活动剧情
Little Bravers!
活动ID:83
第 1 话:転機
教室のセカイ
咲希:う~~、あと1回……! あと1回再生されたら、500回……!
リン:あーもー! あとちょっとなのに、なんで届かないんだろ~!?
志歩:……咲希、スマホの前で粘っても、 再生数伸びないから
レン:リンもな。 さっきからずーっとそうしてるけど、意味ないだろ
咲希・リン:『だって~!』
穂波:ふふ、でも500回ちょうどになる瞬間を見たいっていう 気持ちはわかるな
穂波:みんなで頑張って作った動画だから、 たくさん見てもらえると嬉しいもんね
咲希:そうそう! ほなちゃん、わかってる~!
一歌:でも、休憩時間ももう終わるから、 残念だけど練習に戻って——
咲希:あーっ! 今再生された! みんな、これで500回再生だよ~!!!!
一歌:え、ほ、本当?
咲希:ホントホント!! ほらここ、500って!!
一歌:本当だ……!
志歩:……初めて上げたにしては、結構伸びたね
MEIKO:ふふ、おめでとうみんな。 私達も撮影に協力したから嬉しいよ
ミク:たくさんの人に聴いてもらえて、よかったね
一歌:ありがとう、ミク! でも——こっちも見てよ、ほら
一歌:ミクに歌ってもらったほうは、 1600回も再生されてるんだよ
ミク:1600回? もうそんなに?
咲希:うんうん! やっぱりミクちゃんの歌を聴きたいって思ってる人、 とっても多いんだね~!
リン:さっすがミクぴょん♪ 人気者~!
ミク:ちょ、やめてよリン……!
志歩:やるじゃんミクぴょん
ミク:し、志歩まで……!
穂波:ふふっ
穂波:(みんな嬉しそうで、よかったな)
穂波:(今回はわたしも、動画の編集をちょっとやれたし……)
穂波:(……みんなみたいに曲を作ったり、 演奏で引っ張っていったりはできないけど……。 これからも、みんなをサポートしていけたらいいな)
志歩:じゃ、そろそろ練習再開するよ。 次のライブも近いからね
志歩:思いっきりやって、 お客さんの心に響かせていこう
一歌・咲希・穂波:『うん!』
ライブハウス
一歌:——Leo/needでした! 皆さん、ありがとうございました!
一歌:今日もお客さんの反応、良かったね
咲希:だねだね! ここのライブハウスに初めて来た時は あんっなに距離ある感じだったのにね!
穂波:それに——最近、前に来てくれるお客さんも増えたよね
咲希:たしかに! もしかして、あの動画上げたからかな!?
志歩:それもあるかもしれないけど……
志歩:anemoneとのライブで興味持ってくれた人もいたし、 シブフェスのあともお客さんが増えたからね。 今までの積み重ねがあったからじゃないかな
一歌:そっか……。 今までの積み重ねが……
穂波:……ここまで頑張ってきたから、 わたし達を見に来てくれる人が増えたって考えると、嬉しいね
咲希:うん! ……よ~し! この調子でどんどんがんばっちゃおー!
穂波:ふふっ、そうだね! じゃあ片づけが終わったら、次のライブの予定を——
穂波:……あれ?
穂波:あの人……誰かな? こっちを見てるけど……
咲希:え? ……たしかに、見たことないスタッフさんだね
志歩:……新人スタッフにしては、 妙に貫禄あるように見えるな
一歌:あ……こっちに来るみたい
???:Leo/needの皆さんですよね。 今、少しお話いいですか?
穂波:え? えっと……
志歩:……何か、ご用でしょうか?
???:ああ、すみません。申し遅れました。 私、こういうものです
志歩:……ソリス・レコード……
???:はい。小さなレーベルだからご存知ないと思いますが——
???:私は、そこで音楽ディレクターをしている、 真堂良樹と申します
穂波:音楽ディレクターさん……?
穂波:(それって、もしかして……)
真堂:今日は皆さんにご挨拶できればと思いまして。 もしよろしければ、お時間いただけないでしょうか?
一歌:挨拶……っていうと……
真堂:端的に言えば——将来的に、一緒に仕事ができないかと思いまして
穂波:(仕事……! じゃあ、やっぱり……!)
咲希:……スカウトってこと!?
志歩:……お話、もう少し詳しくうかがってもいいでしょうか
真堂:ええ、もちろんです
真堂:では——ここは店の邪魔になりますし、 そちらの片づけが終わったら、 どこかの店に入って話しましょうか
ファミリーレストラン
咲希:ソリス・レコード……。 あ、ホームページ出てきたよ!
志歩:所属アーティストは……。 ……そこまで有名じゃないけど、 名前を聞いたことのあるバンドがいくつか所属してる
穂波:じゃあやっぱり、本当にレコード会社なんだね
志歩:一応あとで店長とかにも聞いてみるけど……そうみたい
一歌:なら私達、もしかして……
志歩:……でも、まずは最後まで話を聞いてみないとね
真堂:来ていただいたのに、お待たせしてしまってすみません。 もう仕事の電話はかかってこないと思います
志歩:いえ……お気づかいなく
真堂:——はは、そんなに警戒しなくて大丈夫ですよ。 今日は挨拶ができればという程度ですし。 会社のことも、納得いくまで調べてもらって結構ですから
真堂:さて、注文した物もそろいましたし、 どうぞ召し上がってください
穂波:あ、ありがとうございます……
真堂:それでは——さっそく本題に入りましょうか
真堂:実は皆さんには、少し前から注目していたんです
一歌:え? 少し前っていうと……
真堂:anemoneとの、対バンライブの時からです。 皆さんにとっては、あのライブハウスでやった、 2回目のライブですね
真堂:あの時は、anemoneのライブを 見に行ってたんですが——
真堂:皆さんの演奏を見て、とても驚きました。 ——あの実力派のanemone相手に、 引けを取っていなかった
真堂:むしろ、皆さんのanemoneに食らいつこうとする気迫が、 ライブハウスの空気すら変えたように思えました
真堂:バンドは星の数ほどありますが—— あの演奏にはひと際光るものがあった
真堂:聴く人間の心にまっすぐ突き刺さる演奏だと、 そう思ったんです
咲希:あ……ありがとうございます!
穂波:(……あのライブを見て、そこまで感じ取ってくれたんだ……)
穂波:(咲希ちゃん達が一生懸命曲を作って、 みんなで遅くまで練習して……。 そうやって作り上げたライブだったから、嬉しいな……)
真堂:それから皆さんの活動を追うようになって——
真堂:チャンネルに上げられた、バーチャル・シンガーの曲も聴きました
一歌:え……! そっちも見てくれたんですか?
真堂:はい。 最近はバーチャル・シンガーの曲を作ることをきっかけに デビューするバンドも多いですから
真堂:そういった活動も精力的にされていることを考慮して、 声をかけさせてもらいました
一歌:そうだったんですね……
真堂:はい。これからも皆さんの活動を見ていって——、 もしいい機会があれば、一緒に仕事ができたらと思っています
真堂:……ああ、そうだ。 ワンマンをやる時は、私も呼んでいただけませんか?
