活动剧情

ほどかれた糸のその先に

活动ID:85

第 1 话:波乱の予感

雫の部屋
雫:……ふう。 やっと宿題が終わったわ
雫:あら、もうこんな時間なのね。 早く明日の準備して、休まなくちゃ
雫:制服は大丈夫。明日の授業の教科書も入れたわ。 あとは……
雫:そうだわ、スマホ! いつも忘れちゃうから気をつけないと——
雫:……そういえば、『アイドル大戦争』のプロデューサーさんから お返事はあったかしら?
雫:出演について、そろそろ返信がきてもいい頃だし、 私も確認してみないと
雫:ええと、電源ボタンを押して……
雫:——あら? 真っ黒な画面から変わらないわ
雫:もしかして、壊れちゃったのかしら? 明日、電気屋さんに見てもらった方がいいかもしれないわね……
雫:メールのことは、明日みんなに聞いてみましょう
雫:それにしても……MORE MORE JUMP!として テレビに出られるかもしれないなんて
雫:——いつか、こんな日が来たらいいなとは思っていたけど こんなに早いとは思わなかったわ
雫:(最初は事務所にも所属できなかったから、ちゃんと アイドルとして活動できるかどうかもわからなかったけど)
雫:(そんな私達が、ワンマンライブを無事に終えることができて、 その上、テレビの出演依頼までもらえるなんて……)
雫:(今回のテレビ出演は、私達の 『ドームライブをやれるアイドルになる』っていう目標への 足掛かりになるはずだわ)
雫:(それに——)
雫:(ファンのみんなも、テレビっていう 新しい舞台に立つ私達に期待してくれるはず……)
雫:今回出れるのは5分くらいのコーナーってことだったけど、 気は抜けないわね
雫:……しっかり準備して挑まなくちゃ
翌日 昼休み
宮益坂女子学園
雫:はあ……先生のお手伝いでプリントを運んでいたら すっかり遅くなっちゃったわ
雫:ごめんなさいみんな。 少し遅れちゃって——
遥:あっ、雫……
愛莉:お、お疲れさま
雫:どうしたの? なんだかみんな、いつもより元気がない気がするけど……
みのり:あっ……え、ええっと……
遥:……雫は、メール見てない?
雫:メール?
雫:あ……実はまだ見れていないの。 昨日電源を入れようとしたらスマホがつかなくて、 電気屋さんに持っていかなくちゃって思っていたんだけど……
雫:今朝、充電器のコンセントが差さっていなくて 充電できていなかっただけだって気づいたわ
みのり:あはは……雫ちゃんらしいね
雫:でも、メールがどうかしたの? もしかして、テレビ出演が駄目になっちゃったとか……?
愛莉:そういうわけじゃないの。ただ—— わたし達の出る回のMCが変更になったって連絡があったのよ
雫:MCが……?
みのり:……うん。 わたし達が出る時は『君色シンフォニウム』って グループの子達がやることになってたみたいなんだけど……
みのり:センターの子が体調不良で出れなくなって、 代わりに違うグループに出てもらうことになったんだって
雫:まあ、それは大変ね。 その子が元気になればいいけれど……
雫:それで、代わりに出ることになったのは、 なんていうグループの子達なのかしら?
遥:……、それが——
愛莉:……Cheerful*Daysよ
雫:え……
メンバーA:……また雫だけ雑誌の表紙の仕事入ってる。 あれ絶対にひいきされてるでしょ
メンバーB:ほんと、顔が綺麗ってだけで得だよね。 歌もダンスも私達の方が上手いのに……
メンバーC:あーあ、本当……
メンバーC:雫がいなくなってくれてよかった
雫:……そうだったのね
みのり:雫ちゃん……?
遥:……大丈夫?
雫:そうね……。 直接顔を合わせるのは、少し気まずくはあるけれど……
雫:でも、テレビに出るって決めた以上、 いつか共演することもあるかもしれないと思っていたから
愛莉:雫……
雫:だから、私のことは心配しなくて大丈夫よ
雫:それよりも、初めてのテレビ出演をいいものにするために、 みんなで頑張りましょう!
遥:……そうだね
みのり:うん! 雫ちゃんの言うとおり、みんなでテレビ出演がんばろう!
みのり:……あ、そうだ! メールに打ち合わせの候補日も書いてあったんだよ。 雫ちゃんの予定は大丈夫か聞きたかったんだ
雫:まあ、そうだったのね。 ごめんなさい、何も確認できていなくて
遥:大丈夫だよ。 みんなで、あいてる日を確認しよう
雫:ええ! 私は基本的にいつでも大丈夫だけど——

第 2 话:過去と対峙する勇気

宮益坂女子学園
みのり:じゃあ、雫ちゃん愛莉ちゃん、また放課後にね!
雫:ええ、また!
雫:遥ちゃんもみのりちゃんも張り切ってるね。 打ち合わせの日も決まったし、楽しみだな
愛莉:……そうね。 みのりなんて気合い入れすぎて ぬいぐるみ相手に毎晩家でトークの練習してるらしいわよ
雫:ふふっ、そうなんだ。 頑張り屋さんで、みのりちゃんらしいな
雫:……私も、気を引き締めなくちゃ
愛莉:……そうね。 わたしも、何かあった時には フォローに回れるようにしようと思ってるわ
愛莉:でも——
愛莉:アンタ、本当に大丈夫なの?
雫:え……?
愛莉:チアデのことよ。 みのりと遥の前では平気って顔してたけど……
愛莉:……全然、平気じゃないでしょ。 あの子達は、ひどいことを言ってアンタを追い出したんだから
雫:それは……
愛莉:共演ってことになったら、あの子達と 顔を合わせなきゃいけないのよ
