活动剧情
Echo my melody
活动ID:76
第 1 话:繋がらないメロディー
一歌の部屋
一歌:……これでどうかな? ミクに歌ってもらって——
ミク:♪————
一歌:……やっぱり、違う。 イメージどおりの曲にならないな……
一歌:ごめんね、ミク。 曲を作り始めてから、もう結構経つのに ちゃんとした歌を歌わせてあげられなくて
一歌:咲希は、あんなすごい曲を作れるのに、私はまだ——
一歌:——ううん。焦ったってしょうがない。 それに元々、簡単にできるなんて思ってなかったし
一歌:私は、私のペースで自分の納得いく曲を作ろう。 それで——
ミク:♪————
一歌:あの時みたいに、一緒に歌うんだ
数日後
教室のセカイ
一歌:みんな、遅れてごめん。 日直で学級日誌書いてたら遅くなっちゃった
穂波:あ、一歌ちゃん、お疲れさま
リン:今ね~、みんながシブフェス出た時の動画見てたの! お客さんもすっごい盛り上がってるし、 最近のみんな、めちゃめちゃ順調だよね!
ミク:anemoneとやったライブも、最高だったしね
一歌:……うん。 あの時は本当に、みんなが全力を出し切れて…… なんか、ひとつひとつの音が輝いてるような気がした
咲希:あ、それ、わかる! ライブの前から、緊張の仕方が いつもと違うなとは思ってたんだけど……
咲希:ライブ中も、感覚が全然違ったんだよね! もちろん、お客さんの声とかは聞こえるんだけど、 すごく演奏に集中できたっていうか……
KAITO:……みんな一生懸命練習してたから、 その成果が出たんだろうね
志歩:そうですね。 ライブハウスにいた人からも ここ最近で一番いいライブを見たって言ってもらえたし
穂波:お客さんに声をかけられる機会も増えて、よかったよね
レン:そういえば、新しいライブハウスにチャレンジしたのって Leo/needをもっとたくさんの人に知ってもらうため、 って話だったよな?
MEIKO:それなら、目標達成できてるんじゃない?
志歩:そうだね。 今の私達はすごく順調だと思う。でも……
志歩:だからこそ、ここで気を緩めるのはよくない
一歌:っ……
志歩:ライブチケットのノルマも予定よりさばけるのが早かったし、 お客さんが増えてるなって実感はあるけど……
志歩:私達が目指してるのはプロだから、 もっと演奏技術をあげなきゃいけないし、 聴きに来てくれる人達の数も増やさないといけないと思う
咲希:それなら、また大きなイベントに出てみるのはどうかな? シブフェスみたいな大きなお祭りなら たくさんの人にアタシ達のこと見てもらえるな~って思ったし!
一歌:いい案だと思うけど……、あの規模のイベントって そんなにたくさんやってるわけじゃないよね
穂波:そうだね……。それに、シブフェスの参加枠も ギリギリで運よく取れたって感じだったから、 結構難しいんじゃないかな……
咲希:そっかあ……。 じゃあ、やっぱりライブする回数を増やしたりして、 地道にやるのがいいのかな~?
KAITO:…………
レン:どうした、カイト? なんか言いたそうだな
KAITO:あ、えっと……
KAITO:……別に、宣伝ならライブにこだわらなくても いいんじゃないかと思って
一歌:えっ?
咲希:あっ、そっか! 『たくさんの人に聴いてもらう』ってことだけなら、 前にしほちゃんが言ってた方法もあるよね!
穂波:志歩ちゃんが言ってた方法……って
志歩:うん。プロになるにはいろんな道があるけど……。 いずれにせよ、できるだけたくさんの人に 聴いてもらえたほうがいいからね
志歩:活動するライブハウスを増やしたり、 バンドのアカウント作って動画をアップしたり……。 やりかたはいろいろあると思う
一歌:そっか、動画……!
咲希:ついについに、 Leo/need公式アカウント誕生の時がきた~!?
リン:たのしそ~っ!! いいないいな~、あたしにも手伝わせて~♪
一歌:……でも、動画配信サイトにアップするなら、 編集とか必要だよね?
志歩:やるのはいいけど、動画のことはそんなに詳しくないし……。 どうやるのか考えないと
穂波:それなら、わたしが勉強してみるよ
咲希:え?
穂波:編集とかカットとか、ちょっとイメージをいじるくらいなら 専用のソフトを使えばできそうな気がするし——
穂波:チャンネル開設にも、いろいろ手続きが必要だと思うけど、 そういうのも調べてみようと思う
一歌:穂波……
穂波:わたしの力じゃ、そんなに綺麗な動画はできないと思うけど……、 見てくれる人が少なくても、ひとりでも多くの人に 曲を聴いてもらえるのなら、そのほうがいいと思うから
穂波:だから……。 わたしにできることならやりたいなって
咲希:かっ……
咲希:——こいい~っ! かっこいいよ、ほなちゃん!
志歩:……ありがとう、穂波。助かるよ
志歩:穂波みたいに、いろいろ器用にできる自信はないけど、 私もできることがあれば手伝うから、遠慮しないで言って
穂波:……うん! ありがとう!
一歌:(……すごいな、穂波は)
一歌:(いつも練習スケジュール組んでくれたり、 シブフェスの時はチラシも作ってくれて…… いろんなことやってくれる)
咲希:Leo/need公式チャンネル、ついに本格始動だね!
志歩:そうだね。……とりあえず、 そろそろ練習始めないと時間がもったいないから、 どういうのを撮るのかとかはまた、みんなで考えよう
咲希:うんっ! 楽しみだな~っ♪
咲希:これからも新曲作ったら 定期的に動画アップしていくことになるだろうし……
咲希:アタシもたくさんの人に好きになってもらえるような 曲が作れるように、作曲がんばろっと!
一歌:(あ……)
一歌:(咲希は本当に、いつも楽しそうに曲を作ってるな)
一歌:(でも……)
一歌:(……簡単じゃないよね。 この前の曲だって、あんなに苦労して作ってたんだから)
一歌:(……私も曲が作れるようになれば、 咲希にばっかり負担をかけなくて済むはずだよね)
一歌:(でも、まだ1曲も納得できるものが作れてないし、 今のままじゃ、みんなに貢献できない……)
一歌:(……とりあえず、今作ってる曲をちゃんと仕上げよう。 それで、納得できる曲ができたら言おう)
一歌:(——私も、曲を作ってみたんだ、って)
第 2 话:思わぬ救世主
週末
レッスンスタジオ
一歌:おはよう——
一歌:って、まだみんな来てないんだ。 家出るの早すぎたかも
一歌:……でも、曲のことでだいぶ詰まってたし、 違う場所で考える時間作れてよかったかな
一歌:どうして、うまく作れないんだろ……
一歌:(今の曲は、誰かを支えるような気持ちを 表現したいなって思って作ってるんだけど…… 何度作り直しても、なんか遠い印象になってる)
一歌:(メロディーの構成が悪いのかなと思って調整してみても、 結局……納得できるクオリティにはならなかった)
一歌:(それに……作りたいメロディーをDTM——パソコン上の音で 再現しようとしても、全然再現できてない)
一歌:……やっぱり、DTMで作るのが難しいのかな
一歌:(でも、ミクに歌ってほしいし……。 せっかくここまで作ってきたんだから、最後までやりきりたい)
一歌:……こういう時、どうすればいいんだろう。 たしか、前に咲希が言ってたのは——
咲希:みんな~、始まるよーっ! 咲希先生の作曲講座~!
