活动剧情
夢の途中、輝く星たちへ
活动ID:82
第 1 话:羽ばたくために
鳳家 リビング
鳳家の使用人:——間もなく参りますので、少々お待ちください
司:……ありがとうございます
晶介:待たせて悪かったな
司:あ……いや。 オレのほうこそ、時間を作ってもらって申し訳ない
慶介:それで、相談というのは?
司:単刀直入に言うと、頼みがあるんだ
司:——宣伝公演を、復活させてもらえないだろうか
慶介:宣伝公演を? ……どうしてまた急に
司:宣伝公演は、ワンダーステージだけではなく、 外部との交流ができる素晴らしい機会だった
司:特に最後のアークランドとの公演はとても刺激になったし、 自分自身、成長もできたと思っている
司:そこで——これからも、 ワンダーステージ以外の場所で公演をしたいと思ったんだ
慶介:……なるほど。成長のために……
司:もちろん、オレ達のショーを見るために フェニックスワンダーランドに足を運んでくれる 観客がいることもわかっている
司:そういう客の期待にも、全力で応えていきたい
司:だから——宣伝公演という形でなくても構わない。 この先も何か、様々な舞台に立つ機会を 設けてもらうことはできないだろうか?
司:きっとそれはオレの夢のためだけではなく、 ワンダーステージのショーを よりよくすることにも繋がっていくと思うんだ
慶介:話はわかった。 それに、君の言っていることも理解できる
司:それじゃあ……
慶介:——だが正直、今は難しい
司:え……
慶介:前にも話したが、宣伝公演の目的は、その名のとおり フェニックスワンダーランドの来場者を増やすためだった。 そして、その役目を君達はまっとうしてくれた
慶介:だからこそ、君もわかっているように、 客は君達の“ワンダーステージでの”公演を望んでいる
慶介:……今、せっかく園に来た客をないがしろにしてまで 別の場所で公演をすることは考えていない
司:それ、は……
晶介:それに、経営目線で話をすれば、 宣伝公演は採算度外視の、いわば『投資』だった
晶介:先々で会場を押さえるのにも、 スケジュールを調整するのにも諸々の費用がかかる。 ……お前が思っているよりも莫大にな
司:っ……
晶介:だから『フェニックスワンダーランドの宣伝をする』 という目的を達成した以上、外でやる理由はもうないんだ
司:……………。 たしかに、そうだな……
司:(ふたりの言っていることはもっともだ)
司:(そもそもオレは、ショーキャストとして雇われている身だ。 バイトをしながら自分の成長につながる経験を させてもらえるのなら、それが一番だが……)
司:(向こうには、向こうの事情がある。 それに、オレの夢の都合を押し付けるわけにもいかない)
司:(それは、わかっている。わかっているのだが……)
慶介:……とはいえ、今が難しいというだけで、 いずれまたそういうことをやる機会もあるかもしれない
慶介:だから今は、ワンダーステージに注力してほしい
司:……わかった。 無理を言ってすまなかったな
司:たしかに、宣伝公演を見て 園に足を運んでくれた客を裏切るわけにはいかない
司:……少し、自分でも考えてみようと思う
晶介:……正直に言えば、俺達も、個人としては できる限りお前の意向に沿いたいとは思っている
晶介:だが、俺達は個人の前に経営者だ。 ひとりのスタッフだけに、特別待遇はできない
司:……………
慶介:だから、どうあがいてもすり合わない部分はあるだろう。 そうなった時——
慶介:いずれ君にも、 選択しなければならない時が来るのかもしれないな
司:選択しなければならない時……
司:……そう……だな
司:——遅い時間に悪かった。 それじゃあまたステージで
晶介:……ああ。気をつけて帰れよ
晶介:……遅かれ早かれこういう時はくると思ってたが、 まさかこんなに早いとはな
慶介:仕方ない。 それほどアークランドとの公演が刺激になったということだろう
慶介:こうなったら、多少の時間稼ぎはできたとしても、 止められないだろうな。きっと……
慶介:いずれ彼は明確に、 ワンダーステージを出たいと言い出すだろう
晶介:……そうだな
慶介:とはいえ、やれることはやっておこう。 互いにとっていい方向で話がまとまるなら、それが一番だ
慶介:……だが、こちらが手を尽くしても 彼が外に出ると決める時が来たら、その時は——
数日後
ワンダーステージ
司の声:よーし、発声練習はここまで! 少し休憩をはさんでから、再開するぞー!
えむの声:はーいっ!
えむ:……えへへ、なんだかこうやって ワンダーステージでゆっくりするの、久しぶりだねっ!
類:宣伝公演が終わったと思ったら、お正月の巡業もあって、 なかなか落ちつけなかったからね
えむ:でもでも、すっごく楽しかったよね! 海も山もスキー場も行って~、 ショッピングモールでもショーできちゃったし!
寧々:……どう考えてもわたし達、 とんでもないスケジュールで動いてたよね……
ネネロボ:デスガ、素敵な公演にナッテ、ヨカッタデス
司:……そうだな。 獅子舞ロボも喜んでいたし、何よりだ
えむ:うんうんっ! あたし達のショーでみーんなキラキラ笑顔にできて、 嬉しかったな~!
えむ:これからもたくさんの人を笑顔にできるように、 またワンダーステージでがんばっていこーねっ☆
類:そうだね。 じゃあ早速、次の演目の打ち合わせからやっていこうか
司:……すまん、その前に少しいいか?
えむ:どうしたの?
司:実は——
司:……今度、修行がてら、 とある演劇のワークショップに参加しようと思ってるんだ
司:もちろんワンダーステージを優先するつもりだが、 念のため報告はしておこうと思ってな
寧々:ワークショップに……!?
えむ:えっ、なになに? その『わーくしょっぷ』って!
類:参加者が体験をしながら学べる講座のようなものだよ
類:講座によってやることは様々だけれど…… そこでは、どんなことをやるんだい?
司:1カ月程度の期間で、 発声からシチュエーション別の演技の手法など、 基礎から応用まで様々なことを教えてもらえるらしい
司:著名な演出家の主催で殺陣などのアクションも学べるようで、 いい刺激になりそうなんだ
えむ:わあ…… なんだか、すっごく楽しそうだね!
寧々:随分本格的な感じだけど…… どうして突然参加することにしたの?
司:……外部との交流が、 今の自分にとっては大きな刺激になると感じてな
司:この前の正月巡業もそうだったが……、 何より、アークランドとの合同公演では 自分の演技力が一段階向上したように思えた
司:だからこれからも、 そういう成長の機会が欲しいと思って、 修行する方法はないかと探していたんだ
えむ:そうだったんだ……!
寧々:じゃあ、そのワークショップはネットかなんかで見つけたの?
