活动剧情
ボク達の生存逃走
活动ID:93
第 1 话:無意識のうちに
瑞希の部屋
瑞希:『…………』
瑞希:『雪、今日も来ないね……』
奏:『うん……』
奏:『歌詞はちゃんと送られてくるし、 たまにファミレスで会ったりはできてるけど——』
奏:『ナイトコードでの作業はもう……2週間やれてない』
絵名:『……やっぱり、 今もあの母親に見張られてるのかな……』
奏:『……かもしれない……』
瑞希:(2週間か……)
瑞希:(あれからもう、そんなに経ったんだ……)
奏:——それで、ホテルの前で、まふゆのお母さんと別れた
瑞希:……そんな……
瑞希:音楽はまふゆの人生に必要ない、なんて……
絵名:なんなの、それ……
絵名:そんなの、まふゆの気持ちを完全に無視してるじゃない……!!
瑞希:…………
瑞希:(……前に、通話でまふゆとの会話を聞いた時から どこか嫌な雰囲気は感じてたけど)
瑞希:(奏の話を聞いてわかった。 まふゆのお母さんは……)
瑞希:(——まふゆの気持ちを、置いていってしまう人なんだ)
絵名:……ねえ、奏
絵名:このことって……やっぱり、まふゆには話さないの?
絵名:あの母親がどういう考えなのか知ったら、まふゆも——
奏:それは、わたしも考えた。 でも……
奏:話したとしても、まふゆは……受け入れられないと思う。 ……少なくとも、今はまだ
絵名:え……
奏:前、カイトが来た時のことなんだけど——
KAITO:相手はお前を……お前の想いを殺そうとしてるのに、 情けをかける必要があるのか?
まふゆ:…………殺す……?
まふゆ:——違う……
まふゆ:お母さんは……私の想いを、殺そうなんて……
KAITO:……いい加減、目をそらすのはやめろ
KAITO:本当は、わかってんだろ。お前はただ——
まふゆ:……違う、……違う! お母さんは……!
奏:——多分まふゆは 『お母さんは自分を苦しめたりなんかしない。 大事に思ってくれてる』って……信じてる
奏:……そう信じたいって、どこかで思ってる
瑞希:…………
瑞希:……それは、ボクも感じる
瑞希:多分、まふゆは無意識に……信じようとしてるって
奏:……うん
奏:だからもし、お母さんの言ったことをまふゆに話したとしても、 まふゆは受け入れられない可能性が高いし——
奏:もっと傷つけて、追い詰めることになるかもしれない……
絵名:たしかに、それはそうだけど、でも……!
絵名:……それじゃ一体……どうしたら……
奏:悔しいけど、今はまだ、はっきりした答えは見つかってない
奏:でも苦しんでるまふゆを助ける方法は、きっとあると思う
奏:だから、みんなで考えていこう
絵名:……そうだね
絵名:まふゆが苦しんでるのに このまま何もしないで見てるだけなんて、気分悪いし
瑞希:——うん!
瑞希:まふゆのためにボク達ができることを、考えていこう!
瑞希:(……あれからしばらく、 みんなでいろいろ考えてきたけど……)
瑞希:『……ねえ、みんな。 ちょっとセカイで会わない?』
絵名:『え? 何、急に』
瑞希:『んーと……気分転換したいんだよね! ずっと椅子座ってると、みょ~に肩こっちゃってさ~』
瑞希:『それにほら、今の雪の状況とか、 ミク達にもマメに教えてあげたいし!』
奏:『……たしかに、そうだね』
奏:『それじゃあ、今日はセカイで休憩しようか』
瑞希:『やったー!』
瑞希:『それじゃ5分後に、おやつ持って集合ね!』
第 2 话:自分らしくいられるように
誰もいないセカイ
瑞希:やっほー! みんな、元気~?
レン:あ、みんな……
ミク:……もしかして、次の曲ができたの?
絵名:ううん。今日はちょっと休憩に来ただけ
ミク:そうなんだ……
ミク:……やっぱり、まふゆは、来れない……?
奏:うん……。 夜はほとんど動けないみたいで
ミク:そっか……
ルカ:でも——奏達は、何か手を打とうとしてるんでしょう?
奏:あ……うん
絵名:いろいろやってはいるんだけど……
レン:いろいろ……って、どんなことを?
瑞希:えっと……例えば、 まふゆがちょっとでも息抜きできるようにって思って、 外で会う回数を増やしてみたり
瑞希:あと、まふゆが学校から帰る時、 カフェとかファミレスで待ち合わせしたりしてさ
絵名:で……奏は、最近曲を作るペース上げてるんだよね
奏:うん。やっぱりまふゆには、ニーゴで曲を作る時間が 必要だと思うから
奏:でも……
レン:奏ちゃん……?
奏:やっぱり——根本的な解決には、なってないんだ
奏:まふゆは毎日じゃないけど作業できてるし、 たまに会うと、少しだけホッとした顔をしてくれるんだけど……
奏:今のまふゆの状況自体を 良くできてるわけじゃない
レン:そうなんだ……
絵名:本当は、まふゆの母親に理解してもらえればいいんだけど……
瑞希:……奏の話を聞く限り、厳しそうだよね
絵名:でもそうなっちゃうと、 今できることなんて……
ルカ:あら、あるじゃない
奏:え?
ルカ:きっと、あなた達も考えたんじゃないかしら
ルカ:——結局、まふゆにこの状況を壊させるしかないって
瑞希:……!
ルカ:まふゆが、まふゆのお母さんの本当の気持ちを理解すれば、 ちゃんと反抗できるようになるんじゃないかしら。 なら私達がまふゆに、お母さんの真意を伝えれば——
奏:それは……ルカの言うとおり、わたし達も考えた
奏:でも……できない
ルカ:あら、どうして?
