活动剧情
カーテンコールに惜別を
活动ID:74
第 1 话:宣伝公演終了!?
類の部屋
類:——うん。 これで完成だね
類:(フフ。この小型照明が使えるようになれば、 どこでもプロジェクションマッピングができるようになる。 今以上に演出の幅が広がりそうだ)
類:(明日みんなに見せたら、 一体どんな顔をするだろうね)
類:(まったく、今すぐにでも朝日が昇ってほしいよ。 そうしたらみんなにこれを見せられるのに)
類:……フフ
類:(本当に、みんなのおかげで、 いろいろなショーに挑戦することができるな)
類:これからも、こうやってみんなでショーをやれたら……。 …………
寧々:——た、たしかに、みんなが夢を追いかけたら、 いつか離れ離れになるかもしれない……
寧々:わたしも、その時のことを考えるとすごく寂しくて…… 胸がぎゅっとなるよ。でも……
寧々:きっとその時は、みんなが……。 みんなが、夢に向かって一歩進み始めた時なんだと、思う……!
えむ:寧々ちゃん……
司:…………
寧々:だからわたしは、その時がくるまで、 今みんなでできるショーを大切にしたい……!
寧々:みんなと、一緒に……っ!
類:……その時がくるまで、か
類:そうだね。 いつかその時は来る
類:なら僕も、僕にできることを、 全力でやっていこうじゃないか
類:……さて、目の下にクマを作ると怒られてしまうだろうし、 そろそろ寝るとしようか
翌日
ワンダーステージ
司:うーむ……。 そろそろ……いや、まだか……しかしそろそろ……
えむ:こっちのお掃除終わったよ~!
寧々:お疲れ、ふたりとも
えむ:……あれ? なんで司くん、あっちでウロウロソワソワしてるの?
類:本当だね。さっきまでは落ち着いていたのに……
類:……ああ。もうすぐえむくんのお兄さん達が 来るかもしれないからじゃないかな
寧々:あ、そっか。 宣伝公演の場所教えてくれるのって休みの日の朝が多いからね
えむ:たしかに、次どんなところでショーやるのか楽しみだもんね♪
司:う~む、来るとすればもうすぐだが……。 しかしいつもならばもう来ている時間だし……
慶介:——おはよう。 今日も元気そうだな
司:おお! 待ちわびたぞ!
晶介:うおっ! なんだ? 急に走ってきて……
司:次の宣伝公演について、早く聞きたいと思っていたのだ! シブヤ・フェスタでの公演も大盛況だったからな。 次もぜひ盛り上げていきたい!
晶介:ああ、そういうことか。 んー……
えむ:ほえ? 晶介お兄ちゃんどうしたの?
晶介:いや、その……。 ……なぁ兄貴、先に言っておくべきなんじゃないか?
慶介:そうだな。 説明の順序としては、そのほうがよさそうだ
類:一体、どうされたんですか?
慶介:実は——
慶介:——宣伝公演は、次回で終了となることが決定した
司:…………………………………………………………………………な
司:なにぃ~~~~~っ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
司:ど、どういうことだ!? なぜ急にそんなことになったんだ!?
えむ:そうだよお兄ちゃんっ! ショーを見てくれた人みんな、すーっごく喜んでくれたのに! なんでなんで!?!?
類:詳細をうかがってもいいでしょうか?
慶介:ああ、もちろんだ
慶介:まず—— この公演終了は、ネガティブな意味のものではない
慶介:そもそも宣伝公演を行っていたのは、 うちに来ることが少ない地方の人達に来場してもらうためだった
寧々:立地がいいからこの辺りのお客さんは よく来てくれるけど地方の人はあんまり……って 前に言ってたもんね
晶介:そういうことだ。 だから地方からの来場者数を増やすことを 目標としていたんだが……
晶介:想定していたよりも早く、目標を達成できた。 ま、公演をきっかけに地方客がグーンと増えたってわけだ
えむ:じゃあ……あたし達のショーで、いっぱい宣伝できたってこと!? やったー!
司:なるほど、目標達成ゆえの終了ということだな!
司:……だが……
司:効果があったのなら 続けたほうがいいのではないか?
晶介:まあな。だが、お前達が思っている以上に、 フェニックスワンダーランドに来る客も お前達のショーを見たがってるからな
類:……なるほど、そういうことですか
類:僕達のショーを見ようと来場してくれる人達が増えているのに、 その僕達が宣伝公演で出払っていては、 お客さん達をがっかりさせてしまう……ということですね
慶介:ああ、そのとおりだ。 君達には、もっとこのワンダーステージでショーをしてほしい
慶介:そのほうが、来場するお客さんにとっても、我々にとっても プラスになるというわけだ
寧々:そっか……。 お客さんが見たいって思ってくれてるなら、まぁ……
司:そうだな。それはありがたいことだ。 しかし——
司:宣伝公演で得られた学びもあっただけに……終了は残念だ
えむ:うん……。 寧々ちゃんも類くんも司くんもニコニコできたし、 あたしもすっごく勉強できたから……
えむ:でもでも、地方のお客さんもいっぱい来てくれるようになって、 あたし嬉しいな!
寧々:ふふ、そうだね
類:ああ。毎回工夫を凝らして 宣伝公演を行った甲斐があったというものだよ
司:……そうだな! ここからは、ワンダーステージに来てくれるお客さんのために、 よりよいショーを作っていこう
司:そのためにもまずは、 最後の宣伝公演を、華々しく終わらせようではないか!!
えむ:お~っ!! みんな、がんばろうね!!
慶介:それで、その最後の宣伝公演についてなんだが、 ひとつ提案がある
寧々:提案?
慶介:ああ。 突然の話になってすまないが……
慶介:——『アークランド』のキャストとショーをやってみないか?
えむ:む? アークランドって……
司:あの、『東京アークランド』か!?
寧々:え!? それってまさか、 世界でもトップクラスのショーをやってる、 あのアークランド……!?
慶介:そうだ。世界10か国に展開し、ライリードリームパークと同じく 数多くの映画作品を中心に据えたテーマパークを運営する、 あのアークランドだ
類:……それはとても興味深い提案ですが、 なぜまたそんな話になったんですか?
慶介:少し前に、アークランドのほうから申し入れがあってな。 ショーキャストのレベルアップをはかるために、 キャスト同士の文化交流をしてみないか、と
寧々:文化交流?
晶介:ま、最初はどういう意図があるのか考えたがな。 アークランドはライリードリームパークの最大のライバルだし、 提携したうちに釘を刺しに来たのかと思ったが……
慶介:話を聞いてみたところ、どうやら純粋に、 ショーキャストのレベルアップをはかるために 交流を考えている様子だった
寧々:へぇ……もう十分人気なのにね
司:王者だからと慢心せず、謙虚に学びにいく姿勢でいる…… ということか。さすがだな
慶介:そういったわけでうちからは、実力と人気の高い フェニックスステージとワンダーステージのキャストに 参加してもらいたいと考えている
晶介:アークランドの視察と交流は青龍院達にやってもらって、 お前達はこっちに来る若手メンバーと合同公演をするのが いいんじゃないかと考えているが……どうだ?
類:…………
類:(アークランドは、国内最高峰の舞台がある テーマパークだ)
類:(近年は、若手の実力派俳優を集めて新たなショーユニットを 立ち上げたり、世界的な演出家を招いたり、 新しい挑戦をしているとも聞く)
類:(そこの役者から学べることはとても多いだろうし、 みんなの成長にもつながりそうだ)
類:(それに——僕自身、とても興味がある)
類:僕は、ぜひ一緒にやりたいです。 みんなはどうかな?
えむ:あたしも賛成~! いっぱい人が来てくれたら、 もっとわんだほいなショーになりそうだし!
寧々:……あんまり大人数で来られたら緊張するけど……。 でも勉強になるっていうのは実際そうだし……ま、いいかな
司:——うむ!
司:オレも異論はない! 同じショーを愛する者同士、集まれば学びにもなるからな!
慶介:そうか、よかった。 では先方にもそう伝えておこう
晶介:急にいろいろやることが増えて悪いが…… 最後の宣伝公演、頑張れよ!
えむ:うんっ!
寧々:……でも実際、何人くらいで来るんだろ? いっぱい来たらちょっと怖いけど……
司:世界の歌姫になる人間が何を言っている! ドーンと胸を張れ!
えむ:そうだよ寧々ちゃん! ドドンがドンだよ!
寧々:それ、どんだけ胸張ってるわけ?
類:ああそういえば、 肝心の宣伝公演の場所はどこになるんですか?
慶介:今度オープンする、『近未来博物館』の前だ。 パンフレットも渡しておこう
司:今度オープンするということは、博物館の宣伝にもなるのだな! はりきってやらねば!
えむ:わぁ……! つやつやーってしててかっこいい建物だね~!
慶介:『近未来』をテーマに、世界の最新技術を紹介する博物館らしい。 博物館前の広場を舞台にする予定だ
類:……近未来か
類:フフ、いろいろとイメージが膨らむね
類:どんな形になるにせよ、 今回も共に素晴らしいショーを作り上げていこうじゃないか
第 2 话:玄武 旭
ワンダーランドのセカイ
えむ:とうちゃーく! ミクちゃん達、どこかなー?
寧々:見当たらないってことは 多分カイトさんのテントのほうじゃない?
えむ:じゃあレッツゴーゴーだね! 早く次の公演の話、したいな~♪
司:合同公演をやると知ったら、 『楽しそ~☆ ミクもやりた~い☆』と 飛びつくに違いないだろうな!
類:フフ、そうだね。 …………
寧々:……? 類、どうかした?
類:ああいや、少し考えごとをしていたんだよ
えむ:考えごと?
類:アークランドのキャスト達が、 僕の演出をどこまで受け入れてくれるだろうか、ってね
司:……!
司:類……
類:ああ、心配しないでほしいな。 そこまで深刻に悩んでいるわけじゃないよ
類:結婚式や、ナイトショーや、体育祭のこともあって…… 僕の演出に拒否感を持つ人達がいる一方で、受け入れて くれる人達もいることは十分よくわかったんだ
類:だから大丈夫。 ただ単純に、最後の宣伝公演でどこまでやれるのか—— それが気になっているだけさ
えむ:……きっと大丈夫だよ! 類くんの演出、すっごくすっごく楽しいもん!
司:そうだ!! お前はオレ達自慢の演出家だ!! 胸を張って演出をつけるといい!!
類:フフ。ありがとう、みんな
???:だ~め~だ~よ~!
鳥のぬいぐるみ:ヤダヤダ! ヤルモン!
司:ん? 何やら声がするような……
えむ:あっ! あっちのほうにミクちゃん達がいる! みんな~どうしたの~!
KAITO:——ああ、みんな。来ていたんだね。 それが実は、少し困ったことになってしまって……
寧々:困ったこと?