司:いや、面白そうなものはいろいろあったんだが、 どれを受けるべきか悩んでいてな
司:それに、できれば演技に精通している役者とも 交流したいと思っていたから、 ツテがありそうな旭さんに相談してみたんだ
類:なるほど、旭さんに……。 たしかに彼ならいいアドバイスをくれそうだね
司:ああ。旭さんが以前参加して、 いい勉強になったというワークショップが また開催されると教えてもらえた
司:それならぜひ受けたいと思って申し込んだというわけだ
寧々:……そうだったんだ
えむ:それじゃ、旭さんも一緒に参加するの?
司:いや、旭さんはその期間、大事な公演があるらしくてな。 だから今回はこのオレひとり、単身で挑むつもりだ
司:経験者達の中でやっていけるのかという不安はあるが……、 夢のためならば、火の中にだって飛び込む覚悟だからな!
寧々:火の中に飛び込むのはどうかと思うけど……
寧々:でも、夢のためなら——か。 ……そうだよね
類:……司くんの言うように、 僕も、とてもいい機会だと思うよ。 こちらのことは気にせず、頑張ってきてほしいな
えむ:うんうんっ! 司くんが未来のスターになるためだもんね!
えむ:あたしも、いーっぱい応援するよ! フレーッ、フレーッ、つーかさく~んっ☆
司:うむ、熱い声援感謝する!
類:それで、そのワークショップはいつから開催なんだい?
司:来週からの予定だ
寧々:えっ、そんなすぐなの? となると、結構こっちの練習とも重なりそうだけど
司:先ほども言ったが、ワンダーステージに穴をあけるつもりはない。 どちらも両立してこそのスターで、座長だからな
寧々:それならいいけど……。 本当に大丈夫?
類:稽古の掛け持ちは体力的にも消耗が激しいはずだよ。 限界を感じたら、遠慮せずに言ってほしいな
司:ああ、心配無用だ。 こういう時のために、常に体調は万全に整えてあるからな
司:——っと、そんな話をしていたら、もうこんな時間か
司:時間を取らせて悪かったな。気を取り直して、 次のショーに向けての作戦会議といこうではないか!
類:そうだね
えむ:(……えへへ。 なんだか今日の司くん、すっごくキラキラしてて、 見てるとあたしまでニコニコしちゃうなあ)
えむ:(きっと、夢のためにがんばってるからだよね。 ……司くんのスターになるって夢、叶うといいな!)
えむ:がんばれっ、司くーんっ♪
第 2 话:ワークショップの成果
数日後
ワンダーステージ
寧々:おはよう、えむ。 今日も早いね
えむ:あ、寧々ちゃん類くん、こんにちわんだほーい!
えむ:えーっと、それじゃああとは司くんだけかなっ?
寧々:うん。今日が例のワークショップの初日だって言ってたし、 いつもよりちょっと遅くなってるのかも
類:お昼までワークショップを受けて、 そのあと続けてここで練習すると言っていたね。 スケジュール的に、なかなか大変そうだけど——
司の声:うおおおおおおおお!!!
寧々:あ、この声……
司:すまんっ、遅くなった!
寧々:別に遅れてないから。 練習の時間まではまだ15分くらいあるし
類:まあ、いつも司くんは誰よりも早く来ているから、 それと比較したら遅いのかもしれないけどね
えむ:ねえねえ、今日ってワークショップの最初の日だったんでしょ!? どうだったどうだった!?
司:おお、よくぞ聞いてくれた!
司:たしかに、稽古の時間まではまだあるな。 ……ならば、話してやろう! あの時間をひとことで言うと……
えむ:言うと……!?
司:——まさに! 『最高』という単語がふさわしいだろう!
えむ:お~~~っ!
司:参加者の自己紹介ひとつとっても芝居の練習となっていて 一瞬も気を抜けなかったが、その緊張感もまた刺激的だったぞ!
寧々:自己紹介でも、お芝居……
寧々:……って、どういうこと?
司:つまり、自己紹介をする代わりに 自己紹介をするということだ!
寧々:いや、余計意味わかんなくなったんだけど
司:むむ、説明が難しいが……。 自分の名前を名乗ったあと、 全員が『同じ自己紹介のセリフ』を言うのだ
司:『私は、マルバツ株式会社第三営業部の佐藤太郎です。 顧客のビジネスをアシストするのが私の仕事です。 どうぞよろしくお願いします』
司:……というのが与えられたセリフだが それぞれの演じかたは異なるから個性が見えてくる。例えば——
司:『マルバツ株式会社第三営業部のっ、佐藤太郎ですっ!』 ……というのが、オレが描いた佐藤太郎像だが
司:『私は……マルバツ株式会社、第三営業部の…… 佐藤、太郎です……』と演じた役者もいた
えむ:なるほど~! おんなじセリフでも、全然違う人に見えるね!
司:そういうことだ。 逆に言えば、個性がなければ誰にも覚えてもらえない……
司:まさしく、役者としての才覚が問われる自己紹介だった
寧々:へえ…… 難しそうだけど、おもしろいね
類:うん。主催の演出家というのが実際どんな人物なのか、 興味をそそられるよ
司:そうだな、その他の練習も独特で、 なかなか癖の強い人だったが……
司:そういう演出家には慣れているからな。 特に問題はなかったぞ!
えむ:類くんのおかげだねっ!
類:この場合、『おかげ』と言っていいのか 悩ましいところだけどねえ
寧々:1回目から、そんな濃いレッスンができるなら このあとの内容も期待できそうだね
司:ああ、どんなことをやるのか楽しみだ!
司:そうだ、そういえば、ワークショップの最終日は 小さめのホールを貸し切りにして公演を行うらしい
司:関係者だけ招待できることになっているから、 その時はぜひ見に来てくれ!
えむ:わあっ、あたし達も見に行っていいの!? 楽しみだな~っ!
類:演目はもう決まっているのかい?
司:いや、何本か候補があるらしいが、 役者の素養を見て決めると言っていてな。 まだ、どうなるかわからないんだ
類:なるほど……興味深いね。 たしかにそのほうが面白いものができあがりそうだ
類:……僕も集大成の公演を楽しみにしているよ
司:ああ! オレ自身の勉強の成果もそこで見せるつもりだから、 期待していてくれ!
寧々:それじゃ、そろそろ時間になるし、稽古始めよっか
えむ:そうだね! ……司くん、練習続きだけど大丈夫?
司:大丈夫どころか、いい具合に体も温まっていて パーフェクトコンディションだ! いつでも始められるぞ!
類:気合い十分だね。 それじゃあ、最初のシーンからやっていこう
司:ああ!