リン:イエーイ!!
ルカ:あら、何が始まったの?
穂波:一歌ちゃんが曲の作りかたを聞いたら、 咲希ちゃん達がノリノリで……
咲希:はい、それでは、いっちゃんさん! 改めて質問をどーぞ!
一歌:は、はい、咲希先生
ミク:一歌も『先生』呼びしてるし
志歩:まったく、何やってるんだか……
一歌:え、えっと……。 咲希先生が曲作りに詰まった時は、 どうやって悩みを解消してるんでしょうか?
咲希:ふむふむ、難しい問題ですね。 曲作りに詰まってしまう原因はいろいろあると思いますが……
咲希:たとえば、頭の中にあるイメージと、 実際に作った音がちょっと違うな?って感じになった時は、 一度客観的にその曲を聴いてみるといいかもしれません
一歌:客観的に?
咲希:ずっと曲に向かい合っていると、 今、自分が作っているものが本当にいいものなのか わからなくなってきてしまうことがあります!
咲希:なので、そういう時は、アタ——先生なら、 作ってる曲をいつもと違うヘッドホンで再生してみたり、 いつもと違う場所で聴いてみたりしますね
咲希:そうすると、今まで気づかなかったことに気づけて、 ヒントを得られることがあるのです!
一歌:……そういうやりかたがあるんだ。 勉強になったよ。ありがとう、咲希
咲希:うむ! これからもケンサンを欠かさぬように!
咲希:……な~んて、アタシもまだまだ作曲初心者だから、 いつもわからないことばっかりなんだけどね~!
一歌:いつもと違う場所で再生してみる、か……
一歌:……ここなら、ちょうどいいかも。 みんなが来る前に試してみようかな
一歌:えっと、このケーブルをスマホと繋げて……。 よし、これで再生を押せば——
ミク:♪————
一歌:わ……やっぱりスタジオのスピーカーだから、音がいいな。 いつもパソコンで聴いてる音と全然違う……!
一歌:……でも……
一歌:やっぱり、メロディーがイメージと違う。 『支える』って感じが前面に出てないし、 これじゃ、表現したいことが伝わらない……
一歌:……それに、スピーカーがいいからか、 音の粗も目立ってる気がする
一歌:ベースの音……浅いな。 ドラムも軽い気がするし、全体的に音が遠くにある感じがする
一歌:メロディーだけじゃなくて音も気をつかわないと……。 むしろ問題が山積みになって——
???:これ、なんの曲?
一歌:えっ——
一歌:ほ、穂波!? いつの間に来てたの!?
穂波:あっ……驚かせちゃってごめんね。 ちゃんと声かけて入ってくればよかった
一歌:わ、私のほうこそ、ごめん。 ドアに背中向けてたから、全然気づかなくて……
穂波:ううん、気にしないで。 それより、この曲……歌ってるの、ミクちゃんだよね?
一歌:あっ……えっと、これは……
穂波:でも、聴いたことない曲だし、音が飛んでるところがあって 作りかけみたいなメロディーだし……
穂波:もしかしてこれ、一歌ちゃんが作ってるとか……?
一歌:う……
一歌:——実は、そうなんだ
穂波:やっぱり……! 一歌ちゃん、作曲続けてたんだね。 それも、ミクちゃんに歌ってもらってるなんて……!
一歌:で、でも、本当にまだ始めたばかりで、 咲希みたいに、すごい曲は作れてないよ!
一歌:ミクにも、すごい中途半端な曲しか歌わせてあげられてないし、 それに——
一歌:——結構、悩んでるんだ。 やっぱり、DTMって難しくて
穂波:そっか……。DTMってたしか、 パソコンで作業しなくちゃいけないんだっけ。 わたし達がやってた作曲方法とはちょっと違うんだよね
穂波:いろんな楽器の音を選んで 自分で入力しないといけないから、大変そう……
一歌:うん……。 イメージはあるから、みんなで演奏するのを想像しながら 音を打ち込んでるんだけど——
一歌:あんまりイメージどおりにならないし、 さっき曲を聴いて別の問題もあることに気づいて、 課題が盛りだくさんって感じなんだ
一歌:……私も曲が作れたら、 もっとみんなのためになれると思ったんだけど
穂波:一歌ちゃん……
穂波:そういえば、DTMなら宵崎さんがやってるから、 何か話を聞けるかも……
一歌:あ——
一歌:——たしかに。 前にも、作曲の話を聞かせてもらったことがあったしね
一歌:ありがとう、穂波! 早速連絡してみるよ
穂波:ふふ、いい話が聞けたらいいね
咲希:おっはよ~! ふたりとも、今日は早めに来てたんだね!
志歩:ふたりで先やっててくれてもよかったのに……って、あれ? スピーカーだけ電源ついてるみたいだけど——
一歌:あっ……な、なんか前使ってた人が消すの忘れてたみたい!
咲希:あー、あるよね、そういうの! アタシも夏にリビングの冷房つけっぱなしにして出ちゃって、 帰ってきたお兄ちゃん凍えさせちゃったことあったし!
志歩:それはつけっぱなしなことより、 設定温度のほうが問題あるでしょ
一歌:穂波……曲ができるまでは、私が作曲してること、 みんなにナイショにしておいてくれる?
一歌:恥ずかしいのもあるけど……、 ちゃんと完成させてからみんなに聴いてもらいたくて
穂波:ふふっ、わかった。言わないでおくね。 ……いい曲ができるように、応援してるよ
スクランブル交差点
志歩:それじゃ、今日もお疲れさま
咲希:バイバ~イ、いっちゃ~ん!
一歌:……ふう。 今日もみんなでたくさん合わせられたな
一歌:あと、動画の話もちゃんと決まってよかった
咲希:それでそれで、最初はどの曲で撮るっ!?
志歩:最初の動画は慎重に決めたいよね。 それで私達の印象も決まってくるだろうし
一歌:たしかに……。最初の動画でいいって思ってもらえたら、 私達に興味を持ってくれて、 ライブに来てくれたりするかもしれないしね
穂波:……そういうことなら、 わたし達らしくて、わたし達にとっても 自信のある曲を撮るのがいいんじゃないかなって思う
穂波:なんていうか……最初の1本が Leo/needの自己紹介みたいになればいいなって
咲希:たしかに! ほなちゃん、いいこと言う~!
一歌:私達らしくて、自信がある曲、か……。 それなら、やっぱり——
一歌・志歩・穂波:『この前の咲希の曲!』 『この前の咲希ちゃんの曲!』
咲希:おお~っ、みんな息ぴったりだ!
一歌:あの曲は、私達もライブに向けて猛特訓したし、 1本目の動画にするのには一番いい気がするなって
志歩:うん、私もそう思う
志歩:……個人的に特別な思い入れもあるしね。 みんなが背中を押してくれたおかげで、 私も全力の演奏ができたから
一歌:志歩……
志歩:さ、咲希も、それでいい?
