!!!!)
絵名:ちょ……ちょっと考えてみるから待っててね……
穂波:はい……
絵名:(んー……さっきまで調子よかったのに、 なんであんな風になっちゃうんだろ?)
絵名:(——画風としてはアリだと思うし、 もういっそ個性として貫くのも……)
絵名:(いや、でも……それじゃ、穂波ちゃんの悩みは 解決されないままだし……!)
穂波:……やっぱり、向いてないんでしょうか……
絵名:え?
穂波:こんなに下手なら、もう絵を描くのは諦めて えむちゃんのサポートに回ったほうが……
絵名:あ……
絵名:(……このままじゃ、穂波ちゃん、 これからずっと絵を描かなくなっちゃうかもしれない……)
絵名:(たしかに、私もキツいって思う時はあるし 逃げちゃったりもしたけど——)
絵名:(でも……もったいないよ。 絵はもともと、楽しんで描くものなのに……!)
絵名:(穂波ちゃんが自信を持って、楽しく描けるように教えよう。 誰でも簡単に描ける絵にするためには……)
絵名:——わかった。 デフォルメで描けるように、パターンを覚えよう!
穂波:え?
絵名:物の特徴を捉えて、簡単な形にするの。 たとえば猫だったら、顔は丸で耳は三角で……
絵名:はい、できた
穂波:あ、可愛い……!
絵名:見た感じ、穂波ちゃんは丸とか三角とかの 図形自体は描けるみたいだから……
絵名:顔は丸、耳は三角、みたいに覚えれば、 きっと動物らしく見えるんじゃない?
穂波:た、たしかに……! やってみます!
穂波:顔は丸……耳は三角……! 丸の横に棒を2本描いて……!
穂波:で、できました!
絵名:いい感じじゃん!
絵名:ねえ、えむちゃん。 穂波ちゃんの絵、何に見える?
えむ:ほえ? あー! かわいい猫さんだねっ!
穂波:……! ほ、本当? 猫だってわかるかな?
えむ:うんっ! 顔がまんまるの、かわいい猫さんだよー☆
穂波:あ……ありがとう……!!
絵名:(——穂波ちゃん、笑顔になってくれた)
絵名:よーし、じゃあ次はクマを描いてみようか! 顔は丸で、耳が小さな丸で……こんな感じかな。 穂波ちゃんも描いてみて
穂波:えっと……こう、でしょうか?
絵名:そうそう! よく描けてるよ!
穂波:……! あ、ありがとうございます! 嬉しいです!
絵名:ふふ、それじゃあこの調子でどんどん描いていこうか! 次の動物は——
穂波:——か、描けました! この動物、何に見えますか……?
えむ:えっと……お顔が三角で、耳も三角だから…… キツネさん!
穂波:せ、正解! 全部わかってもらえた……!
絵名:ふふ、よかったね、穂波ちゃん
穂波:はい! 本当にありがとうございます!
穂波:自分の絵をわかってもらえるの、初めてで……! すっごく嬉しいです!
絵名:それなら教えたかいもあったかな。 ふふ、一番最初の絵とは大違いだね
絵名:そうだ、せっかくだから最初の絵は 記念にもらっておこっかな?
穂波:え、ええっ!? そんな……捨ててもらって大丈夫ですから……
えむ:あたしも穂波ちゃんの絵好きだよっ!
えむ:でも……最初に穂波ちゃんが描いてくれた絵も すっごく好きだったなあ
えむ:うちに飾ってる絵みたいな感じするし☆
穂波:えっ!?
絵名:まあ、最初のは抽象画っぽい雰囲気はあるよね。 額に飾れば、ちょっと映えそうっていうか
えむ:たしかに! じゃあレミドールの絵の横に並べようよ! 穂波ちゃん、描いて描いて~!
穂波:れ、レミドールの絵と並べるのはやめよう……!?
えむ:絵名さん、穂波ちゃん! 今日はありがとうございました!
絵名:私のほうこそ、お邪魔させてくれてありがと。 職場体験は今週末だっけ。頑張ってね
穂波:はい、ありがとうございます。 絵名さんのおかげで頑張れそうです
えむ:終わったら、どんな絵が描けたか 連絡しますねっ!