数日後
賢人:『——さあ、これが噂の剣だ。 この台座から引き抜いた者が、 世界を救う英雄になると言われている』
見物人:『とはいえ、今まで抜いた人はいないけどね。 どんな豪傑も、名高い剣豪でもダメだったから』
子供:『だからこれは、 元々抜けないように作られたものだー、なんて言われてるよ』
子供:『もしくは~、 まだ世界を救う英雄さんがいないってことなのかなあ?』
賢人:『ふふ、そんな御伽噺を信じているなんて、 ずいぶんかわいらしいね』
賢人:『——だが、どうやら君もそのひとりのようだ。 それに……この剣を引き抜く力が自分にあると、 信じているように見える。……違うかい?』
英雄:『……わからない。 僕には剣の技量はない。岩を叩き割れるような豪腕も』
英雄:『でも——それでも、いつからかあるんだ』
英雄:『体を突き破るような熱が。この世界を守らなくてはという、 魂に刻まれたような想いが……』
寧々:(なんか今日の司の演技、いつもと違う……! なんだろう……妙に説得力がある感じがするっていうか)
類:(……普通に台本を読んだだけでは、このセリフを 今演じたような感情で表現しようと思わないはずだ)
類:(この男が英雄になるという背景を踏まえて、 世界を背負う男たるように——情熱的に演じようと考えるはず)
類:(でも、司くんの解釈は——)
えむ:すっごいよ、司くんっ! 今の演技、ほんっとにすごかったよ!
類:——そうだね。 まさに、人を惹き付ける芝居だった
司:ハッハッハ! ここまでみんなに褒められると、なんだかムズ痒いな!
寧々:なんかすごく説得力があったけど……、 どうやって今の演技を作ったの?
司:……実は、事前に家で練習をしていたのだが、 自分の演技にどうも納得がいかなくてな
司:ワークショップの仲間に相談したら、 『自分なら役と似た環境で過ごす』と言われて、やってみたんだ
えむ:似た環境で……
司:ああ。最初は意味がよくわからなかったがな。 ひとまず、そのまま言葉どおりやってみようと思って 大通りの道端に座ってみることにしたんだ
司:このシーンの英雄は、まだ貧しい靴磨きだったからな。 ……だが、怪しんで誰も寄り付かなかった
類:……それは、そうだろうね
司:しかし、おかげで理解することができたんだ。 英雄がこのシーンの時に感じていた孤独を。 自分は、大勢の人間の中の一部でしかない——
司:——自分が、この世界で何を成せるかもわからない。 なのに、昔から胸の奥からわき上がるような使命感だけはある
司:だったら、その使命に懸ける想いが本物なのか確かめる時、 この役は……、オレは、どう思うだろうかと考えた
司:考えて——『確かめたい』という期待と、 『裏切られたら』という不安…… そういう感情が入り混じると思ったんだ
類:……それで、今の芝居ができたんだね
類:普通に台本を読んだだけでは、 今のシーンは情熱的な演技になりそうなものだけれど、 司くんの解釈にはかなりの説得力があったよ
えむ:うんうん、すっごくよかった! あたし、自分のお芝居忘れそうになっちゃったもん!
司:そうだろうそうだろう! やはり外で修行するのは刺激があっていいぞ!
司:今回のワークショップが終わったら、 また新しいところも探してみようと思っているんだ
司:あとは—— 他の劇団で、客演もしてみたいものだな!
えむ:……きゃくえん? きゃくえん、ってなんだっけ
類:普段所属してる団体とは違う団体で舞台をやることだよ。 わかりやすくいうと、特別ゲストみたいなものかな
えむ:えっ……
えむ:……司くん、他の劇団でお芝居するの?
司:ああ、力をつけられる機会があるのならば、 それを逃す手はないだろう?
司:もちろん、ワンダーステージとも両立するから、 心配しなくていいぞ!
えむ:……そっか……
類:えむくん?
えむ:あ…… ううん、なんでもないよ!
えむ:(……なん、だろ。 今、なんだかちょっと変な感じがした)
えむ:(司くんには夢があるんだし、 他の場所でもお芝居してみたいって思うのは当たり前だよね)
えむ:(だからワークショップにも行ってるんだし、 あたしもそれを応援してた……)
えむ:(……なのに……)
えむ:(なんだろう、この気持ち……)
第 3 话:いつも、そこにいるのに
ワンダーステージ
司:——よし、今日の稽古はここまでだな!
えむ:……お疲れさま! 今日もいっぱい練習できて、すっごく楽しかったね!
類:そうだね。それに…… 今日の稽古は、司くんのおかげですごくよくなったと思うよ
寧々:うん。わたし達も滑舌をもっとよくするための発声術とか、 身体表現についていろいろ教えてもらっちゃったしね
司:ハッハッハ、気にするな! 修行の成果のおすそわけというやつだ!
寧々:でも、わたし達はワークショップに出てないのに、 司からこんなに教わっちゃっていいのかな?
司:それなら問題ないぞ。 ワークショップの目的は演劇界全体をよくするためだから、 教わったことはどんどん広めていってほしいと言っていたからな
類:へえ、素敵な志だね
えむ:…………
寧々:えむ? なんかおとなしいけど、どうかしたの?
えむ:あっ……ううん、なんでもないよ! みんなの演技がすごかったから、 頭の中でもう1回再生~!ってやってたんだ!
寧々:もう、なにそれ
えむ:——でも、いーっぱい練習したから、 お腹ペコペコになっちゃったね~
えむ:あっ、今からいつものファミレスに行かないっ? 新メニューの季節のパフェがおいしいって 穂波ちゃんに教えてもらったんだ~☆
寧々:そうなんだ。 ちょうどお腹減ってたし、いいかもね
司:季節のパフェか。 そういえば咲希も同じことを言っていたな。 オレも是非食べたいと思っていたのだが……
類:何か用事でもあるのかい?
司:実は、明日のワークショップで一人芝居の発表があってな。 その練習をしなくてはと思っていたんだ
えむ:(あ……)
えむ:そっか……そういうのもあるんだね!
寧々:じゃあ司は今日は難しいか
司:すまないな。 みんなでパフェを堪能してきてくれ!
えむ:……うん。 司くんも、がんばってね!
ファミリーレストラン
寧々:へえ、新しいパフェってこんなに種類があるんだね
えむ:(……なんでだろう。 司くんがニコニコでワークショップの話をしたり、 練習に行っちゃうと、変な感じがする)
えむ:(ずっと応援してたはずなのに……どうして……)
類:……えむくん、どうしたんだい?
えむ:あっ……
えむ:……なんでもないよ! ちょっと練習で疲れて眠くなっちゃってたかも!
えむ:——それにしても、ホントにパフェの種類いっぱいあるね! 寧々ちゃんはどれにするか決めた?
寧々:あ……わたしはこのレモンのパフェにしようかなって。 なんか珍しいし、さっぱりしてそうだから
えむ:おおっ、寧々ちゃんらしいね!
えむ:あたしはこのイチゴのやつにしよ~っと! アイスがお星さまの形になっててかわいいし☆
寧々:あ、たしかにそれ、アイス可愛いよね。 ちょっと気になってたから悩んだんだ
えむ:じゃあ、寧々ちゃんにもあげるね! 代わりにあたしも寧々ちゃんのちょっともらっちゃおーっと!
寧々:類はどれにするの?
類:僕はこの牛肉100%のハンバーグにするよ
寧々:えっ、パフェ食べに来たんじゃないの!?