奏:それは……まふゆにとってすごく、残酷で、 受け入れ難いことだから
ルカ:残酷? ああ……
ルカ:そうね。 まふゆにお母さんが言っていたことをそのまま伝えたら、 きっと、とても傷つくでしょうね
ルカ:——大事に想っている人に、 本当の幸せを、考えてもらえていないのだから
ルカ:でも……状況を打ち破るためには、 痛みを伴うことも必要なんじゃないかしら?
奏:…………だとしても
奏:その手段は、できるだけ取りたくない
ルカ:そう。あなた達がそう考えるなら、それでいいと思うわ
ルカ:でも——
ルカ:もうどうしようもないとなったら、 嫌でもその選択をするしかないと思うけれど
奏:…………
瑞希:(……ルカの言うことは、正しい)
瑞希:(これまでのボク達の行動は、 まふゆの気持ちを少しは楽にできたかもしれないけど…… 状況を変えることまではできてない)
瑞希:(もちろん、他にも方法があるのかもしれない。 でもそんないいアイディア——簡単には出てこない)
瑞希:(そうなるとやっぱり、ルカが言うような選択肢も 考えないといけないのかもしれない)
瑞希:(それに——)
瑞希:(もたもたしてるとまふゆのお母さんが、 まふゆとボク達をもっと引き離そうとするかもしれないし……)
瑞希:(——そうしたらまふゆは、もっと苦しむことになる)
瑞希:(だけど……奏の言うとおり、 今のまふゆが事実を受け入れることは難しいと思う)
瑞希:(……一体、どうすればいいんだろう……)
瑞希の部屋
瑞希:『……じゃあ、作業戻るね』
瑞希:……結局、いい方法は思いつかなかったな……
瑞希:……まふゆ?
まふゆのメッセージ:『連絡遅くなってごめん。今日も作業できないと思う。 歌詞はまた明日、時間を見て作ってみる』
瑞希:…………
瑞希:(きっとこのメッセージも、お母さんが見てない時に、 隠れて送ったんだろうな……)
瑞希:(家の中でもがんじがらめになるって、 どんな気持ちなんだろう)
瑞希:(ボクにとって家は——逃げ場所だった。 家では、ありのままでいられたから)
瑞希:(でもまふゆは、家でも外でも自分を出すことができなくて、 唯一の息抜きだったボク達との時間も奪われてて……)
瑞希:(どこにも、逃げ場所がない)
瑞希:(もし、そんな状況がずっと続いたら——)
瑞希:……そんなの、嫌だ
瑞希:(なんとか……なんとかできないのかな)
瑞希:(少しでもいい。 まふゆがありのままでいられる時間を、増やしてあげたい)
瑞希:(まふゆが、まふゆらしくいられる時間を——)
瑞希:…………
瑞希:(ボクの家族が、ボクにしてくれたみたいに…… できない、かな)
瑞希:(あの時、お姉ちゃんやお母さんやお父さんは 逃げ出したボクを受け入れてくれた)
瑞希:(そのおかげでボクは、 家でだけはボクらしくいられたんだ)
瑞希:(……そうだ。 せめて、ちょっとのあいだだけでも一緒に作業できれば……!)
瑞希:(……でも、夜はお母さんに見張られてるし……。 一緒に作業する時間は……)
瑞希:あ……!
瑞希:『K、えななん! 作業中悪いんだけど、ちょっと聞いてくれない?』
瑞希:『いいアイディアを思いついたんだ!』
第 3 话:安心できる時間
絵名の部屋
絵名:『え? それってつまり——』
絵名:『まふゆの学校の昼休みに、 ナイトコードを繋いで作業する……ってこと?』
瑞希:『うん! そういうこと!』
瑞希:『話を聞いてる限り、 まふゆが見張られてるのは夜、家の中だけでしょ?』
瑞希:『だったら、学校にいる昼にやっちゃえばいいじゃん!って 思ったわけ!』
奏:『なるほど……。 たしかに、それならまふゆも作業できるかも……』
絵名:『あ、でも…… 前にまふゆ、学校にいるあいだ結構忙しいって言ってた気がする。 学級委員の仕事とかもあるからって』
奏:『……たしかに、 実際作業できる時間があるのか、わからないけど……』
奏:『でも——まふゆに話してみよう』
奏:『一緒に作業できる時間が増えたら、 まふゆも、少しは楽になると思うから』
絵名:『……たしかに、そうだね。 私も、それがいいと思う』
瑞希:『……! ありがとう、ふたりとも! それじゃ早速聞いてみるね!』
瑞希:(……気休め程度にしかならないかもしれないけど)
瑞希:(今は、きっとその時間が大事なんだ。 だから——)
瑞希:『……! 返って来た!』
奏:『あ……本当だ』
絵名:『布団の中で隠れてスマホ打ってるとか? 見つからないといいけど……』
瑞希:『ならこっちも急いで返信しなくちゃね。 えっとまふゆからは……』
まふゆのメッセージ:『できるかわからない』
まふゆのメッセージ:『昼は、いろんな人から声をかけられることが多いし』
瑞希:『……やっぱり、難しいか……』
まふゆのメッセージ:『でも、提案してくれて、ありがとう』
瑞希:『あ…………』
瑞希:(……いや、まだ諦めちゃダメだ)
瑞希:(まふゆに、ちょっとでも安心できる場所にいてもらいたいから。 何か……いい方法は……)
瑞希:『あ……そうだ!』
瑞希:『予備校の課題のために自習室で勉強するって言って ひとりになるのはどう?』
瑞希:『それでスマホでナイトコード繋げて、 勉強をしてるフリしながら作業するとか』
絵名:『え? でもそれだと、 自習室で勉強してる子達にバレるんじゃない?』
瑞希:『うん。だから——』
瑞希:『まふゆは周りにバレないように、 ボク達の声を聞きながら、メッセージで参加してほしい』
奏:『あ、なるほど。 それなら気づかれない……』
絵名:『それで、まふゆからは——』
瑞希:『……あ、返ってきた!』
まふゆのメッセージ:『難しいと思うけど』
まふゆのメッセージ:『一度試すぐらいならできると思う』
瑞希:『……!』
瑞希:『うん! それで全然大丈夫だよ!』
瑞希:『まずは試してみよう!』
まふゆのメッセージ:『……わかった』
まふゆのメッセージ:『それじゃあ、また明日。 昼休みになったら連絡する』
瑞希:『オッケー! おやすみ!』
絵名:『よかった……一緒にやれそうで……!』
瑞希:『うん! 実際うまくやれるかは明日にならないとわからないけど…… でも、第一段階クリアって感じ!』
奏:『そうだね。 ……提案してくれてありがとう』
瑞希:『えへへ、どういたしまして!』
奏:『あ……明日寝過ごさないように、 昼にアラームかけておかなくちゃ』
瑞希:『だね! えななんもやっておいたほうがいいんじゃない? 絶対寝坊するでしょ!』
絵名:『しないってば! 昼くらいだったら全然起きられるんだから』
瑞希:『ふふっ。 それじゃ明日はよろしくね、ふたりとも!』
翌日
宮益坂女子学園 2年B組
生徒:起立! 礼!
