活动剧情
イミシブル・ディスコード
活动ID:89
第 1 话:不穏な通知
25時
奏の部屋
奏:(——うん、やっぱりベースを抑えて正解だったな。 メロディーが際立ってる)
奏:(まふゆが書いてくれた詞にもはまりそう)
奏:(あとは、Cメロを……)
まふゆ:『……そろそろ落ちるね』
奏:『あ……わかった』
絵名:『え、もう? もうちょっとくらい、いいんじゃない?』
まふゆ:『……今日の分の作業は終わったし、 お母さんが心配するから』
まふゆ:『……そのかわり、明日は早めにログインして作業しようと思う』
奏:『……わかった。 じゃあ、わたしも少し早めに次のデモ上げておくね』
まふゆ:『……本当?』
奏:『うん、あとは細かい調整だけだし』
まふゆ:『……わかった。待ってる』
奏:『あ……』
ミク:まふゆは、奏達と曲を作ってる時は 安心した顔をしてるから
奏:『——うん』
まふゆ:『……じゃあ、また明日』
奏:『うん、おやすみ』
奏:…………
奏:(まだ、まふゆを救える曲は作れてない)
奏:(でも……一緒に曲を作るこの時間が、 まふゆのためになってるのなら——)
奏:(作り続けよう。それでいつか、絶対に——)
翌日
朝比奈家 リビング
まふゆ:じゃあお母さん、いってくるね
まふゆの母:いってらっしゃい。 ……あら、目の下にクマがあるわ
まふゆの母:昨日の夜、勉強を頑張りすぎちゃったのかしら。 あんまり無理しちゃ駄目よ?
まふゆ:あ……そうだね。 問題が解けるのが楽しくて、つい夢中になっちゃって
まふゆ:今日は早めに休むから大丈夫。 それじゃあいってきます
まふゆの母:……まふゆはいつも勉強熱心ね
まふゆの母:でも——
まふゆ:私は……やってみたいの。音楽を
まふゆの母:(……いつか後悔してからじゃ、遅いものね)
まふゆの部屋
まふゆの母:……このフォルダも、違う
まふゆの母:どこかに音楽のデータがあるんじゃないかと思ったけれど ……見当たらないわね
まふゆの母:だけど、まふゆは賢いから—— 見つからないようにしているのかも
まふゆの母:たしか……隠しフォルダっていうものがあるのよね。 もう少し探してみましょう
まふゆの母:——やっぱり
まふゆの母:このフォルダには…… イラストと、これは、詩……? ……あら?
まふゆの母:…………ナイト、コード……?
チャット:『そろそろ落ちる。イラストの進捗あげとくね』 『こっちもコンテ上がったよ~。あとで見といてね!』 『ふたりともありがとう。確認しておく』
まふゆの母:……チャットツールなのね
まふゆの母:(あの子がこんなものを使ってるなんて……。 もしかして、ここで音楽関連の連絡をしているのかしら)
雪:『歌詞、送っておくね』
まふゆの母:……この雪が、まふゆね
まふゆの母:このメッセージの送信時間は——深夜の1時?
まふゆの母:昨日の夜、勉強を頑張りすぎちゃったのかしら。 あんまり無理しちゃ駄目よ?
まふゆ:あ……そうだね。 問題が解けるのが楽しくて、つい夢中になっちゃって
まふゆの母:…………
K:『新しいデモ、できたよ。 雪、もし作業できそうならよろしく』
まふゆの母:……K……
まふゆの母:——そう。この子が曲を作っているのね
宮益坂
奏:(……今日はお父さん、元気そうだったな)
奏:(やっぱり、わたしのことは わからないみたいだったけど……)
奏:(……少しでも、話せてよかった)
奏:……よし。帰ったら、曲の続きを頑張ろう
奏:(デモも早くあげられてよかったな。 まふゆもそろそろ帰る頃だろうし——)
奏:……ん? なんだろ、この通知
奏:ナイトコードのフレンド申請……?
第 2 话:ファーストコンタクト
奏の部屋
奏:(……このフレンド申請、なんだろう。 誰かが間違って送ったのかな……)
奏:あ、メッセージがついてる。えっと……
奏:…………え、これ……
メッセージ:『こんにちは、Kさん。 突然、連絡してしまってすみません』
メッセージ:『私は、Kさん達と一緒に音楽をやっている雪の母です。 今回はお願いがあってご連絡させていただきました』
奏:まふゆの、お母さん……?
奏:どうして、わたしのアカウントを……
奏:(そういえば——まふゆ、お母さんにパソコンを 調べられてたって前に言ってたっけ)
奏:(……もしかしたら、それで見つかったのかも)
奏:…………
奏:(…………無視、はできない)
奏:(ここで無視しても……きっと、意味ない。 お母さんに何か聞かれて、まふゆが もっと苦しむことになるかもしれないし……)
奏:『はじめまして、“25時、ナイトコードで。”で 作曲を担当しています、Kです。 いつも雪さんにはお世話になっています』
奏:『お願いとはなんでしょうか』
メッセージ:『単刀直入に申し上げます』
メッセージ:『雪と音楽活動をするのを、控えていただけないでしょうか』
奏:え……
奏:……『理由を聞かせていただいてもいいでしょうか』
メッセージ:『あの子が今、受験生だからです』
メッセージ:『もちろん、時には気晴らしが必要なこともわかっています』
メッセージ:『しかし、最近のあの子は寝不足になっている時もあり、 親として心配になってしまうのです』
メッセージ:『あの子には、音楽とは別に目指す夢もあります。 もし、雪のことを友達として想ってくれているのであれば、 今は勉強に集中させてあげてくれませんか?』
メッセージ:『どうか、お願いします』
奏:…………!
奏:(……まふゆの目指す、夢……)
奏:まふゆの夢、って……なんなんだろう。 一度も聞いたことないけど……
奏:(……でも、もしわたしが知らないだけで、 夢があるんだとしたら——)
数年前
中学生の奏:お父さん、見て
奏の父:ん? どうしたんだい?
中学生の奏:この前、作文の宿題が出たの
中学生の奏:『将来の夢』ってテーマだったんだけど…… わたし、お父さんみたいな作曲家になりたいって書いたんだ
奏の父:え、僕みたいな?
