活动剧情

交響する街の片隅で

活动ID:90

第 1 话:圧倒される歌声

ライブハウス
志歩:店長、そろそろあがらせてもらいます。 お疲れさまでした
店長:ああ、お疲れさま。 そういえばもうすぐワンマンだね。 どうかな、気合いのほどは?
志歩:そうですね、みんな一生懸命練習してますよ。 本番が近づいてきて、どんどん集中力も上がってます
志歩:……一緒に楽器を握ってるだけで、 こっちも気合いが入るなってくらい、本当に
店長:そうか、楽しみだね。 今日もこれから練習かな?
志歩:あ、いえ。昨日からアンプの調子が悪いので、 このあと修理に行く予定なんです
店長:そうだったんだ。 ——じゃあ、もしよければこれ使ってよ
志歩:え? これって……クーポンですか?
店長:そうそう。ビビッドストリート……って知ってるかい?
店長:実はそこの外れに、弟が楽器店を開いたんだ。 よかったら行ってやってよ
志歩:そうなんですね……
志歩:わかりました。 じゃあ、ありがたく使わせていただきます
店長:うん、それじゃ頑張ってね
店長:Leo/needのワンマン、僕も楽しみにしてるよ
志歩:——はい。絶対に、いいライブにします
数時間後
ビビッドストリート
志歩:……修理代、結構安くなりそうだな。 また今度、店長にお礼言わないと
志歩:(それに、あんまり見ないモデルもあったし…… いろいろ試せて新鮮だったな)
志歩:(でも、やっぱり自分のベースが一番いい。 ずっと使ってるから、手にも馴染んでるし)
志歩:(……なんか、弾きたくなってきたな。 アンプは修理に出しちゃったし……セカイに行こうかな)
???:♪——————!!
志歩:(…………何、この歌)
志歩:(すごくうまい……。 えっと、あっちのほうから——)
志歩:……あ。 あの人、たしか……
杏:やっほー! Vivid BAD SQUADだよー! みんな、盛り上がってるー!?
志歩:そうだ。白石さん——
杏:♪————!! ————!!
志歩:(…………肌がビリビリする……。 聴いてるだけで、圧倒される……!)
志歩:(それに——なんだか、胸が痛くなる感じがする)
志歩:(前にシブフェスで聴いた時も、力強い歌だなって思ったのに。 あの時よりもうまくなってるんじゃ……)
志歩:……さすがだな
志歩:(……たしか、RAD WEEKENDっていう 伝説的なイベントを超えようとしてるんだよね)
志歩:(聴いてるこっちの胸が痛くなるくらい、 歌に気持ちが乗ってるのは……それだけ真剣ってことなのかな)
志歩:(——そうだ。私達も……)
翌日
教室のセカイ
志歩:(今日もみんな、いい調子だな)
志歩:(でも……昨日の——)
志歩:(昨日聴いた、あの圧倒される歌声……。 あれ、すごく良かった)
志歩:(私も、あんな風に力強い演奏をしてみたい。 聴いてくれた人の胸に、強く、強く響くような感じで……)
志歩:(そうだな。こう……アクセントをしっかり付けて、 音を粒立たせるイメージで——!)
レン:お、今いい感じだったな。 ベースが立って全体的に締まったっていうか
MEIKO:前とは見違えたね。 演奏自体も、かなりレベル上がってるし
志歩:——このまま最後まで通すよ!
一歌:うん!
咲希:……これで8曲終わりだね! みんな、お疲れさまっ!
ルカ:ふふ。それにしてもみんな、 スタミナもついたし、演奏技術も前より上達してるわね
穂波:うん、練習の成果がでてるね
リン:でもでもっ! 今日一番すごかったのは、しほっちだよね!?
MEIKO:たしかに、いつも以上にキレが良くて、 音に気持ちが乗ってたね
リン:何かいいことでもあったとか!?
志歩:そういうわけじゃないけど……、 でも似たような感じではあるかもね
レン:え?
志歩:友達の友達が、すごい歌を歌っててさ
志歩:それを聴いてたら、なんか気合い入ったんだ。 いてもたってもいられなくなったっていうか……
一歌:へえ……。 志歩にそう思わせるなんて、本当にすごい子なんだろうな
志歩:あ、一歌は多分知ってるよ。 こはねと同じチームの白石さん
一歌:え、白石さん? そうだったんだ……!
一歌:たしかに、白石さんは本当にうまかったな……。 前に歌を教えてもらった時も、すごく参考になったし
ミク:へえ……白石さん、か。 私もその子の歌、聴いてみたいな
志歩:最近、自分達のイベントを開いてるらしいし 興味あるなら、今度一緒に行ってみる?
ミク:いいの? もし聴けるなら行きたいな
志歩:わかった。 それじゃ、今度こはねに聞いてみるよ
咲希:こはねちゃんにはワンマンのチラシでもお世話になってるし、 みんなで応援に行きたいね~!
穂波:……ねえ、みんな。 そのチラシのことで、少しいいかな?
穂波:ワンマンのチラシなんだけど、 実はこはねちゃんが、仕上がり見本を用意してくれてるんだ
咲希:おお~! こはねちゃんにお願いしてた 新しいチラシ、そんなに進んでたんだね!
穂波:それで、ワンマンまで時間もないし、早めに入稿したいから 土曜日に受け取りに行きたかったんだけど……
一歌:何かあったの?
穂波:うん、実は家族で遠出しなきゃいけなくなっちゃって…… その日、受け取りができなそうなの
穂波:だから、誰か代わりに行ってもらえたら すごく助かるんだけど……どうかな?
志歩:……土曜日か。 それなら、私が行ってこようか?
穂波:え、本当……!?
志歩:うん。その日はバイトも早くあがるし、 帰りに寄ってこれると思う
穂波:そうなんだ……! ありがとう、志歩ちゃん!
志歩:それで、場所はどこなの?
穂波:えっとね、ビビッドストリートの——
志歩:WEEKEND GARAGE……

