活动剧情
Find A Way Out
活动ID:79
第 1 话:乾杯!
WEEKEND GARAGE
彰人:おい、遠野から連絡あったか?
洸太郎:おう! もうすぐ着くから、先に始めてくれってさ
彰人:そうか。それなら、先に始めちまうか
彰人:——そんじゃ、全員準備はできたな?
こはね:うん。こっちは大丈夫だよ
達也:俺らのほうもオーケーだ
彰人:ちょっと時間あいちまったが、オレ達の セカンドイベント『JET』もうまくいったっつーことで——
彰人:——乾杯!
全員:『かんぱーい!』
達也:店、使わせてもらって悪いな
杏:ううん、全然気にしないで! 今日は父さん用事があって お昼は休業する予定だったし、常連さんもみんな知ってるから
洸太郎:じゃあ、今日は思いっきり盛り上がろうぜ!
洸太郎:お前ら知ってるか? あのイベント、かなり評判になってるみたいだぞ!
達也:前回以上に盛況だったからな。 特にVivid BAD SQUAD、お前らが良かった
杏:あはは、ありがと! 最初にいれた冬弥の曲も、 なんとか仕上げまで間に合ってよかったよね~
こはね:どうしてもあの曲を歌いたかったから、 お客さんも喜んでくれて、嬉しかったね
彰人:(たしかにあのイベントは——かなり手応えがあったな)
イベント当日
ライブハウス
彰人:今回のオレ達の役目は、空気を盛り上げまくって、 それを三田達につなぐことだ
彰人:つーわけで、1曲目からぶちかますぞ! お前ら、準備はいいな?
杏:当たり前じゃん! バッチリ決めるよ!
冬弥:ああ。今すぐにでも歌いたい気持ちだ!
彰人:よし——セカンドイベント『JET』、いくぞ!
彰人・冬弥:『♪————!』
彰人:(やっぱり、冬弥の曲を最初に持ってきて正解だったな。 背中を押されてるみてえに、自由に歌える……!)
こはね:♪——! ——!!
彰人:(こはねのリードもいい感じだ。 冬弥の曲と杏のリリックをうまく表現してるし、 オレ達も続かねえとって思わされる)
杏:♪——————!!
彰人:(客の反応も—— まだ1曲目だってのに、会場の温度が上がってる)
彰人:(だが——まだ足りねえ)
彰人:(もっとだ——もっと、熱くしてやる!)
彰人:♪——————!!
観客達:すげえイベントだったな……!
観客達:遠野がすごいのは前からわかってたけど…… EVERがあんな曲も歌えるなんて知らなかったわ
観客達:でも特にすごかったのはVivid BAD SQUADだな! あいつらの新曲、なんか泣きそうになっちゃったよ!
観客達:なんか、こいつらのイベントは熱いだけじゃなくて、 見ててわくわくしてくるんだよな……!
観客達:ああ! さすが、『RAD WEEKENDを超える』って 言うだけあるよな……
洸太郎:作戦どおり、1曲目からすげえ盛り上がってたな! EVERとVivid BAD SQUADの出番を 入れ替えてよかった!
達也:正直、青柳の曲には驚かされたぞ
EVERのメンバーA:だな。まさかあんなに良いトラックが作れるなんて!
冬弥:ありがとうございます。自分でも納得のいく曲が できたので、そう言ってもらえて嬉しいです
彰人:でも結果的に、イベント直前で出演順を変えたせいで セトリも変更してもらうことになっちまって、すみませんでした
達也:気にするな、あれが最善だった。 青柳のトラックを聴いた瞬間、 最初にドカンと聴かせるべきだって思ったしな
杏:でも、EVERのトリもすごかったよね! 新曲も挑戦的だって、すごく話題になってるし!
彰人:ああ。あの短い期間でもキッチリ仕上げてきて、 やっぱ場数踏んでるとちげえなって思った
達也:そりゃ、俺達だって踏ん張るさ。 青柳のもよかったが、俺達にとっては、 お前と白石のトラックがいい刺激になったからな
達也:青柳のトラックに感化されたのかもしれねえが、 元々テーマを決めて話し合ってた 『静と動』のトラックまでガンガン進化していきやがる
達也:俺達も同じテーマで新曲を作ってた分、 お前らを見てたらケツに火が付いたよ。 こりゃ気合い入れねえと、ってよ
彰人:じゃ、まあ…… 無茶なスケジュールで仕上げた甲斐もあったみたいっすね
杏:あ! もしかして——
新:——みんな、遅くなっちゃってごめんね
杏:いらっしゃい、新! ていうか、遅刻なんて珍しくない?
新:ああ、ちょっと迷っちゃってさ
彰人:迷った? もしかして、ここに来たことなかったのか?
新:うん、しばらくビビッドストリートを離れてたからね。 謙さんが店を出したのもそのあいだだったみたいだし、知らなくて
新:でも、謙さんにはお世話になったから ちゃんと挨拶はしておかないとな
杏:そっか、じゃあ今度また来てよ! 本当は今日、父さんがいればよかったんだけど——
杏の父:——おう、いるぞ
新:……謙さん
杏:あれ、父さん? 今日って用事があったんじゃなかったっけ
杏の父:ちょっとばかり早く終わってな。 ついさっき、裏口から戻ってきた
杏の父:久しぶりだな、新。 最後に会ってから、少し大人びたか?
新:……ご無沙汰しています。 ずっと顔を見せられていなくてすみません
杏の父:かまわねえさ。 お前にもいろいろとあるのはわかってる
杏の父:——それよりお前達のイベント、 なかなか良かったらしいな
彰人:ありがとうございます。 つっても、目標にはまだまだ遠いですけど
新:それでも近づけてるのは、みんなの——特に Vivid BAD SQUADのおかげだよ。 練習の時から、彰人くん達がいい空気を作ってくれるからね
杏の父:ほう、新がそんな風に言うとは、彰人達もさすがだな
彰人:……まあ、そんくらいできねえと、 一緒にイベントやっても意味ないっすから
杏の父:ふ、相変わらず威勢のいいヤツだ。 そういうところは似た者同士だよな、お前らは
杏の父:まあ、なんにせよ新、お前がこの街に戻ってきて いい仲間とやれてるなら、よかったよ
杏の父:相棒にもよろしく伝えておいてくれ。 お前も、気が向いたらいつでも顔を出すといい
新:ありがとうございます。 颯真も、きっと喜ぶと思います
杏の父:——そうだ、このあいだのイベント、 うちの客も見に行ったそうだ
杏の父:いつも辛口なんだが、ヤツにしてはめずらしく褒めてたよ
杏の父:『歌声に覚悟が込められてる。 ああいう本気の連中は見てて面白い』ってな
洸太郎:マジっすか!? おい、聞いたかよみんな! やったな!
冬弥:ああ。そういう評判は、新しい客を呼び込んでくれる。 とてもありがたいな
杏の父:その調子で、次のイベントも頑張れよ
彰人:はい、ありがとうございます
洸太郎:謙さんにそう言ってもらえると、こっちも気合いが入るな!
冬弥:ああ、本当に……。 それに、この前のイベントは個人的に手応えがあった
冬弥:自分の気持ちを曲にするということを、少し掴めたと思う。 これからはトラックメイクという形でも、 イベントやみんなを盛り上げるのに貢献できそうだ
杏:ふふっ。頼もしいけど、その分私達も気合いいれないとね? もっとビリビリするかっこいいトラック作りたいな
彰人:ああ。それぞれ作ったら持ってくるってスタイルは変えねえが、 オレ達も今まで以上に作り込んでいくぞ
こはね:わ、私も……
こはね:——私もいつか、できるように頑張るね
杏の父:じゃあ、オレはそろそろ家のほうに戻る。 邪魔して悪かったな
杏:ううん、ありがとう父さん!
彰人:ありがとうございました
洸太郎:——謙さんにあんな風に言われると、 オレ達、本当にいいイベントやったんだなーって気がしてきたな
彰人:つっても、オレ達はもっと上を目指してんだ。 ここで気を緩めず、むしろ引き締めていかねえとな
杏:うん。欲を言えば注目してもらえてるうちに、 次のイベントもやっちゃえたらいいんだけど……
新:あ、そのことなんだけど——
新:次のイベントは、『Crawl Green』でやってみない?
洸太郎:え!? あの『Crawl Green』!?
彰人:『Crawl Green』……
冬弥:……彰人?
彰人:いや——なんでもねえ
達也:……おい、遠野。お前本気なのか?
新:もちろん、本気だよ
こはね:……えっと、『Crawl Green』って そんなにすごいところなの?
杏:あ、そっか。こはねはまだ知らないよね
冬弥:俺も詳しいわけじゃないが、 ビビッドストリートの人間にとっては、 聖地のようなライブハウスらしい
こはね:聖地……?
第 2 话:伝説が始まった場所
こはね:どうしてそのライブハウスは、聖地なんて呼ばれてるの?
洸太郎:『Crawl Green』は、 RADderがデビューしたハコなんだ!
洸太郎:聞いた話だけどよ。まだ高校生だったRADderが チーム組んで初めてとは思えねえパフォーマンスで、 会場グラグラ揺れるぐらいブチ上げたんだってさ!
洸太郎:——で、このイベントがきっかけで、RADderの名前が この街の外まで広がっていった……ってわけだ!
こはね:そうなんだ、すごいね……!
杏:でも、あそこはオーナーさんが 事前に音源チェックしてるんだよね
杏:それで、オーナーさんからOKがもらえたチームしか ステージに立たせてもらえないんだ。 そういうとこは、ちょっとCOLに似てるかも
達也:ああ、それがとにかく厳しくてな。 俺達も何回か受けたんだが、まだとおしてもらったことがねえ
洸太郎:ってわけで、この街の—— 特にRADderに憧れる連中にとっちゃ、 一度は出たい憧れのハコだよ。な、彰人!