中学生の奏:うん! 先生にも、わたしは音楽の成績もいいし きっとお父さんみたいになれるよって言われたの
奏の父:そうか……。 僕も、そう思うよ
奏の父:でも、そのためには音楽以外の勉強も しっかり頑張らないとね
中学生の奏:あ……うん、そうだね
中学生の奏:……でも、その時間も曲を作るのに使えたらいいのにな。 社会とか生物とか、そういうのは音楽に関係ないと思うし
奏の父:はは、まるで関係ないっていうことはないよ、 いろんな知識を持っていると、作れる音楽の幅も広がるからね
奏の父:僕も仕事をしていて、もっと勉強していればよかった って思うこともあるんだ
中学生の奏:そうなんだ……
奏の父:ああ。だから奏も、作曲家になる夢を叶えたいのなら、 たくさん勉強しておくといいよ
奏の父:きっと、奏の人生の力になってくれるはずだ
奏:(……まふゆのお母さんの言っていることは、わかる)
奏:(今が大事な時期っていうのは、本当だろうし……)
奏:(でも——)
まふゆ:『……わかった。待ってる』
奏:…………
奏:(今、ニーゴの活動をやめると、まふゆは……)
奏:『すみませんが、わたしから何か言うのは難しいです』
奏:『雪さんが一緒に音楽活動をしたいと言ってくれている限り、 わたしも、そうしたいと思っています』
奏:(……メッセージが、止まった?)
奏:あ……なにか書いてるみたい……
メッセージ:『——それが、あの子の将来を狂わせるかもしれない、 としてもですか?』
奏:…………っ
奏:『雪さんがやめることを望んでいないのであれば、 わたしからは何も言えません』
奏:『すみません』
奏:(……まふゆのためには、これでいいはず)
奏:(きっと、これで……いいはず、だよね)
メッセージ:『わかりました』
メッセージ:『でも、お互いに少し誤解していることもあると思います。 もしよければ、一度、会って話しませんか?』
奏:えっ……
奏:まふゆのお母さんと、会う……?
まふゆの部屋
まふゆ:……ふう……
まふゆ:(勉強する前に、少し作業しようかな)
まふゆ:(……奏、夕方までにデモをあげるって言ってたし。 パソコンを机から出して——)
まふゆ:…………あれ?
まふゆ:(パソコンをしまってた場所が、少し違う)
まふゆ:どうして……
まふゆの母:——まふゆ、そろそろ夕飯よ?
まふゆ:あっ……ありがとう、お母さん
まふゆ:…………ねえ、お母さん。 今日、パソコン使った?
まふゆの母:ええ、ちょっと調べものがあったから借りたわ。 勝手にごめんなさいね
まふゆ:あ……ううん。 大丈夫だよ、でも……
まふゆ:……ごめんなさい。できれば、なんだけど……
まふゆ:もう、パソコンは見ないでほしいの
まふゆの母:——あら、どうして?
まふゆ:え、と……必要なファイルが間違えて上書きされたり、 消されたりしたらいけないし……
まふゆ:あ……お母さんがそんなことをするなんて思ってないよ。 でも、学校で出されてる課題のファイルもあるし、 それがなくなったら大変だから……
まふゆの母:……そうだったの。それなら——
まふゆの母:——あの詩も、課題だったのかしら?
まふゆ:え……
まふゆの母:——ねえ、まふゆ? もう夜中まで勉強するのはやめたほうが いいんじゃないかしら
まふゆの母:ほら、睡眠不足になると集中力も落ちてしまうし そんな中、勉強しても捗らないでしょう?
まふゆの母:——勉強以外のことが気になって、 気が散っちゃうかもしれないものね
まふゆ:————!
まふゆの母:まふゆ、お母さん信じてるわ
まふゆの母:まふゆは、夢を叶えるために必要なことを ちゃんとわかってるって
まふゆ:(お母さんに、気づかれた……)
まふゆ:(……きっと……ニーゴのことも、全部……)
まふゆ:(どうしよう……どうしよう…………)
まふゆ:(まだ……ニーゴで……みんなと一緒に、曲を作りたいのに)
まふゆ:(音楽を……やっていたいのに——)
まふゆ:でも……
まふゆの母:まふゆは、夢を叶えるために必要なことを ちゃんとわかってるって
まふゆ:(お母さんは、私のことを想って言ってくれてる。 想って……言ってくれて…………)
まふゆ:(…………私のことを、想って、くれてるんだよね……?)
誰もいないセカイ
ミク:——そして、みんなは仲良く、一緒に遊びました
ミク:(……絵名がくれた絵本、おもしろかった)
ミク:(……奏達は、新しい曲を作ってるのかな。 次はどんな曲なんだろう……)
ミク:……楽しみだな
ミク:え……?
ミク:(なんだろう、この気配……)
ミク:(もしかして——)
???:——お前が、このセカイのミクか
ミク:……!
ミク:あなたは……カイト?
KAITO:——ああ
KAITO:ここは……何もないセカイだな
ミク:最初は、何もなかった
ミク:だけど——今のまふゆには、わたし達も、奏達も、いる
KAITO:まふゆ……それがこのセカイの持ち主の名か
KAITO:……どうやら、俺はそいつに呼ばれたようだな
ミク:(……もし、カイトがまふゆに呼ばれて 来たのだとしたら……)
ミク:(まふゆに、何かあったの……?)