第 2 话:バンドとは違う音

ビビッドストリート
ミク:『——へえ、ここがビビッドストリートか』
ミク:『なんか、おもしろい場所だね。 歌ってる人がたくさんいて、音楽であふれてて』
志歩:うん。 この辺、音楽やってる人多いんだよね
志歩:これから行く白石さんちのお店も、 この辺では有名なライブカフェなんだ
志歩:たまに白石さんがお店で歌うこともあるらしいし、 今日聴けたらいいね
ミク:『ふふ、そうだね』
ミク:『志歩や一歌がそれだけ言うなんて どんな子なんだろうって気になってたから、 見れるだけでも嬉しいよ』
ミク:『連れてきてくれてありがとう、志歩』
志歩:えっと、次はここを曲がって……
志歩:——あ。あのお店っぽいな
志歩:じゃあ行こう。見つからないように隠れててね
ミク:『うん』
WEEKEND GARAGE
杏:いらっしゃーい!
杏:……あっ、日野森さん!
志歩:どうも。こはねと約束してたんだけど……いる?
杏:うん! フライヤーのことだよね? ちょっと待ってて
杏:こはねー! 日野森さん来たよ~
こはね:志歩ちゃん! ごめんね、来てもらっちゃって
志歩:ううん。むしろ私達がお願いしてるんだから、 謝らなきゃなのはこっちでしょ
杏:ふふっ。それにしても宮女の子がうちに来てくれるなんて 珍しいから、なんか嬉しいな~
杏:じゃあふたりとも、向こうのテーブル使ってね!
こはね:うん! こっちだよ、志歩ちゃん!
志歩・彰人:『……あ』
彰人:お前、たしか文化祭の……
志歩:ゾンビオオカミで怖がってた人だ
彰人:はあ? 別に怖がってねえ! 驚いただけだ、あん時は
冬弥:あの時のゾンビオオカミはリアルだったからな
冬弥:だが……そうか。 小豆沢の待ち合わせ相手は日野森さんだったのか
こはね:うん! そういえばシブフェスの時、 みんなで志歩ちゃん達の演奏聴いたよね。 すごくかっこよくて、ドキドキしちゃったよ!
志歩:ありがと。あの時は私達もいい演奏ができたと思う
志歩:それに、こはね達もすごくよかったよ。 力強くていい歌だった
こはね:えへへ、よかった……!
杏:私達も、もっと頑張らなきゃね!
志歩:……そういえば、白石さん。 このあいだ、夜にそこの通りで歌ってたよね
杏:えっ?
志歩:集中してたみたいだから声はかけなかったけど…… なんていうか、すごい迫力だった。胸が痛くなるくらい
こはね:胸が、痛くなる……?
杏:……あ~、みんなとの練習終わったあとに 残ってやってたやつかな? つい熱中しちゃって
杏:もっと感情を乗せて歌えるようになりたくて、 ちょっと練習してたんだよね
彰人:……そうか
彰人:まあ、そういう気分の時があるのもわかるが、あんま無茶すんなよ
杏:もー。わかってるよ、心配性だな~
杏:……でも、うん。ありがとね!
志歩:……?
杏:とにかく、前のイベントはこはねのおかげで大好評だったし 次はもっと気合い入れてかなきゃね!
お客さん達:お、杏ちゃんやる気だな~!
お客さん達:なんか聴きたくなってきちゃったな。 よかったら1曲歌ってよ!
杏:あ……うん! まあ、1曲くらいなら歌ってあげよっかな~
杏:ってことで、ごめん日野森さん! オーダーは父さんにお願いね
志歩:わかった、頑張って
志歩:(……さっきの白石さん、なんだったんだろ。 様子が変だった気がするけど)
志歩:(なんか、言っちゃいけないこと言ったかな)
こはね:あ、そうだ志歩ちゃん
こはね:フライヤーの見本なんだけど、お店の奥に 置かせてもらってるから、ちょっと取ってくるね
志歩:わかった。わざわざごめんね
こはね:ううん、大丈夫! 今から杏ちゃんが歌うみたいだから、 よかったら聴いて待っててね
杏:ん! マイクはオッケーだね!
志歩:(……まさか、本当に白石さんが歌ってくれるとはね。 これでミクにも聴かせてあげられるな)
志歩:ミク、白石さんが歌うみたいだよ
ミク:『そうみたいだね。聴かせてもらおうかな』
杏:さてと、じゃあいくよ~!
杏:♪————! ——————!
ミク:(……へえ、志歩が言ってたとおりだ。 あの子の歌、パワフルでかっこいいな)
ミク:(一歌が歌を教わったって言ってたのも、納得かも)
ミク:(——バンドとは全然違う迫力……。 ストリートミュージックって、新鮮でおもしろいな)
杏:♪————~~~~!
お客さん達:いいぞ、杏ちゃん!
お客さん達:もっと歌ってくれ~!
志歩:(すごいお客さんがノってる。 みんな白石さんの歌が好きって感じで……いい雰囲気だな)
志歩:(でも……)
志歩:(……なんだか、あの時と違う気がする)
志歩:(このあいだ聴いた歌の、あの胸が痛くなるくらいの迫力は……)
ミク:『志歩が言ってたとおり、 あの子、かっこよくていい歌を歌う子だね』
志歩:…………
ミク:『……志歩?』
志歩:……ああ、いや、なんでもない。 ただ——
こはね:おまたせ! フライヤーの見本持ってきたよ!
志歩:あ、うん。ありがとう
こはね:穂波ちゃんに相談を受けてたフライヤーの見本がこれだよ。 いくつか作ってみたんだけど、どうかな
志歩:へえ、文字のバランスだけでも結構印象変わるね。 どれがいいかな……
杏:……ふう。じゃ、こんなところで!
お客さん:いや~ありがとう! やっぱ杏ちゃんの歌は力強くていいな!
杏:ふふっ、ありがと、おじさん!
杏:(…………だけど)
杏:(……遠い。こんな歌じゃ全然遠い。 もっと、練習しないと)
ミク:杏は、『こはねに尊敬されるような相棒でいたい』から、 これからもずっと、自分の歌でこはねを ドキドキさせ続けたいって思ってる
ミク:でも——
彰人:——こはねが伸びだしたせいで、いつかそうできない時が くるかもしれないと思った……ってことか?
杏:(もっとたくさん練習して、もっとたくさん歌おう。 今、私にできることは……それだけなんだから……)
杏:じゃあね、日野森さん!
志歩:うん、それじゃ。 こはねも、いろいろと手伝ってくれてありがとう
こはね:うん! 役に立てたみたいでよかったよ。 みんなのワンマン、応援してるね!
志歩:こはねのおかげで、いいチラシになりそうでよかったな。 それに、白石さんの歌も聴けたし
志歩:でも……
ミク:『志歩、どうしたの?』
志歩:あ、ミク……
ミク:『さっき、白石さんの歌を聴いてた時も、 なんだか考え込んでなかった?』
志歩:……うん。さっきの歌もすごくよかったんだけど、 でもなんか、前聴いた時とは全然違ったんだよね
ミク:『違ったって、どんな風に?』
志歩:このあいだ聴いた時は、胸が痛くなるくらいの迫力があったんだ。 だけど、今日の歌はあの時みたいな力強さはなかった気がして……
志歩:……あんなにいい歌なのに、 どうしてこんな風に感じるんだろう……