彰人:……ああ、そうだな
EVERのメンバーB:たしか遠野は、前に出演してなかったっけ?
新:うん。何回かね
洸太郎:え? そうだったのかよ! じゃあもしかしたら、 お前から頼めば、あそこのオーナーさんも……!
新:——いや、出演ならまだしも、主催イベントのために 場所を貸してもらうとなると難しいんじゃないかな
新:いいイベントをいくつ開いたっていう、 主催者としての実績が求められるだろうしね
こはね:実績かぁ……。 イベントもまだ2回しかやってないから、 やっぱり厳しいかな……
新:でも、俺達には実力がある。 あのステージに立つのに十分な実力がね
新:だから実は、最初のイベントが終わってからずっと、 あのオーナーに交渉してるんだよね
彰人:……お前、そんなことしてたのか
新:俺だって、君達と一緒に夢を叶えるって決めたからね
杏:……でも、いくら新でも大変じゃない? あのオーナーさんいい人なんだけど、とびっきり頑固だから
新:まあ、まだOKはもらえてないけど…… でも話してる感じだと、勝算は十分あると思うよ
新:『俺達は必ず、RADderがデビューしたイベント以上の 熱狂と歓声で、このハコを埋め尽くしてみせます』って言ったら おもしろがってくれたから
新:このあいだのイベントの映像を見せたら、 きっと前向きな返事がもらえるんじゃないかな?
洸太郎:すげえ思い切ったこと言うなぁ、遠野……
杏:……うん、でも、いいんじゃない?
杏:RAD WEEKENDを超えるなら、 そのくらいはできないとね!
こはね:私も、やってみたいな……!
達也:ああ。俺達も異論はねえ
彰人:……そうか。あそこで……
冬弥:……彰人、どうした?
彰人:……ああ、なんでもねえよ。 オレも賛成だ
洸太郎:オレも、もしやれるならやってみてえな。 昔から、あのハコには憧れてたんだ!
新:じゃあ、話はまとまったね。 このあいだの映像を持って、今度交渉に——
杏:——あ、ねえ新。 それなんだけど、私も一緒に行ってもいい?
杏:オーナーさんとは昔から顔なじみだし…… 私も、少しは役に立てるかもしれないからさ
新:本当? 助かるよ。 それじゃ、今度挨拶しに行く時、連絡するね
こはね:頑張ってね、杏ちゃん!
杏:うん、任せて!
新:じゃあ、お疲れさま
杏:お疲れー!
こはね:……打ち上げだったのに、 次のイベントの話になっちゃったね
冬弥:そうだな。俺達らしいと言えばらしいが
杏:それじゃ、このあとふたりはどうする?
杏:私はこのあとお店のクリスマスの準備があるから、 こはねと一緒にもう少し残るけど
冬弥:俺は帰ろうと思う。 今日は、家でクリスマスパーティーがあるんだ
杏:え、もう!? ちょっと早くない?
冬弥:……クリスマスが近づくと、父さんの公演が重なって 家をあけることが多くなるから、俺の家は毎年早いんだ
こはね:そうなんだ。 やっぱりこの時期は忙しいんだね
杏:彰人は?
彰人:……オレも帰る。日課のトレーニングもあるしな。 打ち上げで時間使った分、しっかりやっておきたい
冬弥:これから練習に行くのか?
彰人:ああ、いつものメニューはやっとかねえと 落ち着かねえからな
杏:もう暗いんだから、気をつけなねー
彰人:わかってるよ。んじゃな
宮益坂
街の人達:クリスマスセール中です! ぜひご覧になっていってくださ~い
街の人達:あっ、1等賞のペア旅行券当選です! ぜひおふたりで楽しんできてくださいね~!
彰人:はっ……はっ……
彰人:(——『Crawl Green』、か)
彰人:(まさか、あの名前をまた聞くことになるとはな……)
彰人:(いや、当然か。RAD WEEKENDを超えるんだ、 あの場所でやりてえって思うのは——)
彰人:(……オレも、そうだったからな)
彰人:(いや、今は違う。今度は泥を塗るような真似はしねえ)
彰人:(——オレには、あいつらがいる)
彰人:(あいつらと一緒に次のイベントも成功させるんだ)
彰人:(そのために—— 今は1分、1秒だって無駄にしてる余裕はねえ)
第 3 话:イルミネーションを見せて!
WEEKEND GARAGE
こはね:杏ちゃん、ツリーの準備終わったね!
杏:お疲れさま! うちはそんなに飾り付けないし、 ツリーも大きくないから早くできたね
こはね:でも、すっごくオシャレで可愛いよ! お店の雰囲気にもあってるね
杏:ありがと! これ、母さんが選んだんだよ。 こはねが褒めてくれた~って話したら、 きっと喜んでくれると思う!
こはね:えへへ、そうかな……。 あ、電飾はちゃんと全部点いたよ!
杏:よかった~! じゃ、あとで父さんに報告しよっと
杏:手伝ってくれてありがとね、こはね!
こはね:うん! じゃあ、このあとは——
???:『——へえ、杏ちゃん達は こういうの使って飾り付けするんだ~』
こはね・杏:『えっ?』
ルカ:『みんな、やっほー!』
こはね:ルカさん! どうしたんですか?
ルカ:『ほら、もうすぐクリスマスでしょ?』
ルカ:『さっきまでセカイのみんなで、メイコのカフェを とびきり豪華に飾り付けよう!って話してたの』
ルカ:『それで、杏ちゃん達の周りでは、どんな風に飾り付けを してるんだろうって思って、見に来たんだ~』
杏:そうだったんですね。でも、 うちはそんなに派手にはやらないから、 参考にはならないかもです
ルカ:『そんなことないよ。あの可愛いツリーとか、 こっちでも飾りつけの参考になりそう!』
ルカ:『でも……そうだなぁ。 もうちょっとお店全体を飾り付けしたいから、 参考になりそうなものがあるといいんだけど……』
こはね:あ、それならこのあと出かけませんか?
ルカ:『え? いいの?』
こはね:はい。センター街に可愛いお店があったので、 あそこならきっと参考に——
杏の父:——おい、杏
杏:あっ——こはね、隠して隠して!
こはね:う、うん!
杏の父:どうしたんだ、妙に慌てて
杏:ううん、なんでもない! あ、そうだ。ツリーの準備終わったよ!
杏の父:おう、助かった。 その調子で、外のほうも頼むぞ
杏:仕方ないなー。まあ、父さんが適当にやるより、 私が飾り付けたほうがお客さんも喜んでくれるしね
杏の父:ああいうのは柄じゃなくてな。 嬢ちゃんもありがとう、手伝ってくれて助かった
こはね:い、いえ。いつもお世話になってますから
杏の父:だが、手伝ってもらうだけってのも悪いな……
杏の父:——そうだ。ふたりで少し歌っていくか?
杏:え? いいの!?
杏の父:ああ。機材を新調したからな。 前よりも気持ちよく歌えるはずだぞ
こはね:わあ、ありがとうございます……!
こはね:……あ、でも今日は……
杏:——じゃあ、ちょっと歌っちゃおっか
杏の父:それなら、準備してくるから待っててくれ。 ふたりとも休んでていいからな
杏:ありがと、父さん!
杏:——すみません、ルカさん。 飾り付けの参考になりそうな店に案内しようって 思ってたんですけど……
ルカ:『ううん、気にしないで! 特別急ぎってわけじゃないからね~』
ルカ:『そうだ。ふたりが歌ってるあいだに 彰人くんか冬弥くんのとこにも行ってみようかな?』
杏:——あ、それなら冬弥が、今日は家で クリスマスパーティーがあるって言ってましたよ
ルカ:『おお~、パーティー! 楽しそうだね!』
ルカ:『どんな感じなのか気になるし、 ちょこっとだけ見に行ってみようかな』
ルカ:『ありがとね! 杏ちゃん、こはねちゃん!』
杏:いってらっ——って、もう行っちゃった
こはね:もしかしたら、気をつかってくれたのかもしれないね
杏:あはは、そうかも!
杏:……でも本当は、打ち上げの時から 歌いたくてうずうずしてたんだよね~
杏:あの『Crawl Green』で—— 父さん達が初めて立った場所で歌えるかもって思ったら、 なんかワクワクしちゃってさ
こはね:そうだったんだ……
こはね:みんながそう言うんだから、本当にすごいところなんだね。 私も……みんなと一緒に立てたら嬉しいな
杏:こはねも一緒に決まってるじゃん! ……まあ、まだ交渉も終わってないんだけどね
杏:まずは今日、一緒に思いっきり歌おうよ!
青柳家 リビング
冬弥の母:冬弥さん、コーヒー召し上がりますか?
冬弥:ありがとう、母さん。いただきます
冬弥の母:はい。スコーンとクッキーも焼いたからどうぞ
冬弥:……兄さん達のいるドイツは、今頃は昼か
冬弥の母:ええ、そうね。 ちょうど公演の準備中かもしれないわ
冬弥の父:兄弟ふたりとも同じコンサートに出演とは、 めずらしいこともあるものだ
冬弥の父:冬弥、お前は……最近どうなんだ
冬弥:最近は、自分達でイベントを主催しています。 このあいだのイベントでは、初めて自分で作った曲をやりました
冬弥の父:曲を作った? お前が?
冬弥の父:先日はバタバタと遅い時間に 帰っていたようだが……そうか。そんなことをしていたのか
冬弥:はい。無事に、観客を盛り上げることもできました
冬弥:ですが、俺は何よりも…… 仲間に喜んでもらえたことが嬉しかったです
冬弥の父:……なぜその程度で、やり遂げた顔をしている?