MEIKO:今ミクと話してる、鳥のぬいぐるみくんがいるでしょ? あの子が『空飛ぶ汽車でショーをしたい』って言い出したの
類:ああ、あの汽車で。 僕達も一度、カイトさん達とやったことがあったな
KAITO:実はその話がきっかけで、 あの子も汽車でショーをやりたいって言い出したんだけど……
KAITO:汽車の上を飛んだり跳ねたりする、 アクロバティックなショーがいいらしいんだ
寧々:え? さすがにそれはみんなでやれなくない? 危ないし……
類:……そうだね。 僕も以前、そういうショーができないか 考えたことがあるけれど……
類:調べたところ汽車をコントロールすることはできないようだったし 気まぐれに飛ぶこともあるから、 さすがにリスクが大きいと思って諦めたんだ
MEIKO:私達もワイヤーをつけたり、いろいろ方法を考えたんだけど こんがらがったりしたら大変なことになりそうで……
MEIKO:だから、このショーはやっぱりやめましょうって言ったの。 でも——
レン:でも、鳥さんみたいに飛べる子以外できないんだよ? それに飛べる子も、あんなに高いところでやるのは怖いって 言ってるし……
鳥のぬいぐるみ:ボクはデキルモン!
鳥のぬいぐるみ:ミンナがデキナクテモ、ヒトリでヤルモン!
ミク:ええ~!? あっ、待ってー!
類:……やりたいショーがあるけれど、 一緒にやってくれる人がいない……か
類:なんだか、昔の僕のようだね。 できれば力になってあげたいけれど……
KAITO:僕達もそう思うんだ。 だから、なんとか代わりの案で納得してほしいんだけどね
KAITO:あ……僕達の話ばかりしてごめんね。 今日はこっちで練習かい?
司:ああ、いや。 次のショーについていろいろと決まったことがあるから、 報告をしようと思ってな
ルカ:あら~、なにかしら~?
司:実は今度、世界的にも有名なテーマパーク、 アークランドのキャストと一緒に 合同公演をすることになったんだ
MEIKO:あら! すっごく楽しそうじゃない! 何をやるかは決めたの?
類:まだだよ。あさってあちらのキャスト陣が合流するので、 その際に意見を交換しあって決めようと思うんだ
KAITO:それはとてもいい経験になりそうだね。 頑張ってね、みんな!
類:ああ。ありがとう
えむ:……あ! ミクちゃん帰ってきたよ!
ミク:はぁ~……。 鳥のぬいぐるみさん、飛んでっちゃったよ~……
ミク:ん~、どうすれば一緒に楽しくショーできるんだろう……。 ……あれ?
ミク:みんな、来てたんだね……!
寧々:話、聞いたよ。 ……大変そうだけど、大丈夫?
ミク:うん……ん~
ミク:ミク、どうしたらいいのかわかんないんだ……。 ぬいぐるみさん、プンプンして行っちゃったし……はぁ~
えむ:ミクちゃん……
ミク:——でも、はぁ~ってしてても、楽しいショーはできないよね!
ミク:ぬいぐるみさんも楽しいショーができるように、 ミク、もっとがんばってみる……!
KAITO:ふふ、そうだね。 いいショーがやれるように、一緒に頑張ろう
類:もし僕達に何か手伝えそうなことがあったら、 いつでも言ってほしいな
ミク:うん! ありがとうっ!
ワンダーステージ
司:……ふぅ。 報告できたのはよかったが、 あちらのほうは、珍しく立て込んでいたな
類:そうだね……
類:ショーには多くの人間が関わるし、 それぞれ真剣になる程こだわりも生まれて、 どうしても衝突が起こってしまうからね
寧々:たしかにね。 ……わたし達のほうも頑張らないと
えむ:あたし達も?
寧々:ほら、演出のこととか抜きにしても、 新しい人とやるってなると最初はギクシャクしそうだし……
えむ:大丈夫だよっ! いーっぱい仲良くして……あ! 一緒にごはんとかおやつ食べたら仲良くなれるかも!
寧々:ふふっ、何それ。 同じ釜の飯を食う、ってやつ?
類:案外悪くないアイディアかもしれないよ。 機会があったら、やってみようじゃないか
えむ:やった~!!
司:うむ! 心を通わせて、共に良いショーを作ろうではないか!
2日後
司:……うーむ……! そろそろ……いや、しかしそろそろ……!
寧々:なんかこの光景、この前も見た気がするんだけど……
類:おととい見たばかりだねえ
えむ:まだかなまだかな~♪ あっ、やっぱり上からぴょーんってお迎えしよっかな!?
寧々:インパクトはあるけど、 向こうがびっくりするからまた今度ね
えむ:は~い! また今度やろっと!
類:フフ。 ——さて、そろそろ約束の時間だけれど……
慶介の声:では、あとはよろしく頼みます
???:——はい! よろしくお願いします!
司:む! あれは——もしかして!?
類:人数は……7人くらいかな
寧々:あれ? 先頭にいる人、なんか見覚えが……
寧々:あ! あれって——玄武旭!?
司:玄武旭……? あーっ! あの玄武旭か!
えむ:え? どのどの!? どのゲンさん!?
寧々:玄武ね、玄武
類:玄武旭——最近とても注目されている若手俳優だね。 以前からアークランドで舞台を中心に活動してるけれど、 最近はドラマや映画にも出演しているみたいだよ
類:特に演技力の評価が高くてね。 僕としても、実際に演技を見るのが楽しみだよ
類:あとは——“THE CENTER THEATRE”に 最初に呼ばれたキャストとしても有名かな
えむ:ざ・せんたーしあたー?
寧々:えーっと……アークランドの中にあるステージで、 役者の中でも、若くて実力がある人じゃないと入れない場所なの
えむ:へぇ~! そうなんだ!
類:近年、アークランドは舞台に力を入れていてね。 新進気鋭の役者や演出家を集めて、彼らが活躍できるように 環境を整えているんだよ
司:オレも何度かテレビで見たことはあったが……。 まさか、あの玄武旭が来るとは……
旭:——あ
司:ぬ……っ!?
司:(……な、なんだこの間は! どういう間なんだ!?)
司:(いや! スターたるものこういう時ほど落ち着かねば! 堂々と挨拶を——)
旭:ほ——
司:ほ?
旭:本物のワンダショだ~!!!!!!!!!!
司:……は?
旭:みんな~! 本物のワンダショだ! マイルスが……マイルスがここにいる……!!
司:マイルス!? あ、ああナイトショーの……
旭:あの、握手してもらってもいいですか!?
司:……も……もちろんですとも!?!?
アークランドのキャストA:ちょ、旭落ち着けって!
旭:これが落ち着いていられるか! あのナイトショーを作ったワンダショの皆さんだぞ!?
アークランドのキャストB:あはは……やっぱり旭くんの悪いクセが出ちゃったか……
寧々:な……なんか、思ってた感じと違うっていうか……
えむ:とーっても元気なお兄さんだね!
旭:はっ! 自己紹介が遅れてしまいすみません!
旭:俺の名前は、玄武旭です。 この度は皆さんと一緒にショーを作る機会をもらえて、 とても嬉しいです!
旭:俺達は東京アークランドの THE CENTER THEATREから来ました。 今日からよろしくお願いします!
司:はっ……! こちらこそよろしくお願いします!
司:オレ達は、ワンダーランズ×ショウタイム! そしてオレは、座長の天馬司です!
類:フフ。 テレビで見るイメージとはだいぶ違うけれど——
類:なかなか面白い人のようだね
寧々:く……草薙寧々です。 小さい頃は児童劇団に入っていて、今は縁あって、 ワンダーステージでやらせてもらっています
寧々:その……歌には自信があります! せ、精一杯頑張るので、よろしくお願いします!
寧々:はぁ……緊張した……
えむ:すっごくわんだほいな自己紹介だったよ、寧々ちゃん! 歌ったら、もっとわんだほいだったんじゃないかな!?
寧々:そ、それはまた今度で……
司:——さて、それぞれ自己紹介も終わったところで、 宣伝公演の内容を決めていこうと思いますが、どうでしょう?
旭:はい、そうしましょう!
えむ:あ! じゃあ、はいはーい!!
えむ:近未来博物館でやるなら、 未来っぽいショーがいいんじゃないかなっ!?
司:み、未来か……。相変わらず漠然としているな
寧々:ほんとにね……。 でも、的外れってわけじゃないんじゃない? 宣伝公演はいつも、その場所に合う内容にしてるし
類:——そうだね。 いつもどおり、舞台となる場所はぜひ活用したい
類:お客さん達も、その場所、その公演だからこそ見られるものを 鑑賞できたほうが、特別な体験になるからね
旭:なるほどなるほど……。 そういう考えかたで決めているのか
類:基本はその、『舞台を活用できる演目』の方向で考えよう。 あとは……
類:(ここにアークランドの実力者が集まっていることも 踏まえたい)
類:(……特に、玄武旭はマルチプレイヤーだ。僕の見る限り、 どんな役にでも合わせて、自分のものにすることができる、 いわゆる——天才型の役者といっていい)
類:(彼の様々な演技を見ることは、司くんにとって、 それに寧々やえむくんにとってもいい勉強になる)
類:(できればこの状況を最大限活用できる演目にしたい)
類:(——世界を夢見る、司くんや寧々のためにもね)
類:(であるなら、場所を活かしつつ、 それぞれ役者としてのレベルアップをはかれるような——)
類:僕は——『ふたりのアンドロイド』を提案するよ
司:『ふたりのアンドロイド』?
旭:——ああ、なるほど。 たしかにそれならあの場所にも合いそうだな
類:玄武さんも『ふたりのアンドロイド』をご存知なんですか?
旭:SFの隠れた名作ですよね。 知人にすすめられて、小6の頃に日本の図書館で読んだんです
類:そうだったんですか、奇遇ですね。 僕も小学生の頃に、植田良夫翻訳のものを読みました
旭:神代さんもですか! 俺も植田翻訳で読んだんですよ。 ……でも今思うと、あの翻訳って結構わかりにくかったですよね
類:フフ、そうですね。 小学生が読むには少し難解だった気がします
旭:やっぱり! 中学の時、原文でも読んでみたんですけど そっちのほうが読みやすかったくらいですし
類:(……もしかしたらと思ったけど、 やはりアークランドの期待の新星ともなると、 古典的名作にも触れているようだね)
類:(しかし……日本の図書館? ということは、それまでは海外に住んでいたのかな)
司:それで、その『ふたりのアンドロイド』というのは どんな話なんだ?
類:ああ、そうだね。 簡単に説明すると——
類:100年あまり先の未来。 ある研究所に、ふたりのアンドロイドがいたんだ
類:彼らはある博士に作られたばかりで、 知識もない、どこまでもまっさらな状態だった
類:しかしある日そこに人間達がやってくる。 A国とB国の兵隊だ
類:彼らはアンドロイドを軍事利用するため、 それぞれアンドロイドを盗んで持ち帰ってしまうんだ
類:A国に連れていかれたアンドロイドのアルフレッドは、 偶然の事故で軍の手を逃れ、ある善良な開拓民の家に転がり込み、 そこで人について学んでいく
類:一方、B国に連れていかれたアンドロイドのバートレットは、 兵士として徹底的に訓練され、戦うための道具となっていく
えむ:ええ~! かわいそうだよ~!
