活动剧情

Kick it up a notch

活动ID:86

第 1 话:一本の電話

WEEKEND GARAGE
洸太郎:……な、なあ。白石と遠野、 まだCrawl Greenで話してんのかな?
こはね:結構時間かかってるね……
彰人:まあ、一筋縄じゃいかねえオーナーって話だったからな。 うまく交渉が進んでいるといいが……
冬弥:……全員、そわそわしているな。 俺も少し、落ち着かないが
こはね:今日がCrawl Greenで イベントをやれるかどうか決まる日だしね。それに——
彰人:次のイベント、大河さんが見に来てくれるかもしれねえ
洸太郎:オレ達のイベントに大河さんが!?
彰人:ああ! ……ま、Crawl Greenでやれたらの話だが
こはね:(みんな、大河さんに来てほしいんだろうな)
こはね:(私も——私達のイベントを見て、 大河さんがどんな風に感じてくれるのか気になるし……)
こはね:(今の私の歌も見てほしい——)
こはね:——あ、杏ちゃん、遠野さん! おかえりなさい
杏:ただいま~! もー、ああいう話し合いって苦手! 緊張した~!
冬弥:お疲れさま、白石。それに遠野さんも
洸太郎:そ、それで、結果はどうだったんだよ!?
新:うん。やらせてもらえることになったよ
彰人:ありがとな。 お前らが交渉に行ってくれて助かった
こはね:うん! 杏ちゃん、遠野さん、ありがとうございます!
新:いやいや、俺達だけの手柄じゃないよ。 みんなでやったセカンドイベントのおかげだからね
杏:そうそう! オーナーさんってば、 私達のイベントの映像、黙って見てて……最後まで 見終わったら『いつやりたいんだ?』って言ってくれてさ!
冬弥:そうか……! あのイベントは俺達も手応えがあったから、嬉しいな
杏:うん! だから、私達みんなで勝ち取ったんだよ!
杏:あっ! それからね! オーナーさんにはあのことも、 もう1回ちゃーんと言ってきたよ!
杏:ほら、前に新が言ってた——
新:『俺達は必ず、RADderがデビューしたイベント以上の 熱狂と歓声で、このハコを埋め尽くしてみせます』って言ったら おもしろがってくれたから
達也:ああ、あれか。やっぱり本気なんだな
新:——もちろん。そのくらいできなくちゃ、 RAD WEEKEND超えなんて夢のまた夢だからね
杏:……まあ、そう言ったらオーナーさんに 『お前らにはまだ早い!』って言われちゃったけど
達也:言いかたまで想像つくぜ……。 審査に行っても、毎度辛口なんだよな
新:それと——今日は珍しく、 オーナーから彰人くん宛ての伝言を預かってきたよ
彰人:……オレに?
新:『お前の顔と名前は覚えてる。 もしまただらしない歌を歌ったら、今度は承知しない』だってさ
彰人:……覚えられてんだな……
彰人:——ま、なんにせよだ。 次のイベントは、Crawl Greenで開催できる!
こはね:うん! これで約束どおり、 大河さんがイベントを見に来てくれるね!
杏の父:おう、お前らは今日も賑やかだな
洸太郎:あ、謙さん!
杏の父:めでたいことがあったんだろう。 ドリンクを1杯サービスしてやる
杏:本当? ありがとう父さん! じゃあ注文集めるね~
冬弥:いつもありがとうございます
杏の父:お前達は常連だからな、このくらい安いもんだ
杏の父:ところで、少し聞こえてきたんだが…… さっきの話は本当か?
杏:さっきの話って、Crawl Greenでやるってこと?
杏の父:いや、それもあるが……。 本当に、次のお前らのイベントに大河が——
大河:よう、謙。邪魔するぞ。……って……
杏:大河おじさん! すっごい良いタイミング!
杏:聞いてよ! 私達の次のイベント、 Crawl Greenでやることになったんだ!
大河:——ほう。あの偏屈オヤジを口説き落とすとは、 お前達もなかなかやるじゃねえか
大河:……なら、男の約束を守らねえとな
彰人:……! ありがとうございます!
こはね:よかった……! 本当に来てくれるんですね……!
大河:おいおい、大げさだな。 客がひとり増えただけだろうが
大河:……だが考えてみりゃ、 ひとりで見に行くのも気が利かねえか。——おい、謙
大河:お前も一緒に来るか?
杏の父:——まあ、 たまにはいいかもしれないな
杏:…………え!? 父さんも来てくれるの!?
杏の父:ああ。大河が誘ってくるなんてレアだからな。 こういうのは乗っかったほうが縁起がよさそうだ
大河:はっはっは。大河様のご利益で商売繁盛、間違いなしだ!
大河:というわけで、客はふたり追加だぞ。 いろいろ決まったら……そうだな、謙づてで教えてくれ
大河:お前らのイベント、楽しみにしてるぞ
こはね:は、はい……!
達也:おいおい、まじかよ……
冬弥:……大河さんだけでも信じられなかったのに、 まさか、謙さんまで……
こはね:う、うん。なんだか緊張してきちゃうね……
杏の父:さて……杏、そろそろオーダーを集めてくれるか?
杏:……あ、う、うん! わかってるってば!
杏の父:で、大河。お前は注文どうする?
大河:ああ、そうだな——
大河:——っと、悪いな謙、ちょっと席を外すぞ
杏の父:……まったく、慌ただしいヤツだな
杏:はーい、ピザ持ってきたよ! みんなカップどけてどけて!
洸太郎:おおっ! サンキュー! アツアツのピザ、ひと切れもーらい!
杏の父:(大河は……まだ戻ってないか。 電話が少し長引いてるみたいだな)
杏の父:(……っと、そろそろ暗くなりそうだな。 表の看板の明かりをつけておくか)
???:『————』
杏の父:(……ん? なにか声が……?)
大河:——ふん。LAが皮切りで、 ニューヨークまで大陸横断か、悪くねえな
大河:……ああ、話はわかった。 近いうち、そっちに戻る。契約周りはその時にな
杏の父:おい、大河
大河:……おお、謙。なんだお前、そこにいたのか
杏の父:アメリカに戻るのか?
大河:おいおい、人の電話聞いてたのかよ
大河:……向こうの音楽仲間から、全米ツアーをやらないかって 話が来たんだ。まあ、断る手はねえわな
杏の父:だが、お前——
こはね:あ……おふたりとも、ここにいたんですね。 私もう帰らないとなので、ご挨拶をと思って——
こはね:ごちそうさまでした。 今日もとっても美味しかったです
杏の父:ああ、それならよかった。 またいつでも来てくれ
こはね:はい! あ……それから大河さん、 来週の練習もよろしくお願いします!
大河:相変わらず律儀だな。 また今度な
杏:じゃあ父さん、ちょっとこはねのこと送ってくるね!
杏の父:おう。もうそろそろ暗くなるから、 ふたりとも気をつけるんだぞ
杏の父:…………
杏の父:(大河のこの目は、見たことがある)
杏の父:(やはり大河は、嬢ちゃんとあいつを——)
杏の父:——嬢ちゃんのことは、もういいのか?
大河:……ああ、練習のことか?
大河:もういいも何も、もともとただの気まぐれだ。 嬢ちゃんには悪いが、時間切れだな
杏の父:だが、お前はあの嬢ちゃんを——
大河:——さて、どうだかな? それより喉が渇いちまった。ビールが飲みてえな
杏の父:…………
杏の父:……ほどほどにしておけよ。 今日は、雨が降りそうだからな
スクランブル交差点
こはね:予報では夜から降り始めるって言ってたけど……。 お店の傘、貸してもらっちゃってごめんね
杏:ううん、気にしないで! こういう時に お客さんに貸し出せるように、いっぱいストックしてあるから
杏:——それにしても、今日は驚いたな~
杏:大河おじさんだけじゃなくて、 父さんまで来てくれるなんてね
こはね:うん。びっくりしたけど……嬉しいね。 せっかく見てもらうなら、思いっきり盛り上げないと
こはね:……それで、杏ちゃんのお父さん達にも、 厳しいっていうオーナーさんにも、認めてもらおう
こはね:(そのためにも、来週の大河さんとの練習も頑張ろう……!)