冬弥:え……
冬弥の父:見知った仲の相手に認めさせるなど、できて当然だ。 それすらできないようなら、作曲などする意味はないだろう
冬弥:……はい
冬弥:それでも、俺にとっては大きな一歩で、 ……意味のある曲が、できたんだと思っています
冬弥の父:……そうか
冬弥の父:ごちそうさま。美味しかったよ。 では、私は部屋に戻る
冬弥の母:はい、お粗末さまでした
冬弥:俺もごちそうさまでした。 食器を片づけるの、手伝うよ
冬弥の母:あら、冬弥さん。ありがとう
冬弥の父:…………
冬弥の部屋
冬弥:ふぅ……
冬弥:そういえば、英語の宿題があったな。 入浴前に終わらせて——
ルカ:『やっほー! 冬弥くん! 来ちゃった♪』
冬弥:……ルカさん?
冬弥:なるほど。メイコさんのカフェの飾りつけ、ですか
冬弥:うちはパーティーといっても、飾りつけたりはしませんし、 食事中も静かなので……参考にはならなさそうです
ルカ:『そっか……。 あ、でも、料理は豪華だったんじゃない? 何を食べたの?』
冬弥:白身魚のドリアとローストチキン、 あとはサラダと、カボチャのスープでした。 料理は毎年、母さんが力を入れて作ってくれるんです
ルカ:『おお~、美味しそうだね! メイコにも伝えてみようかな……ありがとう冬弥くん!』
冬弥:いえ。飾りつけのほうでも、 何か協力できたらよかったんですが……
冬弥:……そうだ、彰人のところに行くのがいいかもしれません
冬弥:この時間帯なら外を走っているはずなので、 イルミネーションも見られるのではないかと
ルカ:『えっ、本当!? じゃあ行ってみようかな~』
ルカ:『でも、こんな時間までトレーニングしてるなんて、 彰人くんってほんと努力家だよね』
冬弥:はい、俺もそう思います
冬弥:彰人は昔から——きっと、俺と出会う前からそうなので
ルカ:『そっか……』
ルカ:『じゃ、彰人くんの頑張ってるところを見に行こっかな。 イルミネーションもきっと綺麗だと思うし♪』
ルカ:『じゃーね、冬弥くん!』
ビビッドストリート
ルカ:『よいしょ! こんばんは、彰人くん!』
ルカ:『……彰人くん?』
彰人:はっ……はっ……
ルカ:(わ、すごい集中力。全然聞こえてないみたい)
ルカ:(……こんな真剣に練習してるのに、邪魔したら悪いよね。 また休憩してる時に声かけてみよっかな)
街の人:あ、見て! あのお店のマスコットも クリスマスの衣装に変わってる!
ルカ:(おっとっと……見つからないように隠れなくっちゃ)
ルカ:(こんなに賑やかで楽しそうな街の音も、 きっと今の彰人くんには聴こえてないんだろうな……)
ルカ:(……頑張れ~、彰人くん!)
ルカ:(あ! なに、あのお店の真っ青なライティング! 神秘的ですっごく綺麗!)
ルカ:(あっちのお店も……あれって雪だるまのモチーフかな? ふふっ、可愛いかも~)
洸太郎:ふ~。……へへっ、 限定カラーの変身ベルト、無事に予約できてよかったぜ!
洸太郎:このあいだちょっとバズってたから、品切れになるかもって ちょっと心配してたんだけど……あいつ、喜んでくれるかな~
洸太郎:——ん、あれは……
洸太郎:おーい、彰人! おーい! おーい!!
彰人:——ん? 三田?
彰人:お前、帰ったんじゃなかったのか? こんなところで何してんだよ
洸太郎:弟のクリスマスプレゼントを頼んでたんだよ。 ずっと欲しがっててさ——
洸太郎:って、その汗…… まさか、今までずっとトレーニングしてたのか!?
彰人:ああ——1秒でも無駄にしたくねえからな
洸太郎:彰人……
洸太郎:お前、本当に昔から変わらねえな。 打ち上げ終わったあとなんだし、 今日は休んでもいいんじゃねえか?
彰人:関係ねえよ。 RAD WEEKENDを超えるためには、 これでもまだ足りねえからな
彰人:——それに……『Crawl Green』でやるんだろ
彰人:もし本当にあそこでやるんなら、 最高のパフォーマンスをする必要がある
彰人:そのためには、体力も必要だ。 できることはやらねえと
洸太郎:あ……
洸太郎:……そうだよな。 あのRADderがデビューしたハコで やれるかもしれねえんだよな……
洸太郎:なあ、彰人—— オレも一緒にやらせてくれ!
彰人:……お前も?
洸太郎:ああ、あそこでやるならオレも本気出さねえとな!
彰人:……まあ、好きにしろよ
洸太郎:はぁ……はぁ……げほっ、ゲホゴホ! も、もう走れねえ……
彰人:——そろそろ休憩にするか
洸太郎:わ、わりぃ……彰人……
彰人:いや、オレもだいたいこの辺りで休憩するんだよ。 ほら水。まだ開けてねえからやる
洸太郎:いいのか? 助かる……
洸太郎:はぁ、生き返った……。 にしても彰人、お前あんなに走って、よく疲れてないな……
彰人:まあ、毎日やってるからな
洸太郎:はぁ、信じらんねえ……
洸太郎:……だけど、思い返してみると お前って昔からそういうヤツだったよな
彰人:いつの話してんだよ……。 まあでも、オレもお前とこんなに長い付き合いに なるとは思わなかった
洸太郎:はは、だよな
洸太郎:……オレさ、お前が冬弥と組んだって聞いた時、 実は結構安心したんだぜ
洸太郎:冬弥と組む前は、ひとりで無茶ばっかしてたから、 これで少しは落ち着くかな~と思ってよ
彰人:ひとりで……か。そうだな。 もうあの頃のことなんか、お前くらいしか知らねえだろ
彰人:……オレもこの街で歌い始めて、結構経ったんだな
第 4 话:この街のどんなヤツらも超えて
RAD WEEKENDの夜
東雲家 リビング
中学生の彰人:えっと、RADder——って、こう書くのか
中学生の彰人:へえ、検索したら結構動画が投稿されてんな。 ほとんどライブ映像で、MVは少ないけど……
中学生の彰人:とりあえず、再生数が多いやつから見てみるか——
大河:『♪————』
中学生の彰人:(……動画でも、こんなに迫力を感じるもんなのか)
中学生の彰人:(どの曲も、胸の辺りがビリビリって痺れるみたいだ)
中学生の彰人:(絵名と見た夏祭りでも思ったけど……)
中学生の彰人:(やっぱ音楽って、すげえな……)
中学生の彰人:——あ
中学生の彰人:同じ曲ばっか何回も聴いちまって、結局そんなに見れなかったな
中学生の彰人:……ふう。それにしても、なんか妙に疲れて——
中学生の彰人:……!?
中学生の彰人:オレ、知らないあいだに手握ってたのか。 しかも、爪のあとが残るくらい強く……
中学生の彰人:……それくらい、曲に集中してたのか
中学生の彰人:(……サッカーやってた時も、 こんなに集中したことなかったな……)
中学生の彰人:(あの時だって、本気でやってるつもりだった。 だけど……)
中学生の彰人:(今まで想像したこともないくらい、 人生懸けて本気でやってるヤツらがいるって知った時——)
中学生の彰人:(自分も同じようにできるかって考えたら、 オレは、できるって言いきれなかった)
中学生の彰人:(もしかしたらこれも——音楽も、 半端な気持ちなのかもしれねえ。 ちゃんと覚悟なんかできてないのかもしれねえ、けど……)
中学生の彰人:(もし本当に、あんなすげえイベントを 自分でやれたら……最高の気分だろうな……)
中学生の彰人:(オレもあんな風に歌えたら——)
中学生の絵名:本気でやるかどうかは、 やってみてから決めたらいいんだし
中学生の彰人:人生懸けてもいいってくらい 本気になれるかなんて、まだわかんねえけど……
中学生の彰人:わかんねえけど、でも……やってみてえ
1週間後
シブヤの公園
中学生の彰人:♪——! ——!
中学生の彰人:くそ! なんでこんなひでえ声になるんだよ……!
中学生の彰人:どうやったら、RADderみたいに ビリビリする歌いかたになるんだ?
中学生の彰人:もっとちゃんと勉強しねえと……
翌日
ビビッドストリート
中学生の彰人:(昨日、あれからRADderの動画を何回も見たが、 やっぱり掴めなかった……)
中学生の彰人:(どうすればあの歌に近づけるのかわからねえ、けど……)
中学生の彰人:(もう1回、RADderの歌を生で聴けたら、 もしかしたら、何かつかめるかもしれねえ……)
中学生の彰人:RADderはあの日のライブハウス—— 『COL』でよく歌ってるって話だったよな
中学生の彰人:『COL』は、この通りに……あった!
中学生の彰人:(……けど、すげえ静かだな。 あんまりフライヤーも貼ってねえし)
中学生の彰人:(もしかして今日はイベントやってねえのか? でも、入口は開いてるし……中に誰かいるみたいだな)
中学生の彰人:(——入ってみるか)
ライブハウス『COL』
COLのスタッフ:……ん、誰だい?
中学生の彰人:あ……すみません。 勝手に入ってきちゃって
COLのスタッフ:ああいや、大丈夫だよ。 入口開けっぱなしにしちゃってたしね
COLのスタッフ:それで、どうしたの?
中学生の彰人:あ、えっと…… RADderのイベントは次いつやるのか聞きたくて……
COLのスタッフ:——ああ、なるほど。もしかして、 このあいだのRAD WEEKENDを見たのかな?
中学生の彰人:はい
COLのスタッフ:そうだったのか。でも……
COLのスタッフ:RADderはしばらく、活動を休止することになったんだ
中学生の彰人:え……
中学生の彰人:そんな……。 あんなすげえ歌を歌えるのに……!
中学生の彰人:RAD WEEKENDみたいな すげえイベントができるのに、なんで……!