アークランドのキャストA:でも、なんだかおもしろそうな展開だな
類:そして——ラストシーン、 彼らは戦火にさらされた開拓地で出会うことになる
類:かたや人の愛情に包まれて育ったアンドロイド、 かたや人の残忍さに晒されて育ったアンドロイド。 同じ出自でありながら、まったく違う経験をしてきた彼らは——
司:ど、どうなるんだ!?
類:彼らがどうなるのかは——フフ、 台本を読んでのお楽しみにしようか
司:……な、何~!?
寧々:そこまで話してオチ言わないわけ!?
アークランドのキャストB:私も気になっちゃうんだけどー!
旭:あはは! なかなかもったいぶるなぁ。 でもたしかに、 せっかくなら自分の目で確かめてもらいたいもんな
類:ええ、そういうことです。 だから玄武さんも、話さないでくださいね
旭:もちろん! ……ああ、そうだ
旭:俺のことは旭で大丈夫だよ。 ——よければ、俺達も君達のことを名前で呼んでもいいかな?
類:ええ、もちろん。旭さん
司:——よし! では演目も決まったところで、 配役を決めていこうではないか!
類:ああ、そうだね。 ……でも主演については、もう考えてあるんだ
旭:そうなのか?
類:ええ
類:——このふたりのアンドロイド、 旭さんと、司くんに、それぞれお願いできないでしょうか?
第 3 话:ふたりの主演
フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
司:ふたりのアンドロイドを、オレと旭さんが……。 つまりそれは、ダブル主演ということか?
類:ああ、そういうことになる
類:まぁ厳密に言えば、この話の中心になるのは、 アルフレッドだけれどね
類:なにせ、心のないアンドロイドが少しずつ 心を獲得していく様子が話の大筋になるからね
類:ただバートレットにも最後の見せ場がある。 だから実質、ダブル主演と思ってもらって問題ないと思うよ
旭:いいね! おもしろそうだ! マイルスと一緒に主役を張れるなんて光栄だよ
司:……ああ! オレも旭さんと演じるのは、とても勉強になりそうだ
司:それで——どっちがどっちのアンドロイドをやるんだ?
類:どちらをやるかについては、まだ決めないでいようと思うんだ
旭:え?
類:僕はまだ、旭さんの演技について、 深く知っているわけではありません
類:なので、練習で交互にやっていく中で、 よりフィットするほうをお願いしようと思うんです
司:——なるほど、さすがは類だな。 オレは異存ないぞ!
旭:ああ! そういうの、ワクワクするな!
類:ありがとうございます。 他の配役については、今日持ち帰って考えさせてもらいますね。 みんなも、それで大丈夫かな?
えむ:うんっ!!
アークランドのキャストA:今から本読みが楽しみだな!
類:(——うん。 まずはいいムードで進められたね)
類:(けれど、大変なのはここからだ。 アークランドのキャストとやる上では、 演技も、演出も、課題は山のようにあるからね)
類:(いずれにせよ—— 僕達は僕達らしく、全力でやっていこう)
数日後
類:それでは全員の役が決まったので、 今日から読み合わせに入ります。 皆さん、よろしくお願いします
司:よろしくお願いします!!
旭:こちらこそ、よろしくお願いします!!
えむ:みんな朝から元気いっぱいだね~♪
寧々:こ、声が大きいのがふたりになった……
旭:ああ、そういえば類くん
旭:当面の俺と司くんの役は、どうするんだい? どちらのアンドロイドをやるかは、あとで決めるんだろう?
類:今回は暫定的に、旭さんにA国のアンドロイド・アルフレッドを、 司くんにB国のアンドロイド・バートレットを やってもらおうと思います
類:それで、シーンや状況にあわせて交代しながらやっていく、 という形にさせてもらえればと
類:ふたりには二役分の台本を覚えてもらうことになるけど……
旭・司:『任せてくれ!』 『任せろ!』
類:フフ、頼もしいね
類:他は変わらず——えむくんがアルフレッドを拾う開拓地の娘。 寧々がバートレットの教育係の軍曹だよ
えむ:はーいっ!
類:それじゃあ早速、読み合わせを始めよう
司:『——おはよう、アルフレッド。気分はどうだい』
類:——もう1回
司:……類、今回は流れを確認するんじゃなかったのか?
類:そう言った矢先で申し訳ないけど……。 どうにも、アンドロイドには感じられなくてね。 もう少しだけ役に入ってもらいたいんだ
司:ううむ……アンドロイドらしくか……
寧々:アンドロイドの演技って難しそう。 わたしならどうやるかな……
えむ:うーん…… 『オハヨウ! アルフレッド!』
寧々:それはアンドロイドっていうか……?
旭:ふむ……
旭:ねえ類くん、一度司くんと冒頭のかけあいを させてもらえないかな?
類:ええ、ぜひ
旭:それじゃあやろう司くん! 俺もできるだけアンドロイドっぽく頑張るよ!
司:あ……ありがとうございます。 よし、それでは——
司:『……おはよう、アルフレッド。気分はどうだい』
旭:『——おはよう、バートレット。良好だよ』
司:(な……なんだ? この感覚は)
司:(まるで別人と話しているかのようだ。 旭さんは、たった一言セリフを言っただけだというのに……)
旭:『快晴で、気温も適温だ。 博士も過ごしやすいことだろう』
司:(……! なるほど。 あまり抑揚をつけないようにしたほうが アンドロイドらしいかと思ったが……)
司:(逆だな。人とコミュニケーションを取るアンドロイドとして 作られているなら、人が聞き取りやすい、 ある程度抑揚のある話しかたをしたほうがそれらしい)
司:『……せっかく晴れているのだから、 博士もたまには、研究室から外に出ればいいのにな』
旭:『それは無理だろう。土の中のモグラのように、 研究室にこもるのが好きな人だからな』
司:『そうだな。 あのこもり癖はなんとかならないものか』
類:『——モグラとは心外だな。 私は君達の創造主なのに』
司・旭:『博士』
類:——うん。 今の調子なら問題なさそうだね。 もう少し、ふたりの調子を合わせていく必要はありそうだけど
司:そうか……!
司:——旭さん、ありがとうございます
旭:あはは、大したことはしてないよ
司:いえ。おかげでどうすればよりアンドロイドらしくなるか 少し掴めた気がします
旭:それならよかった! ……あとは、そうだね
旭:この劇中の博士が、どういった思想を持って、 何のためのアンドロイドを作ろうとしたのか…… そういうことを考えて演じると、もっとよくなるかもね
司:……!
司:(……なるほど。 アンドロイドの役ならばアンドロイドらしくと 思って演じてしまっていたが……)
司:(劇中の博士の意図から、ふたりのアンドロイドの ありようを考える……か)
司:(どういった作業をやらせたいのか、 どれくらい人間らしくしたいと思ったのか、 考えることは山ほどあるというのに……)
旭:——司くん?
司:あ、ああ! なんでもありません!
えむ:ふたりとも、本物のアンドロイドさんみたいだったねー!
寧々:旭さんの演技にはびっくりしたな。 でも、司もあわせていけてよかった
類:(……思ったとおり、旭さんは司くんに いい影響を与えてくれそうだ)
類:それじゃあ、読み合わせを続けようか
寧々:『——どういうこと? まさか同じタイミングで、 他の誰かがこの研究所に侵入したっていうの?』
アークランドのキャストA:『油断するなウィリス軍曹! ここは戦場だと思え!』
寧々:『りょ……了解!』
寧々:(す、すごい声……! 耳がビリビリする……!)
寧々:(でも……そうだよね。 実際に銃を持って突入して、しかもイレギュラーなことが 起きたら、これくらいの緊張感は出るはずだし……)
えむ:『あれ? お母さん、あそこに誰か倒れてる!』
アークランドのキャストB:あ、えむちゃん。 このシーンはもうちょっと声をひそめたほうがいいかも
アークランドのキャストB:ここは開拓地だから、あまり軍人がいない設定だけど、 倒れてる人が軍人の可能性もあるって思ってるかもしれないから
えむ:お~、なるほど~! やってみますっ!
類:(……さすがはアークランドのキャストだね。 演目が決まってまだ数日だっていうのに、 かなり読み込んで演じてくれている)
類:(特に旭さんは、かなり難しいアルフレッドの役を、 もうほとんど自分のものにしているように見える)
類:(それに……どうも彼はまだまだ余力を残していそうだ。 さて——)
類:(これを見て司くんは——どう感じるかな)
司:(……まさか読み合わせだけで、 ここまで実力差が出てしまうとは……)
司:(しかも旭さんだけではない。 全員、台本が配られたのは数日前なのに、 もうここまで読み込みを進めて役をものにしている)
司:(いや、それだけではない。作品全体がより良くなるように、 他の役についてもよく考えている……。 それなのにオレは、自分の役のことで手一杯に……)
司:(……いや! いや! 弱気になるのはスターではない!)
司:(力が足りないと思うならば、力をつけるのみだ!)
司:(……もっともっと、トルぺの時のように考えなければ。 世界のスターに近づくためにも——!)
類:——それじゃあ最後まで読み合わせをしてしまおうか!
えむ:うう~……いいお話だったねぇ……
アークランドのキャストA:やっぱり最後の戦場で会うシーン、 よかったなぁ……
寧々:うん。 ふたりがちゃんとわかりあえてよかったな
類:フフ、みんな気に入ってくれたようで何よりだよ
類:(うん。なかなかいい雰囲気だね。 ただ……ここからは少々未知数だ)
類:(彼らは——僕の演出に、どこまでついてきてくれるかな)
類:さて、読み合わせも終わったところで、 早速冒頭のシーンから演出をつけていこうと思う
司:冒頭というと……研究所が襲撃されるシーンか
旭:アンドロイド達の日常が突然壊されてしまう—— 緊張感があるシーンだから楽しみだな
類:はい。 あの緊張感を出すために
類:あの襲撃シーンを、本当にやってもらおうと思います
第 4 话:食べよう!同じ釜の飯
フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
旭:——襲撃シーンを、本当にやる?
アークランドのキャストB:それって、どういうこと?
類:フフ、本当に、というのは少々言い過ぎましたね
類:襲撃シーンは冒頭の掴みとして盛り上げたいシーンです。 ですから、最初の山場としてできる限りリアルにやりたい ということです
司:なるほど……。 それで、具体的にはどうやるんだ?
類:僕達は、近未来博物館の正面玄関前広場でショーをやるだろう? その辺りにはいくつか外灯が立っているんだ
類:それを利用して、役者を突入させたい。 具体的には——隊長格を演じるあなたには、 外灯の上に立って、口上を述べてから突入してもらいたいんです
アークランドのキャストA:外灯の上?
類:はい。 博物館側にも確認し、許可をいただく手筈は整えています
類:近未来博物館の外灯は先端部分が平らなため、 立つことができます。そこに立って演技ができるように、 腰で固定できるような装置を作る予定です
類:また、高さは約5メートルです。 もちろんマットと緩衝材を敷き、この命綱をつけてもらって、 万全の状態で挑んでもらいます
旭:5メートルか……
司:類……
アークランドのキャストA:…………。 実際にやってみてもいいか?
