活动剧情

この祭に 夕闇色も

活动ID:72

第 1 话:『シブヤ・フェスタ』

放課後
宮益坂
まふゆ:参考書は……この本棚かな
まふゆ:(……先生がすすめてくれた本、 どの辺りにあるんだろう)
まふゆ:(見つからない……。 もしかしたら別のコーナーにあるのかな)
まふゆ:(……早く見つけないと。 帰りが遅くなったら、またお母さんに心配かけちゃうし……)
まふゆ:…………
まふゆ:(……お母さん、私がフェニランに行った日から、 いろいろ聞いてくるようになったな)
まふゆ:(遅くなった理由とか、誰と一緒にいたのかとか)
まふゆ:……私が模試に行かなかったから、 心配してるだけ……だよね
まふゆ:……早く探そう
まふゆ:(……医大の参考書はこっちの棚にあるみたい。 この辺りを探せば……)
まふゆ:あ——
本の背表紙:『聖花看護大学 過去問題集』
まふゆ:……看護大学……
まふゆ:……電話……
まふゆ:……はい。どうしたの、お母さん?
まふゆの母:『まふゆ——学校は終わったの?』
まふゆの母:『あ、急にごめんなさいね。 予備校がない日だからまふゆの好きなおやつを用意してたのに、 なかなか帰ってこないから気になっちゃって』
まふゆ:あ……。 心配かけてごめんね
まふゆ:学校は終わったよ。今は、昨日夕飯の時話してた、 先生おすすめの参考書を買おうと思って 本屋にいるんだ
まふゆの母:『——あら、そうだったのね。 ふふ、偉いわね』
まふゆの母:『でも、そのことなら大丈夫よ。 その本ならさっき近所の本屋さんで見かけて、 買っておいたから』
まふゆ:あ……そうなんだ。 見つからなくて困ってたから助かったよ。 ありがとう、お母さん
まふゆの母:『ふふ、今週末はその参考書で勉強ね。 じゃあ……土曜の夕飯はまふゆの好きなシチューにしようかしら』
まふゆ:本当? 嬉しいな
まふゆの母:『頑張ってるまふゆのために、 お母さんも腕によりをかけて作るわね。 それじゃあ……』
まふゆの母:『——早く帰ってきなさいね』
まふゆ:……うん。わかった
まふゆ:…………
まふゆ:……帰らなくちゃ
スクランブル交差点
まふゆ:……あれ?
まふゆ:(なんだか駅前がいつもより賑やかだな)
まふゆ:(……センター街のほうでも屋台みたいなものが 組み立てられて……)
まふゆ:(あ……あのポスター、ミクが描いてある)
まふゆ:『シブヤ・フェスタ』……?
???:——朝比奈さん?
まふゆ:え……?
雫:やっぱり、朝比奈さんだわ! こんなところで偶然ね
まふゆ:日野森さん。 もしかして、今から帰り?
雫:ええ。 今日は和菓子屋さんに買い物に行っていたの
雫:そうだわ。 よかったら、途中まで一緒に帰らない?
まふゆ:うん、もちろんいいよ。 日野森さんと一緒に帰ることってなかなかないから、嬉しいな
雫:クラスも違うし、 朝比奈さんは部活が終わったら急いで帰っちゃうものね
まふゆ:あはは……。 私は放課後予備校があるから、どうしてもそうなっちゃって
雫:……本当にすごいわよね。 朝比奈さんは勉強だけじゃなくて弓道部でも優秀なのに、 学級委員もやって、そのうえ予備校まで行ってるなんて
まふゆ:ふふ、部活もアイドル活動も頑張ってる日野森さんほどじゃ ないと思うけどね
まふゆ:なんだか騒がしいね。 ステージの設営とかしてるみたいだけど
雫:ああ、きっとシブヤ・フェスタのステージの準備じゃないかしら
まふゆ:あ、それってあそこのポスターに書いてある……
雫:ええ。今週末にあるのよ。 今年初めてやるお祭りで、ああやってセンター街に屋台が並んだり 企画展が開催されたりするらしいわ
雫:それから、乃々木公園に野外ステージができて、 いろいろな催しが開かれるんですって
まふゆ:へぇ……。 詳しいね、日野森さん
雫:ふふ。 実はね、MORE MORE JUMP!のみんなで そのシブヤ・フェスタのステージに参加することになったの
まふゆ:え? そうなの?
雫:ええ。ななみんさんっていう、知り合いの配信者の人が、 ステージエリアのMCを担当することになって——
雫:その人が私達に、オープニングアクトをやってみない?って 誘ってくれたのよ
まふゆ:そうなんだ……! じゃあ日野森さん達のグループをもっと知ってもらう、 いい機会になるね
雫:ふふ、だからみんなすごく燃えているの。 野外ステージでやれるなんてなかなかないことだし、 ワンマンライブに向けてはずみがつきそうって
まふゆ:ふふ、よかったね。 シブヤ・フェスタもワンマンライブも頑張ってね
雫:ええ、ありがとう! もし時間があったら、朝比奈さんも来てくれたら嬉しいわ
雫:あ——それじゃあ、私はこっちだからお別れね。 またね、朝比奈さん!
まふゆ:うん。またね
まふゆ:……シブヤ・フェスタか
まふゆ:(そんなものがあるなんて知らなかったな)
まふゆ:(……知ったところで、私には関係ないけど)
25時
誰もいないセカイ
奏:じゃあ、新曲のデモを流すね
瑞希:……ん~! 今回のはこうジワーっと胸にくる感じだなぁ
ミク:うん……綺麗……
絵名:特にバイオリンの音がいいよね。 シンプルなのに、胸にスーって入ってきて……
絵名:うん、イメージわいてきた! 今回もぴったりの絵を描くから待っててね、奏
奏:ありがとう。 絵名と瑞希のMVも楽しみにしてるね
奏:……まふゆはどうかな。 気になるところはある?
まふゆ:特にない。 すぐ作詞に入れると思う
奏:よかった。 それじゃあ、本格的に詰めていくね
絵名・瑞希・まふゆ:『うん!』 『うん』
瑞希:あ。デモが決まったところでちょーっと雑談なんだけど……
瑞希:みんな、週末のシブフェスって行ったりする?
絵名:ああ、あれって今週なんだ。 駅前すっごい混みそうだよね
瑞希:ねー。まあ、今年初めてやるらしいからどこまで混むかは わかんないけど。お祭りってだいたい混むからねー
リン:……シブフェス?
瑞希:うん! もうすぐ、シブヤ・フェスタっていうお祭りがあるんだ!
瑞希:センター街が歩行者天国になって、 りんご飴とかクレープの屋台とか、 シブヤ駅前辺りまでいろんな屋台が並ぶんだってさ~!
レン:……楽しそうだね。 ちょっと行ってみたいな……
リン:まぁ、おもしろそうかもね
瑞希:絶対おもしろいよ! 野外ステージでパフォーマンスもあるらしいし!
瑞希:ステージのMCは絶対見たいんだよね! なんてったってやるのがあの有名な元アイドルの——
まふゆ:ななみんさん?
瑞希:そうそう——って、ええっ!? なんでまふゆ知ってるの!?
まふゆ:……日野森さんが言ってたから。 ななみんさんの紹介で日野森さん達も参加するんだって
瑞希:えっ!? モモジャンもステージに出るの!? てことは——朝イチでいい場所押さえちゃわないと!
絵名:じゃあ愛莉やみのりちゃんも出るってことか……。 それならちょっと見に行きたいかも
奏:……そうだね。 ファンフェスタの花里さんのステージ、すごく良かったし……
奏:あ、そういえば前に望月さんも シブフェスに出演するって言ってたな……
絵名:え、穂波ちゃんって音楽やってるの?
奏:あ、そっか。 絵名は知らなかったっけ
奏:望月さんは、この前一緒にスポジョイパークに行った 星乃さんと幼馴染みで、バンドも組んでるんだよ。 みんなでプロを目指してるんだって
絵名:えっ!? そうだったの!?
奏:うん。 だから、ちょっと見たいなって思ってたんだ
絵名:そっか……んー、そんなに知りあいが出るなら、 せっかくだし私も見に行こっかな
瑞希:お! じゃあ、みんなで一緒に行こうよ! 朝から晩までやってるみたいだし、いっぱい楽しんじゃお!
絵名:あ、途中で展示企画のほうも寄っていい? 好きな画家の展示があるみたいなんだよね
奏:そういうのもあるんだ……。 ……わたしも少し見てみたいな
瑞希:うんうん! いろいろ見て回っちゃおーう♪
まふゆ:…………
瑞希:まふゆはどう? 週末はやっぱり、勉強忙しかったりする?
まふゆ:……私は——
まふゆの母:『ふふ、今週末はその参考書で勉強ね。 じゃあ……土曜の夕飯はまふゆの好きなシチューにしようかしら』
まふゆの母:……後悔、しないようにね?
まふゆ:…………。 少し、考えさせて
ミク:…………
絵名:そっか……。 来れそうだったらいつでも連絡してよ?
瑞希:うんうん! 待ってるからね!
奏:来てくれたら嬉しいけど……でも、無理はしないでね
まふゆ:……わかった

