活动剧情

天の果てのフェニックスへ

活动ID:88

第 1 话:出陣! フェニックスステージ

フェニックスワンダーランド
ワンダーステージ
司:——うむ
司:柔軟。発声。 すべて完了した
司:体調も万全過ぎるほど万全。 そして——
司:右よし! 左よし! 正面よし!!
司:12000%天馬司ッ! いざ、フェニックスステージに出陣だぁぁぁ!!
えむ:おお~~~っ!! ぶおお~!! ぶおお~っ!!
寧々:……そろそろ、耳栓買おっかな
類:フフ、今日はいつも以上に盛り上がっているねえ
司:当然だ! なにせ今日は——
司:フェニックスステージとの合同公演、 その顔合わせの日なのだからな!!
司:せっかく成長の機会を与えてもらったのだ! 必ずやこの公演、糧とさせてもらうぞ!
司:(しかしまさか…… このような機会をもらえるとはな)
司:ワンダーステージとフェニックスステージで、 合同公演を……!?
寧々:ど、どうして急に……?
晶介:——この前、フェニックスステージで、 『30周年記念公演』を打つことが決まってな
晶介:そこにお前達にも加わってもらえば、 さらに話題性が高くなると踏んだわけだ
晶介:あのナイトショーや宣伝公演もあって、 うちの代表的なショーユニットだと認識されているからな
司:なるほど……。 オレ達の力で、公演をより盛り上げようということだな!
類:しかし、30周年記念公演とは…… フェニックスステージは、ずいぶん歴史があるんですね
慶介:ああ。フェニックスステージは、 ここができてからしばらく後—— ちょうど俺が産まれた頃に作られたからな
寧々:へぇ……そんなに長いんだ
晶介:——この合同公演の話は、 お前達にとっても悪い話じゃないと思うぞ
晶介:フェニックスステージは、 他のテーマパークやショーステージからも一目置かれる 実力派の舞台だからな。やりがいは保証する
晶介:きっと——役者として学ぶことが大いにあるはずだ
司:……!
司:(これは、もしかすると……)
司:だから——宣伝公演という形でなくても構わない。 この先も何か、様々な舞台に立つ機会を 設けてもらうことはできないだろうか?
司:(あの時、他の舞台に立ちたいという 相談をしに行ったから……なのか)
類:……たしかに、フェニックスステージのキャスト達は、 全員レベルが高い
寧々:うん……。ナイトショーを作る時もすごく助けられたよね。 他のキャストの指導までしてくれたし
類:それから——青龍院くんがいるのは、とても大きいだろうね
慶介:実際、演技やパフォーマンスに関してなら、 青龍院くんはフェニックスワンダーランド随一と言っていいだろう
慶介:以前アークランドから声をかけられたこともあるし、 あの玄武旭とも知り合いで、よく演技の話をしているようだしな
司:な、何ぃ!?
えむ:櫻子ちゃん、旭さんともお友達なの!?
晶介:ああ。 子供の頃に共演をしたことがあるらしくてな、 それで知り合いになったらしい
司:むむ……いい役者同士は引かれ合うということなのか……!?
慶介:——もちろん、優秀なのは青龍院くんだけではない
慶介:フェニックスステージは歴史がある分、様々な練習用ノウハウが 蓄積されていて、キャストも皆、勉強熱心だ。 彼らと共に公演をすれば、きっといい刺激になるだろう
司:……たしかに、そうだな
司:(フェニックスステージの役者の演技は、 青龍院を筆頭に洗練されている。 無駄がなく、安定した演技……というのだろうか)
司:(ああいった演技ができるようになれば、 オレもまたさらに成長できるやもしれん)
司:(ならばこの話——受けない手はない!!)
司:……えむ、寧々、類。 オレはこの話を——
類:フフ、皆まで言う必要はないよ、司くん
えむ:うん! あたしも大賛成っ!!
寧々:……わたしも、やってみたいって思う
司:お前達……!
司:というわけで、返事はイエスだ! ワンダーランズ×ショウタイムは、フェニックスステージの 30周年記念公演に参加させてもらうぞ!
慶介:……そうか。 では、フェニックスステージにもそう伝えておこう
晶介:あっちにとっても大事な公演だからな。 足、引っ張るんじゃねえぞ
司:当然だ! 出るからには、必ずや素晴らしいものにしてみせる!
慶介:頼もしいな。 それじゃあ——よろしく頼む
司・えむ・寧々・類:『はい!』
司:あ……! それから、その——
司:——ありがとうございます!!
司:(……役者として成長するために、 もっと外部と交流していきたいと思っていたが——)
司:(宣伝公演が終了した今、 フェニックスワンダーランドのキャストとしてやれることは、 ワークショップへの参加がせいぜいだとも思っていた)
司:(まさかこんな提案をしてもらえるとは。 ……慶介さん達には、感謝してもしきれん)
司:(トルペを演じた時や、旭さん達とやった時のように—— さらに成長するため、挑戦していこうではないか!)
フェニックスステージ
晶介:——ついに、今日から合同練習か。 もう少ししたら、あいつらも来るだろうな
慶介:今回は協力をしてくれてありがとう。青龍院くん
櫻子:——お礼は必要ありません
櫻子:私は、私達の公演を最高のものにするために、 彼らにも参加してもらったほうがいいと判断したまでです
櫻子:もしおふたりのお願いだったとしても、 推薦されたのが見込みのない人達でしたら、断っていましたし
晶介:まったく、相変わらずだなお前は
櫻子:……私情がないとは言いません
櫻子:彼らは、私の愛するフェニックスワンダーランドを 全力で守ってくれました
櫻子:だから私も、彼らに協力をしたいと思っています
櫻子:——おふたりと、同じように
慶介:……そうか
スタッフ:あの……お話の途中にすみません。 今、少しいいですか?
櫻子:あら、どうかした?
スタッフ:新しく購入する大道具のことで、 少し相談をさせてもらいたいんですが……
櫻子:そう……
櫻子:すみません。 そろそろ失礼してもいいでしょうか?
慶介:ああ。 30周年記念公演を、ぜひ良いものにしてくれ
櫻子:もちろんです
櫻子:この青龍院櫻子、 必ずや最高のステージを届けてみせますわ!
慶介:……本当に、彼女は頼もしいな
晶介:ああ。 あの若さで、もうフェニックスステージの看板を張れるうえに——
晶介:俺達が何考えてるのかも、 だいたい察してるみたいだからな
慶介:……ああ
慶介:ひとまず、記念公演に参加してもらうことで 時間を稼ぐことはできた
慶介:しかし…… いつまでも、というわけにはいかない
晶介:…………
慶介:晶介、今夜時間はあるか?
晶介:あー……時間はねえが、作る。 あいつらには、うちのためにも長くいてもらいてえし……
晶介:——これからのことを、考えてやりたいしな
慶介:……そうだな