咲希:もっちろん! すっごく苦労して作ったあの曲を 最初の動画にしてもらえるなんて……なんだか嬉しいな~っ♪
穂波:ふふっ、撮影の日まで 練習、頑張ろうね
一歌:……動画はライブと違って、ずっと残るものだし、 いつもと違う緊張感があるよね……
一歌:——気合い入れて自主練しなきゃ
一歌:あれ、誰かからメッセージかな?
一歌:——あ……!
数日後
宵崎家 キッチン
穂波:こんにちは、宵崎さん。 今日もよろしくお願いしますね
奏:望月さん、いつもありがとう。 それと——
奏:いらっしゃい、星乃さん
一歌:……突然『DTMのこと教えてください!』って連絡したのに、 引き受けてくれて、ありがとうございます
一歌:それに、おうちにまで呼んでもらって、 本当に申し訳ないっていうか……
奏:気にしないで。 うちなら機材もあって、ちょうどいいから
奏:あ、望月さんに掃除してもらう前だから ちょっと散らかってるかもしれないけど……
穂波:ふふ、すぐ片づけるから大丈夫ですよ
奏:……ありがとう
穂波:では、わたしはお掃除を始めますね
穂波:……一歌ちゃん、DTMの勉強頑張ってね。 宵崎さんも、よろしくお願いします
奏:うん。 ……じゃ、わたし達は部屋に行こうか
一歌:はい!
第 3 话:調律を共に
奏の部屋
一歌:わ、機材がたくさん……!
一歌:これ全部、奏さんがそろえたんですか?
奏:ううん。……実は、お父さんが音楽関係の仕事してたから、 譲ってもらったものが多いんだ
一歌:お父さんが……。 そうだったんですね
一歌:でも、これだけ機材があったら、 どれを使ったらいいか悩んじゃいそう……
奏:……そうでもないよ。 これだけあっても、使うものはいつも同じだったりするし
奏:たまに雰囲気変えたくて、違うものに手を出すこともあるけど…… なんだかんだで合う合わないとかもあったりして、 使ってないもののほうが多いかな
一歌:そうなんですね……
奏:……それで、星乃さんは何に悩んでるの? メロディーの作りかた? それともソフトの使いかたかな
一歌:あっ、そうだ、ええと、問題は山積みなんですけど、 まずは、私の曲を聴いてみてほしくて……
一歌:ちょっと待ってくださいね! えっと、パソコンを今——
ミク:♪————
一歌:……って感じなんですけど、どんなにいじってみても、 私の頭の中にあるイメージに近づかなくて……
一歌:それにこの前、レンタルスタジオのスピーカーで再生したら 音に臨場感がないことに気づいちゃって、 もう、どこから手をつけたらいいのか……
奏:……なるほど
奏:というか、星乃さん、 ミクに歌ってもらってるんだね
一歌:えっ……
一歌:そ、そうなんです。 私、ミクがすごく好きで……、本格的に作曲するなら、 絶対ミクと一緒にやりた——
一歌:——あ、えっと……、ミクで作りたいって思って!
奏:ふふ、そうなんだ
一歌:そういえば、奏さんと知りあったきっかけのクリエイターさん…… あの人も、ミクで曲を作ってる人でしたよね!
奏:うん。曲の構成もいいけど、 ミクの声がすごく綺麗な曲が多いよね
一歌:わかります。 私もあんな風にミクの曲を作れたらなって、 ずっと憧れてたので!
一歌:……でも、いざやってみると、やっぱり難しいですね
一歌:今まで、たくさんミクの歌ってる曲を聴いてきたんですけど、 そのどれもに作ってる人の想いが込められてて…… すごく素敵だなって思ってたんです
一歌:だから私も、ミクで自分の想いを込めた曲を作りたいって 思ったんですけど……全然うまくいかなくて
一歌:ミクにものびのびと歌ってもらいたいのに、 私の曲が中途半端なせいで、それもできなくて 申し訳ないなって……
奏:星乃さん……
奏:大丈夫だよ。 中途半端なんかじゃないと思うから
一歌:え……?
奏:たしかに、まだ見えにくいけど…… この曲からはほんの少し、支えられるような優しさを感じたんだ
一歌:あ……!
奏:それに、さっき星乃さん、 『イメージに近づかない』って言ってたよね
奏:ってことは、ちゃんと形にしたいものはあるってことだから、 そこに近づければいいだけだと思う
奏:だから……星乃さんがどんな曲を作ろうと思ってるのか、 具体的に聞いてもいいかな?
一歌:どんな曲——
一歌:……実はこの曲は、 私の大切な人達に聴いてもらいたいって気持ちで作ってたんです
奏:大切な人達に……?
一歌:はい。その人達に聴いてもらうなら、 どんな曲がいいかなって考えて——
一歌:自分を変えるために、一歩踏み出す勇気を持とうとしている人の 背中を押せるような——
一歌:つらかったことに向き合って、 自分の限界を越えようと頑張ってる人を、応援できるような——
一歌:本当はもっと早く走れるはずなのに、 遠慮してずっと私の隣を走ってくれてる優しい人に 絶対に追いつくから大丈夫だよ、って言えるような——
一歌:そんな——そんな大切な人達を、 隣でそっと支えるような曲を作ろう、って……
奏:…………。 大切な人を、隣で支える……
奏:……そういう救いかたも、あるのかもね
一歌:え?
奏:曲のイメージはわかった。 あと、聞きたいのは楽器編成のことなんだけど……
奏:これってもしかして、 完成したらLeo/needでもやろうと思って作ってる?
一歌:あ……そうなんです! みんなで弾くことを想像しながら、 音を乗せていってるんですけど……
一歌:いざ再生すると、なんだか違うような気がしてて。 本当にこんな感じだったっけ?って音になっちゃってて……
奏:そうだね——
奏:ギターは問題ない気がするんだけど、 その他の楽器の音が、 この曲にちゃんと落とし込めてない気がするかも
一歌:……! やっぱり……!
一歌:ギターは私自身よく弾いてるから あんまり悩まなかったんですけど、その他の音は、 いつもみんなが演奏してる音を頼りに打ち込んでたので……
奏:そっか。じゃあやっぱりここが、 イメージと噛み合わない原因のひとつかもね。 音が変わるだけで曲全体の雰囲気も変わっちゃうし
奏:こういうのは正直、慣れもある気がするけど……。 それじゃ、根本的な解決にはならないよね
奏:……だからまずは、 どうやったら全体のバランスが取れるか探っていこうか
一歌:……! ありがとうございます!
奏:それじゃあ、具体的に見ていくね。 わたしのパソコンで見たほうが画面が大きくて見やすいと思うから プロジェクトファイルを転送して——
奏:——よし、こっちでも開けた。 いったん、ドラム以外のトラックはミュートするね
一歌:わ、すごい……! やっぱり、作業手慣れてる感じがしますね
奏:そんなに大したことじゃないよ。 画面操作しただけだし
奏:……曲作りはここからだから。 まずは、ドラムの音だけ頭から再生して——
数十分後
一歌:すごい……
一歌:ありがとうございます! 今までで一番、イメージに近づいた気がします……!