第 2 话:それぞれの経緯

翌日
宮益坂女子学園
まふゆ:(シブヤ・フェスタ……か)
まふゆ:(……週末は勉強するって、お母さんに言ったけど……)
教師:あ! 朝比奈さん、ちょっと今時間いい?
まふゆ:あ……はい。 なんですか?
教師:急にごめんなさいね。 朝比奈さん、ボランティアって興味ないかしら?
まふゆ:ボランティア?
教師:ええ。実は今度やるシブヤ・フェスタの 学生ボランティアを探してるの
教師:参加者を募集してたんだけど、なかなか人が集まらなくて。 ……よければ朝比奈さん、手伝ってくれないかしら? 朝比奈さんだったらしっかりこなしてくれそうで助かるんだけど
教師:ああ、勉強で忙しいと思うから、 もし無理なら断ってもらって大丈夫よ
まふゆ:あ……
まふゆ:(ボランティアで参加すれば、みんなと……)
まふゆ:——わかりました。 私でよければ、お手伝いさせてください
教師:ありがとう! 助かるわ、朝比奈さん! それじゃあ……はい。 これがボランティアの概要が書かれたプリントよ
教師:詳しいことは当日の朝にも改めて説明があるらしいわ。 何かわからないことがあったら、その時に聞いてみてね
まふゆ:はい。ありがとうございます
まふゆ:(……ボランティアか。どういう活動をするんだろう)
まふゆ:(『皆さんには、以下の役割のいずれかをお願いします。 会場案内、募金、入場者の整理、救護——』)
まふゆ:……救護……
神山高校 中庭
司:さて! いよいよ今週末が本番だな、類!
類:ああ。 駅前も飾りつけが進んでいるようだし、当日が楽しみだよ
類:それにしても——僕達がシブヤ・フェスタのステージに 呼ばれるなんてねえ
司:ふっふっふ。 しかも……『協賛』としての出場とはな!
司:——協賛枠?
えむ:うんっ! えっとね、きょうさんわくって言うのは~……なんだっけ?
寧々:えーと……。 お兄さん達からもらったメッセージだと……
寧々:朝から夕方までが、一般応募から選ばれた人が出る一般枠。 夕方から夜までが、プロの出る企業協賛枠……みたいだよ
えむ:なるほど~! 寧々ちゃん、ありがとうっ♪
類:つまり僕達は、フェニックスワンダーランドの代表として 参加させてもらえるようだね。 期待をかけてもらっているようで嬉しいよ
類:その期待に応えて、今回も素晴らしいショーにしようじゃないか
司:ああ!
司:オレ達がシブフェスのステージに立てば、宣伝公演と同じく、 フェニックスワンダーランドの集客にもつながる! 気合いを入れねばな!
司:——そういえば、空を飛ぶシーンで装置を改造するとか なんとか言っていたが、それはできたのか?
類:ああ。ほぼ完成しているから明日の練習には 持っていけそうだよ
類:僕が腕によりをかけて改造したスーパーデラックス射出装置を、 是非楽しみにしてほしいな♪
司:うむむ……名前からして少々不穏だが……
類:フフ、そんなことはないよ? ——おや
彰人:うげ
冬弥:司先輩、神代先輩。 どうも、こんにちは
司:おお、彰人に冬弥! 変わらず元気そうで何よりだ!
彰人:あー……はい。まぁ
類:おや、その手に持っているのは—— もしかしてシブフェスのチラシかい?
冬弥:はい。実は今度、このイベントの 野外ステージに出演することになったんです
司:何!? 冬弥達もか!?
彰人:……もしかして、司センパイ達も出演するんすか?
司:ああ。 フェニックスワンダーランドが協賛しているから、その枠でな
冬弥:協賛枠で……それはすごいですね。 必ず見に行きます
司:ああ、大いに楽しみにしていてくれ! 必ずや素晴らしいショーにしてみせるぞ!
類:それでそちらは、 どういった経緯で出演することになったんだい?
彰人:オレの小学校時代の知り合いが、 シブフェスの運営に参加してるんです
彰人:前にそいつに頼まれて、夏祭りのステージに冬弥とふたりで 出たんですけど……それが結構評判がよかったみたいで
彰人:で、そいつが運営のステージ担当に推薦したとかで、 今度はチームで出てみないか、って話になったわけっす
冬弥:俺達もライブハウス以外の場所でステージに立つことは ほとんどないですから、いい経験になると思って
類:なるほど、そういうことだったんだね
司:冬弥達はいつごろ出演するんだ?
冬弥:俺達は一般枠のステージのラストなので…… 夕方頃になる予定です
司:一般枠のラスト?
司:類、オレ達が出る協賛枠は、一般枠のあとだったよな?
類:ああ。そうだね
類:協賛枠一発目の僕達は、 Vivid BAD SQUADの次—— 直後にショーをすることになるよ
冬弥:そうなると……俺達はトリの一方、 司先輩達の前座にもなるんですね
彰人:そうみたいだな。 ま、もしかしたら客はオレ達のステージで満足して、 帰っちまうかもしれねえけどな?
司:む! 大した自信だが、そう甘くはないぞ! むしろオレ達のショーでその日1日の記憶が 完璧に塗りかえられてしまうやもしれん!
類:ふふ、しかしこんな形で青柳くん達のパフォーマンスを 見る機会がやってくるなんてね。とても楽しみだよ
冬弥:ええ。お互い、頑張りましょう
司:ああ、そうだな!
瑞希:ほうほう、なるほどね~♪
瑞希:類や弟くんも出るなんて、また楽しみが増えちゃったな~! ニーゴのみんなにも教えてあげようっと!
朝比奈家 リビング
まふゆ:——ただいま
まふゆの母:おかえりなさい、まふゆ。 ずいぶん遅くまで頑張ってたのね
まふゆの母:予備校の授業はどうだったの?
まふゆ:医大の対策講座だったからちょっと難しかったな
まふゆ:でも、講師の先生は、パターンを覚えていけば 解くスピードも上げられるって
まふゆの母:あら、大変だったのね。 でも先生の言うとおり、まふゆなら大丈夫よ
まふゆの母:週末も頑張りましょうね。 せっかく参考書もあることだし……
まふゆ:……その、お母さん。そのことなんだけど……
まふゆの母:え? どうしたの?
まふゆ:あのね……
まふゆ:——ごめんなさい。 今週末はボランティアに参加することになったから、 勉強の時間、あんまり取れなそうなんだ
まふゆの母:ボランティア? ……どうして今の時期に?
まふゆ:参加者が足りないって先生が困ってたの。 それで、もしよければ参加してくれないかって言われて
まふゆの母:先生が……そう……。 まふゆも勉強するつもりでいたのに、大変ね。 まふゆはしっかりしているから頼りにされるのはわかるけれど……
まふゆの母:……もし負担になるようだったら、 お母さんから先生に言ってあげましょうか?
まふゆ:だ……大丈夫だよ
まふゆ:ボランティアって内申にもプラスになるらしいし、 推薦の面接でも役に立つと思うんだ
まふゆ:受験する時有利になるなら、 無駄になることもないんじゃないかな
まふゆの母:…………
まふゆの母:……そう。たしかに受験にも役立つなら、 やったほうがいいかもしれないわね
まふゆの母:まふゆが勉強する時間が取られちゃうのはもったいないけれど…… 必要なことなら、仕方ないわ
まふゆ:うん。ごめんね、お母さん
まふゆの母:いいのよ。 それならまた次の週末にでも勉強しましょうね
まふゆ:うん。 じゃあ、今日は夕ご飯まで部屋で勉強してるね
まふゆの母:あ——ちょっといいかしら?
まふゆ:……、何?
まふゆの母:一緒にボランティアに行くのはクラスの子? 学年や学校が違う子も参加するの?
まふゆ:あ……私も今日頼まれたばかりだからわからないんだ。 ……どうして?
まふゆの母:——ふふ、仲良しの子がいれば、 まふゆもボランティアのお仕事がやりやすいんじゃないかって 思っただけよ
まふゆの母:じゃあ——頑張ってね、まふゆ
まふゆ:……うん
まふゆの部屋
瑞希:『え!? 本当に雪も行けるの!?』
まふゆ:『……うん』
まふゆ:『夕方までボランティアがあるから、そのあとになるけど』
奏:『そっか……嬉しいな』
絵名:『にしても……よく説得できたよね。 結構難しかったんじゃない?』
まふゆ:『……お母さんには夜までボランティアに行くって話してある。 だから遅くなりすぎないなら、大丈夫だと思う』
絵名:『なるほどね。 それじゃせっかくのチャンスなんだし、 思いっきり楽しんだら?』
瑞希:『うんうん! 朝とかお昼の部は一緒に見れないかもだけど、 夕方からのステージとか屋台とか見ようね!』
瑞希:『あ、そういえばステージエリアに弟くんとか ボクの知り合いも出るみたいだよ!』
絵名:『えっ、彰人も出るの!? っていうか、なんでそういうこと話さないわけ? あいつ』
奏:『ふふ、いろんな曲が聴けそうで楽しみだね。雪』
まふゆ:『……うん』
まふゆ:『それじゃあ、私は勉強に戻るから。 また、25時に』
奏:『うん。待ってるね』
まふゆ:…………
まふゆ:(……もう一度だけ、確認しておこう)
まふゆ:(『ボランティアは当日9時に乃々木公園中央広場に集合。 役職の振り分けと説明を受けた後、10時に活動開始』)
まふゆ:(『学生ボランティアは夕方5時まで。 夕方から夜は午後の部担当者が引き継ぎます』)
まふゆ:(『皆さんには、以下の役割のいずれかをお願いします。 会場案内、募金、入場者の整理、救護——』)
まふゆ:(……救護、か)

第 3 话:祭りの前夜

シブヤ・フェスタ前日
教室のセカイ
一歌:——ふぅ。 今日はここまでにしようか
咲希:みんな、お疲れさま~! いよいよ明日はシブフェスだね!
一歌:そうだね。 普段ライブに来ないような人達も来るって思うと、 少し緊張するな
穂波:いつもとお客さんの雰囲気が違うとドキドキするよね。 初めてanemoneとやったライブのこととか 思い出しちゃって……
志歩:たしかに。あの盛り上がらなさは結構こたえたな
ルカ:ふふ、でも最終的にはそのライブハウスのお客さん達にも しっかり曲を届けることができたんでしょう?
ルカ:だったら今回もきっと大丈夫よ。 全力を尽くせば、きっと聴いている人の心に届くわ
ミク:うん、そうだね
ミク:私達は他のバンドやお客さんのことを知らないけど…… 一歌達の演奏がすごく良くなってるってことはわかる。 だから、自信持って演奏してきなよ
一歌:ミク、ルカ……
一歌:……ありがとう。 そうだよね、自信を持って弾いてくるよ
咲希:うんうんっ! ここまでがんばってきたアタシ達を信じて、 思いっきり弾いちゃお~っ!
志歩:——それにしても、びっくりしたな。 まさか穂波がシブフェスに参加しようって言うなんてね
志歩:穂波はこういうイベントに出るの、 あんまり興味ないんじゃないかって思ってたから
穂波:あはは……。実際シブヤのお祭りってちょっと怖そうな イメージがあったから、ポスターを見かけた時は迷ったけど……
穂波:でも——もっとたくさんの人に わたし達の曲を聴いてもらえるチャンスだなって思ったの
穂波:咲希ちゃんの曲はすごく素敵だし、 一歌ちゃんの歌も志歩ちゃんの演奏も どんどんうまくなって……
穂波:こんなに素敵なのに、ライブハウスに来た人にしか 聴いてもらえないのはすごくもったいないなって。 だから、こういうイベントに出たいなって思ったんだ
咲希:ほなちゃん……!
志歩:……たしかにね。ちゃんと実力もついてきたんだし、 ライブハウス以外にも活動場所を広げていくのは すごくいいと思う
一歌:提案してくれてありがとう。穂波
咲希:うんっ! みんなにアタシ達のこと、いっぱい知ってもらおうね!
穂波:ふふ、そうだね
穂波:……あ、そういえば、シブフェスで配ろうって話してた 宣伝用のチラシできてるよ
ミク:宣伝用のチラシ?
穂波:うん。出演者は自分達のバンドを宣伝するチラシを 置いたり配ったりできるみたいだから、作ってみたの。 ……どうかな?
咲希:おお~! すっごくいい感じだね~!
一歌:紺色ベースで、星空背景っていうデザインがいいよね。 私達らしさが出てるっていうか
志歩:だね。 咲希のイラストも結構いいじゃん
咲希:でしょー? ふふん、もっと褒めてもいいんだよ?
志歩:はいはい。 褒めるとすぐ調子乗るんだから
志歩:でも、やっぱりインパクトがあるのは穂波の絵だよね。 まさか自分から描きたいって言うなんて思わなかったよ
穂波:あ……えっと、その……
穂波:本当はまだ恥ずかしいんだけど……。 でも絵名さんに、印象に残る絵だって言ってもらえたから、 わたし達を知ってもらうきっかけになればいいなって思って……
咲希:きっと絶対覚えてもらえるよ! ほなちゃんの絵、すっごく味があるもん!
ミク:うん。 これってタンポポだよね。すごく可愛いな
一歌:え? ミク、これハリネズミじゃないかな……?
穂波:えっと……ライオンなの……。 Leo/needのLeoからとって……
ミク:えっ!?
一歌:ご、ごめん! トゲトゲしてるからついそうだと思っちゃって……!
穂波:ふふっ、大丈夫だよ、ふたりとも
穂波:明日はこのチラシを配って、 Leo/needのことを知ってもらって—— いっぱい演奏を聴いてもらおうね!
一歌・咲希・志歩:『うん!』
ステージのセカイ
みんな:『♪————!』
遥:……ふぅ。 どうだったかな
リン:すーっごくすてきだったよ! ダンスもいつもより息ぴったりで、見とれちゃった!
ミク:うん! この前の合宿でがんばった分が、 しっかり力になってるって思ったよ
ミク:特にみのりちゃんのパフォーマンスが、 すごく良くなってた!
みのり:ホントに!? ふぇ~、よかった~
愛莉:ふふっ、やったじゃないみのり!
愛莉:グループとしては、まだ調整していく必要はありそうだけど……。 みのりだけじゃなく全員、今のベストは尽くせてたわね!
雫:そうね。これならワンマンだけじゃなくて シブヤ・フェスタでも、お客さん達に喜んでもらえそうだわ!
愛莉:ええ! ——いよいよ、明日が本番ね
遥:まさか朝一でオープニングアクトができるなんて…… 本当にありがたいな
みのり:うん! ななみんさんに大感謝だね! ワンマンライブの前にあんな大きな野外ステージに立てるなんて 思わなかったよ~!
愛莉:ふふっ、そうね。 明日はあのステージから、 シブヤ中の人に希望を届けちゃいましょう!
みのり・雫・遥:『おー!』
愛莉:気合い入ったわね! まぁ、ちょっと入りすぎちゃってるところもあるけど……
遥:ふふ、気持ちはわかるな。 私も久しぶりの野外ライブだし、ステージが結構大きいからね
みのり:そ、そうだね……! ドキドキするよ~!
雫:——あ、そうだわ! ちょっと待っててね!
みのり:雫ちゃん?
雫:おまたせ! ねえみんな、これを一緒に食べましょう?
遥:これって……おまんじゅう?
雫:そう! 昨日買ってきたのよ。みんな最近練習を頑張ってるから 疲れがたまってるんじゃないかと思って
ミク:たしかに……甘いものはリラックスできるって めーちゃんやカイトくんも言ってたね
雫:でしょう? ここ最近、みんなずっと頑張っていたし、 今日はちょっと甘いものを食べて 落ち着いてみるのもいいんじゃないかしら
遥:……たしかにそうだね。 疲れたままじゃ、いいパフォーマンスはできないし
愛莉:じゃあ今日は雫のおまんじゅうをいただいて、 明日に備えるとしましょうか!
みのり:は~い!
雫:じゃあみんな、遠慮なくどうぞ。 ミクちゃんとリンちゃんの分もあるわよ
リン:わあ、ありがと~! いっただっきま~す♪
愛莉:これはたしかに、リラックスするわね~
遥:ありがとう、雫
雫:ふふ、みんなが喜んでくれてよかったわ。 明日もリラックスして頑張りましょうね
雫:……あ、そうだわ! 明日もライブの前に、おまんじゅうを食べるのはどうかしら?
愛莉:そ……それはさすがに口の中の水分取られるんじゃない?
雫:それもそうね……。 あっ、それじゃあ、温かいお茶を用意して、 レジャーシートも敷いて——
愛莉:いや、ライブ直前にピクニックみたいな真似するヒマ ないってのーっ!
ストリートのセカイ
crase cafe
彰人:——よし。 んじゃ、最後の打ち合わせするぞ
彰人:今回一番注意する必要があるのは、動きだ。 そこは気をつけろよ
冬弥:そうだな。明日のイベント——シブヤ・フェスタは ステージ自体かなり大きい。 いつものパフォーマンスではこぢんまりとして見えてしまう
杏:ステージ全体使って、大きく動いていかなくっちゃね!
こはね:うん! 動くのはあんまり得意じゃないけど、頑張らなくっちゃ……!
彰人:ま、つっても、そこまで気にすることはねえよ。 オレ達は場所が変わったくらいでパフォーマンスのレベルが 落ちるような半端な鍛えかたしてないからな
杏:言うね~。 でも、私も同感かな!
こはね:……そうだね! いつもどおり、思いっきり頑張るよ!
彰人:おう。 んじゃ、あっちに戻ったら実際に——お
MEIKO:打ちあわせ、お疲れさま。 アイスコーヒーとアイスティーよ
冬弥:ありがとうございます、メイコさん。 いつも打ちあわせの場所を借りてしまってすみません
MEIKO:ふふ、いいのよ。 こうやって飲み物をふるまえるのも嬉しいし——
MEIKO:それに、みんなが真剣に話しあってるのを見るのって 結構楽しいのよ?
ミク:打ちあわせしたあとはパフォーマンスもよくなってるしね。 見てて飽きないよ
レン:そうそう! むしろもっと来てもいいくらいだよ!
こはね:ふふ、ありがとうみんな
レン:あ、そういえば……。 明日参加するステージって、彰人の友達の、えーっと、 翔太くんって子が誘ってくれたんだよね?
レン:もう1回、しかも夏祭りの時より大きなイベントに 誘われるなんてすごいよね!
MEIKO:そうね。 しかも、トリなんでしょう?
彰人:はい。 まあ、トリっつってもアマチュア向けの枠でって感じっすけど
彰人:ま——明日はオレ達が一番わかせますよ
ミク:ふふ、みんなやる気満々だね
杏:ふふ、特に彰人はねー。 やっぱ私達のすぐあとが先輩達だから?
こはね:あ、そういえば私達のすぐあとが ワンダーランズ×ショウタイムなんだよね……!
彰人:あーまぁ……関係ねえっつったら嘘になるかもな
彰人:……あいつらなら、絶対半端なパフォーマンスはしねえからな。 そういう、気持ちの部分で負けてられねえとは思ってる
冬弥:ああ、そうだな。 先輩達の熱意にも力をもらって、全力を尽くしていこう
彰人:——おう
彰人:よし、それじゃあお前ら、 明日も全力でぶちかますぞ!
こはね・杏・冬弥:『おー!』 『ああ!』
ワンダーランドのセカイ
ミク:ついに~!?
えむ:ついについに~!!
えむ・ミク:『ついに明日が、本番だ~!!』
KAITO:ふふ、いつも以上に盛り上がってるね
司:いよいよ明日が本番だからな! オレも腕が鳴るぞ!
寧々:あ……あと、えむがはしゃいでるのは、 今回類の最新作がお披露目だからじゃない?
KAITO:最新作?
えむ:さっき司くんが空を飛ぶために使ってた機械だよ!
ミク:あっ! 司くんがいつもよりしゅぱー!ってかっこよく飛んで シュタ!ってしてたのってその機械のおかげなの?
寧々:そうそう。 あれ、結構すごいよね
司:ああ、以前のものよりも格段に飛びやすく安定している。 さすが類だな!
類:フフ、お褒めに預かり光栄だな。 でも、あの装置は飛んでくれる役者あってのものだよ
類:僕を信じて飛んでくれる司くん達がいるから、 僕もまた心置きなく、こういったものを作れるというわけさ
寧々:類……
類:司くん。明日もよろしく頼むよ
司:ああ! 未来のスター・天馬司! 明日も期待に応え、全力で——
類:——もし、もう少し高く飛びたくなったら いつでも言ってくれていいからね?
司:……ええい! 人が決め台詞を言い切るより先に不穏なことを言うな!
えむ:あっ、ねえねえ! 明日うまくできるように、ショーのイメトレをしてみようよ! 目を閉じて、ショーをやってる自分を想像するの!
司:イメトレ!? また急だな!?
えむ:前、みのりちゃんに聞いたの! イメトレするとすっごくいい感じだよ~って!
司:みのり……ああ、花里か。 まあ、成功のイメージを持つことは実際の成功に つながると言うし、悪くはないが
寧々:ま、ちょっとおもしろそうだし、やってみてもいいかもね
えむ:やったー! それじゃあ、目をぎゅーって閉じて~、 スタート!!
えむ:…………えへへへ
司:……ん? えむ、どうして笑っている? お前の役は冒頭笑うところなんてなかったはずだが——
えむ:さっきの司くん、お空まで飛んでて すっごいわんだほいだったなあ……☆
司:お前がオレの役のイメトレをしてどうするー! そしてそれはイメトレではなく単純に思い出してるだけだー!
寧々:何やってんの、もう……
類:……フフ
類:(みんなやる気十分だな。 ——今回もいいショーができそうだ)