穂波:ワンマン?
志歩:……今のところ、その予定はないですけど……
真堂:そうなんですね。 できれば、皆さんの演奏を もっと聴きたいと思ったんですが……
真堂:であれば…… ——この機会に検討してもらえないでしょうか
真堂:もしプロを目指して活動しているのであれば、 早めに経験をしておいたほうがいいですしね
志歩:ワンマンですか……。 ……もっと実力をつけてからと考えてましたが……
志歩:——せっかくのお話ですし、 前向きに考えてみようと思います
真堂:ありがとうございます。 何か困ったことがあれば相談に乗るので、 いつでも言ってください
志歩:はい。ありがとうございます
センター街
咲希:はぁ~! すっごくドキドキしたね!
一歌:うん。 まさか急にレコード会社の人に声かけられるなんて 思わなかったな……
一歌:それに……曲をちゃんと聴いたうえで 声をかけてもらえたのも嬉しかったな
咲希:うんうん! 女子高生っぽい!みたいなところで 注目されちゃうのはやだもんね! ……まあ、実際女子高生ではあるんだけど
志歩:でも……
志歩:さすがにまだ、レーベルに所属してほしい、 とまでは思われてないか……
穂波:……そうだね
穂波:でも——これって、すごく大きなチャンスだよね
穂波:いいライブができたら、 きっと所属のことも考えてくれるはずだから
咲希:……そうだね! そしたらアタシ達……プロになれちゃうってことだよね……!
志歩:うん。インディーズだから、 メジャーデビューってわけじゃないけど……
志歩:レーベル所属して、デビューしたら—— 私達も、プロの仲間入りだよ
一歌:……ワンマン、今までやったことがないから、 少し不安だけど……
一歌:このチャンス、逃したくないね
志歩:……ふふ。 みんな、気持ちは同じみたいだね
一歌:——やろう、ワンマン。 プロへの道を、みんなで切り拓こう!
志歩・穂波・咲希:『うん!』
穂波:(……このワンマンを成功させたら、 プロになるチャンスが掴めるかもしれないんだよね)
穂波:(わたしも、わたしにできることを、 全力でやらなくっちゃ……!)
第 2 话:ワンマンの壁
教室のセカイ
咲希:——っていうことがあって、 次は、ワンマンライブをやることにしたの!
リン:す……すっご~い!! じゃあじゃあ、みんなもうすぐプロになれちゃうってこと!?
レン:いや、そうは言ってないだろ
ルカ:でも——ワンマンの結果次第では チャンスがあるのかもしれない、っていうことよね
志歩:……うん。そういうこと
志歩:だから、このワンマンは、 なんとしても成功させたい
ミク:みんな、頑張って。 私達も協力するよ
穂波:ありがとう、ミクちゃん! 頑張るね……!
MEIKO:それで——ワンマンの準備はもう始めてるの?
穂波:あ、はい。今は必要なことを洗い出しながら 準備を進めているんですけど……
穂波:調べれば調べるほど、やっぱりワンマンライブをやるのって 大変なことなんだなってわかりました
MEIKO:ああ、たしかにね。 対バンとはいろんなことが違うし
穂波:はい。時間ひとつとっても、 今までは決められた30分程度の枠の中で 3、4曲やるぐらいでしたけど……
穂波:ワンマンをやるとなると、最低でも1時間以上……。 そうなるとMCを挟んでも8曲くらいはやる必要がありますし
穂波:あとは、会場を借りたり、機材の手配をしたり、 告知のためにチラシやアカウントを作ったり、 チケットも売っていかないといけなくて
KAITO:……大変そうだね……
咲希:でもでも、練習だけじゃなくてそういう準備も、 しっかりやっていきたいよね!
咲希:プロになれるかどうかもかかってるし、 アタシ達の初ワンマンになるわけだし!
一歌:……そうだよね。 いいライブにできるように、頑張ろう
志歩:……さて、報告も終わったところで、 本腰入れて練習していこうか
咲希・一歌・穂波:『うん!』
一歌:どの曲からやってく? 完成度上げたい曲からがいいかな
志歩:それもいいけど……
志歩:その前に今日は、『通しでどこまでやれるか』を試したい
咲希:え? どういうこと?
志歩:さっき穂波が言ってたでしょ、 ワンマンをやるとなると、8曲くらいはやる必要がある、って
志歩:もちろん、ただ演奏するだけなら普通にできると思うけど——
志歩:anemoneとやった時みたいな演奏を、 8曲全部やりきれる?
一歌:……たしかに。 あの時も3曲で息が切れてたしな……
咲希:特にいっちゃんは、弾くだけじゃなくて 歌も歌うから大変だよね……
志歩:でしょ。だからまずは、 それぞれがどこまでやれるのかを確かめようと思って
志歩:そういうわけで今日は、新曲抜いて7曲連続でやっていこう。 ……できたら、5曲くらいまでは安定させていきたいな
一歌:……うん!
穂波:(7曲も通してやるのは初めてだし、 ちょっと不安だけど……)
穂波:(でも……しっかりやりきらなくちゃ)
穂波:(みんなでチャンスを掴むために——!)
一歌:♪——————!
MEIKO:これで4曲目……
穂波:(やっと折り返しにきたけど……)
一歌:はぁ……はぁ……
穂波:(一歌ちゃん、息が上がってる……。 ここまで全力だったもんね……)
穂波:(……咲希ちゃんもちょっとずつリズムがズレてきてるし、 わたしも、段々手が思うように動かなくなってる。 あと3曲を最初の勢いでやりきれるかっていうと……)
志歩:——次の曲、いくよ
穂波:……ねえ志歩ちゃん、休憩を入れない? 実際のライブでも、MCを挟んでお水を飲んだりするし……
志歩:……穂波。 私が今日見たいのは、みんながどこまでやれるか
志歩:練習で全部通しても余裕あるくらいじゃないと、 本番でMCがあっても、絶対息切れするよ
穂波:それは……
一歌:——大丈夫。私はまだ、やれるから
咲希:アタシも……最後までやりたい!
穂波:ふたりとも……
穂波:……わかった。 みんなで、最後までやろう
志歩:——それじゃ、再開するよ
一歌:はぁ……はぁ……
志歩:……みんな、お疲れ
志歩:思ったとおり、最後のほうは——ガタガタだったね
一歌:…………もっと体力つけておけばよかったな
一歌:後半になるとどうしても声量が落ちてきちゃうし、 疲れて集中力も落ちてくる……
咲希:うん……アタシも、最後はバテちゃったな……
穂波:……体力的にも精神的にも、すごく消耗したね……
志歩:——とりあえず、今の私達の状況はわかった
志歩:ここからは練習量増やして 基礎体力をつけるための筋トレもやろう。 ちゃんと全力で通せるようになるためにも
一歌・咲希:『……うん!』
穂波:あ……
穂波:…………
咲希:……? どうしたのほなちゃん、難しい顔して
穂波:あ、その……。 ここから練習量を増やすってなると、 またスケジュールを考え直す必要がありそうだなって
一歌:たしかに……そうだね。 バイト入れる日とかもちょっと考えないとな
穂波:うん……
穂波:(それに……)
穂波:(チケットとか機材を準備する時間も、 ちゃんと確保しなくちゃ)
穂波:(……練習も増やして、作業もってなると…… 想像以上に大変なスケジュールになるかも。 いつもより、ちゃんと段取りを組んでいかないと……)
穂波:(……ううん、不安に思ってる時間があるなら、 動かなくちゃ)
穂波:(みんなでプロになるためにも……!)