奏:……よかった
奏:わたしも、一緒に調整していくうちに、 星乃さんが言ってたこの曲のイメージが どんどん形になっていく感じがして、おもしろかったよ
一歌:本当ですか!?
一歌:私の表現したかったこと、伝わるかな……
奏:ちょっと調整は必要そうだけど、 このまま進めていけば大丈夫だと思うよ
奏:今のままでも、そっと励まされてるような…… そんなイメージがちゃんとあるから
一歌:奏さん……
奏:——なんか、わたしも曲を書きたくなってきたな
一歌:えっ……奏さんも?
奏:うん。 たとえば、こういう雰囲気で……
奏の作った曲:♪————
奏:……うん、いい感じ
一歌:……! す、すごい……こんなにすぐメロディーを作れるなんて……!
奏:わたしは、いつも作ってるからね
奏:……でも、もうちょっと詰めたいな。 Aメロ、ちょっと立ちすぎてたかも
奏:だったら、ここは静かに入って——
一歌:(す、すごいな。まさに作曲家って感じ……)
一歌:(私の曲も、土台は奏さんのおかげで整えられたし……)
一歌:(——あとは自分のパソコンで詰めるの、頑張っていこう!)
第 4 话:選択の先に
数時間後
奏の部屋
一歌:(……ラスサビの入りかた、ちょっと気になるな。 一拍置いてみてもいいかも? ここの波形をずらして——)
一歌:(あっ……! どうしよう、また音がゴチャっとしちゃった……!)
一歌:(……でも、大丈夫。 さっき奏さんから教えてもらったみたいに、 ひとつひとつの音をちゃんと追って調整すれば——)
一歌:(……! すごく、よくなった気がする!)
一歌:(全体通しても、今までと全然違う。 やっぱり、奏さんにアドバイスもらってよかった……!)
一歌:(あとは、もうほとんど仕上げの段階って感じだけど……。 やっぱり、ここのAメロのフレーズ、ちょっと気になるな)
一歌:(ここは『勇気』のニュアンスを入れたいから、 ギターの音を強めに入れるのもありだけど、 ベースの音も入れて重厚感出すのもありな気がする)
一歌:(うーん、ギターを立てるか、厚みを持たせるか……。 どっちの表現がいいのかな)
一歌:(……いったん、ふたつのパターン作ってみよう!)
奏:うん、こんな感じかな。 いいフレーズができた……って
奏:ご、ごめん、星乃さん。 いい曲ができそうだったから、ついそっちに集中しちゃって。 星乃さんの曲はどう——
穂波の声:宵崎さん、一歌ちゃん。 今、お邪魔しても大丈夫ですか?
一歌:あ……
奏:うん、大丈夫だよ
穂波:……失礼します
穂波:ふたりとも、作曲順調そうですか? お茶と……おにぎりを作ったので、 よかったらどうかなと思って
一歌:わ……ありがとう、穂波
奏:せっかくだし、いただこうかな
穂波:——ということは、ふたりとも数時間、 黙々と作業してたんですね
奏:……ごめん、星乃さん。 すっかり自分の世界に入っちゃって
一歌:全然大丈夫です。 基本的なことを教えてもらえたおかげで、 どんどんイメージどおりに曲ができていったので
穂波:そうなんだ……! よかったね、一歌ちゃん
一歌:うん。でも……、 さっき、また新しい問題が出てきちゃって
奏:新しい問題?
一歌:はい……。 ひとつのフレーズで、2パターン作ってみたんですけど
一歌:ふたつとも悪くない気がして、 どっちを採用すればいいか、悩んじゃって……
奏:……なるほどね
奏:DTMの難しいところだよね。 生の楽器と違って限られたものを使うわけじゃないから、 プラグインだけで選択肢がたくさんあるし
一歌:そうですよね……。 私も最初、ギターだけでこんなにたくさんの音があるんだって 驚きました
奏:わかるな。 わたしも始めたばかりの頃は苦労したから
一歌:奏さんも……?
奏:うん。本当に、最初から最後までずっと選択の連続で、 それが正解かどうかなんてわからないし、 自分だけじゃなくて、誰も答えを知らないし
奏:星乃さんみたいに、究極の2択で迷うこともあって……。 やっぱり、選ぶのは勇気が必要なんだけど
奏:そこに向き合わないと作曲は終わらないから、 勇気を持って、『こっちが正しい道だ』って 信じて進むしかないんじゃないかな
一歌:あ……
奏:そうやって手探りで進んでいって、 最後、聴いてくれる人に喜んでもらえる曲が作れた時、 DTMっておもしろいなって思ってもらえると思うよ
穂波:『勇気を持って、正しいと思った道を信じて進む』……
穂波:……なんだか、人生の話みたいですね
奏:そ、そうかな。 そこまで話を大きくしたつもりはなかったんだけど
穂波:あ……ごめんなさい。 わたし、前にそういうことで悩んだ経験があるので……
穂波:……何かを選んで決める勇気って、曲作りだけじゃなくて、 いろんな場面で必要になってくるんだなあ、って
穂波:だから……、 今の宵崎さんの言葉、大事にしたいって思います
奏:望月さん……
一歌:(……私も、そうだ)
一歌:(私も……決めきれなかったせいで、 すごく後悔したことがある)
一歌:(咲希が学校に来てくれて、 また昔みたいに4人でいられる、って…… そうしたいなって思ってたのに)
一歌:(どうしたらいいのかわからなくて……結局、何もできなくて)
一歌:(でも、ちゃんと向き合って、 みんなと一緒にいたいって、そう決めてからは——)
一歌:……穂波の言ってること、私にもわかるよ
穂波:一歌ちゃん……
一歌:だから——
一歌:——やっぱり、勇気を出さないとね。 自分の選択を信じて進まなくちゃ
穂波:……そうだね
奏:じゃあ、望月さんのおにぎりをいただいてから、 後半戦頑張ろうか
一歌:……はい! おにぎり食べたら、私ももう一度考えて…… ちゃんと決めたいと思います!
穂波:ふふっ、こっちが鮭で、こっちがたらこだよ。 好きなほうを食べてね
一歌:……どっちにしようかな。 鮭も美味しそうだけど、たらこも食べたいし……
一歌:でも、ふたつはお腹に入らないし……。 ……うーん……悩むな……
穂波:あはは……。 一歌ちゃん、真面目に考えすぎじゃないかなあ?
奏:これもある意味、2択だけど…… やっぱり、決めることって難しいよね
第 5 话:動画撮影!
数日後
レッスンスタジオ
咲希:ついに……ついにっ……!
咲希:Leo/need、動画デビューの日が やってまいりました~っ!
リン:『イエ~イっ♪』
MEIKO:『ふふ、楽しみだね。 今日のために、みんないっぱい練習したんでしょ?』
リン:『いっちーも、最高の歌を歌えるようにがんばらなくちゃね!』
一歌:ふあっ……。 ……あ、うん、そうだね
ミク:『……もしかして一歌、あんまり寝てない?』
ルカ:『練習しすぎで疲れているのかしら?』
一歌:あっ、これは……。 もちろん練習はしたけど、別のことでちょっと……
咲希:えー、なになに!? 遅くまでゲームしちゃったとか!?