第 4 话:シブヤ・フェスタ、スタート!

シブヤ・フェスタ当日
ボランティアスタッフ集合場所
まふゆ:(……ついた。 ボランティアの人、結構いるんだな)
まふゆ:(ニーゴのみんなには、終わった頃に連絡するって 送っておいたし……それまではボランティアに専念しよう)
ボランティアリーダー:皆さん。今日はシブヤ・フェスタのボランティアに 集まっていただき、ありがとうございます!
ボランティアリーダー:これから担当する業務を振り分けていきますので、 指示があるまでその場で待っていてください!
まふゆ:(担当業務……)
まふゆ:(私は、どこの担当になるんだろう)
救護スタッフ:——道具のチェック、終わりました! ボランティアさん、いつでも入ってもらって大丈夫です!
まふゆ:…………
ボランティアリーダー:それじゃあ、こちらから順番に振っていきますね!
ボランティアリーダー:ええと……宮益坂女子学園の朝比奈まふゆさんですね。 今日は参加してくれてありがとうございます
まふゆ:いえ。 よろしくお願いします
ボランティアリーダー:では、担当ですが……
ボランティアリーダー:会場案内、募金、入場者の整理、救護。 この中で、やってみたいものはありますか?
まふゆ:え……選んで、いいんですか?
ボランティアリーダー:はい。希望が多くて埋まってたら難しいんですけど、 今ならまだ大丈夫だと思いますよ。 好きなものを選んでください
まふゆ:好きなもの……
ボランティアスタッフ:あ……! すみません! ちょっといいですか?
ボランティアリーダー:ん? どうしたの?
ボランティアスタッフ:ステージエリアの会場案内で欠員が出てしまって、 よければ何人か入ってもらえないでしょうか? もうすぐ最初のステージ始まっちゃうので、早くしないと……!
ボランティアリーダー:そうなの? たしかにあっちは人手が結構必要だからね……
ボランティアスタッフ:そうなんです。 困ったなぁ……
まふゆ:あ……
まふゆ:その……私、会場案内をしましょうか?
ボランティアスタッフ:本当ですか? 助かります!
ボランティアリーダー:でも、本当にいいんですか? 何かやりたいものがあるなら……
まふゆ:いえ、大丈夫です
まふゆ:特にやりたいことは——ないので
ボランティアリーダー:では、朝比奈さんにはステージエリアの 会場案内をお願いしようと思います。 詳しい動きは移動がてら説明しますね
まふゆ:はい。わかりました
シブヤ・フェスタ ステージエリア
ボランティアスタッフ:このステージ前エリアが、朝比奈さんの担当になります
ボランティアスタッフ:メインは道案内になると思いますけど、 もし具合が悪そうな人がいたら、他のスタッフに知らせるか、 救護テントに連れていってあげてください。場所はわかりますか?
まふゆ:はい、テントやお手洗いの場所はもう覚えたので大丈夫です
ボランティアスタッフ:ありがとうございます! では、よろしくお願いします
まふゆ:はい
まふゆ:…………
まふゆ:(会場案内か)
まふゆ:(仕事は道案内くらいみたいだし、 そこまで面倒なこともなさそう)
まふゆ:(…………でも)
まふゆ:(なんだろう、この感じ……)
まふゆ:(なんだか、胸が——)
???:どうしましょう……こっちだったと思うんだけど……
まふゆ:……え? この声って……
雫:あら? 朝比奈さん?
まふゆ:日野森さん?
雫:こんなところで会えるなんて驚いたわ! ふふ、最近ばったり会うことが多いわね
まふゆ:うん。 でも、その……
まふゆ:ここに来るまでにステージエリアのスケジュールを見てたんだけど 日野森さん達のステージってもうすぐじゃ……?
雫:あ……そうなの!
雫:実は、朝みんなとステージ裏で待ち合わせて、 その時は無事に着けたんだけど……
雫:忘れ物を取りに更衣室まで戻ったら、 ステージ裏がわからなくなっちゃって……
まふゆ:そうだったんだ。 それじゃあ、私が案内しようか
雫:え? すごく助かるけれど……いいのかしら?
まふゆ:うん。実は今日、ボランティアで会場の案内をしてて。 だからちょうど私の仕事なんだ
まふゆ:ステージ裏はこっちだよ。ついてきて
ステージ裏
まふゆ:ここだよ、日野森さん
雫:ありがとう、朝比奈さん! すっごく助かったわ!
雫:——みんな、ただいま!
みのり:あ! 雫ちゃ~ん! 戻って来れてよかった~!
愛莉:どこ行ってたのよ! も~心配したんだからね!
雫:ごめんなさい。 また道に迷っちゃって……朝比奈さんに案内してもらったの
愛莉:もう……開演まではまだ時間があるからよかったけど ハラハラしちゃったわよ!
愛莉:朝比奈さん! 連れてきてくれてほんっとーにありがとう! すっごく助かったわ!
まふゆ:どういたしまして。 でも、大したことはしてないよ
遥:いえ、とても助かりました。ありがとうございます
遥:ところで……雫はどこに行ってたの?
雫:更衣室よ。これを取りに行ってたの
まふゆ:……お菓子?
愛莉:もしかしてこれって、和三盆?
みのり:あ、クローバーの形なんだ! かわいいね!
雫:ええ。これをみんなに食べてほしいなって思ったの
雫:——みのりちゃんもだけど、遥ちゃんと愛莉ちゃんも、 久々の野外ライブで少し力が入ってるみたいだったから
雫:昨日みたいにリラックスして、 私達らしいステージにできたらいいなって
愛莉:雫……
愛莉:——たしかに、和三盆なら小さいし 優しい口どけだし……ライブ前にぴったりかもね
遥:うん、みんなで食べてリラックスしよう
愛莉:いよっし! それじゃあ気合い入れ直していくわよ!
遥:うん。私達には、オープニングアクトとして このステージをあたためるっていう大事な役割もある。 そのことを忘れずに、やりきりたいね
みのり:うん! 今日も全力でがんばりますっ!
雫:……ええ! ファンのみんなだけじゃなく、 今日イベントにきてくれるすべてのお客さんにも——
雫:私達らしく希望を届けましょう!
みのり・遥・愛莉:『おーっ!』
まふゆ:…………
まふゆ:……みんな頑張ってね。 それじゃあ私は——
雫:あ……朝比奈さん!
まふゆ:どうしたの?
雫:ここまで連れてきてくれて、本当にありがとう
雫:ボランティアの仕事、忙しいかもしれないけれど…… もしよかったらステージも見ていってくれたら嬉しいわ
雫:みんなで、希望を届けたい!って思って、 ここまで頑張ってきたから
まふゆ:(希望を届けたいと思って…………)
まふゆ:……うん。仕事があるから難しいけど……もし見れたら
みのり:雫ちゃーん! もうすぐだよー!
雫:はーい! それじゃあまたね、朝比奈さん!
観客A:ななみん生で見られるの、すっごい楽しみー!
観客B:今日ってモモジャンも出るんでしょ? ななみんとコラボ配信した時から、一緒にライブ出てくれないかな って思ってたから嬉しい~!
瑞希:おお~! 朝なのに、結構人集まってるね!
奏:本当だ……。 でも、ぎゅうぎゅうってわけじゃないから、 これなら大丈夫かも
絵名:奏は人ごみ苦手だもんね。 朝なのは、かえってよかったかも
瑞希:ん~、まふゆも一緒に見られたらよかったなぁ。 今頃どこでボランティアしてるんだろうなー?
まふゆ:(……人が増えてきた。 道案内の仕事も多くなりそうだな)
まふゆ:……ん?
ななみん:——会場にお集まりの皆さーん! おはようございまーす!
ななみん:シブヤ・フェスタ、ステージエリアのMCを担当します、 ななみんこと早川ななみです! 皆さん本日は、よろしくおねがいします!!
観客達:『ななみーん!』
ななみん:元気な声援ありがとう! やっぱお祭りは、楽しく元気にいくのが一番だよね♪
ななみん:今日はたくさんのグループが出るからみんな楽しんでね! というわけで——まずは元気いっぱいで私も大注目のアイドル、 MORE MORE JUMP!のみんなに来てもらいました!
愛莉:はーいっ! シブヤ・フェスタに来てくれたみんなー! おはようございまーす!
遥:おはようございます! MORE MORE JUMP!です
雫:みんな、早い時間から来てくれてありがとう!
みのり:こ、こんなたくさんの人が来てくれて、 すっごく嬉しいよ~!
通行人A:わ、桃井愛莉もいる! ちょっと見に行こうよ!
通行人B:うん! 見に行こうっ!
みのり:ひょえ……。 な、なんだかお客さんがどんどん増えてるような……
愛莉:みのり、人の数に怖気づかない! まずはMCアシスタントとして、 この場をバーンと盛り上げるのよ!
みのり:は、はいっ! ……いきますっ!
みのり:み、みなさーん! おはようございま~す!
みのり:シ——シブヤ・シェスタ、楽しんでましゅか!?
愛莉:しょっぱなから噛みすぎでしょーっ!!
愛莉:シェスタじゃ昼寝みたいじゃない! みんなで朝っぱらから寝てどーすんのよ!
雫:ふふ。それじゃあ、改めて—— 私達のこと、知らないよって人もいると思うから 簡単に自己紹介させてもらうわね
雫:MORE MORE JUMP!はここにいる花里みのりちゃん、 桐谷遥ちゃん、桃井愛莉ちゃん、そして私、日野森雫で結成した アイドルグループなの
遥:普段は動画配信を中心に活動しているんだけど……。 今日はななみんさんの紹介で、 ここでライブをやらせてもらえることになったんだ
遥:今日は私達4人で、シブヤ・フェスタのステージのオープニングを 思いっきり盛り上げるよ! よろしくね!
愛莉:実は今度、ワンマンライブもやる予定なの! 今日のライブが気に入ったらそっちのほうも来てくれると すーっごく嬉しいわ♪
ななみん:MORE MORE JUMP!のみんな、ありがとう! みんなでオープニング、楽しんじゃおうねっ!
ななみん:それじゃあ、シブヤ・フェスタステージ! 1発目、スタートだよーっ!
雫・愛莉:『♪————!』
みのり・遥:『♪————! ♪————!』
まふゆ:…………
通行人C:あの……すみません! ステージって無料で見ていいんですか?
まふゆ:あ……はい。 どなたも自由に客席エリアに入れますよ
通行人C:やった! ありがとうございます!
まふゆ:(……どんどん人が増えてくる)
雫:————♪
まふゆ:(……日野森さん、楽しそうだな)
雫:♪—— ♪—— ……!
まふゆ:……あ
まふゆ:(今、目が……)
まふゆ:……!
まふゆ:(……ステージからかなり遠い場所にいるのに……すごいな。 そこまで見てるんだ)
雫:みんなで、希望を届けたい!って思って、 ここまで頑張ってきたから
まふゆ:(……日野森さん、アイドルの活動、 すごく頑張ってるんだな)
まふゆ:私は……やってみたいの。音楽を
まふゆの母:……後悔、しないようにね?
まふゆ:…………
まふゆ:(……なんだろう、この感じ)
まふゆ:(なんだか……胸がモヤモヤする……)
ななみん:以上、MORE MORE JUMP!の皆さんでした~!
みのり・遥・愛莉・雫:『ありがとうございました!』
みのり:は~……! ちゃんとやりきれてよかった~!!
愛莉:お疲れさま! みのり、すごくよかったわよ~! このこの~!
みのり:わっ! あ、愛莉ちゃんくすぐったいよ~!
遥:実際、みのりは前より緊張しないで、 全力で踊れるようになったよね。これも合宿の成果かな
雫:そうね。お客さんもすっごく喜んでるみたいだったわ。 ……ふふっ
雫:なんだか不思議ね。 結成した頃は、本当に何もかも手探りだったのに——
雫:今はこうやって、4人で、 たくさんのお客さん達に希望を届けられてるなんて
遥:——次はついに、ワンマンだね
愛莉:ええ。 絶対に絶対に成功させましょう!
みのり・雫・遥:『うん!』 『ええ!』