ミク:…………
第 3 话:重い足取り
レッスンスタジオ
穂波:(……会場は、志歩ちゃんのバイト先を 借りることができてよかった)
穂波:(今日は、来週提出する機材の申請書を書いて、 あとは……)
志歩:あれ? 穂波、もうスタジオ入ってたんだ
咲希:ほんとだ! 早いね~! アタシ達も、いつもより早く来たのに!
穂波:あ……練習前にいろいろ作業したくて。 下の受付スペースにいたら、 少し早く入っていいですよって言ってもらえたんだ
一歌:そうだったんだ。 ……あ、それって、ライブハウスに提出する書類?
穂波:うん。 わたしは作曲とかはできないから、せめてこれくらいはね
一歌:そっか……。ありがとう穂波。 必要なことは私達もやるから、何かあったら言ってね
穂波:ありがとう。でも、一歌ちゃん達にはSNSの告知も 担当してもらってるし、こっちは大丈夫だよ
咲希:う~ん、こういう時ほなちゃんはホントに頼りになるよね! テキパキしてるっていうか……!
志歩:咲希はこういうの苦手だもんね
咲希:う……! に、苦手ってわけじゃないよ! どうすればいいんだっけ~って思う時間が 人よりちょっとかかるだけで……
一歌:それはまぁ……ちょっと苦手なんじゃない?
咲希:そ、そうかなあ!?
穂波:ふふっ。 咲希ちゃんなら、慣れたらすぐできるようになると思うよ
咲希:ほなちゃん~! そうだよね! やっぱり慣れが大事だよね!
志歩:ま……今はそっちに慣れるより先に、 8曲通してやるのに慣れてもらいたいかな
志歩:——ってことで、練習、始めるよ
一歌・咲希・穂波:『うん!』
一歌:……はぁ……はぁ……
志歩:一歌、昨日もだけど、5曲目から一気に精度落ちてるよ。 踏ん張って
一歌:うん、わかった……!
咲希:う~。 やっぱり折り返しくらいからキツくなってくるね……
穂波:そうだね……。 わたしも、腕が痛くなってきちゃった
咲希:体力的にはほなちゃんが一番大変だよね。 全身運動!って感じだし!
穂波:あはは、運動は得意なほうだけど、 こんなに連続で叩くことってないから……
穂波:でも——頑張らなくちゃ
穂波:はぁ……はぁ……
志歩:……昨日よりは少しマシになったけど……。 後半は、まだまだ聴かせられるレベルじゃないな
一歌:全力出すのも大事だけど、 もっとペース配分していかないとね……
咲希:なんだかスポーツみたいだね……
穂波:……ちょっと休憩してから再開しよっか。 みんな、飲み物はある? 買ってこようか?
一歌:私は持ってるから大丈夫。 ありがとう穂波
志歩:私も平気。 じゃあ……今から15分休憩ね
咲希:は~い……
咲希:あれ? 誰か電話鳴ってるよ?
志歩:あ……店長からだ。 はい、日野森です
志歩:——機材レンタルの申請書、ですか。 それなら今バンドのメンバーが用意してますけど……
志歩:……え? 今日提出してほしい?
志歩:……今度、野外ライブの会場に貸し出すから、 使用する機材を早めに指定してほしいみたい
志歩:——穂波、例の書類って今日出せたりする?
穂波:あ、うん。朝少しまとめてたから……。 ただ、あと30分くらいはかかっちゃうかな
志歩:そっか……。 ごめん。今日はそっち先にやってもらいたいんだけど……
穂波:うん、大丈夫だよ。 今から作っちゃうね
志歩:ありがと。 ……じゃあ、今日の夜出しに行きます。はい
志歩:……急に仕事頼んじゃってごめん。 まだ練習もあるのに
咲希:あ、分担してやれるところとかない? アタシ達もやるよ!
穂波:ふふ、そんなにやることもないから みんなは練習に集中して大丈夫だよ
一歌:でも……やるなら穂波と合わせていきたいよね……
咲希:あ、ならアタシといっちゃんは そのあいだに新曲進めてく?
志歩:……そうだね。 本当は全員そろってる時は練習したかったけど…… 他の準備も必要だし
志歩:穂波、一緒に出すセット図のほうは私がやるよ。 残りお願いしていい?
穂波:あ、うん……!
穂波:(……こういう事務作業があると、 合わせ練習にも結構響いちゃうな)
穂波:(早く終わらせて、練習に戻らなくちゃ……!)
翌日
咲希:あ……! 前にチラシ作ってもらった印刷所、なくなっちゃってる!
穂波:え? あ……シブフェスのチラシ作る時に見つけた、 安くて綺麗に作ってくれるっていうところ?
咲希:うん……。 きれいだからあそこで作りたかったんだけどな。 また探さないと……
咲希:そうだ、会場で売るCDの準備も進めないと。 お兄ちゃんにパソコン借りて……
咲希:ん~ジャケットのデザインも、どうしようかな……
穂波:…………
穂波:一歌ちゃん、どうしたの?
一歌:告知の担当だから、いい方法がないか いろいろ調べてたんだけど……
一歌:他のバンドを見てると、ちゃんと専用の予約フォーム作ったり、 アカウントに準備の写真のせてたり結構工夫してるんだ。 だから、うちもできればって思ったんだけど……
一歌:そうなるとデザインとか、文言とか、 いろいろ考えなくちゃいけなくて
穂波:たしかに……そうだね
一歌:あ、志歩からだ。 『今度音響照明のスタッフとの打ち合わせするから、 一緒に来て』……か
穂波:あ……歌いやすいように打ち合わせしておいたほうがいいって 前に言ってたね
一歌:うん。ワンマンの準備はやりがいがあるけど…… こうなると考えることがいっぱいで、大変だな
穂波:…………
志歩:……ストップ! 今のところ、もう1回
一歌:う、うん……!
穂波:……いくね! ワン、ツー、スリー、フォー……
志歩:——ダメ。 みんな、集中力切れてるでしょ
咲希:う……。 集中してるつもりではあるんだけど……
一歌:正直……ちょっと疲れてるのは、あるかな……
一歌:曲作りに、練習に、ワンマンの準備もってなると、 頭を切り替えるのも大変で
志歩:それは……たしかにわかるけど……
穂波:……そのことなんだけど——
咲希:? どうしたのほなちゃん
穂波:ワンマンに必要な事務作業—— わたしがまとめてやるのはどうかな?