生徒達:も~! まさか今日小テストやるなんて思わなかった~!
生徒達:ほんとびっくりしたよねー……はぁ。返ってきてほしくないなぁ
まふゆ:(今なら、自習室に……)
教師:——朝比奈さん、今少しいいかしら?
まふゆ:あ……。 ど、どうかしましたか?
教師:今度の修学旅行のしおりのことで少し相談があって…… 時間あるかしら?
まふゆ:あ、ええと……
まふゆ:——すみません
まふゆ:このあと少し予定があって。 放課後でもいいですか?
教師:あら、そうだったの。 なら無理に時間をあけなくて大丈夫よ。 少し意見を聞きたかっただけだから
まふゆ:すみません、ありがとうございます
まふゆ:……急がなくちゃ
自習室
まふゆ:(……昼休みは、全然人がいないな)
まふゆ:(これなら、瑞希の言ったとおりにやれば……)
まふゆのメッセージ:『準備できた』
瑞希:『あ、来た! 雪、ボク達の声聞こえてる?』
まふゆのメッセージ:『大丈夫』
奏・絵名:『……!』
瑞希:『よかった……! えへへ、大成功だね!』
瑞希:『雪のほうは声出せないから大変だと思うけど、 一緒に作業がんばろーう!』
絵名:『ま、大丈夫でしょ。 どうせ雪は、いつも少ししかしゃべらないし』
まふゆのメッセージ:『えななんがしゃべりすぎなだけ』
絵名:『しゃべりすぎってことはないでしょ! いい物作るにはコミュニケーション取るべきだし!』
瑞希:『あっはっは! この感じ久しぶりだなぁ~』
奏:『……ふふ』
奏:『じゃあ——作業、始めようか』
まふゆのメッセージ:『うん』
奏:『……Cメロの歌詞はまだブラッシュアップできそう。 雪、ここの、“手を振り払って”は、テーマに合うように もう少し強い言葉にしてもらってもいいかな』
まふゆのメッセージ:『わかった、考えてみる』
絵名:『あ、Amia! この前渡したやつ、色直したいんだけどいい?』
瑞希:『ええ~、また~?』
まふゆのメッセージ:『この前の絵も、どこを調整したのかわからなかったけど』
絵名:『見る人が見ればわかるの!』
瑞希:『あーまあまあまあ~』
瑞希:『あ、そうだ雪。サビの歌詞ってもう変わらないんだっけ? 大事なとこだからおっきくバン!って出そうと思うんだけど』
まふゆのメッセージ:『そこはもう変わらないから大丈夫』
瑞希:『オッケー! それじゃ、いい感じのフォント探そーっと♪』
まふゆのメッセージ:『よろしく』
瑞希:(……文字だけで、声は聞こえないけど)
瑞希:(でもなんとなく……楽しそうだな)
数十分後
奏:『……うん。 ここの歌詞、すごくいいな。イメージにぴったり』
まふゆのメッセージ:『よかった』
瑞希:(ふふ、作業も順調に進んでるな! よーし、この調子でもっと——)
まふゆのメッセージ:『ごめん。もう昼休みが終わるから戻らないと』
瑞希:『あ……そっか』
奏:『——雪』
奏:『久しぶりに一緒にやれて、よかった。 また雪のタイミングのいい時にやりたいな』
絵名:『やっぱり作ってる時にいろいろ言ってもらえたほうが、 こっちとしてもやりやすいしね』
まふゆのメッセージ:『そうだね』
まふゆのメッセージ:『私も、またやりたい。 時間はなんとか作ってみる』
瑞希:『……!』
瑞希:『うん! またやろう、雪!』
まふゆのメッセージ:『ありがとう。 また、明日』
絵名:『……なんとなくだけど……雪、嬉しそうだったね』
奏:『うん。久しぶりに一緒にやれたからかな』
瑞希:『……よかった』
瑞希:(ちょっとだけだけど、 まふゆが安心できる時間を作れたような気がする)
瑞希:(これでまふゆが、 少しでも楽になってくれたらいいな)
第 4 话:迫る足音
宮益坂
まふゆのクラスメイト:それじゃまふゆ、バイバーイ!
まふゆ:うん、また明日ね
まふゆ:(……やっとひとりになれた)
まふゆ:(今日も疲れた……けど……)
絵名:『しゃべりすぎってことはないでしょ! いい物作るにはコミュニケーション取るべきだし!』
瑞希:『あっはっは! この感じ久しぶりだなぁ~』
奏:『じゃあ——作業、始めようか』
まふゆ:…………
朝比奈家 リビング
まふゆ:…………
まふゆ:——ただいま、お母さん
まふゆの母:おかえりなさい、まふゆ。 今日は学校、どうだった?