第 2 话:最後の課題

1週間後
ビビッドストリート
こはね:あ、その角度すごく素敵です! それじゃあ、撮りますね
気難しそうなおばあさん:はいよ。私を撮るからには、綺麗に撮らなきゃ承知しないよ?
こはね:は、はい! 頑張ります!
こはね:(……ふふっ、よく撮れたかも)
レコード屋のお姉さん:あれ? こはねちゃん、こんなところで何してるの?
こはね:あ、お姉さん! こんにちは
こはね:今は、歌の練習の一環で、 街の人達の写真を撮らせてもらっているんです
レコード屋のお姉さん:歌の練習で、写真を? ……ああ、また大河さん直伝の変な練習か~
こはね:へ、変っていうわけじゃ…… ちょっと変わってるかもなって思いますけど
気難しそうなおばあさん:——で、どうなんだい? 綺麗に撮れたのかい?
こはね:あ、はい! この写真なんてどうでしょう
気難しそうなおばあさん:……へえ、うまいじゃないか! 孫にも送ってやりたいから、現像してくれないか?
こはね:わかりました! じゃあ今度、お店に持ってきますね
気難しそうなおばあさん:ああ、ありがとうね。頼んだよ
レコード屋のお姉さん:だけど、歩き回ったり、英語だけでしゃべったり、 動物の声真似とかもしてたよね? こはねちゃん大変だね、文句言ってもいいんだよ?
こはね:あはは……。 でも私、こういう練習もちゃんと意味があると思うんです
こはね:今までの練習も、続けてるうちに 歌の表現のしかたとか、イメージの持ちかたとか、 考え直すきっかけになったので……
レコード屋のお姉さん:へえ、ちゃんと意味あるんだ……。 じゃあ私でよかったら協力しよっか?
こはね:えっ、いいんですか? お出かけ中だったんじゃ……
レコード屋のお姉さん:ううん、彼氏が遅刻するらしいからちょっと暇してたんだ。 だから気にしないで! 何かポーズとかしたほうがいい?
こはね:ありがとうございます! じゃあ——
大河:嬢ちゃん、調子はどうだ?
こはね:——あ、大河さん! この写真、綺麗に撮れてませんか?
大河:ほう。どれどれ……
大河:——たしかに、いい笑顔が撮れてるな。 この店のばあさんなんか、しかめっ面で有名なのに大したもんだ
こはね:えへへ。ありがとうございます!
こはね:どの写真も、撮る時に街の皆さんが協力してくれたんです。 大河さんとの練習ですって話したら、みんな手伝ってくれて
大河:遠巻きに見てたが、嬢ちゃんも ずいぶんと顔見知りが増えてきたみたいだな
こはね:はい。大河さんがいろいろなところに 連れて行ってくれたおかげです
こはね:……ビビッドストリートのこと、この前までは 怖そうな通りだなって思ってたんです
こはね:でも、杏ちゃん達と歌ったり、大河さんと歩いたりするうちに、 全然そんなことないんだってわかりました
こはね:みんな話しかけてくれたり、優しくしてくれて、 あったかい人達ばっかりで……
大河:——嬢ちゃんは、この街は好きか?
こはね:え? あ……
こはね:——はい。 私、この街のことが好きです!
大河:そうか
大河:その気持ちがあれば、この街も 嬢ちゃんのことを好きになってくれるだろうよ
大河:そうすりゃ、きっと——
気難しそうなおばあさん:店の外から声が聞こえると思ったら、 やっぱり大河かい
大河:……なんだばあさん、出てきたのか。 相変わらず元気そうで安心するよ
気難しそうなおばあさん:ふん、そりゃまだまだ死ねないよ。 あんたが——WALKERが世界を獲るところを見るまではね
こはね:(WALKERって、大河さんのアーティスト名……)
大河:はは、ばあさんも聴いてんのか
気難しそうなおばあさん:こっちはあんたがガキの頃から見てんだよ? そりゃ一人前になるまで見届けたいって思うのが人情だろ
気難しそうなおばあさん:あっちでも頑張んなよ、大河
こはね:(おばあさん、すごく大河さんのことを応援してるんだな。 小さな頃からって言ってたし……)
こはね:(……小さい大河さんって、全然想像つかないけど)
こはね:(でも……)
こはね:(大河さんは本当にずっと、この街で育ってきたんだな……)
大河:さて、脱線しちまってすまなかったな。 練習はここまでにしておこう
こはね:はい。今日もありがとうございました!
こはね:じゃあ私、これからイベントの練習に行くので失礼します!
大河:おっと、ちょっと待った、嬢ちゃん。 練習は終わりだが、今のうちに話しておきたいことがある
こはね:え? えっと、なんでしょうか
大河:実はこのあいだ、全米ツアーをやらないかって誘いがあってな。 俺はもちろん、受けるつもりでいる
こはね:……ぜ、全米ツアー!? すごいですね……! おめでとうございます、大河さん!
こはね:(なんだか、スケールの大きい話だな……。 こうやって歌を教えてもらってたけど、 本当にすごい人なんだよね……)
こはね:(…………あ、でも。 話を受けるってことは、大河さんはアメリカに……)
大河:——そういうわけで、 俺が嬢ちゃんの面倒見てやれる時間も、もうあまり残ってねえ
こはね:そう、ですよね……
こはね:……で、でも! 本当におめでとうございます!
大河:ありがとうな。さて、そんじゃ嬢ちゃん、 これまでの仕上げに、ここで少し歌ってみろ
こはね:……え? 歌を見てくれるんですか……!?
大河:ああ。と言ってもワンフレーズ、軽くでいいぞ。 喉もあたたまってないだろうしな
こはね:わかりました。えっと、それじゃ……
こはね:♪————~~
こはね:……あの、ど、どうでしたか?
大河:ああ、よくわかった
大河:——前に聴いた時よりも、かなり力をつけたな
こはね:……! 本当ですか!?
大河:Crawl Greenのオヤジがお前達を認めるわけだ。 見る目は衰えてねえらしい
大河:歌ってのは複雑なもんで、 ただうまいだけじゃ、他人の気持ちには響きゃしねえ
大河:だから、俺が教えてきたのは歌の技術じゃない。 そこから一歩先に進むための、俺達が持つもっと本質的なもんだ
こはね:本質的なもの……
大河:嬢ちゃんは、今までよくやってきた。 これまでの練習にどんな意味があったのか、少しは気づけたか?
こはね:……いえ。全部には、気づけてません。 でもいくつかは、自分の練習を見直すきっかけになりました
こはね:たとえば曲を何かに例えたりするのは、 想像力とか、はっきりとしたイメージを作る練習になったり……
こはね:それに、慣れない英語で話すことなんかも、 歌詞に頼らずに、声に感情を乗せる勉強になったと思います
大河:ああ、そうだな。 どれも歌をやる上で必要なことだ
大河:いい歌、いい音楽にとって“大事なもの”は、技術じゃねえ
大河:明確なイメージを膨らませることも、 それを歌の表現に落とし込むことも、きっと嬢ちゃんなら いずれ高いレベルでこなせるようになるだろう
大河:その他のこともすべて、その“大事なもの”につながってる。 さっきも言ったとおり、うまい歌を歌うためだけじゃねえがな
こはね:……そういえば、前にも大河さん、 そんなことを話してくれましたよね
大河:……ま、とにかく。 ただいい歌を聴かせりゃいいってだけじゃねえ。 それは覚えておくといい
大河:ああ、よく覚えてるな
こはね:……はい。でも、あの時も今も、 街を歩いて人を覚えていくことがどんな風に 歌と繋がるのかは、まだわからなくて……
大河:そうか? だが、さっきの様子を見てりゃ、 嬢ちゃんはちゃんと、この街の連中と打ち解けてきてるが……
大河:……とすりゃ、次のイベントはいい機会かもしれねえな
大河:よし、嬢ちゃんには最後の課題をやろう。 まあ、そうだな。これまでの総決算とでも思ってくれ
こはね:最後の……
こはね:——はい。 何をするんですか?
大河:次のイベント、ソロで出てみるんだ
こはね:…………え!?
こはね:わ、私がイベントで……ソロですか……!?
大河:ああ、そうだ。……と言っても勘違いするなよ? チームを抜けろとか、杏達と歌うなって言ってるわけじゃねえ
こはね:あ……なんだ、よかったです……。 でも、それじゃあどうやって?
大河:そうだな、たとえば—— 凪がRAD WEEKENDでやったみたいに、 オープニングアクトをやるとかな
こはね:オープニングアクト……
こはね:わ、私が……
大河:ああ。別にやりかたはどうだっていいが、 ひとりで立ったほうが観客と向き合いやすい。 なんせ会場中の観客を、贅沢に独り占めだ
大河:それに、嬢ちゃんもソロの経験があるとはいえ その時と、自分達のイベントでやるのとじゃ全然違うもんだ
大河:何が違うのかは、ステージに立って確かめてみるんだな
大河:……だがまあ、やるかどうかはここで決めることじゃねえな。 もしその気があるなら、今の話を仲間にしてみるといい
こはね:は、はい。ありがとうございました
こはね:私が、ソロでイベントに……
こはね:……本当に、いいのかな……?
こはね:(一番最初に歌うっていうことは—— イベント全体の印象を決めるってことだよね。 ……RAD WEEKENDで歌った凪さんみたいに)
こはね:(今回のイベントは、杏ちゃんと遠野さんが一生懸命交渉して やっとできるようになったイベントだし、それに——)
彰人:……ま、次Crawl Greenで歌うことになったら、 今度はみっともねえ歌は歌わねえ。ちゃんと客席わかせてやるよ
こはね:(東雲くんにとっても、大事なイベントで……)
こはね:(それなのにもし、私が、失敗なんてしちゃったら……)
こはね:……でも……
大河:実はこのあいだ、全米ツアーをやらないかって誘いがあってな。 俺はもちろん、受けるつもりでいる
大河:——そういうわけで、 俺が嬢ちゃんの面倒見てやれる時間も、もうあまり残ってねえ
こはね:(……大河さんにちゃんと歌を見てもらう機会は、 私にはもう、今しかないのかもしれない)
こはね:(もしそうだったら、きっと……ううん、絶対、 やらなかったら後悔すると思う)
こはね:…………やってみたいな……