一歌:え?
穂波:一歌ちゃんと咲希ちゃんは曲作りがあるし、 志歩ちゃんは、みんなの練習を見てくれてるでしょ?
穂波:わたしは、そういうのはないから……。 その分できるかなって思って
一歌:気持ちは嬉しいけど……でも、 穂波はもう十分やってくれてるよ
咲希:うん! スケジュール決めたり、毎回スタジオとったり、 お金の管理してくれたり……
志歩:必要な書類も全部まとめてくれたし、 今回は機材チェックまでお願いしちゃったしね。 ……それ以外もってなると、さすがにやりすぎでしょ
一歌:それで穂波の練習時間が削られちゃったら、 元も子もないしね
志歩:ドラムはバンドの要だからね
穂波:それは……
穂波:……たしかに、そうだね……
一歌:大丈夫だよ。 曲作りも他の仕事も、ちゃんと頑張るから
志歩:だね。 ……あと5分休憩したら、もう一度頭からいくよ。 準備しておいて
咲希・一歌:『うん!』
穂波:(……たしかに、誰かひとりだけが負担するのは、 バンドとして、よくないよね……)
穂波:(でも……)
穂波:(本当に、このままでいいのかな……)
穂波:(みんな、ワンマンをいいものにしたいって思ってる。 だから全力で頑張ってる。けど……)
穂波:(全部頑張り過ぎてるから、 練習がうまく進んでないような気がする……)
スクランブル交差点
一歌:それじゃ、お疲れ……
咲希:お疲れさま~……また明日ね~……
志歩:ん、また明日
穂波:みんな車に気をつけてね。 疲れてると、ついぼんやりしちゃうから
一歌:あ、たしかに……。 ありがとう、気をつけるね
志歩:……結局今日の練習、 中途半端な感じになっちゃったな
穂波:……うん。 みんな、ワンマンの準備だけでも疲れちゃってるみたいだし……
志歩:やっぱり、そうだよね……
志歩:練習メニューが詰め気味なのもあるのかな……。 でも、新曲の練習もあるし、時間はないから……
穂波:あ……
穂波:志歩ちゃん、眉間にシワできちゃってるよ
志歩:え? あ……。 そ、そういうこと言わなくていいから
穂波:頑張り過ぎちゃってるってことだよ。 ……焦る気持ちはわかるけど、 今日はゆっくり休んで、明日、頑張ろう
志歩:……それは、そうかもね
志歩:ありがと、穂波。 それじゃ、また明日ね
穂波:うん。バイバイ志歩ちゃん
穂波:(わたしがもっと上手にサポートできてれば、 みんな練習に集中できるのにな……)
穂波:(……ううん。 自分を責めても、何も始まらない。焦っちゃダメだよね)
穂波:(でも……)
穂波:(もっと練習に集中したいけど、 かといって他のこともおろそかにできない……)
穂波:一体、どうしたらいいんだろう……
第 4 话:ワンマンの先輩から
宮益坂女子学園 1年B組
生徒:——起立!
穂波:(あ……! うとうとしてたら、授業終わっちゃった……!)
穂波:(わたしも結構、疲れてるみたいだな……)
生徒:礼! ありがとうございました!
生徒達:『ありがとうございました』
穂波:はぁ……
穂波:(今日もこのあと準備と練習があるし…… 早くセカイに行かなくっちゃ)
穂波:(今日志歩ちゃんは、課題提出があるから 少し遅れるって言ってたっけ)
穂波:(なら……一歌ちゃんと咲希ちゃんに声をかけて 一緒にセカイに行こうかな)
穂波:一歌ちゃん、咲希ちゃん……あれ?
穂波:席にいない……? すれ違っちゃったのかな
???:あ……もしかして、 星乃さんと天馬さんを探してるの?
穂波:……桐谷さん……!
遥:星乃さんと天馬さんなら、戻るまでもうちょっとかかるかも。 ……ちょっと、いろいろあって
穂波:え? い、いろいろって?
遥:あ、そんなに深刻なことじゃないよ。 ふたりとも、美術の授業中に居眠りしちゃって……
穂波:居眠り?
遥:うん。それで今日仕上げる予定の絵が仕上げられなくて、 今、居残りしてやってるんだ
遥:授業中も眠そうだったし…… 疲れてるのかな
穂波:あ……
穂波:(……やっぱり練習と準備の両方をやることが、 ふたりの負担になってる)
穂波:(わたしに何かできればいいけど……、 でも、わたしひとりじゃ何も……)
遥:……? どうかしたの?
穂波:あ……えっと、その……。 ふたりが居眠りしちゃったのは、 きっとワンマンの準備で忙しいからだろうなって思って……
遥:ワンマン?
穂波:うん……。 実は、レーベルの人に声をかけられて、 ワンマンをやってみたらどうかって言われたの
遥:そうなんだ……! すごいね
穂波:ありがとう。 ……ただ、それ自体はよかったんだけど、 みんな準備も練習も全力でやってるから、消耗してて……
遥:そっか……
遥:最初のワンマンは大変だよね。 自分達で準備しなきゃいけないなら、余計に
穂波:……あ、そういえば——
穂波:桐谷さん達もワンマンをやったんだよね。 どうだったの?
遥:私達も苦労したよ。 やることがすごく多くて……大変だったな
遥:でも、お客さんと想いをひとつにできて—— 私達としても、すごくいいライブにできたと思う
穂波:そうなんだ……。 よかったね、おめでとう
穂波:そうだ、もしよければなんだけど……。 ワンマンの前の準備とか、本番とかで気をつけてたことを 教えてもらえないかな?
穂波:その、バンドとアイドルじゃ いろいろ違うのはわかるんだけど…… 何か参考にできるかもなって思って
遥:……気をつけてたこと……か
遥:そうだね……。 これは、私個人の考えだけど……
遥:——できる限り、余計なことを考えないようにしてたよ
穂波:え?
遥:ワンマンライブは、合同ライブより、 やらなくちゃいけないことや、 考えなくちゃいけないことが多いでしょ?
遥:だからつい、あれもこれもやらなくちゃって思って、 頭がいっぱいになっちゃうんだけど……
遥:でも、ライブに来てくれるお客さん達の気持ちは、ひとつだけ
遥:——最高のライブを見たいっていうこと
穂波:……!