愛莉:——ううん、それだけじゃないわ。 カメラの前で、笑顔で話さなきゃいけない……
愛莉:それはきっと……想像よりずっと大変なはずだわ。 前のことだから、って簡単に割り切れるものじゃないと思うの
雫:愛莉ちゃん……
愛莉:……だから、本当は嫌だと思ってるのなら言ってほしいの
愛莉:もし自分のせいでテレビ出演が駄目になるとか考えてるのなら…… そんな心配はしなくてもいいから
雫:……愛莉ちゃんは優しいね
愛莉:な……
愛莉:何よ突然。 いつものことでしょーが!
雫:ふふっ、そうだね。 愛莉ちゃんはいつも優しくて、いろいろ考えてくれるもの
雫:でも……大丈夫だよ
愛莉:…………本当に?
雫:たしかに、全然平気……ってわけじゃないよ
雫:でも——
雫:ここで私がCheerful*Daysのみんなのことを気にして 今回のテレビ出演を断ったとしても、何も変わらないと思うの
雫:何も変わらず——、 私はずっとCheerful*Daysのみんなに負い目を持ってて、 みんなも、私に微妙な気持ちを持ち続ける……
雫:……そんなのは、嫌だなと思って
愛莉:雫……
雫:だから、これはチャンスかもしれないって思ってるんだ
雫:今回みんなと共演して最高のコーナーにできたら、 もしかしたら、私達のあいだにあるモヤモヤを 晴らすことができるかもしれないって
雫:……だから、私のことは心配しないで
雫:それより、MORE MORE JUMP!として 初めてのテレビ出演を成功させられるようにしたいな
愛莉:……そう。 アンタは、覚悟を決めてるのね
愛莉:——よーし! そういうことなら、今回は遠慮しないわよ!
雫:えっ?
愛莉:MORE MORE JUMP!のテレビ初出演…… 小さいコーナーだけど、爪痕残していきましょ!
雫:うん!
数日後
テレビ局
みのり:きっ……ききききき、 緊張するね、打ち合わせって……!
遥:気持ちはわかるけど、 もう少し肩の力を抜いてもいいと思うよ
愛莉:そうよ。アンタがそんなガチガチだと、 プロデューサーさんも話しにくいでしょ
みのり:そ、それはそうだし、 そうしたいのはやまやまなのですがっ……
みのり:ううっ……! 肩の力って、どうやって抜くんだっけ……!?
愛莉:これは重症だわ……
雫:大丈夫よ、みのりちゃん。 そういう時は、落ち着いて自分のことだけに集中するの
みのり:自分のことだけに……?
雫:ええ。今は少しだけ周りのことを置いておいて、 みのりちゃんが、この番組で届けたいことを思い出してみて
雫:質問のパターンとか、たくさん考えていたわよね。 どんなことを話そうと思っていたの?
みのり:あっ、えっと、えっと……。 この前のワンマンでの感想は聞かれるかなって思ってて……
みのり:そしたら絶対に、応援してくれてる人達に 来てもらえてとっても嬉しかったって言いたいなって
雫:それから?
みのり:あとは、衣装のことも聞かれるかも?って思ったから、 ファンのみんなが作ってくれたものなんですって 話をしようかなって
雫:……それなら、みのりちゃんは、 ファンのみんなへ感謝の気持ちを届けたいのね
みのり:あ……
みのり:……うん。 それと、もしもこの番組を見て わたし達のファンになってくれる人がいたら——
みのり:その人達にも希望を届けられるようにがんばるから、 応援してください!って伝えたいんだ
遥:……いい感じに肩の力が抜けたんじゃない?
みのり:えっ……ホントだ! まだちょっぴりドキドキしてるけど……、 さっきよりは落ち着いてきた感じがする!
みのり:雫ちゃんのおかげだよ! ありがとう、雫ちゃ~ん!
愛莉:やるじゃない、雫
雫:ふふ、よかったわ。 私も初めて番組の打ち合わせに出た時は みのりちゃんと同じだったから、気持ちはよくわかるの
みのり:や、やっぱり!? みんな最初はそうだよね!?
雫:ええ。 心臓が飛び出そうなほどドキドキしていたわ
雫:でも、たくさんお仕事をしていくうちに 少しずつ慣れていったから……
雫:みのりちゃんも、きっと大丈夫になっていくはずよ
みのり:そうなんだ……
みのり:よかった! わたしもいつか、みんなみたいに落ち着いて——
アイハザプロデューサー:皆さん、お待たせしてすみません! 前の打ち合わせが押しちゃいまして……
みのり:ひょえっ!
遥:『アイドル大戦争』のプロデューサーさんですね。 はじめまして、MORE MORE JUMP!の桐谷遥です
愛莉:同じく、MORE MORE JUMP!桃井愛莉です。 お声がけいただき、本当にありがとうございます! 今日はよろしくお願いします
雫:MORE MORE JUMP!日野森雫です。 テレビ出演のご依頼をいただけて嬉しいです。 精一杯やらせていただきますので、よろしくお願いします
みのり:あっ……えっ、えっ、えっと……!
みのり:はっ、花里みのりと申しますっ! この度は、すてきなご連絡をありがとうございました! えっと、えっと、それで——
みのり:今日はよっ……よろしくおねがいしましゅ!!
愛莉:みのり……
アイハザプロデューサー:ははは、元気があっていいですねえ。 メールでも書きましたが、皆さんのことは存じていますよ
アイハザプロデューサー:どうぞ座ってください。 今、お茶をいれさせますので、 お菓子でもつまみながらお話しましょう