類:え?
司:実際に?
旭:たしかに、試してみるのはよさそうだね! ……うん。あっちにあるゲートの高さは、 ちょうど5メートルくらいか
旭:えむちゃん、あのゲートに登らせてもらってもいいかな?
えむ:うん! 大丈夫だよっ!
旭:それじゃ命綱をつけて……と。登っていいぞ!
アークランドのキャストA:よいしょっと……。 旭、俺の直前のセリフも読んでくれないか?
旭:ああ、警備員のセリフだな。 了解!
寧々:な、なんかずいぶん手馴れてるっていうか……
旭:『——総員、警戒しろ!! 侵入者だ!!』
旭:『目的はおそらく、地下のラボにいる、 アルフレッドとバートレット——うわっ!!』
旭:『もう……こんな所にまで来ていたとは……!』
アークランドのキャストA:『——この研究所は我々が占拠した! ……正確には、他のコソ泥も紛れ込んでいるようだがな』
アークランドのキャストA:『……まあいい。 クリストファー・ホーキング博士! おとなしく投降しろ! そしてお前が作ったアンドロイドをここに持ってこい!!』
えむ:うわ~……かっこいい!
司:な、なんという迫力だ……
旭:たしかにこれは、ちょっと無理をしてでも 高いところからセリフを言ったほうがおもしろそうだ!
アークランドのキャストA:しかし、登ってる瞬間が丸見えになったらさすがに 格好悪いな。幕を使って、客席からは見えないようにしないと
アークランドのキャストB:降りてくるところも格好よくしたいね。 前やったショーでもポール使ったし、その応用でできるかも?
アークランドのキャストC:じゃあ今度、劇場から道具借りてこようか!
類:(……これがアークランドのキャストか)
類:(彼らは危険な演出に対して、 その危険を冒すだけの価値があるかどうか考えた上で やるか否かを判断してくれる)
類:(しかもそれだけじゃなくて、 演出の提案までしてくれるなんて)
類:……これは、今までにない経験だな
旭:——よし。これなら類くんの提案でいけそうだね!
類:ありがとうございます。 この演出に関しては、皆さんのアイディアもいただきつつ、 さらにブラッシュアップしていこうと思います
旭:ああ、わかった!
司:——よし! それでは練習を始めるぞ!
司:『これは一体、どういうことだ? 研究所の警備システムはどうしたんだ?』
類:司くん、アンドロイドにしては動揺しすぎているよ! もっと淡々と!
旭:ここは感情が乗りやすいから、かえってひとつひとつの言葉に 意味を持たせすぎないほうがいいかもね。 『あいうえお』って言うくらいの感覚で言ってみるとか
司:なるほど……。 もう一度やってみます
アークランドのキャストA:『ウィリス軍曹! 博士は確保できたのか!?』
寧々:『それが、まだ見つからず……。 研究室にも姿がありません!』
アークランドのキャストB:……んー。 もしかして寧々ちゃん、体使うのあんまり得意じゃない?
寧々:え? あ……はい。 正直、他のメンバーにくらべるとあんまり……
アークランドのキャストB:そっか。じゃあ博士を探してる時の動きから一緒にやってみない? 私達軍人の役だから、そう見えないと格好つかないしね
寧々:は、はい! ありがとうございます!
えむ:突入シーン、こんな動きするのはどうかなっ!! えーいっ!
アークランドのキャストA:お! やるなぁ! それじゃあオレも——えーい!!
えむ:おお~! お兄さんすご~い!! 今クルクルーってしたけど、どうやったの!?
アークランドのキャストA:ふっふっふ、企業秘密と言いたいところだけど…… やりかた教えようか?
えむ:うんっ! 教えてくださーい!!
寧々:はぁ……はぁ……疲れた……
類:やあ、お疲れ寧々。 調子はどうだい?
寧々:どうもこうも……全員すごいから、 ついていくだけで精一杯って感じ……
寧々:でも、アドバイスがすごくわかりやすくて助かるな。 みんな青龍院さんぐらい演技もアクションも できるからびっくりするけど
類:……ああ、そうだね
類:(実際、アークランドの皆さんの実力は突出している)
類:(フェニックスステージを背負う青龍院くんに 迫るレベルの役者が何人もいるし、 さらに、段違いのレベルの旭さんもいる)
類:(だからこそ、みんな実力差に打ちのめされてしまうかもと 思ったけれど——)
類:(……いい勉強ができているようだね)
旭:うーん……
司:どうかしましたか? 旭さん
旭:あ、ちょっとここの動きをどう見せようか悩んでてさ
旭:襲撃シーンで、アルフレッドは足を撃たれて 歩けなくなるだろ?
旭:今回の舞台は段差のない広場だから、這いつくばっちゃうと お客さんに見えづらくなるし……。 類くんに頼んで平台を積んでもらおうかな
司:なるほど……。 ちなみに、どう演技する予定なんですか?
旭:ああ、こんな風にやろうと思うんだ
旭:『バートレット……』
旭:『これ以上の移動は困難だ……置いていってくれ』
司:…………!
司:(……さっき、他のキャストがゲートに登った時も思ったが……)
司:(旭さん達の体の使いかたは、 オレ達のものとまるで違う)
司:(役を深く理解した上で、瞬時に役に入り込んで、 その人物として動くことができる。 アンドロイドのような難しい役でも……)
司:(それに、感情のないアンドロイドの役をやっているというのに、 シーンの緊迫感をまったく損なっていない)
司:(まるで本当に、戦場にいるかのような——)
司:……なんという演技力だ……
類:——じゃあ、本日の練習はここまでとしよう
全員:『お疲れさまでした!』
えむ:う~ん! 今日はいっぱい練習してクタクタだね~!
司:演技もアクションもいつも以上に難しかったし、 頭も使ったからな
司:そのせいか、だいぶ空腹に……
司:……今の腹の音は誰だ?
えむ:えっ? 司くんじゃないの!?
寧々:わたしも流れ的に司だと思った
司:そんなわけあるか! たしかに腹は減ったが……
旭:あ~……す、すまない……
司:……旭さんなのか!? この異常に主張の激しい腹の音が!?
旭:うっ、ちょっとだけお腹が減りやすくて……
旭:あ、そうだ! よかったらこのあとみんなで夕飯を食べないか?
えむ:……あっ! 同じカメの飯を食うですねっ!
寧々:カメのご飯は食べたくないかな……
旭:あはは! まぁそういうこと! あ、誘ったのは俺だし、俺がおごるよ!
旭:交流がてら、飯に行こう! って言っても、ファミレス程度だけどな
司:…………そうだな
司:(こういった交流から、 ステージでは掴めないものを掴めるかもしれん……!)
司:そうしたら一度、親に連絡を入れようと思います!
旭:お、そうこなくっちゃ!
寧々:え、ほ、本当に行くの? ちょっと緊張するっていうか……
司:せっかくの機会だ。 普段どんな練習をしているのかも聞けるしな
寧々:そ……それもそっか。 こういう交流って大事だしね……
えむ:あたしも行く行く~! いっぱい食べよう!!
旭:類くんはどうだい? 行けそうかな?
類:……はい。 行かせてもらおうと思います
ファミリーレストラン
司:——えーそれでは! アークランドの皆さんとの交流を祝しまして~
寧々:披露宴?
司:乾杯!!
全員:『かんぱーい!』 『乾杯』
えむ:いっただきま~す! おいしそ~う♪
寧々:あ、えむ、あんまり急いで食べて やけどしないようにね?
えむ:はーいっ!
アークランドのキャストB:ふふ、えむちゃんのハンバーグ美味しそうだね!
旭:それで——今日は台本を持って初めての稽古だったけど、 みんな、どうだった?
類:……さすが世界でもトップレベルのショーをやるアークランドの キャストの方々だと思いました
類:演技の素晴らしさはもちろんのこと、こちらの提案に、 さらに工夫を重ねてより面白いものにしてくださって…… 本当にありがたいです
司:……そうだな。 学ぶものがとても多くて、勉強になりました
司:旭さん達と練習をすると、 本当にまだまだだと思い知らされる
司:オレはまだ知らないことばかりというか…… 世界に行きたいと思うなら、 もっとたくさんのことを学ばねばな
類:司くん……
司:ん? ああ、そんなに心配するな! この経験をバネに、より頑張りたいということだ
司:実力のある皆さんと共に演技をすることは、 本当に勉強になっているからな。 これから本番まで、よろしくお願いします
旭:ああ! もちろんだよ!
旭:あ……そういえばひとつ聞きたかったんだけどさ、類くん
旭:類くんの演出ってもしかして、 演出家のトム・グレイの影響受けてない?
類:え……? はい。そうですが、どうしてそれを——
旭:やっぱり! 実は今日の突入シーンで思ったんだ。 『怒りの喝采』の強盗襲撃シーンを思い出すなって
アークランドのキャストA:あ~、あれか! たしかに言われてみると、 高低差をつけて迫力を出す演出はトム・グレイっぽいな
旭:はっはっは! トム・グレイ演出作品はすべて100回は見てるからな!
アークランドのキャストB:はいはい、オタクなんだから。 でも類くんもすごくよく知ってそうだよね
類:あ……はい。 僕も旭さんと同じくらいは見ていると思います
旭:おお! 同志よ~! あの人の演出、何回見ても気づかされることがあって 本当におもしろいよな!
類:わかります。 『怒りの喝采』も、3つの作品をオマージュしていることに 気づいた時は驚きました
アークランドのキャストB:え? 3つも? 全然知らなかった!
旭:——類くんはいずれ、トム・グレイみたいな演出家に なりたいって思ってるのか?
類:はい。 彼のように——
類:『富める人、貧しい人、賢い人、愚かな人、 マジョリティ、マイノリティ——すべて関係ない』
類:『すべての人が、 共に笑い、泣き、怒り——』
類:『そうして見終わった瞬間には、 同じ感情でつながれる』
類:そんなショーを作り続けていきたいと思っています
旭:……それ、彼がインタビューで話していたことだよね
類:はい。 やはりご存じでしたか
旭:ああ。俺も大好きな言葉だからな!
旭:実は、その言葉……直接トムから聞いたことがあるんだ
旭:俺、子供の頃、親の仕事の都合で海外で暮らしてたんだけど、 その時——紛争に巻き込まれてさ
司:紛争……!?
旭:信じられないかもしれないけど、急に近所で銃声が聞こえたり、 自分の部屋の窓ガラスが吹き飛んだりして……
旭:本当にあれは怖かった。 今でも思い出すと心臓がバクバクいうよ
類:(……そういえば……)
旭:SFの隠れた名作ですよね。 知人にすすめられて、小6の頃に日本の図書館で読んだんです
類:(そうか、ああ言っていたのはやっぱり——)
司:(あ……)
司:(まるで本当に、戦場にいるかのような——)
司:(旭さんは、本当に知っていたのだな……)
旭:——それで、親と逃げようってなった時に、はぐれたんだ
旭:困ってたら知らないおばさんに手を引かれて、 車に乗せられて……国境近くの避難所にたどりついた
旭:——たくさん人がいて安心したけど、 ……そこからのほうが悲惨だった
旭:まだ小学生だから言葉もちょっとしかわからないし、 親の消息を知る方法もわからない。 もうこの世の終わりだって思ったよ
旭:でもそこで俺は——トム・グレイに出会ったんだ
類:——なぜ、そこに彼が?