遥:だから、余計なことは考えないで、 『本番で最高のパフォーマンスをして、 お客さん達に楽しんでもらうこと』。ただそれだけを考えてた
遥:その結果を出すためにできることは全部したよ。 自分達でどうにもならないことは、 いろんな人に協力してもらったしね
穂波:協力……
遥:うん。私達を応援してくれる人達に、助けてもらったんだ。 ライブの運営を手伝ってもらったりね
遥:あとは……配信でどんなものが見たいかアンケートをとったり、 セトリについて、知り合いに意見を聞いたりとかもしたよ
穂波:……演奏以外で、誰かに助けてもらうなんて、 考えたことなかったな……
遥:ふふ。私も、最初はそうだったな。 特に、ファンに手伝ってもらおうって意見が出た時は、 正直ちょっと抵抗があったんだ
遥:けど……結果的にはよかったって思ってる
遥:みんなが——喜んでくれたから
穂波:(なんだろう……。 なんだか、うまく言えないけど……)
穂波:(桐谷さん達は、やっぱり、プロなんだ……)
穂波:(時間とお金を使って見に来てくれるお客さん達のことを ちゃんと考えた上で——絶対に楽しませようって思ってる)
穂波:(そのためなら、できることを全部しようって…… そういう覚悟をしてる)
穂波:(わたしは……全然、そこまで考えられてなかったな)
穂波:(ワンマンを良くしたいとは思ってるけど……。 プロになるチャンスだから頑張らなくちゃとか、 みんなの負担を減らしたいとか、あれこれ考えちゃって)
穂波:(来てくれるお客さんのことを 第一に考えられてなかった)
穂波:(わたし達にとって大事なことは、 わたし達の演奏をお客さんの心に響かせて、 楽しんでもらうことなのに……)
遥:……でも、もうひとつ考えてたことがあるんだ
穂波:え?
遥:それは——お客さんと同じくらい、 自分達もそのライブを心から楽しんで届けようっていうこと
遥:『楽しませなきゃ』って義務感だけでできたライブは、 やっぱりつまらないし、それはお客さんにも伝わっちゃう
遥:だから、ちゃんと自分達が心から納得して、楽しむこと。 それを忘れないようにしてたな
遥:だから、まとめると——
遥:『まず最高のパフォーマンスをして、お客さんに楽しんでもらう。 そして、それを自分達も楽しむ』 ——っていうことを大事にしてたよ
穂波:自分達も……
穂波:……たしかに、そうだね
遥:もちろん、真剣にやってるからこそ 苦しかったり大変な時もあると思うけど——
遥:でもやっぱり、自分達が心から楽しむことって、 大事なことだって思うんだ
穂波:……うん
穂波:桐谷さん、本当にありがとう
穂波:桐谷さんのおかげで気づけた。 ……あれこれ考えすぎちゃってたなって
穂波:自分達も、お客さんも、心から楽しめるような…… そんなワンマンを作ろうって思うよ
遥:……ふふ、役に立てたならよかった。 頑張ってね
穂波:うん!
穂波:(わたしも、ここから始めよう)
穂波:(わたしにできることを——本当に全部!)
咲希:うう~、先生あんなに怒らなくってもいいのに……あ! ほなちゃん!
一歌:ごめんね、遅くなって。 待っててくれたの?
穂波:うん。でも、大丈夫だよ
穂波:おかげですごく大切なことを聞けたから!
咲希・一歌:『え?』
穂波:わたし——これからもっともっと頑張るね! ……ふたりとも、練習に行こう!
第 5 话:心震わせるために
教室のセカイ
志歩:——遅れてごめん。 今日は準備からやるんだよね……って……
志歩:黒板にびっしり字が……何これ?
咲希:あ、しほちゃん! 遅いよ~!
ミク:いらっしゃい志歩、待ってたんだよ
志歩:……みんな、何やってるの? 今日は先にワンマンのための作業をやるはずだったんじゃ……
一歌:そのことなんだけど……、 穂波がアイディアを出してくれたんだ
志歩:え?
志歩:チラシ作りや、物販用のCD作りや、告知—— 練習以外の作業を、他の人達にお願いする?
穂波:うん
穂波:……これまでは、練習以外のことを手伝ってもらうのは さすがに悪いなって思ってたけど……
穂波:でも、今はそういうことを考えてる場合じゃないって思ったの
穂波:——わたし達、今、 練習と準備の両方でいっぱいいっぱいになってるでしょ
穂波:……初めてのワンマンだし、 全部ちゃんとやりたいっていう気持ちは、すごくわかるよ
穂波:わたしもそう思ってたから、 なんとかみんなの分を代わりにできないかって考えてたんだ
穂波:でも現実的に考えて、 わたし自身も練習しないと今回のライブをやり切るのは難しいし、 ……ひとりで無理をするのもよくないって思う
志歩:……そうだね
穂波:それで悩んでた時に、桐谷さんに会って—— ワンマンをする上で大切なことを教わったんだ
咲希:ワンマンをする上で、大切なこと?
穂波:うん
穂波:まず—— 最高の演奏をして、お客さんに楽しんでもらうこと
穂波:——わたし達は、『わたし達の演奏を たくさんの人の心に響かせたい』って思って、 演奏してるでしょう?
穂波:なら、ワンマンは今まで以上に 全力でやらなきゃって思うんだ
穂波:そして、そのためには—— できることを本当に全部やらなきゃって思った。 だからさっきの提案をしたの
志歩:穂波……
穂波:優先しなくちゃいけないのは、何より練習。 それから、新曲作り
穂波:だから、それ以外は全部、 周りの人にお願いして、力を借りていこう
穂波:わたしの友達とか、クラスメイトとか…… あとは家族にもお願いしてみようと思う
咲希:え? ほなちゃんの家族にも?
穂波:うん。うちは自営業だし、お金周りのこととか交渉ごととか、 いろいろ助けてくれると思うから
穂波:もちろん、お願いする係はわたしがやるから心配しないで。 みんなは練習と作曲に集中してくれれば大丈夫
一歌:でもそれじゃ、穂波が大変なんじゃ……
穂波:大丈夫。——まかせて
穂波:みんなには、 お客さん達を楽しませることだけ考えてほしいの
穂波:準備で疲れちゃったり、時間に追われてたら、 練習も曲作りも焦っちゃうでしょう?
咲希:ほなちゃん……
穂波:だから——
穂波:皆さん、お願いします。力を貸してください!
穂波:このワンマン、どうしても成功させたいんです……!
ミク:……ふふ。 もちろん、力になるよ
MEIKO:可愛い後輩の頼みなら、聞かないわけにはいかないしね
穂波:……! ありがとうございます!
ミク:でも——その前にひとつ聞いていい?
穂波:え……?
ミク:さっき、ワンマンをする上で大切なことを言う時、 『まず』って言ってたよね
ミク:他にも、大切なことがあるの?
穂波:それは——
穂波:わたし達自身が、このワンマンをめいっぱい楽しむことだよ
穂波:……っていっても、これは友達の受け売りだけど……
ミク:……そっか。 そういうことなら、私達も楽しんで準備していこう
リン:うんうんっ! どんなお手伝いするか、めちゃ楽しみ♪
志歩:——最高の演奏をするために、 できることを全部……か
咲希:ほなちゃんがそう思ってがんばってくれるなら…… アタシ達も、応えなくっちゃね!
一歌:うん!
一歌:みんな思いっきり楽しんで、頑張ろう!
穂波:それじゃあ一歌ちゃん、咲希ちゃん。 今から練習と曲作りに集中してもらって大丈夫だよ
穂波:志歩ちゃん、スケジュールの組み直しだけ、 手伝ってもらっていいかな?
志歩:わかった
こはね:え? Leo/needのチラシを?