第 3 话:FutureにFeature!

テレビ局
アイハザプロデューサー:……というわけで、皆さんには『アイハザ』内のミニコーナー、 『FutureにFeature!』に出演していただきます
雫:フューチャーにフィーチャー……
愛莉:新人アイドルの紹介コーナーってことを考えると、 『未来の売れっ子アイドルに注目!』みたいな意味かしらね
アイハザプロデューサー:まさに、そのとおりです。 今注目されつつあるアイドルをゲストに呼んで、 パーソナルを掘る質問をしていくコーナーになっています
アイハザプロデューサー:それで……、今回、皆さんに質問をするMCというのが、 Cheerful*Daysの方々ですね
雫:……ええ、聞いています
アイハザプロデューサー:——で、こちらが台本になります。 こちらに想定の質問が記載されていますので、 当日までに回答を用意しておいていただければと
遥:わかりました
みのり:えっ……質問って、台本にもう書いてあるんですか!? わたし、てっきり当日いきなり聞かれるものかと……!
アイハザプロデューサー:はは、たしかに驚きますよね。 もちろん台本のない番組もありますが…… 基本的には先に質問内容を渡して、考えてもらうことが多いです
アイハザプロデューサー:そのほうが収録も円滑に進みますし、 アイドル達も慌てることなく自分達をアピールできますから
みのり:そ、そうだったんですね……!
みのり:番組見てて、みんなすごい上手にしゃべれてて すごいなあって思ってたけど、そういうことだったんだ……
愛莉:ふふっ、わたしも昔、 バラエティ見てそう思ってた時期があったわ
遥:もう慣れちゃったから当然みたいに思ってたけど、 最初はみのりみたいにびっくりしたよね
アイハザプロデューサー:とはいえ、台本にのっているのは基本的に 『想定質問』としてとらえていただけるとありがたいです
アイハザプロデューサー:アイハザではアイドル同士のガチンコトークを売りにしているので 突っ込んだ話も、もちろん大歓迎ですから——
アイハザプロデューサー:今回も、皆さんとMCの そういう話を聞けることを期待しています
雫:……そういえば、違うコーナーでも 台本どおりじゃなさそうな話をしているところがあったわね
愛莉:そうね。どんな質問が来ても、 落ち着いて答えられるようにしておかないと
みのり:やっぱり、練習はしておかなくちゃね……!
アイハザプロデューサー:ははは、とはいえ構えなくても大丈夫ですよ。 基本的には同い年くらいの女の子が 素で楽しく話してる様子が見られれば、アイハザの視聴者は——
雫:あら? 誰か来たみたいだわ
アイハザプロデューサー:うちのスタッフかな。 ……ちょっと失礼してもいいですか?
愛莉:ええ、大丈夫です
アイハザプロデューサー:バタバタしてしまってすみません。 お菓子もまだありますので、ぜひ食べてお待ちください
みのり:プロデューサーさん、忙しそうだね……
雫:そうね。他の番組も担当しているみたいだし…… そんな中、私達のために時間を取ってくれてありがたいわ
愛莉:メールの印象どおり、いい人そうだしね。 説明も丁寧で、安心したわ
遥:うん、このまま無事に本番を迎えられれば——
アイハザプロデューサー:すみません、MORE MORE JUMP!の皆さん、 ちょっといいですか?
遥:あ——はい。どうかしたんですか?
アイハザプロデューサー:実は今、この上の階にあるスタジオで 『姫様の朝食』っていうバラエティの撮影をしているんですが、 その休憩のついでに挨拶にきてくれたみたいなんですよ
アイハザプロデューサー:次のアイハザのMC——、Cheerful*Daysの皆さんが
遥:……!
アイハザプロデューサー:それで、うちのスタッフがMORE MORE JUMP!と 打ち合わせ中だと言ったら、 是非皆さんとも挨拶させていただきたいと
雫:私達に、挨拶を……
愛莉:雫……
アイハザプロデューサー:……日野森さんとCheerful*Daysの関係は知っています。 少し前に業界でも噂になりましたからね
アイハザプロデューサー:だから正直、今回MCの変更があった時、 皆さんの出演許可はもらえないだろうと思っていたんです
みのり:え……
アイハザプロデューサー:でも、皆さんはオファーを受けてくれた。 きっと、覚悟があったからだと思ってます
雫:…………
アイハザプロデューサー:今日挨拶しなかったとしても、 本番では絶対に彼女達と面と向かって話すことになります。 ですので——
アイハザプロデューサー:——もし、皆さんさえよろしければ、 顔を合わせておいたほうがいいと思うのですが、どうでしょうか
みのり:それは……
雫:……そうですね
雫:私も共演者としてご挨拶はしたいと思っていたので、 是非お願いしたいです
みのり:雫ちゃん……
雫:……みんなも、いいかしら?
みのり:あ、う、うん……
愛莉:——わかったわ
アイハザプロデューサー:……では、また来てもらうのも悪いので こちらから出向きましょうか
アイハザプロデューサー:スタジオにいらっしゃるようなので、ご案内しますね
雫:はい、よろしくお願いします
撮影スタジオ
機材スタッフ:このセット、このままで大丈夫でしょうか?
音声スタッフ:ピンマイクの調整お願いしま~す
みのり:わっ、スタジオってこんなに広いんだ……! スタッフさんもたくさんいるね……!
愛莉:よく考えたら、わたし達、部外者なのに 入ってきちゃってよかったのかしら?
アイハザプロデューサー:さっき確認をとったら 問題ないということだったので大丈夫ですよ。 さて、Cheerful*Daysの子達は——
???:あれ、プロデューサー、来てくれたんですか?
雫:あ……
???:忙しそうだったから出直そうってみんなで話してたんですけど…… わざわざ、ありがとうございます
雫:(アリサちゃん……)
雫:…………
アイハザプロデューサー:ああ、みんなお疲れさま。 2度も足を運んでもらうわけにはいかないよ。 そもそも、今回は急にMCに入ってもらうことになったのに……
メンバー達:そんなの気にしないでください! 私達、もともとアイハザ出たいって思ってたので、 すごく嬉しいです!
アリサ:だね。それに——
アリサ:久しぶりの顔も見られたし?
雫:……そうね。 みんな久しぶり。元気そうでよかったわ
メンバー達:雫ちゃんも元気そうだね。 前ちょっと配信見させてもらったけど、 なんかチアデにいた時より生き生きしてるみたいじゃん
雫:……、それは……
アリサ:まあまあ、積もる話はあるけど、 今日は挨拶ってことだしそれくらいにして
アリサ:今回は別のグループでってことだけど、 共演者としてよろしくね
アリサ:私達って、まあ結構いろいろあったけど——
アリサ:アイハザはアイドル好きには結構知られてて、 スタッフさんの熱意も高い番組だから、 絶対いいものにしたいって思ってるの
アリサ:だから、雫と—— MORE MORE JUMP!の皆さんとやるコーナーも、 短いからって適当にはやりたくないから
アリサ:全力でやろうと思ってるので、よろしくお願いしますね
みのり:あっ……! え、えーっと……
雫:こちらこそよろしくね。 MORE MORE JUMP!としてテレビに出るのは 今回が初めてだから、迷惑をかけるかもしれないけれど……
雫:私達も精一杯やらせてもらおうと思うわ。 収録でお話できるのを楽しみにしているわね
アリサ:……うん
アリサ:それじゃ、今日はありがと。また収録でね
アリサ:プロデューサー、本番よろしくお願いします! では私達は失礼します
みのり:ふわ~……! なんか……なんか、すごかったね!
愛莉:笑顔の裏に、とてつもない圧を感じたわね
愛莉:……でも、言っていることは本心だと思うわ
遥:そうだね。 本気で番組をよくしたいと思ってるみたいだった
遥:……ずっと人気なグループなだけあるね
愛莉:ますます気を抜けないわね。 収録までにいろいろなことを想定しておきましょ
遥・みのり:『うん……!』
雫:(みんな、本気で収録に臨もうとしてる)
雫:(——私も頑張らなくちゃ)