旭:トムは隣の国の出身でさ。 避難民を助けるために、ボランティア活動をしにきてたんだ
旭:俺はそんなこと全然知らなくてさ。 パンをくれたトムに言ったんだ。 『いらない。このままひとりぼっちで生きたくない』って
えむ:…………
旭:そうしたら、トムは突然立って言ったんだ。 『今こそ、君のような子供達のためにショーをやるべき時だ』 って
旭:そこからの彼はすごかったよ。ボランティアのかたわら、 ゴミやガレキを使って小道具や衣装、舞台を作って——はは、 天井から缶のプルタブをぶらさげて光を当てるとキラキラするんだ
旭:ストーリーは、戦争に巻き込まれひとりぼっちになった子供が 不思議な動物達と一生懸命に生きるうちに力をつけて…… 最後には両親に会えるっていう内容でさ
旭:キラキラして、ワクワクして、 もしかしたらいつか俺もって思えて……
旭:本当に——夢みたいだったんだ
旭:それに、トムのショーのおかげで、俺は親と再会できたんだ
旭:目をキラッキラ輝かせてトムのショーに夢中になってる 子供の写真が記事になったおかげでね
類:……それはきっと、かけがえのない思い出になったでしょうね
旭:ああ! トムは俺のヒーローなんだ!
旭:そこから俺は、ショーに関係する仕事に就きたいって思って、 役者の勉強をするようになって……
旭:そんな時——アークランドと、 THE CENTER THEATREの存在を知ったんだ
旭:アークランドは元々、世界に向けて素晴らしいショーを 作っていきたいっていう考えを持ったテーマパークだから 興味を持ってたんだけど
旭:THE CENTER THEATREはさらに、 『世界をひとつにするショー』をしようって考えててさ
類:世界をひとつに……?
旭:はは、そう言われてもピンとこないよね
旭:つまりは——トムが俺に見せてくれたようなショーを 今、アークランドは作っていこうとしているんだ
旭:この世界には、どうにか生きのびることはできても、 笑顔になることができない……そんな境遇の人達がいる
旭:THE CENTER THEATREは そんな人達のために、世界中で公演をやる予定なんだよ
アークランドのキャストA:今はそのための土台作りをしてるって感じだな。 日本国内の、いろんな劇団を回らせてもらってるんだ
アークランドのキャストA:で、そのあとは俺達若手が世界各地でボランティア公演や チャリティー公演をやる予定なんだ
アークランドのキャストB:治安が良くないところも多いから、注意しないといけないけどね。 でも、そこも飲み込んだ上で、やりたいって思うの
旭:世界の垣根をとっぱらうためにも、 俺達はまず、いろんなところにショーを届けていこう!
アークランドのキャスト達:『ああ!』 『うん!』
類:……世界をひとつにするショー……
類:(……そうか。 旭さん達も、僕と同じような夢を持っているんだな)
類:(けれどそれでいて、彼らは僕より夢に近い場所にいる)
類:(——フフ。 少し、気持ちがはやってしまうな)
旭:もしかしたら同じようにトムに憧れて、同じ夢を持っているから、 類くんの演出に惹かれるのかもしれないな。 ナイトショーの演出も本当に素晴らしかったよ
類:ありがとうございます。 そう言っていただけて、嬉しいです
アークランドのキャストA:にしても、まだ高校生なんて信じられないな。 演出もトムに影響受けてるっていうけど、 それだけじゃなくて個性もあっておもしろいし
司:フッフッフ! そうでしょうとも!
寧々:なんで司がドヤるわけ?
えむ:類くんはほんとにすごいんですよ! いっつもドカーンでどっぴゅーんだもんね!
旭:あっはっは! たしかに類くんは思い切った大胆な演出をするもんなあ
旭:そうだ! よければ俺達の演出家になってみないか!?
司:なぬっ!?
アークランドのキャストA:おいおい! 人のところの演出家、勝手に勧誘するなよ!
旭:じょ、冗談だって! すごくいい演出家だからついさ~
えむ:あーびっくりした~!
類:……フフ。 こういう語り合いも、たまにはいいものだね
旭:(…………冗談ではあるけど)
旭:一緒にやれたら——楽しそうだな
第 5 话:思いがけない言葉
類:うん、いいね! それじゃあ次は同じシーンを役を交代してやってみよう!
司:わかった! ではオレがアルフレッドだな
司:『——ここは、一体どこなんだ。 位置データをもらいたい』
えむ:『ここ? ここはあたしのおじいちゃんが開拓した農場だよ! 行き倒れてたロボットさん!』
司:『俺はロボットではなくアンドロイドだ。 アルフレッド・ホーキングという』
えむ:『アルフレッド……じゃあ、アルだね!』
司:『……? なぜ、愛称をつけるんだ』
えむ:『え? んーっと……もっと仲良くなりたいって思うからだよ!』
アークランドのキャストA:『ふふ、そうね。 それにしてもボロボロねえ……うちで洗おうかしら』
類:…………。 司くん!
司:ん? なんだ?
類:今のシーン、頭をずっと左右に大きく揺らしながら やってみてくれないかい?
司:な、なぜだ!?
類:行き倒れていたという状況のわりにピンピンしているからね。 だから、バランス制御が壊れたという設定で会話してもらいたい
類:それでえむくん達は、その妙な様子に翻弄されながらも、 一生懸命コミュニケーションをとってみてほしい
えむ:わかった! おもしろそう~!
司:ぬぬ……!! 『——こ、ここはー、いったいーどこなんだー!』
えむ:『わっ! なんで揺れてるの!? もしかして、こうしないとお話できないのかな~?』
司:『位置ーデータをーもらいたいー!』
類:司くん、アンドロイドだということを忘れないように!
司:い、いつも難しいことばかり言いおって~!
旭:『——ターゲットを破壊しました』
アークランドのキャストA:『いい調子だな。 これなら前線に投入しても問題ないだろう』
寧々:『で、ですが……。 本当にこれが使えるかどうか』
アークランドのキャストA:『それは教育係であるお前の手にかかっている。 1カ月後までには使えるようにすることだ』
旭:『ウィリス軍曹、次のご命令を』
寧々:『……ここに来た当初は、まだ人間らしかったのに』
寧々:『所詮、アンドロイドなんだな』
旭:『はい。私はアンドロイドです』
寧々:『……うるさい。さっさと持ち場に戻れ』
旭:『了解です』
類:——旭さん、少しいいですか?
旭:ああ、どうしたんだ?
類:とても緊迫感のある演技だったのですが…… 屋外でやるショーということを考えて、 少しアレンジを加えさせていただきたい
類:具体的には、『はい。私はアンドロイドです』というセリフを 旭さんが出せる一番大きな声で言っていただきたいんです
旭:え? 大きな声で?
類:はい。音量調節機能が壊れてしまった……という体で、 あえてコミカルなシーンにして、 途中から来た観客も引きつけるシーンにしたいなと
類:またそのあとシリアスなテンションに戻すことで、 より印象深いシーンにすることができると思うんです
アークランドのキャストA:なるほどな……。 たしかに緩急がつきそうだ
旭:おもしろそうだね! やってみよう!
旭:『はい!!!!!! 私はアンドロイドです!!!!!!!!』
寧々:うるさ!!!! 司並みに大きいんだけど!?
類:寧々、あわせて!
寧々:はっ……。 『ど、どうした急に大声を出して! 音量調節機能が壊れたのか!?』
旭:『はい!!!! そのようです!!!!』
寧々:『く……! 音量調節はどこだ……! ——よし、これでどうだ!?』
旭:『ありがとうございます。ウィリス軍曹』
寧々:『まったく……迷惑ばかりかける! お前は本当に、科学の粋を集めたアンドロイドなのか!?』
旭:『——はい』
旭:『私は、アンドロイドです』
寧々:『……うるさい。さっさと持ち場に戻れ』
旭:『はい』
類:……うん。これでいきましょう。 寧々もいい対応だったよ
旭:……やっぱり、楽しいな。 このショーは
類:(司くんもえむくんも寧々も、僕の演出に応えながら、 アークランドのキャストに負けじと食らいついているね)
類:(……特に司くんは、 苦手なタイプの演技も少しずつできるようになってきている)
類:(しかし——)
司:——類! 今いいか?
類:ああ……うん。 どうしたんだい?
旭:そろそろどちらの役にするか、決めたほうがいいと思うんだ。 本番も迫ってきているからさ
寧々:……たしかに、司と旭さん両方に合わせる練習はおもしろいけど、 いい加減決めないとね
えむ:どっちになるの?
類:……フフ、タイミングがいいね。 ちょうど今、考えていたところだったよ
類:(まず決めるべき役は……話の中心になるアルフレッドだ)
類:(心を獲得していくアルフレッドには、 何よりも繊細な演技が求められる)
類:(一方で観客が思わず共感してしまうような、 人間らしさを感じさせる演技もほしい)
類:……アルフレッド役は——
類:——旭さんにやってもらいたいと思います
司:……まぁ、十中八九そうだろうと思った
司:旭さんの演技は素晴らしいものだからな。 まるで本当にアンドロイドと話をしているようだ
類:……ああ
類:それに僕は、アルフレッドの役は『心を獲得していく』演技を やりきれる人にやってほしいと思った
類:その点において、旭さんは完璧だったんだ
司:……ああ、オレもそう思う
司:そうと決まれば、オレはオレらしく バートレットを演じきるのみだ!
類:……ああ。 期待しているよ、司くん
旭:——大役を任せてくれてありがとう。 責任を持って、精一杯やらせてもらうよ
司:ありがとうございます。 旭さんのアルフレッド、楽しみにしています
司:……バートレットに決まったからには、 ラストシーンを集中して練習しなければな
旭:ああ、戦いのあとのシーンだね。 あそこはこのショーの中でも一番の見せ場だからな、 一緒に頑張ろう、司くん!
司:はい!!
本番前日
センター街
店員:ありがとうございました!
類:ふぅ。 どうにか買うことができてよかったよ
司:まさか、最後に使う花吹雪用の花びらが 切れてしまうとは思わなかったな
類:僕の担当だったのに、 買い出しにつきあわせてしまってすまないね。 旭さんも、ありがとうございます
旭:いいっていいって! 必要なものは無事に買えたしね。 それじゃ、駅まで行こうか
司:……いよいよ明日が本番か
旭:1カ月は長いようであっという間だったね
司:そうですね。 …………
類:……司くん、 悩んでいるのは、ラストシーンのことかい?