第 2 话:ハッピーフェニックス

フェニックスワンダーランド
フェニックスステージ前
司:——よし! それでは全員準備はいいか!?
えむ:うん! みんなで一緒に『たのも~!』だね!
寧々:いやいやいや、やらないから。 それ道場破りしか言わないから
類:しかし、日常生活で言う機会もないし、 やってみてもいいかもね
寧々:ちょ……正気!? せめて初日くらいは礼儀正しく……
司:それではいくぞ! せーの……
???:オーッホッホッホッホッホ!!!! よくここまでやって来たわね!!!!
司:ぬわっ! この、むやみやたらとよくとおる高笑いは……!
???:そう! この私! フェニックスステージのスターにして歌姫——
櫻子:青龍院櫻子よ!!!!
司:——出たな!! 青龍院櫻子!!
櫻子:ちょっと、その敵が登場したような反応は何よ! せっかくこの私が直々に出迎えてあげたんだから、 もっと喜びなさい!
寧々:……そういえば、あっちもこんな感じだったっけ
櫻子:——と、お遊びはここまでにして……
櫻子:フェニックスステージへようこそ、 ワンダーランズ×ショウタイムの皆さん。 歓迎するわ
櫻子:また、一緒に素晴らしいショーを作りましょう
司:……ああ! よろしく頼む!
櫻子:さて、みんなそろっているわね。 知ってるでしょうけど——改めて紹介するわ
櫻子:今回の30周年記念公演を一緒に盛り上げてくれる、 ワンダーランズ×ショウタイムの皆さんよ
司:この度も一緒に公演できること、とても嬉しく思います! よろしくお願いします!
えむ・寧々・類:『よろしくお願いします!』
キャストA:君達、ナイトショーでは世話になったな! 今回もよろしく頼むぞ~!
キャストB:一緒に盛り上げて、 30周年の記念にふさわしいショーにしましょうね!
司:はい! 素晴らしいショーにできるよう全力を尽くします! よろしくお願いします!!
櫻子:さあ——挨拶はそこまで
櫻子:今から、公演の概要と配役についての発表よ
キャスト達:『——はい!』
類:(……急に空気が変わったね。 一転して緊張感が出てきた)
櫻子:一応伝えておくわ。 ワンダーランズ×ショウタイムの皆さん
櫻子:うちは、あなた達が思っている以上に厳しいわよ。 全力でついてくることね
司:ああ! 望むところだ!
演出家:——では今回の演目と配役について話していくぞ
演出家:今回上演するのは—— 『ハッピーフェニックス』だ
司:(……!! 『ハッピーフェニックス』だと!?)
えむ:ハッピーフェニックス……。 えへへ、なんだかうちにぴったりの名前のお話だね~
寧々:だね。それに、結構有名なショーなんだよ
えむ:そうなの?
類:ああ。 アメリカで生まれたミュージカルでね
類:——主人公はとある深い森に住む、不老不死のフェニックス。 ある日彼女のもとへ、少年がやってくる
類:少年は、とある魔女に呪われた母のため、 呪いを解く力を持つフェニックスの心臓を求めて やってきたと言う
類:しかしフェニックスは、心臓を奪われてしまっては 二度と蘇ることはできない。もちろん少年の要求を拒否する
類:そうしてフェニックスと少年の追いかけっこが 始まり——話は動き出すんだ
えむ:へええ~! すっごくおもしろそうなお話だね! ね、司くん——
えむ:(……あれ?)
えむ:(司くん、なんだかすっごくびっくりしてる……?)
演出家:——それでは、配役を発表していこう
演出家:まず主役のフェニックス役を——青龍院櫻子
櫻子:はい!
司:(やはり主役は青龍院か)
類:(……フェニックスは実力を求められる難しい役だ。 たしかな実力を持つ彼女に、ふさわしいだろうね)
演出家:続いて、森の主オオワシ役を——大森健太
大森:はい!
司:……ん?
司:(本来ならフェニックスの次には、 準主役の『少年・リオ』のキャストが 発表されるはずじゃないか……?)
演出家:続いて、臆病なカナリア役を、草薙寧々
寧々:は、はい!
演出家:おっちょこちょいなアヒル役を、鳳えむ
えむ:はーい!!
演出家:偏屈なカラス役を、神代類
類:はい
演出家:うるさいニワトリ役を、天馬司
司:——はいっ!!
司:(うるさいニワトリ…… ならば、アヒルと並ぶ本作のコメディリリーフだな)
司:(この作品に携わるからには、しっかり役を全うせねば——)
演出家:それから——
演出家:最後に魔女役を、西江由紀子
西江:はい!
司:(最後に……?)
司:——すみません! 少年・リオの役だけ発表されていないようなのですが……
演出家:そのことだが……実はまだ、決めかねている
演出家:リオはフェニックスに次いで重要な役だ。 作品全体の印象を大きく変えることになるからな。 そこで——
演出家:リオ役については、 内部でオーディションを行ってから最終決定をしようと思う
司:オーディション……!?
演出家:オーディションの参加者は、今から募集する
演出家:参加資格は誰にでもある。 今役を振られた人間も、希望してもらっていい。 その中の誰かが選ばれた場合は、別のキャストに入ってもらう
演出家:希望者は明日から1週間、他のメンバーと一緒に 稽古をしてもらう。 その上で最終日にオーディションをやる予定だ
演出家:我こそはと思う者は、ぜひ立候補してくれ
司:(少年・リオ——。 あの役を、オーディションで決めるだと……!)
司:(これは、またとないチャンスだ!!)
司:——はい!!
司:天馬司! 僭越ながら、オーディション参加を希望します!
櫻子:ふふ、そうこなくてはね
キャストC:はい! 俺も希望します!
キャストD:私もお願いします!
演出家:……手を挙げているのは5人か。 わかった
演出家:ではこのメンバーは、明日の読み合わせから順番に参加してくれ。 うちでは珍しい形になるが、よろしく頼む
司:はい!!
寧々:……急な話なのにすぐ立候補しちゃうなんて、司らしいな
類:フフ、そうだね。 しかし、少年・リオの役は複雑な心情表現が必要な役だし、 きっと司くんにとって、いい勉強になるんじゃないかな
えむ:がんばってね司くん! あたし、応援してるよっ!!
司:……ああ
えむ:……? 司くん……?
司:(『ハッピーフェニックス』の、少年・リオ役……)
司:(まさか…… “あの人”と同じ役をやるチャンスが、やって来るとはな——)