まふゆ:今日は何があったかな……。 あ、体育でソフトボールが始まったよ
まふゆの母:あら、そうなのね。 いいストレス解消になりそうだわ
まふゆ:……うん。体を動かしたおかげかな、 午後は集中して勉強できた気がする
まふゆの母:そう、よかったわね
まふゆの母:それならお腹も減ったでしょう? 今日は早めにお夕飯の用意をするから、着替えてらっしゃい
まふゆ:うん。じゃあ上に——
まふゆの母:あ、そういえば……
まふゆ:……? どうしたの? お母さん
まふゆの母:まふゆの楽器なんだけれど——
まふゆの母:今日、捨てておいたわ
まふゆ:………………え?
まふゆの母:まふゆが音楽をやりたい気持ちは、とてもわかるんだけれど……
まふゆの母:楽器が家にあると、どうしても気になってしまうでしょう? 今は、勉強に集中できる環境にしたほうがいいと思ったの
まふゆの母:それに、まふゆももう『音楽はやめる』って言っていたから。 早いほうがいいと思って
まふゆ:…………そ……っか…………
まふゆ:……大丈夫だよ。 今は……必要のないものだし……
まふゆの母:そうよね。 まふゆの気持ちも同じで、よかったわ
まふゆ:…………うん
まふゆの母:あ……それからひとつ、 謝らなくちゃいけないことがあるの
まふゆ:え……?
まふゆの母:ほら、調べ物のためにパソコンを借りていたでしょう?
まふゆの母:今日も少しだけ借りていたんだけれど、 飲み物をこぼしてしまって……
まふゆ:……!
まふゆの母:電源がつかなくなってしまったから、 お昼に修理に出してきたの
まふゆの母:本当にごめんなさい。学校で提出しなくちゃいけない課題は 入ってなかったかしら?
まふゆの母:もしそうなら、お母さんから先生に——
まふゆ:……本当、に……?
まふゆの母:え?
まふゆ:それって、本当に……
まふゆの母:——本当に?
まふゆ:あ……
まふゆ:…………なんでも……ないよ。 課題のデータは、問題ないから……
まふゆ:着替えてくる…………
まふゆ:…………
まふゆ:……どうすれば、いいの……?
まふゆ:噛みつく…………
まふゆ:でも……そんなこと……
まふゆ:そんな、こと…………
翌日
神山高校 屋上
瑞希:……っはー。 授業、めんどくさかった~~
瑞希:このままじゃ留年するぞーって脅されたから来たけど、 正直今はそれどころじゃないんだよねぇ
瑞希:……っと、もうすぐお昼か。 ナイトコードにつながないとね
瑞希:『——やっほー! 本日は神高の屋上よりお届けしまーす!』
奏:『あ……Amia、今日は登校してるんだ』
瑞希:『うん。出席日数がー!って言われてさ~。 そういうわけで今日は作業っていうより おしゃべりしにきたって感じかな♪』
瑞希:『それで、雪は?』
絵名:『まだ。 でも、もうちょっと待てば来るんじゃない?』
絵名:『ていうか、このままいくと私達、 25時、ナイトコードで。じゃなくて、 12時半、ナイトコードで。になりそうっていうか……』
まふゆ:『……待たせてごめん』
瑞希:『あ、雪! ……あれ、今日はボイチャ大丈夫なの?』
まふゆ:『……うん。 ……人があまり来ないところに来たから』
瑞希:『そっか! ……ていうか、雪……』
瑞希:『なんか……いつもより元気なくない……?』
まふゆ:『…………』
絵名:『……もしかして、また何かあったの?』
奏:『…………まふゆ?』
まふゆ:『……………………』
まふゆ:『……シンセサイザーを、捨てられて……』
絵名・奏:『え……!?』
まふゆ:『今はパソコンも……ない』
瑞希:『あ……』
瑞希:(もたもたしてるとまふゆのお母さんが、 まふゆとボク達をもっと引き離そうとするかもしれないし……)
瑞希:(——そうしたらまふゆは、もっと苦しむことになる)
瑞希:(ついに……動き出したんだ……)
まふゆ:『……今は、スマホで連絡できるし……作業もできる』
まふゆ:『でも、この先……どうなるかわからない』
まふゆ:『だから……。 連絡が取れなくなったら……ごめん』
絵名:『……っ。 それ、あんたが謝ることじゃないでしょ……!』
まふゆ:『…………。 ごめん』
奏:『…………』
瑞希:『でも……万が一そうなっても、 その時は、いつもみたいにファミレスで会おう!』
瑞希:『今のうちに曜日と時間決めてさ。 それならもし連絡取れなくなっても、話せるでしょ?』
まふゆ:『……うん』
まふゆ:『…………ありがとう』
瑞希:『まふゆ……』
絵名:『……っ』
絵名:『……本当に、それで終わらせていいわけ……?』
奏:『絵名……』
絵名:『あんたの、大事なものを捨てられたんでしょ?』
絵名:『それって、あんたの想いが—— あんた自身が捨てられようとしてるのと、 ほとんど同じことでしょ……!』
まふゆ:『……それは……』
まふゆ:『でもお母さんは…… 私のことを——』
絵名:『……っ!』
絵名:『もし……もし百歩譲ってそうだとしたって、 もうそんなこと言ってる場合じゃない……!』
絵名:『あんたが母親に怒らないと…… このままじゃ——あんたが壊されちゃうじゃない……!!』
まふゆ:『…………っ』
まふゆ:『で、も…………』
まふゆ:『でも、それは…………できない…………』
絵名:『っ……! それでも——』
まふゆ:『できない!!』
まふゆ:『私には……できない……!!』
絵名:『……っ!』
まふゆ:『…………怖いの……』
まふゆ:『理由はわからないけど……ずっと……』
まふゆ:『怖いの……!』
瑞希:(まふゆ……)
まふゆ:『……ごめん』
まふゆ:『授業があるから、もう……戻らないと……』
瑞希:『……っ、まふゆ!』
瑞希:『——明日も待ってるから!』
まふゆ:『……………………』
第 5 话:向き合えないまま
神山高校 屋上
絵名:『……ごめん』
絵名:『まふゆが傷つくってわかってたのに……、 あんなこと、言っちゃって……』
奏:『……ううん』
奏:『絵名が……本気で心配してるってこと、 まふゆも、きっとわかってる』
絵名:『…………』
瑞希:(……怖い、か……)
奏:『……やっぱり、今のままじゃダメだ』
奏:『さっき瑞希が言ってくれたみたいに、 まふゆに会う手段はまだあると思う』
奏:『でも、もしも連絡を取る手段がなくなったら、 まふゆのニーゴの活動は……難しくなる……』
奏:『それに、パソコンもスマホもなくなったら…… セカイにも……』
奏:『そうなったら、まふゆは…………』
絵名:『……っ。 本当、なんなのあの母親……!!』
絵名:『まふゆの大事なものを取り上げて、 どんどん追い詰めて……!』
瑞希:『…………』
まふゆ:『怖いの……!』
瑞希:(シンセサイザーも捨てられて、パソコンまで取り上げられて…… まふゆの状態はどんどん悪くなってる)
瑞希:(なんとかしたいのに——)
瑞希:(ボク達に、一体、何ができるんだ……)
神山通り
瑞希:……はぁ……
瑞希:(あれからみんなで何時間も話し合ったけど…… やっぱりいい案は出なかった)
瑞希:(……どうしよう。 時間ばっかり過ぎてく)
瑞希:(まふゆが今日帰ってすぐに、 スマホを取り上げられちゃう可能性だってあるのに……)
???:あ! 瑞希~!