ミク:……まふゆ……
第 3 话:生まれる迷い
25時
奏の部屋
奏:…………
メッセージ:『あの子が今、受験生だからです』
メッセージ:『あの子には、音楽とは別に目指す夢もあります。 もし、雪のことを友達として想ってくれているのであれば、 今は勉強に集中させてあげてくれませんか?』
メッセージ:『——それが、あの子の将来を狂わせるかもしれない、 としてもですか?』
奏:(ニーゴの活動が、将来のためになるかって言われたら…… わからない)
奏:(でも、今のまふゆは……ニーゴで曲を作りたいって思ってる)
奏:(それに、わたし達と曲を作ることが 本当のまふゆを見つけることにも、きっとつながってる)
奏:(だから……やっぱり今、音楽活動をやめさせるのは まふゆのためには、ならないと思う……けど……)
奏:…………
瑞希のメッセージ:『みんな、いるー?』
絵名のメッセージ:『いるよ。作業始めてる』
瑞希のメッセージ:『お、じゃあボイチャしよー! Kはいるのかな?』
奏:あ……もう25時か。 えっと、ミュート外して……
奏:『ごめん、いるよ』
瑞希:『お、Kお疲れ~!』
絵名:『お疲れさま、K。 新しいデモ聴いたよ、すっごくよかった』
奏:『……うん、雪が少しでも作業できればいいなと思って』
瑞希:『うんうん、雪もきっと喜んでると思うよ!』
奏:『……、そうだといいな』
絵名:『K?』
瑞希:『どうしたの? なんか元気なくない?』
奏:『あ……うん。えっと……』
まふゆ:『——ごめん、遅くなった』
瑞希:『あ、雪! 新しいデモ、すっごくよくなかった!? 動画作るの、今から楽しみだよ~!』
まふゆ:『……そうだね』
まふゆ:『……でも……』
奏:『雪?』
まふゆ:『…………ごめん』
まふゆ:『……しばらく、一緒に作業できなくなる』
絵名:『え……?』
まふゆ:『作業自体はできるから、歌詞は作れるけど…… しばらくはログインできないと思う』
瑞希:『な、なんで?』
まふゆ:『……お母さんに、気づかれた、と思う』
奏:『あ……』
絵名:『え、どういうこと? データとか隠してたんじゃないの?』
まふゆ:『隠してたんだけど……。 私のいないうちに、またパソコンを見られてて……』
まふゆ:『……多分、歌詞やナイトコードも見つかった』
絵名:『……それで、作業するのやめろって言われたの?』
まふゆ:『……直接的には言われてない、けど……』
奏:…………
奏:(……やっぱり……)
奏:(まふゆも、お母さんに何か言われたんだ)
奏:(このままじゃ、まふゆは……)
瑞希:『……でも、やめさせられるわけじゃないんでしょ?』
まふゆ:『…………』
絵名:『……本当に、それでいいの? あんたは——』
まふゆ:『今は、しばらく来れなくなる』
まふゆ:『だけど——』
まふゆ:『ちゃんと、戻ってくる』
絵名:『雪……』
まふゆ:『——いつになるかは、わからないけど……』
絵名:『……わかった』
瑞希:『じゃあ、ボク達も待ってるよ』
まふゆ:『……ありがとう』
まふゆ:『……K』
奏:『え……』
まふゆ:『……デモ、ありがとう。 少し時間かかるかもしれないけど、必ず歌詞を送るから』
奏:『まふゆ——』
奏:『……うん、待ってる』
まふゆ:『…………それじゃあ』
瑞希:『……パソコン覗いてたって言ってたけど、 やっぱりボク達のこと調べてたのかな』
絵名:『絶対そうだと思う』
絵名:『私、前にまふゆのこと家に連れてったことあるでしょ? あの時に言われたんだよね』
絵名:『——一緒に音楽をやってる子?って』
奏:『え……』
絵名:『ほら、まふゆって音楽やってること、 親に言ってなかったでしょ』
絵名:『……だから多分、まふゆのお母さんは、 誰がまふゆと音楽やってるのか調べてたんだと思う』
奏:『……誰が……』
奏:『…………』
絵名:『……K、大丈夫?』
奏:『あ……うん……』
瑞希:『まふゆが心配なのはわかるよ。 ボク達も……』
奏:『あ……違うの。 それもあるんだけど、その……』
奏:『……まふゆのお母さんから、連絡がきたんだ』
絵名・瑞希:『——え?』
奏:『ごめん、今日……相談しようと思ってたんだけど』
瑞希:『いや、それは大丈夫なんだけど——!』
瑞希:『まふゆのお母さんから……って、どういうこと? なんて言ってきたの?』
奏:『……、えっと…… まふゆと音楽をするのは、控えてほしいって』
奏:『それと——』
メッセージ:『あの子には、音楽とは別に目指す夢もあります。 もし、雪のことを友達として想ってくれているのであれば、 今は勉強に集中させてあげてくれませんか?』
絵名:『それと……どうしたの?』
奏:『あ……ううん、なんでもない』
瑞希:『そっか……』
瑞希:『それで、Kはなんて言ったの?』
奏:『わたしは……“まふゆが望んでることだから、 わたしからは何も言えない”としか返せなかった』
奏:『でも、そしたら……一度会って話さないかって 返事がきたの』
瑞希:『え、まふゆのお母さんと……!?』
絵名:『会うって、いつ?』
奏:『今週の日曜日。だから……あさってかな』
絵名:『あさって……結構すぐじゃん! ていうか、大丈夫なの?』
瑞希:『さすがに何かされるとかはないと思うけど……、 これだけボク達のこと探してるんだし、 何言われるかわかんないよ』
奏:『……うん、わかってる』
奏:『わたしも……さっきまで、少し迷ってたんだけど』
まふゆ:『今は、しばらく来れなくなる』
まふゆ:『だけど——』
まふゆ:『ちゃんと、戻ってくる』
奏:『……まふゆに関わることだから、 行かないといけないと思った』
奏:『それに……まふゆのお母さんの言いたいことも、 知っておきたくて』
奏:『——これから先の、まふゆのためにも』
絵名:『K……』
絵名:『——じゃあ、私も行く!』
奏:『え……』
絵名:『このまま黙って待ってるなんて、絶対嫌。 直接文句言ってやらないと気が済まないし……!』
瑞希:『……ボクも行くよ。まふゆのこと心配だしね』
奏:『……ふたりとも、ありがとう』
奏:『……でも、わたしだけで大丈夫。 ちゃんと話してくるから安心して』