第 3 话:偶然の再会

レッスンスタジオ
志歩:——もうこんな時間か。 そろそろ出る準備しないと
志歩:——あれ、メッセージ? ……母さんからだ
志歩:えっと……スーパーに寄ってほしい?
志歩:材料買い忘れたのかな。 ……しょうがないな
志歩:ま、今日はもう用事ないし、 さっさと買って帰ろう
スーパーマーケット
志歩:んー……うちのカレーって甘口だったよね。 ……パッケージ見覚えあるし、これかな?
志歩:あとは、ハチミツ……。 どこにあるんだろ
???:お、これ色いいな~。ちょっと高いけど、こっちにしよっと
志歩:(——ん? この声って)
志歩:あ、やっぱり。白石さん
杏:え、日野森さん!? こんなところで偶然だね!
杏:もしかして夕飯の買い物?
志歩:うん。母さんに頼まれて
杏:そっか、じゃあ私と一緒だねー。 私も父さんに頼まれて、お店の買い出しだから
志歩:お店の買い出し?
杏:そうそう。 落花生とか砂糖とか、サンドイッチの具材とかね
杏:いつもは業者さんに頼んでるんだけど、 今日はたまたま切らしちゃって
杏:ここって質もいいし品ぞろえも豊富だから、 急に材料切らしちゃった時は買いに来てるんだ
志歩:あー、たしかにいろんな物があるよね。 おかげでどこにあるのかわかんなくて、ずっとぐるぐる回ってるよ
杏:日野森さんは何探してるの?
志歩:えっと……ハチミツと、味噌と……
杏:あ~、それならたしか 奥のほうの棚にあったかも
杏:ほら、こっち! ついてきて!
志歩:え? あ、うん
志歩:——ふう、ようやく全部買えた。 手伝ってくれてありがとう、白石さん
志歩:……でも、お店の手伝いもあるのに、 つきあわせちゃってごめん
杏:全然、気にしないで! バーの時間までに戻ればいいって言われてるからさ
志歩:そう? それならいいけど……
志歩:ていうか、白石さんのお店っていいところだよね。 いろんな人に好かれてるのもわかる気がする
志歩:お客さんの雰囲気もいいし、 機材もしっかりしたのそろえてたし
杏:あはは、父さんがそういうのこだわるんだよね。 ていうか日野森さん、機材とか詳しいんだ
志歩:……まあ、ライブハウスでバイトしてるから。 ああいうのよく触ってて
杏:そうだったんだ! 私はそこまで詳しくないな~。歌うの専門だから!
志歩:なにそれ。 たしかに歌はすごくうまいけどね
志歩:(……あ、そうだ。歌……)
志歩:(どうしてあの時は、この前と違う歌いかただったんだろう)
志歩:(前に聴いた時の、 胸が痛くなるような、圧倒される感じ……すごかったのに)
志歩:(……それとも、あの日は特別な理由があったのかな。 だとしたら、何があそこまで……)
志歩:(……聞いてみようかな)
杏:……あれ? ねえ、あそこ見て!
志歩:え、なに?
杏:ほら、なんかイベントやってるみたい! 『お花見金魚展』だって!
志歩:お花見金魚展……? こんなのやってるんだ
杏:“お花見をテーマに、桜の木や金魚を展示しています”……。 駅前のアクアリウム展から出張してきてるんだって
杏:ふんふん……なーんかおもしろそうかも!
杏:あ、ねえ! 入場無料みたいだし、 よかったらちょっとだけ見ていかない?
志歩:え、私も?
杏:うん! ひとりで見るより、 一緒のほうが楽しいかなって
志歩:(……ま、少しならいいか。 買い物もそんなに急ぎじゃないし)
志歩:わかった。じゃあ行こうか
杏:やった! 行こ行こ~
お花見金魚展
杏:へえ、こんな感じなんだ~! すごい綺麗だね!
志歩:アクアリウムっていうと 薄暗いイメージだったけど、結構明るいんだね
杏:うんうん。それにいい匂いがする。 これって……桜の香りかな?
志歩:本当だ。こういう匂いがすると、 本当にお花見に来たみたいに感じるな
杏:それわかる! 私もなんかいいな~!って思ってたんだ
杏:金魚もいろんな種類がいるみたいだね。 ね、真ん中のおっきい水槽見にいこうよ!
志歩:うん、行ってみようか
志歩:……すごいな。これ、何匹泳いでるんだろう
杏:この水槽の中にも、いろんな金魚がいるねー。 おもしろい模様の子とかいるし!
杏:——あ、日野森さん! あの子達見て、あの子達!
志歩:あの子達って言われても……どれ? 金魚の見分けなんてつかないんだけど
杏:え~? ほら、あそこでくっついて泳いでる2匹! 目がくりくりしてて可愛くない!?
志歩:くっついて……あ、あれかな? ……本当だ。言われてみれば可愛いかも
杏:ふふっ、ずっとくっついてるよ。仲良さそうでいいな~。 親子なのかな、それとも友達とか?
志歩:わかんないけど……でも、なんかいいね
???:——あれ。 もしかして、白石さん?
杏:あ、絵名さん!?
絵名:やっぱり。白石さんも来てたんだ
絵名:えーと……そっちの子はお友達?
杏:はい! 買い物途中でばったり会って
志歩:(この人、見たことある。たしか穂波が、 幼稚園で撮ったっていう集合写真に写ってた人だ)
志歩:(穂波に、絵を教えてくれたっていう——)
志歩:日野森志歩です。 よろしくお願いします
絵名:日野森……
絵名:あなた、もしかして……雫の妹さん?
志歩:……え?