第 3 话:こはねが持つ鍵

シブヤの公園
こはね:(もう練習始まってる時間だ……! みんな、来れたらでいいとは言ってくれてたけど……)
こはね:——あ
新:うーん……冬弥くんは丁寧に音を取りすぎて、 コンパクトにまとまってるのが少しもったいないね
冬弥:……なるほど、わかりました。 ではもう少しラフに、踏み外すくらいの勢いでやってみます
冬弥:そうなると……すまないが彰人、 さっきより間をおいて歌ってみてくれないか
彰人:ああ、わかった。 歌いながら、バランス見てやってみる
こはね:(……すごい真剣だな。それに……)
こはね:(——空気が張りつめてる。 みんな、すごく集中してる)
こはね:(……でも、そうだよね)
こはね:(あの3人——RADderがデビューした場所で、 私達のイベントを開けるんだから)
こはね:(その頃の大河さん達は まだ高校生で、私達と同い年くらいで……)
こはね:(そう考えたら、なんだか……近い場所にいる気がするな)
こはね:(私も頑張らなきゃ。 それに、さっきの大河さんの話も……)
杏:……あ! こはねー! 大河おじさんとの練習終わったんだ、お疲れさま!
こはね:杏ちゃん、ありがとう。 それにみんなも、遅くなっちゃってごめんね
冬弥:気にするな。 最初から、小豆沢は来れそうなら来るという話だっただろう
冬弥:それで今日は、大河さんとどんなことをしてきたんだ?
こはね:街の人達の写真を撮ってきたんだ。 それがどう歌に繋がってるのかは、 やっぱりわからなかったけど……
冬弥:そうか。また風変わりな練習をしているんだな
洸太郎:お、小豆沢も来れたんだな!
彰人:そんじゃ、せっかく全員そろってんだ。 そろそろ練習は切り上げて、イベントについて話しておくか
冬弥:ああ。今後の練習方針を固めていく上でも、 早めに話しておくに越したことはないだろう
達也:そうだな。 あのハコの客は目が肥えてるから、念入りにいきたい
新:オーナー主催の定期イベントならまだしも、 他人のイベントに貸し出すっていうのは滅多にやらないしね。 それだけ注目度も高いはずだよ
彰人:……まあ逆に言えば、でかいチャンスってことだな
杏:今からわくわくするよね。 で、どんなイベントにしよっか?
彰人:そうだな……。 前回はテーマを決めたが、今回は……
こはね:あ……あの、みんな! ちょっと話したいことがあるんだけど、いい……?
彰人:ん、どうした?
こはね:えっと、あのね……。 その……次のイベントのことなんだけど……
こはね:私、オープニングアクトをソロでやってみたいんだ
彰人:……どういうことだ? お前がひとりで?
こはね:うん。実はさっき、大河さんに……
杏:そっか、大河おじさんからそんな話が……
洸太郎:なるほどなあ……。 小豆沢はたしか、ソロの経験はあるんだよな?
こはね:は、はい。みんなとチームを組んですぐの頃に、 経験を積むためにやってました。少しだけなんですけど……
彰人:つっても、あの頃選んでたのは そんなにでかいイベントってわけじゃねえ。 今度の……Crawl Greenでやるのはわけが違う
こはね:うん。それは……そうだよね
彰人:だが……
彰人:(……オレ達は、勘違いしていたのかもしれねえな)
彰人:(オレ達が思う以上に、こはねの力は——)
彰人:——オレは、ありだと思う
こはね:え?
彰人:こはねの実力を考えりゃ、ソロでやんのが無茶とは思わねえ。 もちろん、もっと練習して仕上げる必要はあるが
彰人:それに、もしお前がまたSTAY GOLDの時みたく 飛躍すんなら、やってみる価値はあるんじゃねえか? お前がうまくなりゃ、その分だけオレ達の力になるしな
彰人:……少なくともオレは、 お前の歌に、賭けてもいいと思う
こはね:東雲くん……
新:俺はなんとも言えないな。 ハッキリ言って、ただソロをやるだけなら こはねちゃんより俺のほうができると思うから
新:——だけど……
新:もし、今よりも上に行く鍵をこはねちゃんが持ってるなら、 それがなんなのか……俺も見てみたいな
杏:上に行く……か。 私はこはねがやりたいって言うなら……うん、応援したい
杏:——もしみんながよければ、 こはねがソロをやる前提で進めてみない? まだ本番まで時間もあるんだからさ
冬弥:ああ、そうだな。一度それで合わせてみてから決めればいい。 少なくとも、小豆沢の実力に疑いはない
達也:俺も異論はねえ。東雲も言ってたが、 小豆沢なら前のSTAY GOLDみてえに とんでもない化けかたしそうだしな
こはね:……ありがとう、みんな。 私、なにか掴めるように——頑張るね!
数日後
こはね:♪————!! ————!!
こはね:(抑揚のつけかたがまだ甘いな。 もっとハッキリつけて歌わなきゃだめだ……!)
こはね:(私がゼロから、お客さんの気持ちを掴むんだ。 もっと勢いを作らなくちゃ……)
こはね:(大河さんに見てもらうの、最後になるかもしれない。 それに、Crawl Greenでやる大事なイベントを 私の失敗で台無しにしたくない……!)
新:すごい集中力だね。 最近のこはねちゃん、毎日あんな調子なんだって?
杏:うん……。チーム練習以外でも、ビビッドストリートとか 乃々木公園とか、いろんな場所で歌ってるみたい
杏:一昨日なんか、気づいたら夜中になってて、 お父さんにすごく怒られたって話してたよ
彰人:一昨日っつーと、チーム練のあとか
冬弥:そうか。あのあと、そんなに残っていたのか……
洸太郎:はあ~。さすが、お前らと練習してるだけあって、 見かけによらず体力あるよなー
冬弥:ただ、少し気になるのは、今の歌だが……
こはね:♪————
こはね:……はぁ、はぁ
冬弥:——すまない、小豆沢。少しいいか?
こはね:あ、大丈夫だよ。みんなどうしたの?
冬弥:歌声に少し、力が入りすぎている気がしてな。 一応言っておこうかと思ったんだ
杏:うーん……やっぱり冬弥達もそう思う? なんだろ、まだ本調子じゃなさそうな感じがするよね
こはね:あ……
達也:そうか? 気合い入ってていい声だと思ったが……
杏:あー、私達はずっとこはねの歌聴いてるからね。 一番調子いい時との違いがちょっとわかるっていうか……
こはね:……歌には出ないようにって気を付けてたんだけど、 みんなにはわかっちゃうんだ。やっぱり難しいな……
こはね:イベントの印象を決める役目だって考えると、 どうしてもプレッシャー感じちゃって……
彰人:まあ、そりゃそうだろ。 つっても出来が悪いってわけじゃねえんだ
冬弥:ああ。小豆沢はもう十分な場数を踏んでいる。 いつものように練習すれば、きっと大丈夫だ
こはね:……うん。 ありがとう、みんな
こはね:あの、遠野さん! 三田さん! 少しでいいので、練習を見てもらってもいいですか?
こはね:おふたりは私よりずっとソロの経験もありますし、 もし何か気になることがあれば、教えてほしいんです!
新:あはは、疲れなんて知らないって感じだね。 それじゃ、あっちで少し続けようか
洸太郎:よっしゃ、もちろんオレもいいぜ!
彰人:日が暮れてきたし、今日の練習はここまでにしとくか
こはね:……あっ! 遠野さん、三田さん、ごめんなさい! 結局、私の練習にずっとつきあってもらっちゃって……
洸太郎:そんなの気にすんなって。いくらでもつきあうから、 なんでも相談してくれよ!
新:まだちょっと硬いところはあったけど、 本番までに慣らしていけば大丈夫じゃないかな
こはね:は、はい! ありがとうございます。 ちゃんとできるように、頑張ります!
杏:(……こはね、毎日すごく頑張ってるな。 私も何かしてあげたいけど……)
新:そうだ、杏ちゃん。 明日の打ち合わせなんだけど、 急用ができて行けなくなっちゃったんだ
杏:あ……そうなんだ! じゃあ、私だけで行こうかな……
杏:——あ、そうだ!
杏:ねえこはね、明日時間ある? それから彰人と冬弥も!
こはね:うん。明日は飼育委員も当番じゃないし、 早く帰って、どこかで練習しようかなって思ってたけど……
冬弥:俺は、放課後は図書委員の仕事があるな。 だが……希望を伝えれば 早めに抜けさせてもらえるはずだ
彰人:オレも大丈夫だ。バイトも入ってねえから、 いつものトレーニングをやる予定だったが
杏:じゃあ、私達でCrawl Greenに行こうよ!
こはね:え? Crawl Greenに……?
杏:うん。こはねと冬弥はまだ、 どんなライブハウスなのか見たことないよね?
杏:実際に見てきたら気合いも入って、 こはねのリフレッシュになるかもでしょ? 一石二鳥じゃない?
こはね:あ、そっか……!
こはね:……うん。私も、行ってみたいな。 どんなライブハウスなのか見てみたい……!
冬弥:俺も行ってみたい。 謙さん達がどんな場所でデビューを飾ったのか、 気になっていたんだ
彰人:いいかもな。オレもあの人に伝言で 言われっぱなしってのも落ち着かねえし、行くか
新:みんな、ありがとね。 悪いけど任せたよ
杏:オッケー! それじゃ、明日は学校帰りにうちの店に集合して、 Crawl Greenで打ち合わせってことで!
こはね:うん!