類:そのつもりだったのだけれど、 メニューを見ていたら甘いものの気分ではなくなってしまってね
えむ:じゃあじゃあ、いつもどおり ハンバーグについてきた野菜はあたしがもらうね!
寧々:……パフェとつけあわせの野菜、相性悪くない? まあ、ふたりがいいっていうならいいけど
寧々:じゃ、みんなが決まったなら呼び出しボタン押すよ
えむ:あ~っ、あたしに押させてっ! ピンポンピンポ~ンッ♪
寧々:ボタンよりえむの声のほうが大きい……
店員:おまたせしました~
えむ:わあっ……! あたしのお星さまもだけど、 寧々ちゃんのパフェも、すっごくかわいいね!
えむ:類くんのハンバーグもおいしそ~! それに、いつもよりちょっとおっきいような……!?
類:どうやらメニューがマイナーチェンジしたみたいだね。 ……ただ、野菜が少し多くなっているのはいただけないな
えむ:だいじょーぶ、あたしと司くんで食べるから! でも司くんはピーマン嫌いだから——
えむ:あっ
えむ:今日は司くん、いないんだったね……
類:……気持ちはわかるよ。 司くんがいないのは珍しいからね
寧々:いなくてもいるような気がするんだから、 ホント、妙に存在感強いっていうか……
寧々:でも……そういえば前にもあったっけ。 司がひとりで練習してたこと
類:ああ、『ピアノ弾きのトルペ』をやった時のことだね
類:あの時も役のために無茶をさせてしまったと思ったけれど…… ここ最近の司くんは、それ以上に頑張っていると思うよ
寧々:うん。最初に自分で言ったとおり、 ワンダーステージもワークショップも ちゃんと両立させてるし……
寧々:教わったことも本当にたくさん吸収して、 すごく成長してる感じするよね
えむ:……うん。 すごいよね……
寧々:最近の司を見てたら、 なんかわたしも負けてられないなって思っちゃった
寧々:正直、知らない人と交流したりするのって怖いけど、 いろんなことを勉強できるのっていいなって思ったし——
寧々:わたしも、ワークショップに行ってみようかな
えむ:え……
類:——そうだね。 寧々の夢のためになるのなら、いいんじゃないかな
類:……司くんだけではなく、寧々もとなると、 みんなで集まる時間が減って、少し寂しくなりそうだけれどね
えむ:(……さみ、しい……)
えむ:(このモヤモヤって、もしかして……)
えむ:(寂しいから、なのかな……)
えむ:(無人島でみんなとお話した時に、 いつかお別れすることになるっていうのは、わかってた)
えむ:(わかってたけど……、 そんなの、まだまだ先のことだって思ってた)
えむ:(でも……)
えむ:(——みんなもう、未来のことを考えてる)
えむ:(司くんだけじゃない)
えむ:(寧々ちゃんも、類くんも——)
えむ:(……あたしが思ってたよりずっと、 お別れする時は近づいてきてるんだ)
えむ:(だから、みんながみんなの夢に進んでいったら、もう——)
寧々:えむ!
えむ:っ!
寧々:何ぼーっとしてるの? アイス、すごい溶けてきてるよ。器からもあふれてるし
えむ:ほえっ……
えむ:わ、わーっ、ほんとだ~っ! 服にもついちゃってるよ~!
寧々:もう……。 ほら、おしぼり。早く拭かないと染みになっちゃうよ
えむ:ううう、寧々ちゃんありがと~!
類:パフェは早く食べないと こうなってしまうのが難しいところだねえ
類:せっかくの星も、もう溶けてしまったみたいだ
えむ:あ……お星さま……
第 4 话:不思議な気持ち
翌日
ワンダーステージ
類:ふう、今日もお疲れさま
司:うむ! 有意義な稽古だったな!
寧々:司は、これからまたワークショップの宿題?
司:いや、宿題はないのだが……、 ワークショップ最終日の公演に向けて 練習をしようと思っているんだ
えむ:最後の公演……
司:そうだ、そういえば、ワークショップの最終日は 小さめのホールを貸し切りにして公演を行うらしい
司:関係者だけ招待できることになっているから、 その時はぜひ見に来てくれ!
えむ:(そういえば、最後に公演やるって言ってたっけ。 それで、その時、あたし……)
えむ:わあっ、あたし達も見に行っていいの!? 楽しみだな~っ!
えむ:(……でも、今は……)
類:もう練習に入っているということは、演目は決まったのかい?
司:ああ。しかし……それは当日までのお楽しみだ
寧々:え、教えてくれないの? ……もしかして、それも演出家の要望とか?
司:いや、これは単純にオレが秘密にしているだけだ! なぜなら、そのほうが面白いからな!
寧々:……もう、何それ
類:でも、たしかに当日までワクワクしていられそうだね
司:そうだろうそうだろう! ……ということで、これがその公演のプラチナチケットだ!
司:これが類ので、これが寧々の……そして——
司:これがえむの分だ!
えむ:あ……
司:楽しみにしていてくれ! 必ずや、皆の期待を裏切らない素晴らしい公演にしてみせるぞ!
えむ:ありがと~! 司くんのお芝居、どんなのなのかな!? 楽しみだな~っ☆
えむ:(——うん。大丈夫)
えむ:(司くんがいろんなこと勉強して お芝居うまくなるのは、あたしだって嬉しいもん)
えむ:(司くんの夢……ちゃんと応援しなくちゃ)
えむ:(……寂しいなんて言ってられないよ! だって、いつか必ずお別れは来るんだから!)
えむ:(…………、来るん、だから……)
えむ:(ダメだなあ……)
えむ:(いいことなんだから、って……、 わかってる、って思いたいのに……)
数十分後
住宅街
類:——もうこんな時間か。 なんだか最近は時間が過ぎるのがあっという間に思えるな
寧々:…………。 ねえ、類。えむのことなんだけど
類:ここ最近、様子がおかしいようだね
寧々:……やっぱり、類もわかってたんだ
寧々:えむは司がワンダーステージ以外の場所でお芝居をやること、 あんまりよく思ってないのかな
寧々:昨日も、わたしと類が 外で勉強してみるのいいかもって言った時から、 ちょっと様子が変だったし
類:……よく思っていない、というわけではないと思うよ。 最初にワークショップの話を聞いた時のえむくんは、 心から司くんのことを応援していたからね
寧々:たしかに……。 公演の話をした時も、楽しみって言ってたもんね
寧々:でも、じゃあなんで……
類:これは僕の推測でしかないけれど……
類:えむくんは司くんが夢への階段を上っているのを見て、 僕達の別れが近づいたことを実感してしまったのではないかな
寧々:あ……
寧々:じゃあ、えむは…… わたし達と離れ離れになることが寂しいから、 元気ないってこと?