絵名:ふふ、ありがと。 楽しみにしてるね
穂波:それじゃあ、えむちゃん。 また学校でね
えむ:うん! 気をつけて帰ってね! バイバーイ!
スクランブル交差点
穂波:……改めて、今日は本当にありがとうございました
穂波:描きかたを教えてもらって、 自分の描いたものをわかってもらえたり、 描けてるって言ってもらえたりして、本当に嬉しかったです
絵名:そっか。 私も教えられるような立場じゃないから不安だったけど…… そう思ってもらえたならよかったな
穂波:はい。絵名さんのおかげで、少しだけ、 自分の絵に自信が持てるようになりました。 本当に、ありがとうございます!
絵名:ふふ、それならよかった。 それじゃあ、職場体験頑張ってね
穂波:はい!
穂波:あ、わたしこっちなのでここでお別れですね。 絵名さん、本当にありがとうございました!
絵名:うん。バイバイ
絵名の部屋
絵名:ふう……。 かなり大変だったけど、なんとかなってよかった
絵名:(幼稚園に行くのは今週末って言ってたっけ……。 うまくいくといいな)
絵名:(でも、穂波ちゃんの絵、すごいインパクトだったなぁ。 1回見たら忘れられないっていうか、クセになるっていうか)
絵名:(もう1回見たくなる魅力があるんだよね、なんか)
絵名:(んー、やっぱりすっごいインパクト……。 何を描いてるのかわかんないけど、 迫るものがあるっていうか……)
絵名:…………あれ?
絵名:(この絵……最初は 何を描いてるのか全然わからなかったけど……)
絵名:(よく見ると穂波ちゃんなりに、 ゾウの特徴を表現しようとしてる……!)
絵名:(多分、ここが耳で……これが鼻だ。 偶然なんだろうけど、おもしろい表現になってる)
絵名:(それに……表情なんかも描けてる。 ちゃんと嬉しそうに見えるっていうか…… パッと見の印象が強くて、気づかなかったな……)
絵名:(穂波ちゃんは、ちょっと個性がありすぎるだけで 味のあるいい絵を描いてたのに……)
絵名:(穂波ちゃんが自信を持って、楽しく描けるように教えよう。 誰でも簡単に描ける絵にするためには……)
絵名:見た感じ、穂波ちゃんは丸とか三角とかの 図形自体は描けるみたいだから……
絵名:顔は丸、耳は三角、みたいに覚えれば、 きっと動物らしく見えるんじゃない?
えむ:でも……最初に穂波ちゃんが描いてくれた絵も すっごく好きだったなあ
絵名:…………
絵名:私の教えかた、本当にこれでよかったのかな……?
第 6 话:描きたいように
教室のセカイ
一歌:……ふう。ちょっと休憩しようか
穂波:うん、みんなお疲れさま
穂波:あ……休憩に入るなら、 少し教室の隅を借りてもいいですか?
MEIKO:もちろん、いいよ。 ……あれ? それって、スケッチブック?
穂波:はい。 少し絵の練習をしたくて……
レン:絵? なんでまた急に……
穂波:今度、校外学習で職場体験をすることになって、 幼稚園の子に絵を教えることになったんだ
咲希:ほなちゃん、絵の練習すっごくがんばってるよね! 休み時間にも教室で描いてるみたいだったし!
穂波:あ、見られてたんだ……。ちょっと恥ずかしいな
志歩:恥ずかしがることないでしょ。 教えられるようにって一生懸命やってるんだから
一歌:そういえば絵を習ったって言ってたけど……どうだった? 動物、描けそう?
穂波:あ、うん……一応これくらいには……
一歌・咲希・志歩:『おおー……!』
咲希:……すごい、ほなちゃん! 猫にクマにキツネに……上手だね!
志歩:うん。 ちゃんと特徴押さえられてる
一歌:穂波、頑張ったね……!