第 4 话:制服デート♪

翌日の放課後
宮益坂女子学園 1年A組
こはね:ん……
???:……こはねちゃん……
こはね:……んん…………
みのり:…………こはねちゃーん……
こはね:……ふぁ……みのりちゃん……?
みのり:あっ、気持ちよさそうに眠ってたのに、 起こしちゃってごめんね!
こはね:ううん、起こしてくれてありがとう
こはね:昨日、練習してたら眠れなくなっちゃって。 授業中はなんとか耐えてたんだけど……
みのり:あはは、そこで力尽きちゃったんだね
こはね:うん。 …………って、ああっ! 今って何時——!?
こはね:はぁ、まだ待ち合わせまで時間あるみたい。 よかった……
こはね:このあと、杏ちゃん達と約束してるんだ。 みのりちゃんのおかげで、寝過ごさないですんだよ
みのり:えへへ、よかった!
こはね:(……みんなとの待ち合わせまで まだ時間あるけど、どうしよう)
こはね:(またさっきみたいに寝過ごしちゃったらいけないし、 先にWEEKEND GARAGEに行ってようかな……)
こはね:(じゃあ、みんなに連絡して——)
こはね:……あれ? 杏ちゃんからメッセージが来てる。なんだろう……
こはね:——えっ!?
宮益坂女子学園 校門
杏:あ、来た! こっはね~!
こはね:杏ちゃん! 校門にいるって言うからびっくりしたよ!
杏:あはは、ごめんごめん。 冬弥が図書委員の仕事がちょっと長引くかもって。 だからそっちは彰人に任せて、現地集合ってことになったんだ
こはね:そうだったんだ。……でも打ち合わせって 6時半からだよね。まだ時間には早いんじゃ……
杏:うん。そうなんだけど、 今日はCrawl Greenに行く前に こはねと遊びに行きたくって
こはね:え? 遊びに?
杏:だって、こはねは最近ずっと練習してるでしょ?
杏:頑張ってるこはねのために、 なんかできないかなあって考えてたんだ
杏:それで……リフレッシュも兼ねて、 一緒に遊んで、おしゃべりして、笑って—— そういうことがしたいなって思ったの!
杏:本当は、彰人と冬弥も誘いたかったんだけどね。 まあ、私も急な提案だったし……今日は私だけで許して!
こはね:杏ちゃん……
杏:……あっ、目のとこにクマできてるじゃん! こはねってば、まさか夜中まで出歩いてないよね!?
こはね:えっ? ううん、それはもうしてないよ! あんまり遅くなると、お父さんにまた心配させちゃうから
こはね:…………でも……大河さんに教えてもらった イメージトレーニングとかは、夜中にやっちゃって……
こはね:あ……ご、ごめんね杏ちゃん! どうしても練習したくて、つい……
杏:……も~、仕方ないな。まあ、こはねの気持ちもわかるしね。 私も、うわー!って練習したくなる時、結構あるし
杏:夜に父さんのCDとか聴いてると、こう…… ぐわーって気持ちが盛り上がっちゃったりしてさ
こはね:……ふふっ、なんだか杏ちゃんらしいな
こはね:えっと……じゃあ、今日はどこ行こっか?
杏:プランは立ててきたから任せて! 今日は行ってみたい場所があるんだよね~!
ビビッドストリート
こはね:あ、この服屋さん、新しくできたところだよね?
杏:そうそう! ちょっと可愛い系もあるから こはねに似合いそうだなーって思ってたんだ! ちょっと見て回ろうよ!
杏:こはね、このワンショルダーのワンピ合わせてみてよ! 絶対似合うから!
こはね:う、うん! あ、杏ちゃん……あのね。 私も杏ちゃんに似合いそうな服見つけたんだけど……
杏:えっ!? こはねが私に!? どれどれ、すっごく嬉しい!
こはね:たしかこっちのほうに……あった! このジャケットなんだけど……
杏:えー、もこもこで可愛いじゃん! あ、でも色違いはこはねに合いそう! 今度、ふたりでおそろいコーデしちゃおっか!
こはね:……! うん!
杏:ふー、たくさん歩いたねー。 もうちょっと休んだら、次のところに——
こはね:ん…………んん……
杏:——こはね? あ……寝ちゃってる
杏:昨日は遅くまでやってたって言ってたし、起こすのも悪いな。 ここでしばらく休んでいこっと
こはね:ん……杏ちゃん……
杏:あ、もたれかかってきちゃった……。 よしよし。頑張っててえらいぞー、こはね。 …………なんて、ふふっ
杏:…………
こはね:————! ————~~~!!
杏:……これが、こはねの……
彰人:——オレは、ありだと思う
彰人:それに、もしお前がまたSTAY GOLDの時みたく 飛躍すんなら、やってみる価値はあるんじゃねえか?
杏:こはねは、どこまですごくなるんだろうなぁ……
杏:こはねの歌は、いつもドキドキして、最高で—— きっと次のイベントも、すごい歌を聴かせてくれるんだろうな
杏:こはねの歌、もっと聴きたいな。 それで、私も——
杏:…………
杏:——私も……うん、彰人も冬弥も、 みんな全力でやって、絶対、絶対最高のイベントにしてみせる
杏:だから、安心して歌ってよ、こはね
こはね:ごめんね、寝ちゃって……。でも、すごく楽しかったよ。 誘ってくれてありがとう、杏ちゃん!
杏:ううん。こちらこそ付き合ってくれてありがとね
杏:本当は、もうちょっと遊びたかったけど…… そろそろ時間だし、私達もCrawl Greenに——
クレープ屋のお姉さん:あっ! 杏ちゃん、おかえり
杏:え? あ、お姉さん! またこっちの通りでお店だしてるんだ?
クレープ屋のお姉さん:そうそう、センター街はなかなか売れなくってね。 って、隣にいる子は……
こはね:えっと、お久しぶりです
クレープ屋のお姉さん:……あ! 杏ちゃんの相棒のこはねちゃんだ! じゃあ今日はお姉さん、ふたりにサービスしちゃおうかな
こはね:え、いいんですか……?
クレープ屋のお姉さん:いいのいいの。だって杏ちゃんにはよく、謙さんのお店で お世話になってるもん。このくらいのサービスは安いものよ!
杏:やった~! じゃあお言葉に甘えて……
杏:こはねはどれにする? 私はバナナチョコがいいなー
こはね:それじゃあ私は……
ラーメン屋のおじさん:お、杏ちゃんじゃないか! 学校帰りかい、おかえり!
杏:うん。ただいまー。 って、あれ? おじさん、ラーメン屋は休憩中なの?
ラーメン屋のおじさん:昼の分が出きっちまってね! それより! このあいだ、Crawl Greenのオーナーさんに聞いたぞ。 杏ちゃん、あそこでイベントやるんだって?
街の人達:え!? あそこのオーナーに認められたのか!? そうかぁ! ついに杏ちゃんもあの場所で歌うのか……!
街の人達:あそこで見た謙さん達といったら忘れらんないなあ。 俺も昔はあのハコに憧れたけど、結局立てなかったな……
街の人達:そういえば、当時の謙さん達って、 ちょうど今の杏ちゃんと同い年くらいじゃないか?
杏:そうみたいだね! 絶対、その時の父さん達より盛り上げなくちゃ……!
街の人達:ははは! そりゃいいな! 俺達も絶対見に行くよ!
杏:ほんとに!? ありがとう!
ラーメン屋のおじさん:で、今日は歌ってくのかい?
杏:え? あー、今日はやらないよ。 ただ遊びに来ただけだから。ねー、こはね
こはね:う、うん
ラーメン屋のおじさん:なんだ、そうなのか。 久しぶりに聴きたかったんだけどな~
杏:ええー? でも私達、このあと予定が——
こはね:あ……まだちょっと時間あるから、大丈夫じゃないかな。 それに、私も杏ちゃんの歌聴きたいな
杏:えっ! こはねも? ……なら、ちょっとだけ歌っていっちゃおうかなー?
街の人達:おっ、杏ちゃんが歌うのか! じゃあ俺も聴いていかなくっちゃな!
杏:もー、1曲だけだからね。 いくよー!
杏:♪——! ——! ——!
こはね:(……杏ちゃん、やっぱりかっこいいな)
杏:——ふう。 じゃあ、今日はおしまい!
街の人達:ありがとなー、杏ちゃん!
街の人達:すごくよかったよ!
こはね:(……あれ? いつの間に、こんなに人が……)
こはね:(すごい……。杏ちゃんが歌ってるあいだに、 こんなにたくさんの人が集まってたんだ……)
ラーメン屋のおじさん:こーんなにちっちゃい頃から本当に上達したね
杏:あっはは、何年前の話してるの? 当たり前じゃん
こはね:(……? あれ……)
こはね:(今の会話、前にも覚えがあるような……? なんだろう……)
こはね:あ……
気難しそうなおばあさん:こっちは小さい頃から見てんだよ? そりゃ一人前になるまで見届けたいって思うのが人情だろ
気難しそうなおばあさん:海外でも頑張んなよ、大河
こはね:(……そっか。 あの時の大河さんとおばあさんに似てるんだ)
こはね:(……杏ちゃんも大河さんも、 この街で生まれて、この街で育って……)
こはね:(この街の人達は、同じように、 こうやってあたたかく見守ってきたんだろうな)
こはね:(……あんなに親身な人達に囲まれて、 夢を応援してもらったり、見守ってもらったり……。 なんか、いいな)
こはね:(……私も……)
こはね:(私にも——こういう、人との繋がりがあったら素敵だろうな)
クレープ屋のお姉さん:はいはい、騒いでないでどいてどいて! 杏ちゃん、クレープできたよ! こっちはバナナチョコね
杏:わあ! やっぱりお姉さんとこのクレープ、 クリームたっぷりで美味しそ~!
クレープ屋のお姉さん:それから、こっちがいちごと生クリーム。 イベント頑張ってね、こはねちゃん!
こはね:あ、ありがとうございます! 頑張ります!
Crawl Green前
杏:あ、彰人! 冬弥! 結構待たせちゃったよね、ごめん!
冬弥:いや、俺達もさっき着いたばかりだ。 逆にふたりを待たせているのではないかと思っていた
こはね:そうだったんだ。 図書委員のお仕事、忙しかったんだね
冬弥:たしかに忙しくはあったが、頃合いを見て抜けさせてもらった。 その後は、彰人と——
彰人:ああ。オレらはちょっとセンター街のほうで歌ってた。 無駄に街ぶらつく気分にもなんなくてな
杏:へえ。……なになに~、もしかして緊張してんの? オーナーさんからあんな伝言もらったから
こはね:(あ……そうだよね。 ここは東雲くんにとって、因縁のある場所で……)
彰人:その話はもういいだろ。 くっちゃべってねえでさっさと入るぞ
こはね・杏・冬弥:『うん』 『ああ』

第 5 话:いざCrawl Greenへ!