絵名:『でも……っ』
奏:『まふゆが心配な気持ちはわかるよ。 でも……ふたりは、行かないほうがいいと思うんだ』
奏:『……もし、話し合いがうまくいかなかったら、 まふゆと会えなくなるかもしれない』
奏:『だから……直接顔を見られるのは わたしだけのほうがいいと思う』
奏:『ふたりの顔まで見られたら、 本当に誰も——まふゆのそばに いてあげられなくなるかもしれないから』
絵名:『K……』
絵名:『……わかった。でも、何かあったら連絡して。 いつでも駆けつけるからね』
瑞希:『……うん、まふゆのことを想ってるのは、 ボク達も一緒だからね』
奏:『……うん、ありがとう』
第 4 话:私達にできること
翌日
ファミリーレストラン
絵名:はあ、疲れた……
絵名:ほしかった画材は買えたけど、 まさか、こんな時間まで歩き回ることになるなんて……
瑞希:あはは、ついでにいろんなショップの新作見て回ったもんね~
瑞希:でも、……いい気分転換になったよね。 ひとりだとモヤモヤしちゃうし、ボクも気が紛れたよ
絵名:……まあね
絵名:——まさか奏と、まふゆのお母さんが 会うことになるなんて思わなかった
瑞希:……奏、本当に大丈夫かな……
絵名:……心配だよね。 私も、電話で1回話しただけだけど—— なんだか嫌な感じがしたし
瑞希:嫌な感じ……か
絵名:うん、なんて言えばいいのかな……。 優しい雰囲気なんだけど、有無を言わせない感じがするっていうか
瑞希:たしかに、そうだよね。 ……ボクが前に、まふゆとお母さんの会話を聞いた時も そんな感じだったな
瑞希:でも——きっとまふゆは……もっと、つらいよね
絵名:…………
絵名:(この前も、家に帰りたくなさそうにしてたし…… ニーゴの活動ができなくなったら、 もっとしんどくなるんじゃ——)
絵名:……私達にできることって、ないのかな
瑞希:……うん……
瑞希:でも……難しいよね……。 ひとの家のこととか——まふゆの将来のことにまで、 ボク達に口出す資格があるかっていうと……
絵名:…………
瑞希:——あ、あれ? あそこにいるのって、まふゆじゃない?
絵名:え?
絵名:……本当だ。予備校の帰りかな
瑞希:……ねえ、まふゆを呼んでこない? 少しだけなら話す時間もあると思うしさ
瑞希:ボク達にできることは あんまりないかもしれないけど…… ちょっとだけでも気持ちが軽くなれたらなって
絵名:……そうだね
瑞希:よーし! じゃ、ボク行ってくるから絵名は席見ててね!
瑞希:と、いうことで……
瑞希:じゃじゃーん! 特別ゲストのまふゆさんでーす!
絵名:もう、そんなに騒がなくてもいいでしょ
絵名:……お疲れ、今日は予備校だったの?
まふゆ:……うん……
絵名:そっか。……昨日、あれから大丈夫だった?
まふゆ:…………
瑞希:……あ、そういえば飲み物まだ頼んでなかったよね。 まふゆ、何飲む? お腹は?
まふゆ:……紅茶だけ飲む。 夕飯もあるから
瑞希:そっか。じゃあ紅茶ね! ついでにボクも注文しちゃおーっと!
瑞希:絵名は何か頼む?
絵名:え? あー、私はフルーツパフェにしようかな。 なんか甘いものが食べたかったし
瑞希:パフェ? お昼もクレープ食べてたじゃん。 そんなに食べると太るよ?
絵名:いいの、今日はチートデーなんだから!
瑞希:そんなこと言ったら、絵名は毎日がチートデーじゃん!
瑞希:ねー、まふゆもそう思わない?
まふゆ:……食べたいのなら、好きにすればいいと思う
絵名:言われなくてもそうするってば。 ていうか瑞希、早く注文してよ
瑞希:はいはい、じゃあ店員さん呼ぶねー
瑞希:——でさー! 今日行ったお店の新作で、 奏とまふゆに絶対似合うのがあったんだ!
まふゆ:……そうなんだ
瑞希:そう! ふたりとも、普段は絶対 着なさそうなやつだったんだけど……。 でもイメージ合うし、試着だけでもしてほしいんだよね!
絵名:瑞希、お店の中でも騒いでたよね。 今すぐふたりに着てほしい~って
瑞希:あはは、そうそう! ねえまふゆ、今度奏も誘って一緒に行かない?
まふゆ:一緒に……?
絵名:うん。……いつになるかわかんないけどさ、 時間見つけて行こうよ
まふゆ:…………
まふゆ:……考えておく
絵名:(今、私達がまふゆにできることは——何もない)
絵名:(……すごく悔しいし、ムカつくけど……)
絵名:(でも……せめて、今この時間だけは 家のことを忘れられるといいな……)
第 5 话:意思表示の果てに
まふゆ:(……なんでだろう)
まふゆ:(予備校から帰る時は、胸の奥が冷たかったのに……)
まふゆ:(ふたりと話してる時は、あたたかくなる)
まふゆ:(——ずっと、このままいられたら……)
まふゆ:……あ、メッセージ……
まふゆの母:まふゆ、お母さん信じてるわ
まふゆの母:まふゆは、夢を叶えるために必要なことを ちゃんとわかってるって
絵名:……どうしたの?
まふゆ:——そろそろ門限だから、帰らないと
瑞希:あ……もう、そんな時間なんだ
瑞希:——まふゆ、大丈夫?
まふゆ:……うん、少し楽になったから。 ふたりともありがとう
絵名:……じゃ、私達もそろそろ帰ろっか。 ちょうど食べ終わったところだし
瑞希:だね、行こっか!
センター街
瑞希:今日はすっごく楽しかったな~。 またみんなでおしゃべりしようね!
まふゆ:……うん……
まふゆ:…………
絵名:——ねえ、まふゆ
まふゆ:……なに?
絵名:ニーゴのこと、お母さんに知られたのは 大変だと思うけど……
絵名:嫌なことは、ちゃんと嫌だって言いなさいよ
絵名:……あんたのこと守れるのは、あんたしかいないんだから
まふゆ:…………
まふゆ:…………わかった
まふゆ:(……嫌なことは、嫌だって言う……)
まふゆ:(……嫌な、こと……)
まふゆ:…………っ
まふゆ:(このまま、ニーゴで活動できなくなったら……)
まふゆ:(一緒に音楽が作れなくなったら、私は——)
まふゆの母:——ねえ、まふゆ? もう夜中まで勉強するのはやめたほうが いいんじゃないかしら
まふゆ:…………そうだ、参考書買わなきゃ
???:——まふゆ?