穂波:ありがとう、みんな
MEIKO:ふふ、さすが穂波だね
ルカ:でも……ここでいいの? もし集中したいなら他の教室もあるわよ
穂波:ありがとうございます。 でも、できればみんながいるところで描きたいんです
ミク:そうなの? 静かなほうが集中できると思うけど……
穂波:えっと、絵がうまい人に教えてもらったんです。 いろんな人に見てもらうことも練習になるって
穂波:それに、その人に教えてもらったおかげで、 自分の絵に自信がついたんです。 だから、前よりも恥ずかしくなくて……
KAITO:……よかったね
リン:うんうんっ! ……あ、そうだ!
リン:せっかくだし、みんなでお絵描きしない!?
穂波:え、みんなで?
リン:うん! 好きなものをひとつ描いて、 見せあいっこするの!
MEIKO:好きなものをひとつ……おもしろそうだね! やってみようか
レン:オレはパス。 お絵描きなんて子供っぽいこと——
ルカ:あら、絵に大人も子供も関係ないわよ?
レン:……まあ、そりゃそうだけど
リン:じゃ、決定だね☆
リン:よーし、みんなで描いてみよ~う!!
穂波:(ふふ、みんなで絵を描けるなんて嬉しいな)
穂波:(……いつもなら、ひとりだけ描けなくて 苦しかったけど……)
穂波:(今は絵名さんのおかげで、大丈夫)
穂波:(えっと……。 お題は『好きなもの』だったよね)
穂波:(それならわたしは、しばおを描こう……!)
ミク:わ。カイトの描いてるアイス、本物みたい……!
KAITO:え、そうかな……
咲希:ルカさんの描いてる小鳥もすっごい上手! 教科書とかにのってそう~!
一歌:ミクの桜も綺麗だね。 私も参考にしようかな
志歩:メイコさんの絵はかっこいいよね。 ドラムの縁が光ってるところとか
穂波:(犬だから、絵名さんが教えてくれたとおりに 顔は丸くして、耳は楕円にして垂れ下がってる感じに——)
穂波:あ……
穂波:(しばおは柴犬だから、耳は垂れ下がってない……。 じゃあ、耳は三角にしないと……)
穂波:(あれ? 耳を三角にしたら猫みたいになっちゃった)
穂波:(どうしよう……しばおの耳はもっと丸いけど、 丸くしたらクマになっちゃうし……)
穂波:(じ、自分で想像して描くとどうしても、 変な形になっちゃう……!)
レン:——大丈夫か? 穂波
穂波:きゃっ……! あ、レンくん……
レン:何か困ってることでもあるのか?
穂波:あ……ううん。なんでもない。 レンくんは何描いてるの?
レン:オレか? オレは自分のギターにした
穂波:わ……! 上手だね! すごくよく描けてるよ
リン:あ、ホントだ~! カッコイイね~! ……あれ?
リン:でもちょっと変だよ? レンのギターの先、こんなにとんがってないよね
レン:まあ実際はそうだけど……
レン:——こう描きたかったんだからいいだろ? 絶対に見たまま描く必要もないんだし
穂波:……え?
レン:オレは、ギターのかっこいい音が好きなんだよ。 だからちょっと先をとがらせたほうが、 かっこいい音の感じが表現できるなって思ったんだ
穂波:……そういう描きかたをしてもいいんだ……
レン:まあ、絵には詳しくないし、 カイトみたいにうまくは描けないけどさ
レン:こういうのは描きたいように描けばいいって。 それが一番いい絵になるって思うしな
リン:んー……たしかにー! こっちのほうがすっごくレンっぽいかも!
レン:だろ? さすがリン、話がわかるな!
穂波:(描きたいように、描けばいい……)
穂波:(でも……それだとわたしは、 みんなに何を描いたのかわかってもらえないし……)
一歌:穂波、どう? 描けた?
穂波:あ……! ちょっと待ってね!
穂波:(犬っぽくするなら、耳は楕円にしなきゃだけど……)
穂波:(……どうしたらいいのかな……)
宮益坂
絵名:はぁ……
二葉:……絵名ちゃん、今日はずいぶん悩んでるみたいだけど、 どうしたの?
二葉:なんとなくだけど、絵にもちょっと 集中できてなかったみたいだったし……
絵名:あ……バレちゃってたか……
絵名:ちょっとね。 前の日曜、知りあいに絵を教えたんだけど……
絵名:……あの教えかたで本当によかったのかなって、 わからなくなっちゃってさ
二葉:えっと……それって、 教えたけど上達しなかったってこと?