第 3 话:憧れのスター

ワンダーランドのセカイ
司:——と、いうわけで、 少年・リオ役のオーディションを受けることとなったわけだ!!
ミク:そうだったんだ~!!
レン:司くんが、オーディションに……! すごい! カッコイイね!
KAITO:ふふ、フェニックスステージの人達と競い合うとなると 大変だろうけど——頑張ってね、司くん
司:ああ! 必ずや、役を勝ち取ってみせるぞ……!
司:しかし……まさかあの役をやるチャンスがやってくるとはな
えむ:あ……! ねえねえ司くん!
司:ん? なんだ?
えむ:司くん、このお芝居やるって聞いてからいつもよりすーっごく はりきってるみたいだけど、どうしたの?
寧々:たしかに……。 好きな作品だったとか?
司:……ああ、そういえばお前達には話していなかったな。 この『ハッピーフェニックス』は小学生の頃に見ていてな。 そして——
司:オレの憧れのスターが、 このリオ役で、出演していたのだ!
えむ:えーっ!? そうだったの!?!?
類:ふむ……
類:……司くんが小学生の頃に、 日本で『ハッピーフェニックス』のリオ役をやっていた俳優……。 そして司くんの演技の癖などから考えると……
類:君の憧れのスターは——天満星一じゃないかい?
司:む!? たしかにそうだが…… よく今の情報だけでわかったな
類:フフ、こういった知識には自信があってね
寧々:天満星一……! そうだったんだ……!
ルカ:寧々ちゃんも知ってるってことは、 その人、有名な人なの~?
寧々:有名なだけじゃなくて、本当にすごい人なんだよ
寧々:日本人でブロードウェイの主演をやったことがある人って ほんのちょっとしかいないんだけど…… そのうちのひとりなんだ
寧々:演技はもちろんダンスも歌も本当にすごくて、 世界中でいろんな賞をもらってるんだよね。 最近は演出とか脚本もやってるんだけど、そっちもすごくってさ
えむ:へぇぇ~! すっごい人なんだね!!
司:ああ! 彼は、スターの名を冠するにふさわしい男なのだ!
司:……天満さんの演じる役はすべて生き生きとしていて、 本当にそこに存在しているかのようでな
司:思わず目で追ってしまうのだ。 まるで——
司:人が自然と、輝く星を見上げてしまうようにな
KAITO:……なるほど。司くんがいつも以上に燃えているのは、 フェニックスステージという大舞台で、 憧れの人と同じ役をやれるかもしれないからなんだね
司:——ああ
司:今回の30周年記念公演に参加させてもらえるというだけで ありがたかったが……
司:その演目がハッピーフェニックスと聞いて、 まるで、なにかに導かれているように感じたんだ
司:……オレは必ず、この役を掴み取ってみせる!!
司:しかもだ! さらに偶然なことに……
寧々:え? まだなんかあるの?
司:そうだ! なんとこの度——東京センチュリーホールにて、 天満さん主演の公演が行われるのだ~!!
えむ:ええ~っ!?!?!? スターさんのショーが見れるの!?
寧々:そうなんだ……! 最近あんまり舞台に立ってなかったし、わたしも見てみたいな
司:フッハッハ! そう言うだろうと思ってな! 実は先行チケットを取っていたのだ!
司:みんなにもぜひ見てもらいたかったからな、 ちゃーんと4人分確保してあるぞ!
寧々:え、本当!?
類:へえ……! 僕達の分まで用意してくれていたなんてね。 それはありがたいな
えむ:あ! でも、もうすぐオーディションだよね? そのショーとかぶっちゃったりしてないかな?
司:………………む?
寧々:……もしかして、公演の日付、忘れてたわけ……?
司:……ハッハッハ! まさかそんな、公演日とオーディションが 偶然にも重なっていることなど……
司:ぬわ~~~~っ!
寧々:フラグ回収、早……
類:本当に、その日と重なってしまっているのかい?
司:厳密には、オーディションの前日なのだが……。 オーディションを受けるからには 時間をギリギリまで使いたいからな……
司:う……っ。 これは……お前達だけで行ってきてくれ……
えむ:ええ~!?
MEIKO:こうなると、ちょーっと不憫ねえ
司:く……オレの目指すスターの姿を、 お前達が目に焼きつけてくれれば、それでいい……!
司:……よし、それでは報告もすんだことだ。 オレは一足先に家に帰るぞ!
ミク:え~? もう帰っちゃうの?
司:ああ。明日からの稽古に向けてみっちり役作りを しておきたいからな! それではさらばだ!
リン:わぁ、ビュビューンって行っちゃったぁ!
えむ:えへへっ♪ 司くん、すーっごくやる気満々だったね!
えむ:オーディション、合格できるといいなあ!
KAITO:ふふ。そうだね
司の部屋
司:(……よし。 台本に書かれていることはすべてメモできたぞ)
司:…………
司:(……本当は、天満さんが演じていた時の映像があれば 参考にできたんだが……今や入手困難だしな。仕方がない。 まずは台本から読み取れるところを整理していこう)
司:(名前はリオ。年齢は8歳)
司:(赤毛でそばかすができやすい。 運動はあまり得意ではないため、学校でからかわれることが多い)
司:(リオの母親は、北の森の魔女のお気に入りのホウキを 誤って掃除に使ってしまったせいで、 眠り続ける呪いをかけられてしまう)
司:(父親のいないリオは、母親を助けるために、 たったひとり虫取り網を手に、 呪いを解く力を持つフェニックスの心臓を取りに行く——)
司:ふふ、何度読んでも、なかなか見上げたヤツだ。 家族のためにひとりフェニックスを捕まえにいくのだからな
司:……さて、次は——
類:司くんは理屈で役を演じることは少々苦手だけれど、 一方で、直感的に把握することには長けている
類:一度、役との共通点さえ見つけてしまえば それをきっかけに、もっと役への想像力を膨らませることが できると思うんだ
類:だから何かひとつでもいいから、 この役と似ているところを見つけてほしい
司:役とオレ自身の、似ている部分を見つけていくとしよう
司:(トルペの時に掴んだあの感覚は、 必ず今回も役に立ってくれるはずだ)
司:リオとの共通点……。 まずは——幼くして、家族に悲しいことがあったという点だろうな
司:(……昔は、病気で苦しむ咲希に何かしてやれることはないかと、 いつも考えていた)
司:(しかし現実、子供にできることは少なく……。 歯がゆかったな)
司:(この気持ちは、序盤の、 母が呪われてどうすることもできないリオと重ねられそうだ)
司:『……どうして僕は、 何もできないんだろう』
司:『大好きな母さんは、 もうずっと眠り続けることしかできないのに、僕は……』
司:…………よし
司:(この調子で、みっちり役作りをしていくぞ。 そしていつか——)
司:(あの日見た、スターのように……!!)