第 5 话:その1枚に、想いをこめて

シブヤ・フェスタ ステージエリア
男性A:あの、この辺りに自動販売機ってありますか?
まふゆ:客席入り口付近にある看板の裏に設置してありますよ
女性A:すみません、東小学校のダンスって まだ始まってないですよね!?
まふゆ:はい。あと10分でスタートするので、 客席エリアでお待ちください
まふゆ:……ふぅ
まふゆ:(日野森さん達のライブがあったからかな。 ステージエリアのお客さんが結構増えてる)
まふゆ:(今はまだそれほどじゃないけど……。 これから一般枠のステージが始まるし、 もっと増えるだろうな)
男性B:あ、すみません。 タイムテーブルが置いてある場所ってどこですかね?
まふゆ:あ……あちらの宣伝コーナーにありますよ。 近くなので、よければ案内します
まふゆ:こちらにありますので、ご自由にお持ちください。 それから、出演団体の情報も置いてありますよ
男性B:丁寧にありがとうございます。助かりました
まふゆ:いえ。どういたしまして
まふゆ:(……ステージのほうに戻らなくちゃ)
穂波の声:——こんにちは! 今日午後一に演奏するLeo/needです!
一歌の声:今日午後の部の最初に演奏するので、 ぜひ聴いていってください!
まふゆ:あれは—— 星乃さんに、望月さん……?
咲希:よろしくお願いしま~す! 普段はライブハウスで演奏してます! ——あっ、どうもありがとうございます!
志歩:よろしくお願いします
穂波:Leo/needです! 今日は午後の部の——あっ
穂波:朝比奈先輩?
まふゆ:こんにちは。 こんなところで奇遇だね
一歌:朝比奈先輩も来られてたんですね
まふゆ:うん。先生に頼まれて、ボランティアでね
まふゆ:星乃さん達、今日ステージに出るんだよね。 えっと……一緒にいる子も、同じバンドの子?
志歩:はい。はじめまして。 日野森志歩です
志歩:朝比奈先輩のことは姉から聞いてます。 姉がいつも弓道部でお世話になってます
まふゆ:ああ、日野森さんの妹さんだね。 話はたまに聞いてるよ。すごく可愛いって
咲希:あっ、アタシはキーボード担当の天馬咲希です! えへへ、よろしくお願いします!
まふゆ:うん、よろしくね。 2年の朝比奈まふゆです
咲希:……わぁ……!
咲希:すごいねいっちゃん!  朝比奈先輩の話は聞いてたけど、 近くで見るとホントに完璧オーラがあふれてるよ~!
志歩:本人を前にそんなに言うのもどうかと思うけど……。 でも、言いたいことはわかるかな
まふゆ:あはは……完璧なんて、そんなこと全然ないよ
まふゆ:そういえば、みんなで何を配ってるの? チラシみたいだけど……
穂波:あ、はい。せっかく大きなステージに出るので、 わたし達のことを少しでも覚えてもらおうと思って作ったんです
志歩:チラシとかフライヤーって捨てる人も多いですけど、 バンド名覚えてもらうのにはやっぱり役立つんで
咲希:アタシ達の演奏を聴いてもらうためにも、 もっといろんな人に知ってもらわなくっちゃね!
まふゆ:……そっか。ちゃんと先のことまで考えて活動してて、すごいね。 もしよかったら、私も1枚もらってもいい?
咲希:はい! もちろんです! どうぞ!
まふゆ:ありがとう。 ——これはみんなで作ったの? よくできてるね
咲希:あ、内容はほとんどほなちゃんが作ってくれたんですよ! アタシはイラストをちょこっと描いたくらいです!
まふゆ:望月さんが? すごいね、レイアウトも綺麗だしすごく見やすいよ。 この太陽のイラストも、元気いっぱいで可愛いね
穂波:あっ……! そ、それは……!
咲希:そのライオンの絵はほなちゃんが描いてくれたんです!
まふゆ:あ、これってライオンだったんだね。 ごめんね、太陽だと勘違いしちゃった
穂波:い、いえ! 全然大丈夫です! むしろわかりにくくてすみません……
まふゆ:ううん。それより…… すごく味がある絵だね。印象に残りそうだよ
穂波:ほ……本当ですか? よかったです!
穂波:その……わたし前まで、 描いた絵を見られるのが恥ずかしかったんです。 ……というか、今もまだ少し恥ずかしいんですけど……
穂波:でもちょっと前に、朝比奈先輩のお友達の絵名さんが 絵を教えてくれて……ちょっとだけ描けるようになったんです
穂波:それで……インパクトに残る絵だって言われたから、 もしかしたら役に立つかもって……
まふゆ:そうだったんだ……
まふゆ:(そういえばこの前、絵名が奏の知り合いに絵を教えたって 言ってたけど……あれって、望月さんのことだったんだ)
穂波:みんなでプロになるために—— できることは全部やりたいって思ったんです
咲希:4人でプロになるってことが、アタシ達の夢だもんね!
一歌:うん、そのためにも今日は頑張ろう!
まふゆ:(……夢……)
まふゆ:……ふふ。夢のために苦手なことにも挑戦して、偉いな
まふゆ:今日はたくさんのお客さんに聴いてもらえるといいね
穂波:——はい! ありがとうございます!
一歌:あ……そろそろステージ裏集合の時間だ。 みんな、行こう
咲希・穂波・志歩:『うん!』
まふゆ:みんな、頑張ってね
まふゆ:…………?
まふゆ:(……なんだろう。また……)
女性B:あの、すみません。 お手洗いってどちらにあるかうかがってもいいですか?
まふゆ:あ——はい。 ご案内しますね。こちらです
宮益坂
えむ:うっわー! すっごーい! 屋台がいっぱいだよ~!
えむ:あっ! あっちに射的がある! 寧々ちゃん、一緒にやりに行こ~うっ♪
寧々:ちょ、ちょっと待って、えむってば!
類:フフ、ふたりとも楽しそうだねえ
司:そうだな! やはりこういう祭りムードだと、心も浮き立つというものだ!
司:しかし……屋台ばかりでなく、 個人が作ったらしい銅像や彫刻がそこかしこにあるな。 祭りにこういうものが置いてあるのは珍しくないか?
類:ああ。 シブヤ・フェスタには芸術家支援の面もあるらしいからね。 絵画の企画展もあるみたいだよ
司:ほー! それはいい試みだな
司:——お、通りの真ん中にストリートピアノもあるぞ! ステージのあとに1曲弾くのもいいかもしれんな
類:それはいいね、司くんのピアノをまた聴かせてもらおうかな
子ども:お兄ちゃん、わたあめ食べにいこう~! わっ
類:おっと。急に駆け出すと危ないよ? 気をつけてね
子ども:あ、えっと……ぶつかっちゃってごめんなさい!
類:ふふ、大丈夫だよ。 きちんと謝れた君には——これをあげよう
子ども:……わ! 風船のわんちゃんだ~! もらっていいの?
類:ああ。 ケガには気をつけて、お祭りを楽しんでね
子ども:うん! ありがとう!!
司:……お前、いつの間にあんなものを用意したんだ? というかどこに持っていた!?
類:フフ、どこだろうねえ?
えむ:ただいまーっ! 射的いっぱい当ててきたよ~! ……あれ? ふたりとも何してるの?
司:むむむ……こいつの手荷物はいったいどこから出てくるんだ? このポケットか? ここか!?
類:タネも仕掛けもないんだけれどねぇ
寧々:何してるんだか……
???:——あれ? もしかしてそこにいるの……類?
類:ん?
類:——瑞希?