穂波:うん、よければ作ってもらえないかなって思って……! こはねちゃん、経験者だって聞いたから
こはね:経験者っていうほどたくさん作ってはないけど…… でも、私でよければ力になるよ
穂波:本当? ありがとう……!
穂波:あ、それで早速だけど……コンセプトとしては、 わたし達がどういうバンドか 一目で伝わるようなデザインにしたいって思ってて……
こはね:一目で……。 ふふ、難しそうだけど、やりがいがありそうだね
こはね:あ……そうだ。この前イベントに行った時に すごくいいフライヤーがあったから、 何枚か写真も撮っておいたんだった
こはね:それを見ながら、一緒にイメージを固めていくのはどうかな? そこが固まったら、あとはこっちで作業するよ
穂波:うん! ありがとう!
類:僕に、Leo/needのサイトを作ってほしい?
穂波:は、はい……! サイトからチケット予約できるようにしたくて。 急なお願いで申し訳ないんですが…… もしよければ、お願いできないでしょうか?
司:昨日、適任者がいないかと穂波に聞かれてな。 こういうのなら、お前は得意だろう!
類:そうだねえ。 おそらくそこまで時間はかからないと思うけれど……
穂波:ほ、本当ですか? でしたら……ぜひお願いしたいです!
穂波:すみません、本当はわたし達自身で やらなくてはいけないことなんですけど、 初めてのワンマンでいっぱいいっぱいで……
司:オレもバンドのことはよくわからんが…… ワンマンライブをやるというのは、 きっと大変なのだろうな
穂波:は、はい……。 咲希ちゃんも、みんなも——本当に一生懸命で
穂波:自分達で全部やりたいって気持ちで頑張っていたんですが、 それじゃ練習が追いつかなくなってしまって
穂波:来てくれたお客さんに最高のパフォーマンスをするためにも できるだけみんなには、そのことだけを 考えていてほしいんです
穂波:だからその……勝手なお願いだとは思うんですが……。 その、よろしくお願いします!
類:……なるほどね。 そういうことなら、協力するよ
類:やはりいいものを作るためには、人事を尽くさなくてはね
穂波:……! ありがとうございます!
穂波:——バンド紹介の文面は、これでいきましょう
KAITO:……穂波達らしくて、いいと思う
穂波:ありがとうございます! それじゃあアカウントを作って、投稿しますね
リン:いえーい! チャンネルに続いて、 Leo/needアカウント開設だねっ♪
穂波:ええと、ワンマンの宣伝の準備はこれでできたから——
穂波:あ、そうだ。店長さんから来てた確認のメールを返して…… それから練習に戻らないと
志歩:穂波、お疲れ。 いつ頃、練習に合流できそう?
穂波:あと5分くらいしたらそっちに行けると思うよ
志歩:わかった。 じゃあ、そのあいだにもう1回合わせておく
志歩:——みんな、かなりいい感じに弾けるようになったから、 あとは穂波にかかってるよ
穂波:が……頑張るね!!
咲希:あー! しほちゃんってば、 ほなちゃんにプレッシャーかけてる!
一歌:大丈夫だよ、穂波。 志歩は穂波用に特別メニュー考えてるから
穂波:え? そうなの?
志歩:ちょ……! ふたりとも、教室にいてって言ったでしょ
咲希:だってだって、待ちきれなかったんだもーん♪
一歌:新曲作りも練習も思いっきりやれてるけど、 4人で合わせる時間がちょっと減っちゃったからね
一歌:けど——穂波のおかげで、すごくいい感じになってるよ。 ありがとう
穂波:どういたしまして!
ミク:みんな、すごくいい調子だね。 ワンマンの準備が始まってすぐの頃とは、全然空気が違うよ
MEIKO:……穂波の頑張りが、みんなにもいい影響を与えたみたいだね
ミク:そうだね。 元々穂波は、みんなを支えるために頑張る子だったけど——
ミク:今はみんなを引っ張ってて、かっこいいな
MEIKO:それ、本人に言ってあげなよ。 きっと喜ぶから
ミク:たしかにね。 でも——
ミク:今はいい雰囲気だから、 また、あとにしておくよ
MEIKO:ふふ、ミクもずいぶん先輩っぽくなったね。 かっこいいよ
ミク:え……べ、別に今のはそういうつもりじゃないから
MEIKO:あはは、照れてる照れてる
第 6 话:売れるための武器
ライブハウス
店長:……じゃあ、当日のタイムスケジュールはこれで大丈夫だね。 まだちょっと先だけど、ワンマン、頑張って
穂波:はい、ありがとうございます
志歩:これで、本番前の打ち合わせは全部終わったね
穂波:リハの時には、またいろいろ話すことになると思うけど…… それまでは練習に集中できそうだね
咲希:う~! いよいよワンマン……って思うと、 すっごくドキドキするな!
一歌:そうだね。……お客さん、来てくれるかな
穂波:ふふ、それなら大丈夫だよ。ほら
一歌:え? それって……
穂波:チケットの予約リストだよ。 まだ手売りしてないのに、思ったよりチケットがさばけてるんだ
咲希:本当!? あ、それってもしかして、アカウント作ったり、 るいさんにサイト作ってもらったからかな?
一歌:新規のお客さんも結構いるみたいだから、 それが大きそうだね
志歩:ただ、まだ目標数には届いてないから…… あとは手売りで頑張っていこう
咲希:うん、そうだね! お客さんでぎゅうぎゅうにしちゃおう!
穂波:ふふっ
???:——それじゃ、今日は頑張れよ
バンドのメンバー達:『はい!』
穂波:……あれ? この声——
真堂:ん? ああ、皆さん。偶然ですね
咲希:あ、真堂さん! こんにちは!
真堂:こんにちは。 今日はライブ……ではないですよね
穂波:はい。 ワンマン前の打ち合わせに来たんです
真堂:ああ、お疲れさまです。 アカウントのほうで準備の様子は見させてもらっていますが、 順調ですか?
一歌:はい。最初はやることが山積みで いっぱいいっぱいでしたけど——
一歌:今は落ち着いて、思い切り練習に打ち込めているので、 順調です!
志歩:そういえば、真堂さんは今日もお仕事ですか?
真堂:ええ。 今日出る、うちのバンドを見に来たんです
一歌:え?
真堂:もしかしたら知ってるかもしれないですね。 うちのレーベルからインディーズデビューしてる 『Gimme!!』というバンドです
志歩:え……Gimme!!ってあの?
咲希:しほちゃん、知ってるの?
志歩:うん。横浜の辺りで活動してる 人気バンドだってことくらいだけど……。 真堂さんのところに所属してたんですね
真堂:ええ。ちょうど皆さんと会った頃に所属が決まったんです。 今は活動範囲を広げていて、 このハコでやるのは二度目なんですが……
真堂:よかったら、このあと見ていきませんか?
穂波:え……いいんですか?
真堂:ええ。 もしかしたら、皆さんの先輩になるかもしれないですしね
咲希:あ、ありがとうございますっ!!