Crawl Green
杏:おじゃましまーす! おじさーん、来たよ~!
こはね:(……ここが、Crawl Greenなんだ。 COLより少し広いな……)
こはね:(あの伝説の始まりになった場所……。 あのステージで、あの3人が初めて歌ったんだ)
冬弥:……高校生の頃の謙さんが、 あそこに立って歌っていたんだな
冬弥:天井が高いな……。 これでは普段より声を張らないと、奥までうまく響かなそうだ
冬弥:……謙さん達は、初めてのライブだというのに このフロアをわかせたのか。すごいな……
彰人:…………
冬弥:……彰人?
彰人:……昔来た時と全然変わんねえなって思ってな。 ま、内装なんかそう簡単に変わるもんでもねえか
彰人:……だが、変わってなくてよかった。 この場所じゃねえと、あの日の失敗を取り返せねえからな
中学生の彰人:(なんでオレはもっと、 あいつらみたいに歌えないんだ)
中学生の彰人:(憧れの場所に、泥なんか塗りたくなかったな……)
彰人:——同じ失敗はしねえ。 今度は全員わかせてやる
バックステージ
Crawl Greenオーナー:おう、これで全員か?
Crawl Greenオーナー:新が来れなくなったとは聞いたが、 まさか、お前さんらが勢ぞろいで来るとはな
Crawl Greenオーナー:——懐かしい顔も、ちゃんと逃げずにいるようだな?
Crawl Greenオーナー:お前がいるなら世間話とでもいきたいんだが……ま、時間もねえ。 ひとまず音響の話からしていこうか
杏:うん!
Crawl Greenオーナー:……よし、これで問題ないな
杏:終わった~! 細かいところまでありがとね、おじさん
冬弥:それにしても、驚きました。 スタッフに任せずにオーナーさんご自身で ここまで機材の調整をされるというのも、珍しいですね
Crawl Greenオーナー:そうだろうよ。とはいえもう俺もいい歳だ、 こういう仕事は若いヤツに任せたいんだが……どうも凝り性でな
Crawl Greenオーナー:特に——気合いの入った連中のイベントは、 こっちも限界一杯まで妥協したくないんだよ
杏:ふふっ。おじさんらしいね
Crawl Greenオーナー:——と、そんなことより、お前さんらとは 一度顔を合わせておきたかったから、今日はちょうどよかったよ
Crawl Greenオーナー:東雲くんも、その顔見せにきたのはあのイベント以来だな
彰人:……はい。 あの時はみっともない真似してしまって、すみませんでした
彰人:でも……あの時歌わせてくれて、ありがとうございました。 最後まで止めないでくれたこと、感謝してます
こはね:東雲くん……
彰人:あの日の失敗があったから、覚悟が固まりました。 オレは……もう二度と、客を冷めさせたりはしねえ
Crawl Greenオーナー:……そうか。 なら——キッチリ結果で示せよ
杏:——ほらほら、おじさん。もうそのへんにしてよね。 みんな怖がっちゃうでしょ?
Crawl Greenオーナー:……ああ、悪いな。 で、そっちのが青柳くんに、隣は杏の相棒だっていう——
こはね:は、はい。小豆沢こはねです! よろしくお願いします!
Crawl Greenオーナー:ああ、よろしく。このあいだのイベントはいい歌をやってたな。 さすが、杏が選んだだけのことはある
こはね:そ、そんな……ありがとうございます……
杏:本当、こはねはすごいんだよ! あの大河おじさんが気に入って、歌を教えてるくらいなんだから
Crawl Greenオーナー:……なんだって? 大河が面倒見てるってのは、お前さんのことだったのか
こはね:……え? あ、はい……! 大河さんにはいつもお世話になっていて……
Crawl Greenオーナー:そうか……昔のあいつからは信じられないな。 今まであいつが歌の面倒見たのなんて、凪か謙くらいだろうに
こはね:昔の……。 大河さんのこと、やっぱり昔から知ってるんですね
Crawl Greenオーナー:まあ、あいつが歌い始めた頃から見てきたからな
こはね:そ、そんなに長く……
Crawl Greenオーナー:ああ、俺らの世代はだいたいそうだよ。 大河と凪は目立ってたから、みんながあいつらの歌を聴いてた
Crawl Greenオーナー:腕がいいってのももちろんあるが、それ以上に…… 『世界を獲る』なんていう派手な夢を持ってたからな
こはね:世界を……?
杏:うん。『世界一のミュージシャンになる』っていうのが 凪さん達の夢だったんだよ
杏:最初は大河おじさんがひとりで歌ってたみたい。 で、その歌が好きだったから、凪さんも歌を始めて……
杏:そしたら、ふたりで『歌で世界を獲ってやる!』って、 『初めての夢ができたんだ!』って、 ずっと前に、凪さんが話してくれたんだ
こはね:そうだったんだ……
Crawl Greenオーナー:そんなだったから、あいつらがもうひとり……謙を連れてきて、 『チームを組む』なんて言い出した時は驚いたもんだ
Crawl Greenオーナー:だが……3人で合わせた歌を聴いて、俺は確信したよ。 ああ、こいつらは本当に世界を獲っちまえるんだろう——ってな
冬弥:今の俺達とそう変わらない年で、それほどの実力が……
彰人:……そんで、オーナーも謙さん達を認めて、 ここでイベントをやったんすか?
Crawl Greenオーナー:ああ。大河のわがままも聞いてやってもいいかって、 客入りの一番いい時期を見て用意してやった
Crawl Greenオーナー:で、あいつらはイベント1発で、この街を変えやがった
こはね:街を変えた……?
Crawl Greenオーナー:ああ。あのイベント以降はRADderがこの街の中心になって、 よそから来たミュージシャン連中もまとめて 巻き込んでいったんだ
Crawl Greenオーナー:同じ街の仲間で馬鹿みたいにふざけて、ぶつかり合って—— 競いあって、上に行こうってな
杏:そういえば、父さんも前に言ってたな
杏:この街で仲間と出会って、 喧嘩して、笑いあって、そうやって3人でやってきたって
こはね:そっか……。大河さんも、杏ちゃんのお父さんも 本当に街の人達から……
こはね:練習の時、大河さんと一緒にいると、 本当にたくさんの人に愛されているんだなって思うんです
Crawl Greenオーナー:……ああ、そうだろうな。 俺も大河の歌に心底惚れてたひとりだ
Crawl Greenオーナー:……正直、俺は少し嬉しかったな。映画でも見てる気がした。 あの不器用な男が、相棒を見つけて、チームを得て、仲間を得て、 ——この街の外に行っても歌1本で活躍する姿が
Crawl Greenオーナー:だってのに……な
こはね:…………?
Crawl Greenオーナー:いや、なんでもない
Crawl Greenオーナー:今じゃあいつだけでも、アメリカで成功を 収めてるようじゃないか。まあ、満足はしてないんだろうが
Crawl Greenオーナー:俺はあいつらの……大河の大きな一歩を、 俺の店で刻ませてやれたことを誇らしく思ってる
Crawl Greenオーナー:……あの日のRADderを超えるってのは、 お前や新も、相応の覚悟があって言ってんだろう
杏:……ありがとう、おじさん。 父さん達の初めてのイベントがそんなに特別なんだって…… 正直、想像できてなかった。でも——
杏:父さん達がすごいなんて、生まれた時から知ってるよ。 だから、前に言ったことは引っ込めない。私達は超えるよ
Crawl Greenオーナー:そうか
Crawl Greenオーナー:そこまでの覚悟があるなら、俺から言えるのはひとつだな。 俺に最高のイベントを見せてくれ
こはね:……はい!
数十分後
ビビッドストリート
こはね:今日は打ち合わせだけだと思ってたけど、 いろんな話をしてもらっちゃったね
杏:うん。あの人、ちょっと怖く見えるんだけど、 話すと結構しゃべってくれるし、面倒見いいんだよね
杏:だけど……今日はごめんね、こはね
こはね:え?
杏:だって、リフレッシュできるかなって思ったのに。 さっきの話聞いちゃったら、逆にプレッシャーになったよね……
こはね:あ——ううん。大丈夫だよ。 むしろ私、さっきの話は聞けてよかったなって思うんだ
杏:本当に?
こはね:うん。 プレッシャーなんて感じてない、とは言えないけど……
こはね:……今までは、RAD WEEKENDを超えるためには 大河さん達の初イベントくらい超えなくちゃ!って思ってたの。 でも、そんな気持ちじゃだめだって気づけたから
こはね:あの場所で大河さん達の初めてのイベントを超えるっていうのが どういうことなのか、私、ちゃんとわかったよ
こはね:だから本当に、今日は誘ってくれてありがとう、杏ちゃん
こはね:(この街の人達にとって、 Crawl Greenっていう場所は本当に特別で……)
こはね:(私が考えたこともないような、 すごく大切な思い出が、この街にはたくさんあって——)
こはね:(……あのオーナーさんだけじゃない。 この街の人達はみんな、 いろんな気持ちで、この街の音楽に向き合ってきてるんだ)
こはね:(それで、私もあの人達と——)
レコード屋のお姉さん:歌の練習で、写真を? ……ああ、また大河さん直伝の変な練習か~
クレープ屋のお姉さん:それから、こっちがいちごと生クリーム。 イベント頑張ってね、こはねちゃん!
こはね:(……今は、大河さんと杏ちゃんが、 この街の人達と、私をつないでくれてる)
こはね:(——今は、私もこの街にいるんだ)
杏:はぁ~。 今日はいっぱい歩いたから、足ぱんぱんかも
冬弥:……そういえば、白石達はずっと街を歩いていたのか?
杏:途中でちょっと休憩したけど、ほとんどずっとだよ。 ショップ見たりクレープ食べたりして、 楽しかったよね~、こはね!
こはね:うん。すっごく楽しかったよ! サービスしてくれたクレープも美味しかったな
冬弥:…………
こはね:……あれ? 青柳くん、どうしたの?
冬弥:いや……そう聞くと、小腹がすいてきたな
杏:あ、冬弥も? 実は私も
彰人:お前はクレープ食ったんじゃねえのかよ
杏:うるっさいなー。 さっきの打ち合わせで頭使ったからいいの!
こはね:ふふっ。でも、私も一息つきたいし、 よかったら、みんなであっちに行かない?