第 4 话:あの時のこと

数日後
ステージのセカイ
ミク:それじゃあ、もう打ち合わせも終わったんだね……!
リン:ってことは、あとは本番だけかあ……。 なんだかドキドキしちゃうね!
MEIKO:緊張もするだろうし大変だとは思うけど、 いつもの配信みたいに、 みんなの楽しそうな顔が見れるの期待してるわよ!
愛莉:ありがとう! 本番に向けて、準備を万全にしておこうと思うわ!
愛莉:とはいえ…… 今からいろいろ想定していかなくちゃいけないけどね
雫:そうね。台本があるとはいえ、 プロデューサーさんはアドリブも歓迎って言っていたし
遥:MCのチアデがどう動くかわからないもんね。 想定外の質問でも、しっかり答えられるようにしておかないと
KAITO:……そういえば、 テレビ局でCheerful*Daysの子達と会ったんだよね
レン:……どんな感じだったの? 雫ちゃんがグループを辞めてから 会うのは初めてだったんだよね?
雫:ええ。 最初は少し緊張したけれど、大丈夫だったわ
雫:普通に挨拶もできたし……、 今回の番組収録も全力でやると言っていたから
愛莉:……まあ正直、わたしとしてはちょっと思うところあるけどね
愛莉:あれだけ雫にひどいことを言ったわけだし。 本当なら、謝罪の言葉があったってよかったんじゃない?
みのり:愛莉ちゃん……
愛莉:——まあでも、最悪な空気のまま 本番を迎えることにはならなそうだし、それはよかったわよね
雫:……そうね
遥:そういえば、あの日暮さんって子、 たしか雫が辞めたあとにリーダーになったんだっけ?
雫:ええ。アリサちゃんは……
雫:とっても責任感があって、いつもみんなを引っ張っていて……。 だから、リーダーになったってニュースを見た時は、 ピッタリだと思ったわ
雫:どうしたの?
愛莉:どうしたのって……。 あんなひどいことを言ってきた相手に、 よくそんな評価ができるなって感心してるのよ
愛莉:雫らしいっていうか、なんていうか……。 わたしだったら絶対無理だわ
雫:アリサちゃんが頑張っていたのは本当のことだから
雫:……それに私、あの時みんなが言っていたことは 間違っていないと思っているの
みのり:え……
メンバーA:……また雫だけ雑誌の表紙の仕事入ってる。 あれ絶対にひいきされてるでしょ
メンバーB:ほんと、顔が綺麗ってだけで得だよね。 歌もダンスも私達の方が上手いのに……
雫:私はみんなと違って、ダンスも歌も、 自分のものにするまで時間がかかっていたし……
雫:テレビとかライブとか、 人前に出る時はみんなに助けてもらうことが多くて、 センターとしての責任を果たせてたとは言えないから
ルカ:雫ちゃん……
雫:あ……ごめんなさい。 気をつかわせちゃったかしら
ルカ:いいえ。 ただ……雫ちゃん、本当に大変だったのね
雫:……そんなことはないわ。 大変だったのは私じゃなくて、むしろ——
雫:——いい機会だから、私とCheerful*Daysのこと、 もっと詳しくみんなに聞いてもらおうかしら
愛莉:え……
みのり:で、でも……わたし達、聞いていいのかな? 雫ちゃんにとっては、嫌な思い出だと思うし……
雫:……大丈夫よ
雫:むしろ、私が聞いてもらいたいの。 そのほうが気持ちの整理ができて、 しっかりと本番に臨めると思うから
遥:雫……
愛莉:……わかったわ。 アンタがそう言うなら、聞かせてちょうだい
雫:……ありがとう
雫:——これはみんなも知っていると思うけれど、 私がCheerful*Daysに入ったのは、 オーディションがきっかけだったの
数年前
芸能事務所
雫:事務所に所属したばかりの頃は 『Cheerful*Days』としてじゃなくて、 『グランプリを獲った子』としてのお披露目が多かったの
雫:毎日が、本当に目まぐるしかったわ。 いろんなテレビ局でインタビューに答えたり、 番組の小さなコーナーに出してもらったり……
雫:だから、同期のメンバーとの顔合わせは、 グランプリを獲った日から少しあとだったんだけど……、 印象的だったから、とてもよく覚えているわ
プロデューサー:彼女が今回のグランプリの日野森雫ちゃんだ
プロデューサー:みんなと同じ3期生のメンバーとして、 今日から劇場に立ってもらうことになるから、 仲良くしてあげてね
雫:ひ……日野森雫です。 私ひとりだけ顔合わせが遅れてしまってすみません
雫:私は、その……皆さんみたいに芸歴はなくて……。 わからないことばかりなのですが、よろしくお願いします……!
メンバー達:雫ちゃん、よろしくね!
メンバー達:同じグループで同期なのに変な感じだけど、 日野森さんのこと、今日までテレビで見てたよ。 一緒にがんばろうね!
雫:あ……ええ! ありがとうございます!
アリサ:ふふ。 同期だし、同い年なんだから敬語なんてやめようよ
雫:(あ、この子……)
アリサ:……どこかで会ったことある顔だって思った? 私、あなたがグランプリ獲ったオーディションの準グラ
雫:もちろん覚えてます。日暮アリサちゃんですよね。 とても可愛くて、ダンスも歌も上手で…… 印象に残っていたんです
アリサ:え~? 歴代イチのオーラがあるって言われてる子に褒められてもな~
雫:あっ……。 ごめんなさい、そんなつもりじゃ……
アリサ:あははっ、ごめんごめん、冗談だって!
雫:え? ええと……
アリサ:とにかく、敬語はやめてよ。 せっかく同じグループの仲間になったんだし。それと——
アリサ:オーディションで負けた分、選抜は負けないから。 そっちも手加減せずに全力できてよ
アリサ:3期がサイコーの世代だって言われるように、 一緒にCheerful*Days盛り上げてこーね、雫!
雫:あ……
雫:ええ……!
雫:みんなと会ったのは、その時が最初……。 特にアリサちゃんは印象的で、 初対面から誰かを引っ張る力のある子だなって思ったわ
雫:それから私達は、先輩達から業界のルールを教わったりしながら、 たくさん仕事をこなしていったの
雫:みんな仲が良くて……、 楽屋とかでも、とても楽しい時間を過ごしていたわ
雫:でも、ある時……新曲が発表されたの。 今までの私達とはジャンルの違う雰囲気の曲——
雫:振り付けも今までになく激しめのもので、 覚えるのがやっとで……みんな苦戦してたわ
レッスン場
雫:はあっ……はあっ……
メンバー達:はあっ、キツすぎ~! やっぱこの曲、何度通しても踊り切るのがやっとだよ!
メンバー達:正直、自分のことでいっぱいいっぱいで、周り見えないよね。 ……でもこれ、次のライブの1曲目でしょ? こんな感じで本当にやれるのかな?
雫:(……すごく難しい曲だとは思っていたけれど、 私より何倍もダンスのうまいみんなでさえ、そう思うのね……)
雫:(私、ちゃんとみんなについていけるのかしら……)
アリサ:でも、できないばっか言っててもしょうがないでしょ。 ライブまでには完璧にしなくちゃいけないんだから
メンバー達:う……。 それはわかってるけどー……
アリサ:ま、くよくよする必要ないって。 なんだかんだで私達、 今まで結構いろんなこと乗り切ってきたわけだし
アリサ:——ってことで、今日はみんなで焼肉でも行かない!? 最近練習ばっかだし、たまには気分転換するのも いいと思うんだよね~
メンバー達:え、焼肉!? 行きたい行きたい~!
アリサ:ハイ、それじゃ決まり! ……雫も行くよね!?
雫:あ……私は——
雫:——とても行きたいけれど、 もう少しだけ振り付けを確認してからにするわ
メンバー達:えっ、まだやるの? でも、今日はもう遅いよ?
雫:そうなんだけど……、 私、やっぱりダンスがあまり得意じゃなくて……。 みんなに遅れをとっている気がするから、練習しなくちゃ
アリサ:え、じゃあ私も残って練習するよ! 雫がやるなら負けてらんないし!
メンバー達:えっ、アリサが焼肉行こうって言ったのに!?
メンバー達:今日は相当やったしもういいじゃん! 私、焼肉の気持ちになっちゃったよ~
アリサ:うっ、それは……
雫:私のことは気にしないで、みんなで行ってきて
雫:アリサちゃんのダンスは完璧だったし、 私の練習につきあわせるのは申し訳ないもの
アリサ:いや、あんなの全然完璧って言わないし、 正直もっと詰めなきゃって思ってるんだけど——
メンバー達:でも休憩は大事ってことでしょ? 雫もこう言ってることだし、今日は私達だけで楽しもうよ!
アリサ:……もう。わかったよ
アリサ:雫もほどほどにね。 無理して怪我しないようにだけ気をつけなよ
雫:ええ。ありがとう。 みんな楽しんできてね
雫:——ふう。 みんなとご飯を食べられないのは残念だけど、やらなくちゃ
雫:(ダンスを覚えるのに時間をかけてしまったせいで、 細かいところが全然綺麗にできていないのよね)
雫:(一応通しでは踊れるけど…… 今のままじゃ、お客さんの前には立てないわ)
雫:——よし
雫:頑張りましょう!
雫:——最初の入りのところ、ダンスの先生が教えてくれたのは、 もっとしなやかな動きだったわよね
雫:今は腰が硬いかしら? もっと流れを意識して、リズムに乗るように……
プロデューサー:…………
スタッフ:あれ? 何してるんですかプロデューサー、そんなところで
プロデューサー:ん~……。 君さ、結構近くで彼女達のこと見てきたでしょ。 日野森のこと、どう思う?
スタッフ:どう、って……やっぱり華があると思いますよ。 初ステージではどの子よりも輝いてて、オーラがあったし
スタッフ:でも、実はすごい努力家なとこもいいですよね。 あとは……見かけによらず抜けたとこもあって、 ギャップがあっておもしろいかも
スタッフ:そういう意味では、雫ちゃんって実はライトなファンよりも コアなファンがつきそうだなって——
プロデューサー:——駄目なんだよね、それじゃあ
プロデューサー:日野森がグランプリを獲ったのは、 たくさんの人達にビジュアルがハマったからなんだよ。 綺麗で繊細で、なんでも完璧にこなしそうで……
プロデューサー:そういうイメージで、 3期生の顔として他の子より何度も露出してきた。 なのに、期待を裏切るわけにはいかないでしょ
スタッフ:それは……
プロデューサー:だから、売りかたを考えないといけないんだよね。 このままじゃ、せっかくの『グランプリ』の肩書が死んでしまう
プロデューサー:——日野森に望まれてるのは、ギャップじゃないんだ