志歩:咲希じゃないんだから、それはないでしょ
咲希:アタシはゲームで寝不足になったことは……、 ……ちょっとしかないよ! 漫画とか映画だとたまにあるけど!
レン:『どっちも似たようなもんじゃないか?』
穂波:……一歌ちゃん、大丈夫? もしかして——
一歌:あ、大丈夫。 心配するようなことはないよ
一歌:むしろ、もうすぐ完成ってとこまできてるんだ。 今は最終調整をやってるところ
穂波:……! そうだったんだ、よかった……!
一歌:……でも、やっぱり、どっちかひとつを 選ぶところで時間がかかってるんだよね。 奏さんの言葉を思い出して、なんとか進めてるんだけど……
穂波:たくさん考えるのは悪いことじゃないと思うよ。 一歌ちゃんの曲、楽しみにしてるね
咲希:なになに、なんの話~?
一歌:あっ……な、なんでもないよ!
一歌:それじゃあ、動画撮ろうか。 ミク達にもアドバイスもらうために、 わざわざセカイから来てもらったんだし
穂波:そ、そうだね。 ……実はわたし、スマホ用の三脚を何個か持ってきたの。 これがあったほうが綺麗に撮れるんじゃないかなと思って
KAITO:『へえ……そんなのがあるんだ』
咲希:今日ほなちゃん荷物いっぱい持ってるなって思ってたけど、 そんなの用意してきてくれてたんだね!
咲希:……でも、三脚ってそんなにいるの? カメラひとつで撮るんだよね?
穂波:ううん、ひとつのカメラだと動きのある動画にできないから、 違う角度で撮影したものを編集で切ってつないでいって、 MVの見せかたを工夫できたらいいなって思ってるんだ
穂波:みんなのスマホも借りたいんだけど……大丈夫かな?
志歩:それは別に全然いいけど……
咲希:ほなちゃんはいつも頼りになるけど、 今日のほなちゃんはピカイチって感じだね!
穂波:そ、そんな風に言われるほど、 たいしたことはしてないよ!
穂波:でも、Leo/needのこれからを決める大事な動画だから…… できる限りのことはやりたいと思って
一歌:穂波……
咲希:それじゃあ、いい動画バッチリ撮っちゃお! はーい、みんな、スタンバイスタンバイ~♪
一歌:わわっ……
志歩:もう。咲希、押さないでよ
一歌:……とりあえず、それぞれ立ち位置にはついたけど……
咲希:どうかな? ちゃんと枠に収まってる?
ミク:『こっちのカメラは問題なさそうだよ』
リン:『こっちもバッチリ!』
MEIKO:『私達のほうもいい感じだから、 このまま撮って大丈夫じゃないかな』
一歌:よし、それじゃあ—— さっそく、演奏しようか
穂波:う、うん……
咲希:……なんか……ライブとは違う緊張感があるね……
志歩:まあでも、一発撮りじゃないし、 気に入らなかったら、やり直すこともできるから、 ひとまずやってみるって感じでもいいんじゃない?
一歌:……そうだね。 じゃあ、まずは練習撮りってことで、 力抜いてやってみようか
穂波:うん。それじゃあカウント取るね。 ワン、ツー、スリー、フォー……
一歌:♪————
一歌:(……なんだろう。みんなちゃんとやってるはずなんだけど)
一歌:(いつもと違って、なんか……)
リン:『……う~~~~ん?』
ルカ:『もう何回か撮ってるけど……。 やっぱりちょっと、どれも違う感じがするわね……』
レン:『そうだな……。 今までのも、悪くはないんだけど……』
リン:『でも、なんか、こう……。 ううっ、なんか~~っ!!』
KAITO:『……勢いが出てない気がする』
リン:『それだっ! さっすがカイト兄!』
ミク:『たしかに、全力で弾いてるようには見えるけど……。 なんか、乗り切れてない感じはしちゃうかもね』
一歌:…………
志歩:……一回、止めよっか
咲希:やっぱり、いつもの勢いが足りない感じがするよね
穂波:撮り直すたびに、意識してはいるんだけど…… 何度やっても、ライブの時みたいな感覚はないよね
一歌:ライブの時みたいな感覚……
一歌:……うん。 あの時は本当に、みんなが全力を出し切れて…… なんか、ひとつひとつの音が輝いてるような気がした
咲希:あ、それ、わかる! ライブの前から、緊張の仕方が いつもと違うなとは思ってたんだけど……
咲希:ライブ中も、感覚が全然違ったんだよね! もちろん、お客さんの声とかは聞こえるんだけど、 すごく演奏に集中できたっていうか……
一歌:たしかに、あの感覚に入れたら、 すごくいいものが撮れる気がする
志歩:……難しいね。 演奏の勢いは、やっぱり会場の空気感とか お客さんの熱量があってこそだし
KAITO:『……それなら、ライブを再現してみたら?』
咲希:えっ……どういうことですか?
レン:『オレ、ちょっとわかったかも。 会場の再現はさすがに難しいけど……』
レン:『お客さんの再現ならできるんじゃないか? オレ達が代わりをすればさ!』
一歌:それって……
リン:『あ~っ、あたしもわかっちゃった!』
リン:『つまり、みんなには、 あたし達だけのLeo/need特別ライブを やってもらうってことだよ☆』
穂波:リンちゃん達のために、ライブを……!
咲希:……たしかに、そういう風に考えたら、 いい演奏になりそう!
志歩:いいかもね。 演奏が乗らないのは、曲を届けたいお客さんが 明確じゃなかったからかもしれないし
一歌:……ミク達に私達の曲を届けられるように、 全力で演奏するよ
ミク:『ふふ、お手並み拝見だね』
志歩:よし、それじゃあ、Leo/need特別ライブ——
志歩:——いくよ
一歌:うん!
第 6 话:選択する勇気
レッスンスタジオ
一歌:♪————!
一歌:(ミク達が、聴いてくれてる……)
一歌:(そういえばミク達に、こんな正面から しっかりライブ見てもらうのって久しぶりかも)
一歌:(いつもはステージの陰とか、機材で隠れたとことか、 そんな場所から見てもらってばっかだし——)
一歌:(——ステージからは、みんなの顔が見えなかった)
一歌:(でも、こんなに楽しそうにしてくれてたんだね)
一歌:(それに、いつも支えてもらってばっかりだし、 この前のライブに向けてもすごく助けてもらったのに……。 ちゃんとしたお礼は、できてなかった)
一歌:(だから……だから今、私達は、この音で——!)
ルカ:『……みんなの想い、すごく強く感じるわ。 もしかしたら、この前のライブの時より、ずっと——』
ミク:『……うん。きっと、私達のために歌ってくれてるからだね。 ……心の奥に響いてくる』
ミク:『伝わってるよ、みんな』
ミク:『……私達のほうこそ、ありがとう』
一歌:♪————……
咲希:どうだった!? アタシ達の演奏!