第 6 话:ステージの上の輝き

センター街
瑞希:にしても、びっくりしたな~!
瑞希:類達はショーの準備してると思ってたから、 屋台のほうで会うとは思わなかったよ
類:今の時間は、小学校の出し物があったりと まだステージ裏が混んでいるからね。 もう少ししてから行こうと思っていたんだよ
瑞希:あーなるほど。 そういうことだったんだね
司:ショーは夕方からだから、是非見に来てくれ! 夕方という時間帯や、この場所にふさわしいショーに なっているぞ!
司:……そういえばそちらは、暁山のご友人か?
瑞希:うん! おんなじ音楽サークルで活動してる、奏と絵名だよ!
絵名:あ、えーと……東雲絵名です
絵名:山で遭難した時に助けてくれた、神代さん……ですよね。 それから、草薙さん。 あの時はありがとうございました
類:いえいえ。 僕は大したことはしていませんよ
寧々:はい……全然、何も……
えむ:あれ? 絵名さんと寧々ちゃん達、知り合いだったんだね! すごい偶然だね~♪
絵名:あ。えむちゃん、久しぶりだね
寧々:え? えむも、知り合いなの?
えむ:うんっ! お絵描き教えてもらったんだよ~♪
瑞希:奏、類はボクの中学時代からの友達なんだ。 フェニランのチケットをくれたのも類なんだよ
奏:……ええと……よろしくお願いします
類:先日はワンダーステージまで来てくださり、 ありがとうございます
奏:瑞希がよく話してるのって えっと……類さんのことだったんだね
瑞希:うん! それで、ここにいるのは全員、 フェニックスワンダーランドのキャストさん!
えむ:はじめまして~! 鳳えむです! えむって呼んでくださいっ!
寧々:く、草薙です。どうも……
奏:あ……ご丁寧にどうも……
司:——そしてこのオレが、未来のスター・天馬司!! 以後お見知りおきを!!
奏:う、声が大きい……!
奏:……ん? この感じ、どこかで……?
瑞希:もー先輩、声でっかいってば! 奏大丈夫?
奏:あ、う、うん。 さすがショーしてる人は声が大きいね……
奏:そういえば……フェニランで見せてもらったショー、 すごく楽しかったです
類:フフ、楽しんでいただけたなら何よりです。 今日も夕方から公演をするので、 ぜひ見に来てください
瑞希:ん~、奏が類達と話してるの、 なんだか嬉しいなぁ!
瑞希:——本当は、まふゆも紹介できたら良かったんだけどな
司:む? まふゆとは誰だ?
瑞希:実はボク達のサークル、もうひとりいるんだけどさ。 その子、今日は夕方から合流なんだよね
瑞希:きっとショーは一緒に見れるんじゃないかなって思うけど……。 できればみんなにも紹介したかったなって
えむ:あ……。 それってもしかして、朝比奈センパイですか?
瑞希:そうそう! そっか、えむちゃんはまふゆの学校の後輩なんだよね
えむ:はい。 その……ナイトショーを見に来てくれた時、 なんだか元気がなかったから気になって……
えむ:……朝比奈センパイも、お祭り楽しめるといいなあ
絵名:……心配してくれてありがとね、えむちゃん
類:……ふむ……
類:(そういえば、この前瑞希達が来た時——)
フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
類:——うん。 今日の客入りも上々だね
類:瑞希達も来てくれたようだし、 いつもどおりいいショーを……ん?
類:……えむくん?
司:——皆さま、大変お待たせいたしました!
司:本日はワンダーランズ×ショウタイムのショーを 心ゆくまでお楽しみください!
瑞希:うわ! あの子すごいね~!
奏:うん。あんなに軽々アクロバットができるなんて……
類:…………
寧々:お疲れさま。 ……ねえ、えむ。なんか今日すごく気合い入ってなかった?
司:そうだな。素晴らしいアクションだったが……
類:……えむくんにしては硬い表情だったね。 何かあったのかい?
えむ:あ、えーっと……
えむ:実はね、今日学校のセンパイがショーを見に来てたんだけど、 なんだか元気がないみたいで……
えむ:センパイが笑顔になったらいいなって思ったら、 力が入りすぎちゃったみたいなんだ~……
類:先輩……もしかして、開演前にえむくんが見ていた子かい?
えむ:あ、うん! たぶんその人だよ!
司:なるほどな……そういうことだったのか
寧々:ふふ、えむらしいね。 何があったかわからないけど、 その先輩、ちょっとでも元気出してくれてたらいいね
えむ:うん……そうだといいなぁ……
類:…………
類:(あの時、えむくんが気にかけていた子が 瑞希の言っていたまふゆくん、ということかな)
絵名:なんていうか……まふゆはあの日ちょうど嫌なことがあったから 結構落ちこんでたみたいなんだよね
絵名:でも今はそこまでじゃないと思うし、 そんなに心配しなくて大丈夫じゃないかな
瑞希:そうそう! 今日のえむちゃん達のショーを見たら もっと元気になるかもしれないしね!
えむ:そっか……! よーし、今日こそセンパイをすっごい笑顔にできるように がんばるぞー!
寧々:……ふふ。 えむ、元気になったみたいだね
司:うむ。その先輩とやらも、 調子を取り戻してきているようでよかったな!
類:(……ふむ)
類:(詳しい事情はわからないけれど—— えむくんと、えむくんの先輩のためにも、 今日のショーは頑張りたいところだね)
司:——むっ! もうすぐ咲希達のライブが始まる時間だ! ステージに向かい、いい場所を確保しなければ!
瑞希:あ、司先輩達もこれからステージに行くの?
瑞希:それじゃあ一緒に行こうよ! ボク達も行くところだったんだよね!
司:おおそうか! 目指す場所は同じということだな!
司:それでは、いざゆかん! 咲希達のステージへ!
シブヤ・フェスタ ステージエリア
杏:うわー! すっごい人だね! テンションあっがる~♪
こはね:こ、こんなにたくさんお客さんがいるんだね……!
彰人:野外ステージだから通行人にも見てもらえそうだな。 ……なんだ、ビビってんのか?
こはね:う……
冬弥:そうなのか? 小豆沢はスクランブル交差点でも歌っているだろう。 それに比べれば少ないと思うが……
こはね:あ、ちょ、ちょっとびっくりしちゃっただけだから……! 大丈夫! ちゃんと歌えるよ!
杏:あははっ、初めての野外ステージだけど、 頑張ろうね、こはね!
杏:……ん? あそこにいるのって——
杏:おーい!! 瑞希~!!
瑞希:わっ、杏じゃん! 弟くん達も! ステージ見に来てたんだね!
彰人:他のステージ見んのはいい刺激になるからな。 というか、お前のうしろにいるのって……
司:おお! お前達、奇遇だな!
絵名:あっ、彰人! 彰人達出るのってもっとあとじゃないの?
えむ:あーっ! ぷよぷよのプロの人もいる! こんにちは~!!
冬弥:プロではないが……久しぶりだな
司:冬弥達も、ずいぶん早く来ていたんだな!
冬弥:はい。出番はまだなんですが、 小豆沢の友人や咲希さんも出るということで、 早めに来ていたんです
司:なるほど……! 冬弥達も咲希達を応援しに来たということか!
彰人:いや、別にそういうわけじゃないっすけど……
杏:あ、よかったら一緒に聴きません? この辺あいてますし
彰人:おい!
瑞希:いいねー! じゃあボク達もこの辺に座っちゃおーっと♪
絵名:まぁ私はいいけど……奏は平気?
奏:あ、うん。それぐらいなら
冬弥:こうやって大所帯でライブを見るというのも楽しいな、彰人
彰人:……はぁ。そうだな。 ……ん?
彰人:(あっちの端のほうに桃井さん達もいるな。 騒がれないように変装してんのか)
彰人:(こういう時、有名人は大変だな)
司:——しかし、咲希達のライブを見れるのは楽しみだ! いつもショーと重なってしまって、 なかなか聴きに行けなかったからな……
こはね:そういえばこの前、一歌ちゃんが 咲希ちゃんが作った曲がすごくよかったって話してましたよ!
司:おお、そうなのか! それは期待せざるを得ないな……!
寧々:ふふ、星乃さんの歌、楽しみだな。 ライブで聴くこと、ほとんどなかったし……
瑞希:へ~! 奏の知り合いがやってるバンド、人気なんだね! ボクもワクワクしてきちゃった!
奏:うん。早く聴きたいな
瑞希:やっぱり、まふゆと一緒に聴けないのが残念だけど……ん?
瑞希:あそこにいるのって、もしかして……! おーい、まふゆー!
瑞希:まふゆー! ボクだよ~♪
まふゆ:……瑞希?
瑞希:こんなところにいたんだね! もしかして、ボランティアってステージのスタッフとか?
まふゆ:ううん、会場の案内。 ここが私の持ち場だから
瑞希:それならラッキーじゃん! ちょうどボク達あそこに座っててさ。 これなら一緒にステージ見られるんじゃない?
まふゆ:……たしかにステージは見えるけど、 でも、仕事があるから
瑞希:あー、まぁそうだよね~
瑞希:(それに、今結構大所帯で見る感じになっちゃってるし、 そうするとまふゆは気をつかっちゃいそうだもんね)
瑞希:じゃあまた、ボランティアが終わった頃に合流しよう!
まふゆ:うん
司:……ん? 何やら暁山が手を振っているな
えむ:ほえ?
えむ:わっ!! あ、朝比奈センパイ、あんなところにいたんだ!
類:(……ああ、やっぱりあの人が……)
中学生:あ、すみません! お手洗いってどこにありますか?
まふゆ:はい、この道をまっすぐ進んでもらって——
えむ:……あ……
類:ん? どうしたんだい? えむくん
えむ:センパイ、今日も元気なさそうだなぁ……
類:え?
類:(……一見すると、普通に見えるけれど……)
類:(えむくんは人の感情に対して敏感だから、 もしかすると、何かあるのかもしれないな)
類:(それに——人の心の内は、 そう簡単にはわからないものだからね)
類:(……自分の気持ちさえわからないことがあるんだ。 他人を勝手に推し量るのはよくないな)
司:おおっ、咲希達のライブが始まるぞ!! 咲希ーっ!! 頑張れ~っ!!
一歌:——みなさん、こんにちは! Leo/needです!
一歌:ほとんどの人が、私達のことを初めて見ると思うので…… この機会に、覚えてもらえたら嬉しいです
一歌:実は、最初にライブをやった場所も野外ステージだったんです。 あの時はすごく緊張して、 声も震えたりしちゃったんですけど……
一歌:でもそこでいろいろあって——4人でプロを目指そうって、 覚悟を決めることができたんです
一歌:それから、自分達で曲を作ったり、歌詞を書いたり……。 うまくいかないこともたくさんありました
一歌:でも——誰かの心に響く演奏をしたいという想いは 誰にも負けません
一歌:どれも私達の想いがいっぱいに詰まった曲なので、 聴いてもらえたら嬉しいです! よろしくお願いします!
穂波:——ワン、ツー、スリー、フォー!
こはね:わぁ……! かっこいい……!
一歌:♪————————!!
寧々:星乃さん、前よりすごくうまくなってる……。 もう、わたしが教えてもらいたいくらいだな
杏:迫力あるよね~! 前に聴いた時よりもずっといい発声になってるし、 かなり練習したんだろうな!
彰人:ベースもレベルたけえな
冬弥:ああ。リズム隊の連携も取れている。 それに曲も、胸に迫るものがあるな
瑞希:う~ん、これは奏が推すのもわかる! カワイイしすっごくカッコイイもん!
奏:(星乃さんの歌声も力強くてすごく綺麗だけど…… バンド全体の演奏もすごいな)
奏:(望月さんも、他のメンバーも…… ここまでかなり練習したんじゃないかな)
奏:……心に響く演奏……か
類:……咲希くん達がプロを目指してライブをしているとは 聞いていたけれど……。これは、想像以上だね
えむ:穂波ちゃ~ん! カッコイイよ~! わんだほ~~い!
司:いいぞ~! 咲希~! Leo/need~!
一歌:♪————!! ♪————!!
まふゆ:…………
一歌:はい。今はまだ、全然ですけど……
一歌:でも、いつか私達の想いが届くような曲を作って、 その演奏で誰かの心を揺さぶることができる——
一歌:そんなバンドになりたいんです
まふゆ:…………あ
まふゆ:また、胸が……
まふゆ:……一体……何?
ステージ裏
咲希:みんな、お疲れさま~っ! 今日、すーっごくいい感じだったね!!
一歌:うん……! 会場も盛り上がってたし……。 合宿練習で身についたこと、しっかり活かせたね
志歩:一歌の声、野外ステージでもかなり遠くまで届いてたよ。 客席の向こう側の人にも聴こえてたみたい
咲希:うんうん! お客さん楽しんでくれててよかったな~! ほなちゃん、シブフェスに出ようって 提案してくれてありがとう!
穂波:ふふっ。どういたしまして!
観客A:——今のバンド、よかったな。 なんて名前のバンドだ?
穂波:……あ
観客B:あ、それならさっきチラシもらったからわかるぞ。 Leo/needってバンドらしい。 ライブハウスでも演奏してるんだってさ
観客A:へぇ。 たまにはそういうの聴きに行くのもおもしろいかもな
穂波:……!
咲希:すごい……! チラシでアタシ達のこと、覚えてもらえてるよ!
一歌:本当だ……! ありがとう穂波、咲希!
穂波:う、うん……! すごく嬉しいな……!
観客A:それにしても、この絵なんだ? ウニか?
観客B:え? タワシの絵じゃないのか?
穂波:うぅ……。 やっぱり、ライオンには見えないんだ……
志歩:まぁまぁ。 おかげで名前覚えてもらえてるみたいだしさ
一歌:そうだね。 これからもこうやっていろんな方法を考えて、 たくさんの人に曲を聴いてもらえるようになりたいな
一歌:——みんな、この調子で頑張っていこう!
咲希・穂波・志歩:『うん!』