類:おそらく、そうだろうね
寧々:まだ先の話なのに……、しょうがないんだから
類:セリフと表情があっていないようだよ
寧々:あ、あんまり見ないでよ
類:……まあ、もしかしたら そんなに先のことでもないのかもしれないけれど
寧々:え……
類:——とはいえ、難しいね
類:えむくんを元気づけてあげたいけれど、 この問題には明確な解決方法があるわけじゃない
寧々:……そうだね
寧々:でも、このまま放っておけないし、 何かわたし達にできることがあればいいんだけど
類:どうするのが、えむくんにとっていいものか——
レンの声:『類くーん!』
寧々:えっ、レン……!?
レン:『あ、寧々ちゃんも一緒だったんだ! いきなりごめんね!』
レン:『カイトがショーの演出に悩んでて、 類くんに相談したいから呼んできてって言われたんだけど——』
レン:『……もしかして、ふたりもなんか困ってるの?』
寧々:……うん。 ちょっと、どうしたらいいかわからないことがあって
類:よかったら、みんなにも話を聞いてもらえないかな。 ……もちろん、カイトさんの相談にも喜んで乗らせていただくよ
レン:『わかった! じゃあ、みんなにもそう伝えておくよ!』
レン:『セカイで待ってるね!』
第 5 话:笑顔にするために
ワンダーランドのセカイ
レン:そっか……。 えむちゃんは、みんなとのお別れが近づいてるって思って、 寂しくなっちゃってるんだね
寧々:うん。だから、 どうにか元気を出してもらえたらって思ったんだけど……
類:……夢を叶えるために離れ離れになってしまうのは、 変えようのない事実だからね
類:どう声をかけたものか悩んでいるんだ
KAITO:……たしかに、難しいね
KAITO:僕達が何を言おうと、最終的には えむちゃん自身が気持ちの整理をする必要がありそうだし
類:えむくん自身が……
リン:リン、えむちゃんのしょんぼりした顔、見たくないよ~
ミク:いつもみたいにニコニコにしてあげたいね~!
MEIKO:そうねえ……。 落ち込んでいる時って嫌なことばかり気にして、 どんどん気分が落ちていくこともあるし、心配よね
リン:へ~、メイコでも落ち込むことあるんだぁ
MEIKO:ちょっと! 私のことなんだと思ってるのよ
KAITO:……そう考えたら、まずは落ち込んだ気持ちを回復できるように、 楽しめるようなことを見つけていくほうがいいかもしれないね
寧々:楽しめるようなこと……。 えむの好きなことをやる……とか?
レン:えむちゃんの好きなことってなんだろう?
寧々:……近所の探検とか、たい焼き屋に行くとか……?
リン:あっ、あとあと! 寧々ちゃんとゲームするのも楽しいって言ってたよ♪
ミク:この前学校の帰りに、寧々ちゃんと一緒に買い物をしたって いうのもニッコニコで話してたよねっ☆
ルカ:……ふふっ。 えむちゃんは、寧々ちゃんのことが大好きなのねえ
寧々:そ、それくらい別に普通だから……
寧々:——でも、いろいろ考えたけど、 えむが一番好きで、一番喜びそうなのって……
類:……ワンダーステージと、フェニックスワンダーランドだろうね
MEIKO:たしかに、それが一番しっくりくる気がするわね
ミク:うんうん! だってそこには、 えむちゃんの大好きなみんなもいるもんねっ☆
レン:……それなら、みんなで一緒に フェニックスワンダーランドで遊ぶのはどう?
寧々:え?
レン:大好きな場所で大好きなみんなと一緒に遊べたら、 ボクなら絶対、元気になれると思うんだ!
ミク:たしかに~! ミクもみんなとセカイで遊ぶこと考えたら……
ミク:——うううっ、なんかすっごくワクワクしてきちゃった~☆
寧々:たしかに、言ってることはわかるけど……
寧々:わたし達、ショーのために毎日のように出入りしてるし…… そんな身近な場所で元気になってくれるかな……?
KAITO:僕達が何を言おうと、最終的には えむちゃん自身が気持ちの整理をする必要がありそうだし
類:……いや。 もしかしたら、これは妙案かもしれない
レン:えっ、微妙だった?
KAITO:逆だよ、レン。 妙案っていうのは、『とってもいい案』ってことだから
レン:わ……ホントっ!? じゃあボク、ふたりの役に立てた!?
類:うん、とてもいいアドバイスをもらったよ。 早速えむくんを誘ってみようと思う
類:……ああ、悪いけれど、連絡は寧々にお願いできないかな。 僕はこのあとカイトさんと演出の話をしようと思っているから
寧々:それは全然いいけど……
KAITO:ごめんね、類くん。 大変な時に相談を持ちかけたりして
類:いや、僕達も助かったよ
寧々:…………
ミク:ねえねえっ、寧々ちゃん! みんなで遊ぶ時、ミク達も一緒に行ってもい~い?
寧々:あ……もちろんいいよ。 えむもそのほうが喜んでくれると思うし
リン:わあっ、ありがとー! みんなでえむちゃんを元気にしてあげられたらいいね☆
寧々:……そうだね
寧々:(楽しみは楽しみ、なんだけど……)
寧々:(本当にこれだけで、えむを元気づけられるのかな……)
えむの部屋
えむ:『そして、女の子とそのお父さんは、 夜空に浮かぶ船の形をした雲を、仲良く見つめるのでした』——
えむ:……久しぶりに読んだけど、やっぱりこのお話好きだなあ。 夢みたいにドキドキで、でも、夢じゃなくて……
えむ:あ、いつかこのお話も、みんなとショーにして——
えむ:…………
えむ:——メッセージ? 誰だろ、こんな時間に……
えむ:あ、寧々ちゃんだ! えーっと……
寧々:『突然だけど司の公演の日、開演まで暇だし、 みんなでフェニックスワンダーランドで一緒に遊ばない?』
えむ:え……っ
寧々:『最近わたし達、結構忙しかったし、 たまにはご褒美にいいかなって思って。 類も大丈夫らしいから、えむがよかったら教えて』
えむ:わあっ……
えむ:嬉しいな! 寧々ちゃん達とフェニックスワンダーランドで遊べるなんて!
えむ:何乗ろっかな~? ジェットコースターは絶対だし、 おさかなコースターも乗りたいし、夜まで——
えむ:司くんのがんばりました公演…… きっと、すっごく……すっごくすてきなんだろうな
えむ:ワンダーステージとワークショップを両方やるのって すっごく大変なはずなのに、どっちもいっぱいがんばってて、 あたし達との練習の時もキラキラした演技になってるし
えむ:だからきっと公演でも、 スーパーウルトラパワーアップした司くんに——
えむ:(——怖いな)
えむ:(そんな司くんを見ちゃったら、 もっともっとお別れが近づいてる気がして)
えむ:(気が、して……、 司くんのこと、もっと応援できなくなっちゃいそうで……)
えむ:こんな自分も、すごく……やだなあ
えむ:このまま……お別れがくるまでずっと、 みんなの夢を応援できなくなっちゃうのかな……
えむ:そんなの……あたし……
第 6 话:ワクワクフェニラン!