第 4 话:彼女の演技

フェニックスワンダーランド
フェニックスステージ
えむ:おっはよーございま~す!!
司:本日もよろしくお願いしますっ!!
キャストA:お。君達はいつも元気だなぁ
キャストB:今日から本格的な稽古に入るから大変だと思うけど、 頑張りましょうね
寧々:は、はい。ありがとうございます
類:(……ふむ。 一見、昨日と同じ雰囲気に見えるけれど……)
類:(稽古初日らしい、ピリリとした緊張感があるね。 いい空気だ)
演出家:それでは——本日より、 『ハッピーフェニックス』の稽古を始める
キャスト達:『はいっ!』
司:は、はい!!
演出家:午前中は基礎練習。 午後はそれぞれの配役での読み合わせとする
演出家:まだ配役が決まっていないリオ役に関しては、 希望者に交代で参加してもらう形になる。 そのつもりでいるように
演出家:シーンごとの交代になるからやりづらい部分もあるかもしれないが 集中力を切らさず挑んでくれ
司:(交代で参加……か。 5人も希望者がいるとなると、 実際に演じることができる時間は相当短いな)
司:(オーディション前からも、演出家は役者を見ているはず。 短時間の中で、オレの演じるリオを、 しっかりと印象づけていかなければ!)
櫻子:——天馬さん?
司:う、うおっ! なんだ!?
櫻子:役のことも気がかりでしょうけど、最初は基礎練習からよ。 うちのメニューは最初がストレッチ、 そのあとがランニングと筋力トレーニングになるわ
櫻子:チームワークを上げるためのグループゲームもあるけれど、 今日のメインは体作りね
司:あ、ああ。わかった!
司:しかし基礎練習ならば任せろ! 体作りも発声も、人一倍やっているからな
櫻子:……はぁ。あなた、わかっていないわね
櫻子:昨日言ったでしょう? 『うちはあなた達が思っている以上に厳しいわよ』って
司:何? それは一体、どういう……
キャストA:柔軟が終わったら、 ウォーミングアップに10分走るぞ!
司:ん? 10分……? それくらいならオレ達でも……
櫻子:それじゃあ、お先に失礼するわ
司:あ……! おい、待てー!
キャストA:……よし、じゃあウォーミングアップはここまでにするか
類:ふぅ。ちょうどいい感じにあったまったねえ
えむ:うん! まだまだ走れるよ~!
司:(ふむ……この程度のトレーニングなら、 余裕でこなせそうではあるが……)
キャストA:よし! それじゃあ次は——10kmのランニングだ。 みんな、準備はいいか?
司:……じゅ、10kmだと!? 基礎練習でか!?
寧々:え……!? ランニングっていうか……マラソン!?
櫻子:あら、これぐらいは軽く走ってもらわないとね。 頭から2時間走りまわるようなショーだってあるんだから
櫻子:でも、あなた達にはまだ難しいかしら?
司:……これぐらい、容易いぞ! オレ達も日ごろから体力作りは欠かしていないからな!
櫻子:ふふ、そうこなくちゃね
櫻子:ちなみに走ったあとは、筋力トレーニングが1時間、 発声練習が1時間よ
寧々:え……!? き、筋トレが1時間!?
櫻子:ええ。役者は体が資本だもの。 ダンスにせよ、パントマイムにせよ、 自分の体を思いどおりに動かせなくちゃ話にならないわ
寧々:う……っ! それは……正しいけど……
えむ:い~っぱい動くんだね~!! 楽しみだね、寧々ちゃん!!
類:いつもはアップもトレーニングも合わせて2時間程度だからね。 大変だろうけど……せっかくの機会だ。頑張ろう、寧々
寧々:う、うん……
キャストA:もちろん、体を壊してしまっては意味がないから、 限界だと思ったら声を上げてくれ。 ——全員用意はいいか? 走っていくぞ!
司:おー!!
類:フフ、どうやらこれが最初の関門になりそうだねえ
司:(く……! さすがフェニックスステージの役者達は 毎日この練習をしているだけあって、ペースが落ちんな……!)
司:(そして実際、舞台で高い集中力をもって演技し続けるためには、 体力が不可欠……!)
司:(今までも体力作りはしてきたが…… これを機に、もうワンランク成長してみせる——!!)
司:うおおおおおおおおお~!!
類:司くん、随分飛ばしているねえ。 途中で失速しなければいいんだけれど
えむ:あれれ? 寧々ちゃんがいない……!?
寧々:はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……
えむ:あ、ずーっとうしろのほうにいる! 寧々ちゃ~ん! 大丈夫!?
キャストB:あはは、最初から10kmは大変だよね。 ゆっくり自分のペースでいいからね
寧々:す……すみません……
えむ:はい、お水だよ! あともうちょっと、がんばろ~!!
キャストA:——よし。 正しい姿勢を維持したままで、スクワット100回!
えむ:……98、99、100っ!
寧々:はぁ……はぁ……。 もう無理……限界……
えむ:えへへ♪ あたし最後プルプルしちゃったけど、ちゃんとできたよー!
キャストA:お、しっかり負荷をかける姿勢でそこまでやれるのは偉いな。 それじゃあ……これを3セットいってみるか!
えむ:うえっ!? 3セットってことは……300回~!?!?
キャストA:ああ! 足腰は鍛えておいて損がないぞ! ダンスにもアクションにも必要なものだからな!
類:……さすがフェニックスステージだね
類:役者もやる身として、 それなりに鍛えているつもりではあったけれど、 追いつくだけで精いっぱいだ
類:だけど——
司:——よし、次のセットに行くぞ! 1! 2! 3!
類:フフ、僕達の座長が頑張っているなら、 頑張らなくてはね
演出家:では10分休憩だ。 その後、読み合わせに入るぞ
司:はぁ……はぁ……
寧々:もう無理……ホント無理……
えむ:ううう~……疲れた~
類:そうだねえ……。 今もまだ膝が笑っているよ
司:(……午前中のトレーニングだけで、もうクタクタだ……。 体力おばけのえむすら、大分参っている)
司:(こんなトレーニングを毎日やっているとは……。 改めて、フェニックスステージの役者達は とんでもない連中だとわかったぞ……)
キャストA:よし! 休憩も終わったところで、読み合わせに入るぞ! 役者は全員ステージの上に集合!
司:あ……はい! 行くぞ、お前達!
えむ:うんっ!
演出家:——今日の朝伝えたとおり、午後は読み合わせをしていくぞ。 軽く動いても問題ないが、 頭から終わりまで通していくから、そのつもりでいてくれ
司:はい!
演出家:そしてリオ役は——そうだな。 左から順に担当のシーンを振っていくから、 タイミングになったら出てきて交代してくれ
演出家:序盤の、フェニックスと初めて出会うシーンは…… 小林くん、君がやってくれ。 そのあとの24ページからは——
司:(オレは50ページ——リオがフェニックスと少しずつ 気持ちをかよわせていくシーンからか)
司:(難しいシーンだが……大丈夫だ。 セリフもしっかり覚えてきたし、 どう演技するかも考えてある)
司:(きっと、いい演技ができるはずだ——!)
演出家:では台本の1ページ目——冒頭のリオと出会う前、 フェニックスが登場するシーンから始めていこう
演出家:櫻子くん、準備はいいか?
櫻子:——はい
司:……!
えむ:あれ? 櫻子ちゃん、なんだか……
寧々:……うん。 ちょっと雰囲気が違うような……
類:あれは——もう役を作っている状態だろうね
類:まだセリフも言っていないのに、 フェニックスの気高い雰囲気を感じるよ
司:………………
司:(コンテストやナイトショーの時も 素晴らしい演技をしていたが……。 今の青龍院は、あの時とまるで違う)
司:(……そうか。最初は歌唱力にばかり注目していたし、 ナイトショーの時は青龍院自身が、 脇役としてこちらを立たせる演技をしていたから……)
司:(セリフがない状態でここまでならば…… このあとの演技は、一体どれほどの——)
司:(……この演目の始まり、フェニックスの登場シーンでは、 明るく陽気なナンバーと共に、 たくさんの鳥達がフェニックスの噂話をする)
司:(『絶世の美しさだ』『お近づきになりたい』と言う鳥もいれば、 『お高くとまっている』『体は燃えていても心は氷のよう』 と言う鳥もいる)
司:(そうしてフェニックスがどんな鳥なのか、 観客の期待が最高潮に達した頃——)
櫻子:『——まったく、毎日毎日、 狂ったみたいにうるさい森ね』
司:……!
寧々:(……嘘。 声まで普段と違う……)
寧々:(でも……作ってるって感じはしない。 これって……)
類:(役を作り込んだことで、 発声の仕方そのものが、普段とは変わっているようだね)
類:(美しい一方、人らしくない。 歌うような語りは、まるで——)
櫻子:『ゆっくり寝てもいられないなんて、本当に最悪だわ。 ああ……揺れる木々の枝葉も鬱陶しい……』
類:(今の手の動き……手に見えなかった。 枝葉を払う翼のような……)
寧々:(わたしの目がおかしいの……? 絶対に、人なのに……)
櫻子:『でも引っ越すわけにもいかない。 だって普通の森は、私が寄り道をしただけで 燃えてしまうんだもの』
櫻子:『——魔法の力が充満するこの森でしか、私は眠れない。 これが、最悪以外のなんだっていうの?』
司:(…………フェニックスだ)
司:(フェニックスなど見たこともないというのに…… そう、思わされる)
司:(……動きか? 台詞の合間に入る小さな動作が、鳥を思い起こさせる——)
櫻子:『……あら?』
櫻子:『あんなところに見慣れない生き物がいるわね。 小さくて頼りなくて……なんて汚い』
櫻子:『あれは人間ね。それも、子供』
櫻子:『本当に——大嫌いだわ』
リオ役希望のキャストA:『……はぁ、はぁ……』
司:(あ……そうか。 ここからは、フェニックスとリオの掛け合いになるんだったな)
司:(一体どんな風に展開を——)
リオ役希望のキャストA:『もう、どれくらい歩いただろう……』
リオ役希望のキャストA:『魔女の住む北の森についたはいいけれど…… これじゃ絶対フェニックスなんて見つけられないよ』
司:……!!
えむ:あれれ……?
司:(この演技では、ダメだ……!)
類:(……せっかく青龍院くんが作り上げてくれた空気が、 霧散してしまったね……)
類:(この役者の演技が下手というわけではない。 むしろ平均よりずっと素晴らしい演技だ)
類:(しかし青龍院くんを相手にしてしまうと—— 相手役の演技がわざとらしいものに見えてしまう)
類:(おそらく…… この役者は『自分の持つ技術をどう使って、 この少年をどう演じるか』を考えて演技プランを立てている)
類:(けれど青龍院くんは、『フェニックスを演じるために、 自分には何が必要か』というアプローチをしている。 そこが、大きな差だろうね)
司:(……リオ役が決まっていないわけだ)
司:(しかし……今やれることは、全力で挑むことのみ!)
司:(オレの演じるリオで、 青龍院と渡り合ってみせる……!!)