絵名:ううん、上達はしたんだけど……。 実は——
二葉:……そっか
二葉:絵名ちゃんは、その子の絵の良さを 消しちゃったんじゃないかって思ったんだね
絵名:……うん
絵名:もしかしたら、私が教えないほうがよかったのかな、 なんて……
二葉:——そんなことないと思うよ
絵名:え?
二葉:絵名ちゃんは、その子が絵を嫌いにならないように って考えて、教えてあげたんでしょ?
二葉:苦しい時に絵名ちゃんがそうやって手を差し伸べてくれたことは、 きっとその子にとっても、いいことだったんじゃないかな
絵名:二葉……
絵名:……ありがとう
二葉:そんな、お礼を言われるようなことじゃないよ
二葉:でも……話を聞いてて、 ちょっと昔のことを思い出しちゃったな
絵名:昔のことって?
二葉:私ね、絵がうまくなりたくて いろんな人の絵を真似してた時期があったんだ
二葉:好きな画家さんとか、同じ教室の子の絵とか……。 いいなって思った絵をひたすら真似てね
二葉:そしたら、なんとなくうまくなった気がしたんだけど、 なんだか段々描く気力が落ちていって……。 そんな時、雪平先生が言ってくれたの
二葉:あなたの描きたい絵はこういうものでしたか?って
二葉:それで、自分の描きたいものってなんだろうって もう一度見つめ直して、今の描きかたに変えていったんだ
絵名:……そうだったんだ
二葉:うん。前も話したけど、絵名ちゃんの絵も真似したんだよ。 絵名ちゃんみたいな雰囲気、私も出したいなって思ってたから
二葉:でも、同じような雰囲気は出せなくて……。 やっぱり、その人の絵はその人にしか描けないんだなって思った
絵名:私の絵は、私にしか……
絵名:(——やっぱり、そうだよね。 私の絵が、私にしか描けないなら——)
絵名:(あの絵は、穂波ちゃんだから描けた絵なんだ)
絵名:(なら、私は——)
第 7 话:いざ、幼稚園へ!
職場体験当日
幼稚園
セクシーな幼稚園の先生:はーい、皆さーん! 今日は宮益坂女子学園から、望月穂波先生と鳳えむ先生が 来てくれていますよ~
園児達:『こんにちはーっ!』
えむ:こーんにちはー!!
穂波:こ、こんにちは……!
セクシーな幼稚園の先生:今日は先生達と一緒に楽しく遊びましょう! それでは穂波先生、えむ先生、 一言ずつ挨拶をお願いしまーす
穂波:も、望月穂波です。 短い時間だけど、仲良くしてもらえたら嬉しいな。 よろしくお願いします
えむ:鳳えむだよ~! みんなと一緒に楽しくわんだほいできるように がんばるから、よろしくねっ!
セクシーな幼稚園の先生:可愛い挨拶ありがとうございます♪ それじゃ、みんなも一緒にごあいさつしましょう! せーのっ
園児達:『よろしくお願いします!』
セクシーな幼稚園の先生:はーい、よくできました!
セクシーな幼稚園の先生:それじゃあ穂波先生、えむ先生。 子供達に慣れてもらうためにも、 まずはみんなと一緒に遊んでいきましょうか!
セクシーな幼稚園の先生:そのあと、お外の壁に絵を描いていきましょう!
穂波:は、はい……!
セクシーな幼稚園の先生:みんなも頑張ろうね! うまくできたら、ここをとおる人達に 褒めてもらえるかもしれませんよ~!
園児:わー! 早く描きたいな~!
穂波:(ついに、本番だ……! ……やっぱり少しドキドキするけど……)
穂波:(でも、大事なのはお絵描きだけじゃなくて、 ここのみんなとちゃんと触れあいながら、 先生としての仕事をやっていくことだから——)
穂波:(まずはみんなと仲良くなれるように、頑張ろう!)
穂波:じゃあみんな! 何して遊ぼうか?
園児:オレ、鬼ごっこがいい!