まふゆ:えっ……
まふゆの父:偶然だな、予備校の帰りか?
まふゆ:あ……お父さん。 うん、本屋に参考書を探しに行こうと思ってたんだ
まふゆの父:そうだったのか、まふゆは勉強熱心だな。 それならお父さんが買ってあげるから一緒に行こう
まふゆ:あ……
まふゆ:——ありがとう、お父さん
朝比奈家 リビング
まふゆの母:——さあ、ふたりとも。 今日はふたりが好きなビーフシチューを作ったから たくさん食べてちょうだいね
まふゆの父:ありがとう、いただきます
まふゆ:……うん。とっても美味しいよ、お母さん
まふゆの母:ふふ、よかった。 それにしても、今日はふたりが一緒に帰ってくるなんて びっくりしちゃったわ
まふゆ:お父さん、いい参考書を買ってくれてありがとう。 これでたくさん勉強するね
まふゆの母:よかったわね、まふゆ
まふゆの父:だけど、まふゆは夜中も頑張ってるみたいじゃないか。 たまには息抜きも必要だぞ?
まふゆ:あ……
まふゆの母:それなら大丈夫よ。 ついこの前、まふゆと話したの
まふゆの母:受験勉強を頑張るのは偉いけれど、夜は勉強を控えて ちゃんと眠るようにしましょうねって
まふゆの母:ね、まふゆ?
まふゆ:……それは……
絵名:嫌なことは、ちゃんと嫌だって言いなさいよ
まふゆの父:まふゆ、どうしたんだ?
まふゆ:あ、えっと……そのことなんだけど……
まふゆ:夜、勉強できなくなるのは、その……
まふゆ:……嫌、なの
まふゆの母:……あら、どうして?
まふゆ:……あ、そ、その……やっぱり、受験のことを考えるのなら もっと勉強したほうがいいと思うんだ
まふゆ:狙ってる医大は、どこも倍率が高いし、 他の子よりもたくさん努力しないと 受からないかもしれないから
まふゆの母:…………
まふゆの父:うーん、まふゆの言うこともわかるな。 まふゆは頑張ってるが、他の子も 同じように努力しているはずだし
まふゆの母:そうね。たしかにわかるわ。 でも……
まふゆの母:——理由は本当に、それだけなのかしら?
まふゆ:え……
まふゆの父:……どういうことだ?
まふゆの母:ふふ、ちょっと聞いてみただけよ
まふゆの母:みんな一生懸命に頑張っているから、 まふゆが焦る気持ちもわかるけれど…… 聞いた話じゃ、記憶って寝ている時に定着するらしいのよ
まふゆの母:頑張って詰め込んでも、 覚えられなかったら意味がないでしょう?
まふゆの母:だから夜はちゃんと眠って、 日の出ているうちに勉強すればいいんじゃないかしら
まふゆの父:ああ、なるほど。お父さんも同感だ。 夜更かしして、体調を崩してもよくないしな
まふゆ:でも、私、は……
まふゆの母:あら——まだ、何かあるの?
まふゆ:あ……
まふゆの部屋
まふゆ:(……駄目、だった)
まふゆ:(嫌って、言ったのに……)
まふゆ:(このまま、もし本当にニーゴの活動が できなくなったら、私は……)
まふゆ:…………もう、私は……
誰もいないセカイ
まふゆ:…………
まふゆ:(……やっぱり、ここは落ちつく)
まふゆ:(何もなくて——静かで……)
まふゆ:(……何も、考えないで済む)
まふゆ:……もう、これ以上……
まふゆ:——何も、できないのかな……私は……
???:……話に聞いたとおりだな
KAITO:——お前は本当に、それでいいのか?
まふゆ:え……?
第 6 话:認めたくない
奏の部屋
奏:(まふゆのお母さんと会うのは、明日か……)
奏:(まふゆのために……ちゃんと、話さなきゃ)
奏:(でも……)
メッセージ:『あの子が今、受験生だからです』
メッセージ:『あの子には、音楽とは別に目指す夢もあります。 もし、雪のことを友達として想ってくれているのであれば、 今は勉強に集中させてあげてくれませんか?』
メッセージ:『——それが、あの子の将来を狂わせるかもしれない、 としてもですか?』
奏:(今、ニーゴで一緒に曲を作り続ける—— それは、今のまふゆのためにはなると思う)
奏:(でも、その先の……まふゆの夢を、わたしは知らない)
奏:(だから、もし……まふゆのお母さんが言ってるように 夢のために、勉強に集中しなきゃいけないなら……)
奏:…………
奏:(……何が……正しいんだろう……)
奏:……いろいろ考えちゃってダメだ……
奏:(少し……ミクに会いに行こうかな……)
誰もいないセカイ
奏:ミク……どこにいるんだろ……
奏:あ……ミク。 そんなところにいたんだ
ミク:……奏……
奏:……どうしたの? 何か——
???:——だってもう、どうしようもないじゃない……!
奏:……っ、あの声……
奏:あれは……カイト? でも、どうして……
まふゆ:私は『嫌』って言ったの……! 音楽をやりたいっていうことも、伝えたの!
まふゆ:でも……! それでも、聞いてもらえなかった……
まふゆ:これ以上、どうすればいいって言うの……!?
KAITO:——うるさい、少し落ち着け
KAITO:そもそも、聞いてもらえないくらいで諦めるなら、 お前の想いはその程度ってことだ
KAITO:だが、違うだろ。 自分に嘘をつくな
まふゆ:……っ! 嘘なんて、ついてない……。私は……!
KAITO:まあ、それでいいなら好きにしろ
KAITO:だが——さっきも言ったが 今のままだと『本当の自分』は見つからないだろうな
まふゆ:…………!
KAITO:——このままで、いいのか?
KAITO:いいと思ってないから、ここにいるんだろ。 ——違うか?