第 4 话:気になる横顔

お花見金魚展
志歩:えっと…… たしかに、日野森雫は私の姉ですけど……
絵名:あ、やっぱりそうだったんだ! ねえ、桃井愛莉って知ってる?
志歩:あ、はい。 姉と一緒にグループを組んでる……
絵名:そうそう! 私、愛莉と中学からの友達なんだ。 それで雫とも仲良くなって、たまに遊んでるの
志歩:あ……そうだったんですね。 姉がいつもお世話になってます。えっと——
絵名:ああ、私は東雲絵名。 よろしくね、志歩ちゃん
志歩:はい。よろしくお願いします、東雲さん
絵名:でも一緒に来てるなんて、 ふたりともこういうの好きなの?
杏:あー、そういうわけじゃないんですけど、 ただちょっと気になったっていうか……
志歩:……まあ、珍しいよね。 お花見と金魚って
杏:そうそう、それ!
絵名:あはは、たしかに珍しいかもね。 金魚ってお祭りくらいでしか、見る機会あんまないし
杏:絵名さんは、金魚とかアクアリウムとか好きなんですか?
絵名:あー、そういうわけじゃないけど…… 今日は絵の勉強がしたくて来たんだ
志歩:絵の勉強……ですか?
絵名:うん。実は私、普段から絵を描いてるんだけど 今よりもっと描けるようになりたくてさ
杏:でも、それで金魚なんですか? 動いてるのを描くって難しそう……
絵名:あはは、たしかにね。 金魚もそうだけど、水の動きって表現するのが難しいんだ
絵名:金魚が泳ぐ時に波打つ感じとか、気泡とか…… そういうのを絵で表現したいなって思ったんだよね
志歩:なるほど……。 結構難しそうですね
杏:水の表現とか、どう描いたらいいかわかんないもんね
絵名:あはは、そうだよね。 まあ、桜の花もあって映えそうだな~ってのもあったんだけど
杏:あ、それはわかるかも! 金魚も可愛いし、すっごくオシャレな絵になりそうですね!
絵名:そういうこと! じゃ、さっそくスケッチしよっかな
志歩:じゃ、私達は向こうのほうから回っていこうか
杏:だね!
杏:絵名さん、頑張ってくださいね!
絵名:うん、ありがと
絵名:ふたりも楽しんできてね
志歩:はい。じゃあ、失礼します
絵名:……さて、と。それじゃ描き始めよっかな
絵名:でも、どの子をモデルにしよう。 鱗の綺麗な子とか……?
絵名:そういえばさっき、白石さん達が話してたやつ——
杏:ふふっ、ずっとくっついてるよ。仲良さそうでいいな~。 親子なのかな、それとも友達とか?
絵名:くっついて泳いでる子がいるって言ってたっけ。 ……あ、あの子達かな?
絵名:……うん。なんか、いいな。 見てると、胸があったかくなる感じがする
絵名:——もし、一緒にいたい相手がいて、 あんな風におだやかに、ずっといられるんだとしたら……
絵名:……私、あの子達を描きたいな
志歩:それにしても、 金魚だけじゃなくて一緒に飾られてる桜も綺麗だな
杏:あ、それ私も思った! 金魚って夏の風物詩ってイメージだったんだけど、 春でも元気に泳いでるんだな~って
志歩:まあそれは……季節とか関係ないんじゃない? ずっと生きてるんだし
志歩:あ、この水槽の金魚、20年も生きてるんだって
杏:本当だ! すごいなぁ。 こんなに小さいのに、私達より長く生きてるんだ
志歩:(……これで一周できたかな。 真ん中の水槽は、あんまり見れてないけど——)
志歩:(——あ、東雲さんだ。 あれからずっと、あの水槽でスケッチしてたんだ)
志歩:(……あんなに真剣に……)
志歩:(……いや、真剣っていうか——)
絵名:違うな……
絵名:こうじゃない、もっと……
志歩:(……なんだか、苦しそうな顔……)
杏:……絵名さん、すごい集中力だね
志歩:……うん……
志歩:(あの人、あんなに苦しそうな様子で——)
志歩:どんな絵を描いてるんだろう……