えむ:お~っ! いいね、鬼ごっこ! じゃあ最初は、あたしが鬼やるね☆
えむ:さあ、先生から逃げ切れるかな~?
園児:わー! 逃げろー!
えむ:待て待て~!!
穂波:(ふふ、えむちゃん元気だな。 幼稚園の子もすごく楽しそう)
園児:穂波先生ー、わたし鬼ごっこじゃなくて 絵本読みたいなー
園児:ぼくも~! 穂波先生、読んで読んで~!
穂波:ふふ、いいよ。 それじゃあみんなが聞こえやすいように、 まーるく円を作って座ってね
穂波:それじゃあ、読むね。 むかーし、むかし、あるところに……
数十分後
セクシーな幼稚園の先生:さあ、皆さん! 穂波先生やえむ先生とはいっぱい遊べたかな~?
セクシーな幼稚園の先生:次は、みんなが大好きなお絵描きの時間だよ。 今日はこの壁に、素敵な動物園が作れるように、 いろんな動物さんを描いていきましょう!
園児達:『はーい!』
穂波:(ついに来た……!)
穂波:(大丈夫……! 絵名さんに習ったとおりに描いていけば……!)
園児:ねえねえ、えむ先生! ウサギさん描こうよ!
園児:ぼくクマさん描きたい! えむ先生、描きかた教えて!
えむ:いいよ! さっそく描いちゃおう☆ しゅばばばばーっ!
園児:うわーっ、ウサギさんとクマさんどっちもかわいいー!
穂波:(えむちゃんは順調そうだな。 よし、わたしも……!)
穂波:それじゃあ、何描こうか? 描きたいものある?
園児:んーっとね……キツネさん!
穂波:キツネさんだね! それじゃあ一緒に描いていこう!
穂波:……キツネさんだから、 顔は逆三角形で、耳は三角で……できた!
園児:キツネさんだ~! コンコンっ♪
園児:ぼくもキツネさん描く!!
穂波:(……! ちゃんと、わかってもらえた……!)
穂波:(絵名さんに教えてもらって、本当によかった……)
穂波:……あれ?
少女:…………
穂波:(あの子、みんなから離れたところにいる。 どうしたんだろう?)
穂波:ねえ、どうしたの? みんなと一緒に絵を描かないの?
少女:……描いてもつまんないんだもん。 わたしが描くとみんな笑うし……
穂波:(あ……)
穂波:(なんだか、わかるな。 一度笑われると、描くのが怖くなっちゃうんだよね……)
穂波:(でも……それなら、やっぱり この子とも一緒に絵を描きたいな)
穂波:(きっと絵を描いて、みんながいいって言ってくれたら、 描くのが嫌じゃなくなるはずだし……!)
穂波:……そっか。 でもわたし、あなたの絵も見てみたいな。 よかったら一緒に描いてみない?
少女:……先生だけに見せるなら、いいよ
穂波:ありがとう。 何か描いてみたい動物さんはいるかな?
少女:じゃあ、ワニがいいな……。かっこいいから
穂波:(ワニか……。 ワニならパターンを覚えたものの中にある……よかった)
穂波:わかった、じゃあ描いてみよう!
穂波:(ワニの特徴は、 長い口と体だから、まず体を長方形の形にして……)
少女:——できた!!
穂波:え? もう?
少女:うん! 見てみて、穂波先生っ!
穂波:う、うん。 えっと……
穂波:(……え、ワニ? 上向きの三角形と、下向きの三角形がくっついたような形だけど これは……)
園児:え~? 全然ワニじゃないじゃん!
園児:へたくそー!
少女:……っ、ヘタじゃないもん! ワニだもん!
穂波:(あ、あ……。 どうしよう……!)
穂波:(ここまで言われたら、描きたくなくなっちゃうよね……)
穂波:えっと……これも素敵だけど、 こんな感じに描いたらもっとワニらしく見えるかもしれないよ?
穂波:胴体と口を、長い四角みたいにして……。 目はこの上に丸く描いて……はい!
園児:おおー! すげー!
園児:ワニさんだ~!
少女:……違うもん!
穂波:え?
少女:——これは、わたしのワニじゃないもん!
穂波:え、えっと……
園児:あー、先生困らせて、いけないんだー!!