数日後
フェニックスワンダーランド
えむ:ワクワクフェニラン嬉しいな~っ♪ どんどんドンチャンパレードだ~っ♪
えむ:……えへへ、寧々ちゃんと類くんまだかな~? 今日は1日中い~っぱい遊ぶんだ~っ☆
えむ:(あ……)
寧々:えむ、もう来てたんだ
えむ:あーっ、寧々ちゃん類くん! 遅いよ~、待ちくたびれちゃった!
寧々:……って言っても、まだ約束の10分前なんだけど
類:楽しみにしてくれていたようで、何よりだよ
類:それから今日は、えむくんが喜びそうな報告があるんだ
えむ:えっ、なになにっ!?
類:それは——
レン:『ボク達のことだよ~!』
ミク:『類くんと寧々ちゃんに聞いてきちゃった! 今日はミク達とも一緒に遊ぼうね~っ☆』
えむ:わあっ……ミクちゃん達とも一緒に遊べるんだ! 嬉しいこといっぱいでお誕生日みたいだよ~!
リン:『司くんも来れたらよかったけど……、 公演あるからしょうがないよね!』
えむ:あ……
リン:『あっ』
リン:『ど、どうしよう! リン、うっかり余計なこと言っちゃったかも……!』
KAITO:『……きっとまた、司くんと来る機会もあるよ』
ミク:『うんうん! そしたら2回も遊べて、楽しみも2倍だよねっ☆』
えむ:——そうだね。 司くん、公演のために、 きっと今いーっぱいがんばってると思うし!
えむ:この公演が終わったら、 次は司くんとも一緒にもう1回来よう!
寧々:……うん
えむ:——じゃあ早くアトラクションのほうに行こ! みんな乗ってみたい乗り物とかある!?
類:……そのことだけれど、 実は今日のためにプランを考えてきたんだ。 なるべく多くの乗り物に乗れるようにね
えむ:ホントっ!? すごいよ類くん、ありがと~!
えむ:じゃあみんな、張り切って行こ~っ! ゴーゴーッ♪
ミク:『あ、えむちゃん、待ってよ~!』
寧々:……まったく。 まだ類のプラン聞いてないのに
類:表面的には元気に見えるけれど…… やっぱりまだ気にしているようだね
寧々:……うん。 これで少しでも元気になってくれたらいいな
ミク:『わあっ、えむちゃんすごーい☆ 世界がぐるぐるしてるよ~!』
MEIKO:『いいわよ~! もっとも~っと回しちゃいましょ~!』
KAITO:『えっ……この高さから落ちるの? ちょっと心の準備が——』
KAITO:『うわああああああっ!!!!』
レン:『……ふう。 すごい高さから落ちる乗り物ばっかりでびっくりしたけど、 この汽車の乗り物はゆっくり進んでていいね!』
寧々:あ、でも、これも最後に——
リン:『えっ? もしかして——』
レン:『結局こうなるの~っ!?』
えむ:——よ~しっ! これで3大人気アトラクションは全部乗れたね!
ミク:『やったー! すっごく楽しかったね~っ☆』
レン:『たしかに楽しいけど……』
KAITO:『僕はそろそろ、 もう少しゆっくり進むアトラクションにも乗りたいかな……』
リン:『え~っ、リンはまだまだいけるけどな!』
ミク:『ミクもミクも! ビュンとしてバビューンってやつ、もっと乗りたいよ!』
レン:『みんな、すごいね……。 ボクはもう目がぐるぐるだよ……』
類:たしかに、ここまで結構駆け足だったし、一度休憩を挟もうか
寧々:そうだね……。 わたしも物理的に振り回されてちょっと疲れたし、 飲み物とか買いたいかも
類:それなら、いろんな場所にお店があるから、 ひとつずつ回っていくのはどうだい?
類:店によって置いているポップコーンの味が違うから、 それぞれ見てみるのも楽しいと思うよ
ミク:『えーっ、そんなお楽しみがあるのっ!?』
えむ:そうそう、ポップコーンは名物なんだ~♪ 王道の塩バターから、ソーダ味まで、 ホントにいろんな種類があるんだよ!
ルカ:『ソーダ味……どんなものかわからないけれど、 しゅわしゅわで、とってもおいしそうねぇ』
類:ミクくん達はこっちでは食べられないから、お土産にするよ。 みんなが好きそうな味を探して歩いてみようか
類:——全部を回ると、ちょうど園内を一周できるしね
寧々:(……園内を、一周?)
えむ:じゃあじゃあっ、一番近いとこから行こ! こっちこっち~!
レン:『ソーダ味のポップコーン、おいしそうだったね! みんながセカイに持ってきてくれるの楽しみだな~!』
KAITO:『お店も結構並んでたのに、買ってくれてありがとう』
類:問題ないよ。 僕達もみんなに味わってほしいと思っていたから
類:……でも、たしかに今日は前より混んでいたね
ルカ:『そうねえ。 向こうのお店にも、たくさん人がいるわ……』
寧々:ほんと、大行列って感じ
えむ:お休みの日だからかな?
類:というのもあるかもしれないけれど——
類:……前よりたくさんのお客さんが 来てくれるようになったからじゃないかな
えむ:たくさんのお客さんが……
類:うん。またワンダーステージでショーをやる機会が増えて、 以前のようにここに足を運ぶことが多くなったけれど……。 最近の園内は、以前と見違えるようだと思わないかい?
類:僕達の、宣伝公演の成果もあったということかな
えむ:うんっ、絶対あったよ! お兄ちゃん達も、 『最近客足が増えたのは宣伝公演のおかげだ』って言ってたし
えむ:……嬉しいなあ。ちょっとずつだけど、 おじいちゃんがいた時に戻ってきてるみたい
類:……そうだね。 お客さんの笑顔も増えて、何よりだよ
寧々:(……そっか。 類がえむをここに連れてくるのを“妙案”って言ったのは——)
レン:『ねえねえ、みんな! ボク、レモン味のポップコーンのお店にも行ってみたいな!』
リン:『リンもリンも~☆ レモン味のポップコーン、どんな色なんだろ? ソーダ味も青かったし、ちゃんと黄色くなってるのかな~?』
寧々:あ——じゃあ、そっちのほうがすいてるかもしれないから、 先に行ってみよっか。 たしか、この近くだったと思うし
レン:『やった! それじゃあ寧々ちゃん、案内よろしくね!』
寧々:えっ……わ、わたし? 別にいいけど……。 道があってるか不安だから、類とえむも間違ってたら言ってよね
類:もちろん、そのつもりだよ
えむ:うん! それに寧々ちゃんガイドさんならバッチリだから大丈夫!
寧々:もう、あんまり持ち上げないでってば
えむ:(……えへへ。 みんなニコニコになってくれて嬉しいなあ)
えむ:(それに、他のお客さんの笑顔もたくさん見れて、 本当によかったあ……)
えむ:(これからもショーをたくさんがんばって、 もっとお客さんを増やせたら——)
男の子:おかあさ~んっ! 次あれ! あれ乗りたい~っ!