COLのスタッフ:——そうだね。RADderがいなかったら RAD WEEKENDは生まれなかったと思う
COLのスタッフ:RADderも、参加したミュージシャン達も、 今までにないくらい最高のパフォーマンスだったしね
COLのスタッフ:RAD WEEKENDを超えるようなイベントは、 しばらくは出ないんじゃないかな。残念だよ
中学生の彰人:…………
COLのスタッフ:それからここも、今週いっぱいで閉店するんだ。 だから来てもらったのに悪いけど、ここでのイベントは もう案内できないんだ、ごめんね
中学生の彰人:……そう、ですか。 すみません、ありがとうございました……
中学生の彰人:(RADderが活動休止……。 しかも、『COL』も閉店しちまうのか……)
ミュージシャン達:♪——————
中学生の彰人:ん、この声……
中学生の彰人:(歌が聴こえる。しかもいくつも……誰が歌ってるんだ?)
中学生の彰人:(あ……こっちの通りで何人も歌ってる)
中学生の彰人:(さっきは裏道から来ちまったからわかんなかったけど、 みんな路上で、競いあうみたいに歌ってんのか。すげえな……)
中学生の彰人:(どいつもこいつも、好き勝手に音楽を楽しんでる)
中学生の彰人:(型にとらわれなくて、自由で、 ギラギラしてて……なんか、いいな……)
COLのスタッフ:あ、きみ!
中学生の彰人:え? あ、さっきの……
COLのスタッフ:はいこれ。せっかく来たのに手ぶらで帰るのもなんだろうから、 今度この辺りでやるイベントのフライヤーを持ってきたんだ
COLのスタッフ:RADderじゃないけど……他のイベントも見てみたら、 きっと楽しいんじゃないかな
中学生の彰人:あ……わざわざありがとうございます
中学生の彰人:……ここってすごいですね。どこからも歌が聴こえてきて、 みんなが音楽を楽しんでるっていうか……
COLのスタッフ:ああ……ここでこうやって歌を聴くだけでも楽しいんだよね
COLのスタッフ:すごい街でしょ? 歌声であふれててさ。 この街は、こうやって音楽と生きてる街なんだ
中学生の彰人:音楽と、生きてる……
COLのスタッフ:うん。特に最近はRAD WEEKENDの影響で、 RADderに憧れる若者が増えて、ますます盛り上がってる
COLのスタッフ:ほら。あそこで人集めてるあの子、 まだ中学生になったばっかでね。君と同い年くらいじゃないか?
中学生の彰人:え?
???:♪————! ————!
中学生の彰人:(あいつ、すげえ楽しそうで、歌もめちゃくちゃうまいな……。 あのレベルで同い年なのかよ……)
COLのスタッフ:あの子、杏ちゃんっていってね。実は謙さんの…… きみが会いたがってたRADderのKENの娘さんなんだよ
中学生の彰人:KENの……!?
COLのスタッフ:RAD WEEKENDを超えるイベントをやる!って 張り切ってるんだってさ
中学生の彰人:……は? あれを、超える……!?
中学生の彰人:(何言ってんだ。そんなこと、できるわけが……)
中学生の杏:♪————!!
中学生の彰人:(あいつの歌は街中のどの歌声よりも、 なんつーか……存在感がある)
中学生の彰人:RAD WEEKENDを超える、か……
中学生の彰人:(……でも、なんとなくわかる気がする。 きっとそれぐらいの覚悟がないと、ああいう歌は歌えねえんだ)
中学生の彰人:(……そうだよな。 オレだって、それくらいの気持ちがなきゃダメだ)
中学生の彰人:(あんなイベントが自分でもやれたら——なんて、 そんな半端な気持ちじゃ、きっと一生届かねえ)
中学生の彰人:(何もかも捧げるくらい、真剣に、全力でやらなきゃ、 あの夜の、オレを熱くした場所に立てないなら……)
中学生の彰人:(覚悟を決めて、やるしかねえ!)
中学生の彰人:(全部の時間使ってでも、オレはあいつに……)
中学生の彰人:(——いや、ちげえ。あいつだけじゃない! この街のどんなヤツらも、超えていってやる——!)
中学生の彰人:…………あの
COLのスタッフ:うん?
中学生の彰人:ちょっと、この場所借りていいですか?
中学生の彰人:♪————————!!
街の人:ん、なんだ? あのCOLの横で歌ってる子
街の人:音は外してるけど、声はめちゃくちゃ大きいな
中学生の杏:へえ……
街の人:杏ちゃん、もうちょっと歌ってよ!
中学生の杏:え? あ……うん! じゃー、何にしよっか!
1年後
中学生の彰人:(……今日は3番目か。 少し時間あるし、水でも飲んで——)
中学生の彰人:っ!
先輩ミュージシャンA:うわっ、服に水かかったじゃねえか! これから出番だってのに何してくれてんだよ!
中学生の彰人:……ああ、すんません
先輩ミュージシャンA:は? もっと誠意持って謝れよ
中学生の彰人:(……めんどくせえな……)
先輩ミュージシャン達:何睨んでんだよ、邪魔なところにいやがって。 どこのやつだ?
先輩ミュージシャン達:あ、こいつ知ってるぞ。 RAD WEEKENDを超えるとか言って、 最近いろんなとこで歌ってるヤツだ
先輩ミュージシャンA:RAD WEEKENDを超える? その割に俺、全然こいつのこと知らねえけど
先輩ミュージシャン達:そうだよな、そのくらいの実力があれば すげえやつだって話聞いてもおかしくないのに
中学生の彰人:っ……それは、オレがまだ……!
中学生の彰人:……でも、いつか絶対にRAD WEEKENDを超えてやる。 今は無理でも、絶対に……!
先輩ミュージシャンA:実力もねえのにイキってんじゃねえよ、だせえな
先輩ミュージシャン達:おいおい、やめてやれよ。 まだ中坊だぞー
先輩ミュージシャンA:中坊だかなんだか知らねえが、 RAD WEEKENDはこの界隈では伝説なんだ
先輩ミュージシャンA:ガキが遊びで、簡単に超えるなんて言って イキってんのは我慢できねえんだよ
中学生の彰人:……っ!
中学生の彰人:遊びじゃねえ! オレは本気で——!
先輩ミュージシャンA:まあ、今日のステージでいい加減わかるだろ。 こいつの歌が求められてねえってことがな
洸太郎:おはようございまーす。 って、なんだこの空気……!
洸太郎:(あー……、最近よくこの辺で歌ってるヤツか。 なんかやべえこと言っちまったみたいだな……)
洸太郎:(敵ばっか作らねえように、 もう少しうまく立ち回ればいいのに……)
洸太郎:……不器用なヤツだな……
ルカ:(そっか……。 昔の彰人くん、そんなことがあったんだ)
洸太郎:いやー、懐かしいなあ
洸太郎:お前は本当、あの頃は生意気だったよな。 ……今もだけど
彰人:うるせえな。一言余計だろ
洸太郎:へへっ、わりぃわりぃ。 でも実際、先輩にしょっちゅう睨まれてたよな~
洸太郎:しばらくしてさわやかモードの彰人を初めて見た時は、 それはそれで驚いたけど……
彰人:あの頃はとにかく必死で、 人づきあいまで考える余裕なかったんだよ
洸太郎:たしかにそんな感じだったな。 でも、あれからどんどんうまくなってったじゃねえか
洸太郎:そういえばあの頃から、この辺走り込みしたり 公園で歌うところを見かけるようになった気がするな
彰人:……そうだったか
洸太郎:あとは——そうだ。 なんか1回、変な噂を聞いたんだよな
彰人:変な噂?
洸太郎:ああ、お前がイベントでしくじったっていう……
洸太郎:いや、噂だし別に信じてねえよ! でもそのあと、しばらくお前のこと見なくなったからさ。 てっきり辞めちまったのかと思って……
彰人:……そうだな
ルカ:(……あれ? 彰人くん、声が……)
洸太郎:って、彰人? どうしたんだよ、妙な顔して
彰人:いや——
彰人:さっきの話、本当なんだよ。 『Crawl Green』が——そのイベントの場所なんだ
洸太郎:え……? あのハコで!?
ルカ:(……!)
第 5 话:因縁のCrawl Green
数年前
中学生の彰人:——お疲れさまでした
スタッフ:ああ、東雲くん。 また次もよろしくね
中学生の彰人:はい、ありがとうございます
中学生の彰人:——今日のイベント、そこそこやれてたけど まだRAD WEEKENDには全然届かねえ……
中学生の彰人:(高音も安定して出せるようになったし、 客もわかせられるようになってきた)
中学生の彰人:(けど——まだまだ練習が足りねえ)
中学生の彰人:(後半、バテねえためにも走り込みの量を増やすか。 あとは……)
先輩ミュージシャンA:あ……なあ! こいつだよ!
先輩ミュージシャンA:前に話したことあっただろ? 東雲彰人って
中学生の彰人:(あいつ……。よくいちゃもんつけてくる……)
先輩ミュージシャンB:ああ、RAD WEEKENDを超えるって息まいてるヤツ?
先輩ミュージシャンC:まあ、甘く見てんだろ。 そんな簡単に超えれるわけねえのにな
中学生の彰人:別に、誰に何言われたって関係ねえよ。 簡単にいかねえことなんか最初から知ってる
中学生の彰人:あんたらみたいに、上を目指さねえで 下見て笑ってるような半端なヤツら、すぐに追い抜いてやる
先輩ミュージシャンA:へぇ……その言葉、嘘はねえんだな?
中学生の彰人:は? 当たり前だろ
先輩ミュージシャンA:そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか。 来週『Crawl Green』でやるイベント、 お前も来いよ
中学生の彰人:……『Crawl Green』? RADderが初めて立った、あの……!?