園児:穂波先生がせっかくお手本描いてくれたのにー!!
少女:だって……だって……!
セクシーな幼稚園の先生:あ……こらこら! みんな仲良く描かなきゃ駄目ですよ~!
穂波:(どうしよう……! 楽しく絵を描いてほしかったのに、悲しませちゃった……!)
穂波:(それに、『わたしのワニじゃない』って、いったい……)
えむ:あれあれ? どうしてみんなケンカしちゃってるの~!?
穂波:えむちゃん……!
えむ:大丈夫? 何かあったの?
穂波:ごめんなさい、えむちゃん……。 わたし……わたしやっぱり、うまくできなくて……
絵名:お——みんな、描いてる描いてる
穂波:え? 絵名さん……?
絵名:こんにちは、穂波ちゃん。 様子はどうかなって思って、ちょっと見に来たんだ
絵名:でも……もしかしてちょっと、トラブってる感じ?
セクシーな幼稚園の先生:あら? この子は望月さん達のお友達……かしら?
穂波:は、はい……
穂波:実は——
絵名:……なるほどね。 『わたしのワニじゃない』か……
穂波:はい……。 そう言われても、どうしたらいいかわからなくて……
絵名:……そっか
絵名:(先に穂波ちゃんに伝えなきゃって思ったけど——)
少女:うぇ……ひっく……
絵名:……ちょうどいいタイミングだったかもね
穂波:え?
絵名:——ねえ穂波ちゃん。 その子の描いたワニってどれ?
穂波:あ、えっと……これです!
絵名:これか……うん。なるほどね
絵名:——ねえ、この絵のこと、もっと教えてもらってもいい?
絵名:私、この絵すごくいいなって思ったから!
少女:え?
園児:え~、よくないよ。下手だよ~
少女:ほら、みんな下手って言うもん! ウソで褒められてもうれしくないもん!
絵名:本当だよ。 だってこれ——
絵名:ワニの口でしょ? グワーってタテに口開けて、何か食べようとしてるところ
少女:……!
穂波・えむ:『えっ?』
少女:お姉ちゃん、わかるの?
絵名:うん。ワニのかっこいいところ、よく伝わってくるよ
絵名:(まあ、正直……)
絵名:(この絵……最初は 何を描いてるのか全然わからなかったけど……)
絵名:(よく見ると穂波ちゃんなりに、 ゾウの特徴を表現しようとしてる……!)
絵名:(多分、ここが耳で……これが鼻だ。 偶然なんだろうけど、おもしろい表現になってる)
絵名:(穂波ちゃんの絵を見て、 こういう絵にもちゃんと要素があるって わかったからなんだけどね……)
園児:グワーって口開けてるワニかぁ……。 そう見えなくもないけど……
絵名:そうだ。ちょっと怖いけど、ギザギザの歯も描いたら もっとかっこよくなるかもね
少女:あ! たしかに~! 描いてみるね!
少女:あ……あとね、わたしが動物園で見た時は、 おっきなお肉食べてたの!
絵名:ふふ、食べてるところがかっこいいって思ったんだよね? じゃあ、それもどんどん描いてみよう!
少女:はーい! 歯と、お肉……!
穂波:あ……!
えむ:すご~い! どんどんワニさんの口になってくよ~!
園児:……でもあんなの、ちょっと見ただけじゃ ワニってわかんないじゃん! ヘタじゃん!
園児:えー? でもかっこいいよ?
絵名:それじゃ次は、色塗ってみようか! 何色がいい?
少女:むらさき! 水から出てきた時ね、むらさきに見えたの!
絵名:いいね! じゃあ紫に塗ってみて?
穂波:すごい……どんどん絵が生き生きしていって……
穂波:あ……
レン:こういうのは描きたいように描けばいいって。 それが一番いい絵になるって思うしな
穂波:そっか……そういうことなんだね……
絵名:(——そう)
絵名:(技術は、表現したいものを形にするための手段)
絵名:(絵を魅力的にするために大事なのは、きっと——)
少女:——できた! わたしのワニさん、すっごくかっこよくなった!