瑞希:え?
クラスメイトA:もしかして今帰り?
クラスメイトB:昼休みのあと見かけなかったから、 もう帰ったのかと思ったよー!
瑞希:あ……
クラスメイトA:そういえばさ、瑞希も言われてイヤなら、 学校くらい普通の格好で来ればいいのにね
クラスメイトB:それは思うなー。 他と違うと、みんなも気になっちゃうしね
クラスメイトA:いい子だけど、瑞希ってそういうところあるよね
クラスメイトB:わかるー。みんなに合わせらんないっていうか
瑞希:……うん。今帰りだよ
クラスメイトA:そっか! 実は今から、駅前にできた新しい店に行こうと思うんだけど、 瑞希も一緒に行かない?
クラスメイトB:瑞希が好きなコスメ、いっぱい置いてあるんだって!
瑞希:へえ……そうなんだ
瑞希:(今は、そんなことしてる場合じゃないのに……)
瑞希:(……悪いけど、適当に断って——)
クラスメイトA:ちょうどさっきね、『最近瑞希とあんまり話せてないから、 一緒に遊びに行きたいよね』って話してたんだ
瑞希:え……?
クラスメイトB:うん! やっぱ瑞希といると、私達も楽しいし!
クラスメイトB:で、瑞希のほうも楽しい放課後タイムが増えたら、 学校にもっと来たくなるかもでしょ?
瑞希:あ……
瑞希:(……そっか)
瑞希:(ああ言ってたのは、別に悪意があるわけじゃなくて……、 わからないからなんだろうな)
瑞希:(——『みんなに合わせること』が、 人によっては、自分を殺さなきゃいけないくらい 苦しいものだってことを)
クラスメイトA:……瑞希?
クラスメイトB:どうしたの? 体調悪い?
瑞希:(……もしかしたら、 ふたりだって、話せばわかってくれるのかもしれない)
瑞希:(けど……)
瑞希:…………ごめん。 今日はちょっと、やらなきゃいけないことがあって
クラスメイトA:そうなんだ……。 残念だけど、用があるなら仕方ないね
クラスメイトB:じゃ、次は絶対一緒に行こうね! あとで戦利品撮ってシェアするから!
瑞希:うん、ありがとう。 ……それじゃ、バイバイ!
瑞希:…………
瑞希:早く帰ろう……
瑞希の部屋
瑞希:……はぁ
瑞希:やっぱ、家は落ち着くな……。 一番楽で、自然でいられるっていうか……
瑞希:(でも、まふゆは、 それもできないんだよね……)
瑞希:(学校にいても、家に帰っても—— どこにいても、きっと苦しくて)
瑞希:(そう考えると……まふゆはすごいな)
瑞希:(ボクは、苦しいことにぶつかったら……)
瑞希:…………ごめん。 今日はちょっと、やらなきゃいけないことがあって
瑞希:(……ずっと、逃げてきた)
瑞希:(……考えてみると、 ボクって、本当にずっとそうだな)
瑞希:(傷つくのが怖くて、逃げて。 やっと、ずっと一緒にいたいなって思える人達ができても……)
瑞希:(——向き合えないままだ)
瑞希:(……そもそも、ボクにできるのかな。 『誰かの逃げ場所になる』なんて)
瑞希:(ボクは……奏とも、絵名とも違う。 自分の問題にすら、ちゃんと向き合えてない)
瑞希:(そんなヤツが、誰かの助けになんて——)
瑞希:メッセージ……? あ……
奏のメッセージ:『一応デモは、明日中にはできると思う。 雪が来られそうなら、あさっての昼にセカイで聴こう』
瑞希:…………
瑞希:……なんかダメだな、今日。 悪いほうに悪いほうに考えてる
瑞希:ちょっと……頭、冷やさなくちゃな……
第 6 话:ボクの方法
誰もいないセカイ
瑞希:…………はぁ
瑞希:ここなら、もうちょっと落ち着いて考えられると思ったけど……
瑞希:(ダメだな……。 ずっと頭の中がグルグルしてる)
レン:えっと……瑞希ちゃん……
瑞希:あ……レン!