先輩ミュージシャンA:ああ、それなりの実力を持ってるヤツらをそろえてある。 お前も最近はそこそこ歌えてるみてえだし、 せっかくだから呼んでやるって言ってんだよ
先輩ミュージシャンA:あのRAD WEEKENDを超えんだろ? だったら、このくらい余裕だよな。 まさか尻尾巻いて逃げんのか?
中学生の彰人:……! オレは……
中学生の彰人:(自分の実力は、自分が一番わかってる)
中学生の彰人:(オレはまだ、あのハコでやれるようなプレイヤーじゃねえ。 だけど……)
中学生の彰人:——わかった。その話、乗ってやる
中学生の彰人:(——もう、逃げたくねえ)
中学生の彰人:(オレは、歌に人生懸けるって決めたんだ——!)
数日後
中学生の彰人:♪——————! ————!
中学生の彰人:(違う、こうじゃねえ。 もっと声を張らねえと——!)
中学生の彰人:♪——————!! ——~~~!
中学生の彰人:(くそっ、声がブレた……。 サビはここが出ねえと決まらねえのに……っ!)
中学生の彰人:(本番までもう時間がねえ……。 来週にはあの、RADderの出発点で歌うんだ……)
中学生の彰人:(いつか立ちてえと思ってたあの場所で、 半端なパフォーマンスなんかするわけにはいかねえ!)
中学生の彰人:(使える時間全部つぎ込んででも、 今できることは全部やらねえと……!)
中学生の彰人:♪——————!!
数日後
中学生の彰人:♪————、——!
中学生の彰人:はあ……はあ……げほっ! くそ、声がかれてきた……。 こんなんじゃ全然届かねえのに……!
先輩ミュージシャンA:中坊だかなんだか知らねえが、 RAD WEEKENDはこの界隈では伝説なんだ
先輩ミュージシャンA:ガキが遊びで、簡単に超えるなんて言って イキってんのは我慢できねえんだよ
中学生の彰人:(なんなんだよ……)
中学生の彰人:(……くそ。どいつもこいつも 好き勝手言いやがって……ちくしょう……!)
???:♪————!! ————!!
中学生の杏:……はぁ。 あーもう! 全然しっくりこないなぁ!
中学生の彰人:(あいつ、KENの娘の……)
中学生の杏:♪——! ——! ————!!
中学生の杏:……うん。さっきよりはいいけど…… ここはもっと力強く歌わなきゃ
中学生の彰人:(あいつ、こんな時間まで練習してたのか……)
中学生の彰人:(——いや、あいつ以外にも……、 こんな時間でも、歌ってるヤツって結構いるんだな。 どいつもこいつも、すげえ真剣な顔で……)
中学生の彰人:——オレだけじゃないんだな
中学生の彰人:(こいつらみんな、努力して、 苦しい思いしながら頑張ってんだ)
中学生の彰人:……もっとやらねえと
イベント当日
Crawl Green
先輩ミュージシャンA:お前、本当に来たんだな。 てっきり逃げるかと思ってたぜ
中学生の彰人:……逃げるわけねえだろ
先輩ミュージシャンA:じゃ、お前の出番は16時からだからな
先輩ミュージシャンA:せっかく来たんだ、他の参加者のライブも聴いてけよ。 お前がこれからどこで歌うのか、よくわかると思うぜ?
中学生の彰人:——オレの出番まで、まだ時間あるな
中学生の彰人:ずっと裏にいても息が詰まりそうだし…… 少しステージ見てみるか
中学生の彰人:うお、めちゃくちゃ盛り上がってる。すげえ熱気だな。 ——って……
参加ミュージシャン:♪——、——!! ————!!
観客:あいつ、最近よく見るよな。 よそのハコではだいたいトリ任されてなかったか?
観客:でも、このハコじゃ“並”ってレベルだなぁ。 もうちょっと抜きんでたものがあったらいいんだけど
中学生の彰人:(……冗談だろ。こんなに歌えてんのにか!?)
中学生の彰人:(……これが、『Crawl Green』なのか。 RADderが最初の舞台に選んだ場所——)
参加ミュージシャン:♪————! ——! ——!!
中学生の彰人:出てるヤツらのレベルが違いすぎる……
中学生の彰人:——あと15分したら、オレの出番だ
中学生の彰人:(あと、15分で……)
中学生の彰人:(……くそ。ビビッてる場合じゃねえ。 オレはなんのために練習してきたんだよ!)
中学生の彰人:(自分の実力が、まだこのハコに 見合ってねえことなんか、わかってたはずだ)
中学生の彰人:(それでも、今持てる全力をぶつけるしか オレにやれることはねえ。せめて精一杯やるんだ……)
スタッフ:次は……っと、『東雲彰人』っていうのはきみかな?
中学生の彰人:あ……はい
スタッフ:本当にまだ中学生なんだ。 その年齢でここのイベントに出るなんて、すごいね
スタッフ:ついさっき連絡もらったんだけど、 抜けた子の代わりに急遽来てくれたんだって?
中学生の彰人:(代わり……そういうことになってんだな)
スタッフ:マイクはこれを使ってね。 きみのステージ、期待してるよ
中学生の彰人:……はい、ありがとうございます
中学生の彰人:(指が震えて、うまく握れねえ。 けど……やるんだ。やるしかねえ……!)
中学生の彰人:(ずっと立ちたかった場所だ! 今日のために ずっと練習してきたんだ……! 客をわかせてやる!)
観客:……あの子、初めて見るなあ。楽しみだね
観客:ていうか、まだ中学生くらいか? あの年齢でこのハコに来るって、どんなすげえヤツだよ
観客:またRADderみたいな、とんでもないミュージシャンが このハコからデビューするかもな?
オーナー:…………ん、誰だ?
中学生の彰人:……っ
中学生の彰人:(……クソ、声が震えそうだ。 こんなんで、ちゃんと歌えんのか……)
中学生の彰人:(大丈夫だ。ずっと練習してきたものを 全部、このステージで出すだけだ)
中学生の彰人:(今までずっと、この街で練習してきたものを——!)
小学生の彰人:(すげえ、歓声で目の前が揺れてる……! あのミュージシャンひとりの歌で、こんなに盛り上がって——)
小学生の彰人:……すげえ……
中学生の彰人:(歌が——津波みたいに押し寄せてくる)
中学生の彰人:(こんな世界が、あったのか——)
中学生の彰人:(憧れの場所に恥じねえように……後悔しねえように! オレは、オレの全力を出しきるんだ!)
中学生の彰人:——いくぞ!
中学生の彰人:♪——————!!
オーナー:…………
観客:……なんか、思ったより大したことないな
中学生の彰人:(……会場の空気が盛り下がってる。 なんとか取り返さねえと……!)
中学生の彰人:♪————!! ——!! ——!!
観客:なんか飽きてきちゃったんだけど
観客:期待して損したな……。 ただのガキじゃん。あれ呼んだの誰だよ?
中学生の彰人:(…………逃げねえ。 最後まで、やりきるんだ)
中学生の彰人:……ありがとう、ございました……
観客:あ、やっと終わったよー。 外にいるやつ呼んできたら?
観客:ようやくあいつらの番だな!
先輩ミュージシャンA:お前ら待たせたな!って、すげえ盛り下がってるじゃねえか。 まあ、あんなパフォーマンスのあとじゃ仕方ねえな
先輩ミュージシャンA:ガキのケツ拭いてキッチリ盛り上げてやっから、 お前ら声出す準備しやがれ! 1曲目から飛ばしていくぞ!
先輩ミュージシャン達:『♪——————!!』
中学生の彰人:……………
中学生の彰人:(あいつらが歌い出したら—— さっきまであんな冷めてたのに、空気が変わった……)
中学生の彰人:…………すげえ
中学生の彰人:……オレ、何してんだ
中学生の彰人:……………っ
中学生の彰人:(一体あと、どれだけ)
中学生の彰人:(オレはどれだけ練習したら、 あんな風に歌えるようになれるんだ……?)
中学生の彰人:…………
中学生の彰人:(今日も、ここはいろんなヤツが歌ってんな。 それにどの歌も、オレよりうまい……)
中学生の彰人:(なんでオレはもっと、 あいつらみたいに歌えないんだ)
中学生の彰人:(あんなに人生懸ける、本気でやるんだって言って、 ずっと練習してきて……それなのに、 オレは何もできなかった。それどころか……)
中学生の彰人:(憧れの場所に、泥なんか塗りたくなかったな……)
中学生の彰人:…………っ
中学生の彰人:くそ。ちくしょう……っ
中学生の彰人:(……? なんだ、誰か——)
???:どうした、坊主
第 6 话:もし限界があるのなら
???:どうした、坊主
中学生の彰人:……え、RADderの……なんで……
謙:——ほら、これでも飲め。 隣、座ってもいいか?
中学生の彰人:あ、はい……
謙:お前、ここらでよく歌ってるだろう? 何度も見たことがある
中学生の彰人:KENさんが、オレを……?
謙:ああ。でかい声が、ひとつふたつ隣の通りまで響いてたからな
中学生の彰人:う……
謙:いつも胸張って歌ってて、 なかなか気持ちいい歌だったから、覚えてる
謙:そんな活きのいいやつが暗い顔して 座り込んでれば、声のひとつもかけたくなるだろう
中学生の彰人:(……嬉しいのに、情けねえ。 憧れの人に、こんなとこ見られたくなかったな)
中学生の彰人:…………
謙:お前に何があったか知らないが、自分だけじゃ どうしようもねえことは、他人に話してみるのもいいもんだぞ
謙:わだかまったもんは言葉にして吐き出しちまうに限る。 歌も、悩みもな
中学生の彰人:…………
中学生の彰人:(……できるかよ。 そんな、泣きつくみたいなだせえ真似……)
中学生の彰人:(でも……この人なら、何か教えてくれるかもしれない。 あんなすげえ歌をやれる、この人なら)
中学生の彰人:(それで、この人も、他のやつらと同じように、 もう音楽はやめたほうがいいって言うなら……オレは……)
中学生の彰人:(いや、でも……それでも……!)