咲希:先輩になるかも、だってー! えへへ……なんだかワクワクしちゃうね!
志歩:咲希、気が早いよ。 ……今回は、勉強させてもらおう
一歌:うん、そうだね……!
穂波:(もうインディーズデビューをしてるバンド……。 STANDOUTさんの演奏は聴いたことがあるけど、 それ以外は生で聴いたことってほとんどないな)
穂波:(どんなバンドなんだろう……)
真堂:そろそろ始まりそうですね
穂波:……!
Gimme!!のボーカル:♪————!! ♪————!!
一歌:わ……!
咲希:(すごい……! すっごくパワフルで、グイグイ引き込まれちゃう……!)
咲希:(こんな人達が、所属してるんだ……!)
一歌:(……ボーカルの声が、 個性的な世界観にぴったり……)
一歌:(この声だからこそ、切ないパートが際立って……すごいな……)
志歩:(……演奏のレベルも、かなり高い。 イオリさん達にも引けを取らないくらい)
志歩:(ここまで完成度上げるのに、 私達ならどれくらいかかるんだろう……)
穂波:すごい存在感……。 …………
穂波:(こういうバンドが…… レーベルに所属できるバンドなんだ……)
真堂:…………
Gimme!!のボーカル:——みんな、今日はありがとう!! また次のライブも聴きに来てね!!
真堂:……大丈夫ですか? 少し表情が暗いようですけど
咲希:あ……えっと、その……。 すごいバンドだなって思って
真堂:ああ……そうですね。 彼女達は実際、かなり人気もありますし
真堂:ちなみに——どういう部分を、すごいと感じましたか?
志歩:……まずは演奏のレベル、ですね。 かなり技術力が高いなと思いました
一歌:私は……すごく個性があるなって感じました。 曲の世界観とボーカルの声がぴったりはまっていて
真堂:——プロになれるバンドには、 それぞれ必ず武器があるものです
真堂:Gimme!!なら、今皆さんが言ってたとおり、 高い演奏技術と、独自の世界観ですね
真堂:……どうですか?
真堂:現時点で皆さんに、 彼女達に勝てそうな武器はありますか?
穂波:……! それは…………
真堂:はは、少し意地悪な質問をしてしまいましたね
真堂:もちろん、皆さんの演奏は悪くない。 特にベースの日野森さんは相当の手練れだと思います
志歩:……ありがとうございます
真堂:ただ残念ながら、それだけじゃ、売れる可能性は低い
真堂:そして……売れる可能性が低いバンドを 所属させるわけにはいきません。 こっちも仕事なので
穂波:…………
真堂:だから、皆さんが本気でプロになりたいなら、 皆さんの売り——武器を意識して、使っていくべきでしょうね
一歌:武器を意識して、使う……?
穂波:それってもしかして……、 わたし達は、何かもう武器を持っているっていうことですか?
真堂:ええ、そういうことです
真堂:まず——作る曲と歌詞がいいですね。 同世代の若者に受けています
真堂:程よいダークさのある曲から、明るいポップな曲まで、 振り幅広く作れるのもいいですね
一歌・咲希:『……!』
真堂:ここは皆さんの武器になるでしょう。 ただ……売るということを考えると、 これだけではまだ足りません
志歩:……そうですね
穂波:じゃあ……わたし達の武器って……?
真堂:もうひとつあります。 それは——
真堂:——若さです
穂波:……え?
真堂:Gimme!!は平均24歳ですから。 その点、大きく優位に立っています
志歩:若さって……もしかしてそれ……
志歩:『女子高生バンド』として売れっていうことですか……?
真堂:——前に噂で聞きました。 皆さんがそういう形で売れたくないという話は
志歩:……! じゃあ、どうしてそんなこと……!
真堂:さっきも言ったとおりです
真堂:皆さんには芽がある。 曲もいいし、演奏もこれからどんどん伸びる
真堂:ですが…… それだけで売れるほど、プロの世界は甘いものじゃない
志歩:だからって、どうして『若い』って部分を 武器にしなきゃいけないんですか?
真堂:皆さんからしてみたら、若さは特別なものじゃないでしょう
真堂:だが——世間はそうは見ません
真堂:スポーツだってそうです。 プロの試合より、甲子園やインターハイを見たがる人間がいる
真堂:『若者が青春を賭けて頑張っている』ということは、 それだけで、感動的で大きなフックになります
真堂:なら、武器として使わない手はない
真堂:この世にはプロを目指すバンドがごまんといます。 その中で生き残るためには、なんだって武器にする必要がある。 ……違いますか?
志歩:……っ
一歌:それは……それはたしかに、 そうかもしれませんけど——
咲希:で、でもそれは何か……違うんじゃないかって……
真堂:何が『違う』んでしょうか?
咲希:そ、それは……
真堂:プライドは、捨てたほうがいい。 夢を掴みたいなら——時には代償を払うことも必要ですから
一歌・咲希・穂波・志歩:『…………!』
咲希:(ど……どうしよう。 まさか、急にこんな話になっちゃうなんて……!)
志歩:(……プロとしてやっていきたいと思うなら、 使えるものを全部使う必要がある。それは……わかる)
一歌:(真堂さんの言うことは……たしかに間違ってない)
穂波:(わかる、けど……)
穂波:(それで、いいの……?)
穂波:……っ
穂波:(……そうだ)
穂波:——一番大切なことを、忘れちゃだめだよね
真堂:……納得いきませんか?
真堂:嫌だと思う気持ちはわかりますが、 ……使える武器を使うのは悪いことではありませんよ
真堂:一度考えるくらいは——
穂波:——それでも、ダメです
穂波:そうしたらきっと——後悔することになると思うんです
真堂:……ほう?
第 7 话:わたし達の大切なこと
ライブハウス
真堂:後悔する……ですか
真堂:——どうして、そう思うんですか?
穂波:……プロとして売れることが簡単じゃないということは、 わたしにも、少しはわかります
穂波:売るために、若さという武器を使う…… そういう考えかたがあることも、わかります
真堂:なら——
穂波:でも——
穂波:わたし達はお客さん達に、『青春を賭けて頑張っている』 というところを見てほしいわけじゃないんです
穂波:何よりもわたし達4人の——演奏で、心を震わせてほしいんです
穂波:……わたし達は、他のバンドとは、 ちょっと違うかもしれません
穂波:元々バンドをやりたくて一緒に始めたわけじゃなくて、 幼馴染みの4人で一緒にいたいという理由でバンドを始めたので
真堂:……!
穂波:でも、そこから——気持ちはどんどん動いていきました。 みんなの気持ちに触れて、わたしもいろんな人の心に響く演奏を したいって強く思うようになりました
穂波:……さっき良いといってくれた曲だって、 売れるために作ったわけじゃありません
穂波:咲希ちゃんが、わたし達のことやお客さんのことを考えて 一生懸命作ってくれた曲です
穂波:一歌ちゃんの歌詞も、志歩ちゃんの演奏もそうです。 たくさんの人の心に響かせたいっていう想いが 一番に入ってるんです
穂波:プロになるためには必要な気持ちじゃないかもしれません。 でも……
穂波:わたしは——わたし達の中にあるこの気持ちを、 絶対に大切にしたいんです
志歩:…………
真堂:……そのためにプロになれなかったとしても、ですか?