第 7 话:祭りの裏側

ななみん:続いては、ベリーダンスチームです! 皆さんよろしくお願いしまーす!
杏:おお~! いいダンス! さっきからどこのチームもレベル高いね~!
冬弥:そうだな。聞いたところによると、 オープニングのライブもすばらしかったらしい
彰人:ああ、桃井さん達のグループか。 朝練で見逃したが……せっかくだし見ておけばよかったな
こはね:私も、みのりちゃんや遥ちゃんのこと見たかったなぁ……。 次は絶対みんなで見ようね!
杏:うん! でも、午後一のLeo/needもすごくよかったよね。 かなり盛り上がったし!
こはね:そうだね。パワーがあったっていうか……、 今日一番盛り上げるぞって気持ちが伝わってきたな
彰人:ああ。 ……ん?
彰人:悪い、ちょっと抜ける
杏:あれ? 彰人、どこ行くの?
彰人:翔太から音源の確認頼むって言われてな。 行ってくる
冬弥:なら俺も——
彰人:いや、これくらいならすぐ終わるだろうから、 お前らはここで見てろよ。すぐ戻る
こはね:ありがとう。 いってらっしゃい、東雲くん
司:おお……! なるほど、こういったダンスもあるのだな! 勉強になるぞ!
咲希:わー! すごいね~! アタシもこういうのやってみたいなぁ
えむ:あっ、それじゃあたしと一緒に……ひゃーっ!
寧々:きゅ、急にすごい風……! ……びっくりした
志歩:なんか、風が強くなってきたな。 天気予報は晴れだって言ってたのに
類:そうだね。 …………
類:——そろそろ出番も近づいているし、着替えついでに、 点検をしてくるよ
えむ:ほえ? 点検?
類:スーパーデラックス射出装置の点検さ。 ジャンプする時に突風が吹いたら大変だからね。 射出の勢いを少し抑えようと思う
類:司くん達はステージを楽しんでいて大丈夫だよ。 せっかく咲希くん達とライブを見られるいい機会だしね
司:む、たしかに……
寧々:……じゃあお言葉に甘えちゃおうかな。 ありがとう、類
えむ:あ、それならあたしがついてくよっ! お手伝いする人がいたほうが、早く終わると思うし♪
類:フフ、ありがとう。 それじゃあえむくん、一緒に行こうか
司:ああ! 頼んだぞ、類、えむ!
ステージ裏
類:ふむ……この風の強さは、やはり心配だね
類:点検に来たのは正解だったな。 射出の勢いを調整せずにいたら、 本番でケガをさせてしまうかもしれない
えむ:ケガしちゃったら悲しいし、 みんな笑顔じゃなくなっちゃうもんね……! 類くん、何か手伝えることある?
類:それじゃあ、そっちの工具箱から ドライバーを取ってもらってもいいかな?
えむ:りょうかいっ! どうぞーっ!
類:ありがとう。 …………
類:(この風の強さとこの風向きなら もう少し射出力を弱めて、と……)
類:——うん、これで問題ないだろう。 でも、使う前に一度試してみないとね
えむ:あっ、あたしが試しにやってみる?
類:いや、僕がやるよ。 司くんの体重に近いのは僕のほうだろうしね
えむ:そっかぁ……わかった! じゃあケガしないようにマット敷くね~!
類:ああ。ありがとう、えむくん。 それじゃあ危ないから、装置から離れていてほしいな
えむ:うん!
類:では、さっそくスイッチを入れて……と
類:3、2、1……
えむ:わあっ! すごいすごい! 類くん、すっごくきれいにシュターってしてたよ!
類:フフ、ありがとう。 問題なく目標地点に着地できたね。 出力も問題なさそうだ
類:でも念のため、もう一度試しておこうかな
類:3、2、1——。……っ!?
類:(まずい……! 風で体勢が……!)
類:う……!
えむ:る、類くんっ! 大丈夫っ!?
類:ああ……と言いたいところだけど、 参ったね。着地の時の強風で、少しケガをしてしまったようだ
えむ:ええっ!? どこが痛いの?
類:……手や肘だね。倒れた時に擦りむいてしまったよ。 あとは——右足首をひねってしまったようだ。 ショーまでに痛みが治まるといいんだけど
えむ:……! すぐ手当てしないと! えーとえーと……
類:……でも今のでわかったよ。 不意の強風程度なら、ここを調整するだけで問題ない。 これなら着地時さえ気をつければ安全に……
えむ:う~! 類くん! 今は類くんのこと心配しなくちゃダメだよ!
えむ:類くんがケガしちゃったら、 あたしもみんなもニコニコショーできないよ!
類:ああ……そうか。 すまないえむくん
類:ただそこまで重傷というわけじゃないよ。 消毒液と絆創膏があればなんとか……。 ……っ!
えむ:どうしたの!?
類:……困ったな。 足の痛みが思ったより強い
えむ:ええっ!?
えむ:そうだ、救急箱! ……ってどこにあるのかな? あ、それより類くんを保健室みたいなとこに連れてければ……!
彰人:……翔太のやつ、だいぶ忙しそうだったな。 運営ってのも大変な——って
彰人:あんた、なんでこんなところで座りこんでんだよ
類:やあ東雲くん。 見苦しいところを見せてしまってすまないね
えむ:あっ、彰人くん! よかった~!
えむ:あのねあのね、類くんがぴょーんってする装置を直してたら、 風がびゅーってなって、ケガしちゃったの!
えむ:でも救急箱も保健室もわかんなくて……! どうしよう!!
彰人:あ~……鳳、まずは落ち着け。 保健室ってあれか? 救護テントのことか
えむ:あ、それそれっ!
類:ああ。でも大丈夫だよ。 東雲くん達も、もう少ししたら本番なんだ。 僕ひとりで——
類:……っ
えむ:類くん……!
彰人:……仕方ねぇな。 神代センパイ、肩貸しますよ
類:……いや、君だって本番が近いんだ。 そんなことをしてる場合じゃないだろう?
彰人:まぁ、そうっすけど……
えむ:で、でも類くんがこのままじゃショーができないよ……!
類:それは……
彰人:……はぁ
彰人:あんた、いつか言ってませんでした? ショーを成功させるためならどんな手でも使うって
類:今の僕にとっての最優先事項は、 この式のショーを成功させることだ
類:今、君を承諾させるためならどんな手でも使うよ。 君を怒らせても、悲しませてもね
類:僕はそれを悪いとは思わない
彰人:——なら、こういう時は人を使うもんじゃないっすか
類:……たしかにそうだね。 それじゃあ、お言葉に甘えようかな
彰人:それでいいと思いますよ。 ……で、救護テントはどこだ?
えむ:えっと、どこだったっけ~! うーん……あっ、そうだ!
えむ:朝比奈センパイならここのボランティアしてるから、 救護テントの場所もわかるかも!
類:(朝比奈……というと、さっきの……)
えむ:たしかあのへんに——あっ! 朝比奈センパ~イ!
まふゆ:……鳳さん?
救護テント
まふゆ:——ここが救護テントだよ
えむ:ありがとうございます、朝比奈センパイ!
まふゆ:どういたしまして。 それにしても、本番前に怪我なんて……大変でしたね。 お大事になさってください
類:はい。どうもありがとうございます
まふゆ:じゃああとは担当の人に……あれ?
彰人:……誰もいませんね
えむ:え? あっ、ホントだ~! なんでだろう!?
類:……もしかすると、 別の場所で事故やケガがあったのかもしれないね
彰人:マジかよ。 せっかく来たってのに……ショーに間に合うのか?
類:……仕方ない。いざとなったらこのままでも出るよ。 穴をあけるわけにもいかないしね
えむ:で、でも、歩くと痛いんじゃない?
彰人:包帯でも使って固定できりゃいいんだが……。 さすがに備品を勝手に使うのもな
まふゆ:…………
まふゆ:よかったら、私がやりましょうか?
彰人:え?
まふゆ:ボランティアスタッフは、必要な備品は使ってもいいって 参加要項のプリントに書いてあったんです
まふゆ:それに捻挫は、早く手当てしないと悪化するので
類:……ありがとうございます。 では、お願いします
まふゆ:わかりました。 鳳さん、一緒に救急セットを探してもらってもいい? 多分近くの棚にあると思うから
えむ:はいっ! 了解です!
彰人:(……この人、なんか見たことあると思ったが、 たしか絵名と一緒に曲作ってる……)
えむ:センパーイ! 発見しました~! 救急箱です!
まふゆ:ふふっ、ありがとう鳳さん。 使えそうなものは……と
彰人:……ま、しっかりしてそうな人だし、 あとは任せて大丈夫そうだな
類:東雲くん、君のおかげで助かったよ。 本当にありがとう
類:もう出番も近いだろう? 君達のパフォーマンスの準備もあるだろうし、 戻ってもらって大丈夫だよ
彰人:そっすね。 それじゃ、オレはこれで
彰人:…………あー。 このこと、司センパイと草薙に伝えときましょうか
類:ああ……いや、大丈夫だよ。 本番前に心配をかけるような真似はしたくないしね
類:幸い、僕は今回脇役で動きも少ないから、 司くん達の演技の足を引っ張ることもないと思うし
彰人:……いや、そういう問題じゃないっつーか……
類:え?
彰人:いいもん作りたいなら、 いろいろひとりで抱えこむなってことですよ
類:……フフ、そうだね。 それじゃあ、お願いしようかな
彰人:うっす。 他に伝えておくことはありますか?
類:そうだね……。 すぐに戻るから心配しないでほしいってことを 伝えてもらいたいな
彰人:わかりました。 んじゃまた——ステージで
類:ああ。また
まふゆ:それじゃあ、準備ができたので手当てをしていきますね。 ええと……
類:ああ、神代です
まふゆ:じゃあ神代さん、症状を確認しましょうか。 ここを押すと痛いですか?
類:そうですね。 少し痛みます
まふゆ:やっぱり、軽い捻挫みたいですね。 冷やしておきましょう
えむ:センパイ、ありがとうございます!
えむ:類くん、ショー出れるといいね……
まふゆ:鳳さん達はそのために来てるんだもんね。 できれば安静にしたほうがいいと思うんだけど……
まふゆ:とりあえず、今は安静にして、患部を冷やすようにしましょう。 すぐ氷嚢の準備をするね
えむ:ありがとうございます!
類:すみません、助かります
まふゆ:——はい、できました
まふゆ:すぐに動かすのはよくないと思うので、 ショーの時間まではこの状態でじっとしていてくださいね
えむ:朝比奈センパイ、すご~い! 手当て、しゅぱぱーって終わっちゃった……!
まふゆ:ふふ、大したことはしてないよ。 あ、こういう時はRICEで治療するって覚えておくといいかもね
えむ:らいす? ごはんですか?
まふゆ:Rest、Icing、 Compression、Elevation
まふゆ:捻挫や肉離れの時の手当ての手順なんだ。 覚えておくときっと役に立つと思うよ
えむ:ほえー……! 本物のお医者さんみたい!
えむ:センパイ、それってどこで習ったんですか?
まふゆ:……医大の受験勉強をしてる時に、 偶然知っただけだよ
類:ああ、朝比奈さんは医師を目指されているんですね。 それならこの手際のよさも納得です
まふゆ:…………
まふゆ:……ええ、まあ。そう、ですね
類:……?
屋台の人:すみませーん! 救護班の人、いる!? やきそばの鉄板でちょっとやけどしちまったんだけど……!
まふゆ:あ……すみません、ちょっと待ってもらえると……
類:いえ、あの人を優先してもらって大丈夫です。 僕は擦り傷以外ほとんど処置をしてもらっているので
まふゆ:ありがとうございます。 すぐ戻りますね
まふゆ:……怪我の範囲が広いですね。隣の流し場に行きましょうか
屋台の人:すまないね。 助かるよ! いてて……
まふゆ:大丈夫ですか? やけどは痕になるので急ぎましょうか
えむ:あ……!
えむ:センパイ、ちょっとだけ…… ほんとみたいに笑ってる……!
類:…………?
類:(僕にはそこまで変化がわからないけれど……)
類:(でもたしかに……最初見かけた時よりも、 柔らかい雰囲気があるような気がするな)
まふゆ:……はい、できました。 これで大丈夫だと思います。 でも念のため病院を受診してくださいね
屋台の人:お嬢ちゃん、すごいな。ありがとう! 本当に助かったよ!
まふゆ:いえ。 お役に立てたならよかったです
類:…………
類:(……これはただの憶測だけれど)
類:(もしかして彼女は、医師というよりは——)