第 5 话:2匹の金魚

お花見金魚展
絵名:よし……できた
絵名:(……でも、やっぱりまだまだだな)
絵名:(奥の金魚との遠近感、全然出せてない。 パースもちょっと崩れてるし……)
絵名:(陰影のつけかたも……足りてない。 水槽を反射する光の、複雑な描写まで手が回ってないから)
絵名:(……でも、ヒレで押される水の動きだけは……少しだけど、 うまく描けた気がする)
絵名:まだまだ、だけど……。 でも、前よりはうまく描けた……かな
杏:絵名さーん、お疲れさまです!
絵名:あ……ふたりとも。 展示はどうだった?
杏:さっき、フロアをぐるっと回ってきたとこです! どの金魚もすっごく綺麗でした!
絵名:そっか、それならよかった。 私もちょうど描き終えたところなんだ
志歩:お疲れさまです。 すごく集中して描かれてましたね
絵名:あはは、そうかもね。 ……今の私に描けるものは描けたかな
杏:——あの、絵名さん! よかったら絵、見せてくれませんか?
絵名:え? ああ、別にいいけど
絵名:——はい、これ
杏:わ……すごい! これって、そこの水槽でくっついて泳いでた子達ですよね!
志歩:水の表現も、すごくリアルですね。 2匹がゆっくり、おだやかに泳いでるってわかります
志歩:それに——ちょっとあったかい雰囲気まで、そのまま
絵名:あったかい雰囲気……
志歩:あ、はい。えっと——あの子達を見た時、 なんだか仲が良さそうだなって思ったんですけど……
志歩:あの時、いいなって思った雰囲気と同じものを、 この絵からも感じた気がして
杏:……うん、わかるよ! なんだかこの子達、すごく優しい気持ちで—— 一緒にいられて嬉しいって、そう思ってるみたい
絵名:……そっか。ありがとう、ふたりとも
絵名:(この絵はまだまだだし……足りないとこばっかりだと思う)
絵名:(でも、私が表現したかったものは——)
絵名:(あのくっついて泳いでた子達の、 おだやかで優しい雰囲気はちゃんと伝わったから)
絵名:——もっと、頑張ろう
杏:私から見たら十分うまいのに……。 絵名さんって、ストイックっていうか努力家ですよね
杏:そういうとこ、彰人も似てるかも
志歩:え? 彰人って……
志歩:もしかして、東雲くんのこと?
杏:そうそう! あれ、言ってなかったっけ。 絵名さんって彰人のお姉さんなんだよ
志歩:そうだったんだ……
絵名:彰人に似てるかって言われると、ちょっとわかんないけど……
絵名:……まあ、絵は本気でやってるからね。 最近は、目標……っていうか、やりたいこともあるから
志歩:やりたい、こと?
絵名:うん。実は私、音楽サークルで絵を担当してるんだ
絵名:あーっと、簡単に言うと…… サークルの子達が作った音楽に合う絵を私が描いて、 それを動画にして投稿してるんだけど……
杏:うわあ、難しそう……。 前聞いた時も思ったんですけど、本当すごいですね!
絵名:別に、そんなにすごくないよ
絵名:……実は前から、みんなが作ってくれる音楽に合う絵を 描けなくなってるなって感じてたんだ
志歩:え……
絵名:昔からすごいものを作る子達だったんだけど、 最近は特にみんな成長しててさ
杏:…………
絵名:だから——私も、みんなが作ったものを絵で表現したい
絵名:みんなが作った曲の世界観を——私の絵で、 ちゃんと、表現できるようになりたいの
志歩:(自分の絵で……)
絵名:だから今はただ、うまくなるために描くしかないんだ
志歩・杏:『…………』
志歩:(……そっか。 あの苦しそうな顔も、真剣さも……仲間のためだったんだ)
志歩:(仲間と、もっといいものを作りたいから——)
志歩:(……私も、もっと頑張らないとな)
杏:……そうだよね
杏:やるしか、ないよね
ショッピングモール
絵名:それじゃ、私はちょっと買い物して帰ろうかな
絵名:今日はありがとね、いろいろ話聞いてもらっちゃって。 ちょっと恥ずかしいけど
杏:いえ、聞かせてもらえてよかったです。 おかげで、気が引き締まったっていうか
志歩:私も、もっと頑張ろうって思いました。 みんなで、いい演奏にするために
絵名:……そう? それならよかったけど……
絵名:じゃあ、私はここで。 ふたりとも気をつけて帰ってね
志歩:はい、ありがとうございます。 それじゃ行こう、白石さん
杏:うん!