中学生の彰人:……今日、 『Crawl Green』のイベントに、出たんです——
謙:なるほど、あのハコでやって こっぴどくやられたってわけか
謙:で、お前はやられたことが悔しいのか? 見たところ、それだけじゃなさそうだが——
中学生の彰人:……もちろん、馬鹿にされて、どうしようもないくらい 歯が立たなかったのは、悔しかったですけど……
中学生の彰人:でも、それよりもオレは—— あのハコに泥を塗ってしまったオレ自身が許せないんです
謙:……許せない、か……
中学生の彰人:——負けたって、今うまくなくたって、 努力して努力して、力をつけて見返せばいいって思ってた
中学生の彰人:でも……そのせいで、こうなっちまった
謙:……それで、どうするつもりなんだ?
中学生の彰人:…………
中学生の彰人:……諦めたくない
中学生の彰人:……諦めたくない、けど……
中学生の彰人:オレが、オレ自身を信じられないんです
中学生の彰人:いくら努力したって、オレには限界があるって…… どっかで思ってる
謙:……なるほどな。 自分の心が揺らいじまったのが、お前は許せないわけだ
謙:お前自身が限界を認めちまってるなら、 たしかに、そこがお前の限界なのかもしれねえな
中学生の彰人:…………そう、ですよね
謙:だが——それならお前は、 その限界を超えていきゃいいだけだ
謙:もうここまでかもしれない、 もうこれ以上先には何もないんじゃないか? なんて、心は簡単に揺れ動くもんだ
謙:だから、いざという時は心より、自分の心臓を信じろ。 お前の体が熱く、強く、脈打つほうに進め
謙:本当にやりたいことってのは、 体のほうがシンプルに教えてくれる
中学生の彰人:体が……
謙:ああ。もし気持ちがへこたれちまっても、 どんな苦しいことがあっても、 お前の体が歌い続けたいって言ってんなら——
謙:その時は、歌うことをやめるな。 限界を超えたいなら、お前の手段はそれしかねえ
中学生の彰人:…………
謙:今日は最後まで歌いきったんだろ? それなら上出来じゃねえか。よくやったな
中学生の彰人:……っ!
謙:だが、しばらくイベントへの出演は控えておけ。 最近休みなく練習していたんだろう、喉がつらそうだ
謙:歌い続けるためにも、体は大事にしろ。 ——じゃあな
中学生の彰人:……あ、ありがとうございます!
中学生の彰人:……歌い……続ける……
洸太郎:そんなことがあったんだな……
彰人:ああ。謙さんの言葉で、オレは歌い続けることができた
彰人:それから決めたんだ。 オレは絶対、誰に何言われようがやめねえって
彰人:正直、冬弥や杏、こはね……あいつらと一緒に練習してると、 オレはまだまだだなって思うことがある
彰人:だけどな、あいつらとRAD WEEKENDを超えるまで……、 どんなにきつくても、オレは歌うことをやめねえ
彰人:そう、決めたんだ
洸太郎:お前がまだまだなら、オレはどうなるんだよ。 ……でも、……そうだよな
洸太郎:よーし、もう少しだけ走ろうぜ! そのあとは歌うんだろ?
彰人:なんだよ、急に元気になりやがって
洸太郎:いやだって、そんな話聞いたら、 オレも頑張るぞ!って思っちゃうだろ!?
洸太郎:オレも、彰人やみんなと RAD WEEKENDを超えてえからな!
彰人:ったく、そうかよ。 そんじゃ、さっさと走るか
洸太郎:おう!
洸太郎:——って……なんだ、あの人だかり?
彰人:ん? ……ああ、『Punch Drink』か。 最近できたライブハウスだ。イベントでもやってたのかもな
洸太郎:結構人気みたいだけど、誰だろ? ……あ、出てきた
先輩ミュージシャンA:みんな、今日は聴きに来てくれてありがとな。 久々に帰ってきたが、ビビッドストリートはやっぱりいいな~
彰人:(あいつらは……)
先輩ミュージシャンA:そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか。 来週『Crawl Green』でやるイベント、 お前も来いよ
先輩ミュージシャンA:ガキのケツ拭いてキッチリ盛り上げてやっから、 お前ら声出す準備しやがれ! 1曲目から飛ばしていくぞ!
彰人:(……戻ってきたのか)
ファン:あの、サインお願いします!
先輩ミュージシャンA:あー、うん、ちょっと待ってて。 順番に対応するからさ
先輩ミュージシャンA:おい、お前らもちょっとこっちに……って、あれ? なあ、あそこに立ってるの、もしかして……
先輩ミュージシャンA:おい東雲! 久しぶりだなあ! お前、まだ音楽やってんだって?
先輩ミュージシャンA:しかも最近は歌える連中とつるんで、 一丁前にイベント開いてるらしいじゃねえか
彰人:……何か悪いかよ
洸太郎:えっ……! 彰人が昔揉めたのって『シェパード』だったのかよ……!
洸太郎:メジャーデビューして出て行ったやつらじゃんか! ビビッドストリート出て、他のとこで歌ってるって聞いてたが…… まだこの辺でもイベントやってたんだな
先輩ミュージシャンB:あの『Crawl Green』に泥を塗っておいて、 よくもまあ堂々と歌えたもんだな
彰人:——それは……悪かったと思ってる
彰人:あの時、客を盛り上げられなかったのは、 オレの実力不足だ
彰人:だが、今はもう違う。あのハコの…… 『Crawl Green』の客だって、絶対にわかせてやる
先輩ミュージシャンA:へえ……遠野とイベントやってるからって、 まさかお前までデカくなったつもりか?
先輩ミュージシャンA:そこまで言うんなら、今ここで、歌ってみせろよ
彰人:は? なんでお前ら相手に——
先輩ミュージシャンA:お前にリベンジさせてやるって言ってんだよ
先輩ミュージシャンA:それとも——怖いのか?
彰人:……あ?
先輩ミュージシャンA:あれからもう数年経ってんのに、まだここにいるってことは お前なりにみっともなくあがいてきたからなんだろ?
先輩ミュージシャンA:……でも、俺達には敵わねえ。 それがわかってるから、歌わねえんじゃねえのか?
洸太郎:っ、そんなわけあるかよ! 彰人はな——!
彰人:おい、……いい
彰人:——やってやろうじゃねえか
ルカ:(うわわ、た、大変……! どうしよう……!)
ルカ:(——そうだ!)
冬弥の部屋
冬弥:…………
冬弥:……もうこんな時間か。 続きは明日にしておこう
冬弥:(——彰人もトレーニングを終えた頃だろうか。 もしかしたら、ルカさんとイルミネーションを 見ているかもしれないな)
冬弥:(……もう少ししたら連絡をしてみよう)
冬弥:——ん?
ルカ:『冬弥くん! 大変っ、大変なの!』
冬弥:ルカさん? 何かあったんですか?
ルカ:『そうなの! 今、彰人くんが路上で喧嘩を始めちゃって!』
冬弥:喧嘩……?
ルカ:『あっ、喧嘩って言っても、歌でね!』
ルカ:『でも、相手のほうが多かったし、 なんだか不穏な空気っていうか……。 それに彰人くんにも、因縁のある相手だったみたいだから』
冬弥:因縁の相手……
冬弥:わかりました、すぐ出ます
冬弥:それと……万一のために、白石に頼んで 謙さんに連絡をしておいてもらおう
冬弥:ルカさんは、彰人の近くにいてやってくれませんか? そんな状況じゃ、彰人とは連絡もつかないと思うので
ルカ:『わかった! また何かあったら、 その時は杏ちゃんのほうに行くね!』
冬弥:すみません、お願いします
冬弥:……だめだ、つながらない。 この時間は賑わっているだろうし、店の手伝いで忙しいか
冬弥:他に連絡手段は……そうだ。 もしかしたらまだ、小豆沢も一緒にいるかもしれない
洸太郎:は、始まっちまった……!
先輩ミュージシャン達:♪————! ——、——!
ファン:かっこいい~! ライブ終わったのにまた聴けるなんて、ラッキー♪
彰人:(あの頃もやべえと思ったが……それ以上にうまくなってやがる)
彰人:(オレが追い上げてるあいだに、 こいつらも走ってたってことか)
彰人:(だが——)
彰人:(不思議と、あの時みたいな絶望感はねえ)
先輩ミュージシャンA:♪——! ————!
先輩ミュージシャンA:ふう。みんな、ありがとう! ——で、次は東雲、お前の番だぞ?
先輩ミュージシャンC:おい、みんなも聴いてやってくれ! みんなのこと、俺達より盛り上げてくれんだってさ
彰人:…………
ファン:……あの子、ひとりで歌うわけ? 隣の子は一緒じゃないんだね
ファン:ていうか、さすがにかわいそうじゃない? 出てくるあの子もあの子だけど
洸太郎:彰人……
彰人:♪——————!!
先輩ミュージシャンA:……! あいつ……
彰人:(オレもずっと、ずっと走ってきた)
彰人:(あいつらと一緒に——RAD WEEKENDを目指して 走り続けてきた)
杏:ひとりで突っ走るのもいいけど、忘れないでよね。 私達、4人でRAD WEEKENDを超えるんでしょ
杏:これはあんただけの夢じゃないの
こはね:うん! 4人で歌おう、東雲くん!
冬弥:彰人。お前は、最高の相棒だ
彰人:(オレが壁にぶつかってくすぶりそうになった時は、 あいつらが引き上げてくれる)
彰人:(一緒にやるぞって、上へ上へ押し上げてくる)
彰人:(あいつらのおかげで、オレは—— 昔より何倍も速く走れてきた)
彰人:(もう昔のオレじゃねえ。だから——!)
彰人:♪——!! ————!!