穂波:……っ
穂波:……なってみせます
穂波:この気持ちを手放さないまま ——みんなでプロになってみせます
穂波:それに……やっぱり、 武器にしたくないものを武器にしてしまったら……
穂波:わたし達自身が納得して、楽しんで、 最高の演奏をすることができない
穂波:そんな……そんな中途半端な気持ちのままじゃ、 お客さん達の心を震わせるような演奏は、できないと思うんです
真堂:(中途半端な気持ちじゃ——)
真堂:…………それは、たしかにそうだな
穂波:プロになるために代償を払う覚悟は、できています
穂波:でも何を払うかということは、 わたし達自身で決めていきたいんです
穂波:——わたし達の一番大事な想いを、守るためにも
志歩:……穂波の言うとおりだね
穂波:……! 志歩ちゃん……
志歩:真堂さん。 私達は、プロとしてやっていければ それでいいわけじゃないんです
志歩:お客さんの心を、最高の演奏で震わせる。 そのためにプロになりたい
志歩:だからそこを——私達の想いを、ブレさせるわけにはいきません
穂波:——武器が必要なら、ここから、みんなで見つけます
穂波:所属させてよかったと思えるような、 そんなバンドになれるよう……必死で頑張ります
穂波:だから——次のライブを見に来てください
穂波:絶対に、最高のライブにします!
真堂:(……ほう)
真堂:……わかりました。 そこまで言うのなら……期待してもよさそうですね
真堂:——今度のワンマン、楽しみにしてます
穂波:……はい!!
真堂:(一番大事な想いを守るために、 払う代償は自分達で決める……か)
真堂:若いくせに、結構な啖呵を切るじゃねえか
真堂:(……もちろん現実はそう簡単じゃない。 この世界で生き抜きたいなら、武器は全部使ったほうがいい)
真堂:(だが——)
真堂:(そういう手段を取ることで失われるものも ……たしかにある)
真堂:(大事なものを守りたいのなら、尚更な——)
真堂:——今日の話で、あのバンドの覚悟がわかったな。 あれくらい強く自分達の意志を主張できるのなら、 荒波に揉まれても、まあ問題ないだろう
真堂:しかし、あの望月という子……。 一番気弱でおとなしそうに見えたが、 なかなかどうして、気骨があるな
真堂:(……あの子はバンドの要になるだろうな。 正式にオファーする時は、必ず押さえておきたい)
真堂:(バンドは——ああいうヤツがいないと、 ボロボロになっちまうもんだ)
真堂:もしもし、社長、今いいですか? ……はい。ありがとうございます
真堂:実はLeo/needというバンドのことで、お話が——
第 8 话:みんなの背中を
ライブハウス
穂波:…………
穂波:(……まだ、心臓がドキドキしてる……)
穂波:(あんな風に言葉が出てくるなんて…… なんだか、今になっても信じられないな……)
穂波:(……あれ……。 安心したら、急に……)
咲希:き、緊張したぁ……
一歌:うん……。 まさか、ライブの見学から急にああいう話になるなんてね……
一歌:でも、穂波がちゃんと話してくれたから……って、 穂波?
志歩:あ……!
志歩:ちょっと、大丈夫!?
咲希:ほなちゃん、どうしたの!?
穂波:ご、ごめんね……! ほっとしたら、急に力が抜けちゃって……
一歌:大丈夫? 立てる?
咲希:アタシに掴まっていいよ! ……って、手すっごくプルプルしてる!
穂波:あ……な、なんだか今更怖くなっちゃったみたいで……
穂波:あの……みんな、ごめんね
咲希:え?
穂波:わたし、せっかく声をかけてくれたレーベルの人に、 あんな風に言っちゃって……
穂波:もしこれで、一緒に仕事をっていう 話までなくなっちゃったら……
志歩:まったく……何言ってるんだか
志歩:さっき、穂波の言うとおりだって言ったでしょ? あの言葉に嘘はないよ
志歩:——穂波が、ああやって言ってくれたから、 私達の気持ちもブレずにすんだ
穂波:……!
咲希:そうだよほなちゃん!
咲希:……最初は、プロになるためなら 納得できないこともしなくちゃならないのかなって 思いそうになったけど……
咲希:でも、ほなちゃんがああ言ってくれたから、 大事なところは守らなくちゃいけないって思えたんだよ!
一歌:うん
一歌:私達の大事なものを守ってくれてありがとう、穂波
穂波:みんな……
穂波:……ううん。 わたしのほうこそ、ありがとう……!
咲希:っよ~し! そうとなったら、今度のワンマンは 最強のワンマンにしなくっちゃね!!
志歩:最強のワンマンって…… ちょっとバカっぽいんだけど
咲希:え!? そ、そんなことないよ~!
一歌:ふふっ、でも実際、今までで一番いいライブにしたいね
志歩:だね。 ってわけで——明日から二度目の集中特訓をやるのはどう?
穂波:え? それって、anemoneさん達との 対バン前にやった……?
志歩:うん。 今回はワンマン自体の準備もあるから難しいかなって 思ったんだけど——
志歩:穂波がいろいろ頑張ってくれたおかげで、 ちょっとは、まとまった時間がとれそうだなって思って
咲希:そっか……うん! みんなで集中してやったら、きっとググッと良くなるよね!
一歌:うん! 新曲の完成度も上げたいな……!
志歩:特に穂波は、事務作業をやってもらってた分、 ドラムの練習する時間が少なくなっちゃってたから…… そこもサポートさせて
志歩:ビシバシいくから、覚悟してよ
穂波:……うんっ!!
教室のセカイ
穂波:……はぁ、はぁ、はぁ……
穂波:ねえ……みんな、今……
志歩:うん
一歌:通して……全力でやり切れた!
咲希:や……やった~~~!! やった! やったよ~ほなちゃーん!!
穂波:きゃ……! もう、咲希ちゃんたら。 急に抱きついたら危ないよ?
咲希:だってだって、嬉しいんだもんっ! あ……ミクちゃん達、聴いててどうだった!?
ミク:もちろん——最高だったよ
志歩:……この調子なら、ワンマンは万全な状態で挑めそうだね
一歌:うん。 でも——油断はしないでいこう
咲希:そうだね! アタシ達の初ワンマンで お客さんに思いっきり楽しんでほしいもん!!
咲希:えへへ……! ここまでこれたのも、ほなちゃんのおかげだね!
穂波:(…………よかった)
穂波:(曲を作ることも、演奏で引っ張ることもできないわたしに できることは、本当にちょっとしかないと思ってたけど)
穂波:(今回は少しだけ…… みんなが進むための力になれたような気がする)
志歩:それじゃ、第一段階はクリアできたことだし—— ここからは1曲1曲、もっと詰めていくよ
志歩:みんな、覚悟はいい?
穂波:——うんっ!