母親:ええっ、さっきも乗ったのに!? ……たっくんは本当にあれが好きだね。 ここに来るたび3回は必ず乗って帰るんだから
えむ:(あれ、って……)
えむ:(おさかなコースター?)
第 7 话:みんながいたから
フェニックスワンダーランド
男の子:早く~っ! 早く行こー、おかあさーん!
母親:はいはい。 また最初から並び直さなくちゃね
女の子:ねえ~、おさかなさん、まだ~っ!?
父親:きっともう少しだよ。 お父さんと、しりとりして待ってよう
えむ:……えへへ
レン:『……えむちゃん?』
寧々:どうしたの、ニヤニヤして
えむ:なんだか、すっごく嬉しくなっちゃって! 小さい子もお母さんもお父さんも、 み~んなおさかなコースター楽しんでくれてるから!
寧々:たしかにね。 なんかもう、すっかり人気アトラクションって感じ
類:元々あのコースターは取り壊されることが決まっていたけれど…… この光景を見ていると、残せてよかったと思うよ
えむ:そうだよね! 今はあーんなにたくさんの人が並んでくれてるし!
えむ:……ホントによかったなあ。 おじいちゃんの遊園地を守れて
えむ:(……あの時は、本当に無理なんじゃないかって思ってた)
えむ:(トランポリンドームも、お化け屋敷も、 メリーゴーランドも、全部全部、なくなっちゃうって。でも——)
えむ:(あの時、司くんが言ってくれたんだよね)
司:経営がどうの集客がどうのと言っているが、 客はみんな、“笑顔になりたい”という気持ちでここに来る!
司:ならば——万人に笑顔を届けるオレ達だからこそできることが、 必ずある!!
えむ:…………
えむ:(司くんがああ言ってくれなかったら、 さっきの子達のニコニコ顔は、きっと見れなかった)
えむ:(それに——)
類:うん。またワンダーステージでショーをやる機会が増えて、 以前のようにここに足を運ぶことが多くなったけれど……。 最近の園内は、以前と見違えるようだと思わないかい?
類:僕達の、宣伝公演の成果もあったということかな
えむ:(……司くんだけじゃない。みんなのおかげで フェニックスワンダーランドは、おじいちゃんがいた頃みたいに こんなにニコニコで溢れてるんだ)
えむ:(……えへへ。 みんなが、あたしの夢を、かなえてくれたんだよね)
えむ:(……それなら)
えむ:(それなら、あたしは……)
類:——えむくん。大丈夫かい?
えむ:あっ……
えむ:ご、ごめん、あたし——
えむ:——あのね。 あたし、司くんがワークショップに行くようになってから、 なんだかモヤモヤしてたの
えむ:初めは、どんどん演技が上手になって キラキラしてる司くんを見るのが嬉しくて、 いっぱい応援したいって思ってたんだ
えむ:なのに……
えむ:司くんが夢をかなえるために、 もっといろんなとこに行きたいって言ってるのを見たら、 お別れの時が、どんどん近づいてるような気がしちゃって……
えむ:……なんだか、うまく応援できなくなっちゃってた
寧々:えむ……
えむ:でも……、でもね、気づいたの
えむ:今日ふたりに誘ってもらって、園内を回って…… たくさんのお客さんの笑顔を見て
えむ:あたしはあたしの、フェニックスワンダーランドを 笑顔でいっぱいにしたいって夢に近づいてるなって思ったんだ
えむ:それで……その手伝いをしてくれたのは、みんなだったなあって
えむ:だから——今度は、あたしの番だよね
えむ:みんながあたしの夢を応援してくれた気持ちを、 あたしもみんなに返したい
えむ:お別れするのが寂しいって気持ちは…… たぶん、ずっと消えないと思う
えむ:でも、それでも、あたしは司くんの夢を—— みんなの夢を、応援したいって思ったんだ
寧々:……話してくれてありがとう
寧々:いつかバラバラになるって考えると……寂しいよね。 わたしも、ずっとそう思ってたからわかる
類:そうだね。 ……僕もこの前、明確に想像したんだ。 みんなと別々の道を進む未来を
類:そうしたら、やはり—— ふたりと同じように、寂しいと思ったよ
えむ:……うん
類:けれど、僕が出した結論もふたりと同じだ
類:寂しいという気持ちは決して消えることはないけれど、 みんなの夢を応援したいと思うよ
えむ:類くん……
類:——両立する方法を、探したいけれど
寧々:え、どういうこと?
類:……いや、失礼。こっちの話だよ
類:ひとまず今は、えむくんが前を向けてよかった
えむ:——うん。もう大丈夫
えむ:みんなの夢を、いっちばん前の真ん中の席で応援するよ!
寧々:……よかった。 えむが元気になってくれて
類:やっぱりえむくんには笑顔が一番似合うね
ミク:『うんうん、ミクもそう思う! 元気になってくれて、本当によかった~っ!』
えむ:あ……もしかして、今日誘ってくれたのって、 あたしのこと心配してくれたから……?
寧々:んー……まあ、ちょっとはね
類:少し様子がおかしかったから、気にかけていたんだ。 そうしたら、レンくんが気晴らしに誘ってはどうかと 言ってくれてね
えむ:そ、そうだったんだ……! ごめんね、心配させちゃって……
えむ:レンくんもありがとう! おかげで、すっごく元気になれたよ!
レン:『えへへ、よかった! えむちゃんがしょんぼりしてると、ボクも悲しいからね!』
寧々:……本当に、うまくいってよかったね
類:そうだね。 ……でも、今回のことで僕も改めて考えさせられたな
類:これから先の——未来のことをね
寧々:未来……
寧々:(わたしと司は役者として、類は演出家として いつかワンダーステージを出ていくことになる)
寧々:(でも、その時、きっとえむは——)
KAITO:『そういえば結構時間経っちゃったけど、 みんな司くんの劇の時間は大丈夫かい?』
えむ:あっ……そろそろ行かなくちゃだよね! たしか、席は自由だって言ってたから……
えむ:一番司くんがよく見える席取らなくちゃ!
寧々:——そうだね
類:それじゃあ、司くんの大切なステージを見届けに行こうか
えむ:うんっ!
第 8 话:輝きを見ていたいから
多目的ホール
えむ:わあ……関係者の人しか呼ばないって聞いてたけど、 すごくちゃんとしたところでやるんだね!
寧々:うん、こんなしっかりしたところだなんて思わなかったな
類:主催者がそれなりに名の知れた演出家だから、 こういう場所を借りられるツテがあるのかもしれないね
えむ:席は……この辺にしよ! ここならよく見えるし、司くんにもがんばれ~って言えるよ!
寧々:アニメの応援上映じゃないんだから……
類:でも、もしかしたら、 そういう観客との掛け合いのある劇かもしれないよ? 僕達にはまだ演目が知らされていないしね
寧々:……たしかに。 チケットにも『成果発表会』としか書いてなかったもんね
えむ:何やるんだろ~! 司くんは当日のお楽しみって言ってたけど、 ワクワクしちゃうね!