ファン:え……。なんかすごくない……?
ファン:うん、シェパードもすごいけど、この子も……
先輩ミュージシャンC:おい、どうなってんだよ
先輩ミュージシャンA:……あのガキ、なんであんなに歌えるようになってんだよ!
彰人:(いい感じに盛り上がってきたな。 これなら、もっと声を張り上げたら——)
彰人:♪——————!!
彰人:(昔は、どれだけ努力しても RAD WEEKENDには届かねえかもしれねえって感じてた。 けど、今は——)
彰人:(あんだけすげえと思ってたヤツらに、張り合えてる)
彰人:(あの時感じた限界を、オレは超えられてる……!)
彰人:(このまま、最後まで——!)
彰人:…………
洸太郎:……すげえ……
洸太郎:彰人、誰がどう見てもお前の勝ちだよ!
先輩ミュージシャンA:クソッ……!
彰人:(…………勝った、のか……)
彰人:(あの頃は、絶対に無理だって思ってたのに)
彰人:(オレは……成長できてるんだな)
彰人:…………
観客達:人だかりができてると思ったら、彰人かよ……! さすがRAD WEEKENDを超えようとしてるだけあるな!
観客達:ああ! それに、他のヤツらもすげえんだよな!
観客達:だな。こいつらなら、マジでいい線いくんじゃないか!?
彰人:……っ!!
彰人:(今……オレは一瞬、何を感じた……?)
彰人:(憧れの場所に泥を塗ったことを、 少しでも取り戻せたって……。 昔ボコボコにされたやつを見返せて、自分が成長してるって……)
彰人:(……そう思って……どこかで、安堵、しなかったか……?)
彰人:はは……
彰人:(なにダセえことしてるんだ、オレは)
彰人:(……ダメだろうが、ここじゃ。 お前は……こんなところで一瞬でも満足しちゃ、 ダメなはずだろうが)
彰人:(オレが……オレ達が目指してたのは、 もっと——ずっと先のはずだろ!!)
彰人:(冬弥も、杏もこはねも、こんなもんじゃねえ! あいつらだったらもっと歌える。もっとわかせてる!!)
彰人:(遠野だったら——このくらい簡単にやってのける)
彰人:(それに——)
彰人:(あの人達の歌は、心臓痛くなるくらい熱く震えて、 体中汗が噴き出して……そうじゃねえといけねえのに)
彰人:(こんな——この程度のレベルで、満足していいわけがねえ!)
先輩ミュージシャンA:……なんだよ、言いたいことがあんなら言えばいいだろうが!
彰人:……別に、何もねえよ
彰人:ただ——こんなんじゃまだ足りねえんだ
洸太郎:あ、おい? 待てって、彰人! どこ行くんだよ!
第 7 话:あいつに似た瞳
彰人:はあっ……はあっ…………
彰人:(……息が上がってきたな。脚の筋肉も重くなってきやがった)
彰人:(だけど……止まるわけにはいかねえ……)
彰人:……はあっ……はあ……っ
???:よう、坊主
彰人:え、た、大河さん……!? どうしてここに……
大河:どうしても何も、ここは俺の庭みたいなもんだ。 おかしいことはないだろ
大河:それよりお前は、どうして 勝ったくせに浮かない顔をしてるんだ?
彰人:勝ったって……まさか、さっきの見てたんすか?
大河:ああ。散歩してたら面白いもんが見られた
大河:あいつらも悪くはねえ歌だったが、惜しいな。 お前に喰われちまった
彰人:……そう……ですか
大河:ほら、これでも飲んどけ。 水分補給はしっかりな。体を壊すぞ
彰人:あ……すみません。いただきます
彰人:(……この人、すげえ力強さで見てくるな。 なんつーか、見抜かれてるって感じがする)
彰人:…………昔は、あいつらに思いっきり負けたんですよ。 でも、今日は勝てた
大河:ああ。なかなか快勝だったな
彰人:そう……ですね。でも……
彰人:一瞬でも気が抜けちまった自分がいて…… それがどうしても、許せなくて……
大河:……どうして、許せないんだ?
彰人:勝てなかった相手に勝てるようになったのは、 努力の結果だって言えるのかもしれないですけど……
彰人:——これで満足してたら、先へ進めねえ
大河:先へ、か……
彰人:……はい。RAD WEEKENDで聴いた歌は、 今思い出しても熱くなるくらいすごかった
彰人:オレもそうならないといけねえから。 ——これくらいで、一瞬でも満足してられないんです
彰人:オレの夢は……オレ達の夢は、もっと高いところにある。 だから——
大河:なるほどな……
大河:——なんかお前、謙みたいなやつだな
彰人:え……?
大河:あいつも本当に、馬鹿みたいな努力するヤツだったよ
大河:ま、俺に追いつきたくてな?
彰人:謙さんが、努力を……?
大河:ああ。いつも余裕ぶった顔をしてるが、 あいつほど熱い音楽バカを他に知らねえな
大河:だが最初は違った。むしろ真逆で、中学で初めて会った時は、 こんなつまんねえやつがこの世にいるのかって思ったくらいだ
大河:なんでもそつなくこなすが、妙に冷めたツラをしてる。 ひとりだけ大人びて、周りなんか眼中にねえって……
大河:それが俺は、無性にいけすかなかった
彰人:(謙さんと大河さんが仲悪いって噂、 あながち、根も葉もないってわけじゃなかったんだな)
大河:……だが、それだけってわけでもねえ
大河:こいつは今だから話せるんだが、 俺はこの街で、あいつには一目置いてたからな
彰人:え……?
大河:そりゃ同じ街で生まれ育ったヤツだ、目にする機会は多かった。 謙は器用なもんで、勉強もスポーツも楽々1等を取りやがる
大河:俺があいつに勝てるのなんか歌だけだ。……だが、もしこいつが 本気でやりゃそれもわからねえ——心のどっかでそう思ってた
大河:俺はガキの頃からここで歌ってて、 世界を獲ってやるってくらいの想いでやってたのにな?
大河:それで俺が路上で歌ってる時に、謙がとおりかかって…… いつものつまんなそうな顔を向けやがるから、ついカッと来てよ
大河:あの野郎——無視してんじゃねえ、こっちを見ろ! お前にはこんくらい、本気になれるもんはねえのかよ!って
大河:そんな風に思って、腹の底から全力で歌った
彰人:(遠野でもまるで通用しなかった大河さんの、全力……)
彰人:それで、謙さんはどうしたんですか?
大河:ああ、それがかなり効いたみたいでな。 あいつの目に火がついた瞬間が、俺にもわかった
大河:ドロッとした熱のかたまりが、冷めた両目の奥に見えたんだ
大河:どうやら本気でやってるもんじゃねえと、 他人の心には響かねえらしい
彰人:本気で……
大河:ああ。そっからあいつも、この街で歌うようになった
大河:初めて謙の練習を目にした時は驚いたもんだ。 どうやら俺は虎の尾を踏んじまったらしい——そう感じたな
彰人:え……? どういうことすか
大河:あいつは、朝から晩まで路上で歌いながら、 ずっと先のものばかり見てやがる
大河:歌いすぎで声がかれても、悔しそうなツラでまだ歌おうとする。 ろくな声が出るはずねえのに、喉をおさえて声を絞り出してた
彰人:謙さんが、そんな風に練習を……?
大河:らしくねえだろ? 俺もあれには驚いた
大河:謙は、初めて見つけた熱を持て余してたんだろう。 どうしたら消化できるのかわかんねえで、 それでも火がついちまったからもう走り出すしかねえ、ってな
大河:どんな相手に勝っても、まるで喜びやしねえ。 まだ足りねえ、まだやらねえとってひたすら歌いやがる
大河:俺からすると、勝ちは勝ちだろって思うんだがな
彰人:……!
大河:だが——本気になっていくあいつを見てると、俺も燃えた
大河:あいつの……自分の身を削ってでも上を目指そうって暑苦しさが、 俺には少し心地よかった
大河:それで気づけば、一緒にやる仲になってた
彰人:……そうだったんすね
大河:よく見りゃお前の目も、謙と似たような目をしてる。 特に今日のライブなんか、あの頃の謙にそっくりだったぞ
彰人:え、オレが——
大河:ああ。ひりついて痛いくらい、遥か上を渇望してる目だ。 それ以外の生きかたを知らねえ、不器用なヤツのな
大河:案外、いつかあいつみたいになれる器なのかもしれねえぞ。 ……その壁は高いが、な?
彰人:…………っ
大河:さて、若えヤツつかまえて話しすぎちまったか。 つい昔話も長くなった。悪かったな
彰人:いえ、……貴重な話を聞かせてくれて、ありがとうございました
大河:おう
大河:……あ、そうだ。そういやお前ら、 今度は『Crawl Green』でイベントをやるらしいな
彰人:え? あ、いや、まだ交渉中なんで、許可もらえたわけじゃ……
大河:おいおい、そのくらい突っ張って押しとおせよ。 俺や謙ならそうしたぞ
彰人:いや、無茶言わないでくださいよ。 大事なイベントなんですから、慎重にいかねえと……
彰人:ていうか、なんで大河さんが知ってるんですか?
大河:あそこのオーナーから、新に打診されてるって聞いてな
大河:あのオヤジが言うには、 最近じゃお前らのイベントも、かなり評判がいいみたいじゃねえか
彰人:まあ……オレ達もRAD WEEKENDを超えるために、 本気でやってますから
彰人:——オレ達は、そのためならなんだってやりますよ
大河:……そうか。 そこまで言うお前の覚悟がどれほどのもんかってのは、 興味あるな
大河:——なら、俺も見に行くか
彰人:…………え? 来てくれるんですか……!?
大河:ああ。『Crawl Green』でやるなら、だけどな。 そうなったら、チケット用意してくれよ?