まふゆ:……私、は……
KAITO:このまま、これ以上何もできないと思うなら、 想いを殺して生きればいい
KAITO:それができないなら……
KAITO:——今みたいに噛みつけ
まふゆ:噛み……つけ……? って…………
まふゆ:お母さんに……? そんなこと、できるわけ……
KAITO:……そんな悠長なことを言っている場合じゃないはずだ
KAITO:相手はお前を……お前の想いを殺そうとしてるのに、 情けをかける必要があるのか?
まふゆ:…………殺す……?
まふゆ:——違う……
まふゆ:お母さんは……私の想いを、殺そうなんて……
KAITO:……いい加減、目をそらすのはやめろ
KAITO:本当は、わかってんだろ。お前はただ——
まふゆ:……違う、……違う! お母さんは……!
奏:あ、まふゆ……っ
KAITO:……チッ、逃げたか
リン:カイト、言いすぎ
レン:ま、まふゆちゃん……苦しそうだったよ……
KAITO:あいつにはここまで言わないと伝わらないだろ。 俺は、お前達みたいに甘やかすつもりはないからな
ミク:…………
奏:…………
奏:(……まふゆ、お母さんに音楽をやりたいって伝えてたんだ)
奏:(でも、……それでも駄目だった)
奏:(わたしがまふゆのために、何が言えるのかは…… まだ、わからない)
奏:(わからないけど—— わたしに伝えられることがあるのなら、伝えなきゃ)
奏:(今のままじゃ、まふゆは……)
奏:(……明日、わたしが伝えられることを話そう)
奏:(まふゆのお母さんに……まふゆが苦しんでることを、 わかってもらえるように)
奏:——それがきっと、わたしにできることだ
第 7 话:『お母さん』
翌日
宮益坂
奏:えっと……待ち合わせ場所は、この辺りだよね……
奏:(今日は、ちゃんと話そう。 まふゆのこと……)
奏:(まふゆのお母さんも、きっと——まふゆのことを想ってる)
奏:(だからきっと……音楽ができなくなることで まふゆが苦しんでるってことを伝えられたら、 少し、考え直してくれるかもしれない)
奏:(——だから、わたしも嘘をついたり、ごまかしたりしないで ちゃんと話し合って、まふゆにとって 一番いい解決方法を見つけよう)
奏:——あ、あの人……
奏:(……まふゆに、似てる。もしかして……)
まふゆの母:……もしかして、Kさんかしら
奏:あ……はい、宵崎奏です。 えっと、まふゆさんにはいつもお世話になっています
奏:今日はよろしくお願いします
まふゆの母:ふふ、雪の母です。 よろしくね、宵崎さん
まふゆの母:このあいだは、ごめんなさい。 チャットで文章を書くのは慣れてなくって、 少し冷たく見えてしまったかもしれないわ
奏:いえ、そんな…… わたしも、チャットはあまり得意じゃないので……
奏:(よかった……思ったより、優しそうな人だ)
まふゆの母:それより——宵崎さんは、まふゆの名前を知っているのね
奏:はい。何度かオフで……あ、実際に会って話しているので
まふゆの母:あら、そうだったの……
まふゆの母:それじゃあ、今日はいろいろな話ができそうね。 ゆっくり座って話せる場所へ行きましょうか
奏:は、はい……
ホテル内のカフェ
まふゆの母:ふふ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。 ここはとても信頼できる場所だから
まふゆの母:でも、たしかに私も最初来た時は緊張したわ。 とっても豪華で、何から何まで立派なんですもの
まふゆの母:だけど大丈夫よ、すぐに慣れるわ
奏:そ……そうなんでしょうか……
まふゆの母:ええ。だから、のんびり寛いでちょうだい
まふゆの母:まふゆのお祝いごとには、いつも家族でこのホテルに来るの。 家族みんなの特別な場所なのよ
奏:…………
まふゆの母:ああ、ごめんなさいね。 まふゆのお友達と話せるのが楽しくて、 ついしゃべりすぎちゃったわ
まふゆの母:ええと……ケーキセットでいいかしら。 ここのケーキ、とっても美味しいからぜひ食べてちょうだいね
奏:あ……はい。 ありがとうございます
まふゆの母:——それで、なんだけど
まふゆの母:宵崎さんは、いつ頃からまふゆとお友達になったの?
奏:いつから……
奏:えっと……だいたい2年くらい前です
まふゆの母:そう……。 普段、まふゆとはどんなことをしているの?
奏:音楽サークルで、一緒に曲を作ってます。 まふゆさんには、作詞も担当してもらっていて……
まふゆの母:ああ、あれね。 悪いとは思ったんだけれど……少しだけ見させてもらったわ
まふゆの母:曲も、とても素敵だったわ。 みんなで音楽を作るなんて、素敵な趣味ね
奏:あ……ありがとうございます
まふゆの母:ふふ、私もよくクラシックを聴いたりするんだけど…… 自分で作る、ということは考えたこともなかったから まふゆが音楽をやっているって知った時は驚いたわ
まふゆの母:ああいう曲を作るのって、結構大変なんじゃない?
奏:あ……いえ、そこまでじゃないです。 インスピレーションがわかない時はちょっと大変ですけど……
奏:サークルのメンバーとか、まふゆさんに いつも助けてもらっています
まふゆの母:そうなのね。 ふふ、まふゆが活躍しているみたいで嬉しいわ
まふゆの母:——でも、そろそろみんな受験勉強が忙しくなるんじゃない? まふゆから聞いたんだけど、同い年の子達で 集まってるんでしょう?
まふゆの母:宵崎さんも、勉強と音楽を両立させるのは 大変なんじゃないかしら
奏:(……空気が、変わった)
奏:……そう、ですね。受験は、全員じゃないんですが……
奏:それに、わたしは……その……受験勉強は、してないので
まふゆの母:——あら、そうなのね
まふゆの母:それなら……宵崎さんは大学受験をする気はないのかしら?
奏:……今はまだ、考えられていません。 わたしにとっては、受験よりも……音楽が大事なので
まふゆの母:——そう
まふゆの母:……自分のやりたいことが ちゃんとあるなんて、素敵ね
奏:(思ったより、好意的に受け止めてくれてる……)
奏:(だけど……)
奏:(背中が——冷たい)
まふゆの母:でも……この前、メッセージでも伝えたけれど まふゆにも、あなたと同じでやりたいこと——夢があるのよ
まふゆの母:医者になるっていう、素敵な夢が
奏:医者……?