第 5 话:Cheerful*Daysとして

数カ月後
撮影所
雫:お疲れさまでした
番組プロデューサー:雫ちゃん、お疲れさま! 今日も完璧キラキラオーラでよかったよ~! まさに“みんなの憧れの日野森雫”って感じだったね!
雫:あ……
雫:(みんなの憧れの、日野森雫……)
雫:……ありがとうございます
番組プロデューサー:しかしここ最近、すごく忙しいらしいね! この前マネージャーさんから次のロケのスケジュール 押さえられないかもって聞いて焦っちゃったよ~
雫:あ……ごめんなさい。 なるべくお断りしたくないって思ってるんですが……
番組プロデューサー:いいっていいって。売れっ子なんだから仕方ないよ。 それに結局スケジュールは取れたし、 こっちとしては万々歳だから
雫:そうだったんですね……。 それじゃあ、次の収録もよろしくお願いします
番組プロデューサー:ああ、よろしく! 大変だと思うけど、体には気をつけてね
雫:(……最近目まぐるしいと思ってはいたけれど、 スケジュールが埋まってしまうほどだったのね)
雫:(少し前では考えられないことだったわ。 これもきっと、プロデューサーさんの……)
雫:——って、いけない、もうこんな時間! 早くレッスン場に行かなくちゃ!
レッスン場
雫:遅くなってごめんなさい!
メンバー達:あ、雫お疲れ~。 今日、お昼の番組の収録あったんだっけ?
アリサ:しかもこのレッスンのあとも音楽雑誌のインタビューでしょ? 結構ハードだよね
雫:そうね……。 でも、お仕事があるのはありがたいことだから
メンバー達:ホントに最近、雫の人気、うなぎ上りだよね。 プロデューサーのイメージ戦略大成功って感じ!
雫:あ……
雫:でも、それは本当の私じゃ……
アリサ:まあ、雫の言いたいことはわかるよ。 ホントの自分と違うイメージが世間に認知されるって、 なんかちょっと想像つかないし
メンバー達:まあでも最近、結構板についてきたんじゃない? 『完璧でミステリアスな雫様』がさ!
メンバー達:そうだね。 たぶん仕事が増えてるのも、そのイメージのおかげだし
雫:でも、それは全部、プロデューサーさんの台本や フォローしてくれるみんなのおかげよ。 私ひとりだと、いつも失敗してしまうから……
雫:——だから、悩んでいるの。 本当に、このままでいいのかって……
メンバー達:いいんじゃない? ファンのみんながそれで喜んでくれるならさ
雫:え……
メンバー達:そうだよ。 この業界、キャラ作ってる人ってそんな珍しくないし
雫:……でも私、続けられる自信がないわ。 いつか素の自分が出てしまうと思うし……
アリサ:そんなの、プロデューサーは織り込み済みじゃない? だから私達に協力してあげてって言ってきたわけだし
アリサ:まあ正直、私も最初はどうかと思ったけど…… 雫が売れることでCheerful*Daysのためになるなら、 異議はないかな
アリサ:どんな形であれ、露出が増えるのはいいことだしね。 雫のついでに私達3期のこともアピールできるし!
メンバー達:うんうん。だからもし雫がボロを出しそうになっても、 私達が全力でカバーするから安心して!
雫:みんな……
雫:ありがとう
雫:そのあとも、みんなが言ってくれていたとおり—— 私が失敗しそうになったら、 いつも必ず、みんなが助けてくれた
雫:私は、それにとても安心したし、ありがたいと思って……、 でも同時に、とても申し訳なかったから、 自分だけで完璧に立ち回れるように頑張ってみたんだけど
雫:……どうしてもうまくいかなくて、 みんなには、ずっと私のフォローをさせてしまっていた
雫:それなのに、私の仕事だけはどんどん増えていって、 ついにセンターまで担うことになって……
雫:——そのあとくらいから、 みんなの態度が、少しずつ変わり始めたの
雫:遅れてごめんなさい! 撮影の仕事がおしてしまって……
メンバー達:……最近そういうの続きすぎじゃない? マネージャーに他の仕事との調整、頼んでないの?
雫:今日の収録、台本にない流れになってしまったから、 どう話していいかわからなくて……。 いつもフォローしてくれて、本当にありがとう
メンバー達:お礼はいいんだけど……いい加減慣れてよ。 いつまでも私達を頼りにされても困るんだよね
雫:そして、決定的だったのは……
メンバー達:雫……次の劇場公演に出られないって、ホント?
雫:……本当にごめんなさい。 生放送の撮影と重なってしまったみたいで……
雫:劇場公演を優先したかったのだけど、 撮影日がわかった時には、もうキャスト変更もできなかったの
メンバー達:いや……事情はわかるけど……
アリサ:——雫は、それでいいわけ?
雫:え?
アリサ:今、私達の中で一番ファンがいるのは雫だよね。 次の劇場公演も雫を目当てに来てくれるお客さんがたくさんいる
アリサ:そういうお客さんが当日劇場に来て雫がいないってわかったら、 どんな顔するかわかってる? もうチケットも払い戻せないんだよ?
アリサ:それでも劇場に立たなくて…… 立たないで別の仕事をしてて、いいと思ってるの?
雫:も、もちろん、いいとは思ってないわ。 でも……
メンバー達:それなら、劇場公演もできるように なんか動いてくれたりしたんだよね?
雫:っ……それは……、 もう撮影まで、日もないから——
メンバー達:ってことは、そういう努力もしてくれなかったってことなんだ。 センターなのに
雫:っ……
メンバー達:——あのさ。ちょっと前から思ってたけど、 今の雫がCheerful*Daysにいる意味ってあるの?
メンバー達:最近は、練習も別の仕事があるからって中抜けするじゃん。 私達はお客さんのためにライブの練習を精一杯やってるのに
メンバー達:私達、番組収録に行かせるために 雫をフォローしてきたわけじゃないんだけど
雫:あ……
メンバー達:ホントそれ。 っていうか、よくそれでセンターだなんて言えるね。 私、正直もうついていけないよ
雫:っ……それ、は……
雫:……ごめんなさい、本当に。みんなの言うとおりだわ。 私も……諦めないで、もっと早い段階で スタッフさんに相談してみればよかった
雫:センターのことも……ずっと思っていたわ。 指名された時から、私じゃ力不足だって……
雫:だから、本当は違う人にやってもらったほうが——
アリサ:——ふざけないでよ
雫:……っ
アリサ:アンタって、いつもそうだよね。 自分の頭で考えないで、流されてばっか
アリサ:アンタに与えられるのは、 誰かにとって死ぬほど欲しいチャンスなのに、 それを自分のものにしようって気もまるでないし
雫:アリサちゃん……
アリサ:だから、センターに向いてないっていうのも、 みんなが言ってることにも、全部同意
アリサ:みんなアンタのキャラを守るためにいろいろやってるのに、 注目されて評価されるのはアンタばっかりだしね
雫:それは、わかって——
アリサ:わかってないでしょ! バックダンサー扱いされてる私達のことなんて!
雫:——っ
アリサ:……それでもファンの望むステージができるならって、 ずっと我慢してきた
アリサ:それなのに——……!
アリサ:……だから私は、私達の気持ちを踏みにじって、 一番大事な劇場公演に出ないアンタを——
アリサ:絶対に、許さないから
雫:……私の仕事が私の実力じゃなくて、 みんなのおかげで与えられているものだっていうことは、 わかってるつもりだったわ
雫:だから、どんな仕事もCheerful*Daysに還元できるように 精一杯やろうって……そう思ってた
雫:けれど、そのあとも——
雫:——あ、あら? 私の衣装は……
メンバー達:あれ、衣装ないの? もしかして、公演出なすぎて忘れられてるんじゃない?
メンバー達:あはは、ありえる。 ちゃんとスタイリストさんに報告したほうがいいよ? 『今日はCheerful*Daysの日野森雫の日です』ってさ!
雫:…………っ
雫:みんなとの関係は、ますます悪くなってしまったわ
雫:きっと私が自分のことに手一杯で、 みんなへのお返しが、ひとつもできていなかったからね
雫:それに——
アリサ:アンタに与えられるのは、 誰かにとって死ぬほど欲しいチャンスなのに、 それを自分のものにしようって気もまるでないし
ミク:雫ちゃん?
雫:……ううん
雫:だから、アリサちゃん達の言っていることも 正しかったと思っているの
雫:本当は、センターとして最後までやりきれずに、 脱退って形でグループを去ってしまった私が こんなことを言う資格はないんだけど……
雫:今回せっかくCheerful*Daysのみんなと 共演する機会をもらったから、 一緒にいい番組を作れたらいいなって思ってるわ
雫:……あの時迷惑をかけた分、頑張らなくちゃ
ルカ:……難しいと思うけど、 今回の収録で、お互いのわだかまりが解消されるといいわね
MEIKO:そうね。わたしは、Cheerful*Daysのみんなも雫ちゃんも、 間違っていないと思うわ
MEIKO:すれ違った結果、 全員で雫ちゃんひとりに強く当たったこと自体は 褒められたことではないと思うけど
MEIKO:でも、みんな…… アイドルであるために、必死だったんだものね
雫:……本当に、そうだと思うわ
MEIKO:今回の番組収録で、雫ちゃんが抱いている気持ちも Cheerful*Daysのみんなに伝わるといいわね
雫:めーちゃん……
雫:——ええ。 そうなったら、とっても嬉しいわ
愛莉:それじゃ、雫の話も聞かせてもらったところで 本番に向けて回答の練習始めましょうか
みのり:そうだね! じゃあ、わたしがMC役やるよ!
みのり:えっとえっと、ズバリ! 皆さんの好きな食べ物はなんでしょ~か!?
愛莉:……今の雫の話聞いて、一番に出てくる質問がそれ?
遥:みのりは回答役をやったほうがいいかもね
みのり:え~っ! わたしは絶対聞かれると思うけどな~!?

第 6 话:アイドル大戦争!