絵名:(ありのままの自分を出すこと、なんだよね)
第 8 话:絵がつなぐ笑顔
少女:穂波先生! わたしの絵、どうかな?
穂波:あ……
穂波:すごくかっこよくて、素敵なワニさんだね……! 食べてるお肉も美味しそうだな
少女:ほんと? やった~!!
少女:ねえねえ先生、先生が見たワニさんは、 こういう感じのかわいいワニさんだったの?
少女:わたしの見たワニさんとは全然違うから、 なんでかなーって
穂波:え? えっと……
穂波:(これは……ただワニに見えるようにって思って 形をわかりやすくしたワニだから……)
穂波:…………
絵名:……ねえ穂波ちゃん。 穂波ちゃんのワニを描いてみてよ
穂波:え? でも……
絵名:大丈夫だって。 そりゃ、本物に似てないって笑う人も いるかもしれないけど——
絵名:穂波ちゃんが素敵だなって思って一生懸命描いた絵なら、 きっと、誰かに届くからさ
穂波:…………!
絵名:えっと…… そのことを最初に教えてあげられなくて、ごめんね
穂波:……いえ、大丈夫です
穂波:わたし——描いてみます!
えむ:……! がんばれ! 穂波ちゃ~ん!
穂波:(覚えてるのは、小学校の遠足で動物園に行った時に見た、 すごく怖いワニ……)
穂波:(怖いけど、なんだか目が離せなくて——)
園児:ええ~!? 何これ!?
園児:あはは! ぐにゃぐにゃして変なの~
園児:穂波先生、さっきまで上手だったのに、 急にヘタになっちゃったね~
穂波:う、うう……やっぱりこうなるよね……
少女:——怖くてかっこいい!
穂波:……え?
少女:ワニさんの形じゃないけど、ワニさんって感じがする!
えむ:うんっ! グワーって襲ってきそうだねっ!
穂波:あ……ありがとう!
絵名:それじゃあ、一件落着したみたいだし私は帰ろうかな
えむ:ほえ? 絵名さんは描いていかないんですか?
絵名:え? だって私、よく考えたら完全に部外者だし……
少女:お姉ちゃんも一緒に描こうよ! お姉ちゃんのワニさんも見たい!
園児:ワニさんばっかりになっちゃうから、 他の動物がいいよー!
園児:お姉ちゃん、いっぱい描いて!
絵名:わ……え、えーっと……
セクシーな幼稚園の先生:よかったら、一緒に描いていってくれませんか?
絵名:え、でも……
セクシーな幼稚園の先生:ふふ、あなたのおかげで、子供達も 素敵な絵を描けて満足できたみたいですし。 望月さんと鳳さんのお友達でしたら、ぜひ
穂波:——絵名さん。 わたしからもお願いします
穂波:絵名さんと一緒に描けたら この子達もわたしも、とっても嬉しいです!
絵名:穂波ちゃん……
絵名:もう、仕方ないなぁ。 そこまで言うならやってあげよっかな?
園児:やった~!
絵名:——うん、できた!
穂波:これは……2匹のオオカミですか?
絵名:うん。昔動物園で見たオオカミ。 でも、弟がずっと怯えててね
絵名:けど私にはすごく可愛く見えたから—— 怖いオオカミと可愛いオオカミ、両方を描いてみたんだ
穂波:なるほど……! だから全然顔が違うんですね!
少女:わ~! お姉ちゃんの絵、2匹くっついてて変な感じでおもしろ~い!
絵名:変な感じって……。 もうちょい褒めかたないわけ?
少女:でもわたし、この絵好き! お姉ちゃん、もっと描いて!
絵名:それじゃあ——もっと描いちゃおっかな!
えむ:最後に太陽を描いて……。 かんせーい!
園児:わーい! 動物さん達の遊園地だー!
穂波:わぁ……。 すごく楽しそうだね!
絵名:うん。 タッチも構成もバラバラな絵がいっぱい並んで——
絵名:すごくいい絵!
セクシーな幼稚園の先生:穂波先生、えむ先生。そして絵名先生。 今日は本当にありがとうございました!
セクシーな幼稚園の先生:園児達も、みんなのおかげで楽しく絵が描けたみたいです。 素敵な思い出をありがとうございました!