ルカ:『……とってもよかったわ。 今までのどの演奏よりも、心に響いてきて』
レン:『オレもビリビリきたよ! やっぱLeo/needの演奏はこうじゃなくちゃな!』
一歌:そう言ってもらえて、よかった……
KAITO:『……あとは、みんなで確かめてみればいいんじゃないかな』
咲希:えっ? みんなで、って——
咲希:——あっ、そっか! 撮影してたこと、すっかり忘れてたよ~!
志歩:もう……。私も夢中になったからわかるけど、 目的と手段逆になりすぎでしょ
リン:『撮ったやつ、早く見てみようよ! きっとすっごくいいのになってると思うんだ~!』
穂波:そうだね。 わたしもどんな風に撮れてるか、楽しみだな
咲希:おお~っ、これは……!
志歩:……いいね。 勢いもあって、聴いててすっと耳に入ってくる
一歌:やっぱりミク達が聴いてくれたおかげで、 私達もいい演奏ができた感じしたよね
穂波:……ミクちゃん達、ありがとう!
ミク:『ふふ。こちらこそ、いい演奏を聴かせてくれてありがとう』
一歌:改めて動画で見て思ったけど……。 私達って、お客さんからはこんな風に見えてるんだね……
穂波:なんかちょっと恥ずかしいよね。 わたし、すごく必死な顔してるし……
咲希:えー、恥ずかしくなんてないよ! ほなちゃん、すっごくかっこいいし!
リン:『うんうん、ほなっちの真剣さが伝わってきて、 あたしも、すっごくいいと思うよ! でも……サッキーは逆に、いっつもニッコニコだよね~!』
咲希:えっ、アタシ?
MEIKO:『たしかに、咲希はいつでも楽しそうに演奏するよね』
志歩:……本当にね。まあ、それが咲希のよさなんだけど……、 映像でもそういう雰囲気、ちゃんと出てていいね
咲希:え~っ、ふたりにそんな風に言われると、 なんか照れちゃうな~……って
咲希:あっ、今のいっちゃん見た!? 高いとこ歌う時の、喉グッ!ってなるの、かっこいい~っ!
一歌:そ、そんなまじまじ見られると恥ずかしいから……
レン:『というか、これで無事撮影も終わったし、 あとはサイトにあげるだけか?』
ミク:『まだ編集作業があるって言ってなかったっけ?』
穂波:あ……うん。 動画の方向性を決めたいから、 少しみんなの時間をもらってもいいかな?
穂波:そのために今日は……、 ノートパソコンも持ってきたの
咲希:わ~、今日のほなちゃんのバッグ、 魔法のポッケみたいにいろいろ出てくるね!
一歌:重かったんじゃない? 言ってくれたら分担して持ったのに
穂波:気にしないで、たいしたことじゃないから
穂波:ええっと、それじゃあ早速 今撮った動画をパソコンに送って、 動画作成ソフトに取り込んで……
志歩:……へえ。こんなに簡単に取り込めるんだ
リン:『でも、なんだか難しそうな画面だね……。 どこをいじったらいいのかも、よくわかんないし』
穂波:わたしも慣れるのに時間かかったけど、 ネットでやりかたを検索しながら触ってたら 少しだけわかるようになってきたんだ
穂波:えっと、このタブから選んで……。 ほら、簡単にかっこいいエフェクトがつけられるんだよ
一歌:……! すごい、画面にモヤがかかって、 ちょっと雰囲気ある感じになった……!
レン:『これ選ぶだけで、ここまで変わるのか? なんだかおもしろいな』
穂波:これだけじゃなくて、他にもたくさんあるんだよ。 例えば……この、お花がふわって咲くのとか
ルカ:『あら、可愛いわね』
志歩:……たしかに、可愛いけど。 この動画の雰囲気にはあってなくない?
MEIKO:『歌ってるの、こんなファンシーな感じの曲でもないしね……』
穂波:こ、これは、試しに置いただけだから。 他にもたくさん種類があるから、その中から選べるんだよ
一歌:(……たくさんの種類の中から、選ぶ……)
咲希:なるほどお……。 これは、なかなかの沼ですなあ
KAITO:『……結構、時間がかかりそうだね』
穂波:でも、いろいろ試すのも、結構楽しいんです。 ……って言っても、まだ練習で触ってみただけで、 本格的に動画を編集したことはないんですけど
志歩:たしかに、こうやって見てるだけでも、おもしろいね
咲希:でも、初めてなのにこんな操作できるなんて、 ほなちゃん、ホントに勉強してきてくれたんだなあ~
穂波:わたしにできるのは、本当に初歩的なところだけだけどね。 あとは、ここのレバーみたいなのをいじって、 色を変えられたりするんだけど……
一歌:本当だ……全体的に画面が暗くなった
穂波:ふふっ、おもしろいよね
穂波:家で動画のこと考えてた時は、 サビの部分だけ、こうやって少し暗くして悲しさを 表現するのもいいんじゃないかなって思ってたんだけど……
穂波:今やってみたら、オリジナルのままでも綺麗だね。 ……みんなはどう思う?
ミク:『表現としてはどっちもありそうだね』
志歩:うん。私もどっちもありだと思うけど、 どっちかっていうとオリジナルのほうがいいかも
志歩:なんとなくだけど、ここで暗くすると、 曲への集中が切れるような気がする
咲希:うーん、そうかな~!? しほちゃんの言うこと、たしかにわかるんだけど……
咲希:アタシは暗くするほうが好きだな~! ほなちゃんも言ってたけど、 そのほうが、曲の意味が伝わりやすくなるかなって……
MEIKO:『意見がわかれたね』
穂波:……一歌ちゃんはどうかな?
一歌:…………。 私は——
一歌:(志歩の言うことも咲希の言うことも、 どっちが間違ってるとかじゃない)
一歌:(……これも曲作りと同じで、 選択する勇気が必要なところ……)
一歌:(……それなら、私は——)
一歌:——私も、暗くしたほうがいいと思う
一歌:咲希が言ってたように、 曲の雰囲気がわかりやすいっていうのもそうだし、 こういう表現は動画でしかできないなって思ったから
一歌:志歩が言ってた曲の集中が切れるっていうのも、 私は悪い意味じゃない気がしてて……
一歌:見てる人が『あ、悲しみを表現してるんだ』ってわかって はっとするタイミングになるんじゃないかなって考えたら、 演出としてありなんじゃないかな
穂波:一歌ちゃん……
一歌:あ、もちろん、動画のことは今穂波が一番詳しいと思うから、 最終的には穂波の判断で大丈夫だけど……
穂波:ありがとう。 みんなの意見、とっても参考になったよ
穂波:どっちの言うことも、わかるなあって思ったんだけど…… わたしも一歌ちゃんと同じで、 暗くするほうでやりたいなって思った
穂波:やっぱり動画はライブとは少し違って 生演奏みたいな臨場感を100%乗せられない分、 表現を演出で補うことができると思うから
志歩:……なるほどね。 私は結構、音そのものにこだわりすぎてたかも
志歩:でもよく考えたら、この動画を見る人は、 音楽がものすごく好きって人ばっかりじゃないだろうし……
志歩:そういう人達にも私達の曲を聴いてもらうのが 動画を投稿する目的のひとつだしね。 私も、それで進めていいと思うよ
一歌:……そっか
穂波:じゃあ、方向性はこれで、 あとは家に持ち帰ってやってみるね
リン:『わ~、どんな感じになるんだろ! 楽しみだな~っ♪』
咲希:なんか、今ほなちゃんが作業してるの 見てるだけでいい感じのができそうだったよね!