収録当日
テレビ局 スタジオ
アリサ:はい、始まりました! アイドル~っ……
メンバー達:『大戦争~!!』
アリサ:今週のMCはCheerful*Daysから、 リーダー、日暮アリサと!
真理奈:フレッシュな新人4期生、 山下真理奈でお送りしま~す!
みのり:つつつつ、ついに収録始まったね……!
遥:私達の出番までは、まだあるけどね。 それまでは観客席にいる気持ちでここから見てよう
みのり:は、遥ちゃん落ち着いててすごいなあ……! わたしもう、心臓がバクバクなんですが……!
愛莉:さっきまで楽屋でお菓子をむさぼってたのにどうしちゃったのよ。 今そんなだと、本番持たないわよ
雫:大丈夫よ、みのりちゃん。 番組の打ち合わせの時に話したことを思い出してみて
雫:そうしたら、きっとまた落ち着いてくると思うから
みのり:そ、そうだった! 自分のことに集中して……!
みのり:わたしは、みんなに希望を届けるために…… テレビで、たくさんの人に知ってもらえるように……
愛莉:……なんだか念仏みたいね
遥:でも、効果はあるんじゃない?
真理奈:——それで、最近は『飲めるケーキ』っていうのにハマってて! 本物のケーキだと、夜中食べるのに罪悪感あるじゃないですか?
アリサ:いや、わかるけどさ。 飲むのも食べるのもカロリー一緒だと変わらなくない?
雫:(あ……)
真理奈:それが、カロリーも全然違うんですよ! 生クリームも脂質低く作られてて、 いくらでもいけちゃうんです!
アリサ:いくらでもいけたらカロリー関係なくないでしょ!
アリサ:真理奈って、ホント甘いもん好きだよね。 もうすぐ誕生日だし、ファンのみんなにおねだりしてみたら?
真理奈:え~、いいんですか!? じゃあ、この場を借りて! ファンの皆さん、おいしいお菓子お待ちしてま~す♪
雫:(……アリサちゃん、前よりMCうまくなってる……)
雫:(いろんな番組で見かけるようになったし、 きっと、たくさん努力したのね)
雫:(それに、ひな壇のみんなも……)
メンバー達:真理奈、ちょっとあざとくな~い!? だいたい私達、食べ物とかの贈り物NGだから!
メンバー達:つーか4期生はフレッシュ感ないって言われてるのって、 真理奈みたいに妙にこなれてるのがいるからじゃない? もっと新人らしくしなきゃ!
雫:(みんな、番組をおもしろくできるように立ち回ってて 前よりも息が合ってる気がする。それも——)
アリサ:はいはい、すっごくアイハザっぽい掛け合いだけど、 新人いびりはそこまでにして、次のコーナーいくよ! 次は——
雫:(……やっぱり私はあの時、 Cheerful*Daysのいいセンターではなかったわ)
雫:(そういう風に指示されていたとはいえ、 いつも台本を読んでいるだけ……。 自分のことすら、自分の言葉で何ひとつ伝えられなくて)
雫:(それさえうまくいかずに、 みんなにフォローさせてしまったこともあった)
雫:(いつも、『完璧な日野森雫をやりきらなくちゃ』って、 自分のことばかりに精一杯で……)
雫:(——でも)
雫:(今の私は、あの頃の私とは違う)
アリサ:アンタに与えられるのは、 誰かにとって死ぬほど欲しいチャンスなのに、 それを自分のものにしようって気もまるでないし
雫:(——その言葉の意味を、 私はあの時、ちゃんと理解できていなかったわ)
雫:(でも、今は……)
スタッフ:MORE MORE JUMP!の皆さん、 スタンバイお願いします!
みのり:っ……!
愛莉:いよいよね
愛莉:……さあ、みんな、準備はいい!?
遥:うん、いつでも行けるよ
みのり:だ……だだだだだ、大丈夫!
愛莉:……みのりはちょっと本番に期待したいとこだけど
愛莉:雫はどう? アンタも久々のテレビだから——
雫:大丈夫よ
雫:久しぶりの収録、楽しみましょう
愛莉:——気合い十分ね。 行きましょう!
アリサ:さあ、ここからは大好評のミニコーナー、 注目アイドルグループを深堀りする『FutureにFeature!』 引き続きMCは真理奈とアリサでお届けします~!
真理奈:それではさっそくご登場いただきましょう! MORE MORE JUMP!の皆さんです!
みのり:(えっと、台本だと、まずはここで自己紹介……!)
みのり:——夢はきーっとみのりんりん! 希望の花束、届けます! MORE MORE JUMP!花里みのりです!
遥:遥か遠く、どこまでも! 希望の歌が届きますように! ……同じくMORE MORE JUMP!桐谷遥です
愛莉:今日もみんなに愛をデリバリー!
愛莉:MORE MORE JUMP! ラブリー! フェアリー! 愛莉ー! 桃井愛莉です!
雫:ひとしずくの幸せ、とどけます。 MORE MORE JUMP!日野森雫です
雫:今日は初めてのテレビ出演になりますが……
みのり・遥・雫・愛莉:『よろしくお願いします!』
真理奈:わ~、MORE MORE JUMP!の皆さん、 ようこそ『アイドル大戦争』へ~!
アリサ:今日、話せるの楽しみにしてたんだ~!
アリサ:……って、いつも話してる感じでいいよね? 私、敬語ってちょっと苦手だし
雫:(あ……)
アリサ:とにかく、敬語はやめてよ。 せっかく同じグループの仲間になったんだし。それと——
雫:——ええ。大丈夫よ
真理奈:なんかタメ口だと女子校みたいだけど、 アリサちゃんってみんなと知り合いなんでしたっけ?
アリサ:愛莉はQTだった時に絡んだことがあって。 ほら、Cheerful*DaysとQTって事務所一緒だから
愛莉:そうね。 グループ混合で合同運動会!みたいなイベントとかやったっけ。 ……なんだか懐かしいわ
アリサ:でも、遥ちゃんとみのりちゃんは、 ちょっとすれ違ったことあるくらいかな。 だから今回がほぼ初絡みだよね
遥:……ええ、そうですね。 今日はよろしくお願いします
アリサ:こちらこそよろしく~! 遥ちゃんもみのりちゃんもタメ口でいいからね。 で、あとは——
アリサ:雫と私の関係は、 アイハザの視聴者さんなら、言わずもがなって感じだよね
雫:……そうね
真理奈:雫さんは、元Cheerful*Daysですもんね! 私が入る前に卒業されちゃったから、私は会うの初めてですけど
アリサ:あ~、違う違う。 『卒業』じゃなくて『脱退』だから!
愛莉:ちょっと~、まだコーナー始まってないのに 随分突っ込んでくるじゃない!?
遥:本当に。 私達、まだ座ってもないのに
アリサ:あー、ごめんごめん! 積もる話もあるし、早く話したくなっちゃってさ
アリサ:じゃ、みんな、こっちのゲスト席座って! せっかくの機会だから、いろいろ質問させてよ
アリサ:Cheerful*DaysとMORE MORE JUMP!の雫の共演って、 視聴者さんもすごく注目してると思うから
雫:ええ、そうね。 私も、今日はちゃんとお話ができたらいいなって思っていたの
遥:(こういう話をされるかもとは思ってたけど、 ここまでストレートに突っ込んでくるとはね)
愛莉:(雫の脱退のことは、向こうとしてもいい話じゃない。 事務所が台本に目をとおしてるなら、 踏み込んだ話は止めるだろうって思ってたけど)
愛莉:(……この子のことを甘く見ていたわ。それに……)
アイハザプロデューサー:アイハザではアイドル同士のガチンコトークを売りにしているので 突っ込んだ話も、もちろん大歓迎ですから——
アイハザプロデューサー:今回も、皆さんとMCの そういう話を聞けることを期待しています
愛莉:(……そうよね。テレビってそういうものだし、 わたし達は、それを覚悟してここに立ってる)
愛莉:(でも……)
愛莉:(雫……大丈夫かしら)