類:そうだね。本番で司くんの姿を 客席から見ることはめったにないから、僕も楽しみだ
寧々:類の演出じゃない劇をやるのも珍しいしね。 なんだか、わたしもドキドキして——
類:あ……
寧々:始まる——
ナレーション:『お話の舞台はイギリス・ロンドン—— 幸せに暮らすある三姉弟の元へ、異変は突然やってきました』
ナレーション:『ある日の夜、姉弟は、 愛犬が吠え、何かと争っている音を聞いたのです』
えむ:(あれ? これって……)
ウェンディ:『なあに、ナナ、こんな時間に……? どうしてそんなに暴れているの?』
ジョン:『ナナが吠えるなんて、珍しいな。 いつもはおとなしくて賢い犬なのに……。 一体何があったんだ? お前のせいで、みんな起きて——』
マイケル:『ジョン、待って! そこに何かいる!』
ジョン:『えっ!?』
ナレーション:『姉弟の視線の先には不自然に開け放たれた窓と 人影がありました。薄いレースのカーテンのその向こう—— 月光がその人物を照らします』
ウェンディ:『あなたは——』
えむ:(もしかして……このお話って……)
ウェンディ:『ピーターパン!?』
えむ:(あたしの大好きなお話……! いつかショーでやりたいって思ってたやつだ!)
えむ:(それに、あの人影って、ひょっとして……!)
ピーターパン:『……まさか気づかれてしまうとはな。 その犬が僕の影を取ったから、取り返そうとしていたんだ』
えむ:(そっか……司くんがピーターパンなんだね)
寧々:すごい……主役ってこと?
類:そうみたいだね。 司くんが今日まで黙っていた理由がわかったよ
ウェンディ:『本当に……ピーターなの? あの絵本の中の、ネバーランドの』
ピーターパン:『ああ、そうだとも。 ネバーランドで僕を知らないものはいないさ』
マイケル:『じゃあじゃあ、人魚の湖は本当にあるの? 子熊達が住む森も……あと、ティンカーベルもいる!?』
ピーターパン:『もちろん、すべて実在する。 海賊を率いる、忌々しいフック船長もな』
ウェンディ:『それじゃあ……。 それじゃあ、あなたは飛べるの? その体で、どこまでも』
ピーターパン:『ああ、当然さ。それに——』
ピーターパン:『君達が望めば、君達も飛べる。 どこまでも、夢の先へ——』
ピーターパン:『その最果ての島、ネバーランドへ!』
えむ:……っ!
寧々:今の司の動き…… 本当にピーターパンそのものだって思えた……
寧々:ピーターパンの役なんだから当たり前なんだけど……
類:……なるほど。 今の司くんは、足取りから役になりきっているね
えむ:足取り?
類:ああ。 改めて司くんを見てごらん
ピーターパン:『君にもできる、簡単さ。 怖がらずに、足を一歩前へ踏み出すだけだ』
類:セリフを発している時も、べったりと足を床につけずに、 爪先で跳ねるように動いている
類:あれは飛ぶことを知っている、 ピーターパンだからこその足取りだ。 普通の人間のものとは違う
類:違うのに……驚くほど自然に見せられている。 ——そうとう、練習をしたのだろうね
寧々:……この短期間で、こんなに魅せる演技が できるようになるなんて……
えむ:(——すごいなあ。 今日の司くん、本当にキラキラしてる)
えむ:(まぶしくて、目が離せなくて…… あたしもお話の中にいるみたい……!)
ピーターパン:『さあ、準備はいいか? 何も難しいことはない、ただ強く願うだけだ。そうすれば——』
ピーターパン:『きっと、飛べる!』
えむ:(……やっぱりあたし、司くんのお芝居が好きだよ)
えむ:(ステージにいる司くんのキラキラは、 たくさんの人を笑顔にすることができるから。だから……)
えむ:(——だからきっと、司くんは世界のスターになれる)
えむ:(……いつか、お別れの時はきちゃうんだよね。 だって、あたしの夢はフェニックスワンダーランドを 笑顔でいっぱいにすることだから)
えむ:(でも……)
えむ:(あたし、もう迷わないよ。司くんを応援する。 それで——)
えむ:(おじいちゃんと同じ夢を……、 世界中の人を笑顔にするって夢を、 司くんに叶えてもらえたらいいな)
翌日
ワンダーステージ
司:昨日は公演を見に来てくれて感謝する! 早速、オレの晴れ舞台の感想を聞こうではないか!
えむ:はいはいはいはーい!! あたしに話させてくださいっ!!
司:うむ、いいだろう。 よし、えむ。発言を許可する!
えむ:やった~! えっとねえっとね、すっごく楽しくて ワクワクでウキウキでキラキラ~ってしてて……
えむ:ウルトラわんだほいな、最っっ高の舞台だったよ!
寧々:まさか、主役だったとはね。 演技もいつもとは全然違う感じで、ビックリしちゃった
司:ハーッハッハッハ、そうだろうそうだろう! みんなが楽しんでくれたなら何よりだ!
類:あの舞台を見たら聞くまでもないけれど、 今回も、とてもいい経験を得られたようだね
司:……ああ。演技のノウハウももちろんだが、 役者達の話も聞くことができて、 普段では得られない貴重な体験の連続だった
司:スキルアップできたという実感もあるし、 こういうイベントには、今後も定期的に参加したいと思っている
えむ:……そっか
司:だが今回、他所の役者とやったことで、 この4人で芝居をする楽しさにも——
慶介:だから、どうあがいてもすり合わない部分はあるだろう。 そうなった時——
慶介:いずれ君にも、 選択しなければならない時が来るのかもしれないな
司:——……
えむ:司くん?
司:……あ、ああ。いや——
司:とりあえず、ワークショップも終わったし、 次はワンダーステージの本番に向けて準備をしなくてはな!
司:今回学んだことも活かして、 いつもよりいいステージにするぞ!
えむ:うんっ!
司:そうと決まれば、さっそく練習だ! 来週の本番までに仕上げるぞ!
類:そうだね。司くんの公演を見ていたら、 僕達のショーも、まだ調整の余地があると思ったよ
寧々:わたしも。もう1回、頭から通して もっとよくできるところがないか見直してもいいかなって思う
えむ:じゃあじゃあ、早速やっていこっか! まずは——
???:みんな、そろっているな
えむ:え……
えむ:お兄ちゃん達! 今日は来るって言ってなかったけど……どうしたの!?
晶介:今日はまた、新しい報告——というより、提案があってな
司:……提案?
類:というと……?
晶介:まあ、似たようなものと言えば似たようなもんだが、 率直に言うと——
晶介:次は、ワンダーステージとフェニックスステージで 合同公演をやってみないか、って話だ
寧々:え……
司:フェニックスステージと……!?