第 6 话:力強さの中には

レッスンスタジオ
志歩:(昨日は、東雲さんと話せてよかったな。 私も……)
志歩:(私も、音楽に向き合っていきたい。 今よりももっと——)
咲希:(今日もしほちゃん、いい音だな……ワクワクしちゃうよ~! 気持ちが音に乗ってるって感じ!)
穂波:(やっぱり志歩ちゃんはすごいな。 どんどん先に進んでいく……)
一歌:(私達も、追いかけなくちゃね……!)
志歩:(みんなの音、頼もしいな)
志歩:(私が前に進んでも、 一歌達はきっと……絶対に、私に並んでくれる)
志歩:(それなら、みんなが追いついてくれた時、 私達が今よりもずっと先にいられるように……!)
志歩:……ふう
穂波:今の演奏、すごくよかったね! 一歌ちゃんのサビもかっこよくて……
一歌:うん。志歩がすごくいい音出すから、私も……って思ったんだ
咲希:あ、それわかる! ついてくぞ~!って思ってがんばったもん!
志歩:……やっぱりそうだったんだ。 私も演奏をとおして、みんなの気持ちを感じたよ
志歩:——じゃあ、この勢いのまま、もう1回やろう
咲希・穂波・一歌:『うん!』
志歩:——みんな、お疲れさま
咲希:はー、今日もがんばったね~! ねえねえ、いつものカフェにちょっとだけ寄っていかない?
一歌:いいね。私も行きたいな
志歩:ごめん、私はパス。 これから修理に出してたアンプを受け取りに行かなきゃなんだ
穂波:あ……そっか、今日が取りに行く日だったね
一歌:それなら、今日は私達で行こうか
志歩:うん、また今度連れてってよ
咲希:じゃあ、しほちゃんが好きそうな新メニューが来るか、 ばっちりチェックしておくね!
志歩:はいはい
志歩:さて、と。じゃ行こうかな
志歩:……あ、そうだ
志歩:(せっかくあそこに行くなら、 ミクにも声かけていこうかな……)
ビビッドストリート
ミク:『志歩、また連れてきてくれてありがとね』
志歩:気にしないで。 アンプを取りに行く予定もあったし
志歩:それにミク、この通りを気に入ってたみたいだしね
ミク:『うん、やっぱりおもしろい場所だよね』
ミク:『たくさんの人が歌ってて、 音楽が好きって気持ちが街中から伝わってくるみたい』
志歩:たしかにね。この辺りは少し外れのほうだし、 歌ってる人もいないみたいだけど
ミク:『あ、でもそっちのほうから 歌が聴こえるよ』
志歩:本当だ。でも、この声って……
杏:♪——————!!
志歩:……やっぱり……
杏:♪————!! ————!!
ミク:『…………すごい』
ミク:『あの子の歌、お店で聴いた時と全然違うね』
志歩:…………うん
志歩:胸が痛くなるくらいの、迫力……。 前にこの通りで聴いた時と同じ感じだ
ミク:『胸が痛くなるくらい……か。 それ、わかる気がする。すごく一生懸命で……』
ミク:『なんだか、このあいだの—— 集中特訓の時の一歌達に、雰囲気が似てる気がする』
志歩:……え?
一歌:難しいことなんて、みんなわかってるよ
一歌:でも、それでも—— 私は本番まで、志歩を追いかけたい
ミク:『白石さんの歌、 まるで何かに追いつこうとしてるみたいだね』
志歩:そっか……そうだったんだ
志歩:今の白石さん、あの時のみんなに似てるんだ
志歩:(今日の練習でも、みんな…… 本当にすごい気迫で、演奏してくれた)
志歩:(白石さんにも、あの時感じた強さと同じものを……)
杏:……はぁ、はぁ……はぁ
杏:いったん、休憩しよっかな……
杏:えっと、飲み物は……もうないや。 買いに行かないと——
???:——これ、飲む?
杏:……え?
杏:あれ、日野森さん……? こんなとこでどうしたの?
志歩:この近くにある楽器屋に用があって、その帰り
志歩:これ、まだ開けてないからよかったら飲んで
杏:でも……いいの?
志歩:買ったけど、結局飲まなかったやつだし。 差し入れってことで
杏:……あはは。そういうことなら、 お言葉に甘えて、もらおっかな
杏:——ふう。生き返った~! ありがと、日野森さん
志歩:それならよかった
志歩:……さっきの歌、すごくよかったよ
杏:え?
志歩:なんていうか……すごく気持ちが入ってて、いい歌だった
杏:あはは……本当? でも別に、 そんないいって言われるものじゃないと思うけど……
志歩:——ううん、そんなことない
志歩:私は……
志歩:……今の歌を聴いて、仲間のことを思い出したから
杏:え……一歌ちゃん達を?
志歩:うん。なんとなくだけど……あの歌は——
志歩:あの歌は、すごく力強かった。どうしても一緒にいたい、 大事な人のことを考えて……追いかけてる、みたいな……
杏:…………
志歩:あ……ごめん。なんか急に語っちゃって
杏:……ううん。 それより、どうしてそう思ったの?
志歩:ああ、それは……私達のバンドの話なんだけど
志歩:——実は私、メンバーの中で一番、演奏歴が長いんだ
杏:そうなんだ……。 たしかに、前に日野森さん達の演奏を聴いた時、 ベースがすごくレベル高いなって思ったけど
志歩:うん。それで、前まではみんなに合わせて 演奏してたんだけど……
志歩:……最近、みんなが変わったんだ
杏:え……
志歩:絶対に追いつくから、全力で演奏してって言われて—— それで私も、このままじゃ駄目だって思って、 全力を出せるようになったの
志歩:あの時のみんなは、すごく、強い目で——
志歩:さっき歌ってた白石さんが、 あの時のみんなに似てると思ったんだ
杏:そっか……
杏:……すごいね、図星だよ
杏:私も——