第 5 话:試練

寧々:(……司の担当は、リオとフェニックスの対話シーン)
寧々:(それまで追いかけっこをしていたふたりが、 少しずつ交流を始めていくシーンだけど……)
司:『——でも、どうなの?』
櫻子:『……どうって、何がかしら?』
司:『ずうーっと生きてるってことだよ。 それって、寂しくないの? 家族も友達も、みんな先にいなくなっちゃうんでしょう?』
櫻子:『別に、どうとも思わないわ』
櫻子:『そんなこと、もう……慣れたもの』
司:『……っ。 それってやっぱり、寂しいんじゃ——』
櫻子:『ああもう、口ばかり回るのね。 無駄口叩く暇があるなら、ちゃんと追いかけなさい』
司:『あ……! 待ってよ!!』
寧々:…………
寧々:(役作りのレベルが、全然違う……)
寧々:(もちろん、司の演技だってすごくいい。 気弱で優しい男の子って感じが良く出てる)
寧々:(でも——)
櫻子:『——これは……何?』
櫻子:『どうしてあの子と話すと、 私の心臓は、握り締められたように苦しくなるの?』
櫻子:『ただの人間。 たった数十年であっけなく消えてしまう生き物』
櫻子:『なのに、どうして。 どうして……どうして?』
櫻子:『こんなの……知らない……』
寧々:(……目が離せない)
寧々:(フェニックスから——青龍院さんから、どうしても)
寧々:(わたしは……できるの?)
寧々:(いつか、あんな演技を……)
演出家:そこまで。次の希望者に交代だ
司:……ありがとうございました
司:(…………まるで、相手にならなかった)
司:(あいつのフェニックスの前で、 オレの演じるリオはまるで……生きていなかった)
演出家:……ふむ
演出家:やはり、櫻子くんの相手を見つけるのは、難しいな……
演出家:それでは、本日の稽古はここまでとする
全員:『ありがとうございました!』
櫻子:——じゃあ、私も失礼するわ。また明日
司:あっ……待ってくれ!!
えむ:あ、司くん!?
司:——青龍院!!
櫻子:何かしら? このあとは個人練習があるのだけど
司:多忙なところすまない。 少しだけ、話す時間をもらえないか?
櫻子:……はぁ。 手短になさい
司:——率直に聞く
司:一体どうやったら、あんな演技ができるようになるんだ?
櫻子:またあなたは、そう簡単に答えられないことを……
司:どうしても知りたいんだ! 頼む!
司:お前の演じるフェニックスは、まるで—— 本当に存在しているようだった。 お前を見ているだけで、周囲の森や風の音まで聴こえてきたんだ
司:そしてオレの憧れるスターも……そういう演技をしていた
櫻子:…………
司:だから——頼む! ヒントだけでもいい! このとおりだ!
櫻子:……いいわ。 そこまで言うなら教えてあげる
司:本当か!?
櫻子:ええ。 とは言っても、何か特別なことをしているわけじゃないわ
櫻子:ただ私は、役を完璧に構築しようとしているだけ
司:完璧に、構築……?
櫻子:例えば——
櫻子:役作りの前に、関連する本を読むようにしているわ。 今回読んだ本は……これよ
司:これは……『幻想生物の生態』……?
櫻子:フェニックスがどういうものと考えられてきたのか、 歴史的、民俗学的見地から書かれた本よ
櫻子:それと、鳥類の動きについての映像を見ながら、 どういった動きをすれば鳥らしく見えるのか、研究したわ
櫻子:それから……ようやく心を考えていったの。 不死の——炎の中何度でも蘇る、孤高の生き物の気持ちをね
司:台本が配られてから、まだ1日しか経っていないというのに、 そこまでやっていたのか……?
櫻子:目の前にいる人間を鳥だと—— しかも存在しない不死鳥だと思わせるのは、至難の業よ
櫻子:そこに存在すると思ってもらうためには、 限界まで理解して、頭の中に明確なイメージを構築してから、 表現する必要があるの
櫻子:だから本番まで、本は最低50冊。映像も毎日見るわ。 あとは、鳥を飼ってる団員もいるから、 家に行ってしばらく観察させてもらう約束をしたわね
櫻子:実際にフェニックスを表現できるようになるまで—— できることはすべてするわ
司:(あの演技の裏には、 それほどの研鑽があったのか……)
司:(……差がついてしまうわけだ)
司:——ありがとう、青龍院
司:早速、オレも実践してみようと思う。 頭の中に、リオを作りあげられるように
櫻子:……秀でた人間をすぐに真似する、その姿勢は買うわ
櫻子:けれど天馬さん。 あなたにこのやりかたは合わないんじゃないかしら
司:何?
櫻子:これは私の直感だけれど…… あなたは私と同じタイプには見えないから
司:タイプ……?
司:あ——
類:うん。役者にもいろんなタイプがいるからね
類:例えば、役と自分を徐々に近づけていくタイプや、 役を分析してから細かく真似していく理論的なタイプ……。 役を憑依させる天才型もいるけど、いったんそれはおいておこうか
類:僕の見立てだと司くんは、役者としては一番ポピュラーな、 役と自分を徐々に近づけていくタイプなんだ
司:役と自分を……?
類:——感覚的にとらえていくタイプっていうとわかりやすいかな。 理屈で考えてもらおうとすると、混乱することが多かったしね
司:(……そうだ。 あの時類が言っていた)
司:(話を聞いた限り、 おそらく青龍院は、役を分析していく理論的なタイプだ)
司:(そしてオレは……)
櫻子:ナイトショーでマイルスをやったあなたは、 役を分析して演じているようには見えなかったわ
櫻子:だから……もっとあなたに適している方法があるはずよ。 ——あなた普段、役作りはどうやっているの?
司:オレは——
司:『ピアノ弾きのトルペ』という作品をやってから、 役と自分を重ね合わせることを意識するようになった
櫻子:——なるほどね
櫻子:天馬さんは、自分と役の心情をリンクさせることで、 自分の中に役を作り出すタイプのようね
櫻子:なら…… あの子から教えてもらったやりかたが向いてそうね……
司:(あの子……?)
櫻子:私の知り合いに、天馬さんと同じようなタイプの子がいるの
櫻子:その子は、本当にいろいろな方法で、 役と自分の心情をリンクさせていっていたわ
櫻子:役の置かれた環境に自分も行ってみたり、 役と同じ行動をとってみたりね
司:役の置かれた環境……
司:それならば、オレも少しやったことがある。 貧しいくつ磨きの心情に近づくために、大通りの道端に座ってみた
櫻子:じゃあ、だいたいの方向性は理解できそうね。 ただ……
櫻子:その子なら——本物になるまでやるわ
司:本物?
櫻子:ええ。つまり、 “くつ磨きで食べていけるようになる”までやるの
司:……!!
櫻子:……もちろん、すべての役が、 ただ徹底的に真似をすればいいというわけではないわ
櫻子:役の心情に近づくために、 自分に何が必要かを考え努力をしていけば、 役の存在感が出るはずよ
司:……ああ。たしかに、そうだな。 よく理解できる
司:しかし……時間はあと1週間もない……やれるのだろうか
櫻子:オーディションの日までどうすごすかはあなた次第よ。 ただ——
櫻子:天馬さん。 あなた、自分を未来のスターだと豪語しているのよね?
櫻子:なら…… このステージのスターぐらい、なってみせなさい
司:…………!
司:……ああ!
司:必ずやお前を追い抜いて—— この公演を、最高のものにしてみせる!!
櫻子:……ふふ、その意気よ。 それじゃあ、楽しみにしてるわ
司:(やってみせると豪語したが……。 実際、期間はあまりに短い)
司:(果たしてオレは、 本当にあと1週間足らずで 青龍院と渡り合えるほどの演技を——)
???:司くーん!!
寧々:もう、急に走っていって……どうしたわけ?
司:お前達……
司:……すまない。 実は今、青龍院に役の作りかたを教えてもらっていてな
寧々:え……。 ……そんな大事そうなこと、教えてくれたの?
司:ああ。正確には青龍院のやりかたではなく、 知り合いのやりかたのようだが……
司:……その方法で役を作りきるには、 時間が足りないのではないかと思っていてな……
えむ:……司くんっ! 何か、あたし達にお手伝いできること、あるかな!?
えむ:時間が足りないかもしれないけど……、 みんなで手伝ったら、なんとかできるかもしれないし!
司:えむ……
類:……正直、今の青龍院くんと並び立てるようになるのは、 かなり難しいと思う
類:だけど——それでもやりたいと思っているんだろう?
司:…………ああ
寧々:…………っ
寧々:(……司は、すごいな)
寧々:(あんなすごい演技見せられて…… それでも、食らいつこうとしてる。 わたしは、できないって思っちゃったのに)
寧々:……わたしも、手伝う
寧々:(……勉強しなきゃ。 司や青龍院さんの演技を見て、 勉強して——もっとうまくなるんだ……!!)
司:——お前達……。 ありがとう! 感謝する!!