第 6 话:見守ってくれる人達

ストリートのセカイ
crase cafe
ミク:はい、ご注文のパンケーキだよ。 こはねと杏にはクリームたっぷりで、彰人はフルーツ大盛。 冬弥にはチーズサンド——と、これでそろったね
こはね:ありがとうございます、ミクちゃん、メイコさん
杏:いただきまーす! ——うん、美味しい~っ! 疲れが吹き飛んでくよー!
MEIKO:今日はみんなで何をしていたの?
こはね:今日は、次のイベントの打ち合わせのために みんなでCrawl Greenに行ってきたんです
ルカ:え? Crawl Greenって、たしか彰人くんが前に——
彰人:そうっすね。前言ってた場所です
彰人:なかなかやらせてもらえない場所なんですけど、 杏達の交渉もうまくいって、あそこで イベントやることになったんすよ
ルカ:おお~、そうだったんだ!
ミク:それに今度のイベントは、杏のお父さんと こはねに歌を教えてる大河さんがイベントを見に来るんだって
ルカ:え、ええ~!? 杏ちゃんのお父さん達が!?
レン:しかもそのイベントで、 こはねがオープニングアクトをソロでやるんだよ!
ルカ:……わ、私がお店に来てないうちに そんなことになってたなんて……
ルカ:でも、どうしてこはねちゃんが?
こはね:大河さんが、今の私なら自分達のイベントで ソロをやることで何か見つかるはずだって……
ルカ:なるほど……。じゃあ彰人くんだけじゃなくて、 みんなにとっても、すっごく大事なイベントなんだね!
こはね:はい!
冬弥:——それにしても、今日は白石に誘ってもらえてよかった
冬弥:ああやって実際に足を運んでみたら、 みんながあのライブハウスに憧れるというのもわかる気がした
冬弥:設備もいいしフロアも広い。それに何より…… オーナーさんの音楽にかける情熱を、とても強く感じられたな
杏:うん、そうだね。まさか父さん達のこと、 あんな風に考えてたなんて思わなかったな
ミク:へえ、どんな話を聞いてきたの?
杏:えっとね、大河おじさんの昔の話でさ——
ミク:——そっか。 RADderのイベントを自分の誇りに思ってる、か……
杏:うん。……でもやっぱりごめんね、こはね。 オーナーさんにプレッシャーかけられちゃったよね……
こはね:ふふっ。大丈夫だってば、杏ちゃん
MEIKO:どうかしたの?
こはね:あ、今日はCrawl Greenに行く前に、 杏ちゃんと街で遊んでたんです
杏:うん。こはねが練習ずっと頑張ってるから、 いい息抜きになったらいいなって思って
MEIKO:あら、そうだったのね。 それで、ふたりでいいデートはできた?
こはね:はい、すっごく楽しかったです! ——でも……
こはね:今日は、杏ちゃんと街を歩いて、それから Crawl Greenのオーナーさんの話を聞いて、思ったんです
こはね:この街の人達は、大河さんのことも、杏ちゃんのことも、 本当に小さな頃から見守ってる……
こはね:それって、すごくいいなって——
こはね:私には、大河さんが街の人と通じ合ってたり…… 杏ちゃんが街の人達の前で歌う姿が、まぶしく見えたよ
冬弥:……まぶしく、か……
杏:こはね……あの時、そんな風に思ってたんだ
こはね:うん。杏ちゃんや大河さんみたいに、 家族以外の人達に見守ってもらうようなこと、 私にはなかったから
冬弥:……たしかに、なかなかあるものじゃないな。 特にあの街のように、音楽というひとつのもので みんなが通じ合っているような場所は
こはね:うん。本当にそうだと思う
こはね:最近は、杏ちゃんと一緒に歩いたり、 大河さんに練習で街に出させてもらったりして
こはね:まぶしくて、あったかいなって思った場所に、 ふたりが連れていってくれてる気がしたんだ
こはね:だから、私にもいつか、 そういう人達ができたらいいな……って
MEIKO:そう……。それはとても素敵なことね。 きっとこはねちゃんなら、できるんじゃないかしら
こはね:……ありがとうございます、メイコさん
街の人達:あそこで見た謙さん達といったら忘れらんないなあ。 俺も昔はあのハコに憧れたけど、結局立てなかったな……
Crawl Greenオーナー:そこまでの覚悟があるなら、俺から言えるのはひとつだな。 俺に最高のイベントを見せてくれ
こはね:……RADderの最初のイベントは、 この街を変えたっていうくらい、大事なもので……。 そのイベントを超えられるかどうかなんてわかんない
こはね:でもRAD WEEKENDを超えるには—— 絶対、あのオーナーさんや街の人達に、 最高のイベントを見せないといけない
こはね:……そんな気がするの
MEIKO:こはねちゃん……
こはね:そのためにも、みんなにソロの練習を見てほしいんだ
杏:……え? 今から?
こはね:うん。まだ私、うまくできなくて…… 少しでもできるようになりたいの
こはね:今日は練習お休みだったのに つきあわせちゃうことになるから、 みんなには悪いんだけど……
彰人:……別に、悪いってことはねえだろ。 これはオレ達のイベントなんだからな
レン:オレ達も、いつでもつきあうよ!
こはね:……うん! ありがとう、みんな!
こはね:じゃあ、いくね……!
こはね:♪————!
冬弥:……いい出だしだな
杏:うん。昨日の練習の時よりいい感じだね
こはね:(今日、見てきたライブハウスで、 あのステージで、ひとりで立つんだ……)
こはね:(COLより少し広くて、照明は強めで—— やっぱり、今日は見に行ってよかったな)
こはね:(あのステージで思いっきり歌ったら、 どこまで、どんな風に声が響くのか……はっきりイメージできる。 大河さんとした練習の成果かな——)
こはね:(ステージから客席まで意外と遠そうだし、 いつもよりちょっと声を張らないと、きっと届かないよね)
こはね:(イベントの最初はまだ空気が温まってないから ……私が、ひとりで温めなくちゃいけないんだ)
こはね:♪——! ——!!
冬弥:…………
こはね:(……っ! またちょっと乱れちゃった、 立て直さないと……!)
こはね:(ここで盛り上がりきらなかったら、 お客さんはもやもやした気持ちで 最後まで会場にいることになる)
こはね:(……みんなのイベント、私のせいで失敗したくない……)
こはね:♪————! ————!
こはね:……はぁ、はぁ
レン:いつもより力強くて、迫力があったよ! ただ……なんか、ちょっと歌が硬いって感じがしたな
こはね:あ……やっぱり、そうだよね
MEIKO:ええ……。私も、レンと同じように思ったわ
MEIKO:こはねちゃんの歌は、いつもならもっとのびのびと響くでしょう? 今日は、少しだけ詰まって聴こえた気がするの
冬弥:そうだな。 決して悪くはないが、やはり本調子ではないと思う
こはね:……うん。そうだったよね……。 私も途中で、よくないなってわかって……
彰人:……おい、へこんでる暇なんかねえぞ。 まだ時間はあるだろ。これから仕上げてきゃいい
ルカ:…………
ルカ:ねえ、こはねちゃん。 よかったら一緒に歌わない?
こはね:……え? 今からですか?
ルカ:うん! もっと軽い気持ちで歌ってみようよ
ルカ:イベントのこととか、街の人達のこととか、 1回全部忘れて……ね?
こはね:忘れて……
ミク:……それ、いいアイディアかもね。 私もまぜてよ、ルカ
ルカ:おおっ、ミクも!? いいね~、3人で歌おうよ!
こはね:……でも、3人で何の歌をやるんですか?
ルカ:え? 今の歌でいいんじゃない?
ルカ:じゃあこはねちゃん! ゆっくり息を吸って、深呼吸して~
こはね:あ、はい!
ルカ:歌ってるから、準備ができたら入ってきてね。いくよ~
ルカ:♪————! ————!
こはね:(ルカさん、本当にすごい……。 ラフな歌いかただけど透きとおってて、 歌い出した瞬間には、もう空気ができあがってる)
ミク:♪————!!
こはね:(わ、ミクちゃんもすごくキレがいいな。 でも響きが繊細で、ルカさんの歌にぴったり合わせてる!)
ミク・ルカ:『♪——! ————!!』
こはね:(私も……入らなくちゃ!)
こはね:♪————!
彰人:こんな一瞬で……。あのふたり、やっぱりすげえな。 即興とは思えねえ完成度だ
冬弥:ああ。ルカさんの天性のセンスも、 簡単についていけるミクの技術もさすがだな
冬弥:それに、示し合わせたわけでもないのに、 ここぞというところで小豆沢を引き入れていた
ミク・こはね・ルカ:『♪————————!! ——————!!』
こはね:(……ふたりとも、すごくうまい)
こはね:(だけど、ただうまいだけじゃない。 私にぴったり息を合わせて、 たまに振り返るみたいに歌ってくれてる)
こはね:(こう歌ったらいいんだよって、 道を教えてくれてるみたい。ありがたいな)
こはね:(私もルカさんみたいに、もっとラフに音に乗せて……)
こはね:(なんだか……いい感じで力が抜けたな。 ……もしかして、ミクちゃんが手伝ってくれたのかな?)
杏:——ミク、いつの間にかうしろに下がってるね。 でも絶妙なところで前に出てきて…… あのふたりをうまくまとめてるみたい
彰人:そうだな。それに…… 背中を支えるみたいな、ああいうリードのしかたもあるんだな
ミク・こはね:『♪————!』
MEIKO:ふふ、こはねちゃんも調子がでてきたかしら。 ミクったら、のせるのがうまいわね
ルカ:♪————!
こはね:(……あれ。なんだろ?)
こはね:(なんか、ルカさんとミクちゃんの歌、 私に話しかけてくれてるみたい)
こはね:(ふたりの気持ちが、 歌に乗って強く、強く伝わってくる——)
ルカ:(こはねちゃんの歌を聴かせて!)
ミク:(こはね。もっとやれるでしょ?)
こはね:(ルカさん、ミクちゃん——)
こはね:(ありがとう。 私も、ふたりの気持ちに応えたい……!)
こはね:♪——————!!
こはね:♪————! ——————!!
杏:……こはね……!
こはね:はぁ、はぁ……
杏:こはね! すごかったよ! いつも以上に伸び伸びした歌になってたよ!
彰人:ああ。今のお前の歌なら オープニングアクトもいけるんじゃねえか
レン:うん! オレも一緒に歌いたかったなあ……!
こはね:そ、そうかな……
ルカ:ソロでも絶対大丈夫だよ! いい歌だったから、自信を持ってね!
こはね:あ、ありがとうございます。 でもさっきのは、ルカさんとミクちゃんのおかげで……
こはね:なんだか、ふたりの気持ちに応えたい!って思ったら、 だんだん楽しくなって、自然と歌えたっていうか……
ミク:ううん、私達は歌で気持ちを伝えただけ。 あとはこはねの実力だよ
ミク:それは、ずっと見てきた私達が保証するよ
こはね:あ……
こはね:……みんな、ありがとう