第 7 话:からまった糸

テレビ局 スタジオ
アリサ:はい、それじゃあみんな席についたことだし、 初めての人のために、かる~くこのコーナーを説明するね!
真理奈:このコーナーは、今大注目されている新人アイドルグループに ベテランアイドルグループの先輩ちゃんから いろいろ質問して根掘り葉掘り聞いちゃうコーナーです♪
アリサ:まあ、新人アイドルって言っても、 MORE MORE JUMP!はみのりちゃん以外 全員ベテランだけどね
真理奈:でも、みんなって事務所にも入ってないんですよね? それなのにワンマン成功させたって、 結構大変だったんじゃないですか?
みのり:(あ……台本の流れに戻った……!)
遥:そうだね。私達だけじゃ無理だったと思うけど、 ファンのみんなの力も借りて、なんとか成功できたんだ
真理奈:あ、聞きました! モモジャンの皆さんは、イベントとかもファンの人達に 手伝ってもらって開催したりしてたんですよね!
アリサ:その衣装もファンの手作りなんでしょ? すごいよね、かわいい~!
みのり:そっ……そうなんです! 今日も初めてのテレビ出演で、 衣装どうしようかなって悩んだんですけど……
みのり:ファンのみんなにテレビでもお礼を伝えたいよねって話になって、 今日はこの衣装で出演することにしたんです!
真理奈:わあ、そうなんですね~! きっとファンのみんなも喜んでくれてると思います~!
アリサ:これって、デザインもファンの人がやってくれてるの?
遥:ううん、ベースのデザインは雫がやってくれたんだ。 それを元にファンのみんなが作ってくれたんだよ
アリサ:へえ……雫ってデザインとかできたんだ
雫:今回が初めてだったから、いろいろ悩んだの。 最初はお花とかつけたら可愛いんじゃないかと思って、 スマホで花言葉を調べようと思ったんだけど……
雫:なぜか地図が表示されて戻らなくなっちゃって、大変だったわ
真理奈:ええっ、花言葉を調べようとして地図!? それに戻らなくなっちゃったってどういうことですか!?
愛莉:あ~……雫はちょっと、機械に弱いのよ
遥:この前も、スマホの電源が入らなくて壊れたかと思ったら、 充電器が差さってなかっただけだったって言ってたしね
雫:は、遥ちゃん……。 なんだか恥ずかしいわ……
アリサ:でも、ライブでファンの力を借りたり、 衣装を作ってもらったり、MORE MORE JUMP!は 普通のアイドルよりもっとファンとの距離が近い感じなんだね
雫:ええ。 MORE MORE JUMP!は配信をメインに活動していて、 ファンのみんなとのコミュニケーションを大事にしているの
アリサ:そうなんだ。 でも、最初は幻滅されたんじゃない?
アリサ:だって雫、Cheerful*Daysの時とキャラ違うじゃん
愛莉:出たわね! この質問、台本にないんですけど!?
遥:真理奈ちゃんがせっかく台本の流れに戻してくれたのにね
真理奈:もー、毒舌で売ってるとはいえ、 アリサちゃんちょっと露骨すぎじゃないですか~?
アリサ:え~、だってみんなも気になってるでしょ!? しかも、うちにいたときより楽しくやってるっぽいし!
雫:Cheerful*Daysの時も、楽しかったわよ
アリサ:ホントに~? でも前は『何をやっても完璧な雫様!』って感じだったじゃん
アリサ:なのに今は、さっきのスマホの話もそうだけど、 なんかこう、ふわふわ~ってした雰囲気だし
アリサ:ここまで路線変更して、 Cheerful*Daysの時のファンに悲しまれなかった?
アリサ:っていうか、どっちの雫がホントの雫なの?
雫:……、それは——
遥:(これだけ突っ込んだ質問が来ても、カメラは回り続けてる。 ということは——)
アイハザプロデューサー:…………
遥:(打ち合わせで言ってたとおり、 アイハザはそういう番組で、私達は撮れ高を求められてる。 だから日暮さんも……)
アリサ:全力でやろうと思ってるので、よろしくお願いしますね
アリサ:……って、私は実は答えを知ってるんだけど、 みんな気になってるかなって思って!
メンバー達:たしかにそれ、聞きたいって思ってる人多そうだよね!
メンバー達:やっぱり、Cheerful*Daysの時はキャラ作ってたってこと~?
真理奈:わわっ、ひな壇からも疑問の声が届いてますね~
真理奈:ど、どうですか、雫さん? ぶっちゃけこの質問……答えられます?
愛莉:(雫……)
雫:ええ。 みんなの言うとおり、気になってる人も多いはずだものね
雫:この機会に、しっかりお話させてもらうわ。 私は、Cheerful*Daysのメンバーとして活動していた時——
雫:いつもの私とは違う私を演じていたの
真理奈:え~っ、そうなんですか!? でも、どうして?
雫:……言い訳にしかならないけれど、 あの頃の私は自分に自信がなくて、とても弱かったから
雫:だから、すべてを完璧にこなす人に憧れて…… 私も、そういう人になりたくて……
雫:強い自分を演じることで、そこに近づこうと思ったの
みのり:(雫ちゃん、まるで自分からそうしたみたいに話してる)
みのり:(本当は、事務所の方針だったはずなのに……)
愛莉:…………
雫:けれど、私ひとりで違う自分を演じるのは難しくて、 Cheerful*Daysのみんなを巻き込んでしまって……、 たくさん迷惑をかけたわ
雫:……ううん、みんなだけじゃないわね。 私を支えてくれていた事務所の人達や、 お仕事で関わってくれていた人達——
雫:そして、そんな私を好きでいてくれたファンのみんなのことも グループの脱退で幻滅させてしまって……。 本当に不甲斐ないセンターだったと思うわ
雫:……本当に、ごめんなさい
みのり:雫ちゃん……
メンバー達:そうそう! 今だから言えちゃうけど、あの頃はホント大変だったよね~
メンバー達:たしかに。表に出る時の雫には全部台本があったけど、 素の雫って、さっきみたいなフワフワだから、 変なこと言っちゃわないか、いっつも内心ハラハラしてた!
メンバー達:わかる~! 特に質問が台本の流れから逸れた時の緊張感ヤバかったよね!
アリサ:コーヒーの好み聞かれてる時に、 なぜか紅茶の話し始めた時とか、 どう持っていけばいいかホント悩んだっけ!
真理奈:おおお、雫さんと同じ3期生のメンバーから 続々声があがってますね……
真理奈:でもでも、こんな話しちゃって大丈夫なんですかね~? 完璧、女子校のテンションになっちゃってますよ!?
雫:……大丈夫よ。 いつか話さなければならないと思っていたし、 すべて本当のことだから
雫:それに……私、気づいたの
雫:Cheerful*Daysの自分も、今の自分も、 同じ私なんだって
アリサ:え……
雫:今話したとおり、私はCheerful*Daysのみんなや スタッフさんの力を借りて、完璧な自分を演じていたわ
雫:だから、Cheerful*Daysを脱退して、 MORE MORE JUMP!で 生配信をメインに活動することになった時……
雫:前のような私を演じることは難しくなってしまって……悩んだの
雫:私は素の自分の不甲斐なさを理解していたから、 こんな私を見せてしまったら、 ずっとファンでいてくれている人を幻滅させてしまうだろうし——
雫:——いいえ。本当は何より、私自身が恐れていたわ。 素のままの私を、みんなに『好き』って言ってもらえるのかって
愛莉:雫……
雫:でも私は、素のままの自分でいることを選んだ。 それは——
雫:素の私でしか届けられないものがあるって……、 飾らないいつもの私が好きだって、言ってくれる人達がいたから
雫:だから、もしもファンのみんなをがっかりさせてしまっても、 これからはありのままの私で、 精一杯、みんなに希望を届けていこうと思ったの
真理奈:……すごい勇気ですね。 前のままのキャラでいたほうがファンも離れないだろうし、 いろいろ言われることもなさそうなのに
雫:そうね。だけど……
雫:みんなは、私が思っていた以上に、 ありのままの私を受け入れてくれたの
雫:そうしてみんなの温かさに恵まれて、 緊張しながら少しずつ……
雫:私も……私も、見てくれているみんなと同じように、 素の自分を——アイドルとして認められるようになって
雫:ああ、このままでいていいんだって思えた時に、ふと気づいたわ
雫:私がアイドルとしてファンのみんなに届けたいものは、 前も今も変わっていないって
雫:だってあの頃も、今の私と同じように……、 ファンのみんなに希望を届けたいって気持ちで活動していたから
アリサ:…………!
雫:前の私のほうが好きだったって言ってくれる人に、 今の私を好きになってくださいとは言えないわ
雫:でも、Cheerful*Daysの私も、 MORE MORE JUMP!の私も、私自身——私の一部なの
雫:だから私がファンのみんなを想う気持ちは 本物で、嘘偽りはなかった。 ……それだけは、いつか伝えたいと思っていたから
雫:ありがとう、アリサちゃん。 こうして話す機会をくれて
雫:それに、アイドル大戦争さんにも……。 こういう場を設けてもらえたこと、 とてもありがたく思っています
雫:私は、本当にまだまだですが…… よかったらこれからも、応援よろしくお願いします
アリサ:…………別に、私は
真理奈:かっこいい~!!! こういう仕事でありのままの自分を見せるのって、 実は一番勇気がいりますよね!
真理奈:私、雫さんのファンになっちゃいました! もっといろいろ聞いちゃいますよ~!
アリサ:——ちょっと真理奈、現金すぎでしょ。 でもまあ、なんか結構時間使っちゃったし……
アリサ:このあとは、順番に質問していこっかな? もちろん、台本も意識しながらね!
愛莉:(どうなることかと思ったけど、乗り切れたわね)
愛莉:(きっと雫自身も、こんなことになるなんて 想像もしてなかったと思うけど……)
愛莉:(アンタは、アンタがかつて事務所から与えられた 理想なんかより、ずっとずっとかっこよくて——)
愛莉:(——最高のアイドルだわ!)