第 7 话:同じ気持ち

ビビッドストリート
杏:私の父さん、元々はこの街で音楽やってたんだ
志歩:あ……うん、聞いたことある。 有名な人だよね
杏:そうそう! それでね、この街の仲間と一緒に、 3年くらい前にRAD WEEKENDっていうイベントを開いたの
志歩:それ、伝説的なイベントだったっていう……
杏:うん。本当にすごかったんだ。 会場中がひとつになって、 みんな声を出さずにいられないってくらい熱くなって!
杏:それで『あのイベントを超えよう!』って夢ができて…… 今は、チームのみんなで頑張ってる
杏:最近は私達も、仲間と一緒にイベント開いてるんだ。 このあいだなんか、すっごくいいイベントができてさ!
杏:みんな本っ当にすごいんだよね。 彰人はぐいぐいみんなを引っ張ってくれるし、 冬弥はものすごくいい曲作っちゃうし——
杏:こはねは……出会ってからずっと、自慢の相棒! 初めて聴いた時から、こはねの歌は、 いつも私をドキドキさせてくれるんだ
志歩:……たしかに、シブフェスで歌うこはねを見た時は驚いたな。 いつもとは雰囲気も違ったし
杏:何年も歌ってるってわけじゃないのに、すごいよね? びっくりしてる暇なんてないくらいの速さで成長してて
杏:……本当、すごすぎるくらいだよ。 このあいだのイベントも、こはねは——
杏:……私も、うかうかしてらんないってこと!
杏:それでなんか、ちょっと焦っちゃって。 少しでも時間がある時は、こうやって練習してるんだ
杏:私、絶対にRAD WEEKENDを超えたい。 でも今は、もう、私ひとりの夢じゃない
杏:こはねの……みんなの隣で、歌って、 みんなと一緒に夢を叶えたいから
志歩:(……焦っちゃって、か)
志歩:(白石さんくらい歌を歌える人でも、そんな風に考えるんだ)
志歩:(白石さんは、本当に強い気持ちで、真剣に——)
志歩:(大事な人達と一緒に…… 最高の演奏をするために——)
咲希:それで、ライブの日には、 きっと志歩ちゃんの隣に並ぶから……!
咲希:そしたら、みんなで手をつないでゴールしよう! 昔みんなでやった、かけっこみたいに!
杏:こはねの……みんなの隣で、歌って、 みんなと一緒に夢を叶えたいから
志歩:(それは、私だって……同じ気持ちだ)
志歩:大事な人達と一緒に夢を叶えたい。 そう思う気持ちは……私も、よくわかるよ
志歩:——私も、みんなと一緒にプロになりたいから
杏:日野森さん……
志歩:私と一緒に音楽をやりたい——そう強く願って、 追いかけてくれる仲間がいるから、私は頑張れてる
志歩:みんなが一緒にいてくれるおかげで、 私は……私達は、プロになる夢に近づけてると思う
志歩:……みんなの気持ちや演奏が、私に力をくれるから
志歩:だから、白石さんも——。 白石さんのその想いは、無駄じゃないと思う
志歩:きっと、チームをもっと高いところに連れていく…… 原動力のひとつになるんじゃないかな
杏:私の……想いが……?
志歩:うん。私は、そう思うよ
杏:…………そうだといいな
志歩:ねえ、白石さん。 もしよかったら、今度ワンマンでやる曲、聴いてくれない?
杏:……え? どうしたの、突然
志歩:さっきの白石さんの歌、すごく響いたから。 もらいっぱなしは趣味じゃないし
杏:……ええ~? 変な理由だなあ
杏:じゃあ、聴かせてもらおっかな
志歩:(咲希が作ってくれた新曲をかけよう。 みんなで作った練習用の音源は、いつでも持ってる)
志歩:(……この曲があれば、 ひとりで練習してても、私はひとりじゃない。 私の演奏を、いつもみんなが最高のものに変えてくれる)
志歩:(うん。アンプの調子も元どおりだ)
志歩:——じゃあ、始めるよ
杏:(すごく強い気持ちを込めて演奏してる。 キレがよくて、晴れ晴れした……いい音だな)
杏:(本気で音楽と向き合ってる。人生賭けても後悔しない、 そのくらい信じて疑わない熱量で——迷いなんか少しもない)
杏:(……かっこいいな。日野森さん)
志歩:——ふう
杏:……ありがとう、日野森さん。 なんか元気、出てきた気がする!
志歩:そっか。ならよかった
杏:ねえ、もしよければもう1曲、今度は一緒にやらない!?
志歩:え? 一緒にって……セッションってこと?
杏:うん! だってあんなにかっこいい音聴かされたら、 やっぱり合わせてみたいなって思うでしょ! ……どう?
志歩:——いいね。 私も白石さんとは合わせてみたかったし、やろっか
杏:本当!? やった!
志歩:それじゃあ、曲は——