司:ん? ああ、バレていたか。 やはりしっくりこなくてな
司:ラストは、アルフレッドのおかげでバートレットに心が芽生える 感動のシーンだというのに……。 どうも思ったようにならん
旭:司くんは、できるだけのことをやったよ
旭:どうすればよくなるか全員に意見を聞いて回ったり、 ふたりで特訓したり——最後までやれることはやったんだ。 胸を張って本番に挑めばいい
司:……たしかに、そうですね……
類:…………
類:いや。 司くんなら、きっともっとできるはずだよ
司:え?
類:君は未来のスターなんだ。 これくらいのシーン、難なくこなしてもらわないとね
類:だから、最後の最後まで粘り続けてほしい
司:…………!
類:実は僕も、買い物をしてる途中、 何があと一歩足りないのか考えていたんだ
類:もしかしたらラストシーンは、司くんの感情表現の豊かさが、 ネックになってしまっているのかもしれない
類:司くんの中にある想いが溢れ出さないようにぐっとこらえて…… それで、あのシーンでほんの少しだけ溢れさせる。 そんなイメージで今晩練習してみるのはどうかな
司:ぐっとこらえて、溢れさせる……
司:……よし! 帰ったら今一度挑戦してみるぞ!!
司:そうと決まれば急いで帰らなくてはな! 悪いが先に帰るぞ類、旭さん!
類:ああ! 気をつけて!
旭:……また明日! 司くん!
旭:……司くんのことを、信用しているんだね
類:はい。 それに——
類:役者を信じて無茶をお願いすることも、 演出家の大事な役割だと思うので
旭:……そうだな。 互いに信じあって、期待して、初めていいショーができる
類:はい
類:——さて。それでは僕達も、駅に向かいましょうか
旭:ああ、そうだね。 …………
スクランブル交差点
旭:…………
類:(……? 旭さん、どうしたんだろう? 急に無口になってしまったけれど……)
旭:——類くん
類:……?
旭:突然すまない
旭:……こんなことを本番の前日に言うのは、 よくないのかもしれないけど
旭:——君さえよければ、アークランドに来ないか?
類:……!?
旭:まだ高校生だから、アルバイトっていう形になると思うけど…… でも類くんならきっと、すぐ正式に入れると思う
類:それはつまり……引き抜きの打診、ということでしょうか?
旭:……まぁ、そういうことになっちゃうね
旭:——実際に類くんに演出をつけてもらって、思ったんだ
旭:類くんとなら、俺がトムにもらったような—— 世界中をひとつにするショーを作れるんじゃないかって
類:……!
旭:類くんの演出は、大胆で、思いがけなくて、 変な無茶ぶりもたくさんあったけど……
旭:でも、ワクワクした。 次はどんなことを言ってくるんだろう、 次はどんな風に応えようって考えるとすごく楽しかったんだ
旭:だから……もっと類くんと一緒にやりたいって、 そう思ったんだ
類:……そう思ってもらえるのは、ありがたいですが……
旭:類くんがうちに来てくれたらきっと、 俺達はもっと成長できる
旭:そしてきっと、類くん自身も
旭:アークランドの—— 特にTHE CENTER THEATREのキャストは、 世界に羽ばたく実力のある人間しかなることができない
旭:そんなキャストに演出をつけるのは、きっと楽しいよ。 想像以上の——世界をひとつにするショーを作れるはずだ
旭:だから、一緒にアークランドのステージでやらないか?
類:…………
類:(まさか、あのアークランドに誘われるなんて……)
類:(——この申し入れは、 ほとんどの演出家にとって願ってもないことだろう)
類:(そして、僕の夢にとっても——)
旭:…………ごめん。 こんなこと急に言われても、困るよな。 本当は言うつもりじゃなかったんだけど……
旭:——答えは今じゃなくても大丈夫。 類くんの中で答えが決まったら、教えてほしい
類:……はい。わかりました
旭:本当に、驚かせてごめんよ。 それじゃあ——また明日!
類:ええ。 ……また、明日
第 6 话:どちらも大事な
住宅街
類:…………
旭:——君さえよければ、アークランドに来ないか?
類:(完全に想定外だったな……)
類:(まさか本番の前日に こんなことを言われるなんて)
類:(…………僕が、僕自身の夢を追うなら、 これほどありがたい話はない)
類:(アークランドにはショーに携わる者にとって 最高の環境が整っている)
類:(劇団としての規模は最大クラス。 若い世代の育成にも意欲的だ)
類:(それに……所属する役者達も、 僕を演出家として信頼してくれた上、 意図を汲んで、こちらの期待以上のものを返してくれる)
類:(それに何より——)
旭:THE CENTER THEATREはさらに、 『世界をひとつにするショー』をしようって考えててさ
類:世界をひとつに……?
旭:はは、そう言われてもピンとこないよね
旭:つまりは——トムが俺に見せてくれたようなショーを 今、アークランドは作っていこうとしているんだ
旭:この世界には、どうにか生きのびることはできても、 笑顔になることができない……そんな境遇の人達がいる
旭:THE CENTER THEATREは そんな人達のために、世界中で公演をやる予定なんだよ
類:(彼らは、本気で世界の垣根を超えようとしている)
類:……なのに
類:なのにどうして……すぐに返事できなかったんだ……?
類:(……いや。いや、それはおかしなことじゃない)
類:(僕がいなくなったら、ワンダーランズ×ショウタイムの 演出家がいなくなってしまうんだ)
類:(それに……僕達を見たいと望んで来てくれる観客がいるのに 裏切るような真似をするのは……胸が痛む)
類:(そして、なにより——)
類:(…………それでも)
類:(僕は…………僕の夢を叶えたい)
類:(みんなも、永遠にワンダーステージに 留まり続けるわけじゃない)
類:(いつかは旅立つ日がくるんだ。……僕も、みんなも)
類:(みんな……か)
類:(僕達は、お互いの夢を応援しながらステージに立ってきた)
類:(きっとみんなは、僕が僕の夢に向かう選択を、 心の底から喜んでくれる)
類:(僕自身、みんなが夢に近づけたら、 嬉しいとも思う)
類:(……そう、思う)
類:(ならやっぱり僕は、彼らと——)
???:類くーん!!
類:……え? この声は……
寧々の声:ちょっとえむ! 窓から急に叫ばないでってば! ……あ、でもこっちに気づいたみたい
寧々の声:類、今帰ったの?
類:あ……ああ! どうして寧々の家にえむくんがいるんだい?
寧々の声:時間があったから、うちで最後の読みあわせしてたの! で、さっき終わって、えむを送ってこうと思ってたら……
寧々の声:……ちょっとそこで待ってて!
類:……ああ
寧々:買い出しお疲れさま。 その荷物見る限り、無事に買えたみたいでよかった
類:……司くんと旭さんがつきあってくれたからね。 助かったよ
えむ:そっか……。 ん〜……でも、疲れちゃったりしてない?
類:いや、そんなことはないよ。 どうしてだい?
えむ:類くん、ちょっと元気なさそうだなぁって思って
類:え?
類:……ああ、もしかしたらそうかもしれないね。 ここのところ連日忙しかったし
類:今日は早く休むことにするよ。 ……それじゃあ
寧々:あ……
寧々:……もしかして、買い出しの時に何かあった?
類:え?
寧々:今……ちょっと、昔みたいな顔してたから
寧々:何か大事なこと、しまい込んでる顔っていうか……
類:……それは……
えむ:類くん、何か困ったことあったの? 言ってくれたらあたし、力になるよ!
寧々:うん。 もし悩んでるなら、ひとりで抱え込まないでいいから
寧々:わたし達、今までもそうやって、 いろいろ乗り越えてきたんだしさ
類:…………ああ。 そうだね、これまでも僕達は……
類:僕達は…………
えむ:類くん……
寧々:あ……
寧々:——話したくないなら、いいから
類:え……
寧々:あるでしょ、そういう時。 ……うまく話せない時ってさ
寧々:だから……無理に話さなくていいから
寧々:それで、話せるようになったら、話してよ
類:…………ありがとう
類:……悪いけど、僕はこのあたりで。 えむくん、帰り道は気をつけて
えむ:あ……うん! バイバイ類くん!
えむ:……類くん、大丈夫かな……?
寧々:……わからないけど、でも、なんとなく——
寧々:簡単に答えが出ないことを、考えてる……のかな
ワンダーランドのセカイ
類:……ふぅ
類:遠くに見える、煌びやかな景色……。 ここはいつも変わらないね
類:落ち着くからか、 考えごとをする時はここに来る癖がついてしまったな
類:(……何を悩んでいるんだろうな、僕は)
類:(——僕の夢のためには、彼らの元に行ったほうがいい)
類:(自分でもわかっている。 なのに……)
類:(どうしてこんなに、胸が苦しいんだ?)
???:大変大変! どうしよう~!
類:ん……?
ミク:えーっとえーっと、ここに横にして……! お水飲む? あっでもぬいぐるみさんだから……
鳥のぬいぐるみ:ダイジョウブ……起キレルヨ~
ミク:本当? 無茶しちゃだめだよ~?
類:……一体どうしたんだい?
ミク:あ、類くん!
ミク:えっとね、前に、鳥のぬいぐるみさんが 汽車のショーをやりたがってるってお話したでしょっ?
類:ああ。 危険だから、みんなでやるのは難しいっていう……
ミク:うん。それでね、ぬいぐるみさん、 ひとりでショーをやったんだ
類:え? ひとりで?
ミク:そうなの! そしたらいろいろやりすぎて、 ショーが終わったあと倒れちゃったんだ~……
鳥のぬいぐるみ:デモ、モウ大丈夫ダヨ!
類:……ひとりでやるなんて、 ずいぶん思い切ったんだね。大変だったんじゃないかい?
鳥のぬいぐるみ:ウン! ゼーンブ準備シナクチャイケナクテ、目が回ッチャッタ!
鳥のぬいぐるみ:ソレに……チョットダケ、寂シカッタ……
類:え?
ミク:そっか……そうだよねぇ
ミク:楽しいショーができるのって、 すっごくすっごくすてきだけど……
ミク:大好きな人達が一緒じゃないと、 寂しいよね
類:……あ……
類:(……そうか)
類:(答えが出ているのに、 なぜまだあれこれ悩んでしまっているのかと思っていたけれど)
類:(僕はただ——)
類:(まだ……みんなとショーをやりたいと思っているのか)
類:…………
鳥のぬいぐるみ:デモ——デモネ!
鳥のぬいぐるみ:寂シカッタケド、楽シカッタヨ!
ミク:えっ?
鳥のぬいぐるみ:ヤリタイ!ッテ思ッタコトが思イッキリデキテ、 トッテモトッテモ楽シカッタ!!
類:……!
ミク:……そっかぁ。 一緒にできなかったのは、残念だったけど……
ミク:でも、ぬいぐるみさんが思いっきりやりたいことができて、 よかった!
鳥のぬいぐるみ:ウンッ!! アリガトウ、ミク!!
ミク:えへへ、どういたしまして!
類:…………
ミク:あれ? 類くん、どうしたの?
類:ああ、いや……
類:……自分がこれからどうすればいいのか、考えていてね
ミク:えっ?
類:フフ、急にすまないね
類:——よければ少しだけ、話を聞いてもらってもいいかな?