第 6 话:頂は遠く

翌朝
乃々木公園
司:それでは頼む!!
えむ:あいあいさーっ! 類くん、動かして大丈夫?
類:ああ。ショー用トリ型ロボット改良版改め——
類:フェニックスロボお披露目の時間だ!
寧々:……空飛ぶロボと追いかけっこするって…… 司、本当にこれが練習になるって思ってるわけ……?
類:司くんが、青龍院くんからもらったアドバイスから 考えたと言っていたけれど……有効な練習方法だと思うよ
司:リオは、話の中ではずっとフェニックスを追いかけているからな。 限界まで追いかけてみることによって、 見えてくるものがあるのではないかと思ったのだ!
寧々:なるほどね……
えむ:じゃあいくよー! スイッチ、オーン!
司:よし、動き出したな! 捕まえるぞ~!!
司:……くっ! こいつはかなり不規則な動きをするな……!
フェニックスロボ:『あらあら……私を捕まえると息まいていたのに、 そんなものなの?』
司:な……! これは……!?
寧々:わたしが吹き込んだの
類:リオは、フェニックスに挑発されながらも、 追いかけていくだろう? これならより臨場感が出せると思ったんだ
司:たしかにな……。 気づかい感謝する!
フェニックスロボ:『甘いわね。 ほらほら、私はこっちよ? 捕まえてごらんなさい?』
司:(……リオは、8歳の少年だ。 運動神経はよくなく、得物はお気に入りの虫取り網一本)
司:(空飛び、燃え盛るフェニックスを捕まえることは、 到底不可能に思える。だが——)
司:(母の——家族の命が、この一瞬に懸かっているのだ……!)
司:『待て! 絶対に捕まえてやる!』
数時間後
司:はぁ……はぁ……
えむ:司くん、大丈夫? いっぱい転んじゃってたけど……
司:問題ない。リオだって何回も転んでいるのだからな。 それに、大事にはならないよう受け身もとっている
寧々:……時間がないのはわかるけど、あんまり無茶しないでよね。 はい、ばんそうこう
司:おお、助かる
司:……だが…… まだリオを掴めた気はしないな……
司:……もしかすると、厳密にリンクしていないからかもしれない。 ここは森ではないし、気温や湿度も違う
司:だが、それを似せることは難しい……。 練習もあるから、森に行く時間もない。ならば——
司:……リオは3日3晩、水しか飲まずにすごしていたな
司:ならばオレも——同じことをしようと思う
寧々:え!? 本気……!?
寧々:で、でも……毎日稽古もあるし、ニワトリ役の練習もあるのに 水だけですごすなんて……できるの?
司:——それくらいしなければ、リオを掴むことはできない
類:…………。 司くんの覚悟は買うよ。 君がスターになるための努力を、邪魔するつもりはない
類:ただ、僕が無理だと判断した場合、 止めさせてもらうよ
司:ああ、助かる。 体を壊したらショーにも影響してしまうからな
司:だが……それまでは、限界までやってみせる!
司:はぁ……はぁ……
キャストA:天馬、ペースが落ちているぞ! ついてこーい!
司:……っ
司:(クソ……。万全な状態ならば、走り切れるというのに……)
司:う……
えむ:わ! 司くん、ふらふらーってしてるけど、大丈夫?
司:す、すまんえむ。 何も食べていないせいか、少しフラフラしてな……
司:だが……おかげで少しわかってきた。 食べずに動き回ることがどれほどつらいのか
司:その上、まったく見知らぬ土地だ。 ……そうだ。ならば前に漂着した無人島をイメージするのも……
えむ:司くん……
えむ:(がんばれ、司くん……!!)
司:『待て……っ! あっ!』
司:『今度こそ……今度こそ捕まえたと思ったのに!!』
司:『どうして届かないんだ……。 なんで僕は、何もできないんだ……』
司:…………いや、違うな。 ここは落ち込む感情だけではない……
寧々:……前より、うまくなってるけど……
類:やはりまだ、思ったようにはいっていないようだね……
えむ:…………
司:(…………まだ駄目だ)
司:(それなりのものにはなっている。 だが——)
司:(オレのリオはまだ、生きていない……)
司:(なぜだ? まだ、理解することができていないのか……?)
司:(なんとかしたいが……時間がない……。 このままでは……)
司:……いや! そんなことを考えている暇があるならば 行動を起こさなければ!
司:諦めるな天馬司! お前は、やれる男だ……!
司:『どうして届かないんだ……。 なんで僕は、何もできないんだ……』
オーディション2日前
寧々:…………
司:『結局、君は何がしたいの……!?』
司:『必死に追いかける僕を、からかってるの!?』
櫻子:『……違うわ』
櫻子:『私はこれでも、あなたのそのしつこさを、 少し……ほんの少しだけ尊敬しているのよ』
櫻子:『それほど苦しい思いをしても、 母親を救いたいと思っているのでしょう?』
司:『……そうだよ。 だから僕は……お前の心臓を持っていかないといけないんだ!』
司:(……っ。 ダメだ……!)
司:(青龍院と並ぶと、 どうしてもわざとらしい演技に見えてしまう……。 いや、それよりも——)
寧々:……嘘でしょ
寧々:フェニックスの完成度がますます上がってる……
類:これは……恐ろしいね
えむ:…………
演出家:そこまで。次
司:……はい
リオ役希望のキャストA:次のシーンから入ります!
櫻子:ええ、どうぞ
リオ役希望のキャストA:『僕は……どうすればいいんだ。 母さんを救いたいって思うけど、でも……』
類:(……他の役者達も、青龍院くんに引っ張られて それぞれ個性が出せるようになってきている)
類:(今のところ、誰が突出しているというわけではないけれど…… このままだと司くんは……)
類:(青龍院くんと渡り合うどころか、 少年役を掴み取ることすら難しいかもしれない……)
司:(……どのリオも、魅力的だ……。 フェニックスを捕まえられない焦燥感も、 健気さもよく表現されている)
司:(…………どうする)
司:(あと2日……。 どうすれば、オレは……!)
類:司くん……
司の部屋
司:(……いっそ……オーディションに勝ち残るために、 他の希望者を研究してみるか?)
司:(少しでも彼らを上回るような演技ができれば、役をもらえる)
司:(そしてリオの役さえ勝ち取れば、稽古の中で、 役を磨く機会がもっと生まれるかもしれない)
司:(ならばまずは、オーディションを突破することを 考えたほうが——)
司:いや……いや! ダメだ!
司:そんな小手先の演技で役を勝ち取ったとしても、 意味がない
司:オレが目指すスターは……
司:(……できることは、全部やった)
司:(役の背景を考え、 どんな心情になるのか、どんな動作になるのか……何回も試した)
司:(しかしそれでも……届かない)
司:(青龍院どころか、他の役者にも)
司:(……一体、どれほど果てしないんだろうか)
司:(ワンダーステージでのショー、宣伝公演、 旭さん達との合同公演に、ワークショップ——)
司:(どのステージも、手応えがあった。 一歩一歩成長していけているという実感があった)
司:(だからこそ、今回の公演でも大きく成長できるだろうし、 これから先も成長していけると思っていた)
司:(だが——)
司:(オレぐらいの実力の役者は、そこらじゅうにいる)
司:(そしてその上には……旭さんや青龍院のような、 抜きんでた力を持つ役者達がいる)
司:(そしてきっと、あの人は——)
司:(その先。頂点。 遥か……見えないほどの場所にいる)
司:オレは……
司:オレは一体、どうすれば、 あの場所にたどり着けるんだ……?
司:いや……ダメだ……
司:手を伸ばすことをやめたら、届かん……。 掴み取ることもできん……
司:進み続けろ……天馬司……
司:こんな時間に電話……? 誰だ……?
司:あ……
ワンダーランドのセカイ
司:……こんな時間に、一体どうしたんだ? 全員そろって
えむ:——ごめんね司くん。 今しかないって思ったの!
寧々:……うん。 オーディションまであと少ししかないけど……
類:ここまで来たんだ。 最後の最後まで、一緒に考えないかい?
類:リオを、完全に司くんのものにする方法を
司:……お前達……
司:(……そうだ。 オレは、ひとりで考え込んでしまったが……)
司:(舞台は……ひとりで作るものじゃない)
司:(こいつらがいてくれたから、 オレはここまで——高い場所まで飛ぶことができた)
司:(……今のオレでは、届く可能性は限りなく低い)
司:(だが——)
司:(……信じて、支えてくれる仲間を前に、 立ち止まるわけにはいかない)
司:(未来のスターを志す者として……!!)
司:……ああ。助かる
司:オーディションの日まで—— よろしく頼む!!
司:な……! タ、タイミングが悪すぎるぞ……!
寧々:ふふ、食べてなきゃそうなるでしょ。 明日は栄養とって、万全の状態で練習しよ
えむ:あたし、おっきなおにぎり持ってくるねっ!!