レン:大丈夫……? なんだか、元気ないみたいだけど……
瑞希:あ、うん……。 大丈夫。ちょっと、考えごとしてただけだよ
???:——あら、そうなの?
瑞希:ルカ……
ルカ:ただ考えごとをしていただけにしては、 ずいぶん遠い目をしていた気がするけれど
レン:あ……
瑞希:……もしかして、ふたりともずっと見てたの? だったら声かけてくれてもよかったのに
レン:ご、ごめんね……。 ルカさんが、ちょっと見てましょうって……
ルカ:あら、レンってば、バラしちゃうなんて酷いわ?
レン:ご、ごめん……
ルカ:それで——瑞希は何をそんなに考えていたのかしら?
瑞希:別に……前と変わらないよ
瑞希:まふゆを助けたいのに、 その方法が全然思い浮かばなくて——
ルカ:本当にそれだけ?
瑞希:え?
ルカ:まふゆの事だけじゃなくて、 瑞希自身のことも考えていたんじゃない?
瑞希:……!
瑞希:……なんで、そう思ったの?
ルカ:特に理由はないわ。直感よ
瑞希:まあ、実際そうかもね
瑞希:……『ボクなんかがまふゆを助けられるのかな』って 考えちゃってたし
レン:……どういうこと?
瑞希:——ボクさ、まふゆの問題を全部解決するのは難しくても、 せめて逃げ場所になりたいって思ってたんだ
ルカ:逃げ場所?
瑞希:うん。ボクも昔、すっごくつらかった時があったんだけど、 いつでも逃げられる——安心できる場所があったおかげで、 ちょっとマシになったから
瑞希:だからまふゆにも、同じような場所になれればって……
瑞希:でも、そうやって昔の自分のこととか考えてたら…… 思っちゃったんだよね
瑞希:そんなこと、本当にボクにできるのかなって
レン:え……?
瑞希:……奏は『まふゆを救うために曲を作り続ける』って、 そういう覚悟ができる子でさ
瑞希:絵名は……『友達のためならずっと待ち続ける』って言えるんだ
ルカ:——なら、瑞希は?
瑞希:ボクは……どっちでもないんだ
瑞希:ボクってホント、逃げてばっかりでさ
瑞希:自分の問題にも向き合えないし…… ずっと一緒にいたい人達にすら、大事なことは話せない
瑞希:だから……
ルカ:……そう
ルカ:瑞希はすごく、臆病なのね
レン:ル、ルカさん……。 そんな風に、言わなくても……
瑞希:あはは……まあ、そうだよねえ
瑞希:本当に、臆病だよね……
ルカ:……そうね。 でも——
ルカ:そんなあなただからできることが、あるんじゃない?
瑞希:え?
ルカ:瑞希は、自分には何もできないって言うけれど……
ルカ:向き合うことから逃げ続けてきた、 そんな瑞希だからこそ——できることがあると思うわ
瑞希:…………
瑞希:……そんなこと言われても、何も……
ルカ:考えかたを変えてみればいいのよ
ルカ:——今、まふゆは、 望むと望まざるとにかかわらず、 自分の問題と向き合うことになっているわ
ルカ:それがつらく苦しいことだっていうのは—— 瑞希、あなたなら知っているはずよ
瑞希:…………
ルカ:瑞希
ルカ:あなたが壊れそうになった時 あなたは、どうしたの?
ルカ:どんな方法で——心を守ったの?
瑞希:ボクが……壊れそうになった時……
瑞希:(あの時——)
瑞希:(ボクは、このままじゃボク自身が消えちゃいそうで…… すごく苦しかった)
瑞希:(学校にいて、クラスメイトといたって、 誰にも理解してもらえなくて……いつもひとりぼっちで)
瑞希:(だから、学校から逃げだした)
瑞希:(でも、お姉ちゃんもお母さんもお父さんも すごく心配してくれて……)
瑞希:(そのおかげで、守れた)
瑞希:(逃げて……逃げて、逃げたから、 ボクは、ボクの——心を守れた)
瑞希:(それで——)
瑞希:(みんなと、出会えたんだ)
瑞希:(みんなと一緒にMVを作るうちに、 自分の気持ちを、自分の感覚を伝えていいんだって感じて……)
瑞希:(ボクは、ボクのままでいいのかなって、思えた)
瑞希:(すごく小さいけど……光に出会えたんだ)
瑞希:あ…………
瑞希:…………
瑞希:——逃げていいって……
瑞希:ボクは、『逃げていい』って……伝えたいな
瑞希:『逃げろ!』って。 『ここから逃げていいんだよ』って
瑞希:……『逃げた先に、居場所があることもある』って
瑞希:……ルカ、ありがとう
ルカ:あら、私はただ『考えかたを変えてみたら』と言っただけよ?
瑞希:(……この答えが本当に、 まふゆを助けられるかはわからない)
瑞希:(でも……!)
第 7 话:生きるために
まふゆの部屋
まふゆ:(……ダメ)
まふゆ:(最近、ずっとこう……。 頭は重いのに、うまく眠れない……)
まふゆ:(……25時)
まふゆ:(みんな今頃……作業を始めてるのかな)
まふゆ:(どうせ眠れないなら……スマホで作詞しよう)
まふゆ:(あ……そういえば、机に置きっぱなしだった。 取りにいかないと……)
まふゆ:(……暗くてよく見えないな。 スマホは——)
まふゆ:(あ、スマホが……!)
まふゆ:……!
まふゆ:(この音……もしかして、お母さん……?)
まふゆの母:——まふゆ?
まふゆの母:…………
まふゆの母:……気のせいだったみたいね
まふゆ:…………
まふゆ:(心配、してくれてるんだよね……)
まふゆ:(お母さんは、私のために——)
絵名:『あんたの、大事なものを捨てられたんでしょ?』
絵名:『それって、あんたの想いが—— あんた自身が捨てられようとしてるのと、 ほとんど同じことでしょ……!』
絵名:『あんたが母親に怒らないと…… このままじゃ——あんたが壊されちゃうじゃない……!!』
まふゆ:(…………違う)
まふゆ:(お母さんは……、お母さんは……!)