第 8 话:私のやりたいこと

シブヤ・フェスタ 救護テント
まふゆ:——すみません、お待たせしてしまって。 捻挫のほうは大丈夫ですか?
類:はい。 処置していただいたおかげで、だいぶ痛みも引いてきました
まふゆ:そうですか、よかったです
まふゆ:じゃあ、残りの擦り傷にガーゼをあてておきましょうか
まふゆ:こんなにあちこち擦りむかれて、 一体何をされていたんですか?
類:ああ、今日ショーで使う射出装置の調整をしていたんです
まふゆ:射出装置?
えむ:はいっ! それに乗るとびよーんって大きなジャンプができるんですよ!
えむ:でも、さっき類くんがテストしてる時に ビューって強い風が吹いて……
類:それで、こうしたケガをしてしまったんです
まふゆ:そうだったんですか……。 ショーをやるのって大変なんですね
類:ええ。たしかに大変なことが多いですね。 大道具作りや運搬も体を使いますし、 今日みたいに天気が不安定な日だと、装置の調整も必要ですし
類:ですが——
えむ:でもでも、すっごく楽しいんですよ!!
えむ:みんなと一緒にやるショーはいっちばん楽しくて—— 大変でも、毎日だってやりたいくらいなんですよ!
えむ:特に類くんが考えてくれる演出は、どれもワクワクして、 すーっごくわんだほいなんですっ!
類:……ああ、そうだね
類:やりたいと思えるショーを存分にできて、 僕も幸せだよ
まふゆ:やりたいと……思える……
まふゆ:(……またあの、モヤモヤした感じ……)
えむ:……? 朝比奈センパイ? どうかしましたか?
まふゆ:あ——ううん。なんでもないよ
まふゆ:でも、素敵だな。 鳳さんも神代さんも、やりたいことに向かって まっすぐ努力できてて
まふゆ:私はそういうの、全然なくって
えむ:え?
類:……どうして、そのように思うんですか?
まふゆ:どうして…………どうしてかな。 ……なんとなく、ですかね
まふゆ:なんとなく……周りを見ていて……
雫:みんなで、希望を届けたい!って思って、 ここまで頑張ってきたから
穂波:みんなでプロになるために—— できることは全部やりたいって思ったんです
まふゆ:……そう思ったんです
まふゆ:私には、本当にやりたいことなんて——ないって
まふゆ:(……あれ?)
まふゆ:(私……ちゃんと……笑えてる?)
えむ:朝比奈……センパイ……
類:——ない、ということも、ないんじゃないですか?
まふゆ:……え?
類:なんとなくで恐縮ですが、 朝比奈さんには、やりたいことがあるのではないかと思って
まふゆ:…………
まふゆ:そうですか? そんなことないと思いますけど……
類:…………
類:もしかすると、気づけていないだけかもしれませんよ
まふゆ:え……?
類:実は、僕は昔、自分のやりたいことがわからなかったんです
類:いや……わかってるつもりだったんですが、 本当は全然わかっていなかった……というべきでしょうか
まふゆ:……?
類:僕は最初、自分がやりたいショーを作れれば幸せだと 思っていたんです。たとえ、たったひとりでも
類:でも本当は、僕のやりたいことを、 同じようにやりたいと思ってくれる誰かと一緒に、 ショーをやりたいと——気づいたんです
まふゆ:…………
類:気づけなかったのは、諦めていたからです。 どうせ、自分のやりたいことを一緒にやってくれる人なんて いないだろうと
類:でも、仲間に出会えて、本心を問われて、 ようやく本当の気持ちと向き合えました
えむ:類くん……
類:——それで、思ったんです
類:本当にやりたいことを自覚するのは 思った以上に難しい
類:だから……もしかしたら朝比奈さんも そうなのではないかと思ったんです
まふゆ:私は…………
類:……すみません。 自分のことばかり話してしまいましたね
まふゆ:……いえ
類:——手当て、ありがとうございました。 これでいいショーができそうです
まふゆ:……それなら、よかったです
まふゆ:でも、あまり激しい動きはしないようにしてくださいね。 痛みがぶり返してしまうかもしれませんし
類:ええ。お気づかいありがとうございます。 ……ああ、そうだ
類:朝比奈さん、よかったら僕達のショーを見に来てくれませんか? 瑞希達と一緒に
まふゆ:……え?
類:飛び切り楽しいショーにするとお約束します。 それから……実は今回のショーは、さっきの僕の話と 少しリンクしている部分があるんです
類:だから朝比奈さんは他の人より、 少し親しみやすいかもしれません
まふゆ:……でも……
えむ:朝比奈センパイ! あたしも、センパイが来てくれたら嬉しいです!
えむ:センパイが笑顔になれるように、 いっぱいいっぱいがんばりますっ!
まふゆ:…………
まふゆ:……時間があえば
えむ:やったー! ありがとうございます、センパイ!
類:フフ、無茶を言ってしまってすみません。 ……よろしければ、ぜひ
類:それじゃあ、僕達は失礼します。 手当て、本当にありがとうございました
まふゆ:……ショー、か
類:本当にやりたいことを自覚するのは 思った以上に難しい
類:だから……もしかしたら朝比奈さんも そうなのではないかと思ったんです
まふゆ:……やりたいこと……
通行人:なあ、ステージエリア行こうぜ! アマチュアだけど、すごい実力派なんだよ!
まふゆ:(あ…………もうこんな時間なんだ)
まふゆ:(ボランティアは、5時までだから——)
まふゆ:…………
ステージ裏
司:類ー! えむー! どこだー! 返事をしろー!
寧々:どうしよう……もしかして何かあったんじゃ……
彰人:——司センパイ! 草薙!
司:彰人! 類とえむを見なかったか! 装置の調整をすると言っていたんだが、見当たらなくてな……
彰人:それなんすけど、実は——
司:なに~! 類がケガだと~!?
寧々:救護テントにいるって……。 わたし達も行ったほうがいいんじゃ……!
司:うむ、こうしてはおれん! さっそく類のところに——
彰人:落ち着いてください
彰人:神代センパイは『すぐに戻るから心配しないでほしい』 って言ってました
彰人:それに、今日の役なら問題なくこなせると
司:だが、あいつは無理をして、そう言っている可能性も……!
彰人:だとしても神代センパイは、いいパフォーマンスするために 最後まで調整してたんすよ
彰人:なら——センパイ達はショーのためにできることをして 待ってたほうがいいんじゃないですか
司:……!
寧々:……たしかに。 わたし達が救護テントに行っても、見てることしかできないしね
寧々:それに、えむも付き添ってくれてるし。 ……今は信じて準備しない?
司:……そうだな。 オレとしたことが……取り乱してしまった
司:よし、寧々! 気を取り直して、ショーの流れの最終確認をするぞ!
寧々:うん
彰人:(……もう大丈夫そうだな)
彰人:それじゃあ、オレは戻りますね。 司センパイ達のショー、期待してますよ
司:うむ! ——あ、その前に彰人!
彰人:なんですか?
司:類を救護テントに連れていってくれたこと、心から礼を言う! ありがとう!
寧々:それから……類のためにも落ちつけって言ってくれたことも。 すごく助かった
彰人:……どうも。ま、別に、大したことはしてねえよ。 じゃあな
ステージエリア
まふゆ:(……みんな、どこだろう)
まふゆ:(瑞希に話しかけられた時はあの辺りにいたけど……)
ななみん:さあ、ついに一般枠ラストです! 最後を飾るのは、ストリートの新鋭、Vivid BAD SQUAD!
まふゆ:あ……
???:おーい、まふゆー!
まふゆ:あ……
まふゆ:……ごめん、遅くなった
奏:大丈夫だよ。 ボランティア、お疲れさま
瑞希:今からちょうど弟くん達のステージだよ! 間にあってよかったね!
絵名:そういえば、夏祭りの時は相棒くんと歌ってたけど、 4人で歌うとどんな感じなんだろうね
まふゆ:…………
こはね:いよいよだね。 お客さんも盛り上がってるみたい
杏:この調子で——ううん、これ以上に盛り上げていきたいよね!
冬弥:ああ
彰人:…………
冬弥:彰人? 大丈夫か?
彰人:あ——おう。 調子のほうはバッチリだ
彰人:(だが——)
彰人:(あいつ、まだ戻ってきてねえみたいだな。 そろそろ危ねえ時間だが……)
えむの声:お~い! みんな~!
寧々:あ……。 類! えむ!
えむ:遅くなっちゃってごめんね~!
司:もうケガは大丈夫なのか!?
類:ああ、東雲くんから聞いたんだね。 でも手当ても終わったし、今は大丈夫だよ
類:ただ——あまり激しい動きはできないと思う。 要所要所の動きを、少し変えさせてもらってもいいかな?
寧々:それなら、こっちでも最低限の動きにできるように、 ちょっと考えておいたよ
彰人:(……間に合ったみたいだな)
類:——東雲くん!
類:さっきはありがとう。 君達のパフォーマンス、楽しみにしているよ
杏:え?
冬弥:彰人、神代先輩と何かあったのか?
彰人:あー……
彰人:……まあ、ちょっとな
彰人:——センパイ! オレ達のほうがわかせるんで、覚悟しておいてくださいよ!
類:フフ……言うねえ
彰人:よし。 それじゃあお前ら! 全力でぶちかますぞ!
杏・こはね・冬弥:『うん!』 『ああ!』
杏:やっほー! Vivid BAD SQUADだよー! みんな、盛り上がってるー!?
彰人:全力でいくから、ついてこいよ!
杏・こはね:『♪——! ♪——! ♪————!!』
志歩:こはねがチームで歌ってるの初めて見たけど、すごいな……。 声の力強さが他とは全然違う……
咲希:とーやくんも、全然知らない人みたい!
みのり:か……かっこいい~!! こはねちゃ~ん!! 杏ちゃ~ん!!
愛莉:すごい、ビリビリするくらいの迫力だわ……! 彰人くんも夏祭りの時よりずっと上手になってる!
瑞希:ひぇ~! すっごい迫力だね~!
奏:すごいな……
まふゆ:…………
彰人:(まだまだ——こんなもんじゃねえぞ!)
彰人:♪————————!!
類:会場が完全に東雲くん達の空気だねえ
類:(これだけのパフォーマンス—— 並大抵の努力でできるものじゃない)
類:……フフ。 東雲くん達も相当無茶してきたんだろうね
まふゆ:(……すごい歌声。 耳が痛いくらい)
まふゆ:(でも——)

第 9 话:感謝の言葉

シブヤ・フェスタ ステージ裏
彰人:はぁ……はぁ……
彰人:——あ。センパイ
類:お疲れさま。 トリにふさわしい、素晴らしいステージだったよ
彰人:っす。どうも
彰人:次はセンパイ達の番っすね
類:ああ。 期待してくれたまえ
スタッフ:皆さん! ご準備お願いします!
司:はい! それじゃあ、お前達! 行くぞ!
寧々・えむ・類:『うん!』 『ああ!』
ステージエリア
咲希:いよいよお兄ちゃん達のショーだ! 楽しみだなー!
観客達:フェニランでナイトショーやってる子達なんだって!
観客達:あ、ワンダショ? シブフェスでも見れるなんて嬉しいな~!
類:(フフ、みんな楽しみにしてくれているみたいだ)
類:(それに——)
えむ:あ……! 類くん! 朝比奈センパイいるよ!
類:ああ、そうだね。 来てもらえたようでよかった
類:(……実際のところ、 彼女に届くかどうかはわからないけれど——)
類:——今日も、最高のショーにしよう
ななみん:それでは、ワンダーランズ×ショウタイムの皆さん! よろしくお願いします!
瑞希:どんなショーなんだろうな~? ワクワクするよ!
まふゆ:…………
ナレーター:『——あるところに、ひとりの悪魔がいました』
ナレーター:『悪魔の役目はただひとつ。 人間を、堕落させること』
ナレーター:『なのでその悪魔も、何人もの人間を堕落させてきました。 しかし——』
悪魔:『フッフッフ! ついに! ついに1000人の人間を堕落させたぞ!』
悪魔:『これは悪魔界でも例のない快挙! 皆がオレを褒め讃えることだろう!』
悪魔:『……しかし……』
悪魔:『どうも最近はあまりに簡単にいきすぎて、張り合いがないな。 目標の1000人も達成してしまったし……』
悪魔:『何かないものか……もっと楽しいことは……』
小さな悪魔:『たっのしっいたっのしっいお祭りだ~♪』
悪魔:『んん? なんだ、あそこにずいぶん小さくて弱そうな悪魔がいるが……』
悪魔:『弱そうなわりには機嫌がよさそうだ。 ——おい!』
小さな悪魔:『ん? なんですか~?』
悪魔:『お前、何をやっているんだ? ずいぶん楽しそうにしているが……』
小さな悪魔:『ああ! 僕は今からお祭りを作ろうと思ってるんです!』
悪魔:『お祭り……? ああ、なるほどな。 悪魔を讃える祭りをおこなって、人間を堕落させるのか』
小さな悪魔:『え~? 違いますよ~?』
小さな悪魔:『僕はただ、堕落とかそういうのはぜんっぜん関係ない、 みんな元気いっぱいハッピーになれるような お祭りを作りたいんです!』
悪魔:『はぁ?』
悪魔:『悪魔の作る祭りといえば、堕落させるためのものだろう! 享楽的な催しをして、 人に真面目に生きる気力を失くさせるという……』
小さな悪魔:『でもそれ、飽きちゃったんです。 最後はみんなグデグデになっちゃうし……』
小さな悪魔:『きっとハッピーなお祭りが作れたら、とっても楽しいですよ! そうだ、よかったら一緒に作りませんか!?』
小さな悪魔:『というか、作りましょうっ! みんなハッピーになる、悪魔のお祭りを! ……レッツゴーです!』
悪魔:『お、おいおい! 強引すぎるだろう~!』
咲希:ふふっ、今のいつものお兄ちゃんとえむちゃんみたい!
志歩:悪魔って設定でも、 あのふたりがやると全然怖くなくておもしろいな
小さな悪魔:『先輩! 新入り連れてきましたよーっ! これでお祭り作りがはかどります!』
先輩悪魔:『——へえ、わたし達みたいな変わり者がまだいたんだね。 一体どんな——って』
先輩悪魔:『ちょっと! こいつ、最近1000人を堕落させた悪魔のエースじゃない! なんでこんなところに……!』
悪魔:『いや、こいつに急に連れてこられたんだが……』
先輩悪魔:『ダメじゃない! 人間の堕落に関係ないハッピーなお祭りをやるなんて知れたら、 偉い悪魔に目をつけられるっていうのに……!』
小さな悪魔:『えー? でもこの悪魔さんもヒマそうだったから、 一緒にやったら楽しいかなって思ったんですけど』
先輩悪魔:『あ~! そういうことじゃないの! もしバレたら地獄の牢屋に閉じこめられて、 地上に行けなくなるって言ったじゃない!』
小さな悪魔:『そうでしたっけ?』
先輩悪魔:『そーうーなーのー! いい加減覚えなさい!』
悪魔:『なんて馬鹿な連中なんだ……。 しかし……ふむ……』
悪魔:『ここにある飾りや衣装は、 お前達が作ったのか?』
先輩悪魔:『あ……うん。 わたしが昔ついて回ってた人間が、 お祭りの時の衣装とか作る人で……』
先輩悪魔:『その人間は、わたしが堕落させる前に 病気で死んじゃったんだけど……。 残った衣装はすごく素敵だったから。真似して作ってみたの』
先輩悪魔:『そしたら、段々楽しくなってきて』
悪魔:『なるほどな……。 まぁ、暇つぶしにはよさそうだ。手伝ってやろう』
先輩悪魔:『え!? 本当!?』
悪魔:『ああ! 力を貸そうじゃないか! ……まぁ、飽きたらこいつらのことを上に告げ口して、 褒美をもらえばいいしなぁ』
みのり:わ、悪い……! 酷い悪魔だよ~!
雫:いつもの司くんみたいな悪魔さんに見えたけど…… 悪そうな演技が上手ねえ
悪魔:『さて、それではまず何をすればいい? オレにかかれば大抵のことはすぐ終わるぞ?』
先輩悪魔:『じゃあ、お祭りのメニューの考案はどう?』
悪魔:『ああ、任せろ! そうだ、せっかくだから人間を酔わせて……』
先輩悪魔:『人間を魅了する薬は入れないようにね』
小さな悪魔:『あっ、花火を打ち上げる装置を作る仕事もありますよ!』
悪魔:『おお、面白そうだな! その程度ならオレの魔法で……』
小さな悪魔:『ただ、危ないから魔法は禁止ですよ~!』
悪魔:『ぐぐ……これはなかなか面倒だぞ……!!』
こはね:ふふっ。いつも思うけど、司さんって えむちゃん達に振り回されてる時の演技が すごく上手だなぁ……!
彰人:そこは同意だな。 つーか、あれって素じゃねえのか?
まふゆ:…………
瑞希:ふむふむ。万能で悪い悪魔が、 変わり者の悪魔と一緒にお祭りを作っていくうちに、 お祭りの楽しさに気づいていくって話なんだね
瑞希:ってことはそろそろ——
まふゆ:(あ、あの人……)
にこやかな悪魔:『——やあ。最近ついに1000人を堕落させたんだって? おめでとう!』
悪魔:『あ……ああ。 何、オレの手にかかれば大したことではない』
にこやかな悪魔:『そうだろうとも。 しかし……どうも最近はあまり地上に行っていないようだね。 何をしているんだい?』
悪魔:『それは……まあ、休養を取っているんだ。 最近は少々働きすぎだったからな!』
にこやかな悪魔:『ふうん? なるほどねぇ』
まふゆ:…………
まふゆ:(……神代さん、自然に歩けてる)
まふゆ:(足は、大丈夫そう……)
悪魔:『やめろっ! 離せー!』
小さな悪魔:『こ、ここから出してください!!』
先輩悪魔:『どうしてわたし達がお祭りを作ってることがバレたの!? 秘密にしてたのに——』
にこやかな悪魔:『——やっぱり、こんなことだと思ったよ。 たまにいるんだ、君達のような悪魔が』
にこやかな悪魔:『悪魔のくせに、人間を喜ばせようなんて考える 愚かな悪魔がね』
悪魔:『……っ』
悪魔:『ならば問うが……お前は人間を堕落させて楽しいのか? それがお前のやりたいことなのか?』
まふゆ:(……やりたいこと……)
にこやかな悪魔:『楽しい楽しくないの問題じゃないよ。 僕達にはそういう役目があるんだ』
悪魔:『——そんなものが優先されるのはおかしいだろう! 役目など関係ない! オレは、オレがやりたいから——』
にこやかな悪魔:『……好きに叫んでいるといいよ。 処罰はもうすぐ下る』
悪魔:『クソ……! 一体どうすれば……』
小さな悪魔:『お祭りの道具も全部ここに持ってこさせられたってことは、 これも全部、捨てられちゃうのかなぁ……』
悪魔:『……お祭りの道具……そうだ!』
先輩悪魔:『何? どうしたの?』
悪魔:『——これだ! オレが作った、花火を打ち上げる装置……!』
悪魔:『これで地上に脱出する!』
小さな悪魔・先輩悪魔:『え~っ!?』
先輩悪魔:『さすがに無茶でしょ! たしかにここは天井のない、奈落の底の牢獄だけど……』
小さな悪魔:『地上に届かずに落ちてきたら、 死んじゃいますよ~!!』
悪魔:『……それでもいい。 オレは——やりたいんだ』
悪魔:『お前達と一緒に、この祭りを!』
悪魔:『まずはオレが行く! お前達は、もしオレが成功したら——あとに続いてくれ!』
悪魔:『行くぞ! ——1、2の——3!』
穂波:つ、司さん、飛んでる……!!
雫:ステージの照明よりも高いところまで……!
彰人:……マジかよ。すげえな
まふゆ:(……飛んだ……)
まふゆ:……すごい
奏:え?
悪魔:『……やった! 地上についた! ついたぞ! お前達も上がってくるんだ!』
小さな悪魔・先輩悪魔:『——うんっ!』
にこやかな悪魔:『……ん? なんだ? 牢屋に誰も——なぜ……!?』
悪魔:『おおい! オレ達はここだ!』
にこやかな悪魔:『な……! どうやって地上に……!』
悪魔:『さあな! ともかくオレ達は、これから祭りをやる!』
悪魔:『お前も——もし一緒にやりたければ、来るといい! いつでも待っているぞ!』
小さな悪魔:『待ってるよ~!!』
にこやかな悪魔:『……! まさか、あんなもので逃げられるとは——』
にこやかな悪魔:『しかし……』
にこやかな悪魔:『……やりたいこと……か』
にこやかな悪魔:『……探してみるのも、悪くないかもしれないね』
悪魔:『——というわけで、 ようやくオレ達は地上についた』
悪魔:『さぁ今こそ——祭りのスタートだ!!』
ナレーター:『——こうして悪魔達の祭りは3日3晩続き、 たくさんの人間を笑顔にしたのでした。 めでたし、めでたし』
一歌:司さん達のショー、すごくおもしろかったね!
冬弥:シブヤ・フェスタという場にも、 協賛枠のトップにもふさわしい内容だったな
愛莉:衣装もすごくよかったわ! 雰囲気もよかったし、たまにはああいう小悪魔的なのもいいわね
まふゆ:…………
奏:おもしろかったね、まふゆ。 一緒に見られてよかったな
まふゆ:あ……
まふゆ:……そう、だね
瑞希:うんうん! 弟くん達の歌も類達のショーもすごかったよねー! ……あ
類:こんばんは。 僕達のステージはどうだったかな
瑞希:サイコーだったよ! 司先輩が空を飛ぶシーン、感動しちゃった! 類、よくあんなに高く飛ばす機械作ったよねー
絵名:えっ!? あれ自作なの!?
寧々:あ……はい。 類はそういうの全部自分で作ってるんです
司:うちの演出家は天才だからな!
寧々:飛ぶまでソワソワしてたくせに
司:そ、そういうことをここで言う必要はないだろう!
類:フフ。話も盛り上がっているところですが——
類:改めてお礼を言わせてください。 今日ショーができたのは朝比奈さんのおかげです。 ありがとうございます
まふゆ:え……?
類:あなたが手当てをしてくれたおかげで、 思い切りショーをやることができた
類:僕にとってショーはとても大切なものです。 だから、助けてくれたあなたには感謝してもしきれない
えむ:センパイ、本当にありがとうございましたっ!
司:ああ——お礼が後回しになってしまいすみません。 感謝します! おかげで最高のショーができました
寧々:ありがとうございました。 よかったら、またワンダーステージに 見に来てもらえたら嬉しいです
類:——本当にありがとうございました
まふゆ:あ……
まふゆ:——いえ。 力になれたなら、何よりです。 それから——
まふゆ:ショー、よかったです
瑞希:ん? なんだかいつの間にか、仲良くなってるようなー?
奏:……そうみたいだね
絵名:あ。見たいステージも終わったし、 そろそろ屋台とか展示見に戻らない? まふゆもあんまり時間ないんでしょ?
まふゆ:あ……うん
瑞希:よーし、それじゃレッツゴー!