咲希:この先も動画あげるの、楽しみになってきちゃった~♪
ミク:『次の動画は何を撮るか決まってるの?』
咲希:もっちろん、新曲だよ! アタシ達の曲をいいなって思ってくれた人達に、 次も絶対いい曲届けたいしね!
志歩:それはわかるけど、 そんなにすぐ新曲はできないでしょ
咲希:……た、たしかに前みたいに すっごく考えていい曲作ろうとしたら、 時間かかっちゃうかもしれないけど……
咲希:でも、アタシ達の曲を楽しみにしてくれる人もいるし、 Leo/needの新曲を、動画でもたくさんの人達に届けるために、 精一杯がんばるよ!
一歌:(あ……)
一歌:(……やっぱり、私も作曲できたほうが、 これからのLeo/needのためになるよね)
一歌:(ついこの前までは、全然目処が立ってなかったけど……)
一歌:(……大丈夫。今作ってる曲は、自信がある)
一歌:(早く完成させて、みんなに聴かせたいな)
第 7 话:世界に響く歌声を
一歌の部屋
一歌:ここはやっぱり、こっちの音にしよう。 本当に少しの差だけど、この曲で表現したい優しさに はまってる気がするし
一歌:……あとは、Cメロとラスサビの変調のところを整えて——
一歌:——うん、Cメロの調整はこれで大丈夫
一歌:そうだ、このCメロのところ…… ここも最後まで、どういうフレーズにするか悩んだんだよね
一歌:でも、こだわってよかったな。 Cメロって曲の中で1回しか流れなくて、 繰り返し流れるサビとは違った意味で存在感があるから……
一歌:——みんなの笑顔のイメージを入れたんだ。 一瞬のフレーズの中の、忘れられない輝きにしたくて
一歌:だから、ここはエフェクトは入れない。 素のままの飾らない音にして、あとは……
一歌:……うん。これでどうかな
一歌の作った曲:♪————
一歌:……っ! この曲……私がイメージしてたのより……!
一歌:……で、でも、それはさすがに自己評価高すぎかな。 1回ミクに歌ってもらって冷静になろう
一歌:どうかな、ミク……
ミク:♪————
一歌:…………っ!
ミク:♪————
一歌:(……すごい)
一歌:(これ……、ミクに聴いてもらえたら、きっと……)
一歌:……聴いて、もらわなきゃ……
一歌:ミクに……この曲を——!
教室のセカイ
ミク:……なんだか、今日の音、調子いいかも。 誰かと合わせたい気分——
一歌:ミク、いるっ!?
ミク:わ、びっくりした……!
ミク:どうしたの、そんなに慌てて。 ……なんか、すごく嬉しそうだけど
一歌:……っ、そうなんだ。 実は私、ちょっと前から曲を作ってて……
ミク:曲を?
一歌:……うん。たくさん、悩んだんだけど、 今日、やっと……やっと、自分でも納得できる曲が完成したの。 それで——
一歌:ミクに聴いてほしくて……。 いいかな……!
ミク:もちろん。 聴かせて、一歌の曲
一歌:ど、どうだった……?
ミク:……すごい
ミク:一歌が込めた気持ちが伝わってきて……。 とっても、いい曲だと思ったよ
一歌:本当……!?
ミク:うん。みんなの力になりたいって気持ちのまっすぐさとか、 みんなの笑顔の輝きが本当に大切なんだってこと…… ひとつひとつの音が、優しく教えてくれる
ミク:楽器の構成もLeo/needと同じだし、 これは、みんなのことをイメージしてる曲なんだね
一歌:あ……
一歌:……そうなんだ。 これは、みんなで演奏するために作った曲だから
一歌:私が作曲してることは、まだ穂波しか知らないけど……
一歌:でも、ミクにもいい曲って言ってもらえたし、 これからみんなにも聴いてもらって、 新曲として発表できたらいいなって思ってる
ミク:……そっか。それなら——
ミク:私、この曲をとおして、 一歌達の世界でみんなと一緒に歌えるんだ
一歌:ミク……
ミク:もちろん、私と一歌の世界の私は違うけど…… なんだか、この曲を聴いてると、 みんなと私が繋がってるような気がするよ
一歌:(あ……)
一歌:……それ、私も感じてた
一歌:たくさん悩んで、いろんなメロディーを作って、 そのたびに、ミクに歌ってもらって……
一歌:最初は、私の作ったワンフレーズを ミクに歌ってもらえるってことだけで嬉しかった。でも……
一歌:何度も作り直してるうちに、 未完成のメロディーをミクに歌ってもらうのが 申し訳ない気持ちになったりもしたんだよね
ミク:一歌……
一歌:でも、ある人のおかげで、 イメージしてたものが少しずつ曲に落とし込めるようになって、 自分でも納得できるメロディーが作れるようになったんだ
一歌:それで……、 そのメロディーを初めてミクに歌ってもらった時、私……
一歌:——ミクの心と私の心が、シンクロしたように感じたの
一歌:私がこの曲で表現したかった、みんなに寄り添いたい気持ちを、 みんなの笑顔のまぶしさを……ミクは歌声をとおして、 『知ってるよ』って受け止めてくれた
一歌:それが、本当に嬉しかったんだ。 だからさっき曲が完成した時、私——
一歌:ああ、この曲は、ミクと作ったんだって……。 私だけで作った曲じゃないんだって、そう思ったんだよ
ミク:……そうだね。 一歌の世界の私も、そう思ってるはずだよ
ミク:だって、一歌の曲で歌う私は—— とっても楽しそうだったから
一歌:ミク……
ミク:……私も、一歌が一歌の世界の私と作ったこの曲を、 たくさんの人に……世界中の人に聴いてほしいと思う
ミク:きっと、必要な人達の胸に届くはずだから。 一歌の想いも、このメロディーも
一歌:……うん。 私も、そうなったらいいなって思ってる
ミク:……ねえ、一歌。 よかったら、私も歌わせてもらっていいかな
一歌:えっ……
ミク:私も、一歌の曲を歌いたいから
一歌:っ……!
一歌:じゃあ、私も——、私も一緒に歌っていい?
ミク:……ダメだって、言うと思う?
ミク:一緒に歌おう!
ミク:♪————
一歌:……っ、私も——
一歌:♪————
ミク:♪————
一歌:(…………!)
一歌:(私の声と、ミクの声が、重なって——)
一歌・ミク:『♪————』
一歌:(——すごく、楽しい……!)