まふゆ:(これは……メッセージ?)
まふゆ:…………瑞希?
瑞希のメッセージ:『急にごめん。 実は、ふたりで話したいことがあるんだ』
瑞希のメッセージ:『近いうちに会えないかな? できれば直接話したいなって』
まふゆ:(直接……)
まふゆ:(でも……予備校のない日は部活があるし、 予備校のある日はなおさら……)
瑞希のメッセージ:『タイミングは雪の都合のいい時で大丈夫! ただ……もしよかったら、早めに話せるといいな』
瑞希のメッセージ:『伝えたいことがあるんだ』
まふゆ:…………
瑞希:…………返事、来ないな
瑞希:もしかして……スマホまで取り上げられたんじゃ……
瑞希:あ、来た!
まふゆのメッセージ:『明日の放課後なら』
瑞希:……! やった!
瑞希:『ありがとう、雪! じゃあ……駅前で待ってるよ!』……と
瑞希:よし……!
翌日
放課後
瑞希:(そろそろ時間だけど……)
瑞希:あ!
瑞希:まふゆ! こっちこっち!
まふゆ:瑞希……
瑞希:今日は時間作ってくれて、ありがとう! えっと……何時くらいまでなら大丈夫かな?
まふゆ:……予備校が終わる時間までだから……9時までなら
瑞希:え。予備校が終わるまでって……、 もしかしてサボらせちゃった?
瑞希:大丈夫? お母さんにバレたら、また……
まふゆ:……平気。休んでも親に連絡はいかないから
まふゆ:ただ……
瑞希:どうしたの?
まふゆ:……その、ちょっと前、 お父さんと偶然会ったことがあって……
まふゆ:もしかしたら、 見つかるかもしれないって……少し、不安で
瑞希:…………そっか
瑞希:そういうことなら、場所を変えてから話そうか
まふゆ:……ありがとう
瑞希:ううん! ——ボクもちょうど、行きたいところがあったからね!
まふゆ:……え?
スポジョイパーク
瑞希:というわけで……とうちゃーっく!!
まふゆ:ここって……
瑞希:スポジョイパークだよ! ほら、前に奏と絵名が遊んだらしいじゃん? だからボクも行ってみたかったんだよね!
瑞希:てことで……まふゆ、何から行く!?
まふゆ:何からって……。 今日は話をするんじゃ……
瑞希:まあまあ~。 最近勉強も忙しそうだし、たまには息抜きも必要でしょ?
瑞希:奏達もすっごく楽しめたみたいだし! ボク達もちょっと体動かしてスッキリしてから話そうよ!
瑞希:あ、まふゆはローラースケートできる?
まふゆ:小さい頃、少しやったことはあるけど……
瑞希:十分! それじゃ、一緒にやってみよーう!
瑞希:わ! まふゆ、すごい滑れるじゃん!
まふゆ:そう……? 前に進むぐらい誰にでも……
瑞希:あっはっは! 奏が聞いたら落ち込みそ~!
瑞希:あ、じゃあせっかくだし競争しようよ! 先にあそこまでついたほうがジュースおごってもらえるってことで
まふゆ:別に、いらないけど
瑞希:あ~その言いかた! まふゆってばもう勝つ気でいるでしょ!
瑞希:ボクだって負けないんだからね! それじゃ——ヨーイ、ドン!
瑞希:うわ……! 3連続でパネル当たったじゃん! なんでそんなにうまいわけ!?
まふゆ:多分……この前、ソフトボールの授業があったからだと思う
まふゆ:……景品のジュースもらえたから、あげる。 さっきスケートで負けた分
瑞希:え、いいの? ボクちょっとフライングしちゃったのに、 悪いな~
まふゆ:美味しいって思う人が飲んだほうがいいと思うから
まふゆ:…………それで、話って?
瑞希:……んー
瑞希:ま、もうちょっと息抜きしてからでもいいんじゃない?
まふゆ:……? でも、話がしたいから呼んだんじゃ……
瑞希:いーからいーから! もうちょっとだけつきあってよ!
瑞希:——ってわけで、 次はショッピングモールにレッツゴー!!
瑞希:はぁ~! 楽しかった~! いいショッピングだったね♪
まふゆ:……1着買うだけで悩みすぎじゃない……?
瑞希:そりゃ悩むよ! せっかくバイトで稼いだお金なんだし、 最高にカワイイ服買いたいじゃん!?
瑞希:あとになって、『やっぱあっちの色にしとけばよかった~!』 みたいになるのってホント悔しいっていうか……! もう買い物してる時のボクを全力で止めたいくらいだよ!!
まふゆ:…………そう
瑞希:……ちょっとは、楽になれたかな?
まふゆ:……え?
瑞希:少し表情が柔らかくなった気がしたからさ
まふゆ:そう……かな
まふゆ:でも……少しだけすっきりしたかも……
瑞希:あはは! よかった~!
瑞希:——すっごくキツい時ってさ、 他のことやってるとちょっと気がまぎれるでしょ
瑞希:ボクはしんどい時いつも、 自分が楽だなって思うほうに逃げてたんだ
瑞希:だから、まふゆにもそういうのが必要なんじゃないかって思って
まふゆ:あ…………
まふゆ:もしかして……それが言いたくて……?