第 10 话:夕闇に響く音色

シブヤ・フェスタ ステージエリア
瑞希:よーし、さっそくいろいろ見て回ろっか! どこ行こっかな?
絵名:私は絵画展も見れたから、どこでも大丈夫だけど……
奏:まふゆはずっとステージの近くにいたみたいだし、 屋台のほうに行ってみたらいいんじゃないかな
まふゆ:それでいいよ
瑞希:オッケー!
奏:あ……人が少し減ってきた。 これなら歩きやすいな
絵名:昼はうじゃうじゃいたもんね。 ゆっくり回れそうでよかったな
まふゆ:…………
瑞希:……まふゆ、大丈夫? 疲れてる?
まふゆ:……そういうわけじゃない。 今日のことを少し思い出してただけ
奏:今日のこと?
まふゆ:そう。 日野森さん達のステージを見て、星乃さん達と会って、 神代さんの手当てをして……
まふゆ:(それから——)
類:——ない、ということも、ないんじゃないですか?
類:なんとなくで恐縮ですが、 朝比奈さんには、やりたいことがあるのではないかと思って
まふゆ:(私の、やりたいこと……)
まふゆ:(私には……そんなもの——)
奏:……まふゆ?
女の子:う……ぐすっ……
瑞希:あれ? あの子、どうしたのかな。 迷子?
絵名:っぽいね。 さすがに放っておけないし、ちょっと声かけてみようか
絵名:——ねえ、大丈夫? もしかしてお母さん達とはぐれちゃった?
女の子:うっ……うわーん!
絵名:わ! び、びっくりした……。 私、なんか変なことしちゃった?
奏:あ……。 絵名。その子、膝擦りむいてる。痛くて泣いてるのかも
絵名:え? あ、本当だ。……お母さんもいないし不安だよね
瑞希:じゃあ、まず救護テントに 連れていってあげたほうがいいのかも?
絵名:でも座りこんじゃってるし、歩けるかな? 担ぐのはさすがに難しそうだし……
まふゆ:…………
瑞希:そうだ! 救護テントから誰か連れてくるのがいいかも! えーっと場所は……
女の子:うっ、うっ……お母さん……いたいよ……
まふゆ:(私は……)
類:僕にとってショーはとても大切なものです。 だから、助けてくれたあなたには感謝してもしきれない
えむ:センパイ、本当にありがとうございましたっ!
まふゆ:(私は——)
奏:……まふゆ?
まふゆ:——大丈夫?
まふゆ:……立てる?
女の子:い、いたいの……。 花壇のところで、ころんじゃって……
まふゆ:そう……痛かったね
まふゆ:(傷口は……そこまで酷くない)
まふゆ:……誰か、水を持ってない?
瑞希:あ……うん。 さっき買った水があるよ、まだ開けてないやつ!
まふゆ:貸してもらっていい? あとで返すから
瑞希:うん! っていうかそれくらいあげるよ!
まふゆ:ありがとう
まふゆ:(——まずは水で傷を洗い流す)
まふゆ:(それからハンカチで軽く拭いて……絆創膏)
まふゆ:(あとは——)
まふゆ:……痛いの痛いの、飛んでけ
絵名:え……
まふゆ:——まだ痛い?
女の子:う、ぐす……あれ……? 痛くない……
まふゆ:……よかった
女の子:お姉ちゃん、すごいね! ありがとう!
まふゆ:あ……
まふゆ:——うん。どういたしまして
女の子:——あ! お母さんだ!
瑞希:え? あ……女の人が走って来る!
母親:ここにいたのね! よかった……! あら、もしかして怪我したの!?
女の子:うん……。 でもね、このお姉ちゃんが手当てしてくれたの!
母親:そうだったのね……。 すみません、よくしてくださって……助かりました……!
まふゆ:……いえ、大したことは
女の子:お姉ちゃんありがとう! バイバーイ!
まふゆ:……バイバイ
まふゆ:……?
まふゆ:……どうしたの、みんな
瑞希:ふふっ、なんか嬉しくなっちゃってさ!
まふゆ:嬉しく……どうして?
絵名:何? あんた、また自覚してないわけ?
奏:あの子にありがとうって言われて、 まふゆ……少しだけ笑ってたんだよ
まふゆ:え……
まふゆ:(笑ってた……。 どうして……?)
まふゆ:(……そういえば……)
まふゆ:(さっき、神代さんや鳳さんに 『ありがとう』って言われた時も——)
まふゆ:(少し……胸がすっと軽くなった)
まふゆ:(……なんでなんだろう)
絵名:あの子も無事にお母さんを見つけられたことだし、 私達もお祭りまわろっか
瑞希:そうだね! まふゆもあんまり時間ないし。……あれ?
ミク:『——みんなー! シブヤ・フェスタ、楽しんでるかな?』
まふゆ:あ……
瑞希:おっ、スクランブル交差点のほうでミクが映ってるよ! ……ま、うちのミクとは全然違うけどね~
ミク:『せっかくだから、今日はみんなで、 最後まで思いっきり楽しんじゃおうね!』
ミク:『わたしも、今日はみんなと一緒に楽しむために、 たーっくさん歌っちゃうよ!』
奏:……たしかに違うけど、 でも、ちょっと似てる気もする
絵名:え?
奏:ああやって、歌で誰かに寄り添ってくれるところが 似てるなって
まふゆ:…………
瑞希:たーしかに! じゃあ、ミクもああ言ってくれてることだし、 最後まで楽しんじゃおうね!
絵名:だね。まふゆはなんかやっておきたいことないわけ? 私達は行きたいところだいたい回ったから、 どこでもいいんだけど
まふゆ:(やりたいこと……)
まふゆ:(私の、やりたいことは——)
まふゆ:…………あれ?
瑞希:ん? まふゆ、どうしたの?
まふゆ:……ピアノの音が聴こえる
奏:本当だ。 どこからだろう
絵名:あ、あれじゃない? あそこにあるストリートピアノ。 ほら、ちょうど今弾いてるし
まふゆ:ピアノ……
まふゆ:…………私、音楽は、もうやめるよ
まふゆの母:じゃあ、このシンセはもういらないわね。 お母さんが預かっておくわ
まふゆ:(……あれから、楽器らしい楽器に触れてなかったな)
まふゆ:(あのシンセサイザー、どうなったんだろう。 やっぱり、もう捨てられたのかな)
まふゆ:…………
奏:……まふゆ。 ピアノ、弾きたい?
まふゆ:え……
奏:すごく真剣に見てるから、やりたいのかなって思って
まふゆ:……やりたい……
まふゆ:……うん
まふゆ:——少し、弾いてみたい
絵名:ふふ、いいんじゃない?
瑞希:うんうん! まふゆのピアノ、ボクも聴いてみたいし!
瑞希:お、ちょうど席もあいたみたいだよ! いってらっしゃい!
まふゆ:……うん
まふゆ:…………
絵名:あれ、この曲……。奏の……?
瑞希:しかも、まふゆが初めて笑った時の曲だね
奏:まふゆ……
奏:……ねぇ、まふゆ。わたしも一緒に弾いていいかな
まふゆ:……奏が、やりたいなら
奏:ありがとう。 それじゃあ、隣座るね
まふゆ:うん
咲希:は~! シブフェス楽しかったね!
類:……ん? このピアノの音は——
一歌:あ……奏さんと朝比奈先輩?
穂波:ストリートピアノを弾いてるみたい。 ……ふふ、綺麗な音だね
司:うむ! 夕暮れ時にふさわしい、憂いを帯びながらも美しい音色だな
えむ:朝比奈センパイ、すごーい……!
えむ:……ねえねえ、類くん
類:ん? なんだいえむくん
えむ:センパイもいつか、 いっちばんやりたいこと、見つけられるといいね
類:——ああ、そうだね
奏:……まふゆ
まふゆ:何?
奏:今、楽しい?
まふゆ:…………。 ……わからない、けど
まふゆ:もう少しだけ、こうしていたい
奏:……そっか
奏:それじゃあ、もう少しだけ弾いていこうか
まふゆ:うん