穂波:いえ……! お力になれたならよかったです
セクシーな幼稚園の先生:また機会があったら、ぜひ来てくださいね!
セクシーな幼稚園の先生:それじゃあ、先生達とお別れの時間です。 みんな、お別れの挨拶をしましょう!
園児:先生、ばいばーい!
少女:また来てね~!
穂波:うん!
えむ:ばいばーい! また、みんなでお絵描きしようね!
絵名:またね!
宮益坂
穂波:絵名さん、今日は本当にありがとうございました!
穂波:絵名さんに教えてもらったおかげで、 みんなと楽しく絵が描けました
えむ:みーんなニコニコになれたのも、 絵名さんがいてくれたからですっ! ほんとーにありがとうございました!
絵名:ふふ、大したことはしてないよ。 でも、力になれたならよかった
穂波:はい、とっても……!
穂波:わたし、絵を描くのが苦手だっていう気持ちばっかりあって、 自分の絵を全然好きになれなかったんですけど……
穂波:でも今日、自分の絵も、少し好きだって思えました
絵名:……!
絵名:そっか……よかった……!
絵名:でも、お礼を言うのは私のほうだよ
絵名:穂波ちゃんのおかげで、 絵の魅力ってなんだっけって、ちゃんと考えられた気がするから
穂波:そうなんですか……? わたしは何もしてませんけど…… 絵名さんのお役に立てたのなら、よかったです
穂波:えっと……それからひとつ、絵名さんにお願いがあるんですが……
絵名:ん? どうしたの?
穂波:あの、もしまたタイミングがあったら、 たまにでいいので、絵を教えていただけないでしょうか?
絵名:え?
穂波:今日、絵を描いて……その……。 楽しいなって思ったんです
穂波:わたしは全然下手ですし、 まだ誰かの前で描くのは恥ずかしいんですけど
穂波:でも——絵名さんみたいにうまくなれたら、 もっと絵を好きになれるのかなって……
絵名:穂波ちゃん……
えむ:あたしもあたしも! また、みんなでお絵描きしたいな~☆
絵名:——わかった。 じゃあ、スケジュールが空きそうな時に連絡するね
穂波:あ、ありがとうございます!
絵名:そうだ、せっかくだし 今度は本格的にデッサンとかやってみる?
穂波:デ、デッサン……! 少しハードルが高いですけど……でも……
穂波:やってみたいです!
えむ:次はみんなでおっきなキャンバスに描いてみたいな! それでうちのリビングに飾るの!
絵名:すっごい大作になりそう……
絵名:でも、おもしろそうだしいいんじゃない? また今度集まろっか
えむ・穂波:『はい!』
絵名の部屋
絵名:ふぅ……。 今日、疲れたけど楽しかったな……
絵名:(最後はみんなすごく楽しそうに 絵を描いてたし……)
穂波:今日、絵を描いて……その……。 楽しいなって思ったんです
穂波:わたしは全然下手ですし、 まだ誰かの前で描くのは恥ずかしいんですけど
穂波:でも——絵名さんみたいにうまくなれたら、 もっと絵を好きになれるのかなって……
絵名:……ふふっ
絵名:(穂波ちゃんに、絵を好きになってもらえてよかったな)
絵名:……あ! そういえば来週の課題あるのに 全然手つけられてなかった!
絵名:あーもう、急いでやらないと……! 前に指摘された消失点をなんとかしなきゃ
絵名:……でも……
少女:わたし、この絵好き! お姉ちゃん、もっと描いて!
絵名:今日描いたオオカミを、 もうちょっとちゃんと描いてみるのもいいかも……?
絵名:(あ……。なんだか筆がすごく軽い。 最近、悩むことも多かったのに)
絵名:……もう少しだけ描いてみよう
絵名:…………
絵名:……できた
絵名:(パースもおかしいし、ディテールも崩れてるから 雪平先生に見せたらボロボロに酷評されそう。 でも……)
絵名:私は好きだな、この絵
絵名:(まだまだ技術は身についてないし、 描きたいことを表現できないことも多いけど、でも……)
絵名:(私が納得できる絵が描けるように——頑張っていこう!)