彰人:はい! あの——
彰人:……絶対、最高のイベントにするんで。待ってます
彰人:…………
大河:あいつは、朝から晩まで路上で歌いながら、 ずっと先のものばかり見てやがる
大河:歌いすぎで声がかれても、悔しそうなツラでまだ歌おうとする。 ろくな声が出るはずねえのに、喉をおさえて声を絞り出してた
彰人:……そうか、謙さんもそうだったんだな
彰人:行きたい場所に行くために、努力して、努力して——
彰人:オレにできることはそれしかねえって、 そう決めて、走り続けてきた。でも——
大河:よく見りゃお前の目も、謙と似たような目をしてる。 特に今日のライブなんか、あの頃の謙にそっくりだったぞ
大河:案外、いつかあいつみたいになれる器なのかもしれねえぞ。 ……その壁は高いが、な?
謙:もうここまでかもしれない、 もうこれ以上先には何もないんじゃないか? なんて、心は簡単に揺れ動くもんだ
謙:だから、いざという時は心より、自分の心臓を信じろ。 お前の体が熱く、強く、脈打つほうに進め
謙:ああ。もし気持ちがへこたれちまっても、 どんな苦しいことがあっても、 お前の体が歌い続けたいって言ってんなら——
謙:その時は、歌うことをやめるな。 限界を超えたいなら、お前の手段はそれしかねえ
彰人:(——そうか。 だからあの時、謙さんはあんな風に言ったのか)
彰人:(謙さんも……苦しみながら、それでも歌い続けて——)
彰人:(それで、あの歌声は生まれたんだ。 ……最初からあったわけじゃない)
彰人:(オレと、同じで——)
彰人:(…………よかった、これで……)
彰人:(これで、オレがやってきたことを信じて、また前に進める)
彰人:…………本当に、よかった……
第 8 话:まだ遠くても、いつか
彰人:……ふぅ。 こんなに喉渇いてたんだな
彰人:自分のことなのに、わかんねえもんだな……。 どっか捨てるところは——
冬弥:——彰人!
彰人:は? お前ら……なんでいるんだ?
杏:なにって、彰人のことが 心配だったから来たに決まってるじゃん!
ルカ:『ごめんね、彰人くん!』
彰人:うおっ!? ルカさん?
ルカ:『実はね、ずっと彰人くんのポケットに隠れてたんだけど タイミングがなくて話しかけられなかったんだ』
ルカ:『そしたら彰人くんが男の人達と揉めだしちゃって、 慌てて冬弥くんに知らせに行ったんだけど……』
彰人:そうだったんですか……
彰人:ルカさん、それにお前らも、心配かけて悪かった。 わざわざ来てくれてありがとな
ルカ:『ううん。彰人くんが無事でよかったよ~!』
杏:ていうか、ひとりで大丈夫だったの? 対戦形式のライブやったんでしょ?
彰人:ああ。大丈夫だ。 あのくらいなんてことねえよ
彰人:本気でRAD WEEKENDを超えるなら、 誰が相手だって負けらんねえしな。 こんなことでつまづいてたまるかよ
こはね:……やっぱりすごいね、東雲くん
こはね:ねえ、その人達ってどんな相手だったの?
彰人:……ああ、実は——
杏:そっか……。 昔、『Crawl Green』でそんなことがあったんだ
冬弥:……彰人とチームを組んですぐの頃も 厳しい態度で接してくる人達がいたが——
冬弥:彰人は俺と会う前からずっと、 ああいう人達としのぎを削ってきたんだな
彰人:まあ、あの頃はオレの態度もよくなかったからな。 当時のことであいつらを恨むつもりはねえよ
彰人:自分の実力はわかってるし、棚に上げる気もねえ
彰人:……ま、次『Crawl Green』で歌うことになったら、 今度はみっともねえ歌は歌わねえ。ちゃんと客席わかせてやるよ
こはね:……その時は、私も一緒に戦うよ! 大切な仲間だから!
彰人:こはね、お前……
冬弥:そうだな。俺も一緒に戦う。 その日の分も、俺達で取り戻そう
杏:昔のイヤな思い出なんか 吹っ飛んで忘れちゃうくらい、思いっきり盛り上げようよ
彰人:ああ、そうだな……
彰人:オレ達で、あのハコの客を思いっきりわかせてやるぞ
彰人:……そういえば、次のイベントのことで お前らにも話しておきたいことがあるんだが……
洸太郎:おーい、彰人!
洸太郎:やっと見つけた……って、あれ!? なんでみんなそろってんだよ!?
彰人:……まあ、いろいろあってな
彰人:それより三田、おいていっちまって悪かったな。 せっかくついてきてくれてたのに……本当に悪い
洸太郎:いや、オレはいいよ。お前こそ、さっき……
洸太郎:って、その様子なら聞くまでもねえな
彰人:ああ、ありがとな
彰人:で、大事な話なんだが——
彰人:次のイベント、大河さんが見に来てくれるかもしれねえ
冬弥:本当か、彰人
洸太郎:オレ達のイベントに大河さんが!?
彰人:ああ! ……ま、『Crawl Green』でやれたらの話だが
杏:そっか、大河おじさんが……。 じゃあ交渉に行く私と新の責任、重大だね
洸太郎:つーか遠野のヤツも、 それ知ったら交渉めちゃくちゃ張り切んじゃねえか?
彰人:やる気出ないヤツなんか、オレ達の中にはいねえだろ
杏:うん! こんなに気合いの入るクリスマスプレゼントも なかなかないよね
彰人:……なんだよそりゃ
こはね:大河さんが……
大河:鍛えたら、この嬢ちゃんの歌がどうなるのか、 ちょっとばかり興味がわいた
こはね:(大河さんがライブを見に来てくれるの、 歌を教わるようになってからは初めてだな)
こはね:……頑張りたいな
大河:……頑張ればあいつみたいになれる、か
大河:らしくねえこと言っちまったな……。 あれじゃまるで、謙みてえじゃねえか
大河:俺は——
凪:ねえ、謙。大河——
凪:私達の夢の先は、きっと……次の世代が歩いてくれるよね
洸太郎:って彰人、お前まだトレーニングすんのかよ!?
彰人:当たり前だろ、メニューはまだ残ってるからな
彰人:体はあったまったし、次は声出しから始めるか
冬弥:そうか。せっかくだから、俺もつきあおう
こはね:えっと、私もやりたいな……
杏:それなら、せっかくだしうちの店でやらない? ちょうど父さんが機材を新調してさ、 歌っててすっごく気持ちいいんだよね!
洸太郎:……え?
杏:さっきも、こはねと歌わせてもらってたんだ!
彰人:へえ……、少し興味あるな
冬弥:ああ、こんな時間に悪い気はするが、 よければ俺も歌わせてもらいたい
杏:大歓迎に決まってるじゃん! 洸太郎はどうするの?
洸太郎:じゃ、じゃあオレも行く!
杏:よーし! ……それじゃ、お店まで競争ね!
こはね・冬弥:『うん!』 『ああ』
洸太郎:あっ、結局走んのかよ!
彰人:……あいつら、何はしゃいでんだ
彰人:…………
彰人:(RAD WEEKENDを超えるには、まだ遠い。 けど——)
彰人:(いつか—— でかい壁を超えた向こうにあの人がいるのなら)
彰人:——オレは、絶対に超えてやる
杏:彰人ー! 早く来ないと置いてっちゃうよ!
彰人:……ああ、わかってる!
WEEKEND GARAGE
杏の父:——帰ったらみんなで歌わせてくれ、か
杏の父:この様子だと、うまく落ち着いたみたいだな
杏の父:(彰人が喧嘩始めたって聞いた時は何事かと思ったが…… まあ、今のあいつは軽率な行動は取らねえだろうしな)
杏の父:——いらっしゃい。 お、あんたは……
Crawl Greenオーナー:謙、久々だな
杏の父:ああ、珍しいな。どうしたんだ?
Crawl Greenオーナー:大した話でもないんだが、最近うちでイベント打ちたいって 熱心に通ってくるヤツがいてな
Crawl Greenオーナー:『俺達は必ず、RADderがデビューしたイベント以上の 熱狂と歓声で、このハコを埋め尽くしてみせる』 ……と言ってるんだよ
杏の父:ほう。それは、もしや……
Crawl Greenオーナー:ああ、うちに来たのは遠野新だが、 謙のところの娘——杏のチームもいるみたいだな
杏の父:……やっぱりか。 手間かけさせちまってたら悪いな
Crawl Greenオーナー:いや、べつにいいんだよ。 それより——なんだか懐かしくなっちまってな
Crawl Greenオーナー:RADderがうちでデビューして、 RAD WEEKENDが生まれて、伝説なんて呼ばれて——
Crawl Greenオーナー:……凪のことがあってから、結構経つんだな
杏の父:…………
Crawl Greenオーナー:あのあとも、何組ものチームがイベントをやったが…… あれだけあの場にいる全員が ひとつの想いになれたイベントは一度もなかった
Crawl Greenオーナー:あれほどのイベントは、 俺が生きてるあいだにはもう見れねえだろうな
杏の父:……いや、オレは案外そうでもないと思ってるぜ
Crawl Greenオーナー:はは、お前と大河、凪ほどのヤツらはそう出てこないよ。 そういえば——杏がいるチーム…… Vivid BAD SQUADだったか
Crawl Greenオーナー:あのチームに見覚えのあるヤツがいたな。 昔、俺のハコで下手な歌を歌ってたのを見た時は ぶっ飛ばしてやろうと思ったが……
Crawl Greenオーナー:あいつ、最近はマシになったみたいじゃないか
杏の父:——ああ、あいつの実力ならオレが保証する
杏の父:昔よりかなり成長しているし、まだまだ伸びしろもある
杏の父:何より——いい歌を歌うヤツだ
杏の父:(——凪、大河)
杏の父:(オレ達の夢の先は—— 近い未来に見ることができるかもしれないぞ)