ミク:…………そっか
ミク:類くんの夢を叶えるなら、 その人達のところに行ったほうがいいけど……
類:でも僕の中には、まだみんなと一緒にショーをやりたいという 気持ちもあるんだ
ミク:…………
類:……我ながら感傷的だな
類:みんなはもう、いつかくる別れも覚悟して、 夢に向かっていこうとしているのに
類:まさか自分がこんな風に引きずるなんてね。 なんだか子供みたいだ
ミク:——そんなことないよ!
類:え?
ミク:夢を叶えるために次の場所に行ってみたいっていうのも、 みんなと一緒にいたいっていうのも、 どっちも類くんの大事な想いだよ!
ミク:えっと……ミクね、さっき思ったの。 鳥のぬいぐるみさんの気持ち、すっごくわかるなあって
ミク:みんなと一緒にいられなくて寂しいのも、 でも、やりたいことが思いっきりできたら嬉しいのも……
ミク:だから……いっぱいいっぱいいっぱい考えたほうがいいって思う! 今の類くんのためにも、未来の類くんのためにも!
ミク:そうじゃないときっと——笑顔になれないよ!
類:……ありがとう
類:本当に、ミクくん達は、いつも真剣に向き合ってくれるね
類:……もう一度考えてみるよ。 どちらの想いを取るべきなのか
ミク:……うん!
類の部屋
類:…………
類:(……僕は、世界の人々が笑顔になれるような、 すべての垣根を超えるような、そんなショーを作りたい。 それは小さい頃からの大切な夢だ)
類:(けれど、その一方で——)
類:(みんなと一緒にいつまでもショーを続けていきたい、 という気持ちもある)
類:(……旭さんの誘いを断って、 みんなと一緒にいる選択もできる)
類:(だけど——)
旭:類くんの演出は、大胆で、思いがけなくて、 変な無茶ぶりもたくさんあったけど……
旭:でも、ワクワクした。 次はどんなことを言ってくるんだろう、 次はどんな風に応えようって考えるとすごく楽しかったんだ
旭:だから……もっと類くんと一緒にやりたいって、 そう思ったんだ
鳥のぬいぐるみ:デモ——デモネ!
鳥のぬいぐるみ:寂シカッタケド、楽シカッタヨ!
鳥のぬいぐるみ:ヤリタイ!ッテ思ッタコトが思イッキリデキテ、 トッテモトッテモ楽シカッタ!!
類:…………
類:(……僕は——)
第 7 话:最後の宣伝公演
翌日
近未来博物館 正面玄関前広場
類:——その大道具はこちらへお願いします。 はい、このポールの脇に置いてもらえれば
司:おーい類! 出ハケ位置だが、ここで問題ないか?
類:少し見せてもらってもいいかい? ……あと10センチほど上手寄りにしてほしいな
司:了解だ!
類:……そういえば司くん、ちゃんと眠れたかい?
司:……ああ! 必要な分はとったぞ! ギリギリまで、家で練習してはいたがな
司:あとは本番を、やりきるのみだ
類:——わかった。 最高の演技を期待してるよ
類:……旭さん、そっちはどうですか?
旭:ああ! 何があってもズレないよう、 マットはしっかり設置したぞ!
通行人A:ねえねえ、あれなんの準備してるんだろう?
通行人B:あ、あそこにポスターがある。 ……フェニランとアークランドで合同公演やるんだって!
通行人A:へー! そうなんだ! あ、玄武旭が出るみたいだよ! 見ていかない?
通行人B:えっ、旭くん出るの? なら見たいな〜!
寧々:…………
えむ:類くん、やっぱりまだちょっと元気なさそうだねぇ……
寧々:うん。昨日よりはよくなってる気もするけど……
アークランドのキャストB:あれ? 寧々ちゃんもえむちゃんも、どうしたの? 緊張してる?
寧々:あ……!
えむ:うえっ!? あ、そ、そんなことないです! 元気いっぱいですよっ!
アークランドのキャストB:そう? ならいいんだけど……。 何かあったらフォローするから、無理しないでね
寧々:は、はい。 ありがとうございます
寧々:(……今朝の移動の時には、 もう大丈夫だって言ってたけど……)
寧々:(……本番が終わったら、 ちゃんと4人で話す時間作ったほうがいいかな)
類:——さて、そろそろ公演の時間だ
類:今回の公演は2日で3公演。 初の合同公演の本番ですし、慣れないこともあると思います
類:でも、このメンバーならきっと、 成功に導くことができるはずです
類:皆さん——頑張りましょう
司・旭:『ああ!』
類:……さて
類:——今までで一番のショーにしよう
少佐:『——この研究所は我々が占拠した! ……正確には、他のコソ泥も紛れ込んでいるようだがな』
観客達:えっ、外灯の上!? いつの間に登ったんだろう!?
観客達:すごーい!
類:(うん。想定どおり、観客のハートを掴んでくれた)
類:(次の瞬間、何が起きているかわからないという スリルを観客に味わわせることが、 ショーにとってとても重要なことだ)
類:(そういった点を、彼らは息をするように理解している。 その一方で……)
ウィリス軍曹:『少佐! アンドロイドが1体しかいません! 2体いるという情報だったのですが……』
少佐:『やつらに持っていかれたか……! 我々は追撃する! ウィリス軍曹はそこでアンドロイドを確保するように!』
ウィリス軍曹:『はい!』
バートレット:『……一体、何が起きたんだ。博士は無事か。 状況を説明してもらいたい』
ウィリス軍曹:『状況の説明……。 そうだな』
ウィリス軍曹:『お前の所有者はわたし達となった。 だからこれからは、わたし達のために働いてもらう』
バートレット:『所有者情報の書き換えは、博士にしかできないはずだ。 博士は無事か』
ウィリス軍曹:『……博士はもういない。 悪いが、書き換えは強制的に行われる予定だ』
ウィリス軍曹:『……アンドロイドに悪いなんていうのも、 変な話だけどね』
類:(……司くんと寧々の演技の成長も、素晴らしい。 アークランドのキャストから吸収できるものを 全力で吸収していってくれた)
類:僕は本当に……仲間に恵まれていたね
アルフレッド:『——ここは、一体どこなんだ。 位置データをもらいたい』
エマ:『ここ? ここはあたしのおじいちゃんが開拓した農場だよ! 行き倒れてたロボットさん!』
アルフレッド:『俺はロボットではなくアンドロイドだ。 アルフレッド・ホーキングという』
ウィリス軍曹:『次の戦場の地図データは取り込めた?』
バートレット:『はい。一般市民が使うであろう脱出経路も 把握しています』
ウィリス軍曹:『……そこまで覚えろって言われたの?』
バートレット:『はい。今回の作戦で必要不可欠と言われています。 ……どうしましたか?』
ウィリス軍曹:『…………別に』
エマ:『アルー! どうしよう、赤ちゃんの牛が逃げちゃったー!』
アルフレッド:『なんと、それは大変だ! 追いかけましょう!』
エマ:『ありがとう、アル! あっ、でもそこに肥溜めがあるから——』
アルフレッド:『うわーっ!』
類:(……まったく違う環境で、ふたりのアンドロイドは、 それぞれ成長していく)
類:(けれどいつしか、戦線はのどかな農場にまで至る。 そこに住む人々を守るため、 アルフレッドは初めて武器をとることを選ぶ)
類:(そして——ふたりは、思いがけず戦場で出会う)
類:(さあ、ここからがクライマックスだ)
類:(……頑張ってくれ、みんな)
アルフレッド:『…………』
バートレット:『……なぜだ』
バートレット:『どうして複数の戦闘プログラムをインプットしてきた私と 互角に戦えるんだ』
アルフレッド:『そんなの……わからない。 ただ、俺は……』
アルフレッド:『この開拓地の人達を守りたい。 だからきっと、本来の力以上のものが出せている』
バートレット:『理解できん』
アルフレッド:『——いい加減に、わかってくれ!!』
バートレット:『そちらこそ、いい加減にしろ。 一体何をわかれというんだ』
アルフレッド:『俺は、バートレット——お前を殺したくない!!』
アルフレッド:『俺とお前の違いは、 どこに、どんな環境にいたかということだけだ!』
アルフレッド:『憎しみあうように、殺しあうように教えられなければ、 お前だって、こんなことはしていないはずだ!』
バートレット:『だが、私は教えられた。それが結果だ。 だから私は——お前を壊す』
アルフレッド:『バートレット!』
類:(……そうして戦闘の末、 アルフレッドは、バートレットの動力部を壊してしまう)
アルフレッド:『あ……ああ……! バートレット!!』
バートレット:『……なぜうろたえる。 お前は、戦いに勝利したんだぞ』
アルフレッド:『これが勝利なものか! こんなもの……勝利であってたまるか!!』
バートレット:『……やはり、理解できない』
バートレット:『……だが。 一度くらいは、見てみたかったかもしれない』
アルフレッド:『え?』
バートレット:『私が、お前の生きた環境で生きていたら、 私は一体、どんな、風に…………』
アルフレッド:『バートレット!!』
エマ:『アル! さっきね、うちの国が敵の国をやっつけたって ニュースが流れてたの! だからもう、戦わなくても……』
エマ:『あ……!』
ウィリス軍曹:『バートレット!! ああ……まさか、破壊されるなんて……』
アルフレッド:『俺が……俺が、殺したんだ……』
ウィリス軍曹:『……ううん、まだ死んでない! 動力部には予備バッテリーがあると聞いた! そこさえ傷ついていなければ……』
ウィリス軍曹:『く……予備バッテリーがショートしそう! どこかに工具はない!?』
エマ:『あ、納屋にあるよ! あたし取ってくる!』
アルフレッド:『どなたか知りませんが、お願いします……! どうか……どうか……!!』
ウィリス軍曹:『……もしかしてあなた、 あの研究所で、バートレットと一緒にいたアンドロイド?』
アルフレッド:『え……はい。そうです。 この農場で拾われて、10年、働いていました』
ウィリス軍曹:『そう……』
ウィリス軍曹:『わたし達と共にいなければ、バートにも、 あなたみたいな未来が、あったんでしょうね……』
アルフレッド:『え……?』
エマ:『工具、あったよ! これでなんとかできますか?』
ウィリス軍曹:『やってみる……! 初めてだから、うまくできるかわからないけど……』
ウィリス軍曹:『やった……! これなら再起動しそう……!』
ウィリス軍曹:『……ねえ、ひとつ聞いていい?』
ウィリス軍曹:『このまま起動すれば、バートはまた、 兵器に戻ってしまうかもしれない』
ウィリス軍曹:『でもここで初期化してしまえば、 バートはすべてのデータを消して、やり直せる』
エマ:『え……!』
ウィリス軍曹:『……わたしは、忌まわしい記憶を消してあげたい。 でも……一緒に生まれたあなたは、どう思う?』
アルフレッド:『俺は……』
アルフレッド:『……消さないでほしいです』
アルフレッド:『まっさらになれたほうが、いいかもしれない。 でも……こいつの10年の記憶は、 その大切さは、こいつにしかわからないから』
アルフレッド:『だから、残してほしいです』
アルフレッド:『それで、消す代わりに——これを入れてやって もらえませんか?』
ウィリス軍曹:『このメモリは?』
アルフレッド:『俺の、この10年の記憶データです』
アルフレッド:『バートレットにも、見せてやりたいんです。 俺に心を与えてくれた、この世界の美しさを』
ウィリス軍曹:『……わかった。 じゃあ、これを入れて、起動する』
類:(……さあ、ここが最後の見せ場だよ。司くん)
司:(——ぐっとこらえて、ほんの少しだけ溢れさせる)
司:(誰も見たことがない——アンドロイドに心が宿る瞬間を、 演じてみせる!)