瑞希:えへへ……ごめんね。 実際やってみたほうが、伝わるかなーって思って
瑞希:——実はさ、 まふゆと状況は違うけど、ボクにも、 自分の心を殺さなくちゃやっていけなかった時期があったんだ
まふゆ:…………
瑞希:中学の頃、ちょっといろいろあって、 周りから結構変な目で見られたっていうか…… 笑いものにされててさ
瑞希:それですごくキツかったんだけど……でも、 アニメ見たり、動画作ったりして、なんとか乗り切ってたんだよね
まふゆ:……でも、そうしたところで……
瑞希:うん。何かが解決するわけじゃないんだ
瑞希:ボクものらりくらりやってたけど 学校に行けば行くほどキツくなって、 唯一安心して一緒にいられる仲間も、卒業でいなくなって……
瑞希:耐えきれなくなった
まふゆ:…………
瑞希:だから、逃げたんだ。 学校から
瑞希:家にいると、傷つくことはなくなって…… でも、自分の問題から逃げちゃってるってわかってるから、 苦しくて……
瑞希:でも——
瑞希:その時間があったから、 ……今こうしていられてる
まふゆ:……その時間が……あったから……?
瑞希:あのね、まふゆ
瑞希:ボク思うんだ。 生きるためには、立ち向かうためにはエネルギーが必要だって
瑞希:でも今のまふゆみたいに、苦しいことから離れられないままだと エネルギーがなくなって、動けなくなっちゃう
瑞希:ほら、苦しいまんま過ごしてるとさ、 疲れて、つらくなって、最後はもうどうでもいいやーって…… そう思っちゃうでしょ?
まふゆ:…………
瑞希:だからそうならないために——生きるために
瑞希:逃げることが必要な時もあるって、ボクは思う
瑞希:……もちろん、逃げ続けるのはオススメしないよ。 問題そのものが解決するわけじゃないから、 本当には楽になれないし
瑞希:でも……すごくつらくて、壊れそうなほど苦しくて、 エネルギーがゼロになっちゃいそうな時は、 逃げるっていう手段もあるんだ
瑞希:だから——
瑞希:もう無理だって思ったら、逃げていいって ボクは思うんだ
瑞希:誰でもない。まふゆ自身のために
まふゆ:…………
第 8 话:怖いけど、それでも
宮益坂
まふゆ:……逃げる……
まふゆ:でも、逃げる……って……
瑞希:今は、ピンとこないかもしれない。 まだその時じゃないかもしれないし
瑞希:でも——覚えててほしいんだ
瑞希:本当に追い詰められたら、そういう選択肢もあるってことを
まふゆ:…………
瑞希:あ……もうすぐ、予備校が終わる時間になっちゃうね
瑞希:行こう、まふゆ
まふゆ:…………。 …………うん
瑞希:それじゃ、ここでバイバイかな。 気をつけて帰ってね
まふゆ:…………瑞希
瑞希:ん? なあに?
まふゆ:……今日は、ありがとう
まふゆ:久しぶりに会えて……よかった
瑞希:ねえ、まふゆ
まふゆ:……何?
瑞希:今日帰ってからも、 いろいろ考えちゃうと思うけど……
瑞希:でも、いつだってボク達はまふゆの味方だよ。 だから……
瑞希:いつでもニーゴのみんなで——セカイで待ってるよ!
まふゆ:……うん
数時間後
誰もいないセカイ
瑞希:ふたりとも、こっちこっちー!
奏:瑞希……。 どうしたの? 急に呼びだして
絵名:まふゆのことで、いいアイディア浮かんだの?
瑞希:あはは、突然ごめんね
瑞希:……ふたりに、ちゃんと共有しておこうと思ってさ
絵名:共有?
瑞希:——さっき、まふゆに、『逃げてもいい』って言ってきたんだ
奏・絵名:『え……?』
絵名:まふゆと、そんなこと話してたんだ……
瑞希:うん……。 ふたりに相談しないまま勝手に動いちゃってごめん
瑞希:でも……言わなくちゃって思ったんだ。 まふゆの心が、壊れちゃう前に
奏・絵名:『…………』
瑞希:でも、その……相談しないで勝手に進めちゃったから、 ちゃんと報告しておきたくてさ
奏:……『逃げてもいい』……か
奏:——ありがとう、瑞希
奏:わたしも、今のまふゆは『逃げる』っていう選択肢を 持っておいたほうがいいと思う
絵名:……そうだね。ガツンと言えるなら言ったほういいけど……、 どうしてもできないんなら、他の方法をとったほうがいいし
絵名:瑞希、いいこと言うじゃん
瑞希:あ……
奏:……もしまふゆが逃げるって選択をしたら、 わたしの家に来てもらっても大丈夫だし
絵名:うちも、さすがにずっとは難しいと思うけど…… ちょっとお母さんに聞いてみようかな
瑞希:……ふたりとも……
瑞希:——ありがとう
瑞希:これから、まふゆの状況がどうなるのか、 ボク達には全然わからないけど……
瑞希:でも、頑張りたいなって思う。 ——まふゆのために
奏・絵名:『うん!』
ルカ:——フフ。 いい顔ね
???:……覗き見とは、趣味が悪いな
ルカ:あら。それを言うなら、今ここにいるあなただって 人のことを言えないんじゃないかしら?
ルカ:あの子達が、気になっていたんでしょう?
KAITO:——さあな
KAITO:だが、『逃げる』か……
ルカ:あら、お気に召さないかしら
KAITO:何もしないまま、突っ立ってるよりマシだ
KAITO:——それに今のあいつには、取れる選択肢は多いほうがいい
ルカ:フフ、そうね
ルカ:あの子達が出した答えは、まふゆをどう変えてくれるのかしら
瑞希:(……まふゆの状況はどんどん悪くなっていて…… もうできることは、ないんじゃないかって思ってた)
瑞希:(でも、ちゃんと伝えられた。 逃げてもいいって、伝えることができた)
瑞希:(伝えられて——本当によかった)
瑞希:(……どの道を選ぶかは、まふゆ次第だ)
瑞希:(でも、もしまふゆが『逃げる』って選択をするなら—— それは、ボクの“責任”だ)
瑞希:(正直、ちょっと怖い気持ちはある。 でも、ボクは……ボクにできることはすべてやりたい)
瑞希:(まふゆがまた、まふゆらしく生きられるように——)