第 8 话:私が私でいること

テレビ局 スタジオ
雫:みんな、お疲れさま
みのり:雫ちゃんこそお疲れさま~~!
みのり:全然台本にない質問だったのに、 あんなにちゃんと答えられて、本当にすごいよ! わたし、ホントにホントに尊敬しちゃった!
遥:本当にね。 内容も内容だったのに、よく落ち着いて対応できたと思う
愛莉:ええ、今日の雫は一段と輝いてたわ!
愛莉:伝えたいことをしっかり言葉にできていたし、 きっとファンのみんなに想いは届くはずよ。 オンエアが楽しみね!
雫:……そう言ってもらえてよかったわ。 私も、なんとか答えられたけれど——
雫:とっっっっても、緊張したから……
雫:Cheerful*Daysの頃の質問がくるとは思っていたけど、 まさかイメージのことまで踏み込まれると思ってなくて
雫:本当に、心臓が飛び出そうなほどドキドキしていたんだけど、 私達にとって初めてのテレビ番組でしょう?
雫:だから絶対に失敗できないと思って、 でもそう考えたらますます緊張しちゃって、もう——
愛莉:め、珍しくよくしゃべるわね……
遥:ふふっ、まさかそんなに緊張してたとはね。 全然そんな風に見えなかったのに
みのり:でも、収録で雫ちゃんが落ち着いてたおかげで 自分もしっかりしなくちゃって思えたからよかったよ!
雫:私のおかげで……
雫:——そう。よかったわ
愛莉:とにかく、無事に終わってよかったわね。 わたし達の初めてのテレビ出演、 なかなかいいものになったんじゃないかと思うわ
遥:そうだね。 ファンのみんなの反応を楽しみに——
???:お疲れさま
みのり:え……
みのり:わわっ、あ、アリサちゃん……!?
雫:……お疲れさま。 番組でも言ったけれど、今日は本当にありがとう
雫:もうグループは違うけれど…… また共演できて楽しかったわ
アリサ:……へえ。 あれを『楽しい』って言えるなんて、随分成長したんだね
愛莉:——それで、アンタはひとりで、 わたし達に挨拶に来ただけ?
愛莉:それとも、雫に何か言いたいこと……、 いや、言わなきゃいけないことでもあるのかしら?
遥:(愛莉……)
遥:(やっぱり、あの時のこと——)
アリサ:そうだね——
アリサ:——特にないかな
愛莉:はあっ!?
愛莉:あるでしょうが! 前は雫にひどいこと言ってごめんとか、 今日意地悪して申し訳なかったとか、そういういろいろが!
雫:あ、愛莉ちゃん……
アリサ:——ま、結構攻めた質問に正面から答えたのは、 素直にすごいと思ったよ
アリサ:それと……勘違いしてほしくないから言うけど、 私は番組を盛り上げることを優先しただけだから
アリサ:最初に会った時、全力でやるって言ったでしょ? アイハザは、ああいうのが求められる番組だし、 私はあくまで自分の仕事をまっとうしただけ
愛莉:っ、それは……
アリサ:まあ、久しぶりに みんなに助けを求めておどおどする雫が見れるのは ちょっと楽しみだな~って思ってたけど?
遥:あなた——
雫:遥ちゃん。大丈夫よ
遥:え……?
アリサ:な、何?
雫:——ごめんなさい
アリサ:は……?
雫:……番組でも話したとおり、 前の私は自分のことだけでいっぱいいっぱいで、 周りなんて見えていなかったわ
雫:そのことも本当に申し訳ないと思っているんだけど—— もうひとつ、別で謝りたいことがあるの
アリサ:……今更、何を言うつもり?
雫:……そうね。 とても今更なんだけど……
雫:私は、自分が恵まれていることにも気づかずに、 とても無神経なことを言ってしまったから
アリサ:…………!
雫:……ごめんなさい、本当に。みんなの言うとおりだわ。 私も……諦めないで、もっと早い段階で スタッフさんに相談してみればよかった
雫:センターのことも……ずっと思っていたわ。 指名された時から、私じゃ力不足だって……
雫:だから、本当は違う人にやってもらったほうが——
雫:……私が立ったセンターという場所は、 みんなの一番の目標で、夢が詰まっているところだった
雫:でも、前の私はそれをちゃんとわかっていなくて、 ただただ、自分には向いていないからって……、 もっといい人がいると思うからって
雫:『違う人にやってもらったほうがいい』なんて……、 みんなの憧れの場所を簡単に放りだすようなことを 言ってしまった
アリサ:——ふざけないでよ
アリサ:アンタって、いつもそうだよね。 自分の頭で考えないで、流されてばっか
アリサ:アンタに与えられるのは、 誰かにとって死ぬほど欲しいチャンスなのに、 それを自分のものにしようって気もまるでないし
雫:だからあの時、アリサちゃんが怒ったのは 当たり前だったと思うわ
雫:……本当にごめんなさい
アリサ:……今更気づいたんだ。 随分、時間かかったんだね
雫:そうね、本当に……。 本当に、未熟だったと思うわ。でも——
雫:今はもう、大きな責任から逃げようとする私からも、 ただ守られているだけだった私からも卒業したの
雫:もちろん、私はアイドルとしてまだまだだし、 今でもCheerful*Daysの頃と同じように みんなに助けてもらうこともあるわ
雫:でも、それでも……
雫:前の私も、今の私も、まるごと認めてくれたみんなが—— 私のファンでいてくれている人達が、大好きで
雫:その人達の声を聞いていると……、 不思議なんだけど、未熟な自分でいることが怖くなくて
雫:今は私もみんなと一緒に、 ありのままの私で輝きたいって気持ちでステージに立てるの
みのり:雫ちゃん……
雫:……Cheerful*Daysにいた頃も、 そういう強さがあればよかったんだけど
雫:あの頃の私には難しくて……、 結局センターの責務も果たせないまま、 卒業ではなく、脱退になってしまって……
雫:最後まで、迷惑をかけてしまったわ。 だから、Cheerful*Daysのみんなには本当に——
アリサ:何いきなり語りだしてんの? 私、挨拶に来ただけなんですけど
雫:アリサちゃん……
アリサ:……うちみたいな大きな事務所辞めて、 フリーのアイドルでやってるっていうから どんなもんかって思ってたけど、ホント楽しくやってるんだね
アリサ:前よりも理解のある仲間達もいるみたいだし?
アリサ:……ま、ワンマンがちょっと話題になって テレビ出演のチャンスがやっと入ったって感じだと思うけど
アリサ:これから先、バックアップなしで どこまでやれるのか楽しみにしてるよ
アリサ:——せいぜい頑張って
雫:あ……
愛莉:まったく、なんなのよ! 結局『ごめん』のひとつもなかったじゃない!
遥:たしかに、挨拶にしては敵意むき出しって感じだったね
愛莉:わざわざ嫌味言うために来たってこと? ホント意味わかんないわね……
雫:(……アリサちゃんは、 頑張り屋さんで、自分にも他人にも厳しい子で——)
雫:(だから、誰かに『頑張れ』なんて滅多に言わなかった。 それなのに……)
雫:(少しは—— 少しは、アイドルとしての私を認めてもらえたのかしら……)
数週間後
宮益坂女子学園 屋上
みのり:ついに昨晩、『アイドル大戦争』こと 『アイハザ』の放送日を迎えましたが……
みのり:反響、結構すごいよねっ!?
遥:そうだね。 私もクラスのみんなから結構番組の話をされたよ
愛莉:メールやDMもじゃんじゃん届いてるわ! 感想とか、番組を見たって報告がね
愛莉:しかも、かなり好評よ。 特に雫のファンになってくれた人が多いみたい!
雫:本当!? 嬉しいわ……!
みのり:雫ちゃんの想いが、たくさんの人に届いたんだね!
遥:これをきっかけにMORE MORE JUMP!を 知ったって言ってくれてる人もいたし……
遥:私達のことがちゃんと伝わる映像になってたよね。 悩んだけど、テレビ出演を決めてよかったと思ったよ
雫:……そうね
愛莉:MORE MORE JUMP!としての、最初のテレビ出演は 文句なしの大成功ね!
愛莉:今回の反響もなかなかのものだし、 もしかしたら2回目のテレビ出演の話も 期待できるかもしれないわ
愛莉:でも、これはまだまだファーストステップよ。 これからも、わたし達の目標を忘れずに…… 夢のドームライブ目指して、この調子でがんばりましょ!
みのり:うんっ!
遥:頑張ろう!
雫:(……Cheerful*Daysの頃は、 台本に書いてあるとおりの言葉で話していたけれど)
雫:(今の私は、私の言葉で、私の想いを ファンのみんなに届けることができる)
雫:(……少し前の私なら、 自分の言葉で話すことすらできなかったのに)
みのり:雫ちゃんの想いが、たくさんの人に届いたんだね!
雫:(……もう、何も怖くないわ。だから——)
アリサ:——せいぜい頑張って
雫:(私は私らしく、この場所で——希望を届けていきましょう)