バートレット:『ここは……。 動力部を破壊されたと、データには残っているが……』
アルフレッド:『バートレット……!』
バートレット:『……アルフレッド。 お前が、起こしたのか……』
ウィリス軍曹:『そう。 彼が起こしてくれたの』
バートレット:『……そうですか』
バートレット:『……アルフレッド。 どうやら私には、すぐにやらなければならないミッションがある』
アルフレッド:『え?』
バートレット:『——このデータを、実際に見せてくれないか?』
バートレット:『お前がこの10年見てきた美しい景色を』
バートレット:『そうしたら……お前のことが、わかる気がする』
旭:…………!
アルフレッド:『……ああ。 ああ、もちろんだ』
アルフレッド:『そして、これからはずっと……ずっと同じ景色を見ていこう。 バート』
バートレット:『それは悪くないな。……アル』
類:(…………ああ)
類:(僕は——この瞬間が、とても好きだ)
類:(みんなが僕の演出に全力で応えてくれて、 素晴らしいショーができあがる。そして——)
類:(僕の演出が、みんなの夢を後押しして—— みんなが笑顔になる、その瞬間が)
類:(僕は本当に……大好きなんだ)
翌日
司:……本日は、ありがとうございました!!
全員:『ありがとうございました!!』
司:……は~~~! うむ! 2日間、無事にやりとげることができたな!
えむ:うん! お客さんもすっごく喜んでくれたね〜!!
寧々:そうだね。 最後の公演は、最初の公演の倍くらい来てくれたし、それに……
旭:——何より、司くんの成長が素晴らしかった!
旭:ラストシーンがあそこまで良くなったのは、 最後まで粘った司くんの努力があったからこそだと思う
旭:やっぱり、俺が惚れたマイルスはカッコイイな!
司:……! ありがとうございます!
司:……しかし、こうやって全員で顔を合わせるのも 今日が最後だと思うと、少し名残惜しいですね
類:(……最後……)
旭:……そうだな。 だけどこの1カ月、本当に楽しかったよ。ありがとう
司:いえ、こちらこそ。 本当にありがとうございました!
旭:それじゃあ、片づけをしようか
類:——旭さん
類:片づけのあと、少しだけお話をする時間はありますか?
旭:……! ああ、もちろん
類:では——またのちほど
寧々:…………類?
噴水前
類:……公演の直後になってしまってすみません。 旭さんもお疲れだと思うんですが
旭:いや、構わないよ。 俺、体力だけは人の3倍あるしね!
旭:それで——
旭:……返答を聞いてもいいかい?
類:——はい
第 8 话:僕の想いは
噴水前
類:あのあと、真剣に考えました。 ……今のまま、フェニックスワンダーランドに留まり、 ワンダーランズ×ショウタイムとして活動するか——
類:旭さんと共に、アークランドでショーを作っていくか
類:いずれにせよ、僕が、僕の夢に近づくために、 どうすればいいのかということを……考えました
旭:……ああ
類:……単刀直入に言えば
類:僕の夢を叶えるためには、 旭さん、あなたの手を取るべきだと思ってます
旭:……!
類:今回の合同公演の練習を通して、 僕はアークランドの皆さんの実力とセンス。 そして熱い想いを知りました
類:こんな役者が、何人も集う場所は、 日本中探してもそうはありません
類:演出家にとっても、最高レベルの環境だと思います。 ……舞台用の装置も、自分で作る必要はありませんしね
類:だから——
類:アークランドに移籍する道が、 演出家としての僕にとって正しい道です
旭:それじゃあ——
旭:……!
旭:…………なんて顔してるんだよ
類:……え?
類:なんて顔……とは、どういう意味ですか?
旭:そのままの意味だよ。 ここに鏡があればよかったのにな
旭:……類くん。 俺達の仲間になることを考えてくれてありがとう。 すごく嬉しいよ
旭:でも…… 君の本当の答えは、きっと、別の場所にあるんだろうね
類:…………!
類:(……ああ、そうか)
類:(やっぱり僕は——)
旭:一緒に練習をしてて、気づいてはいたんだ
旭:類くんの演出は、誰に対しても誠実で平等だった
旭:でも、ワンダーランズ×ショウタイムのみんなへのそれには、 やっぱり、強い信頼と情熱が込められてると思ったよ
旭:……まだ、彼らと一緒にやりたいんだろう?
類:…………
旭:……はー。正直、悔しいなぁ
旭:俺は類くんに『何がなんでもこいつに演出をつけたい』って 思わせられなかったわけだし
旭:つまり役者として、まだまだってことだ
類:そんなことはないです。 旭さんは、とても素晴らしい役者だと思います
旭:はは、ありがとう。 じゃあ次までにはもっといい役者になって、 類くんを振り向かせてみせるよ
類:旭さん……
旭:——でも、類くんの気持ちも、わかるな
旭:今日の司くんの演技には本当に驚かされたよ。 本番前とはまるで別人みたいだった
旭:それに、寧々ちゃんやえむちゃんも。 俺達に必死に食らいついてきてくれた
旭:あんな風にまっすぐな仲間がいたら—— もっと自分の手で輝かせたいと思うし、 これからどんな風に変わっていくのか、見届けたいなって思うよ
類:…………はい。 ワンダーランズ×ショウタイムのみんなは僕にとって——
類:色褪せず輝き続ける——宝物のような存在です
旭:いい顔になったね
旭:それじゃあ、君が高校を卒業する時、 もう一度声をかけさせてもらう
旭:——先に世界で待ってるよ。類くん
類:……旭さん……
旭:ふふ、君なら……いや、君達なら、 すぐに追いかけてきそうだけどね?
類:——ええ、必ず
旭:それじゃあ、戻ろうか類くん。 俺達の仲間のところに!
類:はい
近未来博物館 正面玄関前広場
類:みんな、ただいま
寧々:あ、類……
司:お! ふたりとも、どこに行っていたんだ?
類:担当分の片づけが終わったから、あちらのほうで話をね。 途中で抜けてしまって悪かったよ
司:いや、最終日だし話しておきたいこともあるだろう。 ところで、なんの話をしていたんだ?
類:……まあ、未来の話を、少しね
司:未来の話……? ずいぶん漠然としているな
司:——ああ、未来といえば、 オレも今回はいろいろと考えることができた
類:うん?
司:オレには、まだまだ実力が足りないとわかってはいたが……
司:こうやってアークランドの皆さんと一緒にやったことで、 改めて、スターへの道ははるかに遠いとわかった
司:これからは、旭さん達のような役者から多くを学びながら さらに研鑽を積まねばなるまい。 世界のステージで、スターとして輝くためにも
司:——これからもよろしく頼むぞ、類!
類:ああ。 こちらもよろしく頼むよ、未来のスター
類:さて……最後の宣伝公演も無事に終わったね
類:次はワンダーステージでの新公演のことを考えようか。 みんなにつけたい演出が山ほどあるんだ
えむ:あ……ねえねえ寧々ちゃん!
寧々:……うん
寧々:何があったかわからないけど……。 ちょっとスッキリしたみたい
電車内
えむ:えへへ……もっと食べられるよ〜……
寧々:う……肩が……重い……
類:フフ。 元気な寝言だねえ
司:ん? なんだ類、起きていたのか。 疲れて寝ているのかと思ったぞ
類:いろいろ考えごとをしていたのさ。 そういう司くんは寝ないのかい?
司:ああ。 オレもあれこれ考えていてな
類:へえ? どんなことをだい?
司:……この先宣伝公演をやることはないと思うと、 少々引っかかってしまってな
類:……というと?
司:さっきも少し話したが……今回旭さん達とやったことで、 オレは本当に、たくさんのことを勉強できたと思う
司:まぁ、いい役者とショーをやると、 自分の実力を思い知らされて苦しいこともあるが……
司:それ以上に、新しい学びを得られたことが、 とても楽しかった
類:ああ、そうだね。 それは僕も同じだよ
類:実際司くんは、旭さんと共に過ごした1カ月あまりで、 いろいろなものを掴んだように思うしね
司:やはりそうか! 類から見てもそうならば、 実際かなりの変化を遂げたと言えるだろう!
司:……だからこそ、宣伝公演が終わってしまうのは残念だ。 今回のように、外部の人達と高めあうことができるかも しれなかったからな
司:——スターになるというオレの夢のためにも、 今までのように、成長する機会が持てればいいんだが……
司:いや、ぐだぐだ言っていても仕方がないな!
司:オレ達には、フェニックスワンダーランドの キャストとしての務めがあるのだ。 しっかり果たしていかなければ!
類:……そうだね。 ただ……
類:司くんには、司くんの目指すものがあるんだ
類:フェニックスワンダーランドのキャストとして 務めを果たしたいという想いも、夢を叶えたいという想いも…… どちらも、大事にしたほうがいい
司:類……
類:フフ、この言葉はある人の受け売りだけどね
類:君の想いに、ないがしろにしていいものなんてないさ
司:……そうか。 そう言ってもらえると、妙に心強いな
司:たしかに……もっと考えてみることとしよう。 フェニックスワンダーランドのためにも、 ——オレ自身の夢のためにも
司:ふぁ……。急に眠くなってきたな
類:今日は2公演もやって疲れているんだから、 休んだほうがいい。 到着したら起こすよ
司:そうか。助かる。 それじゃあしばらく寝るとするか……
司:…………。 んごーー
類:フフ。 こちらも元気ないびきだねえ
類:……司くんも、これからの道について、 考えているんだね
類:(……きっと遅かれ早かれ、 みんな自分の夢への道を切り開いていくだろう)
類:(この、今という楽しい時間は、 あっという間に過ぎていってしまうかもしれない)
類:(その時は僕も、次の道に進んでいるだろう)
類:(……進めて、いるのかな)
類:(……まったく、意気地がないな。 いつになったら僕は、割り切れるようになるんだろう)
類:(だけど——今回わかったことがひとつある)
類:(今僕は、自分で思う以上に、 みんなとショーをやっていたいんだ——)
類:(…………なら、どちらの想いも大事にすればいい)
類:(自分の夢を叶えたいという想いも、 みんなと共にいたいという想いも)
類:(僕の夢を叶えながら、みんなと共に、みんなの夢も叶える。 そんな方法を——考えてみよう)
類:(……フフ、なんて欲張りなんだろうね)
類:(でも僕は、そんな未来を見てみたい)
類:(だから僕は、今、 僕にできる限りのことをしていこう——)