第 7 话:届かない。だから

ワンダーランドのセカイ
司:『……ありがとう、フェニックス。 君のことは絶対に忘れない』
司:『さようなら! また必ず行くよ! 君の住む、あの森に!』
司:——以上だ
司:オレは……今の自分の演技はまだどこか上っ面で、 完全にリオの感情を表現できていない……そう思っている。 だが、理由がわからない
司:そこで、ぜひ忌憚のない意見を聞かせてほしい。 よろしく頼む!
ミク:う~~~ん……
リン・レン:『う~~~ん!』
MEIKO・ルカ:『うーん……』
ミク:……今のもすっごくよかったから、 何がダメなのかわかんないな……
えむ:うん……。 あたしもわかんないんだけど……
えむ:でも、櫻子ちゃんとやってるのを見ると、 まだ足りないっていうのはわかるんだ
KAITO:…………。 類くんはどう考えているんだい?
類:……この問題を直ちに解決するのは、 かなり難しいだろうね
類:……役作り自体は、 今まで演じてきた中でも、最も高いレベルでできている
類:これまでの公演で得た経験を活かしたうえで、 青龍院くんのアドバイスを受けて、 さらに深い役作りをしているよ
MEIKO:そうね……。何か欠けてるっていう感じはしないものね……
類:ただ……これは役者に限らずだけど、 すべてのことはある程度熟達すると、成長が横ばいになる
類:その中でさらに、自身の限界という天井を超える人は なかなかいない。 だから……
KAITO:……僕も同意見だよ。 せめてもう少し時間があれば、 解決策を考えられると思うんだけど……
類:しかし……みんなで知恵を出し合えば、 何かヒントが見つかるかもしれない
えむ:……うんっ!! いっぱい考えてみようっ!!
寧々:ちょっとしたことでも、役に立つかもしれないもんね……
司:お前達……
司:(……そうだ。たとえ1ミリでもいい。 少しでも伸びる可能性があれば、オレは——)
MEIKO:はぁ~、とっても難しいわ!!
MEIKO:なんだか、今の状況って、 このお芝居に似てるわねえ
司:……ん? それは、どのあたりがだ?
MEIKO:ほら、最後の山場にあるじゃない? どう頑張ってもフェニックスが捕まらなくて、 八方ふさがりになっちゃうところ!
MEIKO:あの時の少年と今の司くんが、 ちょっと似てるなーって思ったのよ
司:……あの時の少年と、オレが……
司:(たしかに……)
司:『どうして届かないんだ……。 なんで僕は、何もできないんだ……』
司:(あの場面のリオの状況と、今のオレの状況は似ている)
司:(手に入れたいものがあるというのに、 力が足りないせいで、掴むことができない)
司:(今、心の底から感じている無力さを、 あの時のリオの感情と結びつけることができれば、あるいは——)
司:…………! そうか……
えむ:どうしたの司くん?
司:オレは——オレのフェニックスを見ればいいのか……!
寧々:え? 司の、フェニックス……?
ミク:もしかして司くん、何か思いついたの!?
司:ああ! 可能性はわずかだが……役を掴むヒントになるかもしれん!
MEIKO:……え~っと……。 もしかして私、お手柄?
KAITO:どうやら、そうみたいだね
KAITO:(……頑張れ、司くん。 君ならきっと……道を切り拓けるはずだよ)
翌日
東京センチュリーホール
寧々:えっと……G列の15番から18番だから……
えむ:あ! あったよ! この席!
類:しかし……まさかこのチケットが役立つとはね。 元々司くんは来ない予定だったのに
えむ:うんっ! ほんとによかったね、司く——
えむ:(わ……すっごく集中してる)
えむ:(そう~っとしておいてあげなくっちゃ!)
司:(……天満さんの舞台を見るのは、本当に久しぶりだな)
司:(あの時のことは、いまだに忘れられない——)
司:(あれから天満さんは海外で活動を始めて、 演出や脚本も手掛けるようになって、 舞台に立つ姿を見る機会はなかったが……)
司:(やっとまた、見ることができるのだな)
司:(……だが——)
司:(今日は、楽しみという気持ちだけで 見るわけにはいかない)
司:(今日ここでリオの感情に近づくことができなければ—— もう、道はない)
司:(集中しろ……!)
???:『——おやおや、どうしたんだい? そんな顔をして』
司:……!
司:(今の声……オレに……?)
司:(いや、そんなわけはない)
司:(だが……そういう風に思わされた)
類:(これは—— “ひとりに語りかけているように話している”のか)
類:(自然にやってみせているけれど…… 2000人規模のホールだ。簡単にできることじゃない)
寧々:(なんの大道具もないステージに、たったひとりで…… しかもただ一言しゃべっただけなのに、なんて存在感……)
えむ:…………すごい
えむ:あの人、立ってるだけなのに、キラキラしてる……!!
???:『さあ、幕が上がる』
???:『願わくば—— この幕が下りる時、あなたが心からの笑顔でいますように』
司:(————ああ)
司:(なんという輝きだ)
???:『……不思議だ。 君が歩いてくるというだけで、この道が好きになる。 この道に咲く花を見ただけで、君を思い出す』
司:(……そこにいるだけで、目が追ってしまう)
司:(一言発するだけで、次は何をしゃべるのかと期待してしまう)
???:『……ああ。 いつか僕は、この大地を目にするだけで、 幸福になるんじゃないだろうか』
???:『……オーバー、かい? ううん……決してそんなことはないと思うんだけどなぁ』
司:(笑いかた、視線の向けかた、小さな小さな動きのひとつひとつが 当たり前のようにそこにあって——)
司:(自然に、どこまでも自然に……生きている……。 役が役ではなく、実在している……!!)
司:(これがスター・天満星一……。 オレが憧れた、本物の……)
司:(本物……の……)
司:(子供の頃は——演技というものを学ぶまでは、 ただ憧れの目で見ていた)
司:(いや、演技を学んでからも……かもしれない。 オレは、つい最近まで、この人に近づけると思っていた)
司:(だが、今は——たくさんのものを学んで、吸収して、 自分の身の程を知った今は——わかる)
司:(10歩も歩けば手が届きそうな舞台だというのに)
司:(あまりに——遠い)
司:(……いいや……いいや、目を背けるな!)
司:(この感情を……もっと感じろ……!)
司:(何よりほしいものを手に入れることができない—— 自分の非力さを感じろ!)
司:(どれだけ練習しても……全力を振り絞っても、 オレは、周りの人間に劣る)
司:(走っても、走っても、 どれだけ手を伸ばしても、追いつくことができない)
司:(あの、遥か高い空を翔ける、火の鳥に——)
類:…………
類:(……ああ)
類:(やっぱり君は、行こうとしているんだね)
類:(遥か高く——空の先まで)
えむ:つ、司くん、大丈……!
類:——えむくん
類:……これが司くんにとって、必要なことなんだ
終演後
観客:すごくおもしろかったね!
観客:ふふ、そうだね。 なんだか夢みたいだったな
司:…………っ
寧々:……はい、これ。ハンカチ。 使って
司:…………すまん。助かる
類:……司くん
類:君のフェニックスは、見られたかい?
司:——ああ
司:たしかに見た。 オレが憧れ、求め、追いかけ続けているフェニックスをな
司:……そして、すまん。 本当に手をわずらわせてばかりだが——
司:この感覚を忘れないうちに、もう一度練習をしたい! 一緒にやってはくれんか!?
類:……フフ。 ここまできて、嫌だ、なんて言うと思うのかい?
寧々:乗りかかった……っていうか、 もう出航しちゃってるしね、この船
えむ:っよ~~~し!! 今からみんなでいっぱい練習しよ~っ!!
司:ああ! 最高の演技にしてみせるぞ!!