第 7 话:この歌は

イベント当日
Crawl Green
達也:さすがに、本番となると緊張してるみたいだが……
新:こはねちゃん、大丈夫?
こはね:あ……はい。 たくさん練習してきたので、大丈夫です……!
こはね:あとは本番で、練習の成果を出すだけですから! が、頑張ってきます……!
彰人:おい、落ち着けよ。 お前らも準備はいいな?
冬弥:ああ、いつでもいける
洸太郎:オレも準備万端だぜ!
彰人:そんじゃ—— こはね、今日の円陣はお前がやれよ
こはね:え!? 私がやるの?
彰人:ああ。いい機会だ、 全員の顔見りゃよくわかんだろ
彰人:お前がやれないなんて思ってるヤツ、 この場所にはひとりもいねえってな
冬弥:そうだな。不安かもしれないが、大丈夫だ
冬弥:俺達は小豆沢のことを信頼している。 お前がやってきたことを全部、ステージでぶつけてこい
こはね:東雲くん、青柳くん……
杏:…………
杏:——ねえ、聞いて。こはね
杏:前にも言ったことあるけど、何回だって言えるよ。 私ね、こはねの歌が本当に、本っ当に大好きなんだ
杏:聴いてるとドキドキして、 今すぐ歌いたい!って、いてもたってもいられなくなるから——
こはね:杏ちゃん……
杏:こはねのこと、信じてるよ。 だから、こはねの最高の歌を聴かせて!
こはね:……うん! ありがとう、杏ちゃん。 それにみんなも……
こはね:今日はお客さんも、大河さんも、杏ちゃんのお父さんも…… みんなみんな盛り上げよう
こはね:私達のサードイベント『RISE』、いこう!
観客達:おい、あれ……謙さんと大河さんじゃねえか!?
観客達:え? うそだろ、なんであのふたりがここに……!
大河:ほう。結構客入りがいいじゃねえか
杏の父:本当だな。ハコの人気もあるんだろうが、 このフロアの熱量は……それだけってわけじゃなさそうだ
杏の父:さて、始まったな。最初は——
杏の父:……ん、嬢ちゃんひとりだけか
杏の父:——大河、お前が何か言ったのか?
こはね:(……マイクってこんなに冷たかったっけ。 それに……心臓の音が、うるさい……)
こはね:(イベントをひとりで背負うって、 こんなに、怖いものだったんだ)
こはね:でも——
こはね:(……大丈夫。 みんなが、私を信じて送り出してくれたんだ)
ルカ:じゃあこはねちゃん! ゆっくり息を吸って、深呼吸して~
こはね:(——ゆっくり息を吸って、深呼吸して…… 失敗したくないとか、そんなこと考えないで歌おう)
こはね:(……あれ?)
こはね:(最前列にいるおばあさん…… 写真を撮るのに協力してくれたお店のひとだ)
こはね:(あっちにいるのは、 練習に協力してくれたレコード屋のお姉さんだ。 もしかして……わざわざ見に来てくれたのかな?)
こはね:(あ、クレープ屋でサービスしてくれたお姉さんも来てる。 いちごとクリームいっぱいで、美味しかったな)
こはね:(真ん中には、大河さんと杏ちゃんのお父さんもいる—— 本当に来てくれたんだ。背が高いから、ちょっと目立ってる)
こはね:(……みんな、私に優しくしてくれた人達だ)
観客達:なかなか歌い出さねえな。緊張してんのか?
観客達:あの子、どんな歌を歌うんだろ?
大河:それに、嬢ちゃんもソロの経験があるとはいえ その時と、自分達のイベントでやるのとじゃ全然違うもんだ
大河:何が違うのかは、ステージに立って確かめてみるんだな
こはね:(——そっか。この人達は、ただ歌を聴くためじゃない。 『私達の歌』を聴くために、ここに来てくれてるんだ)
こはね:(……私達の歌を聴きたいって、思ってくれてるんだ)
こはね:(なんだか……胸があたたかくなるな。 すごく嬉しいな……)
こはね:(それに、このあたたかい感じ——)
こはね:(あの時——)
ミク:それは、ずっと見てきた私達が保証するよ
こはね:あ……
こはね:(ずっと、見てきた……)
こはね:(そう、だったんだ……)
ミク:『はじめまして、こはね。 私はキミ達のセカイのミク。よろしくね』
ミク:私達はいつもここにいるから。 キミ達の想いが、ここにある限り……ね
こはね:私、もう持ってたんだ
こはね:(私にはないと思ってた。だから、いつかできたらいいなって。 でも、そんなことなかった)
こはね:(こんなに親身になって応援してくれて、 寄り添ってくれる人達が、もういたんだ——)
こはね:……みんな、ありがとう
こはね:(あの時セカイで、ミクちゃん達が 気づかせてくれたあたたかさに、ちょっと似てる気がする……)
こはね:(それなら——)
こはね:(私達の歌を『聴きたい』って思ってくれてる—— みんなの気持ちに、応えたいな)
こはね:(私の歌を、この人達に聴いてほしい!)
こはね:♪————————!!
冬弥:——うん。いい調子だな……!
新:練習以上の伸びがあるね。客のつかみもよさそうだ
こはね:(なんか不思議な感じ……。 あんなに感じてたプレッシャーが、どこかいっちゃった)
こはね:(それに——)
観客達:お! 結構いい歌やるじゃん! さすがオーナーが認めただけあるな!
観客達:すごいな、いつも話してる時とは別人みたい!
こはね:(……ひとりひとりの顔がよく見える。 喜んで、笑ってくれてる)
観客達:こはねちゃん、頑張れー!
こはね:(もっと声が出せる気がする。 そうしたら、もっと気持ちが届けられるかな——!)
こはね:♪————!! ——————!!
杏の父:——やるな。ステージに立って歌い出す瞬間の あのクセになる高揚感が、歌に乗ってしっかり伝わってくる
大河:ああ。これが嬢ちゃんの見る景色か
大河:ちっと頼りねえが、 教えたことはしっかりできてるじゃねえか
大河:ひとりひとりに目線を合わせて、よく歌えてる
大河:人と人は、目を合わせりゃ気持ちが伝わるもんだ。 それは歌でも変わらねえ
大河:——まあ、このくらいはこなせるヤツだと思ってたがな
大河:嬢ちゃん、いい歌だ!
こはね:(あ……大河さんが今、褒めてくれた……!)
こはね:(……嬉しいな。私の歌、ちゃんと届いてるんだ)
こはね:(大河さんのおっきな声で、 他のお客さんも一気に乗って——)
こはね:(どれが自分の声かわかんないくらい、 みんなの声がぶつかってくる。あんなに手を振ってくれて……)
こはね:(それならもっと、もっと応えたい!)
こはね:(だって、まだ——!)
ミク:(こはね。もっとやれるでしょ?)
こはね:(——うん。やれるよ)
こはね:(私、まだ、あの時の場所までいける——)
こはね:(ミクちゃんとルカさんが、手を引くみたいに 私を導いてくれた、あの時の場所まで……!)
こはね:♪————~~~~!!
大河:…………っ!?
観客達:…………すげえ……
大河・杏の父:『………………』
大河:(……冗談だろ。 俺は今……何を見てる……!?)
大河:(あれ、は…………)
杏の父:…………この歌……こいつはまるで——
杏:…………
杏:…………うそ……
杏:…………凪さんみたい……
彰人:…………マジかよ……
洸太郎:……た、たしかに、凪さんに見えるような……!?
新:……す……すごいな……
冬弥:(一体、何が起きたんだ……?)
冬弥:(歌声を聴いていると、 気持ちが……激しく揺さぶられる……!)
彰人:(……体が、熱くなる。なんだ、この歌……!)
杏:…………
杏:こはね……
杏:(…………こはねはすごいな)
杏:(でも……)
杏:………………やっぱり、高いよ……
こはね:♪————!
こはね:……はぁ、はぁ、はぁ
こはね:(そっか。もしかして——)
こはね:(大河さんはこのために、私に街を……?)
こはね:(大河さんや杏ちゃんがつないでくれた人達—— それに大河さんと、杏ちゃんのお父さん)
こはね:(私の歌を聴いてくれる人がいて、 私も、その人達に聴いてほしいって思ってる)
こはね:(私達の歌には、この気持ちが大事なんだ……)
こはね:聴いてくれて、ありがとうございました。 まだまだ続くので、最後まで楽しんでいってください!
こはね:次は——EVERです!