一歌:(ミクと一緒に作った曲を、 ミクと一緒に歌うことができて……)
一歌:(今までで一番、ミクを近くに感じてる)
一歌:(……音楽って、すごいな。 誰かの心に響かせることができる。 誰かと……心を繋げることができる)
一歌:(……もっと、作っていきたい。ミクと一緒に)
一歌:(たくさんの人の、心を震わせられるような曲を——)
一歌・ミク:『♪————』
第 8 话:届けたい音色
翌日
レッスンスタジオ
一歌の作った曲:♪————
ミク:『……うん。やっぱりいい曲だね』
ミク:『あとは今日、みんなにこの曲を聴いてもらって 感想を聞くだけかな』
一歌:う……うん……
ミク:『一歌、緊張してる?』
一歌:そ、それはそうだよ。 初めて形にした曲だし
一歌:それに、いつも咲希が作ってくれる曲はすごくいいから……。 そのレベルに追いつけてるか不安なんだ
ミク:『……心配しなくていいんじゃないかな。 音楽って、誰かと比べるものじゃないし』
ミク:『私は、一歌の曲を聴いて、 一歌の伝えたい気持ちに触れられた。 ……だから、それでいいと思う』
一歌:ミク……
一歌:……よかった。今日ミクに一緒に来てもらって。 なんだか、初めて歌詞をみんなに見てもらった時くらい すごく緊張してて——
咲希の声:うわ~、もうこんな時間~!? アタシの用事手伝わせちゃってホントごめ~ん!
一歌:あ……
ミク:『来たみたいだね。 ……頑張って、一歌』
咲希:いっちゃ~~んっ、遅くなってごめ~~んっ! 先生に捕まっちゃって~!
一歌:み、みんな、お疲れさま
志歩:あれ? ミクも来てたんだ
ミク:『ちょっと、一歌と話してたんだ』
咲希:えっ、なんの話?
一歌:あ、え、え~っと……
一歌:じ、実は……今日、みんなに聞いてほしいことがあって
穂波:……! もしかして……
咲希:え~っ、なになにっ!? 学校の近くにできたパンケーキ屋さんの話っ!? アタシもみんなと行きたかったんだ~!
志歩:絶対違うから、咲希は静かにしてて
一歌:あ……あはは、実はね……、その……
一歌:曲を作ってみたから、聴いてもらえないかな
志歩:曲——……って
志歩:一歌が作曲したってこと?
一歌:——うん
咲希:えーっ!? いっちゃんが作曲っ!?
咲希:すごいすご~いっ! まさかそんなことしてるなんて、全然思わなかった! 聴いてみたいな~!
穂波:そっか……やっとできたんだ。 よかったね、一歌ちゃん!
咲希:え……もしかして、ほなちゃん知ってたの?
穂波:あっ……実はそうなの。 偶然、一歌ちゃんが作ってる曲を聴いちゃって……
咲希:え~っ! なんで言ってくれなかったの~っ!?
一歌:穂波は悪くないよ。 ちゃんと完成したものをみんなに聴いてもらいたかったから、 私から黙っててってお願いしたんだ
ミク:『……ふふっ』
咲希:……あ。もしかしてその笑いは、 ミクちゃんも知ってるぞって感じ?
ミク:『まあね。私が聴いたのは昨日だけど』
咲希:ずるいずるい~! アタシにも聴かせてよ~!
志歩:私も興味あるな。一歌の作った曲
一歌:も、もちろん、そのつもりで話したんだよ。 やっぱり、ちょっと緊張するけど…… 正直な感想を教えてくれると嬉しいな
一歌:えっと……じゃあ——再生するね
咲希:……わあっ……
咲希:すっっっごく、すてきな曲だったね! なんていうか……
咲希:いっちゃんって感じがする! あったかくて……、歌詞にも、優しさがあって、 大事な時に側にいてくれてる感じ
志歩:……うん。包み込んでくれるみたいな…… 一歌らしさが出てる曲で、私も好きだな
一歌:ふたりとも、ありがとう……!
ミク:『志歩って一歌のこと、そんな風に思ってたんだ』
志歩:た、ただの感想だし、他意はないから
穂波:ミクちゃんの声も、すごく綺麗だったよね。 曲のイメージにぴったりあってて…… このミクちゃんは、なんか雰囲気が一歌ちゃんと似てる気がする
一歌:え……私とミクが?
穂波:うん。なんだろう…… ミクちゃんと一歌ちゃんの気持ちが 重なってる感じがするのかな?
穂波:この歌声聴いたら、一歌ちゃんがミクちゃんのこと 本当に好きなんだなって伝わってきたよ
一歌:そ、っか……
一歌:……ありがとう
咲希:……ねえねえ。でもこれって、 いっちゃんが趣味で作った曲……なんだよね?
咲希:アタシこの曲、Leo/needでも やりたいなって思ったんだけど……ダメかなっ?
一歌:…………!
穂波:わたしも、演奏してみたいな。 みんなと合わせたら、どんな風になるのか気になってたんだ
志歩:……一歌もこの曲、そのつもりで作ったんじゃない? 楽器の編成や、曲に込められてる気持ち…… 全部がLeo/needらしいって思ったし
一歌:……うん。志歩の言うとおりだよ
咲希:じゃあ……!
一歌:……みんなさえよければ……。 この曲、Leo/needの新曲として、演奏したいな
咲希:いいに決まってるよ~! いっちゃんの作曲家デビューだね~っ♪
穂波:あ……それなら、ひとつ提案があるんだけど……
穂波:この曲、わたし達の演奏動画とは別に、 ミクちゃんのままの動画を作るのはどうかな?
穂波:ミクちゃんの声がすごく綺麗だったから、 外しちゃうのは、もったいないなって思って
一歌:それって…… この曲で演奏をしてる動画と、 ミクが歌う動画のふたつを作るってこと?
咲希:それ、すごくいいかも! ミクちゃんの動画、アタシも結構好きでつい見ちゃうし!
志歩:……たしかにね。それに——
志歩:ミクのことを好きな人は多いし、 動画にしたら、たくさんの人にこの曲が届くんじゃないかな
一歌:ミクの声で、私の曲がたくさんの人に——
ミク:……私も、一歌が一歌の世界の私と作ったこの曲を、 たくさんの人に……世界中の人に聴いてほしいと思う
ミク:きっと、必要な人達の胸に届くはずだから。 一歌の想いも、このメロディーも
一歌:(……ミク——)
一歌:……そうだよね
一歌:私も、たくさんの人達に届けたいな
一歌:私達の曲を……ミクと一緒に——!
数日後
スクランブル交差点
???:はあ……休み返上してライブハウスまで出向いたってのに、 今日は空振りだったな
???:でもまあ、そんなにあったら苦労しないんだよな、 原石ってやつは。 その点——
???:——この前のライブは特別だったな
???:だが、あのバンドに関しては情報が足りなすぎる。 女子高生なら、動画上げたりSNSで宣伝流すくらい してるもんかと思ったが……
???:あのライブのあとに動画サイトを探しても、 チャンネル開設すらしていないようだったし——……ん?
???:こいつは……!
???:登録者数4人……全員身内? チャンネル開設したばかりなのか
???:——へえ、ミクの曲も投稿してるんだな
???:Leo/need…… 引き続き追いかけてみてもよさそうだ