第 8 话:進む一歩

オーディション当日
フェニックスステージ
櫻子:『それじゃあ、ごきげんよう。 不器用なハンターさん』
リオ役希望のキャストA:『……一緒に魔女を倒してくれて、 本当にありがとう、フェニックス』
リオ役希望のキャストA:『——さようなら! また必ず行くよ! 君の住む、あの森に!』
演出家:——そこまで
演出家:……悪くなかった。かなり役を作り込んできたな
リオ役希望のキャストA:ありがとうございます!
類:(……今回のオーディションは、 希望者がやりたいシーンを3分程度やるというスタイルだ)
類:(どのシーンを選ぶかが、一番重要になってくるけれど——)
類:……やっぱり、もう決まっているようだね
えむ:う~……
寧々:えむ……。 やっぱり、ちょっと横になったほうがいいんじゃない?
類:どうしたんだい、えむくん。 体調でも……
えむ:あ、えっと……もうすぐ司くんの番だって思ったら、 なんだかお腹がキュ~ってしてきちゃって……
類:大きなステージの本番前でも緊張しないえむくんが…… 珍しいね
寧々:……でも、わかるな。その気持ち
寧々:司は、あんなに……あんなにボロボロになるまで頑張ってたから。 だから……
寧々:……頑張れ、司……!!
類:……ああ、そうだね
類:僕達の座長を——信じよう
演出家:それでは——次
司:はい! 天馬司です! よろしくお願いします!
演出家:では……希望するシーンは?
司:はい。 台本78ページから——
司:リオが、フェニックスを捕まえようとするも、 最後のチャンスも失い、悲嘆に暮れるシーンです
櫻子:…………
櫻子:(たしかにあのシーンは、 クライマックス前のリオの見せ場)
櫻子:(けれど同時に——最も演技力が問われるシーンでもあるわ)
櫻子:……どう演じるつもりかしら
演出家:それでは始めよう。 櫻子くん、準備はいいか?
櫻子:はい。いつでも問題ありません
司:……よろしく頼む。青龍院
櫻子:ええ。 ——全力できなさい
演出家:では——始め!!
櫻子:……っ!
櫻子:(これは……昨日までの天馬さんとは、全然違う……。 それに、一瞬でこの緊張感にもっていくなんて——)
司:『そこを……動くな……! 動かないでくれ……!』
司:『母さんは……今日の日没に死ぬ……! あの魔女が、そう言っていたんだ!』
司:『君の心臓をとってこない限り、 絶対に死んでしまうって!』
櫻子:(——そう。 相当、努力したのね)
櫻子:『……なら、捕まえてみなさい』
櫻子:『私はここよ。 あなたの、目と鼻の先』
櫻子:『……あなたと追いかけっこをした日々は、楽しかったわ。 本当に……久しぶりに、楽しかったの』
櫻子:『でもそれも——今日で終わり』
司:『……っ』
櫻子:『さあ、来なさい。 ——私の心臓を、奪ってみせなさい!!』
司:『……う……う……!! うわああああああああ!!!!!』
司:『あ——』
司:『なんで……なんで、足が……』
櫻子:『……足に疲労がたまって当然だわ。 何日もこの森を走り回っていたのよ』
櫻子:『その足じゃ、私にはもう追いつけないわね……』
櫻子:『さよなら、リオ。 これで永遠に……お別れよ』
司:『……あ……』
司:(——背中が遠ざかる)
司:(森の空高く、羽ばたいて去っていく。 どうしてもどうしても欲しい心臓が)
司:(——手を伸ばさなくては。 そう、思うのに……)
司:(『僕』に、力が足りないせいで——)
司:(届かない——!!)
司:『う……』
司:『……うあ……あ……』
司:『あぁ……!! うわあぁあ……!!』
司:『僕は……! どうして、僕は! 僕は! 僕は……っ!!』
司:『どうして僕は——こんななんだよ……!!』
司:『どうして……どう、して……』
演出家:…………
キャスト:……あ。 えっと……ここで終わりでしたよね?
演出家:あ、ああ……たしかにそうだったな。 では次の——
櫻子:『……本当に馬鹿ね。あの子』
寧々:(……え?)
寧々:(シーンはもう終わりのはずなのに…… 続けるの!?)
類:…………
櫻子:『これでようやく静かな暮らしに戻れそうだわ』
櫻子:『虫取り網を持ってフェニックスを追いかけるような子供、 そうは現れないでしょうし』
櫻子:『…………。 ……ふふ、変な話ね』
櫻子:『さっきまでは、心臓をあげるつもりだったの。 だって私はもう、生き続けることに飽き飽きしていたから』
櫻子:『だけどきっと——』
櫻子:『あなたのせいで、 もう少し、生きたくなってしまったのね』
類:(……そうか)
類:(ちゃんと、司くんのリオに、 応えてあげたいと思ったんだね)
類:(君のフェニックスは、とても——優しいから)
司:『……? 何か降って……。 これ、は……』
司:『フェニックスの羽根……。 たしか……傷が治ったり、疲れがとれるって言ってたやつだ』
司:『もしかして、僕のために、落として……?』
司:『……そうだよ。 君は……君はいつも、いじわるだけど、優しくて……』
司:『初めて僕の友達になってくれたのに……』
司:『……ごめんよ、フェニックス』
司:『本当に……ごめん……』
演出家:——そこまで!!
司:あ……
司:……終わった、のか……
櫻子:——お疲れさま、天馬さん
司:青龍院……
櫻子:素晴らしいリオだったわ。 思わず、応えたくなってしまうくらいね
司:そうか……。 正直、リオをやりきることに必死で、 出来がどうだったのかわからないが……
司:フェニックスであるお前にそう言ってもらえるなら、 これ以上嬉しいことはない
櫻子:あら。私だけじゃないのよ? ——客席を見てごらんなさい
司:何?
えむ:すっごく……すーっごくよかったよ~!!
司:あ…………
演出家:——他に、これ以上の演技ができる自信がある者はいるか?
櫻子:なら、決まったわね
櫻子:——少年・リオ役は、 ワンダーランズ×ショウタイムの天馬司に決定よ!
司:……!!
えむ:や…………やった~~~!!!!
櫻子:今日から改めてよろしくね、天馬さん
櫻子:……準主役になったからには、 今以上のハードな稽古をやってもらうことになるわよ?
司:…………ああ。 ああ……!!
司:望むところだ! この天馬司、どんな試練であろうとも、乗り越えてみせる!!
櫻子:ふふ……そうこなくちゃ!
えむ:う……う…… よかったよ~寧々ちゃん~!!
寧々:うん……本当に、よかった……
寧々:(わたしも……わたしも、進みたい)
寧々:(あんな風に——自分を、超えてみたい……!)
類:フフ、僕達のスターはまぶしくて…… 本当に、涙が出そうなほどだね
類:(……この星が、 もっと高い空で輝くために)
類:(そして僕達が、 共に輝き続けるために)
類:(僕も——動き出すとしようか)
司:(……あいつらが、笑っている)
司:(本当に感謝してもしきれんな。 今回はあいつらの助けがなければ、乗り越えられなかった)
司:(オレを支えて——信じて付き合ってくれたから、 ここまで成長することができた)
司:(オレの頭上には——数千、数万の優れた役者がいる)
司:(そしてオレの目指す場所は、 いつたどりつくかもわからない、果てしない場所だろう)
司:(だが、それがなんだという)
司:(いつたどりつくかわからなくとも、 オレの進むべき道は変わらん)
司:(オレは必ず——スターになる!!)
櫻子:……まさか、この短期間で、ここまで成長するなんてね
櫻子:30周年記念公演—— 最高の舞台になりそうだわ