奏:(それが……まふゆの夢……? そう、だったんだ……でも……)
奏:(なんだろう……この、違和感……)
まふゆ:『わからないの。毎日生きてるはずなのに 楽しいことも嬉しいことも感じられない』
まふゆ:『全部、他人事みたい』
まふゆ:『でも何かが決定的に足りてないことだけわかって……』
まふゆ:『こんなの、言葉になんてできない』
奏:(……まふゆは最初、自分がどうしたいのかさえ わからないって言ってた)
奏:(わからなくて……消えたいと思ってた)
奏:(もしも、まふゆの夢が医者で、 本当にそれが一番やりたいことだとしたら——)
まふゆ:私は『嫌』って言ったの……! 音楽をやりたいっていうことも、伝えたの!
まふゆ:でも……! それでも、聞いてもらえなかった……
まふゆ:これ以上、どうすればいいって言うの……!?
奏:(あんな風には、言わないんじゃないかな)
奏:(……この人にとって、 まふゆを想う気持ちは本当かもしれない……けど)
まふゆの母:——だからね、今日はまふゆの夢のために もう一度お願いしたいと思っていたの
まふゆの母:あの子のためにも—— せめて受験までのあいだは、距離を置いてもらえないかって
奏:……たしかに、勉強は大事だと思います
奏:でも……今のまふゆにとって、音楽は必要だと思うんです
まふゆの母:ええ、勉強には息抜きは大事だものね
奏:それも——そうですけど……、そうじゃなくて——
奏:わたしは——まふゆさんが、音楽をやりたいって 言っていたのを聞いたんです
奏:だから……勉強の合間に、少しだけでも…… 音楽をやることを、許してあげてほしいんです
奏:それがきっと、今のまふゆさんにとって——
まふゆの母:——ええ、もちろんよ
奏:……え?
まふゆの母:私もさっき言ったでしょう? 息抜きは大事だって
まふゆの母:それに……受験が終わるまでのあいだだけで、 ずっと音楽を禁止するつもりはないわ
奏:そう…………ですか……
奏:(まふゆのお母さんは、音楽活動を 全部否定してるわけじゃない……?)
奏:(……だったら、話し合う余地はあるのかな。 わたしがちょっと、先走りすぎちゃった、だけ……?)
まふゆの母:——でもね、やっぱり音楽サークルは やめてほしいと思ってるの
奏:え……
まふゆの母:私はあんまり詳しくないんだけど…… 締切とかもあるんでしょう?
まふゆの母:歌詞を作るのも時間がかかると思うし……。 自分のペースで楽しむ分ならいいんだけれど、 活動を気にして、勉強に集中できないこともあると思うの
まふゆの母:特に、まふゆは優しいから……。 今は勉強をしたいと思っていても、 言い出せなかったりするんじゃないかしら
奏:で、でも……それじゃ駄目なんです
奏:わたし達と曲を作ることが、 まふゆに必要だって思うから……!
まふゆの母:……あら、どうしてそこまで必要だと思うの?
奏:それ、は……
奏:(まふゆを救うため……っていうのは、 どう言ったらわかってもらえるんだろ)
まふゆの母:……気を悪くしないでちょうだいね
まふゆの母:2年間もまふゆと一緒に音楽を作ってきたんだもの。 あなたも、まふゆも——離れ離れになってしまうのは とてもつらいと思うわ
まふゆの母:だけどこの際、率直に言うとね
まふゆの母:音楽もサークル活動も…… あの子の人生には必要ないと思うのよ
奏:…………!
まふゆの母:だから、まふゆのことを想うのなら—— あの子にサークルをやめるよう勧めてもらえないかしら
まふゆの母:あなたの口から聞いたなら、 きっと、あの子も――納得してくれるはずよ
奏:(……違う)
奏:(……やっぱり、違う……!)
奏:(まふゆのお母さんが、まふゆのことを—— まふゆの夢のことをすごく考えてるのは、わかる)
奏:(でも……そうじゃない。違うんだ。何かが——)
奏:(わたしが知ってる、あたたかさとは、何か——)
第 8 话:重ならない音
まふゆの母:——じゃあ、そろそろいいかしら。 まふゆと仲良くしてくれてありがとう
まふゆの母:サークル活動、頑張ってね
奏:……!
奏:(このままじゃ駄目だ……! このままじゃ、まふゆは——)
奏:……っ、待ってください!
まふゆの母:——あら、どうしたの?
奏:まふゆは……
奏:……まふゆは前に、消えたいって言ってた時があったんです
まふゆの母:消え、たい……?
奏:はい。それに——自分が何をやりたいのか わからないって言っていたんです
奏:でも——
まふゆ:『今は、みんなと曲を作りたい、と思う』
奏:そんなまふゆが、わたし達と音楽をやりたいって 言ってくれたんです
奏:だから——勉強も大事だとは思うんですけど、 サークルで活動することも許してもらえませんか?
まふゆの母:…………
奏:お願いします……! 今のまふゆから、音楽をとったら、まふゆは——
まふゆの母:あの子……そんな風に思っていたのね
奏:……! そうなんです。だから——
まふゆの母:そうよね……。 あの子は真面目で、すごくいい子だから……
まふゆの母:きっと、学校で嫌なことがあったり、 テストでいい点が取れなかったりして、 落ち込んでしまっていたのね
奏:…………!
奏:(……違う……)
まふゆの母:ありがとう、宵崎さん。 そんなあの子の支えになってくれて
まふゆの母:次からは、私もあの子の話を、よく聞いてみるようにするわ
奏:(違う……!!)