第 8 话:最高潮より高いところまで

Crawl Green
達也:(……まったく、小豆沢はとんでもねえヤツだな。 『STAY GOLDの時みたいに』なんて、俺も随分ナメてたもんだ)
達也:(——だが……気分いいな、この空気は! 小豆沢が作ってくれたこの空気、無駄にはしねえ!)
達也:俺達も負けねえからな! 喉張り裂けるくらい、お前らの声聞かせてくれ!
バックステージ
こはね:はぁ、はぁ……はぁ……
彰人:……こはね!
彰人:お前のソロ、すげえ良かった。 あとはオレ達の出番までしっかり休んで、喉の調子戻しとけよ!
こはね:……! うん……! ありがとう、東雲くん
洸太郎:さっきの歌、こっちまで力もらったぜ! 横になってたっていいから、出番まで回復に専念してろよな!
こはね:いえ、大丈夫です……! 私、袖からみんなの歌も見ていたいので……
杏:…………
杏:……こはね! お疲れ!
杏:はい! ドリンク持ってきたから、水分補給も忘れないでね!
こはね:……うん、ありがとう。いただきます
達也:次は——こいつだ!
洸太郎:(……!? 会場が……すげえ熱さだ!)
洸太郎:(小豆沢が最高の空気作って、 それをEVERがさらにブチあげてくれたのか)
洸太郎:(だったらオレだって——オレなりのやりかたで、やってやる!)
洸太郎:お前ら、まだまだ盛り上がれんだろーっ!! 目いっぱい体揺らして、楽しんでいこうぜーっ!!
洸太郎:♪——————! ————!!
観客達:洸太郎のやつ、こんなにうまかったか!? あいつの歌、やっぱ乗りやすくていいよな!
洸太郎:(いつもより声出るし、舌もよく回んな~! 客のノリもいいし、最っ高だ!)
洸太郎:遠野! 任せたぜーっ!
新:(はは、すごいね。今まで感じたことがない空気だ。 熱すぎて、息をしてるだけで喉が渇いてくる)
新:(何より——こはねちゃんの歌が頭から離れない。 あれからずっと歌いたくて……)
新:(——いい加減、俺も限界だ)
新:ねえみんな、まだバテてないよね? 最後までついてきてよ!
新:♪————!! ————!! ————!!
観客達:うおっ! 遠野もめちゃくちゃうまくなってる!
観客達:っつーか、こんなに攻撃的なやつだったか? ゾクゾクするぐらい迫力あるな……!
冬弥:小豆沢、そろそろ出番だが、いけるか?
こはね:うん。声出しもしてきたから、もう歌えるよ!
杏:…………
彰人:…………おい、杏
杏:あ……何?
彰人:お前も、いけるよな?
杏:……うん。ありがとね、彰人。 私は大丈夫! 任せてよ
杏:それに、みんなで約束したからね。 このハコのお客さん達を、私達で盛り上げるって!
彰人:……ったく、よく覚えてるヤツだな
新:……それじゃ、次で最後! あとは任せたよ、Vivid BAD SQUAD!
彰人:……よし、いくぞ! あのオーナーにも観客にも、 今日が最高のイベントだって認めさせてやる!
達也:お前ら、思いっきりブチかましてこい!
洸太郎:彰人! シェパードの時以上の歌で決めてこいよ!
彰人:おう、当たり前だ!
冬弥:(これは……すさまじい熱気だな。 袖から見ているのと、ステージで感じるのとでは全然違う)
冬弥:(息苦しさが、すごく気持ちいい……!)
杏:(こんなに熱いの初めて……)
杏:(あー! もう思いっきり歌いたいな!)
こはね:(……なんでだろう。 さっきよりもお客さんの顔がよく見える)
こはね:(みんな汗だくで、へとへとに疲れ切ってて、でも…… 私達の歌でもっと熱くなりたいって、そう言ってるみたい!)
彰人:——いくぞ。最後までついてこいよ!
彰人:♪————! ————!!
杏:(……大丈夫。この場所で、 私がやるべきことはひとつしかない!)
杏:(今は余計なこと考えないで、歌に集中するんだ……!)
こはね・杏:『♪————————!!』
こはね:(……頼もしいな。隣に杏ちゃんがいて、 声を合わせると、ひとりじゃ届かないところまで声が届きそう)
こはね:(今なら私達、なんだって——!)
杏:(今のこはね、本当に……怖くなるくらい、すごい)
杏:(……でも、不思議だな。 一緒に歌ったら——なんだってできちゃう気がする)
彰人・冬弥:『♪————!! ————!!』
冬弥:(小豆沢の歌が、俺達を前へ、 前へと動かしてくれているみたいだ)
冬弥:(全員、自分の手綱が握れているのか? それすらあやふやなくらい熱くて、前のめりで——心地いい)
彰人:(こはねの歌は、どこまで伸びるか未知数だって思ってた。 だが——まさかあそこまで成長するなんてな)
彰人:(……けど、あいつの歌はオレ達を上に引っ張り上げてる)
彰人:(それなら迷うことはねえ。 今はこの勢いで、もっと高いところに行く!)
こはね・彰人:『♪——————っ!』
こはね:(……東雲くんが、一気に前に出た。 今の歌声、すごく綺麗で力強いな……!)
こはね:(お客さん、見たことないくらい盛り上がってくれてる。 私がひとりで歌った時より、会場がすごく熱い)
こはね:(もう出し切ったと思ったのに、また汗かいてきちゃったな。 体温がどんどん上がってく)
こはね:(このまま最高潮までいって、そのままもっと、 もっと高いところまで駆け上がっていきたい——!)
こはね:♪————————!!
観客達:なんか、すげえイベントだな……!
観客達:ああ! めちゃくちゃおもしろいヤツらが出てきたな!
Crawl Greenオーナー:(……このイベント、本当に…… RADderの、あのライブにも劣らない勢いが……!)
Crawl Greenオーナー:(——そうか。 あの時の小僧が、こんなイベントをやるようになったのか……)
Crawl Greenオーナー:RADderがうちでデビューして、 RAD WEEKENDが生まれて、伝説なんて呼ばれて——
Crawl Greenオーナー:あれほどのイベントは、 俺が生きてるあいだにはもう見れねえだろうな
杏の父:……いや、オレは案外そうでもないと思ってるぜ
Crawl Greenオーナー:……謙の言ったとおりかもしれないな
大河・杏の父:…………
杏の父:(これが、あいつらの実力か)
杏の父:(もしかしたらとは思ってたが……)
杏の父:もしあの夜を超える連中がいるとしたら、それは——
大河:…………
大河:(俺が嬢ちゃんに出会ったのは、STAY GOLDで見たあの日。 ほんの少し凪に似ていて、そいつはまだ未完成で……)
大河:(だから、少し興味がわいた。 ——ただそれだけだと、そう思っていたんだが)
凪:私達の夢の先は、きっと……次の世代が歩いてくれるよね
大河:……そうか。次の世代、か——
大河:(はっ……。 まさか俺の中にも、凪と同じ想いがあったとはな——)
大河:(だが……)
大河:(——俺は、そうじゃねえだろ)
大河:(俺達の音楽は、俺が背負って、俺がこの先を進むって、 あの夜、決めただろうが——)
杏の父:……大河?
大河:——ったく、中途半端な気持ちで手出すもんじゃねえな
大河:俺はいくぞ、謙
杏の父:……いいのか?
大河:お前はよく知ってるだろうが——
大河:なりゆきで手出しちまったものでも、 中途半端に終わらせるのは嫌いでな。 最後にもうひとつ、やることができちまった
大河:それをさっさと終わらせて、俺は俺の道に戻るぜ
杏の父:——そうか
彰人:ハァ、ハァ……
洸太郎:……あー、もう体力カラッカラ! 一歩も動きたくねえ~!
彰人:ああ、オレもすげえ疲れたな……。 っつーか全員、疲労困憊って感じだが
新:うん。もっと体力つけないといけないね
冬弥:そうですね……。ですが、今日のイベントは これまでで一番いいパフォーマンスができたと思います
冬弥:そして、それは間違いなく——小豆沢の歌の影響だ
こはね:……はぁ、……はぁ、はぁ……
彰人:当の本人が一番消耗してるか。 ま、オレ達より出番が多かった分、当然っちゃ当然だが
杏:こはね……すごかったよ!
こはね:……あ。えへへ、杏ちゃん
こはね:……私、やりきれたよ。 みんなが私のこと、信じてるって送り出してくれたから
こはね:最高の歌を聴きたいって、 杏ちゃんが言ってくれたから……
こはね:ひとりで立つのは怖かったけど、やってみてよかった……。 信じてくれてありがとう、杏ちゃん!
杏:…………っ
こはね:……杏ちゃん? どうしたの?
杏:あ……。 ——ううん。バテバテだなー!って
杏:……私、ちょっと外の空気吸ってくるね
こはね:あ……うん。いってらっしゃい
観客達:マジですっげえイベント見られたよな! 特に最初に出てきた子がヤバかった!
観客達:いや、他の奴らもレベル高すぎだろ! それにすげえ熱くて……あいつら、 本気でRAD WEEKENDを超えようとしてるんだな
観客達:あいつらなら、もしかすると本当に超えるかもな!
杏:……! ねえみんな、今の……
冬弥:……本当に超えるかもと、そう聞こえたな
彰人:……ああ。オレ達は確実に近づけてる。 だが、まだまだ気は抜けねえ
こはね:でも、嬉しいな……。 この調子でいきたいね
こはね:(……そうだ。 大河さんと杏ちゃんのお父さんは、楽しんでくれたかな)
こはね:(大河さん達の初めてのイベントを、 超えられたのかは、わからないけど……)
こはね:(でも、私達のイベント、楽しんでくれてたら、 それだけで……今は——)
数十分後
ビビッドストリート
大河:こっちを発つまで、もうあまり日にちもねえな
大河:……さて
大河:——嬢ちゃん、俺達の“大事なもの”は、そう甘くはねえぞ?