第 8 话:交響する音と心と

ビビッドストリート
志歩:じゃ、始めよっか
杏:オッケー! じゃあ、いくよ
杏:♪——! ——! ——!
志歩:……!
志歩:(……最初から飛ばすな)
志歩:(……なんか、早く入って来いって言われてるみたい。 どう入ってこうかな)
志歩:(まずは、こんな感じで——)
杏:(……! この音、やっぱりいいな)
杏:♪————!! ♪————!!
志歩:(白石さん、さっきより気持ちいい歌声。 伸び伸びしてて、遠くまで響いてる)
志歩:(……あの、胸が痛くなる感じじゃない。 すごく楽しそうで——こっちまで弾んでくるみたい)
志歩:(こんなにいい歌を聴かされたら、私も——)
杏:(あ……今、演奏がちょっと変わった)
杏:(前に聴いた時も思ったけど、キレッキレの音だなあ。 なんか独特のグルーヴがあって、クセになりそう)
杏:(それに本当、楽しそうに演奏するよね、日野森さん。 音がどんどんノッていくのがわかる)
杏:(でも、私だって——!)
杏:♪————!! ————!!
志歩:(……白石さん、そういう歌いかたできるんだ。いいじゃん)
志歩:(それじゃ、次は——)
寧々:……『私は歌えないの……』
寧々:……なんか、違うな。しっくりこない。 もっと臆病なカナリアらしくできるように……
寧々:……できるように、ならないと
寧々:……はぁ
寧々:(臆病なカナリアは、自分の住んでる森を怖がってるから、 その気持ちに近付けるように、 ちょっと怖いこの通りに来てみたけど……)
寧々:(これだけじゃ、役作りには全然足りない気がする……)
寧々:(もっと、違う練習方法を考えていかないと。 いい方法が見つかったら、何度も練習すれば……)
寧々:(でも……それで本当に……)
???:♪————
寧々:(ん……歌声? あ、あそこにいるのって……)
寧々:白石さんと……日野森さん?
杏:♪————!!
寧々:……すごい……
寧々:(白石さんも、日野森さんも—— あんなにすごい演奏ができるんだ)
寧々:……わたしも、やらなきゃ
寧々:本気で追いつきたいなら、もっと全力でやらないと 届くわけない——
志歩:……ふう
杏:すっごい楽しかった~~! 結局何曲もやっちゃったね!
杏:歌ってたら、いいところで気持ちいいフレーズ入れてくるから なんかどんどんテンション上がっちゃった!
志歩:ふふ、私も。 それに、いい歌だったよ
志歩:白石さんの歌、とにかくパワフルだから。 私も今持ってる技術や弾きかた、 全部使っていろいろやってみたんだけど……
杏:そうそう! あのすごくゾクゾクする音なに!? びっくりしたんだけど!
志歩:あれは前に、ちょっとした遊びで ああいうアーティストの弾きかたを真似してみたことがあって……
志歩:普段はやらないやつだから、いい機会だったよ
志歩:そういう白石さんだって、 急にリズムの取りかた変えてなかった?
杏:え? まあ、つい気分良くなっちゃって。 だって私がアレンジ入れるたびに、違う弾きかたしてくるから
杏:ま、おかげですっごい楽しかったけど!
???:——あ、あの……
杏:え?
志歩:……草薙さん?
杏:あれ、こんなところでどうしたの? なんだか珍しいね!
寧々:あ、えっと……散歩してたら、ふたりの演奏が聴こえて……
杏:そうだったんだ。 あはは、すっごく熱中してたから もしかしたらうるさかったかな?
寧々:全然、そういうのじゃないの。 でも——
寧々:よかったら……わたしも、一緒に歌っていい?
杏:うん、もちろん!
杏:いいよね、日野森さん
志歩:うん、一緒にやろう
寧々:……! あ、ありがと……
志歩:じゃ、いくよ
杏:うん!
杏・寧々:『————♪』
寧々:(やっぱり、ふたりはすごいな……)
寧々:(日野森さんの演奏で、前に押し上げられてるみたい)
寧々:(それに——)
杏:♪————! ♪————~~~!
寧々:(少しでも躊躇したら、白石さんの声にのまれちゃう。 もっと、わたしも声を張って——)
寧々:♪————! ♪————!!
杏・寧々:『♪————! ♪————!!』
杏:はーっ、すっごくスッキリした~!
寧々:わたしも……。 なんだか、勇気が出た気がする
寧々:えと、……まぜてくれてありがとう
杏:全然いいって! 私も草薙さんと合わせるの楽しかったし!
志歩:うん、いい歌だったよ
寧々:あ……
杏:——よし、じゃあそろそろ解散しよっか。 ふたりともつきあってくれてありがと!
杏:日野森さん、今日は本当にありがとね
志歩:——うん
志歩:……あ、そうだ。 ふたりとも、よければワンマン見に来ない?
杏:え、いいの!?
寧々:わ、わたしも……?
志歩:大丈夫だよ、チケットは用意しておくから
杏:ありがとう、すっごく嬉しい! 楽しみだね~!
寧々:う、うん……。 日野森さん、ありがとう
寧々:……ワンマン、頑張ってね
志歩:ありがとう
志歩:——絶対にいいライブにするから、期待してて
ミク:『すごくいいセッションだったね』
志歩:あ、ミク。聴いてたんだ
ミク:『まあね。志歩も、いい息抜きになったんじゃない?』
志歩:……うん、一緒に演奏できてよかった。 本番に向けて力ももらえたし
志歩:ミク、私……。音楽をやっててよかったな
ミク:『どうして?』
志歩:音楽を続けてたから、みんなとここまで成長できたし、 今日みたいな演奏もできるようになったんだなって思って
ミク:『……ふふ、そうだね』
ミク:『志歩なら——この先も、もっと成長できると思うよ』
ミク:『それに、あの子達もね』
志歩:——うん、そうだね
志歩:(私も……みんなで、最高の演奏をしよう。 それで——)
志歩:(練習でも、ワンマンでも、 その先のまだ知らない場所でも……)
志歩:(——ずっと、みんなの隣で、 ベースを鳴らしていたいな)