奏:本当に……本当にそう思うのなら、 今のまふゆの本当の気持ち—— 本当にやりたいことを聞いてあげてください
奏:そうすればきっと、まふゆにとって サークルの活動が必要なんだって、 わかってもらえると思います
奏:それに……どうして今、まふゆが苦しんでいるのかも
まふゆの母:……そうね
まふゆの母:わかったわ。本当にありがとう、宵崎さん
まふゆの母:そうよね、ちゃんとまふゆの気持ちを聞かないとだめよね。 ちゃんと話し合って——
まふゆの母:——サークルで音楽をやるよりも、 医者になるほうがまふゆのために一番いいってことを 改めて理解してもらわないと
まふゆの母:ちゃんと話し合ったら、きっと…… まふゆの苦しい気持ちも、消えるはずだものね
奏:…………
奏:(……この人は……)
奏:(この人は……まふゆのことを、本当は考えてない)
奏:(……考えてるって、思い込んでるだけだ)
奏:(だって——)
数年前
幼い奏:……お母さん、大丈夫?
奏の母:ええ、ごめんね奏。 今日はみんなでピクニックをしようって言ってたのに お母さんのせいで出かけられなくなっちゃって
幼い奏:ううん、わたしはいいの! ピクニックはまた今度できるから
幼い奏:だから、早く元気になって みんなで一緒におでかけしようね
奏の母:ええ、またみんなで綺麗なお花を見たいものね
奏の母:……う……
幼い奏:あ……! お母さん、大丈夫? ちょっと横になったほうがいいよ
奏の母:……大丈夫よ、お父さんのオルゴールを聴けば元気になるから
幼い奏:ねえ、お母さん……。 お母さんは、お父さんのオルゴールを聴くと 幸せな気持ちになるんだよね?
奏の母:ええ、そうよ。 お父さんの作る曲は、とても優しいから。 元気がない時も心があたたかくなるの
幼い奏:そうなんだ……
幼い奏:だったら、わたしもお父さんみたいな曲を作る。 そうしたら、お母さんはもっと幸せになれる?
奏の母:奏……
奏の母:……お母さんのためじゃなくて、 奏が本当にやりたいことをしていいのよ
幼い奏:わたしが、やりたいこと……?
奏の母:ええ。奏がお父さんみたいな曲を作れるようになったら すごく素敵なことだとお母さんも思うわ
奏の母:でも……奏が、奏自身が幸せに過ごしてくれれば、 お母さんは、それが一番幸せなのよ
幼い奏:お母さん……
幼い奏:——うん!
奏:(——あの時、お母さんはわたしのことを 一番に考えてくれてた)
奏:(わたしの幸せ——わたしの、気持ちを)
奏:(でも——)
奏:(でも……この人は違う)
奏:(まふゆを……まふゆ自身の気持ちを、考えてない)
奏:(少なくとも今、わたしには——そう見える)
奏:…………すみません。それはやっぱり、違うと思います
まふゆの母:……あら、何が違うの?
奏:あなたは、まふゆのことを本当に考えているわけじゃなくて ——まふゆの気持ちを、抑え込んでるように見えるから
まふゆの母:あら……心外ね
まふゆの母:どうして、そう思われてしまうのかしら
奏:…………
まふゆの母:まふゆはね——私にとって、何よりも大切な子なの
まふゆの母:小さい頃からとても優しくて、真面目ないい子で—— 私は、あの子を世界で一番幸せにしたいと思っているのよ
まふゆの母:誤解されてしまっているのは悲しいけれど、 あの子のためを考えているというのはわかってほしいの
まふゆの母:だって、私はまふゆの親だもの
奏:……っ!
奏:(そう、親だから……。 この人はまふゆの親だから、 わたしは、どこかにあたたかいものがあるって思ってた)
奏:(でも……違うんだ……。親だからって……、 必ずそうだってわけじゃない)
奏:(このままじゃ、駄目だ。 このままだと、まふゆはこの人に壊される)
奏:(自分の想いを殺して、お母さんの願いを叶えようとして……)
奏:(そしたら、まふゆは——)
奏:……今の気持ちをどう表現すればいいのかわからない
奏:わたしは……あなたがまふゆのことを心配して 音楽をやめさせようとしてるんだって、 ここに来るまでは思ってた
奏:でも……そうじゃなかった
奏:どれだけあなたの言葉をちゃんと聞いても…… まふゆの母親だからって考えても……
奏:わたしは……あなたのことを、信じられない
まふゆの母:…………
奏:だから……今、決めました
まふゆの母:……何を?
奏:わたしは……
奏:わたしは——あなたにどう言われても、 まふゆのそばから離れない
まふゆの母:…………そう、残念ね
まふゆの母:まふゆのことを本当に大切に想ってくれているのなら わかってくれると思っていたけど、 ……そうじゃないみたいね
まふゆの母:そろそろ帰ったほうがいいわ。 おうちのかたも心配するだろうし
奏:……わかりました
まふゆの母:——今日はありがとう、宵崎さん。 話せてよかったわ
まふゆの母:でも、私達が今日会ったということは、 まふゆには秘密にしておきましょう
まふゆの母:今は、勉強に支障をきたすことは避けたいの
奏:わたしも、余計な心配はさせたくありませんし、 そのことについては同意です
まふゆの母:ふふ、よかったわ
まふゆの母:それじゃあ、さようなら
まふゆの母:ああ、それと老婆心だけれど—— 宵崎さんも、自分の将来について後悔しないように ちゃんと考えたほうがいいわよ
奏:……はあ……
奏:……胸が、苦しい……
奏:(まふゆは、ずっとあの冷たさの中で、生きてきたんだ……)
奏:(…………助けたい……)
奏:(どうにかしてまふゆを助けたい、けど…… わたしに何ができるんだろう)
奏:(あの人の考えは、絶対に変わらない)
奏:(でも……まふゆはきっと、あの人が正しいって信じてる。 ……信じたがってる)
奏:(まふゆの——お母さん、だから)
奏:(……だけど、このままじゃ、まふゆは——)
奏:(今のわたしにできるのは…… まふゆがいつ戻ってきてもいいように、曲を作り続けること)
奏:(それと——)
奏:(……今まで当たり前みたいに思ってたけど、 わたしはお母さんとお父さんに……深く愛されてた)
奏:(その愛情を、まふゆにあげることは難しいけど……)
奏:(まふゆがもし、あの人と距離を置きたくなったら——)
奏:……わたしには、それくらいしかできない
奏:それしか、できない、けど……
奏:——もっと、まふゆのためにできることを、考えていこう